(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基の導入率が無水グルコースユニット1モルに対し0.001モル以上1.5モル以下である、請求項1に記載の改質セルロース繊維。
セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入後、微細化処理を行なうことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の改質セルロース繊維の製造方法。
塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドから選ばれる1種又は2種以上である、請求項4に記載の改質セルロース繊維の製造方法。
改質セルロース繊維における、一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基の導入率が無水グルコースユニット1モルに対し0.001モル以上1.5モル以下である、請求項4〜6いずれかに記載の改質セルロース繊維の製造方法。
改質セルロース繊維における、一般式(2)で表される置換基のnが0以上20以下の数、Aが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基である、請求項4〜7いずれかに記載の改質セルロース繊維の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[改質セルロース繊維]
本発明の改質セルロース繊維は、セルロース繊維表面に特定の置換基がエーテル結合を介して結合していることを特徴とする。なお、本明細書において、「エーテル結合を介して結合」とは、セルロース繊維表面の水酸基に修飾基が反応して、エーテル結合した状態を意味する。
【0014】
本発明の改質セルロース繊維が、有機溶媒中での分散性に優れる理由は、次のように考えられる。セルロースは、一般に、その表面水酸基による水素結合で凝集してミクロフィブリルの束を形成するが、本発明の改質セルロース繊維は、表面水酸基に特定の修飾基を導入する反応を行うことで、該修飾基がセルロース繊維骨格のセルロース鎖に直接エーテル結合するため、セルロースの結晶構造を維持した、疎水化セルロース繊維となる。また、導入された修飾基が特定鎖長のアルキル基末端を有することから、立体斥力による反発が得られるため、有機溶媒中での分散性に優れる。従って、本発明の改質セルロース繊維は有機溶媒中で均一に分散し、かつ、結晶構造が安定して維持されやすいことから、該改質セルロース繊維を樹脂と複合化することで得られる樹脂組成物の機械的強度が向上し、また、耐熱性や寸法安定性が良好なものとなる。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。
【0015】
(平均繊維径)
本発明の改質セルロース繊維は、平均繊維径が1nm以上500nm以下であるが、耐熱性向上、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上であり、取扱い性、寸法安定性、溶媒分散性、及び増粘性発現の観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは120nm以下である。なお、本明細書において、改質セルロース繊維の平均繊維径は、以下の方法に従って測定することができる。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅と見なすことができる。
【0016】
具体的には、微細化処理を行なった際に得られた分散液を、光学顕微鏡(キーエンス社製、「デジタルマイクロスコープVHX−1000」)を用いて倍率300〜1000倍で観察し、繊維30本以上の平均値を計測することで、ナノオーダーの繊維径を測定することができる。光学顕微鏡での観察が困難な場合は、前記分散液に溶媒を更に加えて調製した分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて測定することができる。一般に、高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は6×6の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析される高さを繊維の幅と見なすことができる。なお、詳細な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0017】
(修飾基)
本発明の改質セルロース繊維における修飾基は、以下の一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基であり、これらの置換基群は単独で又は任意の組み合わせで導入される。なお、導入される修飾基が前記置換基群のいずれか一方の場合であっても、各置換基群においては同一の置換基であっても2種以上が組み合わさって導入されてもよい。
−CH
2−CH(OH)−R
1 (1)
−CH
2−CH(OH)−CH
2−(OA)
n−O−R
1 (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるR
1はそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
一般式(1)におけるR
1は、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、入手性及び反応性向上の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である。具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、トリアコンチル基等が例示される。
また、一般式(1)におけるR
1は、分散剤である有機溶媒等の種類にもよるが、増粘作用の観点から、以下の範囲が好ましい。
・SP値11以上13以下の有機溶媒の場合:好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
・SP値9.2以上11未満の有機溶媒の場合:好ましくは5以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
・SP値9.2未満の有機溶媒の場合:好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
なお、ここで、SP値11以上13以下の有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、エタノール、アセトニトリル、イソプロピルアルコール等が例示され、SP値9.2以上11未満の有機溶媒としては、メチルエチルケトン、アセトン、クロロホルム、ジオキサン等が例示され、SP値9.2未満の有機溶媒としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル等が例示される。また、SP値とは、Fedors法で計算される溶解度パラメーター(単位:(cal/cm
3)
1/2)を示し、例えば、参考文献「SP値基礎・応用と計算方法」(情報機構社,2005年)、Polymer handbook Third edition(A Wiley-Interscience publication,1989)等に記載されている。
【0018】
一般式(2)におけるR
1は、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、入手性及び反応性向上の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。具体的には、前記した一般式(1)におけるR
1と同じものが挙げられる。
また、一般式(2)におけるR
1は、分散媒である有機溶媒等の種類にもよるが、増粘作用の観点から、以下の範囲が好ましい。なお、ここでの有機溶媒は前述の通りである。
・SP値11以上13以下の有機溶媒の場合:好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
・SP値9.2以上11未満の有機溶媒の場合:好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
・SP値9.2未満の有機溶媒の場合:好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
【0019】
一般式(2)におけるAは、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基であり、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基を形成する。Aの炭素数は1以上6以下であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が例示され、なかでも、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0020】
一般式(2)におけるnは、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。nは0以上50以下の数であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、同様の観点及び得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0021】
一般式(2)におけるAとnの組み合わせとしては、反応性及び立体斥力発現による増粘効果の観点から、好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが0以上20以下の数の組み合わせであり、より好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが5以上15以下の数の組み合わせである。
【0022】
一般式(1)で表される置換基の具体例としては、例えば、プロピルヒドロキシエチル基、ブチルヒドロキシエチル基、ペンチルヒドロキシエチル基、ヘキシルヒドロキシエチル基、ヘプチルヒドロキシエチル基、オクチルヒドロキシエチル基、ノニルヒドロキシエチル基、デシルヒドロキシエチル基、ウンデシルヒドロキシエチル基、ドデシルヒドロキシエチル基、ヘキサデシルヒドロキシエチル基、オクタデシルヒドロキシエチル基、イコシルヒドロキシエチル基、トリアコンチルヒドロキシエチル基等が挙げられる。
【0023】
一般式(2)で表される置換基の具体例としては、例えば、3−ブトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は0以上50以下であればよく、例えば、前記したエチレンオキシド等のオキシアルキレン基を有する置換基において付加モル数が10、12、13、20モルの置換基が例示される。
【0024】
(導入率)
本発明の改質セルロース繊維において、セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する前記一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基の導入率は、溶媒との親和性の観点から、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.005モル以上、更に好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.05モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは0.2モル以上、更に好ましくは0.3モル以上、更に好ましくは0.4モル以上である。また、セルロースI型結晶構造を有し、強度を発現する観点から、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.3モル以下、更に好ましくは1.0モル以下、更に好ましくは0.8モル以下、更に好ましくは0.6モル以下、更に好ましくは0.5モル以下である。ここで、一般式(1)で表される置換基と一般式(2)で表される置換基のいずれもが導入されている場合は合計した導入モル率のことである。なお、本明細書において、導入率は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができ、また、導入モル比又は修飾率と記載することもある。
【0025】
(結晶化度)
改質セルロース繊維の結晶化度は、強度発現の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。
【0026】
(粘度)
本発明の改質セルロース繊維は、前記した微細な繊維径を有しながらも、前記した官能基が導入されていることで有機溶媒中にて分散性に優れることから、セルロース繊維が元来有する増粘性をより効果的に発揮することができるものである。本発明においては、増粘性を評価する指標として、セルロース繊維をジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエンから選ばれるいずれかの有機溶媒中で高圧ホモジナイザー(高圧湿式メディアレス微粒化装置など、例えば吉田機械社製、ナノヴェイタL−ES)により100MPaの圧力による微細分散処理を10回行って0.2質量%濃度の分散体とした際の粘度を用いる。なお、粘度はE型粘度計(コーンローター:1°34′×R24)を用いて、25℃、1rpmの条件下で測定した値を採用する。かかる条件下で測定した本発明の改質セルロース繊維の粘度は、前記したいずれかの有機溶媒中で15mPa・s以上であるが、強度発現の観点から、好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは30mPa・s以上、更に好ましくは50mPa・s以上、より更に好ましくは100mPa・s以上、より更に好ましくは150mPa・s以上であり、原料入手性の観点から、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは8,000mPa・s以下、更に好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは3,000mPa・s以下、更に好ましくは1,000mPa・s以下である。なお、前記条件に従って粘度を測定した際に、前記有機溶媒のうち少なくとも1つにおいての粘度が15mPa・s以上であれば本発明に含まれる。即ち、一の有機溶媒での粘度が15mPa・s未満であっても、他の有機溶媒での粘度が15mPa・s以上を示すのであれば、本発明に含まれる。よって、前記した全ての有機溶媒中での粘度が15mPa・s未満である改質セルロース繊維は本発明に含まれない。
【0027】
[改質セルロース繊維の製造方法]
本発明の改質セルロース繊維は、上記したようにセルロース繊維表面に前記置換基がエーテル結合を介して結合した後に、微細化処理を行なって得られているが、置換基の導入は、特に限定なく公知の方法に従って行うことができる。
【0028】
具体的には、セルロース系原料に、塩基の存在下で、前記置換基を有する化合物を反応させればよい。
【0029】
(セルロース系原料)
本発明で用いられるセルロース系原料は、特に制限はなく、木本系(針葉樹・広葉樹)、草本系(イネ科、アオイ科、マメ科の植物原料、ヤシ科の植物の非木質原料)、パルプ類(綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等)、紙類(新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等)が挙げられる。なかでも、入手性及びコストの観点から、木本系、草本系が好ましい。
【0030】
セルロース系原料の形状は、特に制限はないが、取扱い性の観点から、繊維状、粉末状、球状、チップ状、フレーク状が好ましい。また、これらの混合物であってもよい。
【0031】
また、セルロース系原料は、取扱い性等の観点から、生化学的処理、化学処理、及び機械処理から選ばれる少なくとも1つの前処理を予め行なうことができる。生化学的処理としては、使用する薬剤には特に制限がなく、例えばエンドグルカナーゼやエキソグルカナーゼ、ベータグルコシダーゼといった酵素を使用する処理が挙げられる。化学処理としては、使用する薬剤には特に制限がなく、例えば塩酸や硫酸などによる酸処理、過酸化水素やオゾンなどによる酸化処理が挙げられる。機械処理としては、使用する機械や処理条件には特に制限がなく、例えば、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。
【0032】
また、上記機械処理の際に水やエタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、トルエン、キシレン等の溶媒、フタル酸系やアジピン酸系、トリメリット酸系などの可塑剤、尿素やアルカリ(土類)金属水酸化物、アミン系化合物などの水素結合阻害剤、等の助剤を添加することで機械処理による形状変化の促進を行うこともできる。このように形状変化を加えることで、セルロース系原料の取扱い性が向上し、置換基の導入が良好となって、ひいては得られる改質セルロース繊維の物性も向上させることが可能となる。添加助剤の使用量は、用いる添加助剤や使用する機械処理の手法等によって変わるが、形状変化を促進する観点から、原料100質量部に対して、通常5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、また、形状変化を促進する観点及び経済性の観点から、通常10000質量部以下、好ましくは5000質量部以下、より好ましくは3000質量部以下である。
【0033】
セルロース系原料の平均繊維径は、特に制限はないが、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性の観点から、好ましくは10,000μm以下、より好ましくは5,000μm以下、更に好ましくは1,000μm以下、更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
【0034】
セルロース系原料の平均繊維径は、例えば、絶乾したセルロース繊維をイオン交換水中で家庭用ミキサー等を用いて攪拌して繊維を解した後、さらにイオン交換水を加え均一になるよう攪拌して得られた水分散液の一部を、メッツォオートメーション社製の「Kajaani Fiber Lab」にて分析する方法が挙げられる。かかる方法により、平均繊維径がマイクロオーダーの繊維径を測定することができる。なお、詳細な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0035】
セルロース系原料の組成は、特に限定されないが、セルロース系原料中のセルロース含有量が、セルロースファイバーを得る観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、入手性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下であるものが好ましい。ここで、セルロース系原料中のセルロース含有量とは、セルロース系原料中の水分を除いた残余の成分中のセルロース含有量のことである。
【0036】
また、セルロース系原料中の水分含有量は、特に制限はなく、入手性及びコストの観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、取扱い性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0037】
(塩基)
本発明では、前記セルロース系原料に、塩基を混合する。
【0038】
本発明で用いられる塩基としては、特に制限はないが、エーテル化反応を進行させる観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0039】
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0040】
1〜3級アミンとは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのことであり、具体例としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0041】
4級アンモニウム塩としては、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0042】
イミダゾール及びその誘導体としては、1−メチルイミダゾール、3−アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
【0043】
ピリジン及びその誘導体としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
【0044】
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
【0045】
塩基の量は、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、エーテル化反応を進行させる観点から、好ましくは0.01等量以上、より好ましくは0.05等量以上、更に好ましくは0.1等量以上、更に好ましくは0.2等量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10等量以下、より好ましくは8等量以下、更に好ましくは5等量以下、更に好ましくは3等量以下である。
【0046】
なお、前記セルロース系原料と塩基の混合は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
セルロース系原料と塩基の混合は、均一に混合できるのであれば、温度や時間は特に制限はない。
【0048】
(置換基を有する化合物)
次に、前記で得られたセルロース系原料と塩基の混合物に、置換基を有する化合物として、前記一般式(1)で表される置換基を有する化合物及び一般式(2)で表される置換基を有する化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を反応させる。かかる化合物はセルロース系原料と反応する際に、前記置換基を結合させることができるものであれば特に制限はなく、本発明においては、反応性及び非ハロゲン含有化合物の観点から、反応性を有する環状構造基を有する化合物を用いることが好ましく、エポキシ基を有する化合物を用いることが好ましい。以下に、それぞれの化合物を例示する。
【0049】
一般式(1)で表される置換基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1A)で示されるノニオン性の酸化アルキレン化合物が好ましい。かかる化合物は公知技術に従って調製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。該化合物の総炭素数としては、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、5以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、32以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
【0051】
〔式中、R
1は炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す〕
【0052】
一般式(1A)におけるR
1は、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。具体的には、一般式(1)で表される置換基におけるR
1の項に記載のものを挙げることができる。
【0053】
一般式(1A)で示される化合物の具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシオクタデカンが挙げられる。
【0054】
一般式(2)で表される置換基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(2A)で示されるノニオン性のグリシジルエーテル化合物が好ましい。かかる化合物は公知技術に従って調製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。該化合物の総炭素数としては、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、5以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、100以下であり、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下である。
【0056】
〔式中、R
1は炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基、nは0以上50以下の数を示す〕
【0057】
一般式(2A)におけるR
1は、炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、3以上30以下であるが、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。具体的には、一般式(2)で表される置換基におけるR
1の項に記載のものを挙げることができる。
【0058】
一般式(2A)におけるAは、炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基であり、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基を形成する。Aの炭素数は1以上6以下であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。具体的には、一般式(2)で表される置換基におけるAの項に記載のものが例示され、なかでも、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0059】
一般式(2A)におけるnは、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。nは0以上50以下の数であるが、入手性及びコストの観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、同様の観点及び低極性溶媒との親和性の観点から、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0060】
一般式(2A)で示される化合物の具体例としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0061】
前記化合物の量は、得られる改質セルロース繊維における前記一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基の所望の導入率により決めることができるが、反応性の観点から、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01等量以上、より好ましくは0.1等量以上、更に好ましくは0.3等量以上、更に好ましくは0.5等量以上、より更に好ましくは1.0等量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10等量以下、より好ましくは8等量以下、更に好ましくは6.5等量以下、更に好ましくは5等量以下である。
【0062】
(エーテル反応)
前記化合物とセルロース系原料とのエーテル反応は、溶媒の存在下で、両者を混合することにより行うことができる。溶媒としては、特に制限はなく、前記塩基を存在させる際に使用することができると例示した溶媒を用いることができる。
【0063】
溶媒の使用量としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物の種類によって一概には決定されないが、セルロース系原料100質量部に対して、反応性の観点から、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは75質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、生産性の観点から、好ましくは10,000質量部以下、より好ましくは5,000質量部以下、更に好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは1,000質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である。
【0064】
混合条件としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物が均一に混合され、十分に反応が進行できるのであれば特に制限はなく、連続的な混合処理は行っても行わなくてもよい。1Lを超えるような比較的大きな反応容器を用いる場合には、反応温度を制御する観点から、適宜攪拌を行ってもよい。
【0065】
反応温度としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物の種類及び目標とする導入率によって一概には決定されないが、反応性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、熱分解を抑制する観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
【0066】
反応時間としては、セルロース系原料や前記置換基を有する化合物の種類及び目標とする導入率によって一概には決定されないが、反応性の観点から、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、生産性の観点から、好ましくは60時間以下、より好ましくは48時間以下、更に好ましくは36時間以下である。
【0067】
反応後は、未反応の化合物や塩基等を除去するために、適宜後処理を行うことができる。該後処理の方法としては、例えば、未反応の塩基を酸(有機酸、無機酸など)で中和し、その後、未反応の化合物や塩基が溶解する溶媒を用いて洗浄することができる。所望により、更に乾燥(真空乾燥など)を行ってもよい。
【0068】
また、前記反応後に、取扱い性の観点から、例えば、セルロース系原料に対して行う前処理と同様の処理を反応物に対して行なって、チップ状やフレーク状、粉末状にしてもよい。かかる形状変化がもたらされることで、得られる本発明の改質セルロース繊維を樹脂組成物に添加した場合は、樹脂組成物の弾性率等の物性を向上させることができる。
【0069】
(微細化処理)
本発明においては、前記のようにして置換基を導入したセルロース繊維に対して微細化処理を行う。微細化処理の方法としては、公知の方法であれば特に限定はなく、例えば、高圧式分散機を用いた方法が例示される。
【0070】
高圧式分散機としては、例えば、高圧ホモジナイザー(インベンシスシステム社)、ナノマイザー(吉田機械興業社)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.)、アルティマイザーシステム(スギノマシン社)、音レス高圧乳化分散装置(美粒社)が使用できる。
【0071】
高圧式分散機を使用する際の操作圧力としては、微細化の観点から、10MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましく、30MPa以上が更に好ましく、コスト及び取扱い性の観点から、400MPa以下が好ましく、350MPa以下がより好ましく、300MPa以下が更に好ましい。高圧式分散機処理は1〜100回繰り返して処理することができる。ここでいう処理(2回以上の処理)は、高圧式分散機で1回処理したものを再度処理することを意味し、本発明では、1回処理することを1パス、1回処理した後、2回目の処理することを2パス、同様にして3回処理することを3パスと称する。パス回数は微細化の観点から1パス以上が好ましく、生産性の観点から20パス以下が好ましく、10パス以下がより好ましい。また、処理の方法としては、原料槽から送液された高圧式分散機から吐出された分散液を直接原料槽に返すことにより、循環処理を行う方法もある。
【0072】
また、その他の手法として、高速で回転する回転体近傍に生じるせん断力、衝撃力、キャビテーションを利用する、回転式分散機を使用することもできる。回転式分散機は、回転体と固定部の間の空隙に処理対象となるセルロース繊維を通過させて分散させるタイプのもの、一定方向に回転する内側回転体と内側回転体の外側を逆に回転する外側回転体とを有し、内側回転体と外側回転体の間の空隙に処理対象となるセルロース繊維を通過させて分散させるタイプのものが好ましい。回転式分散機としては例えば、エム・テクニック社製のクレアミックス、大平洋機工社製のマイルダー、プライミクス社製のTKロボミックス、大平洋機工社製の櫛歯型高速回転式分散機(キャビトロン)、大平洋機工社製の高速回転式分散機(シャープフローミル)、プライミクス社製の薄膜旋回型高速回転式分散機(フィルミックス)、増幸産業社製のマスコロイダー等を挙げることができ、その他回転式分散機と同等の効果が得られるものとして三井鉱山社製の媒体攪拌型分散機(SCミル)を用いることができる。上記空隙の大きさは微細化の観点から5mm以下が好ましく、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下である。パス回数は微細化の観点から1パス以上が好ましく、生産性の観点から20パス以下が好ましく、10パス以下がより好ましい。
【0073】
本発明の改質セルロース繊維は、SP値が13(cal/cm
3)
1/2以下の有機溶媒中で前記微細化処理を行うことにより微細化することができる。なお、本明細書において、SP値が13(cal/cm
3)
1/2以下の有機溶媒とは、Eng.Sci.,14〔2〕,147−154(1974)に記載のFedorsの式により算出したSP値が13(cal/cm
3)
1/2以下となる有機溶媒のことであり、具体的には、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエンが例示される。
【0074】
かくして、本発明の改質セルロース繊維が得られる。よって、本発明の改質セルロース繊維の好適な製造方法としては、例えば、セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入後、微細化処理を行なうことを特徴とする態様を挙げることができる。
【0075】
得られた改質セルロース繊維は、平均繊維径が1nm以上500nm以下であって、セルロース繊維表面に一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基がエーテル結合した状態である。具体的には、例えば、下記一般式(3)で表される改質セルロース繊維が例示される。
【0077】
〔式中、Rは同一又は異なって、水素、もしくは前記一般式(1)で表される置換基及び前記一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基を示し、mは20以上3000以下の整数を示し、但し、すべてのRが同時に水素である場合を除く〕
【0078】
一般式(3)で表される改質セルロース繊維は、Rが同一又は異なって、水素、もしくは、一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基を示すものであり、前記置換基が導入されたセルロースユニットの繰り返し構造を有するものである。繰り返し構造の繰り返し数として、一般式(3)におけるmは20以上3000以下の整数であればよく、得られる樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、及び寸法安定性の観点から100以上2000以下が好ましい。
【0079】
本発明の改質セルロース繊維は、有機溶媒への分散性に優れることから、公知の樹脂と混合して樹脂組成物とすることができる。得られる樹脂組成物は、混合する樹脂の特性に応じて加工することができるが、本発明の改質セルロース繊維が配合されることで、立体斥力による反発により樹脂中への分散性が高められると共に、改質セルロース繊維が結晶構造を維持したままであるため、機械的強度に優れ、更に耐熱性や寸法安定性を向上させることが可能になると考えられる。
【0080】
樹脂組成物中の改質セルロース繊維の含有量は、一概には設定されず、本発明の改質セルロース繊維の樹脂中への分散性に優れることから、所望する特性に応じて適宜設定することができる。また、樹脂組成物へ配合可能な他の剤に関しても、本発明の改質セルロース繊維が一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基が導入されていることから反応性が低いため、公知のものであれば特に制限はない。
【0081】
得られる樹脂組成物は、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品、3次元造形用樹脂等各種用途に好適に用いることができる。
【0082】
上述した実施形態に関し、本発明は、さらに、以下の改質セルロース繊維及び該改質セルロース繊維の製造方法を開示する。
<1> 平均繊維径が1nm以上500nm以下である改質セルロース繊維であって、下記一般式(1)で表される置換基及び下記一般式(2)で表される置換基から選ばれる1種又は2種以上の置換基がエーテル結合を介してセルロース繊維に結合しており、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエンから選ばれるいずれかの有機溶媒中で高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL−ES)により100MPaの圧力による微細分散処理を10回行うことで得られる0.2質量%濃度の分散体の計測粘度〔E型粘度計(コーンローター:1°34′×R24)、25℃、1rpm〕が15mPa・s以上であり、セルロースI型結晶構造を有する、改質セルロース繊維。
−CH
2−CH(OH)−R
1 (1)
−CH
2−CH(OH)−CH
2−(OA)
n−O−R
1 (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるR
1はそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
【0083】
<2> 平均繊維径が、好ましくは3nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは20nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下、より更に好ましくは120nm以下である、前記<1>記載の改質セルロース繊維。
<3> 一般式(1)におけるR
1の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下である、前記<1>又は<2>記載の改質セルロース繊維。
<4> 一般式(2)におけるR
1の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である、前記<1>〜<3>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<5> 一般式(2)におけるAの炭素数は、好ましくは2以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である、前記<1>〜<4>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<6> 一般式(2)におけるAは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、及びヘキシレン基からなる群より選ばれる基が好ましく、エチレン基、プロピレン基がより好ましく、エチレン基が更に好ましい、前記<1>〜<5>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<7> 一般式(2)におけるnは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である、前記<1>〜<6>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<8> 一般式(2)におけるAとnの組み合わせとしては、好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが0以上20以下の数の組み合わせであり、より好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが5以上15以下の数の組み合わせである、前記<1>〜<7>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<9> 一般式(1)で表される置換基としては、プロピルヒドロキシエチル基、ブチルヒドロキシエチル基、ペンチルヒドロキシエチル基、ヘキシルヒドロキシエチル基、ヘプチルヒドロキシエチル基、オクチルヒドロキシエチル基、ノニルヒドロキシエチル基、デシルヒドロキシエチル基、ウンデシルヒドロキシエチル基、ドデシルヒドロキシエチル基、ヘキサデシルヒドロキシエチル基、オクタデシルヒドロキシエチル基、イコシルヒドロキシエチル基、及びトリアコンチルヒドロキシエチル基から選ばれる基が好ましい、前記<1>〜<8>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<10> 一般式(2)で表される置換基としては、3−ブトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、6−エチル―3−ヘキトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−デトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ドデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−ヘキサデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシエチレンオキシド−2−ヒドロキシ−プロピル基、3−オクタデトキシ−2−ヒドロキシ−プロピル基から選ばれる基が好ましい、前記<1>〜<9>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<11> セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する前記一般式(1)で表される置換基及び/又は一般式(2)で表される置換基の導入率は、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.005モル以上、更に好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.05モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは0.2モル以上、更に好ましくは0.3モル以上、更に好ましくは0.4モル以上であり、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.3モル以下、更に好ましくは1.0モル以下、更に好ましくは0.8モル以下、更に好ましくは0.6モル以下、更に好ましくは0.5モル以下である、前記<1>〜<10>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<12> 結晶化度が、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である、前記<1>〜<11>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<13> ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエンから選ばれるいずれかの有機溶媒中で高圧ホモジナイザー(高圧湿式メディアレス微粒化装置など、例えば吉田機械社製、ナノヴェイタL−ES)により100MPaの圧力による微細分散処理を10回行って得られる0.2質量%濃度の分散体の計測粘度〔E型粘度計(コーンローター:1°34′×R24)、25℃、1rpm〕が、好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは30mPa・s以上、更に好ましくは50mPa・s以上、より更に好ましくは100mPa・s以上、より更に好ましくは150mPa・s以上であり、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは8,000mPa・s以下、更に好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは3,000mPa・s以下、更に好ましくは1,000mPa・s以下である、前記<1>〜<12>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<14> ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエンの全ての有機溶媒中での粘度が15mPa・s以上である、前記<1>〜<13>いずれか記載の改質セルロース繊維。
<15> セルロース系原料に、塩基の存在下で、一般式(1)で表される置換基を有する化合物及び一般式(2)で表される置換基を有する化合物から選ばれる化合物を反応させた後に、微細化処理を行なって得られることを特徴とする、前記<1>〜<14>いずれか記載の改質セルロース繊維の製造方法。
<16> セルロース系原料の平均繊維径は、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、好ましくは10,000μm以下、より好ましくは5,000μm以下、更に好ましくは1,000μm以下、更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは100μm以下である、前記<15>記載の製造方法。
<17> セルロース系原料中のセルロース含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である、前記<15>又は<16>記載の製造方法。
<18> セルロース系原料中の水分含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である、前記<15>〜<17>いずれか記載の製造方法。
<19> セルロース系原料に塩基を混合する、前記<15>〜<18>いずれか記載の製造方法。
<20> 塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい、前記<15>〜<19>いずれか記載の製造方法。
<21> アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウムからなる群より選ばれる、前記<20>記載の製造方法。
<22> 1〜3級アミンとしては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、及びトリエチルアミンからなる群より選ばれる、前記<20>記載の製造方法。
<23> 4級アンモニウム塩としては、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、及び臭化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれる、前記<20>記載の製造方法。
<24> イミダゾール及びその誘導体としては、1−メチルイミダゾール、3−アミノプロピルイミダゾール、及びカルボニルジイミダゾールからなる群より選ばれる、前記<20>記載の製造方法。
<25> ピリジン及びその誘導体としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン及びピコリンからなる群より選ばれる、前記<20>記載の製造方法。
<26> アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及びカリウム−t−ブトキシドからなる群より選ばれる、前記<20>記載の製造方法。
<27> 塩基の量は、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01等量以上、より好ましくは0.05等量以上、更に好ましくは0.1等量以上、更に好ましくは0.2等量以上であり、好ましくは10等量以下、より好ましくは8等量以下、更に好ましくは5等量以下、更に好ましくは3等量以下である、前記<15>〜<26>いずれか記載の製造方法。
<28> 一般式(1)で表される置換基を有する化合物としては、下記一般式(1A)で示されるノニオン性の酸化アルキレン化合物が好ましく、該化合物の総炭素数としては、5以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、32以下であり、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である、前記<15>〜<27>いずれか記載の製造方法。
【0085】
〔式中、R
1は炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す〕
<29> 一般式(1A)におけるR
1の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である、前記<28>記載の製造方法。
<30> 一般式(1A)で示される化合物としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシデカン、及び1,2−エポキシオクタデカンからなる群より選ばれる、前記<28>又は<29>記載の製造方法。
<31> 一般式(2)で表される置換基を有する化合物としては、下記一般式(2A)で示されるノニオン性のグリシジルエーテル化合物が好ましく、該化合物の総炭素数としては、5以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、100以下であり、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下である、前記<15>〜<27>いずれか記載の製造方法。
【0087】
〔式中、R
1は炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基、nは0以上50以下の数を示す〕
<32> 一般式(2A)におけるR
1の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である、前記<31>記載の製造方法。
<33> 一般式(2A)におけるAの炭素数は、好ましくは2以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である、前記<31>又は<32>記載の製造方法。
<34> 一般式(2A)におけるnは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である、前記<31>〜<33>いずれか記載の製造方法。
<35> 一般式(2A)で示される化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれる、前記<31>〜<34>いずれか記載の製造方法。
<36> 一般式(1)で表される置換基を有する化合物及び/又は一般式(2)で表される置換基を有する化合物の使用量は、セルロース系原料の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01等量以上、より好ましくは0.1等量以上、更に好ましくは0.3等量以上、更に好ましくは0.5等量以上、更に好ましくは1.0等量以上であり、好ましくは10等量以下、より好ましくは8等量以下、更に好ましくは6.5等量以下、更に好ましくは5等量以下である、前記<15>〜<35>いずれか記載の製造方法。
<37> 溶媒として、水、イソプロパノール、t−ブタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサン、1,4−ジオキサン、及びこれらの混合物を用いることができる、前記<15>〜<36>いずれか記載の製造方法。
<38> 溶媒の使用量としては、セルロース系原料100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは75質量部以上、更に好ましくは100質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、好ましくは10,000質量部以下、より好ましくは5,000質量部以下、更に好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは1,000質量部以下、更に好ましくは500質量部以下である、前記<37>記載の製造方法。
<39> 反応温度としては、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である、前記<15>〜<38>いずれか記載の製造方法。
<40> 反応時間としては、好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、好ましくは60時間以下、より好ましくは48時間以下、更に好ましくは36時間以下である、前記<15>〜<39>いずれか記載の製造方法。
<41> 微細化処理が高圧式分散機を用いた方法である、前記<15>〜<40>いずれか記載の製造方法。
<42> 高圧式分散機としては、高圧ホモジナイザー(インベンシスシステム社)、ナノマイザー(吉田機械興業社)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.)、アルティマイザーシステム(スギノマシン社)、音レス高圧乳化分散装置(美粒社)が使用できる、前記<41>記載の製造方法。
<43> 高圧式分散機を使用する際の操作圧力としては、10MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましく、30MPa以上が更に好ましく、400MPa以下が好ましく、350MPa以下がより好ましく、300MPa以下が更に好ましく、パス回数は1パス以上が好ましく、20パス以下が好ましく、10パス以下がより好ましい、前記<41>又は<42>記載の製造方法。
<44> 微細化処理が回転式分散機を用いた方法である、前記<15>〜<40>いずれか記載の製造方法。
<45> 回転式分散機としては、エム・テクニック社製のクレアミックス、大平洋機工社製のマイルダー、プライミクス社製のTKロボミックス、大平洋機工社製の櫛歯型高速回転式分散機(キャビトロン)、大平洋機工社製の高速回転式分散機(シャープフローミル)、プライミクス社製の薄膜旋回型高速回転式分散機(フィルミックス)、増幸産業社製のマスコロイダーが使用でき、その他回転式分散機と同等の効果が得られるものとして三井鉱山社製の媒体攪拌型分散機(SCミル)が使用できる、前記<44>記載の製造方法。
<46> 回転式分散機における空隙の大きさは5mm以下が好ましく、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは2mm以下であり、パス回数は1パス以上が好ましく、20パス以下が好ましく、10パス以下がより好ましい、前記<44>又は<45>記載の製造方法。
<47> セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入後、微細化処理を行なうことを特徴とする、前記<15>〜<46>いずれか記載の製造方法。
<48> セルロース系原料に対し、塩基存在下、1分子あたりの総炭素数が5以上32以下のノニオン性酸化アルキレン化合物及び1分子あたりの総炭素数が5以上100以下のノニオン性グリシジルエーテル化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物を、エーテル結合を介して導入後、微細化処理を行なうことを特徴とする、平均繊維径が1nm以上500nm以下である改質セルロース繊維であって、下記一般式(1)で表される置換基及び下記一般式(2)で表される置換基から選ばれる1種又は2種以上の置換基がエーテル結合を介してセルロース繊維に結合しており、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、トルエンから選ばれるいずれかの有機溶媒中で高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、ナノヴェイタL−ES)により100MPaの圧力による微細分散処理を10回行うことで得られる0.2質量%濃度の分散体の計測粘度〔E型粘度計(コーンローター:1°34′×R24)、25℃、1rpm〕が15mPa・s以上であり、セルロースI型結晶構造を有する、改質セルロース繊維の製造方法。
−CH
2−CH(OH)−R
1 (1)
−CH
2−CH(OH)−CH
2−(OA)
n−O−R
1 (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるR
1はそれぞれ独立して炭素数3以上30以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す〕
<49> 下記一般式(3)で表される、前記<1>〜<14>いずれか記載の改質セルロース繊維。
【0089】
〔式中、Rは同一又は異なって、水素、もしくは前記一般式(1)で表される置換基及び前記一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基を示し、mは20以上3000以下の整数を示し、但し、すべてのRが同時に水素である場合を除く〕
<50> 一般式(3)で表される改質セルロース繊維は、Rが同一又は異なって、水素、もしくは、一般式(1)で表される置換基及び一般式(2)で表される置換基から選ばれる置換基を示すものであり、前記置換基が導入されたセルロースユニットの繰り返し構造を有し、一般式(3)におけるmは100以上2000以下が好ましい、前記<49>記載の改質セルロース繊維。
<51> 前記<1>〜<14>、<49>〜<50>いずれか記載の改質セルロース繊維と公知の樹脂とを含有してなる、樹脂組成物。
<52> 日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品、3次元造形用樹脂等各種用途に好適に用いることができる、前記<51>記載の樹脂組成物。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温(室温)」とは25℃を示す。
【0091】
置換基を有する化合物の製造例1 ステアリルグリシジルエーテルの製造
100L反応槽に、ステアリルアルコール(花王社製、カルコール8098)10kg、テトラブチルアンモニウムブロマイド(広栄化学工業社製)0.36kg、エピクロルヒドリン(ダウケミカル社製)7.5kg、ヘキサン10kgを投入し、窒素雰囲気下で混合した。混合液を50℃に保持しながら48質量%水酸化ナトリウム水溶液(南海化学社製)12kgを30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに50℃で4時間熟成した後、水13kgで8回水洗を繰り返し、塩及びアルカリの除去を行った。その後、槽内温度を90℃に昇温して上層からヘキサンを留去し、減圧下(6.6kPa)、さらに水蒸気を吹き込んで低沸点化合物を除去した。脱水後、槽内温度250℃、槽内圧力1.3kPaで減圧蒸留することによって、白色のステアリルグリシジルエーテル8.6kgを得た。
【0092】
置換基を有する化合物の製造例2 ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤の製造
1000Lの反応槽に、ポリオキシエチレン(13)−n−アルキル(C12)エーテル(花王社製、エマルゲン120、アルキル鎖長;n−C12、オキシエチレン基のモル平均重合度;13)250kgを融解して仕込み、さらにテトラブチルアンモニウムブロミド(広栄化学工業社製)3.8kg、エピクロルヒドリン(ダウケミカル社製)81kg、トルエン83kgを投入して、攪拌・混合した。槽内温度を50℃に維持しつつ、攪拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液(南海化学社製)130kgを1時間で滴下した。滴下終了後、槽内温度を50℃に維持したまま6時間、攪拌・熟成した。熟成終了後、反応混合物を水250kgで6回水洗して塩及びアルカリを除去し、その後、有機相を減圧(6.6kPa)下、90℃まで昇温し、残留するエピクロルヒドリン、溶媒及び水を留去した。減圧下、さらに水蒸気250kgを吹き込んで低沸点化合物を除去し、下式(4)の構造を有するn−アルキル(C12)ポリオキシエチレン(13)グリシジルエーテル240kgを得た。
【0093】
【化7】
【0094】
セルロース系原料の製造例1 アルカリ処理バガスの製造
バガス(サトウキビの搾りかす)100質量部(乾燥重量)に対し、処理液全体として水937質量部、水酸化ナトリウム15.2質量部となるよう顆粒状の水酸化ナトリウム及びイオン交換水を加え、オートクレーブ(トミー精工社製、LSX−700)にて、温度120℃で2時間加熱処理を行った。処理後、ろ過・イオン交換水洗浄し、一昼夜70℃で真空乾燥することによりアルカリ処理バガス(繊維状、平均繊維径24μm、セルロース含有量70質量%、水分含有量3質量%)を得た。
【0095】
セルロース系原料の製造例2 粉末セルロースAの製造
針葉樹の漂白クラフトパルプ(以後NBKPと略称、フレッチャー チャレンジ カナダ社製、「Machenzie」、CSF650ml、繊維状、平均繊維径24μm、セルロース含有量90質量%、水分含有量5質量%)を乾燥質量として100g計り取り、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッドを13本使用、ロッド充填率57%)に投入し、20分間粉砕処理することで粉末セルロースA(平均繊維径25μm、結晶化度35%、水分含有量3質量%)を得た。
【0096】
実施例1<1,2−エポキシヘキサンを用いた改質>
針葉樹の漂白クラフトパルプ(NBKP)をセルロース系原料として用いた。まず、絶乾したNBKP1.5gに6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液1.5g(和光純薬社製水酸化ナトリウム顆粒及びイオン交換水により調製、NaOH0.26等量/無水グルコースユニット1等量(AGU:セルロース原料がすべて無水グルコースユニットで構成されていると仮定し算出、以下同様))及びイソプロパノール1.5g(和光純薬社製)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシヘキサン1.4g(和光純薬社製、1.5等量/AGU)を添加し、密閉した後に70℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸(和光純薬社製)で中和し、水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0097】
得られた改質セルロース繊維0.1gをジメチルホルムアミド49.9g(和光純薬社製、DMF)中に投入し、ホモジナイザー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス)にて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、「ナノヴェイタL−ES」)にて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0098】
実施例2<1,2−エポキシヘキサンを用いた改質>
絶乾したNBKP1.5gにDMF6.0g及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン1.8g(和光純薬社製、DMAP、1.6等量/AGU)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシヘキサン4.6g(5等量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0099】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0100】
実施例3<1,2−エポキシデカンを用いた改質>
絶乾したNBKP1.5gにDMF6.0g及びDMAP1.8g(1.6等量/AGU)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシデカン7.2g(和光純薬社製、5等量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0101】
得られた改質セルロース繊維0.1gをメチルエチルケトン49.9g(和光純薬社製、MEK)中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0102】
実施例4<1,2−エポキシデカンを用いた改質>
実施例3で得られた改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g(和光純薬社製)中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0103】
実施例7<1,2−エポキシオクタデカンを用いた改質>
絶乾したNBKP1.5gにDMF6.0g及びDMAP1.8g(1.6等量/AGU)を添加し、均一に混合した後、1,2−エポキシオクタデカン12.4g(東京化成社製、5等量/AGU)を添加し、密閉した後に90℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0104】
得られた改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0105】
実施例31<1,2−エポキシオクタデカンを用いた改質>
1,2−エポキシオクタデカンの添加量を24.8g(10等量/AGU)に変更した以外は実施例7と同様の処理を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0106】
得られた改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0107】
実施例32<ブチルグリシジルエーテルを用いた改質>
反応試薬をブチルグリシジルエーテル(東京化成工業社製)に変更し、試薬添加量を6.0g(5等量/AGU)にした以外は、実施例2と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0108】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0109】
実施例33<2−エチルヘキシルグリシジルエーテルを用いた改質>
反応試薬を2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(東京化成工業社製)に変更し、試薬添加量を8.6g(5等量/AGU)にした以外は、実施例2と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0110】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0111】
実施例34<ドデシルグリシジルエーテルを用いた改質>
反応試薬をドデシルグリシジルエーテル(東京化成工業社製)に変更し、試薬添加量を11.2g(5等量/AGU)にした以外は、実施例2と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0112】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0113】
実施例35<ドデシルグリシジルエーテルを用いた改質>
実施例34で得られた改質セルロース繊維0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0114】
実施例8<ステアリルグリシジルエーテルを用いた改質>
絶乾したNBKP1.5gにアセトニトリル6.0g(和光純薬社製)及び水酸化テトラブチルアンモニウム2.7g(和光純薬社製、10%水溶液、TBAH、0.8等量/AGU)を添加し、均一に混合した後、置換基を有する化合物の製造例1で調製したステアリルグリシジルエーテル15.5g(3等量/AGU)を添加し、密閉した後に70℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0115】
得られた改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0116】
実施例36<ステアリルグリシジルエーテルを用いた改質>
ステアリルグリシジルエーテルの添加量を31.0g(6等量/AGU)にした以外は、実施例8と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0117】
得られた改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0118】
実施例9
絶乾したNBKP1.5gにアセトニトリル6.0g及びTBAH2.7g(0.8等量/AGU)を添加し、均一に混合した後、置換基を有する化合物の製造例2で調製したポリオキシアルキレンアルキルエーテル化剤22.6g(3等量/AGU)を添加し、密閉した後に70℃、24h静置反応を行った。反応後、酢酸で中和し、DMF及び水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0119】
得られた改質セルロース繊維0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0120】
比較例1<未反応パルプ>
絶乾したNBKP0.1gを直接DMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化されたセルロース繊維がDMFに分散された微細セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0121】
比較例2<未反応パルプ>
絶乾したNBKP0.1gを直接MEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0122】
比較例3<未反応パルプ>
絶乾したNBKP0.1gを直接トルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0123】
比較例4<酸化プロピレンを用いた改質>
反応試薬を酸化プロピレンに変更し、試薬添加量を0.16g(0.3等量/AGU)にした以外は、実施例1と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0124】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0125】
比較例5<酸化プロピレンを用いた改質>
比較例4で得た改質セルロース繊維0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0126】
比較例6<酸化プロピレンを用いた改質>
比較例4で得た改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0127】
比較例7<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
セルロース系原料を、予めDMFに溶媒置換したミクロフィブリル化セルロース1.5g(固形分含有量として)(ダイセルファインケム社製、商品名「セリッシュ FD100−G」、固形分濃度10質量%、平均繊維径100nm以下、セルロース含有量90質量%、水分含有量3質量%)に変更し、追加で溶媒を添加しなかった以外は、実施例2と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0128】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで改質された微細セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0129】
比較例8<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
比較例7で得た改質セルロース繊維0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0130】
比較例9<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
比較例7で得た改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0131】
比較例10<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
セルロース系原料を、予めDMFに溶媒置換したミクロフィブリル化セルロース1.5g(固形分含有量として)(ダイセルファインケム社製、商品名「セリッシュ FD100−G」)に変更し、追加で溶媒を添加しなかった以外は、実施例3と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0132】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで改質された微細セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0133】
比較例11<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
比較例10で得た改質セルロース繊維0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0134】
比較例12<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
比較例10で得た改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで改質された微細セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0135】
比較例31<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
セルロース系原料を、予めDMFに溶媒置換したミクロフィブリル化セルロース1.5g(固形分含有量として)(ダイセルファインケム社製、商品名「セリッシュ FD100−G」)に変更し、追加で溶媒を添加しなかった以外は、比較例4と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0136】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで改質された微細セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0137】
比較例32<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
セルロース系原料を、予めDMFに溶媒置換したミクロフィブリル化セルロース1.5g(固形分含有量として)(ダイセルファインケム社製、商品名「セリッシュ FD100−G」)に変更し、反応試薬を酸化ブチレン(和光純薬製)に変更し、試薬添加量を0.40g(0.6等量/AGU)に、追加で溶媒を添加しなかった以外は、実施例1と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0138】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで改質された微細セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0139】
比較例33<ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を原料として使用>
セルロース系原料を、予めDMFに溶媒置換したミクロフィブリル化セルロース1.5g(固形分含有量として)(ダイセルファインケム社製、商品名「セリッシュ FD100−G」)に変更し、反応試薬をメチルグリシジルエーテル(和光純薬製)に変更し、試薬添加量を0.40g(0.6等量/AGU)に、追加で溶媒を添加しなかった以外は、実施例1と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0140】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで改質された微細セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0141】
実施例10<バガスを原料として使用>
セルロース系原料の製造例1で調製したアルカリ処理バガスをセルロース繊維として用いた。還流管と滴下ロートを取り付けたニーダー(入江商会社製、PNV−1型、容積1.0L)に絶乾したアルカリ処理バガス100gを投入し、6.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液100g(0.26等量/AGU)及びイソプロパノール100gを順次添加した後、室温、50rpmで30分間攪拌して均一に混合した。さらに1,2−エポキシヘキサン92.7g(1.5等量/AGU)を1分で滴下し、攪拌を行いながら70℃還流条件にて24h反応を行った。反応後、酢酸(和光純薬社製)で中和し、水/イソプロパノール混合溶媒で十分に洗浄することで不純物を取り除き、さらに50℃で一晩真空乾燥を行うことで、改質セルロース繊維を得た。
【0142】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0143】
実施例37<LBKPを原料として使用>
使用する原料をユーカリ由来の広葉樹漂白クラフトパルプ(以後LBKPと略称、CENIBRA社製、繊維状、平均繊維径24μm、セルロース含有量90質量%、水分含有量5質量%)に変更した以外は、実施例10と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0144】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0145】
実施例38<HYPを原料として使用>
使用する原料をスプルース由来のHighYieldPulp(以後HYPと略称、Rottneros社製、繊維状、平均繊維径28μm、セルロース含有量55質量%、水分含有量15質量%)に変更した以外は、実施例10と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0146】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0147】
実施例39<粉末セルロースAを原料として使用>
使用する原料をセルロース系原料の製造例2で得られた粉末セルロースAに変更した以外は、実施例10と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0148】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0149】
実施例11<バガスを原料として使用>
出発原料をセルロース系原料の製造例1で調製したアルカリ処理バガスに変更した以外は、実施例3と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0150】
得られた改質セルロース繊維0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0151】
比較例13<未反応バガス>
セルロース系原料の製造例1で調製したアルカリ処理バガス0.1gを直接DMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化されたセルロース繊維がDMFに分散した微細セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0152】
比較例14<未反応バガス>
セルロース系原料の製造例1で調製したアルカリ処理バガス0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化されたセルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0153】
比較例15<未反応バガス>
セルロース系原料の製造例1で調製したアルカリ処理バガス0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化されたセルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0154】
比較例16<酸化プロピレンを用いた改質>
反応試薬を酸化プロピレンに変更し、試薬添加量を0.16g(0.3等量/AGU)にした以外は、実施例10と同様の手法を用いることで改質セルロース繊維を得た。
【0155】
得られた改質セルロース繊維0.1gをDMF49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0156】
比較例17<酸化プロピレンを用いた改質>
比較例16で得た改質セルロース繊維0.1gをMEK49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がMEKに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0157】
比較例18<酸化プロピレンを用いた改質>
比較例16で得た改質セルロース繊維0.1gをトルエン49.9g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで微細化された改質セルロース繊維がトルエンに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.2質量%)を得た。
【0158】
参考例1
上記実施例及び比較例で使用したDMF、MEK、トルエンに対し粘度測定を行ったところ、本測定条件における計測粘度は測定下限以下(N.D.)であった。
【0159】
実施例13<微細改質セルロース繊維とエポキシ樹脂のコンポジット>
実施例10で得られた改質セルロース繊維0.25gをDMF49.75g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで、微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を調製した。
【0160】
得られた分散体50gと、エポキシ樹脂であるjER828(三菱化学社製)2.5gを混合し、高圧ホモジナイザーを用いて、60MPaで1パス、100MPaで1パスを行って微細化処理を行なった。得られた溶液に対して、硬化剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(和光純薬工業社製)を0.4g加え、自転公転式攪拌機 あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて7分間攪拌した。得られたワニスをバーコーターを用いて塗布厚2mmで塗工した。100℃で1時間乾燥し、溶媒を除去した後、150℃2時間で熱硬化させて、微細改質セルロース繊維を10質量%(対エポキシ樹脂)含む、厚さ約0.2mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0161】
実施例40<改質セルロース繊維とエポキシ樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例1で調製した改質セルロース繊維に変えた以外は、実施例13と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対エポキシ樹脂)含む、厚さ約0.2mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0162】
比較例19<エポキシ樹脂ブランク>
改質セルロース繊維分散体の代わりにDMF10mLを使用し、塗布厚を0.5mmに変更した以外は、実施例13と同等の処理を行うことで厚さ約0.2mmのシート状のエポキシ樹脂成形体を製造した。
【0163】
実施例14<微細改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
実施例2で得られた改質セルロース繊維0.25gをDMF49.75g中に投入し、実施例1と同様の分散処理を行うことで、微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度0.5質量%)を調製した。該分散体40gと、ウレタンアクリレート樹脂であるUV−3310B(日本合成化学社製)2.0gを混合し、高圧ホモジナイザーを用いて、60MPaで1パス、100MPaで1パスを行って微細化処理を行なった。光重合開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(和光純薬工業社製)を0.08g加え、自転公転式攪拌機 あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて7分間攪拌した。得られたワニスをバーコーターを用いて塗布厚2mmで塗工した。80℃で120分乾燥し、溶媒を除去した。UV照射装置(フュージョンシステムズジャパン製、Light Hammer10)を用い200mJ/cm
2照射して光硬化させて、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0164】
実施例15<微細改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例3で調製した改質セルロース繊維に変え、使用する溶媒をMEKに変更した以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0165】
実施例41<改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例31で調製した改質セルロース繊維に変え、使用する溶媒をトルエンに変更した以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0166】
実施例42<改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例32で調製した改質セルロース繊維に変えた以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0167】
実施例43<改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例33で調製した改質セルロース繊維に変えた以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0168】
実施例44<改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例36で調製した改質セルロース繊維に変え、使用する溶媒をトルエンに変更した以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0169】
実施例16<微細改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例9で調製した改質セルロース繊維に変え、使用する溶媒をMEKに変更した以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0170】
実施例45<改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例37で調製した改質セルロース繊維に変えた以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0171】
実施例46<改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例38で調製した改質セルロース繊維に変えた以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0172】
実施例47<改質セルロース繊維とアクリル樹脂のコンポジット>
使用した改質セルロース繊維を実施例39で調製した改質セルロース繊維に変えた以外は、実施例14と同等の処理を行うことで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対アクリル樹脂)含む、厚さ約0.1mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0173】
比較例20<アクリル樹脂ブランク>
改質セルロース繊維分散体の代わりにMEK10mLを使用し、塗布厚を0.5mmに変更した以外は、実施例14と同等の処理を行うことで厚さ約0.1mmのシート状のアクリル樹脂成形体を製造した。
【0174】
実施例17<改質セルロース繊維とポリスチレン樹脂のコンポジット>
実施例2で得られた改質セルロース繊維0.50gをDMF49.50g中に投入し、ホモジナイザーにて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザーにて100MPaで10パス処理することで微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した微細改質セルロース分散体(固形分濃度1.0質量%)を得た。
【0175】
上記で得られた微細改質セルロース分散体15g、ポリスチレン樹脂(シグマアルドリッチ社製、数平均分子量170,000、製造番号441147-1KG)1.5g、DMF30gを混合し、マグネチックスターラーを用い、室温、1500rpmで12時間攪拌した後、高圧ホモジナイザーを用いて、60MPaで1パス、100MPaで1パス行って、微細化処理を行なった。その後、自転公転式攪拌機 あわとり練太郎(シンキー社製)を用いて7分間攪拌した。得られたワニスを直径9cmのガラス製シャーレに投入し、100℃で12時間乾燥し、溶媒を除去することで、微細改質セルロース繊維を10質量%(対ポリスチレン樹脂)含む、厚さ約0.2mmのシート状の複合材料成形体を製造した。
【0176】
比較例21<ポリスチレン樹脂ブランク>
改質セルロース繊維分散体の代わりにDMF15gを使用した以外は、実施例17と同等の処理を行うことで厚さ約0.2mmのシート状のポリスチレン樹樹脂成形体を製造した。
【0177】
得られた微細改質セルロース繊維について、平均繊維径、セルロース系原料の平均繊維径、置換基導入率、及び結晶構造の確認(結晶化度)を、下記試験例1〜4の方法に従って評価した。また、分散体の特性については下記試験例5〜6の方法に従って、成形体の特性については下記試験例7〜9の方法に従って、それぞれ評価した。結果を表1〜10に示す。
【0178】
試験例1(微細改質セルロース繊維及び微細セルロース系原料の平均繊維径)
得られた分散体を光学顕微鏡(キーエンス社製、「デジタルマイクロスコープVHX−1000」)を用い、倍率300〜1000倍で観察した繊維30本以上の平均値を計測した(四捨五入して有効数字1ケタで計算)。光学顕微鏡での観察が困難な場合は、セルロース繊維分散体に溶媒をさらに加えて0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定した。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、微細セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径(分散体中の繊維径)を算出した。なお、分散体中に繊維が凝集して分析が不可能な場合を「>10000」と記載した。
【0179】
試験例2(セルロース系原料の平均繊維径)
セルロース系原料の繊維径は、以下の手法により求めた。絶乾したサンプル約0.3gを精秤し、1.0Lのイオン交換水中で家庭用ミキサーを用いて1分間攪拌し、繊維を水中に解した。その後、さらにイオン交換水4.0Lを加え、均一になるよう攪拌した。得られた水分散液から、約50gを測定液として回収し、精秤した。得られた測定液を、メッツォオートメーション社製の「Kajaani Fiber Lab」にて分析することで、平均繊維径を得た。
【0180】
試験例3(置換基導入率(置換度))
得られた改質セルロース繊維中に含有される、疎水エーテル基の含有量%(質量%)は、Analytical Chemistry,Vol.51,No.13,2172(1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出した。以下に手順を示す。
(i)200mLメスフラスコにn−オクタデカン0.1gを加え、ヘキサンにて標線までメスアップを行い、内標溶液を調製した。
(ii)精製、乾燥を行った改質セルロース繊維100mg、アジピン酸100mgを10mLバイアル瓶に精秤し、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓した。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、160℃のブロックヒーターにて1時間加熱した。
(iv)加熱後、バイアルに内標溶液3mL、ジエチルエーテル3mLを順次注入し、室温で1分間攪拌した。
(v)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(ジエチルエーテル層)をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製、「GC2010Plus」)にて分析した。分析条件は以下のとおりであった。
カラム:アジレント・テクノロジー社製DB−5(12m、0.2mm×0.33μm)
カラム温度:100℃→10℃/min→280℃(10min Hold)
インジェクター温度:300℃、検出器温度:300℃、打ち込み量:1μL
使用したエーテル化試薬の検出量から改質セルロース繊維中のエーテル基の含有量(質量%)を算出した。
得られたエーテル基含有量から、下記数式(1)を用いてモル置換度(MS)(無水グルコースユニット1モルに対する置換基モル量)を算出した。
(数式1)
MS=(W1/Mw)/((100−W1)/162.14)
W1:改質セルロース繊維中のエーテル基の含有量(質量%)
Mw:導入したエーテル化試薬の分子量(g/mol)
【0181】
試験例4(結晶構造の確認)
改質セルロース繊維の結晶構造は、リガク社製の「RigakuRINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定することにより確認した。測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kv、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとした。測定用サンプルは面積320mm
2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製した。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
一方、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編)のP199−200の記載に則り、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることが好ましい。
したがって、上記式(A)で得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式(B)に基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
セルロースI型結晶化度(%)=[Ac/(Ac+Aa)]×100 (B)
〔式中、Acは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aaは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める〕
【0182】
試験例5(分散安定性試験)
得られた固形分濃度0.2質量%のセルロース繊維分散液を室温で1週間静置し、沈殿物の有無を目視で確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
評価A:沈殿物なし
評価B:一部沈殿物を確認
評価C:全量が沈殿(完全分離)
分散安定性はA>B>Cの序列で評価され、分散安定性Aで優れた分散安定性を有していることを示す。
【0183】
試験例6(粘度測定)
固形分濃度0.2質量%のセルロース繊維分散液をホモジナイザー(プライミクス社製、T.K.ロボミックス)にて3000rpm、30分間攪拌後、高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、「ナノヴェイタL−ES」)にて100MPaで10パス処理することで調製し、その粘度を、E型粘度測定機(東機産業社製、「VISCOMETER TVE−35H」、コーンローター:1°34′×R24を使用)及び温度調節器(東機産業社製、「VISCOMATE VM−150III」)を用いて、25℃、1rpm、1分の条件で測定した。計測粘度が15mPa・s以上の場合に増粘効果に優れていることを示し、その値がより高い方が増粘特性に優れていることを示す。なお、粘度が測定下限以下で分析が不可能な場合を「N.D.」と記載した。
【0184】
試験例7(引張弾性率)
25℃の恒温室において、引張圧縮試験機(SHIMADZU社製、「Autograph AGS−X」)を用いて、JIS K7113に準拠して、成形体の引張弾性率を引張試験によって測定した。2号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離80mmでセットし、クロスヘッド速度10mm/minで測定した。引張弾性率がより高い方が機械的強度に優れていることを示す。
【0185】
試験例8(貯蔵弾性率)
動的粘弾性装置(SII社製、「DMS6100」)を用いて、得られた成形体から幅5mm、長さ20mmで切り出した短冊型サンプルの貯蔵弾性率を、窒素雰囲気下、周波数1Hzで、−50℃から200℃まで、1分間に2℃の割合で温度を上昇させて、引張モードで計測した。表中に記載の貯蔵弾性率は使用した樹脂のガラス転移温度以上の温度(括弧内に示す)での値であり、貯蔵弾性率(MPa)が高いほど強度に優れることから、高温時の強度が高い程耐熱性に優れることを示す。
【0186】
試験例9(線熱膨張係数(CTE))
熱応力歪測定装置(セイコー電子社製、「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、幅3mm、長さ20mmの短冊型サンプルを窒素雰囲気下1分間に5℃の割合で温度を上昇させて引張モードで荷重を25gで計測した。線熱膨張係数(CTE)は所定の温度範囲での平均線熱膨張係数を算出して得た。表中に記載の括弧内の数値は算出に用いた温度範囲を示し、CTEが低い方が寸法安定性に優れていることを示す。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
【表3】
【0190】
【表4】
【0191】
【表5】
【0192】
【表6】
【0193】
【表7】
【0194】
【表8】
【0195】
【表9】
【0196】
【表10】
【0197】
表1〜6より、本発明の改質セルロース繊維は、低極性有機溶媒中への分散安定性及び増粘作用に優れていることがわかる。一方、比較例7〜12に示すように、予め微細化したセルロース繊維を特定の置換基で改質したとしても、ジメチルホルミアミド、メチルエチルケトン、トルエンのいずれの溶媒においても粘度が低く、分散安定性が低いことが分かる。また、表7〜10より、本発明の改質セルロース繊維を樹脂と複合化することにより、樹脂の種類や複合化の方法を問わず、幅広い適用範囲において高い強度や寸法安定性を発現可能なことがわかる。