(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
浮魚礁は、基本的に魚礁本体と、海底に沈設されるアンカー体と、魚礁本体とアンカー体とを繋ぐ係留索とから構成されているため、係留索が何らかの理由により破断すると、魚礁本体が流出することになる。流出した魚礁本体が海面上を漂流し続けると、船舶の航行に危険を及ぼしかねず、また海洋環境的にも問題となる。
【0003】
ここで、浮魚礁のうち、海中の中層領域に浮遊状態で係留される中層浮魚礁は、その耐用年数が約10年と非常に長期間であり、途中、海上に引き揚げて魚礁本体を点検することもあるが、基本的には、海中において10年間係留されたままの状態である。また、漂流通知装置の発信機から発信される電波は、音波と異なり、海中では遠距離まで届かない。
【0004】
そのため、中層浮魚礁には、海中の係留位置では電波を発信せず、係留が解除されて海面に浮上した際に発信作動する電波発信部を備え、衛星を介して流出や漂流位置を管理者に通知する漂流通知装置が取り付けられる(例えば、特許公報1参照。)。
【0005】
この特許文献1に記載された中層浮魚礁の漂流通知装置は、魚礁本体が流出して当初の係留位置から離れた位置で海面に浮上した際に直ちに管理者に通知できるよう、海面上への浮上時に作動する圧力センサーやフロートなどのスイッチが設けられている。
【0006】
このスイッチは、浮上する時の圧力変化をフロートの浮沈変化によりONに切り替わった際に、電波発信器が発信作動し所定間隔ごとに電波が発信される。尚、同装置には受信機も取り付けられ、管理者側が発信した信号によって、当初設定した電波発信間隔を短縮させることができる。
【0007】
このように従来の中層浮魚礁用漂流通知装置は、電波を受発信する通信機器や各種スイッチなど複数の機器から構成され、それら多くの機器を搭載する容器は、海中の中層領域における水圧にも耐え、また、耐食性にも優れたステンレス製やチタン製のものが使用される。しかも、多くの機器を搭載するためにその容器の外形は複雑な構造をなし、パーツごとに溶接やSUS製のボルト等で接合される(例えば、特許文献2参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述の特許文献1,2に開示された従来の中層浮魚礁に用いる漂流通知装置は、上述したように長時間、常時深い海中に没した状態であるため、この数年、耐用年数が経過して中層浮魚礁を回収した際に、容器だけでなくSUS製のボルト自体も腐食が進行し、接合部分から海水が容器内に浸入して通信機器等の各種電子機器が故障している、という問題が新たに発生している。
【0010】
特に、特許文献2に開示された漂流通知装置では、ブイの内部にGPS装置を搭載するためのGPSケースとベースとが、防水パッキンを介在させて防水コネクタで接合されていることから、その防水コネクタが腐食することによって接続面から海水が浸入する恐れがある。
【0011】
また、漂流通知装置内の各種電子機器が故障する理由としては、海水の浸入だけでなく、漂流通知装置を組み立てる際の振動や熱等の影響なども一因として考えられている。
【0012】
そして、漂流通知装置は10年もの長期間、電波が通らない海中に存在するため、各種電子機器がその10年の耐用年数期間内に壊れた場合、管理者にはその事が分からない。そのため、係留索が破断して魚礁本体が漂流した際に、漂流通知装置が故障していれば、管理者は漂流した事実さえも知ることなく、漂流し続ける魚礁本体の位置も特定できない。
【0013】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、魚礁本体に取り付ける漂流通知装置が常時海中に没した状態であっても海水が浸入せず、故障が発生し難い漂流通知装置付き中層浮魚礁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来技術の問題点を解決するため、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁は、海底に沈設されたアンカー体に係留索を介し係留され、海中の中層領域に浮遊する魚礁本体に漂流通知装置が取り付けられた漂流通知装置付き中層浮魚礁であって、前記漂流通知装置は、樹脂製フロートの内部に、前記魚礁本体の漂流を通知するための通信処理部と、その通信処理部に対し電源電流を供給する電源部とを備え、前記樹脂製フロートは、一対の略半球状部材の小口面同士が当該一対の略半球状部材の各頂点を通る回転軸を中心とした回転時の摩擦熱による熱溶着によって一体化されて完全に閉塞されると共に、魚礁本体が浮遊する水深位置における水圧に耐え得る高耐圧樹脂からなり、前記通信処理部は、前記樹脂製フロートの内径よりも小さい平板状の取付板を介して前記電源部の上部に接続され、前記電源部は、その重心が前記回転軸上に位置する状態で前記一方の略半球状部材の内周面に固定されていることを特徴とする。
ここで、少なくとも、前記電源部と前記通信処理部が取り付く前記取付板とは、当該電源部が固定される前記一方の略半球状部材の内部領域内にそれぞれ納まるように備えられていると良い。
また、前記電源部は、その上面中央に当該電源部が収まる収容部を有すると共に、外側面が前記一方の略半球状部材の内周面に当接する曲面に形成された電源部支持部材を介して前記一方の略半球状部材の内周面に固定されていると良い。
また、前記取付板は、前記電源部の外形とほぼ同じ大きさであると良い。
また、前記通信処理部は、GPS衛星からGPS信号を受信してGPS測位データを生成するGPS受信機と、通信衛星を介して衛星通信を行う衛星通信部と、前記GPS受信機と前記衛星通信部とを制御する制御部とを有し、前記制御部は、所定時間毎に前記衛星通信部を起動して前記通信衛星と接続できるか否かを判定し、前記衛星通信部が前記通信衛星と接続できない場合は、前記GPS受信機を起動しないように制御すると良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁では、漂流通知装置は、樹脂製フロートの内部に少なくとも通信処理部と電源部とを備えて構成され、樹脂製フロートは、一対の略半球状部材の小口面同士を当該一対の略半球状部材の各頂点を通る回転軸を中心とした回転時の摩擦熱による熱溶着によって一体化して完全に閉塞すると共に、魚礁本体が浮遊する水深位置における水圧に耐え得る高耐圧樹脂からなる。
そのため、中層浮魚礁が長期間に亘って海中の中層領域を浮遊する状況下においても、漂流通知装置の内部への海水の浸入を完全に防ぐことができ、通信処理部や電源部の故障を発生し難くすることができる。
さらに、通信処理部は、電源部の上部に樹脂製フロートの内径よりも小さい平板状の取付板を介して接続され、電源部の重心が熱溶着時の回転軸上に位置する状態で一方の略半球状部材の内周面に固定されている。
そのため、通信処理部やそれが取り付く取付板は、一対の略半球状部材の内周面に接触しないので、熱溶着時に一対の略半球状部材の溶着部分で発生する熱が直接伝達されず、熱による通信処理部に対する悪影響を抑えることが可能となり、漂流通知装置の故障を発生し難くすることができる。
また、一方の略半球状部材と他方の略半球状部材とを熱溶着する時や、その熱溶着時に小口面の溶着部分に発生するバリを削り取る時など漂流通知装置を製造する際に、一対の略半球状部材の回転軸と電源部の重心とが一致しているので、回転させた際に生じるブレや振動を極力低減させることが可能となり、これらブレや振動による通信処理部や電源部に対する悪影響を低減させることができるため、この点でも漂流通知装置の故障を発生し難くすることができる。
以上のことより、本発明によれば、漂流通知装置が取り付けられた魚礁本体が長期間に亘って海中の中層領域を浮遊する状況下においても、漂流通知装置内に海水が浸入することなく、かつ、故障が発生し難い漂流通知装置付き中層浮魚礁が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の構成例を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の使用例を示す正面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置周囲の断面を拡大して示す要部拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置を設置基台に設置した状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置を設置基台に設置した状態を示す正面図である。
【
図6】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置を設置基台に設置した状態を示す側面図である。
【
図7】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の設置基台における設置状態を示す部分断面図である。
【
図8】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の内部構造を詳細に示す断面図である。
【
図9】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の外観を示す斜視図である。
【
図10】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の概略内部構造を示す分解斜視図である。
【
図11】本発明に係る実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁の漂流通知装置の樹脂フローを構成する上側略半球状部材と下側略半球状部材とを熱溶着する状態を示す斜視図である。
【
図12】本発明に係る実施形態2の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の概略内部構造を示す分解斜視図である。
【
図13】本発明に係る実施形態2の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の内部構造を詳細に示す断面図である。
【
図14】本発明に係る実施形態3の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の内部構造を詳細に示す断面図である。
【
図15】本発明に係る実施形態3の漂流通知装置付き中層浮魚礁の要部である漂流通知装置の概略内部構造を示す分解斜視図である。
【
図16】本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁における漂流通知装置の制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁の実施形態について説明する。尚、以下では、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁(以下、単に「中層浮魚礁」と略す場合がある。)として、海底に沈設されたシンカーに係留索を介して海面下の中層に浮遊状態で係留される中層浮魚礁を一例に説明するが、本発明では、以下の実施形態に限定されるものではなく、海面下の比較的浅い層または深層に係留した浮魚礁でも良く、要は、長期間に亘り魚礁本体が海中に浮遊するものであれば適用可能であり、本発明の技術思想内での種々の変更実施ができるものである。
【0018】
実施形態1.
本発明に係る実施形態1の中層浮魚礁1は、
図1および
図2に示すように、海底6に沈設されたアンカー体2に係留索3を介し係留され海中の中層領域に浮遊する魚礁本体4に漂流通知装置5が取り付けられて構成されている。尚、
図1では、海底や海中の図示は省略している。
【0019】
魚礁本体4は、例えば、
図1や
図3に示すように、繊維強化プラスチック(FRP)等の部材で筒状に形成されたメッシュ体41と、そのメッシュ体41の周囲を所定間隔で上下方向に配置された複数の補強リング体42で構成されると共に、その上部には、魚礁本体4を海中で浮かすための多数のフロート43が複数の支持板44を介して多層的に設けられている。
【0020】
最上位の支持板44のほぼ中央には、様々な機器を取り付けるための取付け架台45が設けられており、漂流通知装置5は、例えば、この取付け架台45の内部に設置基台46を介して固定される。尚、取付け架台45と設置基台46とは、ステンレス(SUS)製のボルトなどによって固定される。
【0021】
設置基台46は、
図4〜
図7に示すように、漂流通知装置5の外径よりも小さい内径を有する管状部材からなり、その下端部には、取付け架台45に固定するためのボルト孔46a1が複数形成された固定用フランジ部46aが設けられていると共に、周壁部には、海水を設置基台46の内部に流入させるための貫通孔46fが複数形成されている。尚、設置基台46の内部には、漂流通知装置5を固定するための漂流通知装置取付板46bが設けられており、漂流通知装置5は、U字ボルト46cおよびナット46d等を介して漂流通知装置取付板46bに固定される。また、符号の46eは、設置基台46を移動させる際のハンドルである。
【0022】
漂流通知装置5は、
図8〜
図10に示すように、一対の略半球状部材である下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとを熱溶着によって一体化した樹脂製フロート51を容器とし、その内部には、GPS衛星からGPS信号を受信してGPS測位データを生成するGPS受信機52aや、通信衛星を介した衛星通信によりデータの送受信を行う衛星通信部52bおよび制御部52c等から構成される通信処理部52と、その通信処理部52に対し電源電流を供給する電池53aが納められた電源部53とが内蔵されている。
【0023】
尚、
図8および
図10において、符号の54は、電源部53に接続されるGPS受信機52aや衛星通信部52bおよび制御部52cが搭載された通信処理部52の基板を取り付けるための取付板である。また、符号の51a4は、固定孔51a5を介して樹脂製フロート51を他の物に固定するために、予め下側略半球状部材51aに一体成形された取付片であり、ここでは、前述したように、設置基台46の漂流通知装置取付板46bへの固定に用いる。さらに、符号の51a6は、下側略半球状部材51aの頂点に位置する突起部である。
【0024】
樹脂製フロート51は、魚礁本体4が浮遊する水深位置における水圧に耐え得る繊維強化プラスチックやABS樹脂等の高耐圧樹脂からなり、その樹脂製フロート51を構成する下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとの小口面51a1,51b1同士を後述する
図11に示すように熱溶着により接合して一体化されている。
【0025】
ここで、下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとを熱溶着する際には、
図10に示すように、予めその内部に通信処理部52や電源部53等をセットしておく必要がある。
【0026】
そのため、実施形態1の漂流通知装置5では、
図8に示すように、通信処理部52が取り付いた取付板54を上部に接続させた状態の電源部53を予め、下側略半球状部材51aの内周面51a3に接着剤等によって固定しておく。先に電源部53のみを下側略半球状部材51aの内周面51a3に固定させ、その後に取付板54を接続しても良い。また、電源部53を下側略半球状部材51aの内周面51a3にセットした後、電源部53と内周面51a3との間を樹脂材等で充填固化させて固定しても良い。尚、電源部53を固定する際には、その電源部53の重心が、後述する一対の略半球状部材の各頂点を通る回転軸上に位置する状態で固定する。
【0027】
その後、
図9や
図10に示すように、下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとの小口面51a1,51b1同士を突き合わせ、
図11に示すように、下側略半球状部材51aおよび上側略半球状部材51bの各頂点51a2,51b2を通る回転軸51cを中心に、電源部53が固定された下側略半球状部材51aはそのままの状態で上側略半球状部材51bのみを回転させ、その回転時に発生する摩擦熱によって小口面51a1,51b1同士が熱溶着して一体化することにより、内部に海水が浸水しない完全に閉塞された内部空間を有する漂流通知装置5となる。
【0028】
尚、熱溶着させた時、小口面51a1,51b1の溶着部分にはバリが発生するため、熱溶着後には、回転軸51cを中心として樹脂製フロート51全体をゆっくり回転させて図示しない工具等でバリ取りを行う。
【0029】
通信処理部52は、
図8や
図10に示すように、GPS受信機52aや衛星通信部52b、制御部52c等の基板が、平面視円形の平板状であって、樹脂製フロート51の内径よりも小さい取付板54に取り付けられ、通信処理部52および取付板54が一対の略半球状部材の内周面51a3,51b3に接触しないように電源部53の上部に接続される。尚、少なくとも、電源部53と基板が取り付く取付板54については、
図8に示すような下側略半球状部材51aの内部領域内に納まる位置や大きさにしておくことが望ましい。
【0030】
GPS受信機52aは、GPS衛星からGPS信号を受信して位置情報であるGPS測位データを生成するものである。衛星通信部52bは、少なくとも、GPS受信機52aが生成した位置情報であるGPS測位情報を1時間毎や2時間毎の所定時間毎に通信衛星等を介し陸上の管理局等に向けて発信する機能や、その管理局から発信される動作制御信号を通信衛星等を介して受信する機能を備えている。また、制御部52cは、管理局から受信した動作制御信号に基づいて位置情報の発信間隔を変更する機能や、各種情報の記憶および通信処理部52全体の動作を制御する機能を備えている。尚、これら以外の機能を備える機器(基板)を通信処理部52として含めても良い。
【0031】
また、取付板54等が接続される電源部53は、通信処理部52に対し電源電流を供給する所定容量の乾電池や蓄電池等の電池53aと、その電池53aを収納する電池ケース53bとから構成されている。尚、電池ケース53bは、省略しても良い。
【0032】
ここで、本発明の漂流通知装置5には、従来のような流出した魚礁本体4が海面上に浮上した時に作動するスイッチは設けていない。すなわち、中層浮魚礁1が海中の中層領域に浮遊状態で係留されている長期間、陸上の管理局等は受信できないものの、常に通信処理部52から所定時間毎に電波を発信し続けており、万が一、魚礁本体4が流出して海面上に浮上した時に初めて陸上の管理局等との間で受発信が可能となる。
【0033】
よって、電池53aの所定容量としては、最低でも中層浮魚礁1の耐用年数の期間、通信処理部52を構成するGPS受信機52aや衛星通信部52b、制御部52cが動作し続けるのに十分な容量とする。尚、電源部53と通信処理部52との間に非接触型のリードスイッチ(図示せず)を設けておき、中層浮魚礁1を海中に投入する際に、樹脂製フロート51の外部でのマグネットの動作行為によってスイッチがONに切り替えるようにしておけば、海中投入までの無駄な電池53aの消費を抑えることができる。
【0034】
従って、実施形態1の漂流通知装置付き中層浮魚礁1によれば、漂流通知装置5は、下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとの小口面51a1,51b1同士が回転軸51cを中心とした回転時の摩擦熱による熱溶着によって一体化されて完全に閉塞された内部空間を有する樹脂製フロート51を容器とし、その内部に、魚礁本体4の漂流を通知する位置情報等の電波信号を受発信する通信処理部52と、その通信処理部52に対し電源電流を供給する電源部53とを備える構成にしたため、中層浮魚礁1が長期間に亘って海中の中層領域を浮遊する状況下においても、漂流通知装置5の内部に海水が全く浸入することはなく、海水侵入による通信処理部52の基板や電源部53等の故障を無くすことができる。
【0035】
さらに、通信処理部52が取り付く樹脂製フロート51の内径よりも小さい平板状の取付板54を電源部53の上部に接続させると共に、電源部53を、その重心が熱溶着させる時の回転軸51c上に位置する状態で下側略半球状部材51aの内周面51a3に固定されているため、下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとを熱溶着する際や溶着部分のバリを削り取る際に、ブレや振動を極力低減させることが可能となる。
【0036】
しかも、通信処理部52を構成するGPS受信機52aや衛星通信部52b、制御部52cの基板等が取り付けられる取付板54が、樹脂製フロート51の内周面51a3,51b3に接触しないので、熱溶着時に下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとの溶着部分で発生する熱も取付板54に直接伝達されない。これらの点より、振動や熱等による通信処理部52等の故障を発生し難くすることができる。
【0037】
また、少なくとも、電源部53と通信処理部52の基板が取り付く取付板54とを、電源部53が固定される下側略半球状部材51aの内部領域内にそれぞれ納まるような構成している。そのため、重量がある電源部53の重心位置を回転軸51c上において低い位置(下側略半球状部材51aの頂点51a2側に寄った位置)に設定されるので、熱溶着時等のブレや振動をさらに低減させることができ、漂流通知装置5の故障をさらに発生し難くすることができる。
【0038】
さらに、本発明の漂流通知装置5は、その内部が完全に閉塞された空間であるため、万が一、魚礁本体4が流出して海面上を漂流し続けた場合、その内部空間が太陽光の熱によってかなりの高温状態になり、その温度によって通信処理部52等が故障することも予想される。しかしながら、漂流通知装置5を魚礁本体4に固定させるための設置基台46の周壁部には、複数の貫通孔46fが形成され設置基台46の内部に海水が流入するようになっているため、魚礁本体4が漂流しても設置基台46の内部の下側略半球状部材の外周囲には海水が存する状況にある。よって、少なくとも、電源部53と通信処理部52の基板が取り付く取付板54とを、下側略半球状部材51aの内部領域内にそれぞれ納まる構成にしておけば、下側略半球状部材51aを介してそれら基板等が海水によって冷却されるため、漂流時における漂流通知装置5の故障も発生し難くすることができる。
【0039】
実施形態2.
次に、実施形態2の漂流通知装置付き中層浮魚礁1について説明する。実施形態2の漂流通知装置5は、上記実施形態1の漂流通知装置5とは、電源部53が、中央に電源部53の電池ケース53bが収まる収容部55aを有する電源部支持部材55を介して下側略半球状部材51aの内周面51a3に接着剤等によって固定される点が異なるのみで、他の部分は実施形態1と同じである。
【0040】
図12は、実施形態2の漂流通知装置付き中層浮魚礁1の要部である漂流通知装置5の概略内部構造を示す分解斜視図、
図13は、実施形態2の漂流通知装置付き中層浮魚礁1の要部である漂流通知装置5の内部構造を詳細に示す断面図である。
【0041】
電源部支持部材55は、
図12および
図13に示すように、上面部55bの中央に電池ケース53bが収まる有底の収容部55aを有すると共に、外側面が下側略半球状部材51aの内周面51a3と当接する曲面部55cが形成されたほぼ半球状の形態からなり、曲面部55cと下側略半球状部材51aの内周面51a3とは接着剤等により接着固定される。尚、電源部支持部材55と電池ケース53bとは、必要に応じてボルト55d等で固定させても良い。
【0042】
さらに、電源部支持部材55は、
図13に示すように、その上面部55bが、通信処理部52が取り付いた取付板54に接触しないような高さに設定されている。
【0043】
実施形態2の漂流通知装置付き中層浮魚礁1によれば、漂流通知装置5を以上のような構成にしたことにより、電源部53の重心をより正確に回転軸51c1上に位置する状態で下側略半球状部材51aの内周面51a3に対して確実に固定させることができる。その結果、電源部53の正確な位置出しが容易となり、下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとを熱溶着する際や溶着部分のバリを削り取る際に、ブレや振動をさらに低減させることができるため、漂流通知装置5の故障をさらに発生し難くすることができる。
【0044】
尚、この実施形態2の漂流通知装置5では、
図12や
図13に示すように、電源部支持部材55は中実の一体の物として説明したが、特段これに限定されるものではなく、複数個に分割されたものを組み合わせることで上面部55bの中央に電池ケース53bが収まる収容部55aを形成した電源部支持部材55でも良く、また内部が中空の電源部支持部材55でも良いし、さらには後述する実施形態3の電源部支持部材55’のように複数枚の板状部材により固定しても良い。
【0045】
実施形態3.
次に、実施形態3の漂流通知装置付き中層浮魚礁1について説明する。
【0046】
図14は、実施形態3の漂流通知装置付き中層浮魚礁1の要部である漂流通知装置5の内部構造を詳細に示す断面図、
図15は、その漂流通知装置5の概略内部構造を示す分解斜視図である。
【0047】
図14に示すように、実施形態3の漂流通知装置5では、GPS受信機52aや衛星通信部52b、制御部52cを搭載した基板等が取り付けられる取付板54’の大きさを、上記実施形態1,2の取付板54よりもさらに小さくして、電源部53の外形とほぼ同じ大きさにしている。
【0048】
そのため、実施形態3の漂流通知装置5の取付板54’は上記実施形態1,2の取付板54と同様に樹脂製フロート51の内周面に接触しないので、熱溶着時に下側略半球状部材51aと上側略半球状部材51bとの溶着部分で発生する熱が取付板54’に直接伝達されることがなく、振動や熱等による通信処理部52等の故障を発生し難くすることができる。
【0049】
特に、実施形態3の漂流通知装置5では、上記実施形態1,2の漂流通知装置5とは異なり、GPS受信機52aや衛星通信部52b、制御部52cを搭載した基板等が取り付けられる取付板54’が、上側略半球状部材51bの内部領域内に納まる位置に設けられているものの、その大きさは電源部53の外形とほぼ同じであるため、取付板54’において電源部53からはみ出す部分がなく、しかも、その周縁部分で電源部53と固定されるので、実施形態1,2の漂流通知装置5よりも熱溶着時等のブレや振動をさらに低減させることができ、漂流通知装置5の故障を発生し難くすることができる。
【0050】
また、実施形態3の漂流通知装置5では、
図15に示すように、電源部53の電池ケース53bを3枚の電源部支持部材55’によって下側略半球状部材51aの内周面51a3に接着剤等によって固定している。
【0051】
そのため、実施形態2の漂流通知装置5と同様に、電源部53の重心をより正確に回転軸51c1(
図11参照。)上に位置させた状態で下側略半球状部材51aの内周面51a3に固定することができるので、熱溶着時等のブレや振動をさらに低減させることができ、漂流通知装置5の故障をさらに発生し難くすることができる。尚、ここでは、3枚の電源部支持部材55’で説明したが、電源部支持部材55’の枚数は、特に限定されるものではなく、2枚や4枚など複数枚であれば良い。
【0052】
次に、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1において、漂流通知装置5の通信処理部52の動作の一例を説明する。
【0053】
図16は、漂流通知装置5における制御部52cの動作を示すフローチャートである。なお、
図16に示す動作は、通信処理部52が陸上の管理局等からの制御信号によって動作を変更する前の一例であって、通信処理部52は、陸上の管理局等からの制御信号によって
図16に示す動作とは異なる動作も実行できる。
【0054】
図16に示すように、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1では、漂流通知装置5の電源をオンにして、GPS受信機52aや衛星通信部52b等の正常動作確認後に海中に沈めるときには、通信処理部52は所定時間T1のスリープ動作に入り(ステップS110)、衛星通信部52bおよびGPS受信機52aは停止する。尚、ステップS110における所定時間T1は、漂流通知装置付き中層浮魚礁1が海中に係留された状態を想定しているため、数時間から1日程度の時間を設定しておく。
【0055】
そして所定時間T1が経過してスリープ動作が解除された後、すなわち漂流通知装置付き中層浮魚礁1が海中に係留された状態において、制御部52cは、まず衛星通信部52bを起動し(ステップS120)、数分程度の所定時間T2内に通信衛星と接続できるか否かを判定する(ステップS130)。
【0056】
ここで、起動後、所定時間T2内に衛星通信部52bが通信衛星と接続できない場合には(ステップS130“NO”)、漂流通知装置付き中層浮魚礁1が係留索3によってアンカー体2に係留され海中に浮遊しているものと判定される。これは、衛星通信部52bから発信される電波が海中では通信衛星に届かないためである。
【0057】
上記判定後、制御部52cは、海中制御モードに入り、再度ステップS110の処理に戻って所定時間T1のスリープ動作を行って衛星通信部52bを停止させ、所定時間T1が経過してスリープ動作が解除された後はステップS120及びステップS130が実行され、以後繰り返される。
【0058】
これらのことから、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1は、スリープ状態にある所定時間T1が経過する毎に衛星通信部52bを起動して、数分程度の所定時間T2内で通信衛星への接続動作に入り、その接続可否から、漂流通知装置付き中層浮魚礁1が海中で係留索3によりアンカー体2に係留されている状態であるか、あるいは係留索3等が切断され浮上して海上を漂流している状態であるかの判定を通信処理部52だけで行うため、従来のような海面に浮上した際に作動する圧力センサーやフロート等が不要となり、その分だけ製造コストを低減できると共に、故障の発生を低減することができる。
【0059】
しかも、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1では、所定時間T2内に衛星通信部52bが通信衛星と接続できない場合(中層浮魚礁1が正常に海中で係留されている場合)に海中制御モードを実行して、消費電力の大きいGPS受信機52aを起動させないため、電源部53の電池53aの消耗を抑えることができる。
【0060】
一方、衛星通信部52bが所定時間T2内に通信衛星と接続できた場合には(ステップS130“YES”)、漂流通知装置付き中層浮魚礁1は、係留索3が切断等されて海上に浮上したものと判定される。これは、中層浮魚礁1が海中から海上に浮上することで、届かなかった電波が衛星通信部52bと通信衛星との間で通信可能になるためである。
【0061】
上記判定後、制御部52cは、海上(浮上)制御モードに入り、まず衛星通信部52bを停止する(ステップS140)。
【0062】
そして、制御部52cは、浮上したことを通知するためのメッセージを作成する(ステップS150)。
【0063】
その後、制御部52cは衛星通信部52bを起動して(ステップS160)、ステップS150の処理によって作成した浮上メッセージを衛星通信により陸上の管理局等へ送信し(ステップS170)、その浮上メッセージの送信が成功したか否か、すなわち陸上の管理局等に浮上メッセージが届いたか否かを判定する(ステップS180)。
【0064】
そして、浮上メッセージの送信に成功した場合(ステップS180“YES”)、制御部52cは衛星通信部52bを停止して(ステップS190)、所定時間T3のスリープ動作に入る(ステップS200)。
【0065】
尚、海上(浮上)制御モード時のステップS200の所定時間T3は、前述したように係留索3が切断等されて、漂流通知装置付き中層浮魚礁1が海上に浮上して漂流しているため、海中制御モード時のステップS110の所定時間T1よりも短時間に設定される。また、衛星通信部52bが起動している間に、陸上の管理局等からの制御内容変更などの命令信号を受信したときには、制御部52cはその信号に基づいて海上(浮上)制御モードの内容を変更できる。
【0066】
その後、ステップS200の所定時間T3が経過すると、スリープ動作が解除され、制御部52cは、GPS受信機52aを起動する(ステップS210)。そして、GPS衛星からのGPS信号によりGPS測位データを生成、すなわちGPS信号を受信できるか否かを判定し(ステップS220)、GPS測位データを生成できた場合には(ステップS220“YES”)、GPS測位データを含む浮上メッセージを作成する(ステップS230)。一方、GPS測位データを生成できない場合には(ステップS220“NO”)、GPS測位データを含まない浮上メッセージを作成して(ステップS240)、GPS受信機52aを停止させる(ステップS250)。
【0067】
そして、制御部52cは衛星通信部52bを起動して(ステップS160)、ステップS230,S240のいずれかの処理によって作成した浮上メッセージを衛星通信により陸上の管理局等へ送信し(ステップS170)、その後はステップS180以降の処理が繰り返される。これにより、海上を漂流する中層浮魚礁1の現在の位置情報が、所定時間T3毎に通信処理部52から陸上の管理局等に送信されることになる。
【0068】
以上のことより、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1は、係留索3によりアンカー体2に係留され海中に浮遊している場合は、海中制御モードにより、所定時間T1毎に衛星通信部52bを起動して通信衛星への接続動作に入り、その接続可否から、漂流通知装置付き中層浮魚礁1が海中で係留索3によりアンカー体2に係留されている状態であるか、あるいは係留索3等が切断され浮上して海上を漂流している状態であるかの判定を通信処理部52で行うため、従来のような海面に浮上した際に作動する圧力センサーやフロート等が不要となり、その分だけ製造コストを低減できると共に、故障の発生も低減することができる。
【0069】
また、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1は、係留索3が切断等され海上に浮上して衛星通信部52bが通信衛星と接続した場合は、海上(浮上)制御モードにより、所定時間T3毎に浮上メッセージを作成すると共に、GPS受信機52aを起動してGPS測位データを生成するように制御するため、消費電力が大きいGPS受信機52aの起動が必要最小限で済み、電源部53の電池53aの消耗を極力抑えることができる。
【0070】
尚、上記本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1における通信処理部52の動作の説明では、衛星通信部52bが所定時間T2内に通信衛星と接続できた場合(ステップS130“YES”)、漂流通知装置付き中層浮魚礁1が海上に浮上したものと判定され、その後のステップS190の処理以降は所定時間T3のスリープ動作に入るように説明したが、本発明ではこれに限定されず、常にGPS受信機52aを起動させておき、GPS測位データを生成させるように構成しても勿論良い。
【0071】
また、本発明に係る漂流通知装置付き中層浮魚礁1の通信処理部52の構成ついては、位置情報の精度が粗くなるものの衛星通信部52bと制御部52cだけでも良く、GPS受信機52aは搭載しなくても構わない。さらに、
図16に示したような制御をすることなく、常に衛星通信部52bを起動させておき、所定時間T1毎に通信衛星への接続動作を行うものでも良く、接続できた場合に陸上の管理局等に位置情報を送信するような単純な制御でも当然構わない。