(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解析装置は、前記投球動作開始位置から前記リリースポイントまでの間において前記第3手順で算出した前記ボールの逐次変化する加速度に基づき、前記投球動作開始位置から前記リリースポイントまでの間において投球者が前記ボールに対して加えた逐次変化する力の大きさと向きを算出する第5手順を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の投球解析システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、グローバル座標系における投球時のボールの移動軌跡を精度良く算出する投球解析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、センサ部及び送信部が内蔵されたボールと、前記送信部から送信された前記センサ部の検出値を受信して解析する解析装置とを備えた投球解析システムであって、前記センサ部は、基板と、該基板に搭載された加速度センサと、該基板に搭載された地磁気センサと、該基板に搭載されたジャイロセンサとを具備し、前記解析装置は、投球動作開始前の静止状態の前記ボールについて前記送信部から送信された前記加速度センサの検出値及び前記地磁気センサの検出値に基づき、グローバル座標系における前記基板の初期方向を特定して記憶する第1手順と、投球動作開始後の前記ボールについて逐次検出され前記送信部から送信された前記ジャイロセンサの検出値と、前記第1手順で記憶した前記基板の初期方向とに基づき、グローバル座標系における前記基板の逐次変化する方向を算出する第2手順と、投球動作開始後の前記ボールについて逐次検出され前記送信部から送信された前記加速度センサの検出値と、前記第2手順で算出した前記基板の逐次変化する方向とに基づき、グローバル座標系における前記ボールの逐次変化する加速度を算出する第3手順と、前記第3手順で算出した前記ボールの逐次変化する加速度に基づき、グローバル座標系における前記ボールの移動軌跡を算出する第4手順と、を実行
し、前記解析装置は、前記第4手順で算出した前記ボールの移動軌跡において、 前記第3手順で算出した前記ボールの逐次変化する加速度の大きさが予め定めた第1しきい値を最初に超えた時点での前記ボールの位置を投球動作開始位置として検出し、前記第3手順で算出した前記ボールの逐次変化する加速度の大きさが前記第1しきい値よりも大きな予め定めた第2しきい値を最初に超えた時点から予め定めた第1時間内で、且つ、前記ボールの逐次変化する加速度の大きさが最大となる時点での前記ボールの位置をリリースポイントとして検出し、前記リリースポイントでの前記ボールの速度の水平面内における方向を飛行方向とした場合に、前記第3手順で算出した前記ボールの逐次変化する加速度の前記飛行方向と逆向きの成分の大きさが予め定めた第3しきい値を最初に超えた時点での前記ボールの位置、又は、前記リリースポイントに対応する時点から予め定めた第2時間を経過した後に前記ボールの逐次変化する加速度の大きさが予め定めた第4しきい値を最初に超えた時点での前記ボールの位置を捕球位置として検出する、ことを特徴とする投球解析システムを提供する。
【0008】
本発明に係る投球解析システムが備えるボールには、加速度センサ、地磁気センサ及びジャイロセンサが搭載された基板を具備するセンサ部と、送信部とが内蔵されている。
一般的に、加速度センサは、重力加速度を検出する。したがい、本発明に係る投球解析システムが備える解析装置が実行する第1手順において、投球動作開始前の静止状態のボールについて送信部から送信された加速度センサの検出値には、重力加速度のみが含まれることになる。このため、解析装置は、加速度センサの検出値から鉛直方向を特定可能である。一方、第1手順において、解析装置は、投球動作開始前の静止状態のボールについて送信された地磁気センサの検出値から東西南北の方向を特定可能である。加速度センサ及び地磁気センサは基板に搭載されており、これらの各センサと基板との位置関係は固定されている。このため、各センサにおける鉛直方向と東西南北の方向が特定されれば、グローバル座標系における基板の方向(例えば、基板の法線方向)を特定可能である。
したがい、第1手順において、解析装置は、投球動作開始前のボール静止状態における加速度センサの検出値(鉛直方向)及び地磁気センサの検出値(東西南北の方向)に基づき、グローバル座標系における基板の初期方向を特定可能である。
【0009】
本発明に係る投球解析システムが備える解析装置は、第2手順において、投球動作開始後のボールについて送信部から送信されたジャイロセンサの逐次検出値から、ジャイロセンサを基準とするローカル座標系におけるジャイロセンサの逐次変化する回転軸の方向及び回転速度を特定可能である。ジャイロセンサは基板に搭載されているため、ジャイロセンサと基板との位置関係は固定され、ジャイロセンサと基板とは一体的に回転する。このため、ローカル座標系におけるジャイロセンサの逐次変化する回転軸の方向及び回転速度が特定されれば、ローカル座標系における基板の逐次変化する方向を特定可能である。これに、グローバル座標系における基板の初期方向を用いれば、ローカル座標系における基板の逐次変化する方向をグローバル座標系における基板の逐次変化する方向に変換可能である。
したがい、第2手順において、解析装置は、ジャイロセンサの検出値(ローカル座標系におけるジャイロセンサの逐次変化する回転軸の方向及び回転速度)と、第1手順で記憶した基板の初期方向(グローバル座標系における基板の初期方向)とに基づき、グローバル座標系における基板の逐次変化する方向を算出可能である。
【0010】
本発明に係る投球解析システムが備える解析装置は、第3手順において、投球動作開始後のボールについて逐次検出され送信部から送信された加速度センサの検出値から、加速度センサを基準としたローカル座標系における加速度センサの逐次変化する加速度を特定可能である。加速度センサは基板に搭載されているため、加速度センサと基板との位置関係は固定され、加速度センサと基板とは一体的に移動する。このため、ローカル座標系における加速度センサの逐次変化する加速度が特定されれば、ローカル座標系における基板の逐次変化する加速度を特定可能である。これに、グローバル座標系における基板の逐次変化する方向を用いれば、ローカル座標系における基板の逐次変化する加速度をグローバル座標系における基板の逐次変化する加速度(すなわち、ボールの逐次変化する加速度)に変換可能である。
したがい、第3手順において、解析装置は、加速度センサの検出値(ローカル座標系における加速度センサの逐次変化する加速度)と、第2手順で算出した基板の逐次変化する方向(グローバル座標系における基板の逐次変化する方向)とに基づき、グローバル座標系におけるボールの逐次変化する加速度を算出可能である。
【0011】
本発明に係る投球解析システムが備える解析装置は、第4手順において、第3手順で算出したボールの逐次変化する加速度(グローバル座標系におけるボールの逐次変化する加速度)に基づき、グローバル座標系におけるボールの移動軌跡を算出する。具体的には、例えば、第3手順で算出したボールの加速度には、前述のように一般的な加速度センサの特性上、重力加速度の成分が含まれるため、算出したボールの加速度からこの成分を減算する補正を施した後に、所定の周期毎に逐次積分することでボールの球速を逐次算出し、この算出したボールの球速を更に所定の周期毎に逐次積分することでボールの変位を逐次算出することができる。この逐次算出されたボールの変位の履歴をボールの移動軌跡として算出することが可能である。算出したボールの移動軌跡は、例えば解析装置が具備するモニタ上に表示させればよい。
【0012】
以上のように、本発明に係る投球解析システムによれば、ボールに内蔵された加速度センサ、地磁気センサ及びジャイロセンサの各検出値を用いて、解析装置が特有の第1手順〜第3手順を実行することで、グローバル座標系におけるボールの逐次変化する加速度を精度良く算出可能である。このため、解析装置は、第4手順において、グローバル座標系におけるボールの移動軌跡を精度良く算出可能である。
ボールは回転しながら移動する場合がある。この際、加速度センサの検出値は、回転に伴いその方向が変化するので、加速度センサの検出値から単純にボールの移動軌跡を算出することはできない。本発明に係る投球解析システムでは、逐次検出した加速度センサの検出値をグローバル座標系に変換することで、ボールの移動軌跡を算出可能にしている。
本発明に係る投球解析システムによれば、グローバル座標系におけるボールの移動軌跡を精度良く算出可能であるため、このグローバル座標系における精度の良いボールの移動軌跡を参照する(例えば、解析装置が具備するモニタ上に表示された移動軌跡を視認する)ことで、投球者に対して様々な評価やアドバイスを適切に与えることが可能である。
【0014】
また、本発明によれば、解析装置によって、ボールの移動軌跡における投球動作(軸足と反対側の足を上げる動作又は腕を振る動作)開始位置、リリースポイント(手からボールが離れる位置)及び捕球位置が自動的に検出されることになる。また、リリースポイントに対応する時点と投球動作開始位置に対応する時点との時間差により、投球動作開始からリリースまでに要した時間を、捕球位置に対応する時点とリリースポイントに対応する時点との時間差により、リリースから捕球までに要した時間を、それぞれ算出することも可能である。
本発明によれば、ボールの移動軌跡を算出するのみならず、投球動作開始位置、リリースポイント及び捕球位置が特定されるため、投球者に対して、よりきめ細やかな評価やアドバイスを与えることが可能である。
【0015】
好ましくは、前記解析装置は、前記投球動作開始位置から前記リリースポイントまでの間において前記第3手順で算出した前記ボールの逐次変化する加速度に基づき、前記投球動作開始位置から前記リリースポイントまでの間において投球者が前記ボールに対して加えた逐次変化する力の大きさと向きを算出する第5手順を実行する。
【0016】
上記の好ましい構成によれば、第5手順において、解析装置は、投球動作開始位置からリリースポイントまでの間において投球者がボールに対して加えた逐次変化する力の大きさと向きを自動的に算出することになる。具体的には、例えば、第3手順で算出したボールの加速度から重力加速度の成分を減算する補正を施し、この補正後のボールの加速度をaとし、予め測定して記憶したボールの質量をmとした場合に、ニュートンの運動方程式F=maにより、投球者がボールに対して加えた力Fの大きさと向きを算出することが可能である。
上記の好ましい構成によれば、ボールの移動軌跡を算出するのみならず、投球者がボールに対して加えた逐次変化する力の大きさと向きが特定されるため、投球者に対して、よりきめ細やかな評価やアドバイスを与えることが可能である。
【0017】
好ましくは、前記解析装置は、前記第3手順で算出した前記ボールの逐次変化する加速度に基づき、グローバル座標系における前記ボールの逐次変化する球速を算出する第6手順と、投球動作開始後の前記ボールについて逐次検出され前記送信部から送信された前記ジャイロセンサの検出値と、前記第1手順で記憶した前記基板の初期方向とに基づき、グローバル座標系における前記ボールの逐次変化する回転速度及び回転軸の方向を算出する第7手順と、前記リリースポイントにおいて前記第6手順で算出した前記ボールの球速、前記リリースポイントにおいて前記第7手順で算出した前記ボールの回転速度及び回転軸の方向、並びに、前記リリースポイントの計4つのパラメータのうち、入力された変更指示に応じて、少なくとも1つのパラメータを変更し、該変更したパラメータを含む前記4つのパラメータを用いて前記リリースポイントから前記捕球位置までの前記ボールの移動軌跡をシミュレーションする第8手順と、を実行する。
【0018】
上記の好ましい構成では、第6手順において、解析装置は、第3手順で算出したボールの逐次変化する加速度(グローバル座標系におけるボールの逐次変化する加速度)に基づき、グローバル座標系におけるボールの逐次変化する球速を算出する。具体的には、例えば、第3手順で算出したボールの加速度から重力加速度の成分を減算する補正を施した後に、所定の周期毎に逐次積分することでボールの球速を逐次算出可能である。
【0019】
上記の好ましい構成では、第7手順において、解析装置は、投球動作開始後のボールについて逐次検出され送信部から送信されたジャイロセンサの検出値から、ジャイロセンサを基準としたローカル座標系におけるジャイロセンサの逐次変化する回転軸の方向及び回転速度を特定可能である。ジャイロセンサは基板に搭載されているため、ジャイロセンサと基板との位置関係は固定され、ジャイロセンサと基板とは一体的に回転する。このため、ローカル座標系におけるジャイロセンサの逐次変化する回転軸の方向及び回転速度が特定されれば、ローカル座標系における基板の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度を特定可能である。これに、グローバル座標系における基板の初期方向を用いれば、ローカル座標系における基板の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度をグローバル座標系における基板の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度に変換可能である。基板はボールに内蔵されているため、グローバル座標系における基板の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度は、グローバル座標系におけるボールの逐次変化する回転軸の方向及び回転速度に相当する。
したがい、第7手順において、解析装置は、ジャイロセンサの検出値(ローカル座標系におけるジャイロセンサの逐次変化する回転軸の方向及び回転速度)と、第1手順で記憶した基板の初期方向(グローバル座標系における基板の初期方向)とに基づき、グローバル座標系におけるボールの逐次変化する回転速度及び回転軸の方向を算出可能である。
【0020】
上記の好ましい構成では、第8手順において、解析装置は、リリースポイントにおいて第6手順で算出したボールの球速、リリースポイントにおいて第7手順で算出したボールの回転速度及び回転軸の方向、並びに、リリースポイントの計4つのパラメータのうち、入力された変更指示に応じて、少なくとも1つのパラメータを変更する。リリースポイントの変更には、第4手順で算出したボールの移動軌跡上でリリースポイントの位置をずらす(ずらした後のリリースポイントも第4手順で算出した移動軌跡上に位置する)場合と、第4手順で算出したボールの移動軌跡とは関係なくリリースポイントの位置を任意に変更する場合との双方が含まれる。そして、第8手順において、解析装置は、変更したパラメータを含む4つのパラメータを用いてリリースポイントから捕球位置までのボールの移動軌跡をシミュレーションする。
リリース後のボールの移動軌跡は、リリースポイントにおけるボールの球速、回転速度及び回転軸の方向と、捕球位置に向けて移動中のボールが空気から受ける力(この力は移動中のボールの球速、回転速度及び回転軸の方向に基づき定式化される)及び重力とによって決まることが公知である。具体的には、例えば、捕球位置に向けて移動中のボールが空気から受ける力及び重力を用いたボールの運動方程式を、リリースポイントにおけるボールの球速、回転速度及び回転軸の方向を初期値として解くことで、リリースポイントから捕球位置までのボールの移動軌跡をシミュレーション可能である。
【0021】
以上のように、上記の好ましい構成によれば、実際に投球者が投じたボールの移動軌跡を算出するのみならず、リリースポイントにおけるボールの球速等のパラメータを変更した場合にボールの移動軌跡がどのように変化するのかをシミュレーション可能であるため、投球者に対して、よりきめ細やかな評価やアドバイスを与えることが可能である。
【0022】
好ましくは、前記解析装置には、前記ボールの縫い目の方向と前記基板の方向との対応関係が予め記憶されており、前記解析装置は、前記第2手順で算出した前記基板の逐次変化する方向と、前記記憶された対応関係とに基づき、前記ボールの逐次変化する縫い目の方向を算出する。
【0023】
上記の好ましい構成によれば、ボールの移動軌跡を算出するのみならず、ボールの逐次変化する縫い目の方向が算出されるため、投球者に対して、よりきめ細やかな評価やアドバイスを与えることが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る投球解析システムによれば、グローバル座標系における投球時のボールの移動軌跡を精度良く算出することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態に係る投球解析システムについて説明する。本実施形態では、野球用のボールの移動軌跡を算出する場合を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る投球解析システムの概略構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係る投球解析システムが備えるボールの概略構成を示す図である。
図2(a)は外観図を、
図2(b)はボールの中心を通る断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る投球解析システム100は、ボール1と、解析装置2とを備えている。
図1に示す例では、投球者が投手Pで、受球者が捕手Cであり、投手Pが捕手Cに向けて投じたボール1の移動軌跡を解析する場合を図示している。
【0027】
図2(a)に示すように、ボール1の外観は、一般的な硬式球と同等であり、2枚の牛革を縫い合わせた外皮を有し、縫い目1aを視認可能である。ボール1は、外側から順に、牛革、綿糸で覆った毛糸玉が設けられ、さらに
図2(b)に示すように、中央に球状の回路配置部1bが設けられている。回路配置部1bは、樹脂及び電気部材で構成されている。一般的な硬式球では、回路配置部1bに該当する箇所に芯材となるゴム材及びコルク材が配置されている。ボール1は、一般的な硬式球と、大きさ、形状、重量、重心が同等となるように形成されている。
【0028】
図2(b)に示すように、回路配置部1bの内部には、センサ部及び送信部15が配置されている。センサ部は、基板11と、基板11に搭載された加速度センサ12と、基板11に搭載された地磁気センサ13と、基板11に搭載されたジャイロセンサ14とを具備している。本実施形態では、送信部15も基板11に搭載されている。また、回路配置部1bの内部には、基板11に搭載され、加速度センサ12、地磁気センサ13、ジャイロセンサ14及び送信部15を制御するマイコン16が配置されている。その他、回路配置部1bの内部には、基板11に搭載された、メモリ、充電池、充電池に充電するためのワイヤレス給電モジュール等(図示せず)が配置されている。
【0029】
加速度センサ12としては、3軸加速度センサであって、重力加速度を検出する公知のセンサが用いられている。
地磁気センサ13としては、東西南北の方向を検出する公知の3軸センサが用いられている。
ジャイロセンサ14としては、3軸ジャイロセンサであって、回転軸の方向及び回転速度を検出する公知のセンサが用いられている。
送信部15は、加速度センサ12、地磁気センサ13及びジャイロセンサ14の各検出値を解析装置2に向けて無線送信(ZigBee、WiFi、Bluetooth(登録商標)等)する機能を有し、通信用のアンテナ等を具備する。
【0030】
解析装置2は、送信部15から送信されたセンサ部の検出値を受信して解析する装置であり、後述する所定の手順を実行するためのプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン等から構成されている。
【0031】
加速度センサ12及びジャイロセンサ14の検出値は、ボール1が投球動作開始前の静止状態にあるときから、捕手Cによって捕球されるまでの間、マイコン16によって所定のサンプリングピッチでサンプリングされ、メモリに記憶される。ボール1が投球動作開始前の静止状態にあることは、例えば、加速度センサ12で検出した加速度の大きさ(各軸についての加速度の2乗和の平方根)や、ジャイロセンサ14で検出した回転速度の大きさが、所定時間、所定のしきい値以下であることをマイコン16が判定することによって認識可能である。また、ボール1が捕手Cによる捕球位置にあることは、例えば、加速度センサ12で検出した加速度の大きさが急激に変化したことをマイコン16が判定することによって認識可能である。或いは、測定開始から所定時間経過後に一律に捕球されたとみなすことでもよい。
サンプリングピッチは一定であっても構わないが、データ量を圧縮して送信部15から解析装置2への通信時間を短縮するには、ボール1の移動軌跡において特に重要な部分(リリースポイント付近)を細かいサンプリングピッチでサンプリングし、その他の部分はこれよりも粗いサンプリングピッチでサンプリングすることが好ましい。具体的には、投球動作開始位置から、リリースポイントから一定時間経過後まではサンプリングピッチP1でサンプリングし、その他の部分についてはサンプリングピッチP1の例えば2倍の粗いサンプリングピッチP2でサンプリングすることが考えられる。ボール1が投球動作開始位置にあることは、例えば、加速度センサ12で検出した加速度の大きさが所定のしきい値を最初に超えたことをマイコン16が判定することによって認識可能である。また、ボール1がリリースポイントにあることは、例えば、加速度センサ12で検出した加速度の大きさが投球動作開始位置認識用のしきい値よりも大きな所定のしきい値を最初に超えたことをマイコン16が判定することによって認識可能である。
なお、以上に説明したマイコン16が認識する捕球位置、投球動作開始位置及びリリースポイントは、加速度センサ12及びジャイロセンサ14の検出値をメモリに記憶するタイミングやサンプリングピッチを決定するために用いられるものに過ぎないため、正確な値を認識する必要はない。この点で、後述する解析装置2で検出される捕球位置、投球動作開始位置及びリリースポイントとは異なる。
【0032】
一方、地磁気センサ13の検出値は、投球動作開始前の静止状態のボール1について検出され、メモリに記憶される。
【0033】
以上に説明した加速度センサ12、地磁気センサ13及びジャイロセンサ14の検出値は、纏めて送信部15から解析装置2に送信され、解析装置2によって解析される。以下、解析装置2が実行する手順について説明する。
【0034】
図3は、解析装置2が実行する手順を概略的に示すフロー図である。
図3に示すように、まず解析装置2は、第1手順として、投球動作開始前の静止状態のボール1について送信部15から送信された加速度センサ12の検出値及び地磁気センサ13の検出値に基づき、グローバル座標系(
図1に示すXYZ座標系)における基板11の初期方向を特定して記憶する(
図3のS1)。
投球動作開始前の静止状態のボール1について送信部15から送信された加速度センサ12の検出値には、重力加速度のみが含まれる。このため、解析装置2は、加速度センサ12の検出値から鉛直方向(Z方向)を特定可能である。一方、解析装置2は、投球動作開始前の静止状態のボール1について送信された地磁気センサ13の検出値から東西南北の方向を特定可能である。加速度センサ12及び地磁気センサ13は基板11に搭載されており、これらの各センサ12、13と基板11との位置関係は固定されている。このため、各センサ12、13における鉛直方向と東西南北の方向が特定されれば、グローバル座標系における基板11の方向(例えば、基板の法線方向)を特定可能である。
【0035】
次に、解析装置2は、第2手順として、投球動作開始後のボール1について逐次検出され送信部15から送信されたジャイロセンサ14の検出値と、第1手順で記憶した基板11の初期方向とに基づき、グローバル座標系における基板11の逐次変化する方向を算出する(
図3のS2)。
解析装置2は、投球動作開始後のボール1について送信部15から送信されたジャイロセンサ14の逐次検出値から、ジャイロセンサ14を基準とするローカル座標系におけるジャイロセンサ14の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度を特定可能である。ジャイロセンサ14は基板11に搭載されているため、ジャイロセンサ14と基板11との位置関係は固定され、ジャイロセンサ14と基板11とは一体的に回転する。このため、ローカル座標系におけるジャイロセンサ14の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度が特定されれば、ローカル座標系における基板11の逐次変化する方向を特定可能である。これに、グローバル座標系における基板11の初期方向を用いれば、ローカル座標系における基板11の逐次変化する方向をグローバル座標系における基板11の逐次変化する方向に変換可能である。
【0036】
次に、解析装置2は、好ましい手順として、ボール1の逐次変化する縫い目1aの方向を算出する(
図3のS3)。
具体的には、解析装置2には、ボール1の縫い目1aの方向(
図2(a)に示す例では紙面の左右方向)と基板11の方向との対応関係が予め記憶されている。より具体的には、例えば、上記の対応関係を記憶する際、解析装置2からボール1に対して所定のキャリブレーションコマンドを送信し、このキャリブレーションコマンドを受信した際、ボール1の送信部15からその時点の加速度センサ12の検出値及び地磁気センサ13の検出値を解析装置2に送信することが考えられる。また、このキャリブレーションコマンドを受信した際、鉛直上方から見た場合に縫い目1aが例えば
図2(a)に示す状態となるように、投者Pがボール1を静止状態で保持することを取り決めておけばよい。そして、前述の第1手順と同様にして、解析装置2は、例えば
図2(a)に示す状態で静止されたボール1について送信部15から送信された加速度センサ12の検出値及び地磁気センサ13の検出値に基づき、グローバル座標系における基板11の方向を特定する。これにより、縫い目1aの方向と基板11の方向との対応関係を求めることができ、前述のように、この対応関係を予め解析装置2に記憶することが可能である。
そして、解析装置2は、第2手順で算出した基板11の逐次変化する方向と、前記記憶された対応関係とに基づき、ボール1の逐次変化する縫い目1aの方向を算出する。
【0037】
次に、解析装置2は、第3手順として、投球動作開始後のボール1について逐次検出され送信部15から送信された加速度センサ12の検出値と、第2手順で算出した基板11の逐次変化する方向とに基づき、グローバル座標系におけるボール1の逐次変化する加速度を算出する(
図3のS4)。
解析装置2は、投球動作開始後のボール1について逐次検出され送信部15から送信された加速度センサ12の検出値から、加速度センサ12を基準としたローカル座標系における加速度センサ12の逐次変化する加速度を特定可能である。加速度センサ12は基板11に搭載されているため、加速度センサ12と基板11との位置関係は固定され、加速度センサ12と基板11とは一体的に移動する。このため、ローカル座標系における加速度センサ12の逐次変化する加速度が特定されれば、ローカル座標系における基板11の逐次変化する加速度を特定可能である。これに、グローバル座標系における基板11の逐次変化する方向を用いれば、ローカル座標系における基板11の逐次変化する加速度をグローバル座標系における基板11の逐次変化する加速度(すなわち、ボール1の逐次変化する加速度)に変換可能である。
【0038】
次に、解析装置2は、第4手順として、第3手順で算出したボール1の逐次変化する加速度に基づき、グローバル座標系におけるボール1の移動軌跡を算出する(
図3のS5)。
具体的には、解析装置2は、算出したボール1の加速度から重力加速度の成分を減算する補正を施した後に、所定の周期毎に(所定のサンプリング点毎に)逐次積分することでボール1の球速を逐次算出し、この算出したボール1の球速を更に所定の周期毎に(所定のサンプリング点毎に)逐次積分することでボール1の変位を逐次算出する。解析装置2は、この逐次算出されたボール1の変位の履歴をボール1の移動軌跡として算出することが可能である。算出したボール1の移動軌跡は、後述のように、解析装置2が具備するモニタ上に表示される。
【0039】
次に、解析装置2は、好ましい手順として、第4手順で算出したボール1の移動軌跡において、投球動作開始位置、リリースポイント及び捕球位置を検出する(
図3のS5)。
図4は、投球動作開始位置、リリースポイント及び捕球位置を検出する手順を説明する説明図である。
図4(a)は第3手順で算出した逐次変化する加速度の大きさを、
図4(b)は第3手順で算出した逐次変化する加速度の飛行方向の成分の大きさを示す。
図4(a)に示すように、解析装置2は、第3手順で算出したボール1の逐次変化する加速度の大きさが予め定めた第1しきい値Th1を最初に超えた時点でのボール1の位置を投球動作開始位置として検出する。
また、
図4(a)に示すように、解析装置2は、第3手順で算出したボール1の逐次変化する加速度の大きさが第1しきい値Th1よりも大きな予め定めた第2しきい値Th2を最初に超えた時点から予め定めた第1時間T1内で、且つ、ボール1の逐次変化する加速度の大きさが最大となる時点でのボール1の位置をリリースポイントとして検出する。
さらに、
図4(b)に示すように、解析装置2は、リリースポイントでのボール1の速度の水平面内における方向を飛行方向とした場合に、第3手順で算出したボール1の逐次変化する加速度の飛行方向と逆向きの成分(
図4(b)において負の値を有する成分)の大きさが予め定めた第3しきい値Th3を最初に超えた時点でのボール1の位置を捕球位置として検出する。なお、解析装置2は、
図4(a)に示すように、リリースポイントに対応する時点から予め定めた第2時間T2を経過した後にボール1の逐次変化する加速度の大きさが予め定めた第4しきい値Th4を最初に超えた時点でのボール1の位置を捕球位置として検出することも可能である。
【0040】
第1しきい値Th1〜第4しきい値Th4や、第1時間T1、第2時間T2は、例えば、同じ投手Pがボール1を数回投球して取得された加速度に基づき予め設定すればよい。
具体的には、例えば、解析装置2が第3手順を実行することで算出されたグローバル座標系におけるボール1の逐次変化する加速度の大きさが最初にピーク値となる時点でのボール1の位置をリリースポイントと仮に設定し、その次にピーク値となる時点でのボール1の位置を捕球位置と仮に設定する。そして、仮に設定したリリースポイントでの加速度の大きさ(数回投球した場合の平均値)の例えば1/2の値を第2しきい値Th2として設定すればよい。また、仮に設定した捕球位置での加速度の大きさ(数回投球した場合の平均値)の例えば1/2の値を第4しきい値Th4として設定すればよい。同様に、解析装置2が第3手順を実行することで算出されたグローバル座標系におけるボール1の逐次変化する加速度の飛行方向と逆向きの成分の大きさが最初にピーク値となる時点でのボール1の位置を捕球位置と仮に設定し、仮に設定した捕球位置での加速度の飛行方向と逆向きの成分の大きさ(数回投球した場合の平均値)の例えば1/2の値を第3しきい値Th3として設定すればよい。リリースポイント以降は、ボール1の加速度の大きさが急激に小さくなっていくので、設定した第2しきい値Th2から加速度の大きさが最初のピーク値(仮に設定したリリースポイントにおける加速度の大きさ)を超えて、例えば最初のピーク値の1/10の値になるまでの時間(数回投球した場合の平均値)を第1時間T1として設定すればよい。第2時間T2は、例えば、加速度の大きさが最初のピーク値となる時点(仮に設定したリリースポイント)から第1時間T1の2倍の時間を設定すればよい。第1しきい値Th1は、投球動作開始位置を検出するしきい値であるため、小さな加速度の大きさ(例えば、1m/sec
2)を設定すればよい。
【0041】
上記の好ましい手順によれば、解析装置2によって、ボール1の移動軌跡における投球動作(軸足と反対側の足を上げる動作又は腕を振る動作)開始位置、リリースポイント(手からボール1が離れる位置)及び捕球位置が自動的に検出されることになる。検出した投球動作開始位置、リリースポイント及び捕球位置は、後述のように、解析装置2が具備するモニタ上に、算出したボール1の移動軌跡と共に表示される。また、解析装置2は、必要に応じて、リリースポイントに対応する時点と投球動作開始位置に対応する時点との時間差により、投球動作開始からリリースまでに要した時間を、捕球位置に対応する時点とリリースポイントに対応する時点との時間差により、リリースから捕球までに要した時間を、それぞれ算出することも可能である。
【0042】
次に、解析装置2は、好ましい手順として第5手順を実行する。すなわち、解析装置2は、第5手順として、投球動作開始位置からリリースポイントまでの間において第3手順で算出したボール1の逐次変化する加速度に基づき、投球動作開始位置からリリースポイントまでの間において投手Pがボール1に対して加えた逐次変化する力の大きさと向きを算出する(
図3のS6)。
具体的には、解析装置2は、第3手順で算出したボール1の加速度から重力加速度の成分を減算する補正を施し、この補正後のボール1の加速度をaとし、予め測定して記憶したボールの質量をmとした場合に、ニュートンの運動方程式F=maにより、投手Pがボール1に対して加えた力Fの大きさと向きを算出することが可能である。
【0043】
次に、解析装置2は、好ましい手順として第6手順を実行する。すなわち、解析装置2は、第6手順として、第3手順で算出したボール1の逐次変化する加速度に基づき、グローバル座標系におけるボール1の逐次変化する球速を算出する(
図3のS7)。
具体的には、解析装置2は、第3手順で算出したボール1の加速度から重力加速度の成分を減算する補正を施した後に、所定の周期毎に(所定のサンプリング点毎に)逐次積分することでボール1の球速を逐次算出可能である。
【0044】
次に、解析装置2は、好ましい手順として第7手順を実行する。すなわち、解析装置2は、第7手順として、投球動作開始後のボール1について逐次検出され送信部15から送信されたジャイロセンサ14の検出値と、第1手順で記憶した基板11の初期方向とに基づき、グローバル座標系におけるボール1の逐次変化する回転速度及び回転軸の方向を算出する(
図3のS8)。
解析装置2は、投球動作開始後のボール1について逐次検出され送信部15から送信されたジャイロセンサ14の検出値から、ジャイロセンサ14を基準としたローカル座標系におけるジャイロセンサ14の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度を特定可能である。ジャイロセンサ14は基板11に搭載されているため、ジャイロセンサ14と基板11との位置関係は固定され、ジャイロセンサ14と基板11とは一体的に回転する。このため、ローカル座標系におけるジャイロセンサ14の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度が特定されれば、ローカル座標系における基板11の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度を特定可能である。これに、グローバル座標系における基板11の初期方向を用いれば、ローカル座標系における基板11の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度をグローバル座標系における基板11の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度に変換可能である。基板11はボール1に内蔵されているため、グローバル座標系における基板11の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度は、グローバル座標系におけるボール1の逐次変化する回転軸の方向及び回転速度に相当する。
【0045】
解析装置2は、以上に説明した第2手順(
図3のS2)〜第7手順(
図3のS8)までをボール1が捕球位置に到達するまで繰り返す。すなわち、送信部15から送信された加速度センサ12及びジャイロセンサ14の検出値について、サンプリング時点の早いものから順に各手順を実行し、捕球位置を検出しない場合(
図3のS9において「No」の場合)には、繰り返し実行する。
捕球位置を検出した場合(
図3のS9において「Yes」の場合)には、第2手順〜第7手順の実行を終了し、解析装置2が具備するモニタ上に算出したボール1の移動軌跡等が表示される(
図3のS10)。
なお、解析装置2は、暴投などによって、投球動作開始位置から予め定めた一定時間(例えば5秒)経過後も捕球位置を検出しない場合にも、ボール1が捕球位置に到達したとみなし(
図3のS9において「Yes」の場合に相当するとみなし)、解析装置2が具備するモニタ上に算出したボール1の移動軌跡等が表示される(
図3のS10)。
【0046】
図5は、ボール1の移動軌跡の表示例を示す図である。
図5(a)はXZ座標平面で見た場合のボール1の移動軌跡の表示例を、
図5(b)はXY座標平面で見た場合のボール1の移動軌跡の表示例を示す。
図5において「〇」でプロットしたデータがボール1の移動軌跡を示す。
図5に示す例では、Z方向が鉛直方向であり、X方向がボール1の飛行方向(リリースポイントでのボール1の速度の水平面内における方向)であり、Y方向が水平面内でX方向に直交する方向である。したがい、
図5(a)に示す表示例は、飛行方向に対して真横から見たボール1の移動軌跡を表し、
図5(b)に示す表示例は、真上から見たボール1の移動軌跡を表すことになる。
図5に示す例では、算出したボール1の移動軌跡と共に、検出した投球動作開始位置、リリースポイント及び捕球位置も表示されている。検出した各位置の表示は、テキストで表示しても良いし、他のボール1の位置と識別できるように表示を変更(色の変更など)しても良い。
図5に示す例では、検出した各位置に相当するボール1は「●」でプロットされていると共に、その周辺に検出した各位置を示すテキストが表示されている。
図5に示すようなボール1の移動軌跡や各検出位置が、解析装置2が具備するモニタ上に表示されることで、投手Pに対して様々な評価やアドバイスを適切に与えることが可能である。
【0047】
次に、解析装置2は、必要に応じて(
図3のS11において「Yes」の場合)、第8手順を実行する。すなわち、解析装置2は、第8手順として、リリースポイントにおいて第6手順で算出したボール1の球速、リリースポイントにおいて第7手順で算出したボール1の回転速度及び回転軸の方向、並びに、リリースポイントの計4つのパラメータのうち、解析装置2に入力された変更指示に応じて、少なくとも1つのパラメータを変更し、該変更したパラメータを含む前記4つのパラメータを用いてリリースポイントから捕球位置までのボール1の移動軌跡をシミュレーションする(
図3のS12)。リリースポイントの変更には、第4手順で算出したボール1の移動軌跡上でリリースポイントの位置をずらす(ずらした後のリリースポイントも第4手順で算出した移動軌跡上に位置する)場合と、第4手順で算出したボール1の移動軌跡とは関係なくリリースポイントの位置を任意に変更する場合との双方が含まれる。
リリース後のボール1の移動軌跡は、リリースポイントにおけるボール1の球速、回転速度及び回転軸の方向と、捕球位置に向けて移動中のボール1が空気から受ける力(この力は移動中のボール1の球速、回転速度及び回転軸の方向に基づき定式化される)及び重力とによって決まることが公知である(例えば、関口直人、他1名、「変化球の軌道シミュレーション」、茨城大学工学部知能システム工学科卒業論文、2004年参照)。具体的には、例えば、捕球位置に向けて移動中のボール1が空気から受ける力及び重力を用いたボール1の運動方程式を、リリースポイントにおけるボール1の球速、回転速度及び回転軸の方向を初期値として解くことで、リリースポイントから捕球位置までのボール1の移動軌跡をシミュレーション可能である。
【0048】
上記の第8手順を実行した場合、解析装置2は、シミュレーション結果、すなわち、リリースポイントから捕球位置までのボール1の移動軌跡をモニタ上に表示する(
図3のS13)。
【0049】
以上に説明した本実施形態に係る投球解析システム100によれば、ボール1に内蔵された加速度センサ12、地磁気センサ13及びジャイロセンサ14の各検出値を用いて、解析装置2が特有の手順を実行することで、グローバル座標系におけるボール1の移動軌跡を精度良く算出可能である。このため、解析装置2が具備するモニタ上に表示された移動軌跡を視認することで、投手Pに対して様々な評価やアドバイスを適切に与えることが可能である。
【0050】
特に、本実施形態に係る投球解析システム100では、リリースポイントが自動的に検出される(
図3のS5)ため、疲れの有無、球種、トレーニング前後、好調時と不調時、過去と現在等の各条件について、それぞれ移動軌跡を算出し、それぞれリリースポイントを検出することで、条件の差異に応じた、腕振りの軌跡やリリースポイントの差異を評価することが可能である。
また、本実施形態に係る投球解析システム100では、投球動作開始位置からリリースポイントまでの間において投手Pがボール1に対して加えた逐次変化する力の大きさと向きが自動的に算出される(
図3のS6)ため、ストレートや変化球を投じる際の好ましい力の加え方をアドバイスすることが可能である。また、予め上級競技者についてボール1の移動軌跡やボール1に対して加えた逐次変化する力の大きさと向きを算出しておくことで、上級競技者との力の加え方の違いを評価することも可能である。
また、本実施形態に係る投球解析システム100では、投球動作開始からリリースまでに要した時間や、リリースから捕球までに要した時間を算出可能であるため、投手Pが盗塁を阻止するために必要な時間を表示可能である。
また、本実施形態に係る投球解析システム100では、ボール1の逐次変化する縫い目1aの方向が算出される(
図3のS3)ため、変化球の変化度合いが縫い目1aに起因するものであるか否かを評価することが可能である。
さらに、本実施形態に係る投球解析システム100では、リリースポイントから捕球位置までのボール1の移動軌跡をシミュレーションすることが可能(
図3のS12)であるため、4つの各パラメータ変更前後のボール1の移動軌跡を比較することで、理想の移動軌跡を得るには何が必要であるかを知ることが可能である。
本実施形態に係る投球解析システム100によれば、上記の例以外にも投手Pに対して様々な評価やアドバイスを与えることができ、投手Pの投球技術の向上に資することが可能である。
【0051】
なお、本実施形態では、ボール1が野球用のボールである場合を例に挙げて説明したが、ソフトボール用のボールであっても同様に適用可能である。
また、本実施形態では、投球者が投手Pで、受球者が捕手Cである場合を例に挙げて説明したが、投球者が捕手Cで受球者が野手、投球者及び受球者の双方が野手である場合であっても同様に適用可能である。