特許第6856899号(P6856899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856899
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】繊維補強軽量コンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20210405BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20210405BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20210405BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20210405BHJP
   E01D 19/12 20060101ALN20210405BHJP
   C04B 111/40 20060101ALN20210405BHJP
   C04B 111/60 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   C04B28/04
   C04B16/06 B
   C04B14/04 A
   E01D22/00 A
   !E01D19/12
   C04B111:40
   C04B111:60
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-192462(P2017-192462)
(22)【出願日】2017年10月2日
(65)【公開番号】特開2019-64872(P2019-64872A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591211917
【氏名又は名称】川田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】北野 勇一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 始
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
(72)【発明者】
【氏名】水戸 健介
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−114562(JP,A)
【文献】 特開2016−204925(JP,A)
【文献】 特開平07−119119(JP,A)
【文献】 特開2002−128574(JP,A)
【文献】 特開2002−029816(JP,A)
【文献】 特開2005−239484(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0066857(US,A1)
【文献】 特開2002−068817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/04
C04B 16/06
C04B 14/04
E01D 22/00
E01D 19/12
C04B 111:40
C04B 111:60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗骨材として軽量骨材を使用し、設計上の圧縮強度40〜60N/mm2、単位重量1700〜1900kg/m3となる配合のベースコンクリートを練り混ぜて、スランプが21±1.5cmとなるように調整し、
前記軽量骨材の最大粒径よりも大きな繊維長を有し、前記ベースコンクリート自体の弾性係数よりも大きな弾性係数を有する有機繊維、前記ベースコンクリートに対し、体積比で0.25〜0.75%混入し、更に練り混ぜることを特徴とする繊維補強軽量コンクリートの製造方法
【請求項2】
高性能AE減水剤及びAE剤を用いて、前記ベースコンクリートのスランプを調整することを特徴とする、請求項1に記載の繊維補強軽量コンクリートの製造方法。
【請求項3】
プレテンション方式又はポストテンション方式によりプレストレスを導入して、プレストレストコンクリート床版を製造することを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維補強軽量コンクリートの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量骨材を使用した軽量コンクリートに関し、特に、有機繊維を混入させることによって耐荷性能を向上させ、プレキャスト製のプレストレストコンクリート床版を薄肉軽量化することができる繊維補強軽量コンクリート、並びに、この繊維補強軽量コンクリートを使用したプレストレストコンクリート床版に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁等のコンクリート床版が老朽化した場合、床版の取替工事が実施されることになるが、新旧の設計基準との関係で、次のような問題が生じることがある。コンクリート床版の旧設計基準においては、現行基準よりも小さい床版厚での設計が認められていたため、取替工事の対象となる既設コンクリート床版が、現行基準よりも小さい床版厚で設計されている場合、この既設床版を、現行基準に沿って設計された床版厚の大きい(即ち、重量も大きい)新規のコンクリート床版と取り替えると、死荷重の増大によって上部工主桁や下部工の耐力が不足してしまい、その結果、床版取替工事に先立って、上部工主桁等の補強工事が必要になり、工期や施工費用が増大してしまう可能性がある。
【0003】
このような問題への対策として、コンクリート床版を軽量化することが考えられる。新規に設置するコンクリート床版を、軽量骨材を使用した軽量コンクリートで構成することにより軽量化することができれば、主桁や下部工における耐力不足の問題、及び、追加補強工事による工期や施工費用の増大という問題を回避できる可能性がある。
【0004】
但し、軽量コンクリートを用いたコンクリート床版は、現在主流となっている普通コンクリートを用いたプレストレストコンクリート床版と比較して耐荷性能において劣っており、この点で更なる対策が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−119119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、軽量コンクリートを用いることで軽量化できる分(但し、主桁や下部工における耐力不足の問題が生じない範囲で)、床版厚を大きくすることにより、耐荷性能を向上させることが考えられる。しかしながら、床版取替工事においては、路面高さ等の関係から、床版厚を大きくすることができない場合がある。
【0007】
また、軽量コンクリートに対しプレストレスを導入する際、1方向だけでなく、2方向(橋軸方向及び横断方向)に導入することにより、床版の押抜きせん断耐荷力を向上させる方法も考えられるが、2方向にPC鋼材を配置すると、床版厚を十分に薄くできないばかりか、施工の手間が増え、工期も長期化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、プレストレストコンクリート床版のプレストレスを1方向とした場合でも、普通コンクリートを用いたプレストレストコンクリート床版と同等、或いは、それ以上の耐荷性能を期待することができる繊維補強軽量コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る繊維補強軽量コンクリートは、ベースコンクリートに有機繊維が混入されてなる繊維補強コンクリートであって、ベースコンクリートが、軽量骨材を使用した軽量コンクリートであり、軽量骨材の最大粒径よりも大きな繊維長を有し、繊維混入によるコンクリートの弾性係数の低下を回避するために、ベースコンクリート自体の(即ち、有機繊維を混入せずにベースコンクリートを硬化させた場合の)弾性係数よりも大きな弾性係数を有する有機繊維が、ベースコンクリートに対し、体積比で0.25〜0.75%混入されていることを特徴としている。
【0010】
尚、ベースコンクリートは、設計上の圧縮強度40〜60N/mm2、単位重量1700〜1900kg/m3であることが好ましく、また、有機繊維は、繊維長が20mm以上(20〜100mm)で、弾性係数が20kN/mm2以上であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る繊維補強コンクリートは、ベースコンクリートに有機繊維が混入されてなるものであって、ベースコンクリート自体が、普通骨材を用いたコンクリートよりも、せん断耐力又は破壊エネルギー(即ち、有機繊維を混入せずにベースコンクリートを硬化させた場合のせん断耐力又は破壊エネルギー)が低いコンクリートであり、ベースコンクリートに用いられる粗骨材の最大粒径よりも大きな繊維長を有し、ベースコンクリート自体の(即ち、有機繊維を混入せずにベースコンクリートを硬化させた場合の)弾性係数よりも大きな弾性係数を有する有機繊維が、前記ベースコンクリートに対し、体積比で0.25〜0.75%混入されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るプレストレストコンクリート床版は、上記繊維補強軽量コンクリートを用いたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る繊維補強軽量コンクリートは、有機繊維を適切な割合でベースコンクリートに混入させることにより、耐荷性能を大幅に向上させることができ、これをプレストレストコンクリート床版に適用した場合には、導入するプレストレスを1方向とした場合でも、普通コンクリートを用いたプレストレストコンクリート床版と同等、或いは、それ以上の耐荷性能を得ることができる。従って、プレストレストコンクリート床版を薄肉軽量化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る繊維補強軽量コンクリート等に関する圧縮強度試験の結果を示すグラフである。
図2図2は、本発明に係る繊維補強軽量コンクリート等に関する圧縮強度と弾性係数の関係を示すグラフである。
図3図3は、比較例4と本発明2の破壊エネルギーの算出結果(荷重−ひび割れ開口変位(CMOD)曲線)を示すグラフである。
図4図4は、有機繊維を0.5%混入した本発明2(FL2)の「荷重−CMOD曲線」(図3)の測定データから多曲線近似法により算出した引張軟化曲線である。
図5図5は、比較例5,6、及び、本発明3,4についての解析結果(荷重−変位関係)を示すグラフである。
図6図6は、比較例5,6、及び、本発明3,4についての解析結果(最大主ひずみ−荷重関係)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、「繊維補強軽量コンクリート」又は「繊維補強コンクリート」として実施することができるほか、これらのコンクリートを使用した「プレストレストコンクリート床版」として実施することができる。以下、本発明の実施形態について、それぞれ説明する。
【0016】
本発明の第一実施形態に係る「繊維補強軽量コンクリート」は、ベースコンクリートに対し、補強繊維として有機繊維が混入されていることを特徴とするものである。本実施形態においては、ベースコンクリートとして、軽量骨材(最大粒径15mm)を使用することにより、設計上の圧縮強度が40〜60N/mm2、単位重量が1700〜1900kg/m3となるように調整した軽量コンクリートを使用している。
【0017】
また、本実施形態においては、軽量骨材の最大粒径よりも大きな繊維長(具体的には、20mm以上、最長で100mm程度)を有し、軽量コンクリートの弾性係数よりも大きな弾性係数(具体的には、20kN/mm2以上)を有する有機繊維(例えば、弾性係数の標準値が23kN/mm2のPVA繊維等)が、ベースコンクリート(軽量コンクリート)に対し、体積比で0.25〜0.75%混入されている。
【0018】
設計上の圧縮強度が50N/mm2の標準的な軽量コンクリート(軽量1種)の弾性係数は、20kN/mm2程度であり、これよりも大きな弾性係数を有する有機繊維を補強繊維として混入することにより、耐荷性能の向上効果を期待することができる。
【0019】
尚、ベースコンクリートは、軽量コンクリートには限定されず、普通骨材を用いたコンクリートよりも、せん断耐力又は破壊エネルギーが低いコンクリートをベースコンクリートとすることもでき、この場合も、ベースコンクリートに用いられる粗骨材の最大粒径よりも大きな繊維長を有し、ベースコンクリート自体の弾性係数よりも大きな弾性係数を有する有機繊維を、ベースコンクリートに対し、体積比で0.25〜0.75%混入させることにより、普通骨材を用いたコンクリートよりも高い耐荷性能を得ることができる。
【0020】
本発明の第二実施形態に係る「プレストレストコンクリート床版」は、繊維補強軽量コンクリートを用いたことを特徴としている。より具体的には、この床版は、第一実施形態において説明したような繊維補強軽量コンクリートに対し、プレテンション方式又はポストテンション方式によりプレストレスを導入することによって形成されている。
【0021】
本実施形態のプレストレストコンクリート床版は、ベースコンクリートとして軽量コンクリートを用いることにより、普通コンクリートのプレストレストコンクリート床版よりも、軽量化することができ、また、プレストレスを1方向のみに導入した場合でも、ベースコンクリートに有機繊維を混入させることにより、
普通コンクリートを用いたプレストレストコンクリート床版と同等、或いは、それ以上の耐荷性能を期待することができる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の発明者らが行った各種試験の結果を、本発明の実施例として説明する。
【0023】
まず、下記の表1に示すような配合により、6種類のコンクリートの供試体(比較例1,2、本発明1、比較例3,4、本発明2)を製作した。具体的には、比較例1は、普通コンクリートのプレストレストコンクリート(プレテンション方式)用の標準的な配合であり、比較例2〜4、及び、本発明1,2は、粗骨材として人工軽量骨材を用いた軽量コンクリートのプレストレストコンクリート用の配合となっている。
【0024】
尚、6種類のコンクリートのすべてにおいて、セメントとして密度3.13g/cm3の早強ポルトランドセメントを使用し、また、細骨材として表乾密度2.64g/cm3の砕砂を使用した。粗骨材としては、比較例1においては、表乾密度2.66g/cm3の砕石を使用し、比較例2〜4、及び、本発明1,2においては、絶乾密度1.29g/cm3、含水率2%以下の人工軽量骨材を使用した。水セメント比は、比較例1〜3、及び、本発明1においては38.4%とし、比較例4、本発明2においては35.4%とした。
【0025】
ベースコンクリートのスランプについては、比較例1では12±2.5cm、比較例2,4では10±2.5cm、比較例3では23±1.5cm、本発明1,2では21±1.5cmと設定し、高性能AE減水剤とAE剤にて調整した。尚、空気量は、比較例1では4.5±1.5%、比較例2〜4、及び、本発明1,2においては5±1.5%とした。
【0026】
また、本発明1,2においては、有機繊維を、コンクリート体積に対し0.5%、比較例3においては1.0%混入させた。尚、有機繊維としては、直径0.66mm、標準長30mm、弾性係数23kN/mm2、破断伸度9.0%の標準物性を有するPVA繊維を使用した。PVA繊維は、予め練り混ぜられたベースコンクリートに投入し、60秒間練り混ぜを行った。尚、繊維混入後のスランプは、本発明1,2、及び、比較例3のいずれも10±2.5cmであることを確認した。各供試体は、最高温度45℃を4時間継続させる蒸気養生を行い、翌日の脱枠後20℃の室内にて所定の材齢まで保管した後、各種試験を行った。
【0027】
【表1】
【0028】
上記表1に示す6種類のコンクリートを対象として、圧縮強度及び弾性係数を測定した。図1は、材齢1日及び7日の時点での圧縮強度の測定結果を示すグラフである。この図に示すように、繊維混入率を1.0%とした比較例3を除き、いずれも材齢1日で35N/mm2、7日で50N/mm2をクリアした。繊維混入率を1.0%とした比較例3は、プレストレス導入時強度(材齢1日で35N/mm2)、及び、設計基準強度(材齢7日で50N/mm2)を満足しなかった。この結果より、繊維混入率は、圧縮強度の観点から、1.0%未満(0.75%以下)とすべきことが確認された。
【0029】
図2は、圧縮強度と弾性係数の関係を示すグラフである。尚、この図において「◆」は、繊維混入率を0.0%とした比較例2の圧縮強度と弾性係数の測定結果、「○」は、繊維混入率を0.5%とした本発明1の測定結果、「×」は、繊維混入率を1.0%とした比較例3の測定結果である。また、この図には、本発明1(○)の測定結果の近似式が破線で示されているほか、土木学会が2012年に制定したコンクリート示方書(コン示)に示される普通骨材を用いた普通コンクリートの弾性係数が実線で、また、軽量骨材を用いた軽量コンクリートの弾性係数の実測値を近似した結果(近似式)が一点鎖線で、それぞれ示されている。
【0030】
図2からもわかるように、比較例2,3、及び、本発明1のコンクリート供試体における圧縮強度と弾性係数の関係は、繊維混入率に関係なく一定であり、設計上の圧縮強度50N/mm2に到達する時点における弾性係数は20kN/mm2程度であった。尚、有機繊維として混入されているPVA繊維の弾性係数は、上述の通り23kN/mm2であり、各供試体のコンクリートの弾性係数よりも大きい。本発明に係る「繊維補強軽量コンクリート」は、ベースコンクリートの弾性係数よりも大きな弾性係数を有する有機繊維を、ベースコンクリートに対して混入することが一つの要件となっているところ、本発明1のコンクリート供試体は、この要件を満たしていることになる。
【0031】
次に、上記表1に示す比較例4と本発明2を対象として、(一社)日本コンクリート工学会(JCI)によって定められている「JCI基準」の一つである「切欠きはりを用いたコンクリートの破壊エネルギー試験方法(JCI−S−001)」を実施し、破壊エネルギー及び引張軟化曲線を算出した。
【0032】
図3は、比較例4と本発明2の破壊エネルギーの算出結果(荷重−ひび割れ開口変位(CMOD)曲線)を示すグラフである。有機繊維を混入していない比較例4(L2)の破壊エネルギーは89N/m、一方、有機繊維を0.5%混入した本発明2(FL2)の破壊エネルギーは273N/mとなった。尚、このグラフから、有機繊維を混入した場合、コンクリートにひび割れが発生した後もコンクリートに荷重が残存することがわかる。この試験結果より、繊維混入による効果(耐荷性能向上効果)が確認された。
【0033】
図4は、有機繊維を0.5%混入した本発明2(FL2)の「荷重−CMOD曲線」(図3)の測定データから多曲線近似法により算出した引張軟化曲線である。この結果より、繊維補強軽量コンクリートの残存引張強度を算出すると0.3N/mm2となり、耐荷性能を解析的に評価するための繊維混入による効果を定量的に把握した。
【0034】
次に、上記試験結果(図1図4に示した測定データ及び算出データ)を用いて、下記の表2に示す4種類のプレストレストコンクリート床版の解析モデル(比較例5,6、及び、本発明3,4)を設定し、PC鋼材の緊張力を1000N/mm2とした場合における非線形FEM解析を実施した。尚、各解析モデルは、幅3.6m、長さ4.8m、高さ17cmの矩形断面を有する床版部材に、PC鋼材15.2m(SWPR7BL)を長さ方向の断面に36本配置する構成とした。
【0035】
【表2】
【0036】
図5は、上記表2の比較例5,6、及び、本発明3,4についての解析結果(荷重−変位関係)を示すグラフである。このグラフに示される通り、普通コンクリート(繊維混入なし)を用いた比較例5(PA−N)の耐力(最大荷重)が約800kNであったのに対し、軽量コンクリート(繊維混入なし)を用いた比較例6(PA−LL)の耐力は610kNとなり、比較例5よりも低い結果となった。一方、有機繊維(PVA繊維)を混入させた繊維補強軽量コンクリートを用いた本発明3(PA−LLF)、及び、本発明4(PA−LLF025)の耐力は、いずれも800kNを大幅に上回る結果となり、有機繊維を適切な割合で混入させることにより、耐荷性能を大幅に向上させることができることが確認された。
【0037】
図6は、上記表2の比較例5,6、及び、本発明3,4についての解析結果(最大主ひずみ−荷重関係)を示すグラフである。このグラフから、繊維補強軽量コンクリートを用いた本発明3(PA−LLF)、及び、本発明4(PA−LLF025)のプレストレストコンクリート床版の耐力が、普通コンクリートを用いた比較例5(PA−N)のプレストレストコンクリート床版の耐力を上回るには、最大主ひずみ20000×10−6(2.0%)まで破壊に至らないことが条件であることがわかる。
【0038】
尚、これらの解析結果(図5及び図6のグラフ)によると、PVA繊維をコンクリート体積に対し0.25%混入させた本発明4(PA−LLF025)は、普通コンクリートを用いた比較例5(PA−N)の耐力(800kN)を十分上回るものの、荷重が800kNを超えたあと、最大主ひずみが急増していることがわかる(図6参照)。混入したPVA繊維の破断によって耐荷力が決定されると考えられる。このため、有機繊維としてPVA繊維を添加する場合、繊維混入率の下限値は、0.25%となることがわかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6