(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記要素制御ユニットには、リプログラミング処理が行われている間、当該要素制御ユニットが制御対象に対して最低限の制御を行うことを可能とする、前記ソフトウェアよりも小規模のリプログラミング時のソフトウェアがインストールされて用いられるようになっており、
前記独立ユニットは、前記リプログラミング時のソフトウェアに基づいて作動する当該要素制御ユニットを前記代替ソフトウェアに基づいて制御してアクチュエータの制御を行わせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電子制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る車両用電子制御システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では、各要素制御ユニットが通信ネットワークに接続されている場合について説明するが、本発明は、後述する独立ユニットと各要素制御ユニットとが1つのユニットとして構成されているような場合にも適用される。
【0022】
[第1の実施の形態]
[車両用電子制御システムの構成]
図1は、本発明に係る車両用電子制御システムの構成を表す図である。
図1に示すように、本実施形態では、車両用電子制御システム1は、図示しないエンジンを制御するエンジンECUを含む複数の要素制御ユニット2(すなわち前述したエンジンECUやトランスミッションECU等の各ECUや、スタビリティコントロールシステムや運転支援システム、ボディスタビライザー等の各システムや装置等)が通信ネットワークNを介して通信可能に接続されて構成されている。なお、他のシステムや装置等が通信ネットワークNに接続されていてもよい。
【0023】
各要素制御ユニット2は、種々の構成を取り得るが、基本的にはマイクロコントローラで構成され、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)21やRAM(Random Access Memory)22、ROM(Read Only Memory)23、入出力回路(I/Oポート等ともいう。)24等がバス25に接続されて構成されており、或いは専用装置として構成されているが、いずれもデータ通信機能を有している。
【0024】
また、各要素制御ユニット2には、自らが制御する制御対象(例えばエンジンECUであればエンジン)に関する情報を計測するための各種のセンサαや、要素制御ユニット2の指示に従って制御対象に必要な動作等を行わせるためのアクチュエータβがそれぞれ接続されている。そして、各要素制御ユニット2は、センサαで計測されたデータ(例えばエンジン回転数やアクセル開度、車速、前後加速度、左右加速度、ヨーレート、操舵角、ブレーキ圧等)を通信ネットワークNに出力する。
【0025】
また、各要素制御ユニット2はそれぞれ、データに基づいて制御パラメータを算出するための多次元の制御マップや演算式等(すなわち制御の仕組み)を有している。そして、自らのセンサαでデータを計測したり通信ネットワークNを介してデータを受信すると、制御マップを参照したりデータを演算式に代入する等して制御パラメータを算出し、それに基づいてアクチュエータβを駆動させる等して制御対象に対して必要な制御を行うように構成されている。
【0026】
一方、車両用電子制御システム1には、独立ユニット3が設けられており、本実施形態では、独立ユニット3は、通信ネットワークNに接続されている。また、本実施形態では、独立ユニット3は、
図2に示した各要素制御ユニット2と同様にマイクロコントローラで構成されており、CPUやRAM、ROM、入出力回路等がバスに接続されて構成されている。
【0027】
しかし、
図1に示すように、独立ユニット3にはセンサやアクチュエータが接続されておらず、独立ユニット3は、機能として自らは要素制御を行わないようになっている。すなわち、独立ユニット3は、エンジンやトランスミッション等といった特定の制御対象を持たない。
【0028】
なお、「機能として自らは要素制御を行わない」とは、独立ユニット3が、構造的にはアクチュエータを接続すれば要素制御を行うことができるように構成されていてもよく、或いは構造上、要素制御を行うことができないように構成されていてもよいが、いずれにせよ、その機能として、独立ユニット3自体が何らかの制御対象に対して要素制御を行うことがない状態とされていることを表している。
【0029】
そして、車両用電子制御システム1では、通信ネットワークNを介して独立ユニット3と各要素制御ユニット2との間で通信を行うことができるように構成されている。なお、独立ユニット3−要素制御ユニット2間の通信や要素制御ユニット2同士の通信は、例えばCANやCANFD(CAN with Flexible Data rate)等のプロトコルに基づいて行うように構成することが可能であるが、本発明は特定のプロトコルを用いる場合に限定されず、どのようなプロトコルに基づいて通信が行われる場合にも適用される。
【0030】
また、独立ユニット3は、要素制御ユニット2のセンサαで計測されたデータから把握される車両の走行状態(停止、走行、加速、減速、直進、右折、左折、前進、後退等の各状態やその度合(速度、加速度(減速度)、ヨーレート等))やエンジンの状態(エンジン回転数、冷却水温度等)、トランスミッションの状態(ギヤ比等)に基づいて、すなわち車両の状態に基づいて、必要な前記要素制御ユニット2に命令を出し、当該要素制御ユニット2における制御の仕組みは変更せずに制御パラメータを修正させて当該要素制御ユニットの制御の仕方を変更させるようになっている。
【0031】
具体的には、本実施形態では、独立ユニット3は、要素制御ユニット2が制御に用いる制御パラメータを修正するための修正パラメータを算出し、当該要素制御ユニット2に対して修正パラメータに基づく命令を出すようになっている。すなわち、独立ユニット3は、例えば、各要素制御ユニット2のセンサαで計測され通信ネットワークNを介して受信したデータ(例えば前述したエンジン回転数等)に基づいて所定の要素制御ユニット2に命令する修正パラメータを演算するための、多次元の制御マップや演算式等を有している。
【0032】
そして、独立ユニット3は、各要素制御ユニット2から通信ネットワークNを介してデータを受信すると、多次元の制御マップを参照したりデータを演算式に代入する等して修正パラメータを算出する。そして、算出した修正パラメータに基づいて、例えば、エンジンECUである要素制御ユニット2に「エンジントルク(制御パラメータ)を○○○○kgm(修正パラメータ)にせよ」等の形で命令を出して、当該要素制御ユニット2における制御の仕組み(制御マップや演算式等)は変更せずに制御パラメータを修正させて、当該要素制御ユニット2の制御の仕方を変更させるようになっている。
【0033】
なお、独立ユニット3から要素制御ユニット2に対して、上記のように、所定の制御パラメータを独立ユニット3が決定した修正パラメータに変更するように命令を出すように構成することも可能であり、また、要素制御ユニット2が独自に演算した制御パラメータに対する増加分や減少分の形で修正パラメータを決定するように構成することも可能である。後者の場合、具体的には、命令は、例えば、「エンジントルクを(要素制御ユニット2が)演算した制御パラメータから○○○kgm(修正パラメータ)だけ増加させよ(或いは減少させよ)」等の形になる。
【0034】
また、命令は、その種類によって、独立ユニット3から常時出される場合もあり、また、制動時や自動車専用道を走行中の場合等のように車両が所定の状態にある場合や、前述したSI−DRIVE等のドライブアシストシステムを作動させる場合のように運転者が所定の操作を行った場合等にのみ出される場合もある。
【0035】
[作用]
次に、本実施形態に係る車両用電子制御システム1の作用について説明する。
各要素制御ユニット2は、センサαで計測されたデータのうち、予め設定されたデータを通信ネットワークNに出力する。
【0036】
そして、独立ユニット3は、通信ネットワークNを介してこれらのデータを受信すると、それらに基づいて車両の状態を把握し、命令を出すタイミング(すなわち命令を常時出す場合は常時、命令を制動時等に出す場合は制動時のタイミング等)であれば、制御マップを参照したり、上記のようにそれらのデータを演算式に代入する等して、所定の制御パラメータを修正する修正パラメータを決定する。
【0037】
そして、独立ユニット3は、決定した修正パラメータに基づいて命令を作成し、通信ネットワークNを介して所定の要素制御ユニット2に命令を出す。そして、独立ユニット3が例えばエンジンECUである要素制御ユニット2に「エンジントルクを○○○○kgmにせよ」の形で命令を出した場合、エンジンECUは通信ネットワークNを介してその命令を受信すると、エンジントルクが修正パラメータになるように各アクチュエータβを制御する。
【0038】
本実施形態では、このようにして、独立ユニット3は、各要素制御ユニット2の各センサαで計測されたデータに基づいて把握される車両の状態に基づいて必要な要素制御ユニット2に命令を出して、当該要素制御ユニット2における制御パラメータを修正させて、当該要素制御ユニット2の制御の仕方を変更させることができるようになっている。
【0039】
従来の車両用電子制御システムでは、前述したように、例えば、車両用電子制御システム内のある要素制御ユニットでの制御の仕方に変更が加えられたり機能が追加される等して制御の仕方を変更した場合、他の要素制御ユニットでの制御の仕組み(制御マップや演算式等)を変更して当該他の要素制御ユニットの制御の仕方を変更しなければならない場合があった。そして、要素制御ユニットでの制御の仕組みを変更する作業は非常に煩雑である場合が多かった。
【0040】
しかし、本実施形態に係る車両用電子制御システム1では、上記のように構成されているため、
図3に示すように、上記のようにある要素制御ユニット2Aでの制御の仕方に変更が加えられたり機能が追加される等した場合でも、他の要素制御ユニット2B、2C、…での制御の仕組み自体を変更する必要がなくなる。
【0041】
すなわち、本実施形態に係る車両用電子制御システム1では、制御の仕方に変更が加えられる等した要素制御ユニット2A以外の、従来の場合には要素制御ユニット2Aでの制御の変更のために制御の仕組み(制御マップや演算式等)の変更が必要となる他の要素制御ユニット2B、2C、…での制御の仕組み自体は変更することなく、
図3に示すように、独立ユニット3が当該他の要素制御ユニット2B、2C、…に命令を出して所定の制御パラメータpを修正パラメータPに変更させることで、当該他の要素制御ユニット2B、2C、…における制御の仕方を、制御パラメータpを用いた制御の仕方から修正パラメータPを用いた制御の仕方に適切に変更させることが可能となる。
【0042】
そして、当該他の要素制御ユニット2B、2C、…は、独立ユニット3から送信された修正パラメータPに基づいて制御を行うことで、従来の場合のように制御の仕組み自体を変更しなくても、制御パラメータpを修正パラメータPに変更するだけで、従来のように制御の仕組み自体を変更した場合と同様にアクチュエータβの動作の仕方を的確に変更して制御することが可能となる。
【0043】
また、従来の車両用電子制御システムでは、例えば、前述したSI−DRIVE等のドライブアシストシステムのよう付加価値制御を行うようにしたり、車両用電子制御システムを異なる車種の車両に搭載させたり、或いは、車両の仕様を変更したりする場合、各要素制御ユニット2でそれぞれ制御の仕方を変更しなければならなくなる場合があった。
【0044】
しかし、本実施形態に係る車両用電子制御システム1では、上記のように構成されているため、上記のように付加価値制御を行ったり車両用電子制御システム1が搭載される車両の車種や仕様が変更される場合でも、各要素制御ユニット2での制御の仕組み(制御マップや演算式等)自体を変更する必要がなくなる。
【0045】
すなわち、本実施形態に係る車両用電子制御システム1では、図示を省略するが、独立ユニット3が、従来の場合には付加価値制御や車種、仕様の変更のために制御の仕方の変更が必要となる各要素制御ユニット2に対して命令を出して所定の制御パラメータpを修正パラメータPに変更させることで、各要素制御ユニット2での制御の仕組み自体は変更することなく、各要素制御ユニット2における制御の仕方を、制御パラメータpを用いた制御の仕方から修正パラメータPを用いた制御の仕方に適切に変更させることが可能となる。そして、各要素制御ユニット2は、独立ユニット3から送信された修正パラメータPに基づいて制御を行うことで、従来の場合のように制御の仕組み自体を変更した場合と同様にアクチュエータβの動作の仕方を的確に変更して制御することが可能となる。
【0046】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る車両用電子制御システム1によれば、車両用電子制御システム1内のある要素制御ユニット2での制御の仕方に変更が加えられたり機能が追加される等した場合や、車両が付加価値制御を行うように機能が追加されたり車両の車種や仕様等が変更された場合であっても、独立ユニット3から各要素制御ユニット2に命令を出して制御に用いる制御パラメータpを修正パラメータPに変更させることで、各要素制御ユニット2における制御の仕組み(制御マップや演算式等)自体に変更を加えることなく、各要素制御ユニット2における制御の仕方を適切に変更させて、車両用電子制御システム1内のある要素制御ユニット2での制御の仕方の変更に的確に対応させたり、車両制御への付加価値制御の追加や車両の車種、仕様の変更等を適切に行うことが可能となる。
【0047】
そして、従来の車両用電子制御システムでは、上記のような変更の際に、各要素制御ユニットの制御の仕組み(制御マップや演算式等)を変更したり、全体的な整合性をとりながら各要素制御ユニットが適切に協調して制御を行うことができるように各要素制御ユニットに対して適切に変更を加える煩雑な作業が必要であり、開発に要する時間が長期化したり、開発工数が増大したりする場合があったが、本実施形態に係る車両用電子制御システム1では、そのような煩雑な作業を必要とせず、独立ユニット3から各要素制御ユニット2に出す命令や修正パラメータPを適切に決定するだけでよくなる。
【0048】
そのため、車両用電子制御システム1において、全体的な整合性をとりながら各要素制御ユニット2が協調して制御を行うことができるように調整する処理を、独立ユニット3から命令や修正パラメータPを出力させるようにするだけで、各要素制御ユニット2の制御の仕組み(制御マップや演算式等)を変更することなく非常に容易に行うことが可能となり、車両に適切に付加価値制御を追加したり車両の車種や仕様の変更等を適切に行うことが可能となるとともに、開発に要する時間を短縮したり、開発工数をより少なくすることが可能となる。
【0049】
なお、独立ユニット3からは、各要素制御ユニット2の制御の仕方を適切に変更させるために必要な種類の修正パラメータPが送信されるため、要素制御ユニット1個あたりに独立ユニット3から送信される修正パラメータPの種類は、1種類である場合もあるが、複数種類である場合もある。
【0050】
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態では、車両用電子制御システム1内の1つ或いは複数の要素制御ユニット2の制御の仕方に変更を加えた場合の影響を独立ユニット3で吸収し、それ以外の要素制御ユニット2における制御の仕組み(制御マップや演算式等)自体には変更を加えずに、独立ユニット3からの命令や修正パラメータPの送信によって各要素制御ユニット2での制御の仕方を変更することについて説明した。そして、このように構成することで、各要素制御ユニット2での制御を容易かつ的確に変更し、車両用電子制御システム1の全体的な整合性をとりながら各要素制御ユニット2が協調して制御を行うことが可能となる。
【0051】
一方、上記の第1の実施形態に係る車両用電子制御システム1の構成を用いると、車両用電子制御システム1内のある要素制御ユニット2の制御の仕方に変更を加える場合も、当該要素制御ユニット2における制御の仕組み自体には変更を加えずに、独立ユニット3から当該要素制御ユニット2に命令を出したり修正パラメータPを送信することによって要素制御ユニット2における制御の仕方を変更することができる。
【0052】
例えば、ある要素制御ユニット2に新機能を追加したり、改正された法令に適合するように、ある要素制御ユニット2の制御の仕方を変更しなければならないような場合に、当該要素制御ユニット2での制御の仕組み(制御マップや演算式等)を変更するのではなく、現状の当該要素制御ユニット2での制御の仕組みは変更せずに、
図4に示すように、独立ユニット3から当該要素制御ユニット2への命令や修正パラメータPの送信によって当該要素制御ユニット2の制御の仕方を変更させることができる。なお、
図4では、他の要素制御ユニット2等の記載が省略されている。
【0053】
具体的には、独立ユニット3は、前述したように通信ネットワークNを流れるデータを受信し、それらに基づいて車両の状態を把握する。そして、要素制御ユニット2が制御に用いる制御パラメータpを修正する修正パラメータPを算出して、当該要素制御ユニット2に修正パラメータPを送信する。そして、修正パラメータPを受信した要素制御ユニット2は、制御パラメータpの代わりに修正パラメータPを用いて制御を行うように構成することが可能である。
【0054】
これを、独立ユニット3と制御の仕方を変更する要素制御ユニット2との間の通信の点から見ると、
図5に示すように、独立ユニット3は、常時、或いは所定のタイミングで、当該要素制御ユニット2に対して制御に用いる制御パラメータpの送信要求rを送り、要素制御ユニット2は、送信要求rに応じて現状の制御の仕組み(制御マップや演算式等)で算出した制御パラメータpを独立ユニット3に送信する。そして、独立ユニット3は、当該制御パラメータpを修正する修正パラメータPを算出する演算処理を行い、当該要素制御ユニット2に算出した修正パラメータPを送信する。
【0055】
そして、要素制御ユニット2は、独立ユニット3から修正パラメータPを受信すると、例えばRAM22(
図2参照)に保存されている制御パラメータpを修正パラメータPで上書きする等して書き換えて、制御パラメータpの代わりに修正パラメータPに基づいてアクチュエータβ等の制御(すなわち制御対象に対する制御)を行うように構成される。
【0056】
この構成を用いると、例えば、要素制御ユニット2であるエンジンECUに、車両の状態が所定の走行状態である場合に空燃比を理論空然比(ストイキオメトリ)から所定量だけリッチ側に設定された目標空燃比になるように制御するという新機能を追加する場合、エンジンECUの制御の仕組み自体に変更を加えるのではなく(すなわち制御マップや演算式等は変更せず)、独立ユニット3が、受信したデータに基づいて車両の状態が所定の走行状態であるか否かを判断し、車両の状態が所定の走行状態であると判断した場合に、エンジンECUに対して、エンジンECUが算出した制御パラメータpの送信要求rを送る。
【0057】
そして、要素制御ユニット2が送信要求rに応じて制御パラメータpを独立ユニット3に送信すると、独立ユニット3は、制御パラメータpを修正するための修正パラメータP(この場合は理論空燃比から所定量だけリッチ側に設定された目標空燃比)を算出して、当該要素制御ユニット2に修正パラメータPを送信する。そして、要素制御ユニット2は、修正パラメータPである修正された目標空燃比に基づいてアクチュエータβ等の制御を行って、制御対象であるエンジンに対する制御を行う。このようにすることで、当該要素制御ユニット2に新機能を追加することができる。
【0058】
以上のように、第2の実施形態に係る車両用電子制御システム1によれば、新機能を追加したり制御の仕方を変更しなければならない要素制御ユニット2の制御の仕組み(制御マップや演算式等)自体には何ら変更を加えることなく、当該要素制御ユニット2に新機能を容易かつ的確に追加したり、改正された法令に適合するようにある要素制御ユニット2の制御の仕方を容易かつ的確に変更することが可能となる。
【0059】
なお、この場合、制御の仕方が変更される要素制御ユニット2(すなわち独立ユニット3により制御パラメータpが修正パラメータPに修正される要素制御ユニット2)は、単数でも複数でもよい。そして、例えば複数の要素制御ユニット2の制御パラメータpを修正パラメータPに修正する際も、それらの要素制御ユニット2の制御の仕組み自体には何ら変更を加えることなく、独立ユニット3で各要素制御ユニット2についてそれぞれ修正パラメータPを算出して各要素制御ユニット3にそれぞれ送信するだけで、各要素制御ユニット2の制御の仕方を容易かつ的確に変更して新機能を容易かつ的確に追加したり改正法令に容易かつ的確に適合させたりすることが可能となる。
【0060】
その際、何らかの目的を達成するために、複数の要素制御ユニット2に影響が及び、複数の要素制御ユニット2で制御の仕方を変更する場合や、制御の仕方の変更を複数回行っていかなければならないような場合でも、第2の実施形態に係る車両用電子制御システム1によれば、各要素制御ユニット2の制御の仕組み自体には何ら変更を加えずに、独立ユニット3から各要素制御ユニット2に送信する修正パラメータPを修正していくことで(すなわち独立ユニット3のみを修正対象として)、各要素制御ユニット2の制御の仕方を容易かつ的確に変更することが可能となる。
【0061】
また、複数の要素制御ユニット2の制御パラメータpを修正する場合は勿論、1つの要素制御ユニット2の制御パラメータpを修正パラメータPに修正する場合でも、要素制御ユニット2内での制御の仕方をあれこれと変更することは大変煩雑な作業になる場合があるが、本実施形態では、上記のように独立ユニット3で制御パラメータpを修正パラメータPに修正して当該要素制御ユニット2に送信するだけで要素制御ユニット2の制御の仕方を変更することが可能となる。そのため、本実施形態によれば、要素制御ユニット2の制御の変更作業を非常に容易に行うことが可能となる。
【0062】
[第3の実施の形態]
ところで、要素制御ユニット2への新機能追加等の際に、要素制御ユニット2のリプログラミング処理が必要になる場合がある。そして、要素制御ユニット2をリプログラミングする場合、車両を一旦ディーラ等に持ち込んでディーラ等で要素制御ユニット2のROM23(
図2参照)等に保存されているソフトウェアを削除した後、当該要素制御ユニット2に新たなソフトウェアをインストールする作業を行うことが考えられる。
【0063】
しかし、その場合には、要素制御ユニット2が一時的に使えなくなる。また、運転者は、要素制御ユニット2のリプログラミング処理のためにいちいち車両をディーラ等に持ち込まなければならないうえ、ディーラ等がリプログラミング処理を行っている間、運転者は車両を使うことができないという不便さがある。
【0064】
しかし、上記の車両用電子制御システム1の構成を用いれば、車両をディーラ等に持ち込まなくても要素制御ユニット2のリプログラミング処理を行うことが可能となる。本実施形態では、車両用電子制御システム1における要素制御ユニット2のリプログラミング処理の仕方等について説明する。
【0065】
この場合、車両をディーラ等に持ち込まずに要素制御ユニット2に新たなソフトウェアをインストールするために、本実施形態では、車両用電子制御システム1は、新たなソフトウェアを無線通信で受信してダウンロードすることができるように構成される。そのため、
図6に示すように、通信ネットワークNに無線通信装置4が接続される等して、車両用電子制御システム1に無線通信装置4が設けられている。
【0066】
次に、要素制御ユニット2から書き換え対象のソフトウェアを削除し、新たなソフトウェアをインストールする際の手順の一例について説明する。
【0067】
まず、
図7(A)に示すようにソフトウェアを書き換え予定の要素制御ユニット2のROM23(
図2参照)内に書き換え対象のソフトウェア(すなわち書き換え前のソフトウェア。図中の「旧ソフト」参照)Soldが保存されている状態で、無線通信装置4を介してリプログラミング時のソフトウェア(
図7(B)等の「リプロ時ソフト」参照)Srを受信してダウンロードして、当該要素制御ユニット2にインストールする。
【0068】
この場合、リプロ時ソフトSrは、旧ソフト(書き換え対象のソフトウェア)Soldよりも小規模のソフトウェアであり、要素制御ユニット2が制御対象に対して、制御対象が正常に動作したり正常に機能したりするために最低限必要な制御のみを行うことを可能とするソフトウェアである。すなわち、例えば要素制御ユニット2がエンジンECUであり、制御対象がエンジンである場合、リプロ時ソフトSrは、燃料噴射装置からガソリン等の燃料を指示された時間だけ噴射させる等のごく基本的な制御のみを行わせるものである。
【0069】
続いて、
図7(C)に示すように、無線通信装置4を介して、要素制御ユニット2のソフトウェア(旧ソフトSold或いは後述する新ソフトSnew)の代わりとなる代替ソフトウェア(図中の「代替ソフト」参照)Ssを受信してダウンロードして、独立ユニット3にインストールするとともに、要素制御ユニット2から旧ソフトSoldを削除する。
【0070】
この状態では、要素制御ユニット2が旧ソフトSoldに基づいて算出していた制御パラメータp等を、要素制御ユニット2に代わって独立ユニット3が代替ソフトSsに基づいて算出して当該要素制御ユニット2に送信する。そして、要素制御ユニット2は、リプロ時ソフトSrに従い、独立ユニット3から受信した制御パラメータp等に基づいてアクチュエータβの動作を制御する。
【0071】
このように、本実施形態では、独立ユニット3は、要素制御ユニット2のリプログラミング処理が行われる際、当該要素制御ユニット2から旧ソフト(書き換え対象のソフトウェア)Soldが削除されて当該要素制御ユニット2に後述する新たなソフトウェアSnewがインストールされるまでの間、要素制御ユニット2のソフトウェアの代わりとなる代替ソフト(代替ソフトウェア)Ssに基づいて、リプロ時ソフト(リプログラミング時のソフトウェア)Srに基づいて作動する当該要素制御ユニット2を制御してアクチュエータβの制御を行わせるように構成される。
【0072】
そのため、要素制御ユニット2にリプログラミング処理が行われる際に、要素制御ユニット2から旧ソフト(書き換え対象のソフトウェア)Soldが削除されても、要素制御ユニット2が、アクチュエータβを適切に動作させることが可能となり、制御対象を的確に制御することが可能となる。そのため、制御対象が動作しなくなったり、そのために車両が動かなくなったり異常な動作をしたりすることを的確に防止することが可能となる。
【0073】
続いて、
図7(D)に示すように、無線通信装置4を介して、要素制御ユニット2のための新たなソフトウェア(図中の「新ソフト」参照)Snewを受信してダウンロードして、要素制御ユニット2のROM23にインストールする。そして、インストールが完了した時点で、独立ユニット3から代替ソフトSsを削除する。
【0074】
そして、要素制御ユニット2に新ソフトSnewがインストールされれば、リプロ時ソフトSrは不要になるため、
図7(E)に示すように、要素制御ユニット2からリプロ時ソフトSrを削除する。このようにして、要素制御ユニット2におけるリプログラミング処理(すなわち旧ソフトSold(
図7(A)参照)から新ソフトSnew(
図7(E)参照)への書き換え処理)を行うことができる。
【0075】
以上のように、第3の実施形態に係る車両用電子制御システム1によれば、要素制御ユニット2への新機能追加等のために要素制御ユニット2のリプログラミング処理を行う際に、車両をディーラ等に持ち込まなくても、要素制御ユニット2から書き換え対象のソフトウェアSoldを削除し、新たなソフトウェアSnew等をダウンロードしてインストールすることで容易かつ的確に要素制御ユニット2のリプログラミング処理を行うことが可能となる。そのため、運転者は、要素制御ユニット2のリプログラミング処理のためにいちいち車両をディーラ等に持ち込まなくても済むため、運転者が不便さを感じることなく要素制御ユニット2のリプログラミング処理を行うことが可能となる。
【0076】
また、個々の要素制御ユニット2はリプログラミングのためのメモリ(代替ソフトSsを保存するメモリ)を持つ必要がなく、独立ユニット3のみがリプログラミングのためのメモリを確保すれば、上記の要素制御ユニット2のリプログラミング処理を的確に行うことが可能となる。そのため、第3の実施形態に係る車両用電子制御システム1は、要素制御ユニット2に新たなメモリ等を設けることなく既設のメモリ(ROM23)等を用いてリプログラミング処理を行うことができる点でもメリットがある。
【0077】
なお、上記の実施例では、無線通信装置4を介して新たなソフトウェアSnew等を無線で受信してダウンロードする場合について説明したが、例えば、運転者等が、新たなソフトウェアSnew等が記憶された記憶媒体を車両用電子制御システム1の通信ネットワークNに接続する等してダウンロードさせるように構成することも可能である。
【0078】
また、上記の実施例のように構成すれば、例えば、運転者が車両を走行させている最中に要素制御ユニット2のリプログラミング処理を行うことができる。しかし、万が一新たなソフトウェアSnewやリプロ時ソフトSr、代替ソフトSs等に異常がある場合、当該要素制御ユニット2が制御するアクチュエータβが正常に動作しなくなって走行中の車両が急停車したり異常な動きをするようになると危険が生じる可能性がある。
【0079】
そのため、例えば、車両が走行中に無線通信装置4等を介してリプロ時ソフトSrや代替ソフトSs、新たなソフトウェアSnew等をダウンロードしておき、走行中は要素制御ユニット2にそれらソフトウェアのインストールは行わず、運転者がイグニションキーを回してエンジンを停止させた時点でインストールするように構成することが可能である。
【0080】
すなわち、例えば、走行中にリプロ時ソフトSrと代替ソフトSsをダウンロードするが、走行中にはそれらをインストールしない。そして、運転者が車両を停止させ、イグニションキーを回してエンジンを停止させた時点でリプロ時ソフトSrを要素制御ユニット2にインストールする(
図7(B)参照)。また、独立ユニット3に代替ソフトSsをインストールし、要素制御ユニット2から旧ソフト(書き換え対象のソフトウェア)Soldを削除する(
図7(C)参照)。
【0081】
そして、その状態で運転者が車両を走行させている間に新ソフト(新たなソフトウェア)Snewをダウンロードする。そして、運転者が車両を停止させ、イグニションキーを回してエンジンを停止させた時点で要素制御ユニット2に新ソフトSnewをインストールする(
図7(D)参照)とともに、独立ユニット3から代替ソフトSsを削除する。そして、要素制御ユニット2からリプロ時ソフトSrを削除する(
図7(E)参照)ことで、要素制御ユニット2でのリプログラミング処理を行うようにすることができる。
【0082】
このように構成すれば、万が一新たなソフトウェアSnewやリプロ時ソフトSr、代替ソフトSs等に異常がある場合でも、それらのソフトウェアのインストールは停車時に行われるため、ソフトウェアに異常がある場合には、車両が動かないか、発車時に異常な動きをしても即座に車両を停止させることができる。そのため、要素制御ユニット2でのリプログラミング処理を安全に行うことが可能となる。
【0083】
なお、さらに安全性を高めるために、例えば、AT車の場合には、ギヤがパーキングに入っている場合にのみ各ソフトウェアのインストールを許すように構成することも可能である。また、例えば、MT車の場合には、サイドブレーキが引かれている場合にのみ各ソフトウェアのインストールを許すように構成することも可能である。
【0084】
また、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。