特許第6857002号(P6857002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857002
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/463 20060101AFI20210405BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20210405BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20210405BHJP
   D06M 11/155 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   D06M13/463
   D06M13/144
   D06M13/224
   D06M11/155
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-197956(P2016-197956)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2018-59242(P2018-59242A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】森田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】小倉 英史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 亮
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−211215(JP,A)
【文献】 特開2016−113705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/463
D06M 11/155
D06M 13/144
D06M 13/224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)及び(B)成分を含有する液体柔軟剤組成物:
(A)下記(A-I)、(A-II)及び(A-III)の混合物 15質量%未満;及び
(B)無機塩 0.005質量%以上0.2質量%未満
であって、
(A-I)が、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に1つ有する第4級アンモニウム塩であり、
(A-II)が、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に2つ有する第4級アンモニウム塩であり、
(A-III)が、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に3つ有する第4級アンモニウム塩であり、
(A-I)/[(A-I)+(A-II)+(A-III)]で表される(A-I)成分の質量比が、0.30より大きく0.80以下である、前記液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
(C)6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール及び6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を更に含有する、請求項1記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(A)成分の配合量が1質量%以上である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物に関する。詳細には、本発明は、柔軟基材の分解が抑制された液体柔軟剤組成物に関する。より詳細には、本発明は、柔軟基材の分解が抑制され、かつ香気劣化が抑制された液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、柔軟剤に使用されている柔軟基材として、エステル基を1〜3個含有するアミン化合物が多く用いられている。例えば、特許文献1〜6には、エステル基を1〜3個含有するアミン化合物を含む柔軟剤組成物が記載されている。
しかしながら、アミン化合物のエステル基は水中で加水分解し易いことから、保存後の柔軟性付与の低下や香気劣化といった懸念点がある。エステル基の加水分解を抑制する点については、特許文献1、3及び7に記載されているが、特定のエステル化合物等を配合する必要があり、柔軟剤組成物の配合設計の自由度が奪われ、妥当でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-233281号公報
【特許文献2】特開2004-211215号公報
【特許文献3】特開2015-120995号公報
【特許文献4】特開2014-125692号公報
【特許文献5】特開2010-144310号公報
【特許文献6】特開2001-336065号公報
【特許文献7】特開2016-121423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、柔軟基材の分解が抑制された、新規な液体柔軟剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、液体柔軟剤組成物中、柔軟基材であるアミン化合物のモノエステル体比を高め、かつ塩濃度を少量に抑えることで、アミン化合物のエステル基の加水分解を抑制させることを見出した。また、本発明者らは、特定の香料を更に配合することで、分解で生じる臭気変化の感知を抑制することが可能であることを見出した。
本発明は、このような新規な知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
本発明の一実施態様において、
以下の(A)及び(B)成分を含有する液体柔軟剤組成物:
(A)下記(A-I)、(A-II)及び(A-III)の混合物 15質量%未満;及び
(B)無機塩 0.2質量%未満
であって、
(A-I)が、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に1つ有する第4級アンモニウム塩であり、
(A-II)が、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に2つ有する第4級アンモニウム塩であり、
(A-III)が、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に3つ有する第4級アンモニウム塩であり、
(A-I)/[(A-I)+(A-II)+(A-III)]で表される(A-I)成分の質量比が、0.30より大きく0.80以下である、前記液体柔軟剤組成物が提供される。
本発明の一実施態様によれば、液体柔軟剤組成物は、(C)6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール及び6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を更に含有する。
本発明の一実施態様においては、液体柔軟剤組成物は、エチレングリコールと炭素数10以上22以下の脂肪酸とのジエステル化合物を含有しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施態様によれば、柔軟基材の分解が抑制された液体柔軟剤組成物を提供することができる。
本発明の一実施態様によれば、柔軟基材の分解が抑制され、かつ香気劣化が抑制された液体柔軟剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[(A)成分]
本発明の液体柔軟剤組成物に含まれる(A)成分は、繊維製品等に柔軟性を付与する柔軟基材(カチオン界面活性剤)であり、下記(A-I)、(A-II)及び(A-III)の混合物である。
<(A-I)成分>
(A-I)成分は、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に1つ有する第4級アンモニウム塩である。具体的には、下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
【化1】
(式中、R1はエステル基を1つ含む総炭素数10〜26の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基又はアルケニル基を表し、R2はメチル基、エチル基又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を表し、X-は柔軟剤適合アニオンを表す。R2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0009】
式(I)中、R1は、エステル基を1つ含む、総炭素数10〜26、好ましくは12〜24の、直鎖もしくは分岐鎖アルキル基又はアルケニル基である。
式(I)中、R2は、各々独立して、メチル基、エチル基又は炭素数1〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基である。R2の例としては、具体的にはメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基が挙げられるが、特にメチル基、ヒドロキシエチル基が好ましい。
式(I)中、X-は柔軟剤適合アニオンであり、具体的には塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子や、メチル硫酸、エチル硫酸、メチル炭酸などが挙げられる。X-は、好ましくはメチル硫酸、エチル硫酸、メチル炭酸であり、特にメチル硫酸が好ましい。
上記一般式(1)で示される分子内にエステル基を1つ含む第4級アンモニウム塩としては、下記一般式(2)で示される第4級アンモニウム塩が好ましい。
【化2】
(式中、R3は炭素数7〜23の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0010】
式(2)中、R3は、炭素数7〜23、好ましくは9〜21の直鎖又は分岐鎖アルキル基又はアルケニル基である。
3は炭素数8〜24の脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基であり、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸、分岐脂肪酸のいずれからも誘導される基である。不飽和脂肪酸の場合、シス体とトランス体が存在するが、その質量比率は液体柔軟剤の粘度を適度なものに仕上げるため、シス体/トランス体=25/75〜80/20が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。R3のもととなる脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)などが挙げられる。中でも好ましいのは、植物由来のステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸を所定量組み合わせ、飽和/不飽和比率が95/5〜50/50、特に85/15〜50/50(質量比)でそのヨウ素価が10〜50のものである。特にシス体/トランス体の質量比が40/60〜80/20、炭素数18の脂肪酸の比率が80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸が2質量%以下、炭素数22の脂肪酸が1質量%以下となるように調整した脂肪酸組成を用いることが好ましい。
【0011】
<(A-II)成分>
(A-II)成分は、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に2つ有する第4級アンモニウム塩である。具体的には、1つのエステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に2つ有する第4級アンモニウム塩であり、下記一般式(3)で示されるものが挙げられる。
【化3】
(式中、R1、R2及びX-は、上記式(1)において定義したものと同じ意味を表し、R1は同一であっても異なっていてもよく、R2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0012】
式(3)中、R1、R2及びX-の好ましい範囲等は、上記式(1)において定義したものと同様である。
上記一般式(3)で示される分子内にエステル基を2つ含む第4級アンモニウム塩としては、下記一般式(4)で示される第4級アンモニウム塩が好ましい。
【化4】
(式中、R3は上記式(2)において定義したものと同じ意味を表し、R3は同一であっても異なっていてもよい。)
式(4)中、R3の好ましい範囲等は、上記式(2)において定義したものと同様である。
【0013】
<(A-III)成分>
(A-III)成分は、エステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に3つ有する第4級アンモニウム塩である。具体的には、1つのエステル基で分断されている炭素数10〜26の炭化水素基を分子内に3つ有する第4級アンモニウム塩であり、下記一般式(5)で示されるものが挙げられる。
【化5】
(式中、R1、R2及びX-は、上記式(1)において定義したものと同じ意味を表し、R1は同一であっても異なっていてもよい。)
【0014】
式(5)中、R1、R2及びX-の好ましい範囲等は、上記式(1)において定義したものと同様である。
上記一般式(5)で示される分子内にエステル基を3つ含む第4級アンモニウム塩としては、下記一般式(6)で示される第4級アンモニウム塩が好ましい。
【化6】
(式中、R3は上記式(2)において定義したものと同じ意味を表し、R3は同一であっても異なっていてもよい。)
式(6)中、R3の好ましい範囲等は、上記式(2)において定義したものと同様である。
【0015】
(A-I)/[(A-I)+(A-II)+(A-III)]で表される(A-I)成分の質量比は、0.30より大きく0.80以下であり、好ましくは0.33〜0.80、より好ましくは0.35〜0.80、さらに好ましくは0.45〜0.80である。(A-I)成分の質量比が上記の範囲内であると、エステル基の加水分解の抑制と、香気劣化抑制と、柔軟性付与に優れた柔軟剤組成物を提供し得る。
エステル基の加水分解の抑制機構としては、(A-I)/[(A-I)+(A-II)+(A-III)]が大きくなると、4級アンモニア化合物の集合体であるベシクルの分子間が密になることで正電荷が増加し、加水分解機構であるプロトンの接近が困難となり加水分解が抑制されるため、また、(A-III)、(A-II)、(A-I)の順に加水分解が早く、(A-III)及び(A-II)が多いほど加水分解へ悪影響を及ぼす脂肪酸の生成量が経時で多くなるためと推察される。
(A)成分の配合量、即ち、(A-I)、(A-II)及び(A-III)成分の合計の配合量は、柔軟剤組成物の総質量に対して、15質量%未満であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは8質量%未満である。(A-I)、(A-II)及び(A-III)成分の合計の配合量が多すぎると、液体柔軟剤組成物の粘度が高くなる場合がある。また、(A)成分の配合量、即ち、(A-I)、(A-II)及び(A-III)成分の合計の配合量は、柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。
なお、(A)成分中、各々、複数種の(A-I)、(A-II)及び(A-III)成分を含んでもよいことは、R3の定義からも理解されることである。
【0016】
上記一般式(2)、(4)、及び(6)で示される化合物は、上述の脂肪酸組成物又は脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応、続いてジメチル硫酸などの4級化試薬による4級化反応により合成することができる。本発明において、(A-I)成分の質量比は上記比率であることが必須であるが、(A-I)〜(A-III)成分を別々に合成し、それを所定量組み合わせたものを使用してもよいし、トリエタノールアミンと脂肪酸又は脂肪酸メチルエステルとを特定モル比率で反応させ、ついで合成した反応生成物を一般的に使用される4級化剤で4級化し、(A-I)〜(A-III)成分が所定量含まれるように合成した反応生成物を使用してもよい。また、(A-I)〜(A-III)成分を含有する4級アンモニウム塩組成物を室温又は高温保存下で加水分解させ、本発明で規定する比率に調整したものを用いてもよい。
上記の中でも、好ましくは反応生成物を用いる場合であり、とりわけトリエタノールアミンと脂肪酸メチルエステルをモル比1:0.5〜1:1.7で反応させることが好ましく、当該モル比は1:0.7〜1:1.5がより好ましく、1.0:0.9〜1.0:1.3がさらに好ましい。また得られたエステルアミン(トリエタノールアミンと脂肪酸メチルエステルの反応縮合物)に対して、0.9〜0.99倍モルのジメチル硫酸で4級化することが好ましい。なお、この際、4級化されていないエステルアミンが、反応性生成物中に5〜20質量%程度含まれていてもよい。
【0017】
[(B)成分]
本発明の液体柔軟剤組成物に含まれる(B)成分は、無機塩であり、主に液体柔軟剤組成物の粘度をコントロールする目的で配合される。また、(B)成分は、20℃、100gの脱イオン水に10g以上溶解する水溶性無機塩であることが好ましい。
(B)成分の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウムなどが挙げられる。好ましくは、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウムである。
(B)成分は、市場において容易に入手可能であるか、又は、公知の方法によって合成可能である。
(B)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせてもよい。
(B)成分の配合量は、柔軟剤組成物の総質量に対して、0.2質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である。また、(B)成分の配合量は、柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.005質量%以上である。これは、(B)成分のような水溶性無機塩を配合しないと粘度が高く使用性が低下し、かつ長期保存による柔軟剤の分離の懸念があるためである。また、(B)成分の配合量が0.005〜0.2質量%の範囲内であると、エステル基の加水分解抑制効果が良好である。
無機塩の配合量の増加に伴い4級アンモニア化合物の集合体であるベシクルの正電荷が減少する。それによって加水分解機構であるプロトンの接近が可能となり加水分解が促進されると推察される。
【0018】
[(C)成分]
本発明の液体柔軟剤組成物は、(C)成分として、6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール及び6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステルから選ばれる少なくとも1種の化合物を更に含有してもよい。(C)成分は、香料成分として知られる化合物であり得る。
「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール」とは、
(i)分子内に6員環構造を1つ以上有するが、
(ii)当該分子内に芳香環、二重結合及び三重結合は含まず、かつ、
(iii)当該分子内にヒドロキシル基を一つ有するアルコール化合物をいう。
「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール」の具体例としては、1−シクロヘキシルエタノール、2−シクロヘキシルエタノール、p−イソプロピルシクロヘキサノール、p−tert−ブチルシクロヘキサノール、o−tert−ブチルシクロヘキサノール、p−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、メントール、ジヒドロテルピネオール、4−ツヤノール、3−ツヤノール、α−フェンキルアルコール、メチルフェンコール、ボルネオール、トリメチルノルボルナンメタノール、イソカンフィルシクロヘキサノールや、パチュリアルコール等が挙げられる。
【0019】
「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステル」とは、
(i)分子内に6員環構造を1つ以上有するが、
(ii)当該分子内に芳香環、二重結合及び三重結合は含まず、
(iii)当該分子内にエステル結合を一つ有する、エステル化合物をいう。
「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステル」の具体例としては、1−シクロヘキシルエチルアセテート、1−シクロヘキシルエチルブチレート、2−シクロヘキシルエチルアセテート、2−シクロヘキシルエチルブチレート、アフェルマート、ギ酸デカヒドロ−β−ナフチル、酢酸メンチル、酢酸フェンキル、酢酸ボルニル、酢酸イソボルニル、酢酸シクロヘキシル、酢酸p−イソプロピルシクロヘキサニル、酢酸tert−アミルシクロヘキシル、酢酸ジヒドロテルピニル、ジヒドロフロラレート、酢酸α,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチル、酢酸p−tertブチルシクロヘキシル、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル、酢酸トリシクロデシル、酢酸デカヒドロ−β−ナフチル、プロピオン酸メンチル、プロピオン酸ボルニル、プロピオン酸イソボルニル、2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル、酪酸シクロヘキシル、イソ酪酸デカヒドロ−β−ナフチル、イソ吉草酸メンチル、イソ吉草酸シクロヘキシルや、フルーテート等が挙げられる。
上記の具体的な化合物について、
好ましくは、1−シクロヘキシルエチルアセテート、1−シクロヘキシルエチルブチレート、2−シクロヘキシルエチルアセテート、2−シクロヘキシルエチルブチレート、アフェルマート、酢酸メンチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸p−イソプロピルシクロヘキサニル、酢酸tert−アミルシクロヘキシル、酢酸ジヒドロテルピニル、ジヒドロフロラレート、酢酸α,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチル、酢酸p−tertブチルシクロヘキシル、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシルシル、2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル、酪酸シクロヘキシル、イソ吉草酸メンチル及びイソ吉草酸シクロヘキシルであり、
より好ましくは、1−シクロヘキシルエチルアセテート、1−シクロヘキシルエチルブチレート、2−シクロヘキシルエチルアセテート、2−シクロヘキシルエチルブチレート、アフェルマート、酢酸メンチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸p−イソプロピルシクロヘキサニル、酢酸tert−アミルシクロヘキシル、酢酸ジヒドロテルピニル、ジヒドロフロラレート、酢酸α,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチル、2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル、酪酸シクロヘキシル、イソ吉草酸メンチル及びイソ吉草酸シクロヘキシルであり、
更に好ましくは、1−シクロヘキシルエチルアセテート、1−シクロヘキシルエチルブチレート、2−シクロヘキシルエチルアセテート及び2−シクロヘキシルエチルブチレートである。
【0020】
「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール」は、6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステルよりも、繊維製品用処理剤組成物の保存安定性に与える影響がより小さく、配合適性に優れている。
「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール」の具体例としては、1−シクロヘキシルエタノール、2−シクロヘキシルエタノール、p−イソプロピルシクロヘキサノール、p−tert−ブチルシクロヘキサノール、o−tert−ブチルシクロヘキサノール、p−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、アンブリノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、メントール、ジヒドロテルピネオール、4−ツヤノール、3−ツヤノール、α−フェンキルアルコール、メチルフェンコール、ボルネオール、トリメチルノルボルナンメタノール、イソカンフィルシクロヘキサノールや、パチュリアルコール等が挙げられる。
上記の具体的な化合物について、
好ましくは、1−シクロヘキシルエタノール、2−シクロヘキシルエタノール、p−イソプロピルシクロヘキサノール、p−tert−ブチルシクロヘキサノール、o−tert−ブチルシクロヘキサノール、p−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、アンブリノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、メントール及びジヒドロテルピネオールであり、
より好ましくは、1−シクロヘキシルエタノール、2−シクロヘキシルエタノール、p−イソプロピルシクロヘキサノール、p−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、アンブリノール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、ジヒドロテルピネオールであり、
更に好ましくは、1−シクロヘキシルエタノール及び2−シクロヘキシルエタノールである。
【0021】
(C)成分は、市場において容易に入手可能であるか、又は、公知の方法によって合成可能である。
(C)成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。混合物は、複数種類の「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール」を組み合わせたものであってもよく、複数種類の「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステル」を組み合わせたものであってもよく、1種類以上の「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和アルコール」と1種類以上の「6員環構造(芳香環は除く)を有する飽和エステル」とを組み合わせたものであってもよい。
(C)成分の配合量は特に限定されないが、柔軟剤組成物の総質量に対して、(C)成分を0.01質量%以上配合することで、(A)成分の加水分解により生じる劣化臭をより良好に抑制することが可能である。(C)成分の配合量は、柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。(C)成分の配合量が0.01〜0.5質量%の範囲内であると、より優れた配合効果を得ることができる。
本発明の柔軟剤組成物中における(A-II)及び(A-III)成分と(C)成分の質量比は、
[(A-II)+(A-III)]/(C)=2〜1000が好ましく、より好ましくは5〜900、さらに好ましくは10〜600である。[(A-II)+(A-III)]/(C)=2〜1000の場合、液体柔軟剤組成物においてより良好な香気劣化抑制を付与することができる。
【0022】
[他の任意成分]
本発明の液体柔軟剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記(A)〜(C)成分に加えて、他の任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、液体柔軟剤組成物に一般的に配合される成分を例示することができる。具体例としては、水、ノニオン界面活性剤、香料、水溶性塩類、染料、水溶性溶剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、消臭剤や、スキンケア成分などが挙げられる。
以下、いくつかの任意成分について詳細に説明する。
【0023】
<水>
本発明の液体柔軟剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、精製水、純水、蒸留水、イオン交換水など、いずれも用いることができる。なかでもイオン交換水が好適である。
水の配合量は特に限定されず、所望の成分組成を達成するために適宜配合することができる。
【0024】
<香料>
本発明の液体柔軟剤組成物には、(C)成分以外の香料を任意成分として配合することができる。
香料としては当該技術分野で汎用の香料を使用可能であり特に限定されないが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
香料は、1種類の香料を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
香料の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.1〜3%質量%であり、より好ましくは0.5〜2質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0025】
<ノニオン界面活性剤>
ノニオン界面活性剤は、本発明の液体柔軟剤組成物が乳化物である場合に、主に、乳化物中での油溶性成分の乳化分散安定性を向上する目的で配合することができる。ノニオン界面活性剤を配合すると、商品価値上充分なレベルの凍結復元安定性が確保されやすい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、多価アルコール、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを用いることができる。より具体的には、グリセリンまたはペンタエリスリトールに炭素数10〜22脂肪酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはペンタエリスリトール;炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(該アルキルの炭素数1〜3)エステル;エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン;炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド;エチレンオキシドの平均付加モル数が10〜100モルである硬化ヒマシ油などが挙げられる。中でも、炭素数10〜18のアルキル基を有し、エチレンオキシドの平均付加モル数が20〜80モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
ノニオン界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物として用いてもよい。
ノニオン界面活性剤の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0026】
[pH]
本発明の液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の分子中に含まれるエステル基の加水分解を抑制する観点から、25℃におけるpHを1〜6の範囲に調整することが好ましく、2〜4の範囲に調整することがより好ましい。
pH調整には、柔軟剤組成物分野において公知の酸やアルカリを特に制限なく用いることができる。例えば、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩や、アルカリ金属珪酸塩などのpH調整剤を用いることができる。
【0027】
[粘度]
本発明の液体柔軟剤組成物の粘度は、その使用性を損なわない限り特に限定されないが、25℃における粘度が800mPa・s未満であることが好ましい。保存経日による粘度上昇を考慮すると、製造直後の液体柔軟剤組成物の25℃における粘度が500mPa・s未満であるのがより好ましく、300mPa・s未満であるのがさらに好ましい。このような範囲にあると、洗濯機への投入の際のハンドリング性等の使用性が良好である。
なお、液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定することができる。
【0028】
[組成物の製造方法]
本発明の液体柔軟剤組成物は、公知の方法、例えば柔軟基材としてカチオン界面活性剤を用いる従来の液体柔軟剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(A)成分及び(C)成分を含む油相混合物と、水溶性物質である任意成分を含む水性混合物とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、その後、得られた乳化物に、(B)成分を添加して混合することにより製造することができる。
【0029】
[組成物の使用方法]
本発明の液体柔軟剤組成物の使用方法に特に制限はなく、一般の柔軟剤組成物と同様の方法で使用することができる。例えば、洗濯のすすぎの段階ですすぎ水へ本発明の液体柔軟剤組成物を溶解させて被洗物を柔軟処理する方法や、本発明の液体柔軟剤組成物をたらいのような容器中の水に溶解させ、更に被洗物を入れて浸漬処理する方法がある。
本発明の柔軟剤組成物により処理され得る繊維製品は、特に制限されるものではなく、例えば、衣類、カーテン、ソファー、カーペット、タオル、ハンカチ、シーツ、マクラカバー等が挙げられる。その素材も、綿や絹、ウール等の天然繊維でもよいし、ポリエステル等の化学繊維でもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例において成分配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0031】
[(A)成分]
下記のA−1〜A−4を使用した。
・A−1:カチオン界面活性剤 モノ/ジ/トリ比 33:54:13
・A−2:カチオン界面活性剤 モノ/ジ/トリ比 53:41:6
・A−3(比較例):カチオン界面活性剤 モノ/ジ/トリ比 27:52:21
・A−4(比較例):カチオン界面活性剤 モノ/ジ/トリ比 12:54:34
上記「モノ/ジ/トリの比」は、モノエステルアンモニウム塩/ジエステルアンモ
ニウム塩/トリエステルアンモニウム塩の質量比を表す。
【0032】
<第4級アンモニウム塩組成物(A−1〜A−4)の調製>
1.第4級アンモニウム塩組成物(A−1)の調製
1−1.メチルエステルの合成
オレイン酸メチル75質量% 、リノール酸メチル16質量%及びステアリン酸メチル9質量%よりなるパーム脂肪酸メチル(ライオン(株)、パステルM182、分子量296)2.5kgと市販の安定化ニッケル触媒2.5g(0.1質量%/脂肪酸メチル)を4Lのオートクレーブに仕込み、窒素ガス置換を3回行った。ついで、回転数を800rpmに合わせ、温度185℃で約77Lの水素ガスを導入した。導入した水素が完全に消費されたら、冷却し、濾過助剤を使用して触媒を除き、水素添加したパーム脂肪酸メチルを得た。けん化価より求めた分子量は297であった。GC(ガスクロマトグラフィー)から求めた脂肪酸メチル組成は、ステアリン酸メチル36質量%、エライジン酸メチル(トランス体)36質量%、オレイン酸メチル(シス体)28質量%、リノール酸メチル0質量%であり、不飽和脂肪酸メチルエステルのトランス体/シス体質量比率は56/44であった。なお、不飽和アルキル基は、GCにより次の方法で測定した。
【0033】
機種:Hitachi FID ガスクロG−3000、
カラム:GLサイエンスTC−70(0.25mm I.Dx30)、
温度:カラム150℃→230℃、昇温速度10℃/min、インジェクター&ディテクター240℃、
カラム圧力:1.0kgf/cm2
【0034】
1−2.アルカノールアミンエステルとそのカチオンの合成
上記1−1で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル394g(1.33モル)にステアリン酸メチル111g(0.37モル)とパルミチン酸メチル126g(0.47モル)を混合した脂肪酸メチルエステル(不飽和脂肪酸メチル/飽和脂肪酸メチルの質量比40/60)と、トリエタノールアミン250g(1.67モル)、酸化マグネシウム0.51g、14%水酸化ナトリウム水溶液3.69gを攪拌器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後、窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認し反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。アミン価を測定し、分子量を求めると582であった。
【0035】
得られたアルカノールアミンエステル270g(0.46モル)を温度計、滴下ロート、冷却機を備えた4つ口フラスコに入れ窒素置換した。次いで85℃に加熱し、ジメチル硫酸57.4g(0.45モル)を1時間にわたり滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間攪拌した。反応終了後、約62gの未変性エタノール(日本エタノール(株))を滴下しながら冷却し、エタノール溶液を調製し、最後にフェリオックスCY−115(ライオン(株))と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業(株))をそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。得られた第4級アンモニウム塩組成物(A−1)には、(A-I)〜(A-III)成分が70質量%含まれており、(A-I)成分:モノエステルアンモニウム塩/(A-II)成分:ジエステルアンモニウム塩/(A-III)成分:トリエステルアンモニウム塩が33/54/13(質量比)で含まれていた。これは(A-I)/ [(A-I)+(A-II)+(A-III)]=0.33で表される。このエタノール溶液中には、4級化されていないモノエステルアミンとジエステルアミンとトリエステルアミンが9.0質量%含まれており、その比率は1/9/90(質量比)で存在していた。更に副生成物として、両性化合物が2.0質量%含まれていた。
【0036】
2.第4級アンモニウム塩組成物(A−2)の調製
2−1.メチルエステルの合成
オレイン酸メチル75質量%、リノール酸メチル16質量%及びステアリン酸メチル9質量%よりなるパーム脂肪酸メチル(ライオン(株)、パステルM182、分子量296)2.5kgと市販の安定化ニッケル触媒1.9g(0.075質量%/脂肪酸メチル)を4Lのオートクレーブに仕込み、窒素ガス置換を3回行った。ついで、回転数を800rpmにあわせ、温度185℃で約40Lの水素ガスを導入した。導入した水素が完全に消費されたら、冷却し、濾過助剤を使用して触媒を除き、水素添加したパーム脂肪酸メチルを得た。けん化価より求めた分子量は296であった。GCから求めた脂肪酸メチル組成は、ステアリン酸メチル14質量%、エライジン酸メチル(トランス体)26質量%、オレイン酸メチル(シス体)60質量%、リノール酸メチル0質量%であり、不飽和脂肪酸メチルエステルのトランス体/シス体質量比率は30/70であった。なお、不飽和アルキル基は、GCにより次の方法で測定した。
【0037】
機種:Hitachi FID ガスクロG−3000、
カラム:GLサイエンスTC−70(0.25mm I.Dx30)、
温度:カラム150℃→230℃、昇温速度10℃/min、インジェクター&ディテクター240℃、
カラム圧力:1.0kgf/cm2
【0038】
2−2.アルカノールアミンエステルとそのカチオンの合成
上記2−1で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル489g(1.65モル)にステアリン酸メチル352g(1.18モル)を混合した脂肪酸メチルエステル(不飽和脂肪酸メチル/飽和脂肪酸メチルの質量比50/50)と、トリエタノールアミン468g(3.14モル)、酸化マグネシウム0.65g、14%水酸化ナトリウム水溶液4.68gを攪拌器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後、窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認し、反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。
【0039】
得られたアルカノールアミンエステル300gを温度計、滴下ロート、冷却機を備えた4つ口フラスコに入れ窒素置換した。次いで85℃に加熱し、アルカノールアミンエステルに対して0.98倍モルのジメチル硫酸を1時間にわたり滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間攪拌した。反応終了後、エタノールを滴下しながら冷却し、固形分85質量%のエタノール溶液を調製し、最後にフェリオックスCY−115(ライオン(株))と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業(株))をそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。得られた第4級アンモニウム塩組成物(A−2)には、(A-I)〜(A-III)成分が72%含まれており、(A-I)成分:モノエステルアンモニウム塩/(A-II)成分:ジエステルアンモニウム塩/(A-III)成分:トリエステルアンモニウム塩が53/41/6(質量比)で含まれていた。これは(A-I)/ [(A-I)+(A-II)+(A-III)]=0.53で表される。
【0040】
3.第4級アンモニウム塩組成物(A−3)の調製
上記1−1で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル489g(1.65モル)にステアリン酸メチル137g(0.46モル)とパルミチン酸メチル156g(0. 58モル)を混合した脂肪酸メチルエステル(不飽和脂肪酸メチル/飽和脂肪酸メチルの質量比40/60)と、トリエタノールアミン250g(1.67モル)、酸化マグネシウム0.51g、14%水酸化ナトリウム水溶液3.69gを攪拌器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後、窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1%以下であることを確認し、反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。
【0041】
得られたアルカノールアミンエステル270g(0.46モル)を温度計、滴下ロート、冷却機を備えた4 つ口フラスコに入れ窒素置換した。次いで85℃に加熱し、ジメチル硫酸57.4g(0.45モル)を1時間にわたり滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間攪拌した。反応終了後、約62gの未変性エタノール(日本エタノール(株))を滴下しながら冷却し、エタノール溶液を調製し、最後にフェリオックスCY−115(ライオン(株))と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業(株))をそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。得られた第4級アンモニウム塩組成物(A−3)には、(A-I)〜(A-III)成分が70質量%含まれており、(A-I)成分:モノエステルアンモニウム塩/(A-II)成分:ジエステルアンモニウム塩/(A-III)成分:トリエステルアンモニウム塩が27/52/21(質量比)で含まれていた。これは(A-I)/ [(A-I)+(A-II)+(A-III)]=0.27で表される。
【0042】
4.第4級アンモニウム塩組成物(A−4)の調製
上記1−1で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル489g(1.65モル)と、トリエタノールアミン98g(0.66モル)、酸化マグネシウム0.29g、14%水酸化ナトリウム水溶液2.1gを攪拌器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後、窒素を0.52L/minの流量で流しておいた。1.5℃/minの速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1%以下であることを確認し、反応を停止した。得られた生成物から触媒由来である脂肪酸塩をろ過除去し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。
【0043】
得られたアルカノールアミンエステル300gを温度計、滴下ロート、冷却機を備えた4つ口フラスコに入れ窒素置換した。次いで85℃に加熱し、アルカノールアミンエステルに対して0.98倍モルのジメチル硫酸を1時間にわたり滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間攪拌した。反応終了後、エタノールを滴下しながら冷却し、固形分85%のエタノール溶液を調製し、最後にフェリオックスCY−115(ライオン(株))と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業(株))をそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。得られた第4級アンモニウム塩組成物(A−4)には、(A-I)〜(A-III)成分が70質量%含まれており、(A-I)成分:モノエステルアンモニウム塩/(A-II)成分:ジエステルアンモニウム塩/(A-III)成分:トリエステルアンモニウム塩が12/54/34(質量比)で含まれていた。これは(A-I)/ [(A-I)+(A-II)+(A-III)]=0.12で表される。
【0044】
[(B)成分]
下記のB−1及びB−2を使用した。
・B−1:塩化カルシウム(和光純薬株式会社製)
・B−2:塩化マグネシウム(和光純薬株式会社製)
【0045】
[(C)成分]
下記のC−1及びC−2を使用した。
C−1:2−シクロヘキシルエチルアセテート(豊玉香料株式会社)
C−2:2−シクロへキシルエタノール(シグマアルドリッチ)
【0046】
[共通成分]
本発明の共通成分として、下表で示す成分を使用した。
【表1】
【0047】
香料成分を下表に示す。
【表2】
【0048】
[柔軟剤組成物の調製方法]
内径100mm、高さ150mmのガラス容器と、攪拌機(アジターSJ型、島津製作所製)を用い、各成分の配合量を、下記表1に記載の通り調整して、次の手順により液体柔軟剤組成物を調製した。
まず、(A)成分及び(C)成分、ノニオン界面活性剤、香料成分を混合攪拌して、油相混合物を得た。一方、バランス用イオン交換水の質量は、980gから油相混合物、防腐剤、水溶性溶剤の合計量を差し引いた残部に相当する。次に、(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温したイオン交換水に防腐剤、水溶性溶剤を添加した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。ここで、水相混合物の分割比率は30:70(質量比)とし、攪拌は回転速度1,000rpmで、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物加後に2分間行った。しかる後、(B)成分を添加した。また必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学)、または水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学)を適量添加してpHを2.5に調整し、更に全体質量が1,000gになるようにイオン交換水を添加して、目的の柔軟剤組成物(実施例1〜11、比較例1〜8)を得た。
【0049】
[カチオン残存率の測定方法]
(A)成分の経時的な加水分解の程度を評価するために、液体柔軟剤組成物中のカチオン残存率を下記の方法で測定を行った。
液体柔軟剤組成物を内容積100mLのガラス容器に収納して密閉し、50℃で2ヶ月保存した後、25℃に冷却したものを評価用サンプルとした。また、同様にガラス容器に収納して密閉し、5℃で2ヶ月保存したものをそれぞれの参照用サンプルとした。
これらのサンプル中のメチルサルフェートカチオン(トリエステル体+ジエステル体)の残存率を測定した。測定は、HITACHI社製column oven L−7300Cを用いてHPLC−RI測定にて行った。カチオンには、トリエステル体、ジエステル体、モノエステル体、トリエタノールアミンの4級化物が含まれているが、柔軟性付与効果への寄与が大きいトリエステル体とジエステル体のみの残存率を調べた。
参照用サンプル中のカチオン残存量を100%とし、評価用サンプル中のカチオン残存量の割合を残存率とする。商品価値上、残存率60%以上であるものを合格とする。
測定条件を以下に示す。
移動相:0.28質量%過塩素酸ナトリウム/メタノール
カラム:GL-PACK NUCLEOSIL 100-5SA 4.6×2.50mm
カラム温度:50℃
流速:1.0mL/min
検出器:RI
注入量:75μL
内標:0.90% DTAB(n-ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド)
【0050】
[保存後臭気の評価方法]
液体柔軟剤組成物を、内容積100mLのガラス容器に収納して密閉し、保存前サンプルとした。
同様に内容積100mLのガラス容器に収納して密閉し、50℃条件下で2ヶ月保管したものを保存後サンプルとした。
専門パネル10名により、保存前サンプルの臭気を基準とし、これと保存後サンプルの臭気を比べたときの評価を、下記の基準に基づく5段階評価法で行った。10名の評価結果の平均値に基づき、下記の判定基準により判定した。商品価値上◎、○を合格とする。
<評価基準>
5:保存前サンプルと同等と認められる。
4:保存前サンプルと比べてごくわずかに違いが認められるが、異臭は感じられない。
3:保存前サンプルに比べてわずかに異臭が感じられる。
2:保存前サンプルに比べてかなり違いがあり、異臭が感じられる。
1:保存前サンプルに比べて非常に違いがある。
<判定基準>
◎:平均値が4点以上。
○:平均値が3点以上4点未満。
△:平均値が2点以上3点未満。
×:平均値が2点未満。
【0051】
【表3】
表中、各成分の組成における数値は質量%を表す。(A)成分については、第4級アンモニウム塩組成物(A−1〜A−4)中の、(A-I)〜(A-III)成分に未反応のエステルアミン(第4級アンモニウム塩組成物:未反応のエステルアミン=1:0.1〜1:0.25)を足した数値である。