特許第6856966号(P6856966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6856966貼付装置、および貼付装置を備えた包装装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6856966
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】貼付装置、および貼付装置を備えた包装装置
(51)【国際特許分類】
   B65C 9/26 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   B65C9/26
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-21308(P2016-21308)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-147712(P2016-147712A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2019年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-23696(P2015-23696)
(32)【優先日】2015年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145068
【氏名又は名称】株式会社寺岡精工
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 宏之
(72)【発明者】
【氏名】高花 正和
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 康範
(72)【発明者】
【氏名】森 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀直
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−052682(JP,U)
【文献】 特開平09−202319(JP,A)
【文献】 米国特許第04132583(US,A)
【文献】 特開2006−008175(JP,A)
【文献】 特開2007−331806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65C 1/00−11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧状態により貼付媒体を吸着する吸着部と、
前記負圧状態を形成し、所定の径幅を有する真空経路と、
前記吸着部内の圧力を解放する解放弁を備え、
前記吸着部に吸着されている前記貼付媒体が貼付対象物に対して当接すると、前記解放弁が前記貼付対象物に向かって回動することにより前記真空経路の径幅で負圧状態が開放される
ことを特徴とする貼付装置。
【請求項2】
前記吸着部内を負圧状態にする圧力調節手段と、前記吸着部内の圧力を検出する圧力検出手段を備え、前記圧力検出手段により前記吸着部内の負圧状態が解放されたことを検出すると、前記貼付媒体が前記貼付対象物に貼付されたと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載された貼付装置。
【請求項3】
前記貼付媒体が貼付されたと判断された場合に、前記吸着部は次の貼付媒体を吸着する待機位置に移動する
ことを特徴とする請求項2に記載された貼付装置。
【請求項4】
前記吸着部に備えられた弾性部材が前記貼付対象物に当接し、当該弾性部材が変形すると、前記解放弁が回動して負圧状態を解放する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の貼付装置。
【請求項5】
前記吸着部の圧力値の閾値を記憶する記憶手段と、
前記圧力検出手段が検出する前記吸着部の圧力値と前記閾値とを比較することで、前記吸着部の交換が必要であるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記吸着部の交換が必要であると判断された場合に、前記吸着部の交換を報知する報知手段とを備える、
ことを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の貼付装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の貼付装置を備えた包装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被貼付物の適宜位置に対して、ラベル等貼付媒体を貼付する貼付装置、及び、貼付装置を備えた包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパーマーケット等においては、総菜等の食料品をプラスチック等のトレイに入れて、フィルムにより包装して販売することが行われており、そのような商品の包装フィルムに対して、内容量や販売価格等の情報を印刷したラベルを貼付する貼付装置が知られている。
そして、貼付装置によってラベルを貼付位置に移動させるために、ラベルプリンタにより発行されたラベルを吸着部により吸着保持し、貼付位置に置いて吸着を開放して貼付することが行われていた。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−172633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術文献の貼付装置を含め、一般的な貼付装置においては、吸着部によりラベルを吸着保持すること、あるいは吸着保持したラベルを貼付することを、電磁弁やセンサのような電気的に制御される装置を用いて行っていた。
【0005】
しかしながら、電気的に制御される装置を用いて吸着部の制御を行うためには、吸着部の近傍に電磁弁やセンサを設けたり、電磁弁やセンサから制御手段までの間に配線を施したり、装置や制御自体が煩雑となっていた。また、部品点数も多く、メンテナンスも煩雑であることなどから、経済的ともいえなかった。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑み、貼付装置の吸着部による吸着保持及び貼付制御を、吸着部近傍に電気的手段を配置することなく、簡単な構成により行うことのできる貼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、負圧状態により貼付媒体を吸着する吸着部と、前記負圧状態を形成し、所定の径幅を有する真空経路と、前記吸着部内の圧力を解放する解放弁を備え、前記吸着部に吸着されている前記貼付媒体が貼付対象物に対して当接すると、前記解放弁が前記貼付対象物に向かって回動することにより前記真空経路の径幅で負圧状態が開放されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
貼付装置の吸着部にセンサや複雑な配線等を設ける必要がなく、装置自体を簡潔な構成に単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置を備える包装装置の全体図である。
図2】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置を備える包装装置を説明するための包装装置の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置の動作を説明するための貼付装置の側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置の動作を説明するための貼付装置の平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置の貼付部を説明する図であり、(a)はラベル吸着状態の貼付部の側面図、(b)はラベル貼付時の貼付部の側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る吸着パットを説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は側面図、(d)は底面図、(e)は断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置の貼付位置制御を説明するための平面図である。
図8】本発明の実施形態に係る貼付手段の交換報知制御に用いる圧力値テーブルの図であり、(a)乃至(c)は吸着部に何らかの不具合が生じた状態の圧力値テーブルの例であり、(d)は吸着部交換直後に適正圧力値の設定をし直した圧力値テーブルの図である。
図9】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置の貼付向き制御を説明するための平面図である。
図10】本発明の実施形態に係る吸着パットを備える貼付装置の駆動制御を説明するための図である。
図11】本発明の実施形態に係る吸着パットに採用されている除電手段を説明するための図であり、(a)は除電手段を備える貼付部の側面図、(b)は除電手段を備える貼付部の平面図、(c)は除電手段によりトレイを包装しているフィルムを保護する状態を説明するための側面図である。
図12】本発明の実施形態に係る貼付装置のラベル発行部を説明するための図であり、(a)はラベル発行部の斜視図、(b)は同正面図である。
図13】本発明の実施形態に係る貼付装置のラベル発行部を説明するための図であり、ラベル発行部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の貼付装置及び貼付装置を備える包装装置について、図面を参考に説明する。
−貼付装置を備える包装装置の構成−
本発明の実施形態に係る貼付装置は、例えば、図1に示すフィルム包装装置に採用されている。
本発明の実施形態に係るフィルム包装装置Aは、食品等の商品を入れたプラスチックトレイ等の被包装物(以下、「トレイT」という。)をストレッチフィルム等(以下、「フィルムF」という。)により包装するものであり、包装された被包装物(被貼付物)に対して、商品の情報が印字されたラベル等の貼付媒体(以下「ラベルL」という。)を貼付するものである。
【0011】
図1、2に示すように、フィルム包装装置Aは、機体aの前方に配置され、操作者がトレイTを載置する商品載置部bと、トレイTに対してフィルムFを被覆して包装するフィルム包装手段cと、商品載置部bに載置されたトレイTをフィルム包装手段cに搬送する搬送コンベアdと、フィルムFにより包装されたトレイTが排出される商品排出部eと、商品排出部eにトレイTを搬送する排出手段4と、商品排出部eに排出されたトレイTの上面にラベルLを貼付する貼付装置Bと、を備え、機体aの前方には操作者によりフィルム包装装置Aを制御するための情報を入力したり、フィルム包装装置Aの状態を監視するためのタッチパネル等の入力表示手段hが配置されている。
【0012】
そして、上記フィルム包装装置Aにおいて、作業者が、入力表示手段hによりトレイT等の情報を入力し、商品載置部bにトレイTを載置することにより、トレイTは搬送コンベアdによりフィルム包装手段cに搬送され、フィルム包装手段cにより包装された後、排出手段4により商品排出部eに排出されながら貼付装置Bにより、トレイTを包装するフィルムFの上面にラベルLが貼付される。
図1及び図2に示すストレッチフィルム包装装置は、機体aの前方に被包装物を載置する商品載置部b(計量部を含む)を設け、該商品載置部bに載せた被包装物(トレイT)を搬送コンベアdにより機体a内部に設けられた図示されていないエレベータまで搬送する。
前記エレベータの上方にはフィルム包装手段c(包装部)が設けられ、そのフィルム包装手段c(包装部)の側方に図示していないフィルムロール配置部とその配置部にセットされたフィルムロールから繰り出されるフィルムFの先端部を保持するフィルム保持手段が設けられ、そのフィルム保持手段で保持されているフィルム先端を挟持して引き出し、前記フィルム包装手段c(包装部)まで移送するフィルム包装手段c(包装部)に設けられたクランプ手段が前記フィルム保持手段の先端に接近させて配置されている。
また、前記フィルム保持手段とクランプ手段との間には該クランプ手段で挟持され引き出されたフィルムFを所定長さにカットするカッタが配置されている。
また、フィルム包装手段c(包装部)に設けられたクランプ手段の上方には図示していない左右折り込み板と後折り込み板、及び後折り込み板の上方に位置させた排出手段4(排出プッシャ)が配設されている。
よって、エレベータ上に載せられた被包装物(トレイT)は、エレベータの上昇により前記フィルム包装手段c(包装部)に展張されたフィルムFに対して突き上げられ、引き伸ばされた状態のフィルムの端部を、左右折り込み板と後折り込み板とにより被包装物(トレイT)の底部に折り込んだ後、排出手段4(排出プッシャ)により被包装物(トレイT)を機体a前側の商品排出部e(ヒートシール部)へ向けて水平に押動しながら、前記フィルムFの前側端部を前折り込みローラで被包装物の底部に折り込んでフィルムによる包装が完了される。そして、前記排出手段4(排出プッシャ)による被包装物の押し出し移送中に貼付装置Bのアーム部2及び貼付部3により発行されたラベルLが商品上面に貼付される。なお、本実施形態のフィルム包装装置Aにおいては、ラベルを吸着した貼付装置Bが貼付装置よりも下方にある被貼付物へ下降してラベルを貼付するものであるが、貼付方向は左右方向や上方であってもよく、また、被貼付物に対する貼付位置も被貼付物の上面だけでなく、側面や背面であっても良い。
【0013】
−貼付装置の構成−
上記フィルム包装装置Aに採用されている貼付装置Bの構成について詳細に説明する。
(全体の構成)
本発明の実施形態の貼付装置Bは、図1ないし4に示すように、フィルム包装装置Aの機体aの上に左右移動(図1図4における矢印M1)自在に配置される本体部1と、本体部1に対して左右方向に回転(図3図4における矢印M2)自在に支持されるアーム部2と、アーム部2に対して上下移動(図3における矢印M3)自在及び回転(図3,4における矢印M4)自在に支持される貼付部3と、フィルムFにより包装されたトレイTを貼付位置である商品排出部eに移動(図3における矢印M5)させるプッシャー等の排出手段4とにより構成されており、入力表示手段hにより入力された情報に基づいて後述する制御手段50によって駆動制御されている。
【0014】
(貼付装置本体部の構成)
貼付装置Bの本体部1は、図3に示すように、ラベルL用紙を巻回してなる用紙ロールRを支持する用紙支持軸11と、用紙ロールRから繰り出される帯状の用紙に対して商品の情報等を印刷する印刷手段12と、印刷手段12により印刷された用紙を切断してラベルLを作成するカッタ手段13とを備えている。
本体部1の前面には、ラベルが発行されるラベル発行口13a(図1)が設けられており、印刷手段12により印刷された帯状の用紙はラベル発行口13aから排出された状態で待機保持され、貼付部3を構成する吸着パット33により吸着保持された後、カッタ手段13により切断されラベルLが形成される。
なお、本実施形態においては、ラベルLはライナレスラベルを用いて説明するが、特に、ライナレスラベルに限定されるものではなく、台紙付きのラベルを用いることもできる。
【0015】
本体部1のラベル発行口13aの下方位置には、帯状の用紙が下方に垂れ下がらないように待機保持させるためのラベル載置板142(図14)が前方に延設されており、本体部1におけるラベルの待機保持を確実にしている。
以上のように、貼付装置Bの本体部1は、ラベル発行手段として構成されているとともに、貼付するラベルを待機保持するラベル(貼付媒体)保持手段として構成されている。
【0016】
従って、本体部1がフィルム包装装置Aの機体a上において左右方向に移動することにより、ラベルの保持(待機)位置が左右方向に移動されることとなり、そして、アーム部2及びアーム部2に支持される貼付部3が全体として左右方向に移動することとなる。
なお、アーム部2は、貼付媒体保持手段として構成されている本体部1に対して回転自在に支持されるものに限定されるものではなく、例えば、アーム部2が本体部1と別体に支持されており単独で左右方向に移動するもの、アーム部2が本体部1と別体に支持されており本体部1に連動して左右方向に移動するもの、アーム部2が本体部1と別体に支持されておりアーム部2は左右方向に移動せず、回転運動によって本体部1の左右方向移動範囲をカバーできるものなどでもよい。
【0017】
(アーム部の構成)
本体部1の前方には、上下2つのブラケット15a,15bが設けられており、ブラケット15a,15bにより形成される第1回転軸15に対してアーム部2が左右方向に回転自在に支持されている。
アーム部2は、第1回転軸15を中心として、ラベル吸着ポジションP1とラベル貼付ポジションP2との間を往復回転する。そして、第1回転軸15から所定距離の位置、具体的には、アーム部2の先端位置に第2回転軸25を有し、第2回転軸25の位置において、貼付部3の貼付棒31を回転可能及び上下動可能に支持しており、第2回転駆動手段23と上下駆動手段22とにより貼付部3を回転及び上下動させることができる。
【0018】
図3に示すように、貼付棒31は、アーム部2の下面より突出しており、その下端には、副アーム部32が固定されている。副アーム部32の下面には吸着パット33が設けられている。
そして、図4からもわかるように、本実施形態においては、アーム部2における第1回転軸15から第2回転軸25までの距離は、第2回転軸25から吸着パット33までの距離よりも大きく、すなわち、第1回転軸15を中心としたアーム部2が描く円弧(回転可能範囲)は、第2回転軸25を中心とした貼付部3が描く円弧(回転可能範囲)よりも大きく、アーム部2による大きな円弧運動によりラベルLの貼付位置への移動を可能とし、貼付部3による小さな円弧運動によりラベルLの貼付角度の調整を可能としている。
なお、アーム部2が描く円弧と貼付部3が描く円弧との大小関係は、特に、上記大小関係に限るものではなく、同程度の大きさの円弧でも、また、貼付部3が描く円弧よりもアーム部2が描く円弧が小さいものでもよい。
【0019】
(貼付部の構成)
図5に示すように、貼付部3の副アーム部32は、平面視で略長方形状の上ブロック321と下ブロック322とが軸323により連結されており、上ブロック321に対して下ブロック322が回動自在に構成されている。上ブロック321の上面の一側には貼付棒31が固定されるとともに、下ブロック322の下面で貼付棒31が固定されていない他側に吸着パット33が固定されている。
下ブロック322には、吸着パット33の吸引路33aに連続する空気通路322aが形成されており、上ブロック321には、真空ポンプ等の圧力調節手段6からの真空経路6aに連続する空気通路321aが形成されている。そして、上ブロック321の空気通路321aと下ブロック322の空気通路322aとは、上ブロック321に対する下ブロック322の回動に伴って解放する解放弁324を介して連絡されている。
【0020】
したがって、図5(a)に示す、ラベルを吸着保持する吸着状態からフィルムFにより包装されたトレイTに対してラベルLを貼付すると、貼付動作の反力により吸着パット33が上方に押圧される。ここで、吸着パット33は、全体に弾性を備える材料により形成されること等により、傾動(変形)が可能であるから、図5(b)に示すように、上方への押圧力によって吸着パット33自身は下ブロック322の回動量と同量の傾動(変形)をして、吸着しているラベル面を平行に保ちながら、下ブロック322を軸323を中心に回動させる。そうすると、解放弁324が解放されて、吸着パット33の吸引路33a内の圧力が大気圧に解放されて、ラベルLに対する吸着力を失い、トレイTの上面のフィルムFに対してラベルLをスムーズに貼付することができる。
【0021】
(吸着パットの構成)
貼付部3の吸着パット33は、例えば、合成ゴム等の弾性を備える材料からなり、図6に示すように、全体として略円筒形状をしており、その上方部分を構成する本体部331と、本体部331の下方に連続し、下方に向かって徐々に広がる円錐形状の吸着部332と、吸着部332の下方に連続し、吸着部332の円錐形状の広がり角度よりも大きな広がり角度で広がり弾性を有するスカート部333と、吸着部332の下方でスカート部333の内周に設けられ、環状に下方に突出する環状リブ334と、により構成されている。リブの下端は、スカート部333の下端よりも、0.5mm程度上方に位置している。
【0022】
本体部331は、その上方部位には、貼付部3の副アーム部32の下ブロック322の下面に固定するための取付部331aが形成されており、取付部331aの下方部位の外周面は薄肉に肉抜きされた複数の環状溝部からなる緩衝部331bが形成されており、吸着パット33にかかる外力に対して、傾動を可能としている。なお、複数の環状溝部からなる緩衝部331bは外周面を肉抜きにすることより形成されるものに限らず、例えば、蛇腹等により形成することもできる。さらには、環状溝部は一つであっても良い。
その他、吸着パット33の傾動が可能であり、ラベル吸着時の吸着面が水平に保てれば、本体部331に間接部等を設けるなど、その構成は特に特定されるものではない。
【0023】
吸着部332の表面は薄肉部分を形成することなく平らであり、本体部331に比較して腰が強く形成されている。そして、下方に向かって徐々に広がる円錐形状をしているために、ラベル吸着時の吸引路33a内の負圧によって生じる吸着パット33を潰そうとする力を、水平方向から若干下方に逃がすことができるので、吸着時の吸着パット33の潰れを抑制している。
スカート部333は、大きな広がり角度で広がり弾性を有しているので、ラベルLの吸着時に弾性により変形してラベルLの表面に対して面で接触し、ラベルLの安定した吸着を可能とするとともに、スカート部333の内周に配置された環状リブ334が吸引されるラベルLの表面に当接して、ラベルLが必要以上に吸引されることがなく、ラベルLがしわになったり、変形することを防止している。
【0024】
(貼付装置の駆動制御)
本発明の実施形態の貼付装置は、図7に示す制御手段50により、各駆動手段が制御されている。
左右方向駆動手段16は、ラベルLの貼付位置を調節するための駆動手段であり、制御手段50の命令により、入力表示手段hにより入力設定されたラベルLの左右方向の貼付位置に応じて、本体部1の左右方向位置を変更する。
通常、同一の条件において所定数の包装、貼付処理を行われるために、最初の貼付処理時において駆動されて、その後、条件が変更されるまで普通は駆動されない。
【0025】
前後方向駆動手段17は、ラベルLの貼付位置を調節するための駆動手段であり、制御手段50の命令により、設定されたラベルLの前後方向の貼付位置に応じて、プッシャー等の排出手段4によるトレイTの商品排出部eへの移動動作を行う。通常、トレイTの商品排出部eへの移動中に貼付部3がトレイTの上面に下降してラベルLの貼付処理を行うために、貼付部3の下降タイミングに合わせてトレイTを移動させるタイミングを制御することにより、前後方向の貼付位置が調節される。
なお、貼付時間の短縮には不利ではあるが、トレイTに収容する商品によってはその高さが不揃いとなり、トレイTの移動中での貼付では一定位置への貼付が難しい場合がある。そのような場合には、プッシャー等の排出手段4によるトレイTの最終移動位置を調節することにより、ラベルLの前後方向の貼付位置を調節することも可能である。
【0026】
第1回転駆動手段21は、ラベルLの発行位置と異なる位置においてラベルを貼付するために、第1回転軸15を中心に、アーム部2を回転往復駆動させる駆動手段である。アーム部2は、第1回転駆動手段21の駆動により、ラベル吸着ポジションP1と、ラベル貼付ポジションP2との間を回転往復する。ラベル吸着ポジションP1に対するラベル貼付ポジションP2までの回転角度は、トレイTに対する貼付位置に関わらず一定であり、第1回転駆動手段21は、一定の回転往復動作を繰り返す単純な機構により構成できる。
【0027】
第1回転駆動手段21により、貼付処理時にはアーム部2がラベル吸着ポジションP1から移動し、貼付部3がラベルの発行位置から離脱しているので、ラベルLを貼付処理している間に、次に貼付するラベルLの発行を行うことができる。また、貼付位置への移動を回転運動によって行うことにより、モータの回転運動を直線運動に変換する必要が無く、安定した移動を行っている。
【0028】
上下駆動手段22は、アーム部2に対して、貼付部3を上下駆動させる手段であり、ラベルの吸着時及び貼付時における貼付部3の上昇動作、及び、下降動作をおこなう。
【0029】
第2回転駆動手段23は、アーム部2に対して、貼付棒31、即ち第2回転軸25を中心に、貼付部3を回転駆動させてラベルを貼付する向きを変更する手段である。
ラベルLの移動を、アーム部2によるラベル吸着ポジションP1からラベル貼付ポジションP2までの回転運動によって行っているために、アーム部2に対してラベルLの向きを変更しなければ、アーム部2の回転運動によって貼付されたラベルLはその向きを変えながら回転させることとなり、ラベルLのラベル発行部側の端部がラベル発行口13a周辺の機構に干渉し、ラベルLの粘着面が張り付いてしまう可能性がある。そこで、本実施形態の貼付装置Bにおいては、貼付部3を、アーム部2の回転に合わせて回転運動させることにより、吸着した際のラベルLの機体aに対する向きを維持したまま貼付位置まで移動せるように駆動制御(引き出し制御)されている。
そして、ラベルLを貼付位置まで移動させた後には、貼付部3を回転させる角度によって、ラベルLの貼付向きを自在に変更することもでき、トレイTの大きさ等に応じて所望の位置にラベルLを貼付することを可能にしている。
【0030】
(貼付部の復帰制御)
真空ポンプ等の圧力調節手段6は、各駆動手段に連動して制御されており、圧力調節手段6と吸着パット33とを連続する真空経路6a中には、圧力調節手段6の不具合や吸着パット33の破損等による真空経路6a内の圧力上昇を検出するために、真空経路内の圧力を検出する圧力センサ(圧力検出手段)51が配置されている。圧力センサ51により検出された真空経路6a内の圧力は、制御手段50に送信されている。
【0031】
そして、図5に示すように、吸着パット33がトレイTを覆うフィルムF面にラベルLを貼付すると、その反力により真空経路6a中に設けた解放弁324が解放されて真空経路内の空気圧が真空に近い状態(負圧状態)から大気圧状態に変化する。
その際の圧力変化を圧力センサ51により検出することで、ラベルLの貼付を検出するように構成されている。
【0032】
制御手段50は、圧力センサ51が検出した圧力値が予め記憶してある閾値以上に上昇した場合には、真空経路6a内が真空(負圧)状態から大気圧状態に解放した、すなわち、ラベルLがフィルムF面に貼付されたと判断して、上下駆動手段22を下降動作から上昇動作へ変更するように制御している。
【0033】
(貼付部の交換時期報知機能)
さらに、本実施形態の貼付装置においては、圧力センサ51を利用した吸着パット(吸引部)33等吸着部の交換を促す報知機能を備えている。これによって、従来、予め設定された貼付回数や利用時間などを利用した交換時期の報知制御では不可能であった、実際の吸着パット33等吸着部の状態に応じた交換報知を可能としている。なお、以下の説明において「吸着パット等吸着部」とは、吸着パットを含む吸着に係る構成部品(真空ポンプや圧力センサを含む)の全て若しくは一部を意味する。)
本実施形態の貼付装置の吸着パット33等吸着部は、包装装置における包装処理中において、吸着パット33が単に待機している状態である通常待機状態と、ラベルLを吸着するための準備を行いながら待機する準備待機状態と、ラベルLを吸着しているラベル吸着状態と、吸着しているラベルLをトレイTに貼付した直後のラベル解放状態とを繰り返すことにより、貼付装置による貼付処理を行っている。
【0034】
上記各状態において、吸着パット33等吸着部の内部は、圧力調節手段6によって圧力調整が行われており、吸着パット33によるラベルLの吸着を可能にしている。
具体的には、通常待機状態においては圧力調節手段6が作動することなく、真空経路6aは大気に開放されて大気圧(圧力値10)となっているが、準備待機状態においては、圧力調節手段6を駆動させており、真空経路6aは大気に開放されてはいるもののやや負圧の状態(圧力値9)に移行する。そして、ラベル吸着状態においては圧力調節手段6を駆動させながらラベルLを吸着することにより、真空経路6aの内部は一気に真空(負圧)状態(圧力値5)に移行し、その後、ラベル解放状態では、真空経路6aの内部は真空(負圧)状態が解放されるものの一気に大気圧への移行はなされない状態(圧力値7)となる。
なお、上記の説明では、圧力値とは、大気圧の圧力を「10」と設定し、真空状態の圧力を「5」と設定したときの各状態の圧力を示している。
【0035】
以上のように、吸着パット33等吸着部の内部圧力は、各状態において上記適正な圧力値となることが好ましいが、吸着パット33は、合成ゴム等の弾性を備える材料から形成されていることなどから、スカート部333等が破れるなどしてラベル吸着状態において真空状態(圧力値5)が保てなくなることがある。
また、破れ等が生じない場合であっても、利用回数や経年使用、使用環境を原因としてスカート部333等が摩耗したり、ゴム材料の変形や硬化が生じたりして、徐々に真空(負圧)状態を作り出すことが難しくなり、一時的には真空状態を作り出すことができても、その状態を維持できずに吸引中のラベルを落としてしまうような不具合が生じることがある。さらに、吸着パット33以外の構成部品に不具合が生じることもある。
このような不具合を報知するために、本実施形態の貼付装置においては、圧力センサ51が検出する圧力値に基づいて吸着パット33等吸着部の破損や摩耗等を検出して、利用者へ交換を促す報知を行っている。
【0036】
圧力センサ51の検出値に基づく吸着パット33等吸着部の交換報知制御には、図8(a)に示す圧力値テーブル8が利用される。圧力値テーブルは、吸着パット33等吸着部の上記各状態における圧力調節手段6の動作状態を設定する圧力調節手段動作欄81と、各状態における適正圧力値が関連づけて設定されている適正圧力値欄82と、圧力センサ51により検出された圧力値が入力される検出圧力値欄83と、後述する吸着部の交換時期を報知するための基準となる閾値(報知値)が設定される報知値欄84とを備えている。なお、圧力値テーブル8は、制御手段50内のRAM等のメモリに記憶されており、入力表示手段h等から利用者が手動入力により適宜書き換えることができる。
制御手段50は、上記各状態において圧力センサ51が検出した吸着パット33等吸着部(真空経路6a)内の圧力値を受信すると、受信した検出圧力値を吸着部の各状態と関連付けてメモリ内の圧力値テーブルの検出圧力値欄83に入力する。そして、入力された検出圧力値を吸着パット33等吸着部の各状態における適正圧力値を閾値として比較することで、吸着パット33等吸着部の各構成部品の破損や摩耗等を判断している。
例えば、図8(a)に示す圧力テーブル8の例では、圧力センサ51により検出されたラベル吸着状態における検出圧力値のみが適正圧力値を上回っており、吸着パット33に破損等何らかの不具合が発生したと判断することができ、交換が必要であると判断する。そして、利用者に対して吸着パット33の交換を促す報知を行うように入力表示手段hを制御する。 なお、報知の例としては、「吸着パットの交換が必要です。交換をお願いします。」等の表示を入力表示手段hに表示することなどがあげられる。
また、図8(b)に示す圧力テーブル8の例では、圧力センサ51により検出された検出圧力値のうち、圧力調節手段6が作動している準備待機状態、ラベル吸着状態、ラベル解放状態において適正圧力値を上回っており、圧力調節手段6に何らかの不具合が発生したものと判断することができ、圧力調節手段6の交換が必要であると判断する。そして、利用者に対して圧力調節手段6の交換を促す報知を行うように入力表示手段hを制御する。
報知の例としては、「真空ポンプの交換時期になりました。真空ポンプを交換してください。」等の表示を入力表示手段hに表示することなどがあげられる。
さらに、図8(c)に示す圧力テーブル8の例では、圧力センサ51により検出された検出圧力値の全てが適正圧力値を上回っていることから、圧力センサ51に何らかの問題が発生したものと判断することができ、圧力センサ51の交換が必要であると判断する。そして、利用者に対して圧力調節手段6の交換を促す報知を行うように入力表示手段hを制御する。
報知の例としては、「圧力センサの交換時期になりました。圧力センサを交換してください。」等の表示を入力表示手段hに表示することなどがあげられる。
なお、上記不具合箇所の判断基準は、上記の基準に限定されるものではなく、利用者が適宜設定できるものである。
【0037】
以上のように、吸着パット33等吸着部の不具合を報知することができるが、上記の報知のみでは、、吸着パット33等吸着部が使用不能となった場合にのみ報知をすることなり、利用に支障が出る可能性がある。できれば、吸着パット33等の消耗品等については、完全に使用不能になって利用に支障が出る前に吸着部の交換を報知することが好ましい。
そのため、本実施形態の貼付装置は、例えば吸着パット33が使用不能状態にまでは到っていないが、使用不能になる時期が近いことによって交換を促す機能を有している。制御手段50は、使用不能になる時期が近いこと、即ち交換時期であることを報知するために、交換時期を報知するための基準となる閾値として、吸着パット33の不具合を検出するための指針となるラベル吸着状態における適正圧力値「5」に「+1」をした「6」を報知値(圧力値6)として圧力値テーブルに設定してメモリ内の記憶しておく。なお、この設定は、圧力値テーブルを利用者が手動で書き換えてもよく、また、ラベル吸着状態の圧力値に対して自動的に「+1」をして設定するようにしてもよい。
そして、制御手段50は、圧力センサ51から受信したラベル吸着状態における検出圧力値と前記閾値(報知値)とを比較して、検出値が閾値を上回った場合に、吸着パット33が疲労等しており交換時期であると判断して入力表示手段hに吸着部の交換が必要であることを報知させる。
その際には、入力表示手段hに「吸着パットの交換時期となりました。交換をお願いいたします。」等の報知が表示される。
これによって、包装装置の利用に支障が出る前に吸着パット33の交換を促すことができ、使用者は、吸着パット33が使用不能になる前に交換することができる。
なお、上記の交換時期の報知制御は、閾値の設定等を変更することにより、吸着パット33以外の構成部品についても用いることができる。
上記報知制御において、制御手段50は、交換が必要であることを判断する判断手段、及び、報知を行うように制御する報知手段として機能している。
【0038】
上記交換時期の報知等によって、利用者が吸着パット33や吸引路33a等の吸着部を交換した場合、吸着部を構成する各部品のバランス等のくずれにより、圧力センサ51により検出される圧力値に差異が生じる場合がある。そのような状態で吸着パット33等吸着部の交換報知制御を行うと、吸着パット33等吸着部は十分な真空状態を発生することができラベルを吸着できるにもかかわらず検出した圧力値が報知値(閾値)を上回って交換時期であると判断され報知されたり、反対に、すでに交換時期であるにもかかわらず圧力値が報知値を(閾値)上回らずに適切な時期に交換の報知されない状況が生じる。
【0039】
例えば、交換後の各状態の圧力値を検出するテスト等を行って、交換直後の通常待機状態における圧力センサの検出値が「11」であり、ラベル吸着状態における検出値が「10」であり、ラベル吸着状態における検出値が「6」であり、ラベル解放状態における検出値が「8」であるとの結果が得られたような状況においては、交換後の圧力センサ51がラベル吸着状態おいて圧力値「6」を検出した場合、吸着パット33が十分な真空状態でラベルを吸着できているにもかかわらず、検出圧力値が報知値(閾値)「6」と同じであることから吸着パット33の交換時期であると判断され,交換時期が報知される可能性がある。
そのような不具合を防止するために、本実施形態の包装装置には、圧力値テーブルの再設定機能を備えている。
【0040】
具体的には、吸着部を交換した後に、ラベルの吸引や貼付のテスト動作を数回行いその平均値等を各動作状態の圧力値として上書きして、図8(d)に示すような、圧力値テーブルを設定することができる。テスト結果に基づいて、ラベル吸着状態の設定圧力値が「5」から「6」へと書き換えられることにより、閾値(報知値)は「+1」をした「7」に設定されるので、圧力センサ51がラベル吸着状態おいて検出値「6」を検出した場合であっても旧設定に基づく誤制御を未然に防ぐことができる。
なお、上記実施形態では、吸着部の交換報知は入力表示手段hを介して利用者に行うようにしているが、これに限るものではなく、音声による報知やブザー等の警報装置等による報知とすることも可能であり、また、保守者(サービスマン)に対してメンテナンス画面やエラー一覧画面などで報知してもよい。
【0041】
(原点復帰動作)
貼付装置においては、ラベルの貼付動作とともに、ラベル貼付後の原点位置への復帰動作を速やかに行うことが貼付処理全体の時間短縮に必要であり、貼付部3の上昇動作速度を大きくして、復帰にかかる時間を短くすることが必要であるが、上昇速度が大きいと停止時に大きな負荷がかかり、正確な原点高さでの停止に誤差が生じる可能性があった。原点位置、即ち、次回の吸着動作に対する初期位置の誤差は、吸着パット33を用いたラベルの吸着動作においては吸着ミス、貼付漏れにつながる大きな問題点であった。
【0042】
本発明の実施形態の貼付装置においては、貼付部3の原点復帰のための復帰動作において、減速制御を採用して、原点への速やかな、かつ正確な復帰を可能としている。
具体的には、図7に示すように、アーム部2に、貼付部3の貼付棒31の上端31aが原点停止位置にあることを検出する原点停止センサ52と、貼付棒31の上端31aが原点停止位置から所定距離下方位置である減速開始位置にあることを検出する減速開始センサ53とを備えている。
そして、貼付位置からの貼付部3の復帰動作は、大きな上昇速度により行い、貼付棒31の上端が原点停止位置から所定距離下方の減速開始位置に到達したことを減速開始センサ53により検出したタイミングで上下駆動手段22の減速制御をおこない、原点停止位置での停止負荷を軽減している。その後、貼付棒31の上端が、原点停止位置に達したことを原点停止センサ52が検知すると、上下駆動手段22の駆動を停止することで、正確な原点位置への復帰をおこなうことができる。
【0043】
(ラベルの貼付位置の調節)
図9を参照して、貼付装置Bにより貼付するラベルの貼付位置を、前後左右方向に調節する動作を説明する。
【0044】
図9(a)は、「A」と印字されたラベルLをトレイTの中央に、「A」の向きを変更せずに貼付する状態(以下、「基準貼付状態」とする。)を示し、アーム部2がラベルLの貼付位置である左右方向略中央位置に位置するように、左右方向駆動手段16により本体部1は機体aの左側に配置されている。そして、上下駆動手段22による貼付部3の下降タイミングに合わせて前後方向駆動手段17によるトレイTの前後移動タイミングを制御することにより、トレイTの中央位置にラベルLが貼付される。
貼付時のラベルLの向きはラベルが発行される向きと同じに設定されているので、第1回転駆動手段21によるアーム部2の反時計回りの回転動作(m1)に合わせて、第2回転駆動手段23により貼付部3を同じ角度だけ時計回りに回転(m2)させることでラベルLの向きが常に同じとなるように制御されている。
【0045】
図9(b)は、同ラベルLをトレイTの右側位置に貼付する(すなわち、貼付位置が左右方向に変更されている。)状態を示し、ラベルLの貼付位置が基準貼付状態におけるラベルの保持位置に対して、左右方向に離れた位置に設定されている。このような場合には、ラベルの保持(発行)位置自体をラベル貼付位置に近づけるように、左右方向駆動手段16により本体部1の左右位置を変更(m3)させている。
したがって、ラベルLの貼付処理におけるラベルの保持(発行)位置から貼付位置への移動は、ラベルLの貼付位置に関わらず第1回転駆動手段による常に一定のアーム部2の回動動作(m1)のみで行うことができ、ラベルの貼付位置による貼付処理時間に変化がなく、常に効率的な貼付処理を行うことができる。
【0046】
図9(c)は、同ラベルLをトレイTの前方位置に貼付する(すなわち、貼付位置が前後方向に変更されている。)状態を示している。
ラベルLの貼付位置が基準貼付状態における貼付位置よりもトレイTの後方位置にある場合には、前後方向駆動手段17によるトレイTの前後移動タイミングを制御することにより、貼付位置の前後を調整(m4)している。具体的には、ラベルLを前方に貼付したい場合には、上下駆動手段22による貼付部3の下降動作に対する前方移動タイミングを基準貼付状態時のタイミングよりも遅らせることにより、また、ラベルLを後方に貼付したい場合には、上下駆動手段22による貼付部3の下降動作に対する前方移動タイミングを基準貼付状態時のタイミングよりも早めることにより行っている。
【0047】
なお、ラベルLの前後方向の貼付位置の調整は、トレイの停止位置を制御することによっても行うことができる。
以上のように、前後方向駆動手段17及び左右方向駆動手段16の駆動制御により、トレイTに対する前後方向、及び、左右方向の貼付位置の調整を行うことができる。
【0048】
(ラベルを貼付する向きの調節)
図10を参照して、貼付装置Bにより、トレイTに対するラベルLの貼付向きを調節する動作を説明する。
【0049】
図10(a)は、トレイTの前後左右方向の中央に対して、ラベルLの貼付向きがラベルLが発行された向きとは180度異なる向きに貼付する場合が示されている。ラベルLを180度変更して貼付する場合であっても、アーム部2のラベル吸着ポジションP1からラベル貼付ポジションP2までの回転(m1)中は、その回転運動によりラベルLの向きが変わらないように貼付部3を回転(m2)させて引き出し制御を行う。アーム部2がラベル貼付ポジションP2に達した後に、第2回転駆動手段23により、貼付部3が第2回転軸25を中心に180度回転(m5)させることでラベルLの向きが調節されている。
このとき、第2回転軸25に対する貼付部3の突出する方向が前後反対になっているので、ラベルLの前後方向の貼付位置が基準貼付状態時と異なることとなる。
その位置変更に対応するために、前後方向駆動手段24によるトレイTの駆動制御がなされて、貼付位置の前後位置の調節(m6)が行われる。
【0050】
図10(b)では、トレイTの右側部分に対して、ラベルLの貼付向きがラベルLが発行された向きとは180度異なる向きに貼付する場合が示されている。図10(a)の時と同様に、貼付部3はアーム部2の回転(m1)中には、貼付部3を回転(m2)させて引き出し制御を行い、その後、第2回転軸25を中心に180度回転(m5)されてラベルLの向きが調節されるとともに、前後方向駆動手段24によるトレイTの駆動制御がなされて、貼付位置の前後位置の調節(m6)が行われる。また、左右方向駆動手段16により、本体部1のラベルの発行位置をラベル貼付位置に近づけるように、本体部1が右側に位置変更(m3)されている。
このように、トレイTの右側部分にラベルLの向きを180度変更して貼付することにより、実質的にトレイTの左側部分にラベルLを貼付していることと同じ貼付状態を作り出すことができ、貼付装置全体の幅を必要以上に大きくする必要を無くしている。
【0051】
図10(c)では、トレイTの右側部分に対して、ラベルLの貼付向きがラベルLが発行された向きとは90度異なる向きに貼付する場合が示されている。
貼付部3はアーム部2のラベル吸着ポジションP1からラベル貼付ポジションP2までの回転(m1)と同期して、貼付部3を回転(m2)させて引き出し制御を行い、その後、第2回転軸25を中心に反時計回りに90度回転(m7)されてラベルLの向きが調節されるとともに、前後方向駆動手段24によるトレイTの駆動制御がなされて、貼付位置の前後位置の調節(m8)が行われる。また、左右方向駆動手段16により、本体部1のラベルの発行位置をラベル貼付位置に近づけるように、本体部1が右側に位置変更(m9)されている。
以上のように、本実施形態の貼付装置によって、トレイT表面のさまざまな位置に対して、様々な向きでラベルLの貼付を行うことができる。
【0052】
(貼付装置の除電手段)
包装装置による包装処理を繰り返すにつれて、包装装置や包装物等に静電気が蓄積することがあり、好ましくない。
そこで、本実施形態の貼付装置には、貼付部3の吸着パット33近傍に除電手段を配置して、包装物や貼付装置Bの除電を行っている。
以下、図11を示して、除電手段について説明する。
【0053】
本実施形態における除電手段7は、貼付部3の吸着パット33を囲むように設けられる導電性を有する不織布等の除電シート71により形成されており、副アーム部32の上ブロック321に対して、取付金具72によって取付けられている。
除電シート71は、幅広の舌形状のシート状物からなり、副アーム部32に取付けられた吸着パット33の反貼付棒側外周を覆うように、かつ、除電シート71の下端が吸着パット33の下端より若干上方位置になるように取付けられており、吸着パット33がラベルLをフィルムF面に貼付する際に除電シート71の下端がフィルムFに接触して、フィルムFに蓄積する静電気を除去している。
【0054】
通常、ラベルの発行位置において待機保持されているラベルLを吸着保持する際には、吸着パット33によってラベルLのラベル載置板142に載置されている部分を吸着することが多く、結果的に、図11(a)に示すようにラベルLの一側端を保持することになる。
そのような保持状態において、仮に、吸着パット33が、図11(a)の状態から左側に折れたとしても、吸着パット33はフィルムFの上面に接触することになり、吸着パット33によりフィルムFを傷付けることは少ない。逆に、図11(c)に示すように右側に折れると、吸着パット33が直接フィルムFの上面に接触することとなり、フィルムFを傷付ける危険性が高かった。
【0055】
本発明の実施形態に係る貼付装置の除電手段7においては、除電シート71が副アーム部32に取付けられた吸着パット33の反貼付棒側外周を覆うように構成されているので、吸着パット33が図11(c)に示すように右側に折れた場合には、吸着パット33とフィルムFとの間に除電シート71が存在させることができ、吸着パット33によるフィルムFの表面の傷付けを防止することができる。
【0056】
(ラベル発行部の構成)
本体部1の前面に設けられたラベルの発行部について、図12、13を示しながら説明する。
図12に示すように、ラベル発行部は、帯状のラベル用紙を切断してラベルLを作成するカッタ手段13と、貼付部3によるラベルLの吸着時にラベルLの下面を支持するラベル載置部14とを有している。
【0057】
ラベル載置部14は、カッタ手段13の前面に開口するラベル発行口13aの前方やや下方位置に配置されており、本体部1(印刷手段12)に固定される支持フレーム141により、ラベル発行口13aに対して左右方向位置調節自在に取り付けられている。
ラベル載置部14は、その表面に貼付き防止のコーティング加工が施されて、ラベルLが載置されるラベル載置板142と、ラベル載置板142の下面に配置されるスポンジ等の緩衝材143とを有しており、吸着パット33によるラベルLの吸着時に、ラベルLにかかる負荷を軽減すると共に吸着パット33の吸着面に対してラベルL表面を垂直に当接することを可能にしている。
なお、コーティング加工の例としては、特殊コーティングされたフィルムを貼り付けることやラベル載置板142表面に直接加工を施すなど、適宜な方法によりコーティング加工を施すことができる。
【0058】
カッタ手段13は、固定刃131a及び可動刃131bを備えるカッタユニット131と、可動刃131bを上下動させる駆動ユニット132とを備え、カッタユニット131の前面には、ラベルの反りを防止する反り防止板133aを備えた表面板133が配置されてネジ等の固定手段nにより一体的に固定されている。
カッタユニット131の下方には、ラベルLの切断時にカッタ刃等にラベルLの粘着剤が付着することを防止するためにオイルを塗布するオイル塗布部134aがオイル塗布部保持手段134により保持されており、オイル塗布部保持手段134には、ラベル載置板142において貼付部3により吸着されたラベルLの粘着面がラベル発行口13a周辺に貼り付くことを防止するラベル貼付き防止部134bが設けられている。
【0059】
ラベル貼付き防止部134bは、上端が凹凸を有するのこぎり形状に形成されており、ラベル発行口13aより発行されてラベル載置板142に載置されているラベルLの表面に対して、吸着パット33の吸着面を押しつけて吸着し、カッタ手段13によりラベル用紙の切断がなされたときに、ラベル発行口13a近傍の粘着面を下方より支持するものである。
ラベル貼付き防止部134bの上端が凹凸を有するのこぎり形状に形成されているので、ラベルLの粘着面に対して複数の点で支持することとなり、ラベルLの移動開始時にラベルLの粘着面が近傍に貼付くことはなく、速やかに発行位置を離れることができる。
【0060】
−貼付検出手段及び上昇動作制御−
以上のように、本実施形態の貼付装置においては、吸着パットに吸着されたラベルLを被貼付物に貼付した後に貼付部の上昇動作を開始するに際して、1.吸着パットの吸着からラベルを解放するために、貼付部の貼付動作に伴って解放する解放弁を用いており、2.貼付部によるラベルの貼付の検出を、前記解放弁による吸着パットへの真空経路における真空の破壊を検出することによって行っている。
【0061】
すなわち、本実施形態においては、吸着パット33と圧力調節手段6とを連続する真空経路6aの途中に、ラベルを吸着保持する吸着状態からトレイTに対してラベルLを貼付することによって解放される、何ら動力を必要としない解放弁324を設けることで、ラベル貼付時のラベルのスムーズな放出を行うとともに、解放弁324の解放による真空経路6a内の真空状態から大気圧状態へ圧力変化を圧力検出手段により検出して、貼付部の上昇のスイッチとしている。
【0062】
したがって、貼付動作そのものに伴う反力により解放弁の解放及び貼付部の上昇制御を開始するので誤作動が起こりにくい。例えば、貼付動作に必要な商品データ(トレイ寸法や貼付位置など)は予め入力され記憶されており、貼付部の上昇制御についても、商品データとしてトレイの高さデータを記憶させておけば、その高さデータに基づいて貼付部の下降及び上昇を制御することはできるが、同じ種類の商品であっても包装状態やトレイ内での配置によって貼付位置における高さに差異が生じることがある。そのような商品に対して貼付処理を行った場合には、商品毎の貼付位置の高さ誤差に対応できずに、貼付品質が一定に保てないこととなる。
【0063】
仮に、包装完了からラベル貼付までの間に商品の高さ情報をセンサで検知すれば、貼付部の下降、上昇制御を行うこともできるが制御が煩雑で、コストの上昇にもつながることとなる。
それに対して、本実施形態の貼付装置では、圧力センサにより圧力変化を検出するまで貼付部を下降させればよく、高さ情報を必要とせず、そのためのセンサ等を用意する必要もなく、構造の簡易化及びコストダウンを実現できる。
貼付を検出するためのセンサとしての圧力センサ51は真空経路6a内の圧力が検出できればどこに設けてもよく、即ち、ラベルLの貼付のために複雑に動作する貼付部近傍に設ける必要は無く、電気的な貼付検出手段に必要な配線も必要ないので、貼付部3の吸着パット33周辺の構成を簡潔にすることができるとともに、経済的である。
【0064】
さらに、貼付部の被貼付物への当接の反力により、解放弁が解放して圧力変化が生じ、圧力変化によって、貼付部の上昇動作が開始されるので、開放弁が解放された時点では、被貼付部の高さに関係なく、常に一定の圧力で商品に対して貼付することとなるので、貼付品質を均一に仕上げることができる。
【0065】
なお、解放弁324を解放するための被貼付物に対する当接圧力(即ち貼付圧)は、例えば、貼付部3の下ブロック322の貼付棒側もしくは吸着パット側に、解放弁324の解放を補助する、もしくは、解放弁324の解放に抵抗するウエイトを設けることで調節することができるので、被貼付物によって貼付圧力を変更することができる。
【0066】
さらに、真空経路6a内の、圧力調節手段6による真空状態への移行、もしくは、解放弁324の解放による大気圧状態への移行を迅速に行うには、真空経路6aの直径は真空経路6a内において同一に形成することが望ましい。
さらに、圧力センサの検出する検出値を利用した吸着パット(吸引部)33等吸着部の交換制御を行っているので、従来、予め設定された貼付回数や利用時間などを利用した交換時期の報知制御で生じていた、利用可能である吸着パット等吸着部が交換されるといった問題や、既にラベルの吸引が不可能であるのに交換が催促されないといった問題を解決することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 :本体部
11 :用紙支持軸
12 :印刷手段
13 :カッタ手段
13a :ラベル発行口
131 :カッタユニット
131a :固定刃
131b :可動刃
132 :駆動ユニット
133 :表面板
133a :防止板
134 :オイル塗布部保持手段
134a :オイル塗布部
134b :ラベル貼付き防止部
14 :ラベル載置部
141 :支持フレーム
142 :ラベル載置板
143 :緩衝材
15 :第1回転軸
15a :ブラケット
15b :ブラケット
16 :左右方向駆動手段
17 :方向駆動手段
2 :アーム部
21 :第1回転駆動手段
22 :上下駆動手段
23 :第2回転駆動手段
24 :方向駆動手段
25 :第2回転軸
3 :貼付部
31 :貼付棒
31a :上端
32 :副アーム部
321 :上ブロック
321a :空気通路
322 :下ブロック
322a :空気通路
323 :軸
324 :解放弁
33 :吸着パット
33a :吸引路
331 :本体部
331a :取付部
331b :緩衝部
332 :吸着部
333 :スカート部
334 :環状リブ
4 :排出手段
50 :制御手段
51 :圧力センサ
52 :原点停止センサ
53 :減速開始センサ
6 :圧力調節手段
6a :真空経路
7 :除電手段
71 :除電シート
72 :取付金具
A :フィルム包装装置
B :貼付装置
F :フィルム
L :ラベル
M1 :矢印
M2 :矢印
M3 :矢印
M4 :矢印
M5 :矢印
P1 :ラベル吸着ポジション
P2 :ラベル貼付ポジション
R :用紙ロール
T :トレイ
a :機体
b :商品載置部
c :フィルム包装手段
d :搬送コンベア
e :商品排出部
h :入力表示手段
n :固定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13