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特許6856951ミキサー制御システム及びミキサー制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856951
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ミキサー制御システム及びミキサー制御方法
(51)【国際特許分類】
   A21C 1/00 20060101AFI20210405BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20210405BHJP
   A21D 8/02 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   A21C1/00 A
   G05B19/418 Z
   !A21D8/02
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-146806(P2019-146806)
(22)【出願日】2019年8月8日
(65)【公開番号】特開2021-23269(P2021-23269A)
(43)【公開日】2021年2月22日
【審査請求日】2020年8月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519291814
【氏名又は名称】株式会社ブレッドソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧田 雄治
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/025192(WO,A1)
【文献】 特開2004−242603(JP,A)
【文献】 特開2001−275550(JP,A)
【文献】 特開平04−058841(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0272024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00−1/14
A47J 43/08
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品毎に最適なミキシング状態の食用生地が個々のミキサー装置で再現性よく製造されるように製造対象製品の生地製造指示データと製造時の環境データとに基づいて、前記個々のミキサー装置を制御するミキサー制御システムであって、
前記ミキサー制御システムは、
前記製造対象製品の食用生地を製造するミキサー装置と、
前記ミキサー装置に接続され、前記ミキサー装置で前記製造対象製品の食用生地用に最適化されたミキシング動作が実行されるように前記ミキサー装置に対応したミキサー制御データを生成して前記ミキサー装置に送信するミキサー管理装置と、
前記ミキサー管理装置に接続され、前記ミキサー装置に対応付けられた製品名毎の食用生地の標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報が格納されたデータベースと、を備え、
前記ミキサー装置は、
前記製造対象製品の食用生地の製造指示を受け付ける指示入力部と、
粉体材料及び仕込み水を含む原材料をミキシングするミキシング部と、
前記製造対象製品の食用生地用に生成された前記ミキサー制御データに基づいて前記ミキシング部のミキシング動作を制御する制御部と、
前記製造時の環境データとして、前記ミキシング部の周囲環境の室温、湿度、及び前記原材料の温度を、各種センサーを用いて取得し、前記製造時の前記ミキシング部の回転速度及びトルク値を所定のセンサーを用いてモニタリングするセンサー部と、
前記指示入力部で受け付けた製品名及び仕込み量を含む生地製造指示データ並びに前記センサー部で取得された前記環境データを前記ミキサー管理装置に送信し、前記ミキサー管理装置から前記製造対象製品の食用生地用に生成された前記ミキサー制御データを受信するデータ通信部と、を含み、
前記ミキサー管理装置は、
前記ミキサー装置から受信した前記生地製造指示データに基づいて、前記データベースから、前記ミキサー装置に対応付けられた前記製造対象製品の食用生地の標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報を取得するミキシング条件取得部と、
前記ミキサー装置から受信した前記製造時の環境データと、前記取得されたミキシング条件補正情報とを使用して、前記取得された標準ミキシング制御情報に含まれる前記ミキサー装置のミキシング部の回転速度の目標値を最適化した前記ミキサー装置用のミキサー制御データを生成する制御データ生成部と、含み、
前記ミキサー装置の制御部は、
前記センサー部から逐次受信した前記ミキシング部の回転速度のモニタリングデータに基づいて、前記ミキシング部の回転速度が、前記ミキサー制御データで指定された回転速度の目標値を維持するように前記ミキシング部を制御することを特徴とするミキサー制御システム。
【請求項2】
前記標準ミキシング制御情報は、前記製造対象製品の食用生地の仕込み量毎に前記ミキシング動作に含まれる所定の段階のそれぞれにおける前記ミキシング部の回転速度の目標値を含み、
前記ミキシング条件補正情報は、前記ミキシング部の周囲環境の室温及び/又は湿度を変数として、製造対象製品毎に食用生地の仕上がり温度が所定の目標温度に到達するように、前記ミキシング動作に含まれる所定の段階のそれぞれにおける前記ミキシング部の回転速度の目標値を補正するための計算式を含み、
前記制御データ生成部は、
前記ミキサー装置から受信した前記環境データを、前記計算式の対応する変数に代入して算出された補正値で、前記ミキシング動作に含まれる所定の段階のそれぞれにおける前記ミキシング部の回転速度の目標値を補正する最適化処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のミキサー制御システム。
【請求項3】
前記最適化処理された前記ミキサー装置用のミキサー制御データは、前記ミキシング動作に含まれる所定の段階における前記ミキシング部の目標力積値をさらに含み、
前記ミキサー装置の制御部は、前記モニタリングされたトルク値から算出した力積値と前記目標力積値とに基づいて、前記所定の段階における前記ミキシング部の回転時間を調節することを特徴とする請求項2に記載のミキサー制御システム。
【請求項4】
前記ミキサー制御システムは、
前記ミキサー装置を複数含み、
前記ミキサー管理装置は、前記複数のミキサー装置のそれぞれに接続され、
前記複数のミキサー装置のそれぞれで、前記製造対象製品毎の食用生地用に最適化されたミキシング動作が実行されるように前記複数のミキサー装置のそれぞれを制御するためのミキサー制御データをそれぞれ生成して、前記複数のミキサー装置のそれぞれに送信することを特徴とする請求項1に記載のミキサー制御システム。
【請求項5】
製品毎に最適なミキシング状態の食用生地が個々のミキサー装置で再現性よく製造されるように製造対象製品の生地製造指示データと製造時の環境データとに基づいて、前記個々のミキサー装置を制御するミキサー制御方法であって、
前記製造対象製品の食用生地を製造するミキサー装置と、前記ミキサー装置に接続され、前記ミキサー装置で前記製造対象製品の食用生地用に最適化されたミキシング動作が実行されるように前記ミキサー装置に対応したミキサー制御データを生成して前記ミキサー装置に送信するミキサー管理装置と、前記ミキサー管理装置に接続され、前記ミキサー装置に対応付けられた製品名毎の食用生地の標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報が格納されたデータベースと、を備えるミキサー制御システムにおいて、
前記ミキサー装置が、
前記製造対象製品の食用生地の製造指示を受け付ける段階と、
前記受け付けた製造指示で指定された製品名及び仕込み量を含む生地製造指示データ並びに前記ミキサー装置のセンサー部で取得された前記製造時の環境データとして前記ミキサー装置のミキシング部の周囲環境の室温、湿度、及び原材料の温度を前記ミキサー管理装置に送信する段階と、
前記ミキサー管理装置が、
前記ミキサー装置から受信した前記生地製造指示データに基づいて、前記データベースから、前記ミキサー装置に対応付けられた前記製造対象製品の食用生地の前記標準ミキシング制御情報及び前記ミキシング条件補正情報を取得する段階と、
前記ミキサー装置から受信した前記製造時の環境データと、前記ミキシング条件補正情報と、を使用して、前記取得された標準ミキシング制御情報に含まれる前記ミキサー装置のミキシング部の回転速度の目標値を最適化した前記ミキサー装置用のミキサー制御データを生成する段階と、
前記生成されたミキサー制御データを前記ミキサー装置に送信する段階と、
前記ミキサー装置が、前記センサー部から逐次受信した前記ミキシング部の回転速度のモニタリングデータに基づいて、前記ミキシング部の回転速度が、前記ミキサー制御データで指定された回転速度の目標値を維持するように前記ミキシング部を制御する段階と、を有することを特徴とするミキサー制御方法。
【請求項6】
前記標準ミキシング制御情報及び前記ミキシング条件補正情報を取得する段階は、
前記ミキサー管理装置が、前記ミキサー装置から受信した前記生地製造指示データに基づいて、前記データベースを検索し、
前記生地製造指示データで指定された製品名及び仕込み量に対応する前記ミキシング動作に含まれる所定の段階のそれぞれにおける前記ミキシング部の回転速度の目標値と、
前記ミキサー装置から受信した前記製造時の環境データに含まれる前記ミキシングの周囲環境の室温及び/又は湿度を変数として、製造対象製品毎に食用生地の仕上がり温度が所定の目標温度に到達するように、前記ミキシング動作に含まれる所定の段階のそれぞれにおける前記ミキシング部の回転速度の目標値を補正するための計算式と、を取得する段階をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のミキサー制御方法。
【請求項7】
前記ミキサー制御データを生成する段階は、
前記ミキサー管理装置が、前記ミキサー装置から受信した前記製造時の環境データに含まれる前記ミキシング部の周囲環境の室温及び湿度を、前記取得した計算式の対応する変数に代入して算出された補正値で、前記ミキシング動作に含まれる所定の段階のそれぞれにおける前記ミキシング部の回転速度の目標値を補正する最適化処理を行う段階をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のミキサー制御方法。
【請求項8】
前記ミキサー制御データを生成する段階は、
前記ミキシング動作に含まれる所定の段階における前記ミキシング部の目標力積値を含む、前記最適化処理された前記ミキサー装置用のミキサー制御データを生成する段階をさらに含み、
前記ミキサー装置が、前記ミキシング部を制御する段階は、前記モニタリングされたトルク値から算出した力積値と前記目標力積値とに基づいて、前記所定の段階における前記ミキシング部の回転時間を調節する段階をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のミキサー制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサー制御システムに関し、より詳しくは、製品毎に最適なミキシング状態の食用生地が個々のミキサー装置で安定して製造されるように各ミキサー装置を制御するミキサー制御システム及びミキサー制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉を主原材料とするパン等を製造するミキシングの製造工程において、主原材料の温度、仕込み水温、室温及び湿度等の製造時の環境条件や、原材料の仕込み量に拘わらず、生地の仕上がり温度を常に一定に保つことは容易ではない。したがって、異なる環境条件下でも、ミキサー装置の回転速度、回転時間等を調整して、食用生地の仕上がり温度を一定にするためのミキシングの自動制御が求められている。
【0003】
従来技術として、例えば、特許文献1には、予め試行して得られたミキサーの回転速度、パン生地のミキシング終了時間、及びミキシング終了時までのパン生地の絶対温度の平均値との関係式を用いて、以後に実施されるミキシングを得られた関係式を利用して管理するミキシング管理法が開示されている。しかし、この方法では、パン生地の仕込み量に応じたミキサーの回転速度や回転時間の調整は行われていない。又、製造環境の変化に対しては、ミキシング中のパン生地の平均温度だけをとらえており、その他の仕込み水温や室温及び湿度等に対する対策はとられていないため、パン生地の仕上がり温度に、ばらつきが発生する問題を含んでいる。
【0004】
一方、特許文献2には、混捏終了時の生地温度が目標生地温度に近いものとなるように、混捏開始前にミキシングボウルを冷却し、混捏開始後のミキシングボウルの温度管理を不要とする技術が開示されているが、混捏時に発生する熱量をミキサー駆動有効電力から算出する一方、仕込み量や環境条件の変化に対して、ミキサーの回転速度や回転時間を最適化することは行われていない。このため、混捏終了時の生地温度は目標生地温度に近いものの、生地の弾力や伸びが一定しないという問題がある。
また、これらの先行技術では、ミキサー装置自体の特性差や性能ばらつきによって、生地の仕上がり状態が、ミキサー装置毎に異なるという問題が看過されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−275550号公報
【特許文献2】特開2011‐62113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、製品毎に最適なミキシング状態の食用生地が個々のミキサー装置で再現性よく製造されるように、個々のミキサー装置から入力された製造対象製品の生地製造指定データと、製造時の環境データとに基づいて、個々のミキサー装置に対応したミキサー制御データを生成して各ミキサー装置を制御するミキサー制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるミキサー制御システムは、製品毎に最適なミキシング状態の食用生地が個々のミキサー装置で再現性よく製造されるように製造対象製品の生地製造指示データと製造時の環境データとに基づいて、前記個々のミキサー装置を制御するミキサー制御システムであって、
前記ミキサー制御システムは、前記製造対象製品の食用生地を製造するミキサー装置と、前記ミキサー装置に接続され、前記ミキサー装置で前記製造対象製品の食用生地用に最適化されたミキシング動作が実行されるように前記ミキサー装置に対応したミキサー制御データを生成して前記ミキサー装置に送信するミキサー管理装置と、前記ミキサー管理装置に接続され、前記ミキサー装置に対応付けられた製品名毎の食用生地の標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報が格納されたデータベースと、を備え、前記ミキサー装置は、前記製造対象製品の食用生地の製造指示を受け付ける指示入力部と、粉体材料及び仕込み水を含む原材料をミキシングするミキシング部と、前記製造対象製品の食用生地用に生成された前記ミキサー制御データに基づいて前記ミキシング部のミキシング動作を制御する制御部と、前記製造時の環境データとして、前記ミキシング部の周囲環境の室温、湿度、及び前記原材料の温度を、各種センサーを用いて取得し、前記製造時の前記ミキシング部の回転速度及びトルク値を所定のセンサーを用いてモニタリングするセンサー部と、前記指示入力部で受け付けた製品名及び仕込み量を含む生地製造指示データ並びに前記センサー部で取得された前記環境データを前記ミキサー管理装置に送信し、前記ミキサー管理装置から前記製造対象製品の食用生地用に生成された前記ミキサー制御データを受信するデータ通信部と、を含み、前記ミキサー管理装置は、前記ミキサー装置から受信した前記生地製造指示データに基づいて、前記データベースから、前記ミキサー装置に対応付けられた前記製造対象製品の食用生地の標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報を取得するミキシング条件取得部と、前記ミキサー装置から受信した前記製造時の環境データと、前記取得されたミキシング条件補正情報とを使用して、前記取得された標準ミキシング制御情報に含まれる前記ミキサー装置のミキシング部の回転速度の目標値を最適化した前記ミキサー装置用のミキサー制御データを生成する制御データ生成部と、含み、前記ミキサー装置の制御部は、前記センサー部から逐次受信した前記ミキシング部の回転速度のモニタリングデータに基づいて、前記ミキシング部の回転速度が、前記ミキサー制御データで指定された回転速度の目標値を維持するように前記ミキシング部を制御することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるミキサー制御方法は、製品毎に最適なミキシング状態の食用生地が個々のミキサー装置で再現性よく製造されるように製造対象製品の生地製造指示データと製造時の環境データとに基づいて、前記個々のミキサー装置を制御するミキサー制御方法であって、
前記製造対象製品毎の食用生地を製造するミキサー装置と、前記ミキサー装置に接続され、前記ミキサー装置で前記製造対象製品の食用生地用に最適化されたミキシング動作が実行されるように前記ミキサー装置に対応したミキサー制御データを生成して前記ミキサー装置に送信するミキサー管理装置と、前記ミキサー管理装置に接続され、前記ミキサー装置に対応付けられた製品名毎の食用生地の標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報が格納されたデータベースと、を備えるミキサー制御システムにおいて、前記ミキサー装置が、前記製造対象製品の食用生地の製造指示を受け付ける段階と、前記受け付けた製造指示で指定された製品名及び仕込み量を含む生地製造指示データ並びにセンサー部で取得された前記環境データを前記ミキサー管理装置に送信する段階と、前記ミキサー管理装置が、前記ミキサー装置から受信した前記生地製造指示データに基づいて、前記データベースから、前記ミキサー装置に対応付けられた前記製造対象製品の食用生地の前記標準ミキシング制御情報及び前記ミキシング条件補正情報を取得する段階と、前記ミキサー装置から受信した前記製造時の環境データと、前記ミキシング条件補正情報と、を使用して、前記取得された標準ミキシング制御情報に含まれる前記ミキサー装置のミキシング部の回転速度の目標値を最適化した前記ミキサー装置用のミキサー制御データを生成する段階と、前記生成されたミキサー制御データを前記ミキサー装置に送信する段階と、前記ミキサー装置が、前記センサー部から逐次受信した前記ミキシング部の回転速度のモニタリングデータに基づいて、前記ミキシング部の回転速度が、前記ミキサー制御データで指定された回転速度の目標値を維持するように前記ミキシング部を制御する段階と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製品毎に最適なミキシング状態の食用生地を、異なる製造環境下においても、個々のミキサー装置で再現性よく安定して製造することができる。
また、本発明によれば、製品の仕込み量及び製造環境のモニタリングデータに基づいて、個々のミキサー装置に対して最適化されたミキサー制御データが生成されて、当該ミキサー装置が自動制御されるので、作業が効率化され、職人のスキルに依らず品質ばらつきの少ない食用生地を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態によるミキサー制御システムの構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態によるミキサー装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態によるミキサー管理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】本実施形態における標準ミキシング条件テーブルの一例を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態によるミキサー制御システムの構成を示す概略図である。
図6】本発明の一実施形態によるミキサー制御方法におけるミキサー装置とミキサー管理装置との間のデータ送受信の処理手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態によるミキサー装置に送信される製造指示入力用画面の一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態によるミキサー制御方法におけるミキサー装置のミキサー制御データを生成する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態によるミキサー制御システムの構成を示す概略図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態によるミキサー制御システム1は、パン製品に使用される食用生地を製造するミキサー装置10と、ミキサー装置10で製造される食用生地が最適な仕上がり状態になるように当該ミキサー装置のミキシング動作を制御するためのミキサー制御データを生成して当該ミキサー装置10に提供するミキサー管理装置20と、ミキサー装置10に提供されるミキサー制御データを生成するために必要な各種情報が格納されたデータベース30とを備える。ミキサー管理装置20は、ミキサー装置10及びデータベース30と通信可能に接続される。本発明の一実施形態によるミキサー管理装置20は、1つ又は複数のミキサー装置10と接続可能に構成され、接続されるミキサー装置10の台数は特に限定されない。また、データベース30は、ミキサー管理装置20内に設けられるか、または個別のストレージ装置若しくはサーバコンピュータに構築されてもよい。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態によるミキサー装置の構成例を示すブロック図である。
【0015】
図2に示すように、本発明の一実施形態によるミキサー装置10は、指示入力部11、ミキシング部12、制御部13、センサー部14、データ通信部15、表示部16、及び記憶部17を含む。
【0016】
指示入力部11は、キーパッドやタッチパネルなどの入力手段(図示せず)を含み、このような入力手段を介して、製造対象製品の食用生地の製造指示を受け付ける。製造指示には、例えば、製造対象製品の製品名及び仕込み量(重量)が含まれ、選択若しくは入力された情報は製造指示データ(以下、生地製造指示データという)として、ミキサー管理装置20に送信される。なお、入力手段には、音声入力装置なども適用可能である。
【0017】
ミキシング部12は、粉体材料及び仕込み水を含む原材料をミキシングする手段である。ミキシング部12は、粉体材料及び仕込み水を含む原材料が投入されるミキシングボウル(以下、ボウルという)12aと、ボウル12a内に投入された原材料をミキシングするフック12bと、フック12bを回転させるモーター12cとを備える。さらに、ボウル12aを回転させるための別個のモーターを含んでもよい。なお、本発明はこれに限定されず、ミキシング部12の形態や容量等に特に制限はない。また、フック及びボウルの形状や大きさも、ミキシングする食用生地の原材料、配合割合、重量等に応じて適宜選択され得る。
【0018】
本発明の一実施形態において、フック12bを駆動して回転させるモーター12c(及びボウル12aを駆動して回転させるモーター)は、例えば、インバータ制御により、回転速度及び駆動力を無段階に変化させることが可能であり、後述するミキサー制御データに基づいて、フック及びボウルの回転速度を、製造対象製品に応じて予め設定された所定の回転速度を維持するように制御することができる。なお、モーターの形式及び駆動制御方式は、回転速度及び駆動力を無段階に変化可能なものであれば、特に限定されない。
【0019】
制御部13は、製造対象製品の食用生地用に生成されたミキサー制御データに基づいて、ミキシング部12のミキシング動作を制御する。具体的には、フック及びボウルをそれぞれ駆動する各モーターの回転速度と回転時間とを制御する。また、制御部13は、後述のセンサー部14で取得された各モーターの駆動状態を表す所定の検知信号(例えば、駆動電流)からトルク値を算出し、トルク値を用いた力積により、生地のミキシング状態を判定して、所定の処理を実行する。制御部13は、図示しないCPU(中央処理装置)及びROM、RAM等の記憶装置を含んで構成され、ミキサー装置10全体の制御を行う。但し、本発明はこれに限定されず、CPUを持たない(含まない)、いわゆるシーケンサーで構成されてもよい。
【0020】
センサー部14は、ミキシング部12の周囲環境としての気温及び湿度、例えば、ミキサー装置10が設置されている作業室の室温及び湿度と、原材料の温度(粉体材料の温度及び仕込み水の水温)とを、それぞれ対応する各種センサーを用いて取得する。各種センサーは、それぞれ所定の場所の所定位置に配置され、ミキサー装置10の起動後、継続的に取得したそれぞれの検知信号を順次、センサー部14に送信するように構成される。また、センサー部14は、食用生地の温度、ミキシング部のモーター12cの回転速度及びトルク値をモニターするための検知信号を、それぞれ所定のセンサーを用いて取得する。例えば、食用生地の温度を測定するセンサーには、サーモパイルなどが用いられ、モーターの回転速度の測定には、光センサーが使用される。また、モーターのトルク値の測定には、モーター電流センサー又はトルクセンサーが用いられ得るが、これに限定されない。
【0021】
センサー部14は、各種センサーから受信した検知信号をそれぞれデジタル変換処理した数値データのうち、少なくともミキシング部12の周囲環境の室温及び湿度と、原材料の温度(粉体材料の温度及び仕込み水の水温)とを環境データとして、データ通信部15に送信する。また、ミキシング動作中は、ミキシング部のモーター12cの回転速度及びトルク値を測定するための所定の検知信号をリアルタイムでモニタリングし、逐次、制御部13に送信する。
【0022】
データ通信部15は、所定の有線または無線通信方式でミキサー管理装置20に接続され、指示入力部11で受け付けた製品名及び仕込み量を含む生地製造指示データ、並びにセンサー部14で取得された環境データをミキサー管理装置20に送信し、ミキサー管理装置20から製造対象製品毎の食用生地用に生成されたミキサー制御データを受信する。なお、データ通信部15の通信方式は特に限定されない。
【0023】
表示部16は、制御部13から出力される当該ミキサー装置の設定及び制御に関連する情報を表示パネル(図示せず)に表示させる。なお、表示パネルはミキサー装置10に内蔵されるか又は外付けされ得る。また、表示パネルの形式は特に限定されないが、タッチ入力機能を備えて、指示入力部11の入力手段を兼ねてもよい。
【0024】
記憶部17は、ミキサー装置の制御に用いられる各種プログラムやデータ類、及び当該ミキサー装置を識別するためのミキサー装置番号を格納する。また、記憶部17は、ミキサー管理装置20から受信した製造対象製品毎の食用生地用に生成されたミキサー制御データを格納する。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態によるミキサー管理装置の構成例を示すブロック図である。
【0026】
図3に示すように、本発明の一実施形態によるミキサー管理装置20は、図示しないCPU、主記憶装置、補助記憶装置等を含んで構成されたシステム制御部21と、システム制御部21の補助記憶装置(図示せず)にインストールされたプログラム又はソフトウェアをCPUで実行させることで実現される機能部として、少なくともミキシング条件取得部22及び制御データ生成部23を含む。システム制御部21は、ミキサー制御システム全般を制御する。
【0027】
ミキサー管理装置20は、一般のPC(パーソナルコンピュータ)やワークステーションを使用することができ、1つ又は複数のミキサー装置10及びデータベース30に通信ネットワークを介して接続されるか、又は直接に接続される。ミキサー管理装置20は、ミキサー装置10及びデータベース30との通信を行う通信部25、各種情報を所定の表示形式でディスプレイ等(図示せず)の画面上に表示させる表示部26、及び各機能部(22、23)で処理された結果データや、データベース30から取得したレシピ情報等を格納するデータ記憶部27をさらに含む。
【0028】
ミキシング条件取得部22は、それぞれのミキサー装置10から受信した製造対象製品の生地製造指示データに基づいて、当該ミキサー装置に対応付けられた製造対象製品の食用生地のミキシング条件を設定するために、データベース30から、標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報を取得する。また、当該ミキサー装置10から、センサー部14で取得された原材料の温度、室温、湿度等の環境データを取得する。
【0029】
制御データ生成部23は、それぞれのミキサー装置10に対して、ミキシング条件取得部22によって取得された当該ミキサー装置に対応した標準ミキシング制御情報及びミキシング条件補正情報と、センサー部で取得された環境データとに基づいて、標準ミキシング制御条件に所定の補正処理を行って、当該ミキサー装置に対応したミキサー制御データを生成する。ミキサー制御データを生成する手順の詳細は後述する。
【0030】
通信部25は、接続された1つ以上のミキサー装置10とデータを送受信する機能を有し、それぞれのミキサー装置10及び/又はミキサー管理装置20からの要求や指令に応じて、各ミキサー装置10から生地製造指示データや環境データを受信し、データベース30から当該ミキサー装置に対応した製造レシピデータを受信して、ミキシング条件取得部22及びデータ記憶部27に配信する。
【0031】
表示部26は、システム制御部21から出力される各種設定及び制御に関連する情報を表示装置(図示せず)に表示させる。
【0032】
データ記憶部27は、ミキサー管理装置20の制御に用いられる各種プログラムやデータ類を格納する。また、データ記憶部27は、制御データ生成部23で各ミキサー装置10に対応する製造対象製品毎の食用生地用に生成されたミキサー制御データを格納する。
【0033】
データベース30は、それぞれのミキサー装置10を識別するための識別情報が登録されたミキサー装置IDテーブル31、各ミキサー装置10にそれぞれ対応付けられた標準ミキシング制御情報が登録された標準ミキシング条件テーブル32及びミキシング条件補正テーブル33、製品毎の仕込み量に対応した粉体材料の使用量及び仕込み水量のデータが配列されたレシピテーブル34、及びミキシング動作中における各種情報と室温や湿度の情報を含む環境データとを対応付けて記録するログテーブル35から構成される。
【0034】
本発明の一実施形態において、データベース30は、ミキサー管理装置20とは別個のデータサーバ内に構築され、インターネット、LAN、又はWAN等の通信ネットワークを介してミキサー管理装置20に接続される。データベース30には、製品名毎に当該製品の食用生地に対応した個別のミキサー装置10の標準ミキシング制御情報及び当該ミキサー装置10における過去の実績データに基づくミキシング条件補正情報が格納される。但し、本発明はこれに限定されず、データベース30は、ミキサー管理装置20に直接接続されたストレージ装置、又はミキサー管理装置20内に設けられた記憶装置で構成されてもよい。
【0035】
ミキサー装置IDテーブル31は、各ミキサー装置10の登録情報を記録するものである。登録情報は、個々のミキサー装置10の識別情報となるミキサー装置番号、ユーザID、及び/又はパスワードからなる検索キー部と、データ部に属する製造所名、管理者名、生地製造指示データ、登録年月日等の情報を含む。例えば、生地製造指示データには、製造対象の製品名、主原材料名、仕込み量等が設定されている。
【0036】
標準ミキシング条件テーブル32は、各ミキサー装置10に対応したミキサー制御データを生成するための標準ミキシング制御情報を記録するものである。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態における標準ミキシング条件テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、標準ミキシング条件テーブル32の標準ミキシング制御情報には、ミキサー装置番号、製品名、主原材料名及びその仕込み量からなる検索キー部と、データ部に属するミキシング工程内の複数段階における段階毎の回転速度(1)、回転回数(1)、回転速度(2)、回転回数(2)、回転速度(3)、回転回数(3)、回転速度(4)、回転回数(4)、完成品の目標仕上がり温度等の情報が格納される。
ここで、( )内の数値はミキシング工程中に含まれる各段階の順番を表し、回転速度(1)〜(4)には、所定の低速回転から高速回転の範囲内で、それぞれ異なる回転速度が設定され、回転回数(1)〜(4)には、各段階でのフック及び/又はボウルの回転回数がそれぞれ設定される。したがって、各段階の回転時間は、回転回数を回転速度で除した値となる。
【0038】
本発明者は、食用生地の粘弾性(ねばりと弾力)が、ミキサー装置の回転速度と力積とに強く依存することを見出し、このために、ミキサー装置の制御項目として、一般的に用いられる回転時間ではなく、回転回数(フック及び/又はボウルを回転させる回数、言い換えると、回転カウント数)を制御項目に使用した。また、後述するミキサー制御方法において、ミキサー装置のモーターのトルク値から、ミキシング工程中に生地に加えられる力(モーター駆動力)の力積を積算し、所定の目標力積値に到達したか否かをモニターすることで、最適なミキシング状態を判断することができる。この目標力積値は、図4に示すように標準ミキシング条件テーブルに加えることができる。なお、目標力積値は、段階毎に設定し得る。
【0039】
ミキシング条件補正テーブル33は、それぞれのミキサー装置10の過去の実績に基づき、製品毎に主原材料の所定の仕込み量に対し、標準ミキシング制御情報に含まれる各段階における回転速度及び/又は回転回数を、当該ミキサー装置10の周囲環境の室温及び湿度と、原材料の温度(例えば、仕込み水の水温)とに応じて補正するための補正情報を記録するものである。一例として、補正情報は、ミキサー装置番号と、製品名、主原材料名、主原材料の所定の仕込み量、及び仕込み水の水温とからなる検索キー部と、データ部に属するミキシング工程の各段階における補正回転速度及び/又は補正回転回数を算出するための計算式を格納する。計算式は、室温、湿度、仕込み量、及び仕込み水の水温をパラメータ(変数)として製品毎に生地の仕上がり温度が所定の目標温度に到達するのに必要な当該ミキサー装置10のミキシング部によるミキシング工程中の所定の段階における回転速度及び/又は回転回数の増減値を算出する回帰式又はモデル式である。
【0040】
ミキシング条件補正テーブル33は、さらに、仕込み水の硬度、及び主原材料の粉に含まれる酵素量に対するミキシング条件の補正係数を有してもよい。水の硬度には、地域差があり、パン作りに強い影響を与えることが知られている。例えば、欧州は硬水が多く、日本ではほとんどが軟水であることから、水の硬度による生地の仕上りへの影響を最小化するため、異なる硬度の水を使用した生地製造の試行結果に基づいて、上述した計算式に適用可能な補正係数を求めて、ミキシング条件補正テーブル33に付加してもよい。また、主原材料の粉に含まれる酵素量も、ミキシング工程での生地の仕上がりに大きな影響を与える。例えば、麦に含まれる酵素量は、生育時の天候によって変化することが知られている。このため、水の硬度と同様に、生地製造の試行結果に基づいて、上述した計算式に適用可能な補正係数を求めて、ミキシング条件補正テーブル33に付加してもよい。
【0041】
レシピテーブル34は、製品の製造に当たって、ミキサー装置10に投入されるべき原材料の情報をユーザに提示するため、各製品に使用される原材料のレシピ情報を記録するものである。レシピ情報には、製品名及び/又はミキサー装置番号からなる検索キー部と、データ部に属する原材料の基準使用量、基準湿度、及び基準仕込み水温等の情報が格納される。また、湿度に基づく仕込み水量の補正データが格納される。原材料には、主原材料、副原材料、仕込み水等が設定され得る
【0042】
ログテーブル35は、後述の制御データ生成部23で作成したミキサー制御データに、ミキサー装置10から送信された環境データを付加して作成したログ情報を記録するものである。ログ情報には、作成年月日とミキサー装置番号と作成時刻とからなる検索キー部と、データ部に属するセンサー取得データ、回転速度、回転時間、登録年月日等の情報を格納する。センサー取得データには、仕込み水温、製造工程における生地の温度、湿度等が設定される。
【0043】
以上で説明したデータベース30の各テーブルに格納されたデータは、個々のミキサー装置10の使用実績に応じて、所定の時期又は期間で更新され得る。ミキサー装置の特性や性能は、同一メーカーの同じ品番の装置でも、若干の個体差があり、個々のミキサー装置の特性や性能が経時変化(経年劣化)する度合にも、個体差が生じることが見出される。したがって、本発明によるミキサー制御システムは、個々のミキサー装置に対応つけられた標準ミキシング条件テーブルやミキシング条件補正テーブルに、ミキシング動作の実績を反映させることで、常に安定した仕上がり状態の生地を提供することができる。
【0044】
図5は、本発明の他の実施形態によるミキサー制御システムの構成を示す概略図である。
【0045】
図5に示すミキサー制御システム1’は、インターネット5を介して、複数のミキサー管理装置(20a、20b)と、データベース30を含むデータサーバとが通信可能に接続され、各ミキサー管理装置(20a、20b)には複数のミキサー装置がそれぞれ接続されている。具体的に、ミキサー管理装置A(20a)には、ミキサー装置A1(10a)及びミキサー装置A2(10c)が接続され、ミキサー管理装置B(20b)には、ミキサー装置B1(10b)及びミキサー装置B2(10d)が接続されている。また、各ミキサー管理装置(20a、20b)は、インターネット5を介して、該当するミキサー管理装置の各管理者が通信端末(41、42)を使用してアクセス可能に構成され、これらの通信端末(41、42)から、対応するミキサー管理装置(20a、20b)を介して各ミキサー装置(10a、10b、10c、10d)で実行される製品生地のミキシング工程に関する情報が閲覧可能に構成される。なお、それぞれのミキサー管理装置及びミキサー装置の構成は上述した実施形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。また、通信端末(41、42)は、スマートフォン、タブレット端末、若しくはコンピュータ端末で構成される。
【0046】
図5に示すミキサー制御システムによれば、各ミキサー管理装置及び各ミキサー装置間で、共通に使用可能な情報を共有できるので、複数の製造所を有して多数のミキサー装置を管理するユーザの業務効率が向上し、また、より多くのミキシング実績データが収集されるため、ミキシング制御向上のためのより詳細な分析及び改良を行うことができる。
【0047】
次に、本発明の一実施形態によるミキサー制御システムにおけるミキサー制御方法について説明する。
【0048】
本発明の一実施形態によるミキサー制御方法には、ミキサー装置10とミキサー管理装置20との間でのデータ送受信の処理手順と、ミキサー管理装置20がミキサー装置10から送信された製造指示入力に応答して、データベース30から製造指示入力に対応したミキシング制御情報を取得してミキサー制御データの生成を行う処理手順とが含まれる。
【0049】
図6は、本発明の一実施形態によるミキサー制御方法におけるミキサー装置とミキサー管理装置との間のデータ送受信の処理手順を示すフローチャートである。以下、図6と、図2及び図3を参照しながら、ミキサー装置10及びミキサー管理装置20の動作を説明する。
【0050】
まず、ミキサー装置10は、起動後に、指示入力部11から、ユーザID及び/又はパスワードの入力を受け付けると、データ通信部15を介してミキサー管理装置20にユーザ認証を要求する(ステップS100)。具体的に、ミキサー装置10は、受け付けたユーザID及び/又はパスワードをミキサー管理装置20に送信し、ミキサー管理装置20は、受信したユーザID及び/又はパスワードの認証処理を行う(ステップS200)。ミキサー管理装置20は、認証に成功すると要求元のミキサー装置10に製造指示入力用画面を送信する(ステップS210)。
【0051】
なお、上述したユーザ認証のステップは省略してもよい。この場合、ミキサー装置10が起動されると、ミキサー装置10から、当該ミキサー装置10のミキサー装置番号がミキサー管理装置20に送信され、ミキサー管理装置20は、ミキサー装置番号によりミキサー装置を識別して、要求元のミキサー装置10に製造指示入力用画面を送信する。
【0052】
図7は、本発明の一実施形態によるミキサー装置に送信される製造指示入力用画面の一例を示す図である。
【0053】
ミキサー装置10は、受信した製造指示入力用画面をミキサー装置10の表示部16に表示させる(ステップS110)。その後、製造指示入力用画面に基づいて、指示入力部11から、製造対象の製品名とその製品の仕込み量とを含む食用生地の製造指示入力を受け付けると、ミキサー装置10は、入力された指示データ(以下、生地製造指示データという)を、通信部15を介してミキサー管理装置20に送信する(ステップS120)。
【0054】
ミキサー管理装置20は、受信した生地製造指示データに基づいて、データベース30のレシピテーブル34を検索し、製品名に該当するレシピ情報を取得する(ステップS220)。そして、取得したレシピ情報に基づいて、仕込み条件設定データを生成し(ステップS230)、ミキサー装置10から受信した環境データに基づいて、必要な補正処理、例えば、仕込み水の使用量及び目標水温の算出を行い(ステップS240)、補正した仕込み条件設定データを要求元のミキサー装置10に送信(ステップS250)する。
【0055】
以下、図7を参照しながら、ミキサー管理装置20による仕込み条件設定データの生成手順をより詳しく説明する。
(1)ミキサー管理装置20は、ステップS200で、ユーザ認証時に受け付けたユーザID及び/又はパスワードにより、データベース30のミキサー装置IDテーブル31を検索して該当するミキサー装置のミキサー装置番号を取得する。
(2)一方、ミキサー装置10は、ステップS120で、図7に示す製造指示入力用画面の選択欄Aから、製造対象製品のレシピを選択する指示を受け付け、入力欄Bから選択されたレシピの製品に対応する主原材料の仕込み量(粉量)の入力を受け付けると、受け付けた製造対象製品の製品名及び仕込み量(粉量)を含む生地製造指示データを、ミキサー管理装置20に送信する。
(3)ミキサー管理装置20は、ミキサー装置10から生地製造指示データを受信すると、ステップS220で、受信した生地製造指示データに含まれる製品名及び/又はミキサー装置番号に基づいて、データベース30のレシピテーブル34を検索し、該当するレシピ情報を取得する。
(4)その後、ミキサー管理装置20は、(3)の処理で取得したレシピ情報の中から、生地製造指示データの仕込み量に対応する原材料の基準使用量、及び基準仕込み水温等のデータを読み出し、(3)の処理で取得したミキサー装置番号に対応付けて、要求元のミキサー装置10に対する仕込み条件設定データを生成する(ステップS230)。
【0056】
一方、上述した生地製造指示データの生成手順と並行して、ミキサー装置10は、センサー部14で取得された環境データをミキサー管理装置20に送信する(ステップS130)。
【0057】
ステップS130で実行される、ミキサー装置10による環境データ送信処理の手順を以下に説明する。
(1)ミキサー装置10は、ユーザID及び/又はパスワードの入力を受け付けると、センサー部14に接続された各種センサーから、当該ミキサー装置10が設置された作業室の室温、湿度、及び原材料(例えば、粉体材料及び仕込み水)の温度を取得する。なお、原材料の温度は、ミキサー装置10に連結されたデジタル温度計を使用して取得されるか、又は原材料の貯蔵設備に設けられた温度計から受信する構成としてもよい。
(2)(1)の処理で取得した温度、湿度、及び仕込み水の温度と、当該ミキサー装置のミキサー装置番号とを含む環境データを生成して、ミキサー管理装置20に送信する。
【0058】
なお、上述したユーザID及び/又はパスワードを入力するステップが省略される場合には、ミキサー装置10は、起動後に、センサー部14に接続された各種センサーから、当該ミキサー装置10が設置された作業室の室温、湿度、及び原材料の温度を取得し、取得した温度、湿度、及び原材料の温度と、当該ミキサー装置のミキサー装置番号とを対応付けた環境データを生成して、ミキサー管理装置20に送信する構成にしてもよい。
【0059】
ミキサー管理装置20は、ミキサー装置10から環境データを受信すると、受信した環境データが湿度及び仕込み水の温度を含む場合、環境データに含まれるミキサー装置番号と、仕込み条件設定データの生成手順で取得した製造対象製品名に対応したレシピ情報の中から仕込み水に関する情報を取得し、受信した環境データに含まれる湿度のデータを所定の補正式に代入して、投入すべき仕込み水量を算出する。この時、ミキサー管理装置20は、レシピ情報の標準湿度から、受信した環境データの湿度を減算してその湿度差を算出し、算出した湿度差を所定の湿度で除算した値を基にデータベース30のレシピテーブル34から対応する補正データを得て、レシピ情報の仕込み水の基準使用量に加算する。また、ミキサー管理装置20は、受信した環境データに含まれる室温データを所定の計算式に代入して、生地の仕上がり温度が所定の目標値となるための仕込み水の目標水温を算出する(ステップS240)。
【0060】
その後、ミキサー管理装置20は、加算後の仕込み水使用量及び算出された作業室の室温に対応した仕込み水の目標水温を含む仕込み条件設定データをミキサー装置10に送信する(ステップS250)。ミキサー装置10は、図7に示す製造指示入力用画面の設定確認欄Cに、ミキサー管理装置20から受信した仕込み条件設定データに含まれる仕込み水使用量及び目標水温を表示部16に表示させ(ステップS140)、ユーザから製造開始の指示入力があるまで待機する。
【0061】
次に、ミキサー管理装置20がミキサー装置10から送信された生地製造指示データに基づいて、データベース30から生地製造指示データに対応したミキシング制御情報を取得してミキサー制御データの生成を行う処理手順について説明する。
【0062】
図8は、本発明の一実施形態によるミキサー制御方法におけるミキサー装置のミキサー制御データを生成する処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
ステップS120で、ミキサー装置10から生地製造指示データが送信された後、ミキサー管理装置20のミキシング条件取得部22は、生地製造指示データに含まれるミキサー装置番号、製品名、主原材料名、及び主原材料の仕込み量に基づいて、データベース30を検索し、標準ミキシング条件テーブル32から、要求元のミキサー装置10に対応した標準ミキシング制御情報を取得し、ミキシング条件補正テーブル33から仕込み量毎補正情報を取得する(ステップS260)。
【0064】
次に、ミキサー管理装置20の制御データ生成部23は、ミキサー装置10から受信した環境データを、ミキシング条件取得部22により取得した仕込み量毎補正情報に含まれる計算式に代入して、補正回転速度及び/又は回転回数を算出し、標準ミキシング制御情報の回転速度及び/又回転回数に適用(加算又は減算)してミキサー制御データを生成する(ステップS270)。
【0065】
具体的に、制御データ生成部23は、生地製造指示データに含まれる、製造対象製品の仕込み量に対応した補正回転速度を算出する計算式をミキシング条件補正テーブル33から取得し、当該計算式に、ミキサー装置10から受信した環境データに含まれる室温及び湿度を代入し、算出された補正回転速度で、標準ミキシング制御情報の回転速度を補正したミキサー制御データを生成する。ここで、計算式は、例えば、ミキシング工程中の段階毎に設定され、室温及び湿度を説明変数とし、補正回転速度及び/又は回転回数を目的変数とする重回帰式が用いられ、各変数に対して、過去の実績に基づいて得られた回帰係数が設定される。また、この計算式に対して、上述した仕込み水の硬度や主原材料の粉に含まれる酵素量に基づく補正係数を、さらに適用してもよい。
【0066】
その後、ミキサー管理装置20は、生成したミキサー制御データを要求元のミキサー装置10に送信する(ステップS280)。また、ミキサー管理装置20は、生成したミキサー制御データに環境データを付加したログ情報を生成して、データベース30のログテーブル35に登録する。
【0067】
ミキサー装置10は、ミキサー管理装置20からミキサー制御データを受信すると(ステップS150)、記憶部17に格納する。
【0068】
その後、ミキサー装置10は、指示入力部11にミキシング動作の開始指示が入力されると(ステップS160)、制御部13が、記憶部17に格納されたミキサー制御データを読み出して、ミキサー制御データに基づいてミキシング部12を制御する。
【0069】
具体的に、ミキサー装置10の制御部13は、ミキシング動作を開始すると、ミキシング工程中の各段階で、センサー部14からミキシング部のモーター12cの回転速度を随時取得し(ステップS170)、取得した回転速度のモニタリングデータを、ミキサー制御データに含まれるミキシング工程の各段階に設定された回転速度、すなわち、目標値と比較する(ステップS180)。そして、実測された回転速度が、目標値に対して所定の許容値内に収まるように、ミキシング部のモーター12cの出力を制御する。ミキシング工程の全ての段階が終了すると(ステップS190)、制御部13は、完成した食用生地の温度をセンサー部14から取得して、表示部16に表示させるとともに、ミキサー管理装置20に送信する。ミキサー管理装置20は、受信した完成品の食用生地の温度を上述したミキサー制御データ及び環境データを含むログ情報に加えて、当該ミキサー装置10のログデータとしてログテーブル35に登録する(ステップS290)。
【0070】
一実施形態として、ミキサー装置10は、ミキシング動作を開始後、ミキシング部のモーター12cの回転速度とともに、トルク値をモニターしてもよい。ミキサー装置においては、製造中の生地に加えられる駆動力(混捏力)をモーターに伝える抵抗としてトルク値が得られ、このトルク値を用いた力積を、生地の仕上がりを判定するために使用することができる。具体的には、予め試行したミキシング結果に基づき、それぞれの製品における標準ミキシング制御情報の1項目として、最適な仕上がり(ミキシング状態)となる「トルク値を用いた力積」の値を求め、この力積値を目標力積値として、図4に示す標準ミキシング条件テーブル32に格納してもよい。この場合、ミキサー装置10の制御部13は、モニターしているトルク値から力積値を積算し、ミキシング工程中の力積値が目標力積値に到達したか否かを判定することで、ミキシング動作の終了又は延長を指示するアラート通知を表示部16に表示させてもよい。また、ミキシング工程中の目標力積値は、ミキシング工程の各段階に設定されてもよく、制御部13は、段階毎に力積値のモニター結果を各段階の目標力積値と比較して、各段階におけるミキシング部の回転時間を調節する(即ち、増減させる)ように制御してもよい。
【0071】
また、他の実施形態として、「トルク値を用いた力積」は、ミキサー装置10自体のベルト等の消耗部材の経年劣化の度合いを判定するために用いることができる。例えば、ミキサー装置10は、ミキシング工程中の所定の段階におけるモーターの出力データと「トルク値を用いた力積」データとを、ミキサー管理装置20に送信し、ミキサー管理装置20は、これらのデータを、ログ情報に含めてデータベース30のログテーブル35に記録する。ミキサー管理装置20は、ミキサー制御データ生成時に、過去の所定の時期における当該ミキサー装置10のログ情報に含まれるモーターの出力データと「トルク値を用いた力積」データとを、ミキサー制御データに付加して、ミキサー装置10に送信し、ミキサー装置10は、ミキシング実行時に、受信したミキサー制御データに含まれるモーターの出力データと力積データと実測データを対比することで、経時劣化の度合いを判定することができる。さらに、判定において、経時劣化の度合いが小さい場合、ミキサー装置10は、回転速度の目標値へのフィードバックを行い、経時劣化の度合いが大きい場合、消耗部材交換を促すアラート通知を表示部16に表示させてもよい。上述した経年劣化の判定処理をミキサー装置10及びミキサー管理装置20実行させるプログラムは、予め作成されて、それぞれに対応する記憶部17及びデータ記憶部27に格納される。
【0072】
上述した本発明のミキサー制御システムによれば、複数のミキサー装置のそれぞれが、所定の製品毎に最適化されたミキシング状態の食用生地を、異なる製造環境下でも安定して製造可能なミキサー制御システムを提供することができる。また、製品の仕込み量及び製造環境のモニタリングデータに基づいて、個別のミキサー装置毎に最適化されたミキサー制御データが自動生成され、生成されたミキサー制御データで当該ミキサー装置が自動制御されるので、作業が効率化され、職人のスキルに依らず品質ばらつきの少ない食用生地を製造することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1、1’ ミキサー制御システム
5 インターネット
10、10a、10b、10c、10d ミキサー装置
11 指示入力部
12 ミキシング部
12a ボウル
12b フック
12c モーター
13 制御部
14 センサー部
15 データ通信部
16、26 表示部
17 記憶部
20、20a、20b ミキサー管理装置
21 システム制御部
22 ミキシング条件取得部
23 制御データ生成部
25 通信部
27 データ記憶部
30 データベース
31 ミキサー装置IDテーブル
32 標準ミキシング条件テーブル
33 ミキシング条件補正テーブル
34 レシピテーブル
35 ログテーブル
41、42 通信端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8