特許第6857011号(P6857011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サカタインクス株式会社の特許一覧

特許6857011ラミネート用バリア性コーティング組成物及びラミネート用バリア性複合フィルム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857011
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ラミネート用バリア性コーティング組成物及びラミネート用バリア性複合フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20210405BHJP
   C09D 101/12 20060101ALI20210405BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20210405BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20210405BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210405BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210405BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20210405BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20210405BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C09D129/04
   C09D101/12
   C09D183/04
   C09D201/02
   B32B27/00 H
   B32B27/30 102
   B65D65/40 D
   B65D81/24 D
   B65D30/02
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-219636(P2016-219636)
(22)【出願日】2016年11月10日
(65)【公開番号】特開2018-76444(P2018-76444A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−363479(JP,A)
【文献】 特開2018−076443(JP,A)
【文献】 特開2015−212070(JP,A)
【文献】 特開2004−143197(JP,A)
【文献】 特開2003−115482(JP,A)
【文献】 特開平07−310053(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0187113(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第2001−0062265(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 129/04
B32B 27/00
B32B 27/30
B65D 30/02
B65D 65/40
B65D 81/24
C09D 101/12
C09D 183/04
C09D 201/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、(B)成分として、テトラアルコキシシランが加水分解されたテトラアルコキシシラン加水分解物、(C)成分として、スルホン酸基含有ポリマー、及び、(D)成分として、溶媒を含有し、
前記(B)成分は、前記スルホン酸基含有ポリマーとテトラアルコキシシランとを混合した混合物を調製し、
前記混合物中で前記テトラアルコキシシランを加水分解させてなり、
以下の式1を満足し、
前記(C)成分は、スルホン酸基変性ポリビニルアルコールであり、ケン化度が80%以上である
ことを特徴とするラミネート用バリア性コーティング組成物。
(式1) WC/WB=3.5/96.5〜8.0/92.0
(式1中、WBは、前記混合物中の前記テトラアルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、前記混合物中の前記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
【請求項2】
更に、以下の式2を満足する請求項に記載のラミネート用バリア性コーティング組成物。
(式2) WC/WB=4/96〜7/93
(式2中、WBは、前記混合物中の前記テトラアルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、前記混合物中の前記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
【請求項3】
スルホン酸基含有ポリマーとテトラアルコキシシランとを混合した混合物を調製する工程と、
前記混合物中で前記テトラアルコキシシランを加水分解させる工程を有し、
以下の式1を満足する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のラミネート用バリア性コーティング組成物の製造方法。
(式1) WC/WB=3.5/96.5〜8.0/92.0
(式1中、WBは、前記混合物中の前記テトラアルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、前記混合物中の前記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
【請求項4】
少なくともベースフィルム層、バリア層、及び、ヒートシール材層をこの順に有するラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、前記バリア層が、請求項1又は2に記載のラミネート用バリア性コーティング組成物から得られるものであるラミネート用バリア性複合フィルム。
【請求項5】
更に、上記ベースフィルム層と上記ヒートシール材層との間に印刷層を有する請求項記載のラミネート用バリア性複合フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたガスバリア性、ラミネート適性及びシール強度を有するラミネート用バリア性複合フィルムを得ることができるラミネート用バリア性コーティング組成物、及び、その組成物から得られるバリア層を中間層として含むラミネート用バリア性複合フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品包装用途で利用される包装袋は、印刷による内容物表示や装飾の機能が求められ、更に、高い食品衛生性を得るという目的から、印刷層が食品や人の指等に直接触れる事がないよう、印刷層を覆うヒートシール層が積層された複合ラミネートフィルムが利用されている。また、このような複合ラミネートフィルムに熱水処理ができる機能を持たせて、袋ごと内容物の調理も簡単にできる包装袋が製造される場合が多くなっている。
【0003】
熱水処理は、殺菌効果が高く、包装袋が完全密封されている事から、内容物の腐敗を起こしにくいという点で、長期保存に有効な手段である。しかし、ガスバリア性が充分でないと、保存の間に酸素が包装袋の中に入り込み、内容物の変質や劣化が起こる。従って、熱水処理用包装袋において、いかに酸素等の透過を抑えられるかが、包装袋の価値を決める大きな要因となる。
【0004】
従来、食品、医療等の包装用途に使用される包装袋では、酸素や水蒸気等のガスを遮断するために、種々のガスバリア層を設ける方法が考えられている。とりわけ、高いガスバリア性を有する材料として利用されてきたのは、印刷基材フィルム等に蒸着方式により積層される金属(例えば、特許文献1参照)や金属酸化物(例えば、特許文献2参照)である。そして、上記の熱水処理用包装袋においても、長期保存用には、アルミニウム蒸着フィルムやアルミ自体の箔をラミネートした熱水処理用包装袋が主流になっている。しかしながら、これらの材料を利用した複合ラミネートフィルムは総じて高価である。また、透明性が要求される分野では利用できないという問題も有している。
【0005】
そこで、最近開発されている、例えば、プラスチック材料からなる基材フィルムと、該基材フィルムの片面あるいは両面に、水性ポリウレタン樹脂、水溶性高分子、および無機層状鉱物を主たる構成成分として含み、かつ、硬化剤としてイソシアネート系化合物を含むガスバリア層を設けたガスバリア性フィルム(例えば、特許文献3及び4参照)の利用が検討されている。
しかし、この技術においては、ガスバリア層を構成するためのガスバリア性コーティング組成物がイソシアネート系化合物と水を含んでおり、塗付工程においてイソシアネート系化合物が水と反応して硬化性を失いやすいという問題を有している。
また、このようなガスバリア層を有する包装袋は、乾燥状態において極めて優れたバリア性を有するが、吸湿性が高いため、熱水処理時において基材フィルム及びガスバリア層が剥離しやすいという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−318591号公報
【特許文献2】特開昭62−179935号公報
【特許文献3】特開2015−44943号公報
【特許文献4】特開2015−44944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、優れたガスバリア性、ラミネート適性、及び、シール強度を有するラミネート用バリア性複合フィルムを得ることができるラミネート用バリア性コーティング組成物、及び、その組成物から得られるバリア層を中間層として含むラミネート用バリア性複合フィルムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、研究を重ねた結果、少なくともベースフィルム層、バリア層、及び、ヒートシール材層をこの順に有するラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、バリア層を、スルホン酸基含有ポリマーとアルコキシシランとを特定の比率となるように混合し、加水分解させてなるアルコキシシランの加水分解物を含有するラミネート用バリア性コーティング組成物により設けることで上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
即ち、本発明は、(A)成分として、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、(B)成分として、アルコキシシランが加水分解されたアルコキシシラン加水分解物、(C)成分として、スルホン酸基含有ポリマー、及び、(D)成分として、溶媒を含有し、上記(B)成分は、上記スルホン酸基含有ポリマーとアルコキシシランとを混合した混合物を調製し、上記混合物中で上記アルコキシシランを加水分解させてなり、以下の式1を満足することを特徴とするラミネート用バリア性コーティング組成物に関する。
(式1) WC/WB=3.5/96.5〜8.0/92.0
(式1中、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
また、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、上記(C)成分は、スルホン酸基変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。
また、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、上記(B)成分は、テトラアルコキシシランの加水分解物であることが好ましい。
また、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、更に、以下の式2を満足することが好ましい。
(式2) WC/WB=4/96〜7/93
(式2中、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
また、本発明は、スルホン酸基含有ポリマーとアルコキシシランとを混合した混合物を調製する工程と、上記混合物中で上記アルコキシシランを加水分解させる工程を有し、以下の式1を満足する製造方法でもある。
(式1) WC/WB=3.5/96.5〜8.0/92.0
(式1中、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
また、本発明のラミネート用バリア性複合フィルムは、少なくともベースフィルム層、バリア層、及び、ヒートシール材層をこの順に有するラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、上記バリア層が、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物から得られるものであるラミネート用バリア性複合フィルムでもある。
また、本発明のラミネート用バリア性複合フィルムは、上記ベースフィルム層と上記ヒートシール材層との間に印刷層を有するものが好ましい。
【0010】
以下、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物及びその組成物から得られるバリア層を有するラミネート用バリア性複合フィルムについて詳細に説明する。
【0011】
〔ラミネート用バリア性コーティング組成物〕
先ず、本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物について説明する。
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、(A)成分として、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、(B)成分として、アルコキシシランが加水分解されたアルコキシシラン加水分解物、(C)成分として、スルホン酸基含有ポリマー、及び、(D)成分として、溶媒を含有し、上記(B)成分は、上記スルホン酸基含有ポリマーとアルコキシシランとを混合した混合物を調製し、上記混合物中で上記アルコキシシランを加水分解させてなり、以下の式1を満足することを特徴とするラミネート用バリア性コーティング組成物に関する。
(式1) WC/WB=3.5/96.5〜8.0/92.0
(式1中、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
【0012】
上記カルボニル基変性ポリビニルアルコールとしては、平均重合度が100〜5000であるものが好ましく、平均重合度が200〜2500であるものがより好ましい。
上記カルボニル基変性ポリビニルアルコールを得る方法としては、例えば、酢酸ビニル系重合体をケン化し、その後カルボニル基変性して得られるものや、酢酸ビニル系モノマーとカルボニル基含有モノマーを共重合し、その後ケン化して得られるもの等が挙げられる。
なお、上記ケン化する際のケン化度としては、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0013】
上記酢酸ビニル系重合体としては、下記酢酸ビニル系モノマーの単独重合体、下記酢酸ビニル系モノマーと(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとの共重合体、下記酢酸ビニル系モノマーとビニルエステル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。
上記酢酸ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミスチリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、バーサテック酸ビニル等のビニルエステル系モノマー等が挙げられる。
上記カルボニル基含有モノマーとしては、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセトアセテート、ブタンジオールアクリレートアセテート等が挙げられる。
上記カルボニル基変性ポリビニルアルコールの市販品としては、DF−05、DF−17、DF−20(日本酢ビ・ポバール社製)等が挙げられる。
【0014】
上記(D)溶媒(溶剤)は、上記(A)成分のカルボニル基変性ポリビニルアルコール、及び、上記(C)成分のスルホン酸基含有ポリマーを溶解し得るものであれば、水性及び非水性のどちらの溶剤でも使用できる。
上記(D)溶媒(溶剤)としては、水と低級アルコールとの混合溶剤を用いることが好ましい。
具体的には、水と、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数2〜4の低級アルコールの少なくとも1種を15〜70質量%含む混合溶剤を使用すると、カルボニル基変性ポリビニルアルコールの溶解性が良好となり、適度な固形分を維持するためにも好適である。
上記混合溶剤中の炭素数2〜4の低級アルコールの含有量が上記範囲外であると、ラミネート用バリア性コーティング組成物の塗布適性が低下することがある。
【0015】
また、上記(B)アルコキシシランの加水分解物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類等の加水分解物が挙げられる。
なかでも、水系の溶媒中において比較的安定であることから、テトラアルコキシシラン類の加水分解物が好ましい。
なかでも、加水分解速度が大きく、また、加水分解によって発生するアルコールの乾燥性が適切であることから、テトラエトキシシランの加水分解物がより好ましい。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記アルコキシシランの加水分解物は、後述するスルホン酸基含有ポリマーと上記アルコキシシランとを混合した混合物を調製し、上記混合物中で上記アルコキシシランを加水分解させてなる。
通常、アルコキシシランの加水分解物は、安定性に乏しく、縮合反応が進行してシロキサン化合物が形成されてしまうことがあり、このようなシロキサン化合物が形成されると、溶解性が悪く加工等が困難となるといった問題がある。
しかしながら、加水分解触媒として、後述する(C)スルホン酸基含有ポリマーを用い、アルコキシシランを加水分解させてなるアルコキシシランの加水分解物は、加水分解反応に対しては優れた触媒作用を有する一方で、縮合反応を抑制するという、スルホン酸基含有ポリマーの特徴により、上述した問題が生じないので、得られるバリア性コーティング組成物の保存安定性をより向上させることができる。
ここで、上記「保存安定性」とは、得られるバリア性コーティング組成物において、上記アルコキシシランの加水分解物の縮合反応の進行に起因するゲル化等の問題が極めて生じ難いことを意味する。
なお、上記アルコキシシランの加水分解物は、上述したように、縮合反応が容易に進行してしまうので、単離して構造や特性を特定することが極めて困難である。
【0017】
上記アルコキシシランの加水分解物は、加水分解をさらに制御するために一般的に知られている触媒、塩化錫やアセチルアセトナートなどを添加してもよい。
【0018】
上記スルホン酸基含有ポリマーとしては、スルホン酸基変性ポリビニルアルコールが好ましい。
上記スルホン酸基含有ポリマーを得る方法としては、例えば、酢酸ビニル系モノマーとスルホン酸基含有モノマーを共重合し、その後ケン化して得られるものや、酢酸ビニル系モノマーとスルホン酸塩含有モノマーを共重合し、その後ケン化及びイオン交換によってスルホン酸塩をスルホン酸基に変換して得られるもの等が挙げられる。
なお、上記ケン化する際のケン化度としては、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0019】
上記酢酸ビニル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミスチリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、バーサテック酸ビニル等のビニルエステル系モノマー等が挙げられる。
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、ビニルスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸、オルトスチレンスルホン酸、メタスチレンスルホン酸、パラスチレンスルホン酸等が挙げられる。
上記スルホン酸塩含有モノマーとしては、上記スルホン酸基含有モノマーの塩等が挙げられる。
【0020】
上記スルホン酸基含有ポリマーとしては、CKS−50、L−3266(日本合成化学社製)、SK−5102(クラレ社製)、A−12SL(東亞合成社製)等の市販のスルホン酸塩含有ポリマーを、イオン交換処理等により脱塩したもの等が挙げられる。
【0021】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、下記(式1)を満足することにより、得られるラミネート用バリア性複合フィルムに、優れたガスバリア性、ラミネート適性、及び、シール強度を付与することができる。
(式1) WC/WB=3.5/96.5〜8.0/92.0
(式1中、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
上記(式1)において、WC/WBが3.5/96.5未満であると、得られるラミネート用バリア性複合フィルムのシール強度が低下し、WC/WBが8.0/92.0を超えると、得られるラミネート用バリア性複合フィルムのラミネート適性が低下する。
【0022】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、下記(式2)を満足することが好ましい。
(式2) WC/WB=4/96〜7/93
(式2中、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
【0023】
上記ラミネート用バリア性コーティング組成物において、上記カルボニル基変性ポリビニルアルコールとアルコキシシランの加水分解物とスルホン酸基含有ポリマーの合計の含有量は、ラミネート用バリア性コーティング組成物100質量%中に1〜30質量%であることが好ましい。
上記含有量が1質量%未満であると、適度の膜厚を有するバリア層を形成するために複数回の塗工が必要になる等の不利が生じることがあり、一方、上記含有量が30質量%より多くなると、流動性が低下して、塗工が困難になる等の不利が生じることがある。
上記含有量は、ラミネート用バリア性コーティング組成物100質量%中に2〜20質量%であることがより好ましい。
【0024】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物は、更に、多官能ヒドラジド化合物を含有することが好ましい。
上記多官能ヒドラジド化合物は、架橋剤として機能するものであり、上記カルボニル基変性ポリビニルアルコール及び上記アルコキシシランの加水分解物とともに使用することにより、ラミネート適性が良好なラミネート用バリア性複合フィルムを得ることができる。
【0025】
上記多官能ヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、クエン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、ヒドラジノ基変性ポリアクリルアミド等が挙げられる。
なかでも、ラミネート適性の点から、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、カルボヒドラジド、ヒドラジノ基変性ポリアクリルアミドが好ましい。
また、ガスバリア性をより高めることができる点から、カルボヒドラジド、及び、ヒドラジノ基変性ポリアクリルアミドがより好ましい。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物において、上記多官能ヒドラジド化合物の含有量は、ラミネート用バリア性コーティング組成物100質量%中に0.1〜10質量%であることが好ましい。
上記多官能ヒドラジド化合物の含有量が、0.1質量%未満であると、ラミネート強度が低下することがあり、10質量%を超えると、ボイル適性が低下することがある。
上記多官能ヒドラジド化合物の含有量は、ラミネート用バリア性コーティング組成物100質量%中に0.2〜8質量%であることがより好ましい。
【0027】
上記ラミネート用バリア性コーティング組成物は、更に他の成分として、必要に応じて、紫外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤等を1種又は2種以上加えることができる。
【0028】
〔ラミネート用バリア性コーティング組成物の製造方法〕
本発明は、上記スルホン酸基含有ポリマーとアルコキシシランとを混合した混合物を調製する工程と、上記混合物中で上記アルコキシシランを加水分解させる工程を有し、以下の式1を満足することを特徴とするラミネート用バリア性コーティング組成物の製造方法でもある。
(式1) WC/WB=3.5/96.5〜8.0/92.0
(式1中、WBは、上記混合物中の上記アルコキシシランの配合量(質量)を表し、WCは、上記混合物中の上記スルホン酸基含有ポリマーの配合量(質量)を表す。)
上記ラミネート用バリア性コーティング組成物を製造する方法としては、上記構成要件を満たせば従来公知の方法を用いることができ、例えば、テトラアルコキシシランに溶媒及びスルホン酸基含有ポリマーを加え、加熱撹拌することによってテトラアルコキシシランの加水分解物の溶液を得た後、溶媒にカルボニル基変性ポリビニルアルコールを溶解した溶液に、上記テトラアルコキシシランの加水分解物の溶液を添加し、攪拌装置や分散装置を利用して各成分を混合する方法等を挙げることができる。
【0029】
上記攪拌装置や分散装置としては、通常の撹拌装置や分散装置であれば特に限定されず、これらを用いて分散液中で各成分を均一に混合することができ、例えば、スリーワンモータ(新東科学社製)等が挙げられる。
【0030】
〔ラミネート用バリア性複合フィルム〕
次に、ラミネート用バリア性コーティング組成物から得られるバリア層を有するラミネート用バリア性複合フィルムについて説明する。
このような本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物から得られるバリア層を有するラミネート用バリア性複合フィルムもまた、本発明の一つである。
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムは、少なくともベースフィルム層、バリア層、及び、ヒートシール材層をこの順に有するものである。
【0031】
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを構成するベースフィルム層としては、例えば、従来から軟包装で使用されているポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン等からなる各種プラスチックフィルム、及びこれらの2種以上からなる複合フィルムを挙げることができ、これらのフィルムは、金属蒸着処理、コロナ放電処理、又は表面コート処理されていることが好ましい。
【0032】
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを構成するバリア層としては、上記に記載したラミネート用バリア性コーティング組成物を、各種塗工手段を用いて形成することができる。上述した成分を含むラミネート用バリア性コーティング組成物を使用することにより、熱水処理をしても、良好なバリア性を有し、ラミネート強度の低下が少ないフィルムを得ることができる。
【0033】
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを構成するヒートシール材層としては、従来から軟包装で使用されている熱融着性のシート材料であり、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。上記ヒートシール材層は、また、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンポリマー等の熱溶融ポリマーを溶融状態で積層して、冷却によりフィルム状に成形したものであってもよい。この場合、ヒートシール材層に接着層を先に設けることができないため、バリア層側に接着層を設けた後、接着層に溶融状態で上記熱溶融ポリマーを積層する方法が用いられる。
【0034】
更に、ラミネート用バリア性複合フィルムには、ベースフィルム層とバリア層の間に接着層を、バリア層とヒートシール材層の間に接着層を設けることもできる。
【0035】
ベースフィルム層とバリア層の間に設ける接着層、バリア層とヒートシール材層の間の接着層としては、従来から包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられているラミネート用接着剤組成物を適宜選択し、各種塗工手段を用いて形成することができる。ラミネート用接着剤組成物としては、例えばウレタン系、ポリエステル系、アクリル系等の各種ラミネート用接着剤、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の各種ラミネート用アンカーコート剤等を挙げることができる。
【0036】
また、ラミネート用接着剤組成物としては、アミノ基、水酸基及びカルボキシル基の少なくとも1つの官能基を有するポリウレタン樹脂を主成分とする主剤とエポキシ系硬化剤及びイソシアネート系硬化剤とからなる硬化剤とを用い、これらの材料を溶媒中に含有させた接着剤組成物も使用できる。
【0037】
上記ポリウレタン樹脂としては、例えば、高分子ポリオール化合物と有機ジイソシアネート化合物とを反応させて得られる、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、更に鎖伸長剤で鎖伸長した後、必要に応じて反応停止剤を用いて反応させる方法を用いて得られる、分子内に水酸基、アミノ基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0038】
上記有機ジイソシアネート化合物、高分子ポリオール化合物、鎖伸長剤、反応停止剤等としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、特開平06−136313号公報、特開平06−248051号公報、特開平07−258357号公報及び特開平07−324179号公報等に記載された各化合物を使用することができる。
【0039】
上記イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤としては、包装用複合ラミネートフィルムの製造に用いられている、従来公知の二液接着剤の成分であるポリイソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤を使用することができる。
【0040】
上記主剤及び硬化剤の材料を溶解又は分散させる溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。
【0041】
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムは、上記ベースフィルム層と、上記ヒートシール材層との間に印刷層を有することが好ましい。
上記印刷層(内容物表示や装飾機能のための印刷層)としては、従来から軟包装で使用されている有機溶剤型印刷インキ組成物、水性印刷インキ組成物等を、通常、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式にて印刷することにより形成することができる。
【0042】
上記有機溶剤型印刷インキ組成物としては、例えば、顔料とポリウレタン樹脂とを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物の他、特開平01−261476号公報(顔料、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレンを含む芳香族・非芳香族混合系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特公平07−113098号公報(顔料、ポリウレタン樹脂を含む非芳香族系有機溶剤性印刷インキ組成物)、特開平07−324179号公報(顔料、ポリウレタン樹脂、非芳香族系・非ケトン系有機溶剤性印刷インキ組成物)等で開示された有機溶剤性印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0043】
また、上記水性印刷インキ組成物としては、例えば、特開平06−155694号公報(顔料、アクリル系バインダー樹脂、ヒドラジン系架橋剤を含む水性印刷インキ組成物)、特開平06−206972号公報(顔料、水、ポリウレタン系バインダー樹脂を含む水性印刷インキ組成物)等で開示された水性印刷インキ組成物等が挙げられる。
【0044】
尚、最近では、環境対応インキとして、水性タイプの印刷インキ組成物や、有機溶剤系印刷インキ組成物であっても芳香族及びケトン系有機溶剤を極力使用しないタイプのものが使用されており、本発明でも、これらを好適に用いることができる。
更に、本発明のラミネート用バリア性複合フィルムにおいては、他の機能層、例えば、紫外線遮蔽層、抗菌層、バリア層以外の層同士を接着するための接着層等を有していてもよい。
【0045】
〔ラミネート用バリア性複合フィルムの製造方法〕
本発明のラミネート用バリア性複合フィルムを製造する方法としては、結果的に高いバリア性、熱水処理性、ラミネート適性、及び必要に応じて印刷により付加される装飾や表示機能を有するものであれば、どの方法であっても良いが、好ましくは、例えば以下の(a)〜(d)の方法等が挙げられる。
最も基本的な構成として、
(a)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、
(b)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記接着剤組成物、ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、
(c)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、先にインキ組成物を印刷して印刷層を形成した後、上記接着剤組成物、ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、ヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、
(d)ベースフィルム(ベースフィルムには複合フィルムも含まれる)に、上記接着剤組成物、ラミネート用バリア性コーティング組成物、接着剤組成物を順次塗工した後、インキ組成物を印刷して印刷層を形成し、更にヒートシール材層を積層することによりラミネート用バリア性複合フィルムを得る方法、等である。
【0046】
尚、上記接着剤組成物及びラミネート用バリア性コーティング組成物の塗工方法については、通常のグラビアシリンダー等を用いたロールコーティング法、ドクターナイフ法やエアーナイフ・ノズルコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法及びこれらの方法を組み合わせたコーティング法等を用いることができる。
また、印刷層を形成するには、通常、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式が使用できる。
【0047】
以上の方法から得られるラミネート用バリア性複合フィルムにおいて、接着層の膜厚(乾燥後)は、好ましくは2〜3μm、また、バリア層の膜厚(乾燥後)は、好ましくは0.1〜5μmである。
【0048】
接着層の膜厚が2μmより薄くなると、バリア層と他層との接着性が低下するおそれがあり、一方、3μmより厚くなると、膜厚の増加に見合った接着性の増加が見られず、また、ラミネート用バリア性複合フィルムを包装袋として用いたときに、良好な取扱い性を得ることができないおそれがある。また、バリア層の膜厚が0.1μmより薄くなると、高いバリア性を得ることが困難となり、一方、5μmを超えても顕著なバリア性の向上がみられず、バリア層中の無機層状化合物が多い場合に透明な塗膜を得ることが困難となる。
尚、1回の塗工により上記範囲内の膜厚を有する塗膜が得られない場合は、多数回の塗工を行うことも可能である。
【0049】
他の機能層を設ける場合も、それぞれの機能層を設けるための良好な手段と、上記(a)〜(d)の方法を組み合わせて、目的にあったラミネート用バリア性複合フィルムを製造することができる。
【0050】
以上の製造方法から得られたラミネート用バリア性複合フィルムは、ヒートシーラー等を用いて、中折りして2辺を溶封するか又は2枚のラミネート用バリア性複合フィルムを重ねて三辺を溶封して先に袋状とした後、内容物を詰め、残りの一辺を溶封して、密封された包装袋として利用することができる。そして、得られた包装袋は、食品や医療品の包装袋として利用できる。
【発明の効果】
【0051】
本発明は、上述した構成からなるので、優れたガスバリア性、ラミネート適性、及び、シール強度を有するラミネート用バリア性複合フィルムを得ることができるラミネート用バリア性コーティング組成物、及び、その組成物から得られるバリア層を中間層として含むラミネート用バリア性複合フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0053】
(バリア層を形成するためのラミネート用バリア性コーティング組成物)
<カルボニル基変性ポリビニルアルコール>
DF−17(商品名:DF−17、カルボニル基変性ポリビニルアルコール、平均重合度1700、ケン化度98.5%、日本酢ビ・ポバール社製)
【0054】
<カルボニル基変性ポリビニルアルコール水溶液の調製>
精製水900質量部にDF−17の100質量部を加え、90℃で1時間撹拌して、DF−17水溶液(固形分10%)を得た。
【0055】
<テトラアルコキシシラン>
TEOS(商品名:高純度正珪酸エチル、多摩化学工業社製)
【0056】
<スルホン酸塩含有ポリマー>
CKS−50(商品名:ゴーセネックスL CKS−50、スルホン酸ナトリウム塩含有ポリビニルアルコール、ケン化度>99%、日本合成化学社製)
L−3266(商品名:ゴーセネックスL L−3266、スルホン酸ナトリウム塩含有ポリビニルアルコール、ケン化度86.5〜89%、日本合成化学社製)
【0057】
<スルホン酸基変性ポリビニルアルコール水溶液の調製>
精製水85質量部にCKS−50の15質量部を加え、90℃で1時間撹拌して、CKS−50水溶液(固形分15%)を得た。これを室温でMonosphere 650C(カチオン交換樹脂、ダウ・ケミカル社製)の10質量部に送液し、脱塩CKS−50水溶液(固形分15%)を得た。
精製水85質量部にL−3266の15質量部を加え、90℃で1時間撹拌して、L−3266水溶液(固形分15%)を得た。これを室温でMonosphere 650C(カチオン交換樹脂、ダウ・ケミカル社製)の10質量部に送液し、脱塩L−3266水溶液(固形分15%)を得た。
【0058】
<テトラアルコキシシラン加水分解物水溶液の調製>
<テトラアルコキシシラン加水分解物水溶液の調製>
TEOS43.3質量部にエタノール18.6質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水24.8質量部及び脱塩CKS−50水溶液13.3質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(1)(TEOS由来の固形分12.5%)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール18.1質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水21.9質量部及び脱塩CKS−50水溶液16.7質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(2)(TEOS由来の固形分12.5%)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール18.6質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水24.8質量部及び脱塩L−3266水溶液13.3質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(3)(TEOS由来の固形分12.5%)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール19.3質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水27.4質量部及び脱塩CKS−50水溶液10.0質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(4)(TEOS由来の固形分12.5%)を得た。
TEOS43.3質量部にエタノール16.8質量部を加え撹拌し、そこにイオン交換水13.3質量部及び脱塩CKS−50水溶液26.7質量部を加え、50℃で1時間加熱して、TEOS加水分解物水溶液(5)(TEOS由来の固形分12.5%)を得た。
【0059】
<実施例1のラミネート用バリア性コーティング組成物>
DF−17水溶液(固形分15%)21.3質量部、イオン交換水10.7質量部、TEOS加水分解物水溶液(1)38.4質量部、エタノール29.6質量部を撹拌混合し、室温で10分撹拌して、実施例1のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0060】
<実施例2〜3、及び、比較例1〜2のラミネート用バリア性コーティング組成物>
表1の配合に従い、実施例1と同様の操作によって、実施例2〜3、及び、比較例1〜2のラミネート用バリア性コーティング組成物を得た。
【0061】
<実施例1〜3、及び、比較例1〜2のラミネート用バリア性複合フィルム(ラミネート強度、シール強度試験用)>
ナイロンフィルム(N−1102、東洋紡社製)上に実施例1〜3、及び比較例1〜2のラミネート用バリア性コーティング組成物をNo.6メイヤーバーを用いて塗工し、ドライヤーで乾燥後、60℃で12時間保持した。得られたバリア層の上に、ポリエーテル系接着剤組成物(A−969V、三井化学ポリウレタン社製)及び硬化剤(A−5、三井化学ポリウレタン社製)を用いてシーラントフィルム(LS−711C、出光ユニテック社製)を積層し、40℃で12時間保持して実施例1〜3、及び、比較例1〜2のラミネート用バリア性複合フィルム(ラミネート強度、シール強度試験用)を得た。
【0062】
<実施例1〜3、及び、比較例1〜2のラミネート用バリア性複合フィルム(酸素透過率試験用)>
ポリプロピレンフィルムフィルム(P−2161、東洋紡社製)上に実施例1〜3、及び比較例1〜2のラミネート用バリア性コーティング組成物を、メイヤーバーを用いて塗工し、ドライヤーで乾燥後、60℃で12時間保持して実施例1〜3、及び比較例1〜2のラミネート用バリア性複合フィルム(酸素透過率試験用)を得た。
【0063】
〔評価〕
(酸素透過率)
実施例1〜3、及び、比較例1〜2のラミネート用バリア性複合フィルム(酸素透過率試験用)を25℃、90%RHの雰囲気下に72時間放置後、JIS K7126 B法に準じて、酸素透過率測定装置(Mocon社製;OX−TRAN1/50、商品名)を用いて酸素透過率(OTR値)を測定した。尚、測定は、25℃において、90%RHの雰囲気下で行った。結果を表1に示す。
【0064】
(ラミネート強度)
(1)通常条件
実施例1〜3、及び、比較例1〜2の各ラミネート用バリア性複合フィルム(ラミネート強度、シール強度試験用)を15mm幅に切断し、T型剥離強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて、剥離速度300mm/minにてラミネート強度を測定した。
結果を表1に示す。
(2)水付け条件
実施例1〜3、及び、比較例1〜2の各ラミネート用バリア性複合フィルム(ラミネート強度、シール強度試験用)を15mm幅に切断した各試料片の剥離面に水を付けた脱脂綿を当てながら、T型剥離強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて、剥離速度300mm/minにて測定した。結果を表1に示す。
【0065】
(シール強度)
実施例1〜3、及び、比較例1〜2の各ラミネート用バリア性複合フィルム(ラミネート強度、シール強度試験用)を、インパルスシーラー(富士インパルスシーラ社製)を用いて製袋し、シール強度を剥離試験機(安田精機社製)を用いて剥離速度300mm/minにて測定した。結果を表1に示す。
なお、表1のシール強度評価欄において「△」とは、三角剥離が発生した、すなわちフィルムが破断せず、シーラントフィルムがナイロンフィルムから持ち上がるように、三角形状に剥離した事を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例のラミネート用バリア性複合フィルムは、高湿度下で放置した後でもバリア性が優れていると同時に、ラミネート強度、及びシール強度にも優れていた。
一方、比較例では、これらすべての性能に優れたものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のラミネート用バリア性コーティング組成物及びそれを用いたラミネート用バリア性複合フィルムは、食品包装用途で利用される包装袋(特に熱水処理用包装袋)や、医療品の包装袋に好適に適用できる。