(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857013
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】LED硬化型防湿絶縁コート剤
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20210405BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20210405BHJP
C09D 5/25 20060101ALI20210405BHJP
C08F 290/04 20060101ALI20210405BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20210405BHJP
H01B 3/30 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/63
C09D5/25
C08F290/04
H01B3/44 A
H01B3/30 M
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-225619(P2016-225619)
(22)【出願日】2016年11月21日
(65)【公開番号】特開2018-83853(P2018-83853A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田代智史
【審査官】
桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/157624(WO,A1)
【文献】
特開2008−280414(JP,A)
【文献】
特開2014−201593(JP,A)
【文献】
特開2016−181370(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/118655(WO,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104093761(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/02
C08F 290/04
C09D 5/25
C09D 7/63
H01B 3/30
H01B 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添ポリブタジエンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜20,000であるウレタンアクリレート(A)と、少なくとも非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーと脂肪族環状骨格を含む(メタ)アクリレートモノマーと直鎖アルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーを含む光重合性単官能モノマー(B)と、380nm以上の波長で吸収帯域を持つ開始剤(C)と、を含む光硬化性樹脂組成物であって、非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量が組成物全体に対し0.5〜8重量%で、(C)成分の含有量が(A)成分と(B)成分の合計100重量に対し9〜15重量%であるLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項2】
前記(B)の配合量が、(A)と(B)の組成物合計に対し60〜75重量%であることを特徴とする請求項1記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2いずれか記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を用いて絶縁処理されることを特徴とする実装回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載する回路基板で用いられる防湿絶縁コート剤であり、より詳しくは、LED(発光ダイオード)光源により短時間で硬化が可能で絶縁信頼性に優れ、皮膚への刺激性が低い特性を有する組成物と、それを用いて絶縁処理した実装回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスエポキシ、紙フェノール、ポリイミド等の基材に代表されるプリント配線板へ半導体等の電子部品を実装する際に、その接続部には接続信頼性を高めるため防湿絶縁コート剤が塗布される場合がある。従来このコート剤には熱硬化樹脂の使用、あるいは有機溶剤に溶解した樹脂を塗布後に乾燥する方法が一般的であった。しかし熱硬化樹脂の場合は樹脂硬化に加熱工程が必要で硬化時間がかかるため生産性に問題があり、有機溶剤を使用する樹脂は塗布時に溶剤を揮発させるため環境への負荷が高いという問題が有った。
【0003】
こうした問題を解決すべく、短時間で硬化が可能な紫外線硬化性コート剤が開発されてきた。例えば特許文献1では末端がアクリロキシ基またはメタクリロキシ基であるポリブタジエンと、不飽和二重結を有する単量体と重合開始剤を含有する組成物が開示されている。また更に、透湿度が小さく基板材料に対して充分な接着性を持つコート剤として、特許文献2では水添ポリブタジエンジオールから合成したエチレン性不飽和二重結合を有するウレタン化合物と、イソボルニルアクリレートとベンゾフェノンを含む組成物が開示されている。しかしながらこれら組成物は、ON/OFFの応答性が良く、また長寿命であるため近年急増しているLED光源には、硬化性が不十分という課題があった。更に反応性希釈剤やモノマーの種類によっては、皮膚がかぶれる問題があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐179655号公報
【特許文献2】特許第5162893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電子部品を搭載する回路基板で用いられる防湿絶縁コート剤で、照射する光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能で、絶縁信頼性に優れ、また皮膚への刺激性が低い特性を有する組成物であると共に、それを用いて絶縁処理した回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、水添ポリブタジエンジオールから合成された数平均分子量が1,000〜20,000であるウレタンアクリレート(A)と、少なくとも非環状(メタ)アクリルアミド系モノマー
と脂肪族環状骨格を含む(メタ)アクリレートモノマーと直鎖アルキル基を含む(メタ)アクリレートモノマーを含む光重合性単官能モノマー(B)と、380nm以上の波長で吸収帯域を持つ開始剤(C)と、を含む光硬化性樹脂組成物であって、非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量が組成物全体に対し0.5〜8重量%で、(C)成分の含有量が(A)成分と(B)成分の合計100重量に対し9〜15重量%であるLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0007】
請求項2記載の発明は、
前記(B)の配合量が、(A)と(B)の組成物合計に対し60〜75重量%であることを特徴とする請求項1記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を提供する。
【0008】
請求項3記載の発明は、
請求項1又は2いずれか記載のLED硬化型防湿絶縁コート剤組成物を用いて絶縁処理されることを特徴とする実装回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防湿絶縁コート剤は、防湿および絶縁特性に優れ、特に照射する光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能な紫外線硬化型の樹脂組成物で、皮膚への刺激性が低い特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の組成物の構成は、水添ポリブタジエンジオールから合成されたMn.が1,000〜20,000であるウレタンアクリレート(A)と少なくとも非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む光重合性単官能モノマー(B)と380nm以上の波長で吸収帯域を持つ開始剤(C)である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの双方を包含する。
【0014】
本発明の水添ポリブタジエンジオールから合成されたMn.が1,000〜20,000であるウレタンアクリレート(A)は、防湿絶縁層を構成するベースオリゴマーであり、ポリオールに、複数のイソシアネート基を有する化合物、および水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる。使用するポリオールは、透湿度が低く絶縁性に優れまた成形皮膜に適度な柔軟性を付与する水添ポリブタジエン系である。Mn.が1,000未満では得られる硬化物の粘着性が強く表面にべとつき感が残り、20,000を超えると組成物の粘度が高くなり、作業性に悪影響を及ぼす。数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー法により、スチレンジビニルベンゼン基材のカラムでテトラハイドロフラン展開溶媒を用いて、標準ポリスチレン換算の分子量を測定・算出した。
【0015】
本発明で使用される(A)の原料である、複数のイソシアネート基を持つ化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートがあり、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、イソホロンジイソシアネートが好ましい。また水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがあり、これらの中では2-ヒドロキシエチルアクリレート好ましい。
【0016】
(A)の配合量は、(A)と(B)の組成物合計に対し、硬化物の透湿度と組成物の特性バランスから25〜40重量%が好ましく、30〜35重量%である事がより好ましい。25重量%以上とすることで透湿度を安定して低くすることができ、40重量%以下とすることで粘度が高くなりすぎず作業性が安定する。市販の水添ポリブタジエン骨格を持つウレタンクリレートとしてはExcelateRX71−44(商品名:亜細亜工業社製、数平均分子量3,000)、RX71−67(商品名:亜細亜工業社製、数平均分子量13,000)などがある。
【0017】
本発明で使用される少なくとも非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む光重合性単官能モノマー(B)は、(A)を希釈すると同時に(A)と反応して皮膜硬度を上げるために配合される。皮膚への刺激性を抑えるため非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーを必須成分とし、その他のモノマーとしては基材との密着力、透湿性、(A)との相溶性など観点から、脂肪族環状骨格を含む(メタ)アクリレートモノマーと、直鎖アルキル基を含む(メタ)アクリレートノマーであることが好ましい。また皮膚への刺激性を抑えるためPII値(一次刺激性インデックス)は2.5以下であることが好ましい。
【0018】
非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーの配合量は、組成物全体に対し0.5〜8重量%であり、0.8〜5重量%が更に好ましい。0.5重量%未満では組成物全体の極性が低くなるため剥離強度が低下し、8重量%超では相溶性のバランスが崩れ相分離を引き起こす。更に(B)全体に対する非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーは、0.5〜10重量%が好ましく、1〜7重量%が更に好ましい。0.5重量%以上で皮膚への刺激性を低減でき、10重量%以下とすることで他成分との充分な相溶性を確保し、相分離を起こすことなく良好な保存安定性を確保することができる。
【0019】
(B)の配合量は、(A)と(B)の組成物合計に対し、皮膜強度と粘度等の特性バランスから60〜75重量%が好ましく、65〜70重量%が更に好ましい。60重量%以上とすることで作業性に適した粘度を確保する事ができ、75重量%以下とすることで硬化収縮と硬化性の良好なバランスを取ることができる。2官能以上の多官能モノマーについては、硬化皮膜の硬度が高くなりすぎ剥離強度が低下するため好ましくない。
【0020】
非環状アミノ基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチルアクリルアミド、N,N‐ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどがあげられ、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中では皮膚刺激性が低く、低臭気のヒドロキシエチルアクリルアミドが好ましい。アクリロイルモルホリンのような環状アミノ基を有する(メタ)アクリレートは、硬化した皮膜が硬くなりすぎ剥離強度が低下するため好ましくない。
【0021】
脂肪族環状骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどがあげられ、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。これらの中ではイソボルニルアクリレートが、低粘度で皮膚刺激性や臭気の観点から好ましい。
【0022】
また直鎖アルキル構造を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどがあり、これらの中では汎用性、良希釈性、低臭気、低アウトガスの観点からn-オクチルアクリレートが好ましい。
【0023】
本発明で使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの吸収でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、LEDの発光波長である380nm以上で吸収帯域をもつ特性が必要である。配合量は(A)と(B)の組成物合計100重量に対し9〜15重量%であり、9重量%未満では速硬化性が得られず表面にタックが残り、15重量%超では保存安定性で問題が起こる可能性がある。
【0024】
380nm以上で吸収帯域をもつ指標としては、アセトニトリルに0.1%溶解した(C)溶液を分光硬度計で各波長の吸収スペクトルを測定した時の380nmにおける吸収量が0.5%以上である事が望ましい。例えば2-ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)-ブタノン−1、2-ジメチルアミノ−2−(4−メチル-ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2.4.6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2.4.6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキザイドがあり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。市販品ではIrgacure379、379EG、369および369E、Lucirin TPO、Darocur4265(商品名:BASFジャパン社製)などがある。
【0025】
本組成物には必要に応じ、硬化助剤、シランカップリング剤、可塑剤、増感剤、酸化防止剤、老化防止剤、消泡剤、難燃剤、充填剤、重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、分散剤、チクソ付与剤などの添加剤も併用することができる。
【0026】
本発明の実装回路基板は、半導体やフラットパネルディスプレイ、抵抗等の電子デバイスが実装されたプリント配線板に、本組成物を塗布して接合部分の絶縁処理をすることで得られる。本組成物のプリント配線板への塗布方法としては特に指定はなく、刷毛塗り法、スプレー法、浸漬法、ディスペンサーによる塗布法等、公知の方法を使用できる。塗布後はLEDを光源とした紫外線を照射することにより皮膜を硬化し、実装回路基板が得られる。また紫外線照射の光源としては、LEDに限らず高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の公知の光源を用いても良い。
【0027】
本組成物は皮膚への刺激性が非常に低いと言う特徴がある。反応性のオリゴマーやモノマーには皮膚や粘膜に対し刺激性を持つものがあり、たとえ低い刺激性であっても、長時間の暴露では実際の生産現場で問題となる場合がある。一般に化学物質が皮膚に触れた場合、分子量の小さいものは皮膚への浸透性が高いため影響が大きく、また極性の大きいものの方がより刺激性が高い傾向がある。本発明は、モノマーの一次刺激性インデックス(PII値)を参考にしており、実際の生産ラインで3ヶ月以上の長期間使用しても問題が無い。
【0028】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
【0029】
実施例1
水添ポリブタジエンジオールから合成されたMn.が1,000〜20,000であるウレタンアクリレート(A)としてExcelateRX71−44(商品名:亜細亜工業社製、Mn.3,000 )を、光重合性単官能モノマー(B)としてHEAA(商品名:KJケミカルズ社製、ヒドロキシエチルアクリルアミド、PII値0)およびIB−XA(商品名:共栄社化学社製、イソボルニルアクリレート、PII値0.6)およびNOAA(商品名:大阪有機化学工業社製、n−オクチルアクリレート、PII値0.7)を、開始剤(C)としてIrgacure379EG(商品名:BASFジャパン社製、380nmの波長吸収率が1.0%)を用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し実施例1の防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0030】
実施例2〜4
実施例1で用いた材料を用い、配合量を表1のように変更し均一に溶解するまで撹拌し実施例2〜4の防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0031】
比較例1〜7
実施例で用いた材料の他、ポリテトラメチレングリコール骨格のウレタンアクリレートRX8−7(商品名:亜細亜工業社製)を、(B)として4HBA(商品名:大阪有機化学工業社製、4ヒドロキシブチルアクリレート、PII値3.0)およびACMO(商品名:KJケミカルズ社製、アクリロイルモルホリン、PII値0.5)を、開始剤としてIrgacure184(商品名:BASFジャパン社製、380nmの波長吸収率が0.1%以下)およびLucirinTPO(商品名:BASFジャパン社製、380nmの波長吸収率が1.5%)を、光増感剤としてKAYACUREDETX−S(商品名:日本化薬社製、チオキサントン系)用い、表1記載の配合で均一に溶解するまで撹拌し比較例1〜7の防湿絶縁コート剤組成物を調整した。
【0034】
表面硬化性:ガラス板上に厚さ100μmとなるよう防湿絶縁コート剤組成物を塗布し、その上からパナソニック製のLED−UV照射装置UD−40を用い、出力400mW/cm
2、積算光量が1000mJ/cm
2となる様に紫外線照射により硬化させ、皮膜表面のべたつき有無を指触で確認し、べたつき無を○、べたつきは有るが樹脂が指に付かないを△、べたつき有で樹脂が指に付くを×とした。
【0035】
粘度:東機産業製のコーンプレート型粘度計RC−550を用い、コーン角3°×R17.65で25±1℃、回転数20rpmで測定した。作業性の観点から1,000mPa・s未満を○とした、1,000mPa・s以上を×とした。
【0036】
剥離強度:ガラス板上に厚さ100μmとなるよう防湿絶縁コート剤組成物を塗布し、その上に24mm幅にカットしたPETフィルム(商品名、東洋紡製、A4300、厚み125μm)を重ね合わせ、その上から同上の条件で紫外線照射して硬化させ、当該PETフィルム端部をミネベア製の引張圧縮試験機テクノグラフ TGI-1kNを用いて180度方向にクロスヘッドスピード300mm/分で引張った際の剥離強度を測定し、剥離強度が50N/m以上を○、50N/m未満を×とした。なお紫外線の照射条件は、特別な表記が無い場合は以下も同じとする。
【0037】
マイグレーション試験:25×50mmの板ガラス上に0.6×10.2mmのエリアに描画したITO電極基板(アノード/カソード間のライン/スペース=15/15μm)上に、厚さ100μmとなるよう防湿絶縁コート剤を塗布し、同上の条件で紫外線照射して硬化させた試験片を作製し、60℃/90%RHの環境下でDC5Vを印加し、300時間経過後の絶縁抵抗変化と腐食性について評価し、目視で腐食無しを○、腐食有りを×とした。
【0038】
皮膚刺激性:モノマーのPII値が2.5以上のものを使用しない場合を○、使用した場合を×とした。
【0040】
実施例は表面硬化性、粘度、剥離強度、マイグレーション試験すべての面で問題は無く良好であった。
【0041】
一方、非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーに代えて環状アミドを配合した比較例1及びHEAAが少ない比較例3は剥離強度が劣り、開始剤(C)の配合量が9%未満の比較例2は表面硬化性が劣った。また非環状(メタ)アクリルアミド系モノマーに代えて4HBAを配合した比較例5、6,7は皮膚刺激性で問題があり、更に請求項4に非該当となる(C)を配合した比較例6、(A)以外のウレタンアクリレートを配合した比較例7は表面硬化性も劣った。またHEAAの多い比較例4は相分離を引き起こし評価ができず、いずれも本願発明に適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電子部品を搭載する回路基板で用いられる防湿絶縁コート剤で、照射する光源がLEDの場合でも短時間に硬化可能で、絶縁信頼性および皮膚への低刺激性で優れた組成物として有用である。