特許第6856890号(P6856890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856890
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】蛍光体
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/71 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   C09K11/71
【請求項の数】4
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-158097(P2016-158097)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-43764(P2017-43764A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2019年6月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-169258(P2015-169258)
(32)【優先日】2015年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】大長 久芳
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 裕
(72)【発明者】
【氏名】榎本 公典
(72)【発明者】
【氏名】細野 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】松石 聡
(72)【発明者】
【氏名】澤 博
(72)【発明者】
【氏名】中埜 彰俊
【審査官】 林 建二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0049116(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101698801(CN,A)
【文献】 特開2000−144130(JP,A)
【文献】 特開2006−049799(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0180780(US,A1)
【文献】 米国特許第06608329(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
H01L 33/00−33/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式がaMX・MII1−x:(Re)
(但し、MはK、Li、Cs、及びAgからなる群より選ばれるKを主成分とする少なくとも1種の元素、MIIはMg、Ca、Mn、Zn、Cd及びSnからなる群より選ばれるCaを主成分とする少なくとも1種の元素、MはP、V、Nb、Ta、Sb及びBiからなる群より選ばれるPを主成分とする少なくとも1種の元素、XはF、Br、Iからなる群より選ばれるFを主成分とする少なくとも1種のハロゲン元素、ReはEu、Sc、Y、La、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu及びCeからなる群より選ばれるEuを主成分とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.6≦a≦1.4の範囲であり、xは0.007≦x≦0.2の範囲である。更に、以下の(1)〜(5)の条件の少なくともいずれか一つを満たす。
(1)Kの一部がLi、Cs、及びAgの少なくともいずれか1種の元素で置換されている。
(2)Caの一部がMg、Mn、Zn、Cd及びSnの少なくともいずれか1種の元素で置換されている。
(3)Pの一部がV、Nb、Ta、Sb及びBiの少なくともいずれか1種の元素で置換されている。
(4)Xの一部がBrまたはIの元素で置換されている。
(5)Euの一部がSc、Y、La、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Lu及びCeの少なくともいずれか1種の元素で置換されている。)で表され
励起スペクトルのピーク波長が420nm以下であることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
発光スペクトルのピーク波長が600〜700nmの範囲であり、
励起スペクトルのピーク波長が420nm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
蛍光体に含まれる結晶の少なくとも一部が、CuのKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいて、
回折角2θが31.0°〜33.0°の範囲に第1回折ピーク、第2回折ピーク及び第3回折ピークが存在し、最も強度の高い前記第1回折ピークの回折強度を100とした場合に、前記第2回折ピークおよび前記第3回折ピークの回折強度は30〜50であり、
回折角2θが27.0°〜29.0°の範囲に回折強度が15〜25の第4回折ピークを有し、
回折角2θが41.0°〜43.0°の範囲に回折強度が15〜25の第5回折ピークを有し、
回折角2θが29.0°〜31.0°の範囲に回折強度が10〜15の第6回折ピークを有し、
回折角2θが36.0°〜39.0°の範囲に回折強度が10〜15の第7回折ピークを有し、
回折角2θが13.0°〜15.0°の範囲に回折強度が5〜10の第8回折ピークを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
蛍光体に含まれる結晶の少なくとも一部は、結晶系が斜方晶であり、ブラベ格子が単純格子であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な赤色蛍光体が開発されている。例えば、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、CaSi:Euといった組成の赤色蛍光体が開発されている(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3837588号公報
【特許文献2】特開2008−106224号公報
【特許文献3】特開2005−093912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の赤色蛍光体は、上述の組成の蛍光体を含め窒化物が主流である。窒化物の蛍光体の合成には、脱酸素雰囲気、高温高圧等の特殊な環境が必要であり、製造コストの増大を招いている。
【0005】
また、上述の赤色蛍光体は、励起端が500〜550nmの間にある。そのため、このような赤色蛍光体を、白色光を実現するために他の色で発光する蛍光体と一緒に用いる場合、青色、緑色、黄色等の蛍光体が発する光を吸収して赤色に変換してしまう。その結果、蛍光体の含有量や塗布形態のわずかな変動に対して、所望の発光色から色度が大きくずれるといったことが生じ得るため、色調整が難しい。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新規な蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の蛍光体は、一般式がaMX・MII1−x:(Re)(但し、MはK、Li、Na、Rb、Cs、Fr、Cu、及びAgからなる群より選ばれるKを必須とする少なくとも1種の元素、MIIはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Mn、Zn、Cd及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、MはP、V、Nb、Ta、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、XはFを必須とする少なくとも1種のハロゲン元素、Reは希土類元素からなる群より選ばれるEuを必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.6≦a≦1.4の範囲である)で表される。
【0008】
この態様によると、窒素を必須元素としない新規な蛍光体を実現でき、脱酸素雰囲気、高温高圧等の特殊な環境で製造する必要がなく、低コストの蛍光体を実現できる。
【0009】
励起スペクトルのピーク波長が420nm以下であり、励起スペクトルの励起端が450nm以下であってもよい。これにより、他の色の蛍光体が発する光を吸収しにくくなり、例えば、他の色の蛍光体が発する光との混色により白色光を実現する装置に適用した場合の色度のばらつきを抑えることができる。
【0010】
上述の蛍光体の一般式においてxは0.007≦x≦0.2の範囲であってもよい。
【0011】
本発明の別の態様もまた、蛍光体である。この蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が600〜700nmの範囲であり、励起スペクトルのピーク波長が420nm以下であり、励起スペクトルの励起端が450nm以下である。
【0012】
この態様によると、例えば、青色蛍光体や緑色蛍光体と併用して白色光を実現する場合であっても、青色や緑色の波長の光の吸収が少なく、色度調整が容易となる。
【0013】
蛍光体に含まれる結晶の少なくとも一部が、CuのKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが31.0°〜33.0°の範囲に第1回折ピーク、第2回折ピーク及び第3回折ピークが存在し、最も強度の高い第1回折ピークの回折強度を100とした場合に、第2回折ピークおよび第3回折ピークの回折強度は30〜50であり、回折角2θが27.0°〜29.0°の範囲に回折強度が15〜25の第4回折ピークを有してもよい。回折角2θが41.0°〜43.0°の範囲に回折強度が15〜25の第5回折ピークを有してもよい。回折角2θが29.0°〜31.0°の範囲に回折強度が10〜15の第6回折ピークを有してもよい。回折角2θが36.0°〜39.0°の範囲に回折強度が10〜15の第7回折ピークを有してもよい。回折角2θが13.0°〜15.0°の範囲に回折強度が5〜10の第8回折ピークを有してもよい。
【0014】
蛍光体に含まれる結晶の少なくとも一部は、結晶系が斜方晶であり、ブラベ格子が単純格子であり、空間群がP2/mであってもよい。
【0015】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法、灯具や照明などの装置、発光モジュール、光源などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新規な蛍光体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図2】実施例1に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図3】実施例4に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図4】実施例4に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図5】実施例7に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図6】実施例7に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図7】実施例10に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図8】実施例10に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図9】実施例14に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図10】実施例14に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図11】実施例31に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図12】実施例31に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図13】実施例35に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図14】実施例35に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図15】実施例36に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図16】実施例36に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図17】実施例37に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図18】実施例37に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図19】実施例38に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図20】実施例38に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図21】実施例39に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図22】実施例39に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
図23】実施例40に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
図24】実施例40に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
本実施の形態に係る蛍光体は、紫外線または短波長可視光で効率良く励起され発光する蛍光体である。具体的には、420nm以下の近紫外光または短波長可視光で強い励起を示し、発光スペクトルのピーク波長が600nm以上の赤色光を発する蛍光体である。また、本実施の形態に係る蛍光体は、ハロ酸化物の母体結晶にEu2+イオン等の賦活剤をドープすることで赤色発光を実現している。
【0020】
また、本実施の形態に係る蛍光体は、ストークスシフトが大きい(0.8〜1.2eV程度)赤色蛍光体である。そのため、青色、緑色、黄色等の他の蛍光体が発する可視光が吸収されにくい。なお、ストークスシフトとは、励起端波長と発光スペクトルのピーク波長とのエネルギー差をいう。ここで、励起端波長とは、励起スペクトルにおける長波長側の励起強度の低下が急減し始める波長を示している。
【0021】
次に、本実施の形態に係る蛍光体について詳述する。本実施の形態に係る蛍光体は、一般式がaMX・MII1−x:(Re)(但し、MはK、Li、Na、Rb、Cs、Fr、Cu、及びAgからなる群より選ばれるKを必須とする少なくとも1種の元素、MIIはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Mn、Zn、Cd及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、MはP、V、Nb、Ta、As、Sb及びBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、XはFを必須とする少なくとも1種のハロゲン元素、Reは希土類元素からなる群より選ばれるEuを必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.6≦a≦1.4の範囲である)で表される。
【0022】
以下、実施例を用いて更に具体的に説明するが、下記の蛍光体の原料、製造方法、蛍光体の化学組成等の記載は本発明の蛍光体の実施の形態を何ら制限するものではない。
【0023】
(実施例1)
実施例1に係る蛍光体は、KF・Ca0.99KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。実施例1に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.990:0.010:0.0050(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。この原料混合粉末をアルミナ坩堝に入れ、1000℃で6時間焼成し、焼成粉末を得た。焼成する際の雰囲気は、N/H=95/5の混合ガス雰囲気である。そして、得られた焼成粉末を純水で洗浄し、実施例1に係る蛍光体を得た。
【0024】
[組成分析]
実施例1で得られた紛体サンプルを透明樹脂中に埋め込み、測定面が平坦になるように研磨後、EPMA(日本電子製)を用いて組成分析を行った。その結果、実施例1に係る蛍光体の組成比は、KF・Ca1−xKPO:Eu2+であることが明らかになった。
【0025】
[励起スペクトルおよび発光スペクトル]
図1は、実施例1に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。励起発光スペクトルの測定は、マルチチャンネル光学分光器(PMA C5966-31(浜松ホトニクス製))を用いて室温で行った。発光スペクトルは400nm励起で測定した。励起スペクトルは、モニター波長を400nm励起時の発光ピーク波長に合わせ、測定した。
【0026】
図1に示すように、実施例1に係る蛍光体の励起スペクトルL1は、ピーク波長λ1が330〜420nmの範囲、より詳述すると350〜390nmの範囲にある。また、励起端波長λeは420nm程度であり、その波長のエネルギーは2.938eVである。一方、発光スペクトルL2は、ピーク波長λ2が658nmであり、半値幅が152nmであり、ピーク波長λ2のエネルギーは1.884eVである。したがって、ストークスシフトは、1.054eVである。また、この蛍光体が発する光の色度座標(cx、cy)は、(0.613,0.384)である。
【0027】
[X線回折パターン]
次に、X線回折測定について説明する。まず、粉末X線回折装置(RINT UltimaIII:Rigaku製)により、CuのKα線を発するX線管球を用い、サンプリング幅0.01°、スキャンスピード0.05°/minの条件で粉末X線回折測定を行った。測定で観測された回折パターンを図2に示す。図2は、実施例1に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。
【0028】
図2に示すように、実施例1に係る蛍光体に含まれる結晶の少なくとも一部が、CuのKα特性X線を用いたX線回折パターンにおいて、回折角2θが31.0°〜33.0°の範囲に第1回折ピークP1、第2回折ピークP2及び第3回折ピークP3が存在し、最も強度の高い第1回折ピークP1の回折強度を100とした場合に、第2回折ピークP2および第3回折ピークP3の回折強度は30〜50である。また、回折角2θが27.0°〜29.0°の範囲に回折強度が15〜25の第4回折ピークP4を有している。また、回折角2θが41.0°〜43.0°の範囲に回折強度が15〜25の第5回折ピークP5を有している。また、回折角2θが29.0°〜31.0°の範囲に回折強度が10〜15の第6回折ピークP6を有している。また、回折角2θが36.0°〜39.0°の範囲に回折強度が10〜15の第7回折ピークP7を有している。また、回折角2θが13.0°〜15.0°の範囲に回折強度が5〜10の第8回折ピークP8を有している。
【0029】
また、実施例1に係る蛍光体の粉末サンプルについて、測定により得られたX線回折パターンから、データ処理ソフト(Rapid Auto:Rigaku製)を用い、本実施の形態に係る蛍光体の結晶系、ブラベ格子、空間群、及び格子定数を以下の通り決定した。
結晶系:斜方晶
ブラベ格子:単純格子
空間群:P2/m
格子定数:
a=5.86Å
b=7.33Å
c=12.67Å
α=β=90° γ=90.22°
V=546.47Å
【0030】
その後、結晶構造解析ソフトを用い、原子座標を決定した。上記解析の結果、前述の結晶は、X線回折に広く用いられるX線回折データベースであるICDD(International Center for Diffraction Data)に登録されていない新規構造の結晶であることが判明した。
【0031】
各元素と原子座標との関係を表1に示す。
【表1】
【0032】
実施例1および後述する実施例2〜実施例34に係る蛍光体について、400nm励起時の発光色度(cx、cy)、ピーク波長λ2[nm]、発光スペクトルの半値幅[nm]、ストークスシフト[eV]を表2に示す。いずれの実施例においても、赤色発光し、大きなストークスシフトが確認された。
【表2】
【0033】
(実施例2)
実施例2に係る蛍光体は、KF・(Ca0.97,Sr0.01)KPO:Eu2+0.02で表される蛍光体である。実施例2に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、Sr(NO、(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.970:0.010:0.030:0.010(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例2に係る蛍光体を得た。
【0034】
(実施例3)
実施例3に係る蛍光体は、KF・(Ca0.982,Ba0.005,Mg0.005)KPO:Eu2+0.008で表される蛍光体である。実施例3に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、Ba(NO、MgCO、(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.982:0.005:0.005:0.020:0.004(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例3に係る蛍光体を得た。
【0035】
(実施例4)
実施例4に係る蛍光体は、KF・(Ca0.96,Sn0.005,Zn0.005)KPO:Eu2+0.03で表される蛍光体である。実施例4に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、SnO、ZnO、(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.960:0.005:0.005:0.040:0.015(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例4に係る蛍光体を得た。図3は、実施例4に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。なお、実施例4以降のX線回折パターンの測定は、サンプリング幅0.02°、スキャンスピード2.0°/minの条件で行った。図4は、実施例4に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0036】
(実施例5)
実施例5に係る蛍光体は、KF・(Ca0.985,Mn0.005)KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。実施例5に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、MnCO、(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.985:0.005:0.015:0.005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例5に係る蛍光体を得た。
【0037】
(実施例6)
実施例6に係る蛍光体は、KF・(Ca0.795Cd0.005)KPO:Eu2+0.2で表される蛍光体である。実施例6に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、CdCO、(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.795:0.005:0.205:0.100(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例6に係る蛍光体を得た。
【0038】
上述の実施例2〜実施例6に示すように、含有するCaイオンの一部を他の2価の金属イオン(MII)で置換しても、本実施の形態に係る赤色発光の蛍光体が得られる(表2参照)。また、上述の実施例2〜実施例6に係る蛍光体のように、一般式においてxが0.007≦x≦0.2の範囲であれば、本実施の形態に係る赤色発光の蛍光体が得られる(表2参照)。
【0039】
(実施例7)
実施例7に係る蛍光体は、K(F0.995,Cl0.005)・Ca0.99KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。実施例7に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、KCl、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.995:0.500:0.005:0.990:0.010:0.005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例7に係る蛍光体を得た。図5は、実施例7に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図6は、実施例7に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0040】
(実施例8)
実施例8に係る蛍光体は、K(F0.995,Br0.005)・Ca0.95KPO:Eu2+0.05で表される蛍光体である。実施例8に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO、KBr粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、KBr、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.995:0.500:0.005:0.950:0.050:0.025(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例8に係る蛍光体を得た。
【0041】
(実施例9)
実施例9に係る蛍光体は、K(F0.995,I0.005)・Ca0.96KPO:Eu2+0.04で表される蛍光体である。実施例9に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO、KI粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、KI、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.995:0.500:0.005:0.990:0.010:0.05(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例9に係る蛍光体を得た。
【0042】
上述の実施例7〜実施例9に示すように、F元素の一部を他のハロゲン元素で置換しても、本実施の形態に係る赤色発光の蛍光体が得られる(表2参照)。
【0043】
(実施例10)
実施例10に係る蛍光体は、(K0.995,Na0.005)F・Ca0.96KPO:Eu2+0.04で表される蛍光体である。実施例10に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、NaF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、NaF、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.995:0.500:0.005:0.960:0.040:0.020(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例10に係る蛍光体を得た。図7は、実施例10に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図8は、実施例10に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0044】
(実施例11)
実施例11に係る蛍光体は、(K0.995,Li0.005)F・Ca0.96KPO:Eu2+0.04で表される蛍光体である。実施例11に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、LiF、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.995:0.500:0.005:0.960:0.040:0.020(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例11に係る蛍光体を得た。
【0045】
(実施例12)
実施例12に係る蛍光体は、(K0.995,Rb0.005)F・Ca0.96KPO:Eu2+0.04で表される蛍光体である。実施例12に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、RbF、KCO粉末を150℃、2時間で乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、RbF、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.995:0.500:0.005:0.960:0.040:0.020(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例12に係る蛍光体を得た。
【0046】
(実施例13)
実施例13に係る蛍光体は、(K0.995,Cs0.005)F・Ca0.96KPO:Eu2+0.04で表される蛍光体である。実施例13に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、CsF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CsF、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.995:0.500:0.005:0.960:0.040:0.020(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例13に係る蛍光体を得た。
【0047】
上述の実施例10〜実施例13に示すように、Kイオンの一部を他の1価の金属イオンで置換しても、本実施の形態に係る赤色発光の蛍光体が得られる(表2参照)。
【0048】
(実施例14)
実施例14に係る蛍光体は、KF・Ca0.98K(P0.999,V0.001)O:Eu2+0.02で表される蛍光体である。実施例14に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、V、(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.980:0.001:0.018:0.010(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例14に係る蛍光体を得た。図9は、実施例14に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図10は、実施例14に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0049】
(実施例15)
実施例15に係る蛍光体は、KF・Ca0.98K(P0.999,Nb0.001)O:Eu2+0.02で表される蛍光体である。実施例15に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、Nb,(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.980:0.001:0.018:0.010(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例15に係る蛍光体を得た。
【0050】
(実施例16)
実施例16に係る蛍光体は、KF・Ca0.98K(P0.999,Ta0.001)O:Eu2+0.02で表される蛍光体である。実施例16に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、Ta,(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.980:0.001:0.018:0.010(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例16に係る蛍光体を得た。
【0051】
実施例17に係る蛍光体は、KF・Ca0.98K(P0.999,Sb0.001)O:Eu2+0.02で表される蛍光体である。実施例17に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、Sb,(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.980:0.001:0.018:0.010(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例17に係る蛍光体を得た。
【0052】
(実施例18)
実施例18に係る蛍光体は、KF・Ca0.98K(P0.999,Bi0.001)O:Eu2+0.02で表される蛍光体である。実施例18に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、Bi,(NHHPO、Euを化学量論比1.000:0.500:0.980:0.001:0.018:0.010(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例18に係る蛍光体を得た。
【0053】
(実施例19)
実施例19に係る蛍光体は、KF・Ca0.981.001(P0.999,Si0.001)O:Eu2+0.02で表される蛍光体である。実施例19に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、SiO,(NHHPO、Euを化学量論比1.0000:0.5005:0.9800:0.001:0.0180:0.0100(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例19に係る蛍光体を得た。本実施例では、5価の金属イオンMであるPイオンの一部を4価の金属イオンであるSiイオンに置換するとともに、価数のバランスを取るために1価の金属イオンであるKイオンの組成を増やしている。
【0054】
上述の実施例14〜実施例19に示すように、Pイオンの一部を他の5価の金属イオンで置換しても、本実施の形態に係る赤色発光の蛍光体が得られる(表2参照)。また、Pイオンの一部を4価の金属イオンおよび1価の金属イオンで置換してもよい。
【0055】
(実施例20)
実施例20に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Sc3+0.001で表される蛍光体である。実施例20に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Scを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例20に係る蛍光体を得た。
【0056】
(実施例21)
実施例21に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Y3+0.001で表される蛍光体である。実施例21に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Yを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例21に係る蛍光体を得た。
【0057】
(実施例22)
実施例22に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,La3+0.001で表される蛍光体である。実施例22に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Laを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例22に係る蛍光体を得た。
【0058】
(実施例23)
実施例23に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Pr3+0.001で表される蛍光体である。実施例23に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Prを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例23に係る蛍光体を得た。
【0059】
(実施例24)
実施例24に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Nd3+0.001で表される蛍光体である。実施例24に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Ndを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例24に係る蛍光体を得た。
【0060】
(実施例25)
実施例25に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Sm3+0.001で表される蛍光体である。実施例25に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Smを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例25に係る蛍光体を得た。
【0061】
(実施例26)
実施例26に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Gd3+0.001で表される蛍光体である。実施例26に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Gdを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.030:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例26に係る蛍光体を得た。
【0062】
(実施例27)
実施例27に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Tb3+0.001で表される蛍光体である。実施例27に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Tbを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例27に係る蛍光体を得た。
【0063】
(実施例28)
実施例28に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Dy3+0.001で表される蛍光体である。実施例28に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Dyを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.030:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例28に係る蛍光体を得た。
【0064】
(実施例29)
実施例29に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Ho3+0.001で表される蛍光体である。実施例29に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Hoを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.030:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例29に係る蛍光体を得た。
【0065】
(実施例30)
実施例30に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Er3+0.001で表される蛍光体である。実施例30に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Erを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.030:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例30に係る蛍光体を得た。
【0066】
(実施例31)
実施例31に係る蛍光体は、KF・Ca0.97KPO:Eu2+0.029,Yb2+0.001で表される蛍光体である。実施例31に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Ybを化学量論比1.0000:0.5000:0.9700:0.030:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例31に係る蛍光体を得た。図11は、実施例31に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図12は、実施例31に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0067】
(実施例32)
実施例32に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Lu3+0.001で表される蛍光体である。実施例32に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、Luを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.030:0.0145:0.0005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例32に係る蛍光体を得た。
【0068】
上述の実施例20〜実施例32に示すように、Eu2+イオンの一部を他の希土類元素に置換しても、本実施の形態に係る赤色発光の蛍光体が得られる(表2参照)。
【0069】
(実施例33)
実施例33に係る蛍光体は、0.65KF・Ca0.99KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。実施例33に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.650:0.500:0.990:0.010:0.005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例33に係る蛍光体を得た。
【0070】
(実施例34)
実施例34に係る蛍光体は、1.35KF・Ca0.99KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。実施例34に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比1.350:0.500:0.990:0.010:0.005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例34に係る蛍光体を得た。
【0071】
上述の実施例33、実施例34に示すように、一般式のaは0.6≦a≦1.4の範囲であれば、本実施の形態に係る赤色発光の蛍光体が得られる(表2参照)。
【0072】
なお、上述の実施例1〜34に係る蛍光体の組成についてはまとめて表3に示す。
【表3】
【0073】
(実施例35)
実施例35に係る蛍光体は、KF・Ca0.970.999PO:Eu2+0.029,Ce3+0.001で表される蛍光体である。実施例35に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、(NHHPO、Eu、CeOを化学量論比1.0000:0.4995:0.9700:0.0300:0.0145:0.001(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例35に係る蛍光体を得た。図13は、実施例35に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図14は、実施例35に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0074】
以下の実施例36〜40は、Caイオンの一部を他の2価の金属イオン(MII=Sr,Ba,Mg)で置換する量(固溶量)、あるいは、Kイオンの一部を他の1価の金属イオン(M=Li,Ag)で置換する量を、実施例2〜6と比較して増やした実施例である。
【0075】
(実施例36)
実施例36に係る蛍光体は、KF・(Ca0.79,Sr0.200)KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。つまり、Srの固溶量が0.2molである。実施例36に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、SrCO、(NHHPO、Euを化学量論比1.00:0.50:0.79:0.20:0.21:0.005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例36に係る蛍光体を得た。図15は、実施例36に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図16は、実施例36に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0076】
(実施例37)
実施例37に係る蛍光体は、KF・(Ca0.94,Ba0.05)KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。つまり、Baの固溶量が0.05molである。実施例37に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、BaCO、(NHHPO、Euを化学量論比1.00:0.50:0.94:0.20:0.06:0.005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例37に係る蛍光体を得た。図17は、実施例37に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図18は、実施例37に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0077】
(実施例38)
実施例38に係る蛍光体は、KF・(Ca0.79,Mg0.200)KPO:Eu2+0.01で表される蛍光体である。つまり、Mgの固溶量が0.2molである。実施例38に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、CaHPO、MgCO、(NHHPO、Euを化学量論比1.00:0.50:0.79:0.20:0.21:0.005(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例38に係る蛍光体を得た。図19は、実施例38に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図20は、実施例38に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0078】
(実施例39)
実施例39に係る蛍光体は、(K0.90,Li0.10)F・Ca0.96KPO:Eu2+0.04で表される蛍光体である。つまり、Liの固溶量が0.1molである。実施例39に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、LiF、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.90:0.500:0.10:0.960:0.040:0.020(mol)の割合となるように精秤し、アルミナ乳鉢中で粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例39に係る蛍光体を得た。図21は、実施例39に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図22は、実施例39に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0079】
(実施例40)
実施例40に係る蛍光体は、(K0.90,Ag0.10)F・Ca0.96KPO:Eu2+0.04で表される蛍光体である。つまり、Agの固溶量が0.1molである。実施例40に係る蛍光体は以下の方法で製造される。はじめに、KF、KCO粉末を150℃、2時間乾燥する。そして、乾燥Nを充填したグローブボックス内で、KF、KCO、AgF、CaHPO、(NHHPO、Euを化学量論比0.90:0.500:0.10:0.960:0.040:0.020(mol)の割合となるように精秤し、各原料とアルミナボールをアルミナポットに入れ、光を遮蔽する容器の中に載置する。そして、容器内にアルゴンを流しながら自公転ミキサーで各原料を粉砕混合し、原料混合粉末を得た。その後は、実施例1と同様の処理を行い実施例40に係る蛍光体を得た。図23は、実施例40に係る蛍光体のX線回折パターンを示す図である。図24は、実施例40に係る蛍光体の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図である。
【0080】
なお、上述の実施例35〜40に係る蛍光体の組成についてはまとめて表4に示す。
【表4】
【0081】
本実施の形態に係る蛍光体は、窒素を必須元素としない新規な蛍光体である。そのため、脱酸素雰囲気、高温高圧等の特殊な環境で製造する必要がなく、低コストの蛍光体を実現できる。
【0082】
また、励起スペクトルのピーク波長が420nm以下であり、励起スペクトルの励起端が450nm以下であるため、他の色の蛍光体が発する光を吸収しにくくなり、例えば、他の色の蛍光体が発する光との混色により白色光を実現する装置に適用した場合の色度のばらつきを抑えることができる。
【0083】
また、本実施の形態に係る蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が600〜700nmの範囲であり、励起スペクトルのピーク波長が420nm以下であり、励起スペクトルの励起端が450nm以下である。これにより、例えば、青色蛍光体や緑色蛍光体と併用して白色光を実現する場合であっても、青色や緑色の波長の光の吸収が少なく、色度調整が容易となる。
【0084】
[発光モジュール]
次に、本実施の形態に係る赤色蛍光体を用いた発光モジュールの一例について説明する。本実施の形態に係る赤色蛍光体は、上述のように励起スペクトルのピーク波長が420nm以下であり、紫外線または短波長可視光で励起される蛍光体である。そこで、本実施の形態に係る発光モジュールは、紫外線または短波長可視光を発する発光素子と、上述の赤色蛍光体と、紫外線または短波長可視光で励起され、赤色と異なる色を発する他の蛍光体と、を備える。
【0085】
発光素子は、例えば、紫外線又は短波長可視光を発光するLEDやLD等を用いることができる。具体例として、InGaN系の化合物半導体からなる発光素子を挙げることができる。InGaN系の化合物半導体は、Inの含有量によって発光波長域が変化する。Inの含有量が多いと発光波長が長波長となり、少ない場合は短波長となる傾向を示すが、ピーク波長が400nm付近となる程度にInが含有されたInGaN系の化合物半導体が発光における量子効率が最も高いことが確認されており、好適である。
【0086】
他の蛍光体は、発光スペクトルのピーク波長が、本実施の形態に係る赤色蛍光体の励起スペクトルのピーク波長よりも長いものが好ましい。これであれば、他の色の蛍光体が発する光が赤色蛍光体で吸収され、赤色に変換される割合が減少する。本実施の形態に係る赤色蛍光体は、従来の赤色蛍光体よりも励起スペクトルのピーク波長が短波長側にあるため、青色蛍光体(ピーク波長435〜495nm程度)や緑色蛍光体(ピーク波長495〜570nm程度)、黄色蛍光体(ピーク波長570〜590nm程度)といった蛍光体を併用しても、他の蛍光体が励起されて発する光が赤色蛍光体で再度吸収される事態が低減できる。
【0087】
以上、本発明を上述の実施の形態や各実施例を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態や各実施例に限定されるものではなく、実施の形態や各実施例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態や各実施例における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態や各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
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