(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856923
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】輻射式空調装置
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-230659(P2016-230659)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-87655(P2018-87655A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】591078929
【氏名又は名称】菊川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】宇津野 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秋雄
【審査官】
浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−256731(JP,A)
【文献】
特開2012−225517(JP,A)
【文献】
特開2008−241143(JP,A)
【文献】
実開昭64−001324(JP,U)
【文献】
特開2000−146205(JP,A)
【文献】
国際公開第95/019528(WO,A1)
【文献】
特開2013−190183(JP,A)
【文献】
特開2008−139016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有する上壁面及び底壁面と、断熱性を有する左右一組の側壁面と、断熱性を有する裏壁面と、前壁面を構成する金属板で形成された輻射パネルと、該輻射パネルと、前記上壁面及び前記底壁面と、前記左右一組の側壁面及び前記裏壁面によって構成される送風路に熱媒体空気を導入する熱媒体空気導入管と、を有し、前記左右一組の側壁面の少なくとも一方には前記熱媒体空気を放出するための放出孔が設けられ、
前記送風路を、前記熱媒体空気の放出孔に連なる空間である放出用送風路と、前記熱媒体空気導入管に連なる空間である熱交換送風路と、に仕切りながらも一部に連通孔が設けられた左右一対の放出用送風路壁を有し、前記熱媒体空気導入管が前記送風路の上下方向中央部よりも上部にある場合は、前記連通孔は前記送風路の上下方向中央部よりも下部に設けられ、前記熱媒体空気導入管が前記送風路の上下方向中央部よりも下部にある場合は、前記連通孔は前記送風路の上下方向中央部よりも上部に設けられていることを特徴とする輻射式空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輻射式空調装置において、前記熱媒体空気の放出孔として、前記送風路の上下方向中央部よりも上部に設けられた上部放出孔と、前記送風路の上下方向中央部よりも下部に設けられた下部放出孔と、前記上部放出孔または前記下部放出孔を塞ぐ遮断蓋と、を有することを特徴とする輻射式空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の輻射式空調装置において、前記熱交換送風路を上部熱交換送風路と下部熱交換送風路として上部と下部を仕切る風速増強板を有し、該風速増強板には、上側に位置する前記上部熱交換送風路と、下側に位置する前記下部熱交換送風路同士を連結する貫通孔として風速増強孔が設けられていることを特徴とする輻射式空調装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の輻射式空調装置において、前記輻射パネルの外面、すなわち、前記送風路に面していない外側の面が珪藻土クロス部材で覆われていることを特徴とする輻射式空調装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載の輻射式空調装置おいて、前記輻射パネルの表面には2以上の凹又は凸若しくは凹凸が形成されていることを特徴とする輻射式空調装置。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載の輻射式空調装置において、前記輻射パネルは中央部が、前記送風路の外側の向きに膨らんでいることを特徴とする輻射式空調装置。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6のいずれか1項に記載の輻射式空調装置において、前記熱媒体空気を供給するエアコンと、該エアコンに連結した断熱ダクトと、を有し、前記熱媒体空気導入管と前記断熱ダクトとが連結されていることを特徴とする輻射式空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輻射式空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンは冷風又は温風の吹き出しが直接、人に当たって不快を感じさせることがある。また、サーモスイッチにより、自動的にエアコンが入り切りされると、これに伴って室温が上下して不快を感じさせる場合もある。更に、エアコンスイッチの入り切りは、無駄な電力消費にもなる。
【0003】
一方、冷水や温水を熱媒体として輻射パネルを冷却若しくは加熱する空調装置がある。これは冷却されたパネルが遠赤外線を吸収し、又は加熱されたパネルが遠赤外線を放出することによって冷房と暖房を行うものである。しかし、これは熱媒体たる冷水若しくは温水を導入する導水設備が必要であるという課題がある。また、室内の人物が快適さを感じるには遠赤外線といった輻射熱だけでなく若干の冷温空気が肌に触れる必要があるが、この輻射式空調装置にはこの点が欠けているという課題もある。
【0004】
そこで、エアコンが調整する冷温空気を熱媒体として、輻射パネルを冷却又は加熱する輻射式空調装置が提案されている。たとえば、特許文献1に記載の輻射パネルユニットと輻射式空調装置は、天井から輻射パネルを懸架し、その輻射パネルと天井の間の空間を熱媒体としての空気の送風路として用いている。あるいは、壁から一定の間隔を空けて垂直な輻射パネルが取り付けられ、その輻射パネルと壁の間の空間を熱媒体としての空気の送風路とする場合もある。
【0005】
輻射パネルには多数のスリット孔が設けられていて、エアコンから吹出された冷温空気は、輻射パネルを冷却又は加熱しながら、パネル中に設けられた多数のスリット孔から室内に放出される。室内に放出された空気は再びエアコンに取り込まれる。このような空調装置は、冷水又は温水を導入する管は不要で、現場での設置工数は軽減されている。更にこの装置は、冷温空気が肌に触れることができる機能も備わっている。
【0006】
また、特許文献2には、輻射パネルと送風路を一体化して輻射パネル付ダクトとする構成をとる輻射式冷暖房装置が記載されている。同装置は長尺ダクト構造において、3面を断熱性ある壁とし、他の1面をアルミ製の板で輻射パネルとする構造を採っている。更に同装置では、輻射パネルの送風路側に、ついたて状のアルミ製伝熱部材が設けられている。これは、冷温空気が単に送風路内を素通りするのでなく、輻射パネルとの間で効率的に熱交換することを意図して設けられた構造である。この輻射パネル付ダクト構造も天井に据え付けたり、垂直な壁に据え付けたりされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−190183号公報
【特許文献2】特開2012−225517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1には、次の課題がある。すなわち、天井や壁へ格子状にフレームを渡して、据付具を取り付け、更に、輻射パネルをこれに懸架するという、現場での工数が要求される。よって、現場での工数を更に減らしたいという要求がある。また、同輻射式空調装置は輻射パネルに多数のスリット孔が開いているため、垂直に立てて壁に装着した場合に、足元に位置する多数のスリット孔から冷房するための冷気が放出されて、室内の人物が不快を感じるという課題がある。一方、特許文献2に記載の輻射式冷暖房装置は、冷温空気が室内に放出されないので、若干の冷温空気が肌に触れるという快適さを得ることができないという課題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的、すなわち解決しようとする技術的課題は、熱媒体たる冷温空気の送風路をダクトで構成しながらも、冷温空気が室内に放出可能で、しかも、冷房時に足元に冷気が放出されることを防止する輻射式空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、請求項1の発明を、断熱性を有する上壁面及び底壁面と、断熱性を有する左右一組の側壁面と、断熱性を有する裏壁面と、前壁面を構成する金属板で形成された輻射パネルと、該輻射パネルと、前記上壁面及び前記底壁面と、前記左右一組の側壁面及び前記裏壁面によって構成される送風路に熱媒体空気を導入する熱媒体空気導入管と、を有し、前記左右一組の側壁面の少なくとも一方には前記熱媒体空気を放出するための放出孔が設けられ、
前記送風路を、前記熱媒体空気の放出孔に連なる空間である放出用送風路と、前記熱媒体空気導入管に連なる空間である熱交換送風路と、に仕切りながらも一部に連通孔が設けられた左右一対の放出用送風路壁を有し、前記熱媒体空気導入管が前記送風路の上下方向中央部よりも上部にある場合は、前記連通孔は前記送風路の上下方向中央部よりも下部に設けられ、前記熱媒体空気導入管が前記送風路の上下方向中央部よりも下部にある場合は、前記連通孔は前記送風路の上下方向中央部よりも上部に設けられていることを特徴とする輻射式空調装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1に記載の輻射式空調装置において、前記熱媒体空気の放出孔として、前記送風路の上下方向中央部よりも上部に設けられた上部放出孔と、前記送風路の上下方向中央部よりも下部に設けられた下部放出孔と、前記上部放出孔または前記下部放出孔を塞ぐ遮断蓋と、を有することを特徴とする輻射式空調装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項3の発明を、請求項1に記載の輻射式空調装置において、前記熱交換送風路を上部熱交換送風路と下部熱交換送風路として上部と下部を仕切る風速増強板を有し、該風速増強
板には、上側に位置する前記上部熱交換送風路と、下側に位置する前記下部熱交換送風路同士を連結する貫通孔として風速増強孔が設けられていることを特徴とする輻射式空調装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項4の発明を、請求項1、請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の輻射式空調装置において、前記輻射パネルの外面、すなわち、前記送風路に面していない外側の面が珪藻土クロス部材で覆われていることを特徴とする輻射式空調装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項5の発明を、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4のいずれか1項に記載の輻射式空調装置おいて、前記輻射パネルの表面には2以上の凹又は凸若しくは凹凸が形成されていることを特徴とする輻射式空調装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0015】
請求項6の発明を、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載の輻射式空調装置において、前記輻射パネルは中央部が、前記送風路の外側の向きに膨らんでいることを特徴とする輻射式空調装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0016】
請求項7の発明を、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6のいずれか1項に記載の輻射式空調装置において、前記熱媒体空気を供給するエアコンと、該エアコンに連結した断熱ダクトと、を有し、前記熱媒体空気導入管と前記断熱ダクトとが連結されていることを特徴とする輻射式空調装置としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る構成では、輻射式空調装置の送風路を構成する、左右一組の側壁面の上部と下部に熱媒体空気の放出孔が設けられている。空気放出孔が、室内の人物に向いている輻射パネルではなく、その両脇に設けられているために室内へ放出された空気が、直接、人物にあたらないという効果がある。
【0018】
さらに、請求項1に係る構成では、放出孔の開いた放出用送風路と熱媒体空気導入路が設けられている熱交換送風路が、放出用送風路壁で仕切られているために熱媒体空気導入路から導入された熱媒体空気が直接放出孔から放出されることが防止できる効果がある。
【0019】
請求項2に係る構成では、輻射式空調装置の送風路を構成する、左右一組の側壁面の少なくも一面に、上部と下部に熱媒体空気の放出孔が設けられている。そして、これらを塞ぐ蓋も設けられている。前記送風路に冷却された空気を導入して冷房するときは、前記側壁面下部の放出孔を蓋で塞げば、冷却された空気は専ら、前記側壁面上部の放出孔から放出されるので、該冷房空間に居る人物の足元に冷気が放出されることが無いという効果を有する。また、前記送風路に加熱された空気を導入して暖房するときは、前記側壁面上部の放出孔を蓋で塞げば、加熱された空気は専ら、前記側壁面下部の放出孔から放出されるので、該冷房空間に居る人物の足元に暖気が放出されて快適な暖房を実現するという効果がある。
【0020】
請求項3に係る構成では、熱交換送風路内で、風速倍増板及びこれに設けられた風速増強孔が熱媒体空気の流路を絞るために、該熱媒体空気の流速が増加し、さらに、該熱媒体空気に乱流が発生して輻射パネル内側に吹き付けられるので、熱媒体空気と前記輻射パネル間で効率よく熱交換が行われるという効果がある。請求項4に係る発明では、輻射式空調ユニット外面である、輻射パネルの室内側の面に結露が生じる場合でも、この面を覆う珪藻土クロスが水分を吸湿するので、結露水が室内に染み出さないという効果がある。請求項5に係る発明では、輻射パネル表面に凹凸を設けることで表面積が増し、輻射効率が上がるという効果がある。請求項6に係る発明では、輻射パネルの中央部がやや外側、すなわち、室内側に膨らんでいるために、該輻射パネルの表面積を大きくできる効果がある。請求項7に係る発明では、室内の壁の広さに応じて、空調装置を自在に拡張できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】は本発明の第1実施形態に係る輻射式空調装置を示す図であって、(A)は同輻射式空調装置の斜視図、(B)は縦断面図である。
【
図2】は
図1に示す輻射式空調装置の図であって、(A)は
図1(B)に示す輻射式空調装置のX1−X1矢視断面図、(B)は壁への同輻射式空調装置据付け構造を示す斜視断面拡大図、(C)及び(D)は熱媒体空気の流れを示す縦断面図である。
【
図3】は本発明の第2実施形態に係る輻射式空調装置を示す図であって、(A)は輻射パネル表面に凹凸加工が施された断面図、(B1)は輻射パネルの中央部がやや外側に膨らんでいる例を示す断面図、(B2)は(B1)の膨らみを誇張して表した断面図である。
【
図4】は本発明の第3実施形態に係る輻射式空調装置の図であって、(A)は同輻射式空調装置の正面図、(B)は(A)のY1−Y1矢視図、(C)は主に冷房時における同輻射式空調装置の動作例を示す図、(D)は主に暖房時における同輻射式空調装置の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
〈送風路の構成〉
図1に基づいて、本発明の輻射式空調装置に係る第1実施形態を説明する。
図1(A)は同輻射式空調装置Aの斜視図、(B)は縦断面図である。同輻射式空調装置Aは、偏平な略六面体形状である。同輻射式空調装置Aは、空調の対象となる室内の壁面に据え付けられる。同輻射式空調装置Aの内部には送風路3が形成されている。送風路3は上下方向に延びた、左右一対の放出用送風路壁62によって、左右2つの放出用送風路32L及び32Rと、これらに挟まれる熱交換送風路31に仕切られている。更に、熱交換送風路31は後記する風速増強板6によって上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312に仕切られている。
【0023】
そして、熱交換送風路31の上下方向中央付近にはこれを上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312に仕切るする風速増強板6が設けられている。
図1(B)に示すように、風速増強板6には、風速増強孔61a,61b,61c及び61dが設けられていて、上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312を連通している。
【0024】
同輻射式空調装置Aには、図示されていないエアコン7で冷却又は加熱された空気は、熱媒体空気導入管15を通じて、まず、上部熱交換送風路311に導入される。導入された熱媒体空気は、後記する輻射パネル21との間で熱交換をする。つまり、熱媒体空気が冷却されている場合には、該熱媒体空気が輻射パネル21を冷やすと共に、該該熱媒体空気自身はその分暖められる。熱媒体空気が加熱されている場合には、該熱媒体空気が輻射パネル21を加熱すると共に、該熱媒体空気自身はその分冷やされる。その後、熱媒体空気は風速増強孔61a,61b,61c,61dを通って、下部熱交換送風路312へ移動し、ここでも輻射パネル21との間で熱交換を行う。
【0025】
熱交換送風路31と放出用送風路32L及び32Rを仕切る放出用送風路壁62との間には、それぞれ、熱媒体空気が通過する放出用連通口33L及び33Rが設けられている。放出用連通口33L及び33Rを通って、放出用送風路32L又は放出用送風路32Rに達した熱媒体空気は、後記する放出孔121a若しくは121bから室内へ放出される。そして室内の空気は前記図示されていないエアコン7に取り込まれて、再び冷却又は加熱される。
【0026】
図1(B)に示すように、熱媒体空気導入管15が上部熱交換送風路311に導入されている場合には、前記放出用連通口33L及び33Rは下部熱交換送風路312側、特に下方に設けられる。また、
図1(B)とは異なり、熱媒体空気導入管15が下部熱交換送風路312に導入されている場合には、前記放出用連通口33L及び33Rは上部熱交換送風路311側、特に上方に設けられる。このような構成にすると、熱媒体空気導入管15から導入された熱媒体空気が、送風路3を巡回せずに、直接室内へ放出されることを防止できる。
【0027】
同輻射式空調装置Aの送風路3は、上壁面11と、底壁面13と、左右一組の側壁面12,12と、該側壁面12に直交する壁面の内、裏壁面14及び、室内に面した前壁面2により、偏平な略6面体として形成されている。これらの壁面のうち、上壁面11と、底壁面13と、側壁面12及び裏壁面14は断熱部材で形成されている。これらは、例えば塩化ビニール樹脂で形成されていてもよいし、金属板で成形した後に表面に断熱部材を吹き付け塗装して形成してもよい。
【0028】
つまり、同輻射式空調装置Aの6面の内5面までが、断熱性を有している。そして、同輻射式空調装置Aは、裏壁面14が室内の壁に沿うように据え付けられている。
図1の例では、図示しないエアコンから冷却若しくは加熱された空気を導入する熱媒体空気導入管15は上方で下向き90度に折れ曲がってから、上壁面11に設けられている。
【0029】
〈放出孔〉
また、左右の側壁面12には、両側面の少なくとも一方には放出孔121が設けられている。放出孔121として、上部放出孔121aと下部放出孔121bがある。上部放出孔121aは側壁面12の上方に設けられており、送風路3内の熱媒体空気を室内上方へ放出する。一方、下部放出孔121bは側壁面12の下方に設けられており、送風路3内の熱媒体空気を室内下へ放出する。いずれの場合も、熱媒体空気導入管15を通じて送風路3に導入された熱媒体空気は、上部熱交換送風路311及び下部熱交換送風路312を巡回してから室内へ放出される。
【0030】
次に、
図2(A)に基づいて、同輻射式空調装置Aの断面構造を説明する。
図2(A)は
図1(B)に示す輻射式空調装置のX1−X1矢視断面図である。前壁面2は、室内に面した側から、珪藻土クロス23と、輻射パネル21とからなる2層構造である。側壁面12,12と裏壁面14は塩化ビニール等の断熱部材で形成されている。上壁面11と底壁面13も、塩化ビニール等の断熱部材で形成されている。輻射パネル21は、例えば、アルミニウム等の金属板で形成されている。また、側壁面12,12と、裏壁面14と、上壁面11及び底壁面13はアルミニウム等の金属で成形した後に表面に断熱部材を塗布してもよい。
【0031】
前記熱媒体空気導入管15から、送風路3に導入された熱媒体空気は、上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312を巡回して、輻射パネル21を冷却又は加熱、すなわち輻射パネル21との間で熱交換をする。その後、前記熱媒体空気は、放出送風路32L,32Rに面した上部放出孔121a又は下部放出孔121bから室内へ放出される。
【0032】
上述したように、熱交換送風路31と放出送風路32L,32Rとは、放出用送風路壁62で仕切られている。上部放出孔121aと下部放出孔121bは、輻射パネル21の両脇に設けられているために、ここから室内へ放出される空気は人物に直接あたらないという効果がある。このような、効果を得るには、放出孔は側壁面12にありさえすれば、必ずしも、上部放出孔121aと下部放出孔121bというように、上下に分かれて設けられている必要はない。
【0033】
〈放出遮断蓋〉
また、上部放出孔121aと下部放出孔121bにはこれらを交互に開閉する放出遮断蓋5が設けられている。これは
図2(C)及び(D)に示すように、側壁面12に沿う細長い蓋体52に、取手51が設けられたものである。取手51は使用者によって操作される操作部であって、使用者はスライド溝122に沿ってこれを上下にスライドさせることができる。例えば、上方へスライドさせれば蓋体52は上方へ移動する。そして、蓋体52の上部が上部放出孔121aを覆うことにより閉じる。同時に、前記蓋体52の下部は、下部放出孔121bから外れて開放させることになる。
【0034】
一方、下方へスライドさせれば蓋体52は下方へ移動して、上部放出孔121aを開放させ、下部放出孔121bを閉じることとなる。蓋体52を所定の位置で止めるには、例えば、取手51と蓋体52との連結部においてねじ構造を設けることもできる。このようにすると、取手51を所定角度だけ右に回すと蓋体52がその位置で締め付け固定され、取手51を所定角度だけ左に回すと蓋体52の締め付けが解除されるようにすることができる。
【0035】
〈風速増強板〉
送風路3を上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312に仕切る風速増強板6には、例えば円形の風速増強孔61a,61b,61c,61dが設けられている。風速増強孔61a,61b,61c,61dは上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312を送風路として連結すると共に、送風路を絞り込むことによって、熱媒体空気の送風速度を増強する。この作用により輻射パネル21が効率的に冷却され又は加熱されることとなる。風速増強板6はアルミニウムのような熱伝導性のよい部材でも良いし、塩化ビニールのような断熱性のよい部材でも良い。
【0036】
〈壁面への据付〉
次に、
図2(B)に基づいて、同輻射式空調装置Aの室内壁への据付け例を説明する。まず、2つの据付具41を適宜幅で、室内壁Wに対してアンカーボルト43で固定する。次いで、固定された据付具41に、ダクトボルト42で同輻射式空調装置Aを据付ける。例えば、側壁面12には、該ダクトボルト42が楽に通り抜けられる大きさのボルト用大穴123が開けられている。この大穴を通して、ダクトボルト42によって、側壁面12と据付具41が締付けられる。
【0037】
更に、輻射パネル21の室内側表面は珪藻土クロス23で覆われている。珪藻土クロスは水分を吸湿する部材である。この構成にすることにより、輻射パネル21の室内側表面に結露が生じたとしても、珪藻土クロスが水分を吸湿するので、結露水が室内に染み出さないという効果がある。珪藻土クロスとは珪藻土を使った壁紙のことである。
【0038】
〈冷房時〉
ここで、
図2(C)に基づいて同輻射式空調装置Aの冷房機能について説明する。室内を冷房するに際しては、取手51を下方へスライドさせて、予め上部放出孔121aを開放して、下部放出孔121bを閉じておく。そして、図示しないエアコン7で冷却された空気を、熱媒体空気導入管15を通じて、同輻射式空調装置Aの熱交換送風路31内に送り込む。すると、冷却された空気は上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312巡回しながらアルミ製の輻射パネル21と熱交換をする。すなわち、冷却されていた空気は次第に暖められ、一方、輻射パネル21は冷却される。
【0039】
冷却された輻射パネル21は室内の壁の壁に据え付けられており、室内の壁や、室内に居る人が放射した遠赤外線を吸収する。この作用により、室内の壁から来る遠赤外線を大幅に減じることができて、暑さを感じないようにすることができる。人は絶えず遠赤外線を四方八方に放出していて、室内の壁方向にも放出している。このような状況で、壁側からも遠赤外線による熱放射を受けたり、自らが放出した熱放射が壁で反射して再び自分に向けて放射されたりすると熱さを感じる。しかし、輻射パネル21により壁が冷やされていれば、壁からの熱放射を受けることが無く、暑さを感じることが無い。
【0040】
さらに、本発明に係る輻射式空調装置Aは左右一組の側壁面12,12の少なくともいずれか一方には、上部放出孔121aと下部放出孔121bが設けられている。そして上述のとおり、下部放出孔121bは閉鎖されている。そうすると、開放されている上部放出孔121aから熱媒体空気が室内に放出される。この、室内に放出される空気はエアコンで冷却されたものであるが、熱交換送風路31内の熱交換により幾分暖められている。これが室内に静かな空気の揺らぎをもたらす。人は絶えず放熱しているため、自らの放熱で熱せられた空気を身にまとった状態である。これが上述の静かな空気の揺らぎによって除去されるので快適な冷房を実現することができる。
【0041】
特許文献1に記載の輻射式空調ユニットを壁に設ければ、この輻射式空調装置も壁を冷却し、冷却された空気が室内に放出される。しかし、特許文献1の装置は、輻射パネル自体に多数の放出孔(スリット125)が開けられている。この構成では、エアコンからの冷え切った空気がそのまま部屋の下方へ放出されることなり、床付近に冷えた空気が滞留してしまう虞がある。一方、本発明の輻射式空調装置Aは下部放出孔121bを塞ぐことにより、送風路3内で適度に冷却度が緩んだ空気を、上部放出孔121aから放出することにより、冷たい空気が床付近に対流するという課題を解消する効果がある。
【0042】
〈暖房機能〉
次に、
図2(D)に基づいて、本発明の第1実施形態に係る輻射式空調装置Aの暖房機能について説明する。室内を暖房するに際しては、取手51を上方へスライドさせて、予め上部放出孔121aを閉鎖して、下部放出孔121bは開放状態しておく。そして、図示しないエアコン7で加熱された空気を同輻射式空調装置Aの熱交換送風路31内に送り込む。すると、加熱された空気は上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312巡回しながらアルミ製の輻射パネル21と熱交換をする。
【0043】
すなわち、加熱されていた空気は次第に冷やされ、一方、輻射パネル21は加熱される。そして、下部放出孔121bを通じて室内に、静かに暖かい空気が放出される。加熱された輻射パネル21は遠赤外線が放出され、室内の人物を暖める。併せて、放出された空気が作り出す静かな揺らぎが快適な暖房を実現する。
【0044】
〈放出孔の数と開口面積〉
上述したように、熱媒体空気がエアコン7から熱媒体空気導入管15を通じて、輻射式空調装置Aの送風路3に送り込まれる。そして、送り込まれた分は、上部放出孔121aまたは下部放出孔121bから室内に放出される。このとき、上部放出孔121aまたは下部放出孔121bのいずれか一方は蓋で塞がれている。したがって、上部放出孔121a及び下部放出孔121bはそれぞれ、単独で、熱媒体空気導入管15から導入された熱媒体空気を放出するのに十分な開口を確保するように、放出孔の数や開口面積を確保する必要がある。
【0045】
同輻射式空調装置では、エアコン空気が直接、室内の人物にあたることを防止することができる。更に、壁に据え付けた輻射式空調装置にエアコンの空気を、熱媒体空気導入管を通じて導入するだけで、輻射式空調装置Aを構築できる効果がある。更に、輻射式空調装置Aを構成する、左右一組の側壁面に熱媒体空気の放出孔が設けられているので、送風路をダクトで構成しながらも、冷温空気が室内に放出可能であるという効果がある。
【0046】
更に、上部放出孔121aを塞いで、下部放出孔121bから暖められた空気が放出されるようにすることができる。こうすると、比重の軽い暖められた空気は上方へ移動して、室内に静かな対流を生じさせることができるという効果がある。また、冷房時には、下部放出孔121bを塞ぐことにより、冷たい空気が床付近に滞留することを防止できる効果がある。
【0047】
[第2実施形態]
図3に基づいて、第2実施形態に係る輻射式空調装置の説明をする。同輻射式空調装置は、第1実施形態における輻射式空調装置の輻射パネル21の表面に2以上の凹又は凸若しくは凹凸が形成されているものを輻射パネル21Bとして用いた輻射式空調装置である(
図3(A))。輻射パネル21Bのように、表面に凹凸を設ける、いわゆるエンボス加工を施すことにより、表面積を増大し、輻射パネルとしての輻射効率を向上させる効果を発揮する。
【0048】
また、これとは別に、
図3(B1)に示すように、輻射パネル21Cの中央部は下方にやや膨らませて形成されこともできる。水平線Hと比較するとこの様子が分かる。
図3(B2)には、この膨らみが誇張して表現されている。このような構成とすることで、遠赤外線等の輻射線8が放射状に拡散し、受け側の範囲を広げる効果がある。以上、表面に凹凸を有する輻射パネル12Bと、中央部下方がやや膨らんだ輻射パネル21Cを別個に実施してもよいし、両者を組み合わせて実施してもよい。
【0049】
[第3実施形態]
次に、
図4に基づいて、本発明の輻射式空調装置に係る第3実施形態を説明する。
図4(A)は同輻射式空調装置の正面図、(B)はY1−Y1矢視図である。同輻射式空調装置は、第1実施例または第2実施例に係る輻射式空調装置Aの複数台を室内の壁面に並べて据付けたものである。ただし、上部放出孔121a及び下部放出孔121bを開閉するのは、これらを交互に開閉できる上述した取手51と蓋体52による放出遮断蓋5ではなく、各放出孔を個別に開閉する上部遮断蓋5a及び下部遮断蓋5bである。上部放出孔121aは上部遮断蓋5aにより開閉され、下部放出孔121bは下部遮断蓋5bにより開閉される。
【0050】
図4(C)は上部放出孔121aを開放し、下部放出孔121bを下部遮断蓋5bにより閉鎖した状態を示す図である。熱媒体空気は室内の上部から放出されるので、上記したように冷房に適した状態である。
図4(D)は上部放出孔121aを上部遮断蓋5aで閉鎖し、下部放出孔121bを開放した状態を示す図である。熱媒体空気は室内の下部から放出されるので、上記したように暖房に適した状態である。
【0051】
各輻射式空調装置Aには、エアコン7で冷却若しくは加熱されるなどして温度調整された熱媒体空気が、断熱ダクト71と熱媒体空気導入管15を通して送られる。送られた熱媒体空気は、上部熱交換送風路311と下部熱交換送風路312を巡回する際に、輻射式空調装置Aの輻射パネル21を冷却若しくは加熱する。その後、その熱媒体空気は上部放出孔121aまたは下部放出孔121bから室内に放出される。室内に放出された熱媒体空気は、上述の輻射パネル21を冷却若しくは加熱際に、その冷気または暖気は緩和されている。
【0052】
このように、冷気または暖気が緩和された空気が静かに室内に放出されることで、室内に居る人にとっては心地よい冷暖房が実現される。これと相俟って、輻射パネル21による遠赤外線の吸収若しくは放射が効果的な冷暖房を実現する。室内に放出された熱媒体空気はエアコン吸入口72からエアコン7に吸入されて、再び、冷却若しくは加熱される。以上の構成をとることで、同輻射式空調装置は、室内の壁面積に応じて冷暖房領域を適宜拡大することができる。
【符号の説明】
【0053】
A…輻射式空調装置、W…室内壁、11…上壁面、12…側壁面、121…放出孔、
121a…上部放出孔、121b…下部放出孔、122…スライド溝、
123…ボルト用大穴、13…底壁面、14…裏壁面、15…熱媒体空気導入管、
2…前壁面、21…輻射パネル、23…珪藻土クロス、3…送風路、
31…熱交換送風路、311…上部熱交換送風路、312…下部熱交換送風路、
32L,32R…放出用送風路、33L,33R…放出用連通口、41…据付具、
42…ダクトボルト、43…アンカーボルト、5…放出遮断蓋、51…取手、
52…蓋体、5a…上部遮断蓋、5b…下部遮断蓋、6…風速増強板、
61a,61b,61c,61d…風速増強孔、62…放出用送風路壁、7…エアコン、
71…断熱ダクト、72…エアコン吸入口、8…輻射線。