(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
本実施形態に係る運動案内装置10について、
図1ないし
図3を用いて説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る運動案内装置が備える軌道レールおよび移動ブロックの断面を含む正面図であり、
図2は、
図1の部分拡大図である。また、
図3は、本実施形態に係る運動案内装置が備える無限循環路を例示する断面概略図である。
【0011】
本実施形態に係る運動案内装置10は、
図1に示すように、軌道部材としての軌道レール20と、軌道レール20に複数の転動体としてのボール11を介して直線運動可能に組み付けられる移動部材としての移動ブロック30とを備える。
【0012】
軌道レール20は、縦断面視で上下面側が水平面で構成されるとともに左右面側が凹凸形状を有しており、長手方向に長く伸びて形成される部材である。軌道レール20の表面には、軌道レール20の長手方向に伸びる転動体転走面としてのボール転走溝23が形成される。本実施形態では、左右それぞれに一条のボール転走溝23が形成され、合計2条のボール転走溝23が形成される。
【0013】
ボール転走溝23の断面形状は、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝として形成される。ボール転走溝23の曲率半径はボール11の半径よりも僅かに大きく、ボール11はボール転走溝23に一点で接触する。
【0014】
軌道レール20は、
図1および
図2に示すように、その長手方向に凹部51が形成される。本実施形態に係る凹部51は、断面略倒台形状に形成されるとともに、軌道レール20を水平面に配置した状態においてボール転走溝23の下側に形成されている。
【0015】
移動ブロック30は、軌道レール20を水平面に配置した状態において、軌道レール20の上面に対向する中央部31と、中央部31の左右両側から下方に伸びて軌道レール20の左右側面に対向する一対の側壁部32とを備える。そして、移動ブロック30は、全体が鞍形状に形成される。
【0016】
移動ブロック30には、軌道レール20のボール転走溝23に対向する負荷転動体転走面としての負荷ボール転走溝33が設けられている。負荷ボール転走溝33の断面形状は、ボール転走溝23と同様に、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝として形成される。負荷ボール転走溝33の曲率半径はボール11の半径よりも僅かに大きく、ボール11は負荷ボール転走溝33に一点で接触する。
【0017】
本実施形態では、
図2に示すように、負荷ボール転走溝33がボール11を包み込んで抱きかかえる形状となっている。より詳しくは、ボール11がボール転走溝23および負荷ボール転走溝33と接触する点を結んだ線と直交する方向の線を仮想線Xとしたとき、負荷ボール転走溝33は仮想線Xを超えた部分において、ボール11を包み込んで抱えるように構成される。すなわち、仮想線Xを超えた負荷ボール転走溝33の端部は、ボール11が脱落しないように窄まって形成される。したがって、たとえ移動ブロック30を軌道レール20から取り外したとしても、ボール11が移動ブロック30から脱落することがないようになっている。
【0018】
図3に示すように、負荷ボール転走溝33と軌道レール20のボール転走溝23とで負荷ボール転走路24が形成され、負荷ボール転走路24が伸びる方向と平行に伸びる転動体戻り通路としてのボール戻り通路34が形成される。そして、負荷ボール転走路24とボール戻り通路34とを接続する方向転換路35が形成される。これら負荷ボール転走路24、ボール戻り通路34、および一対の方向転換路35により無限循環路が形成される。
【0019】
軌道レール20に対して移動ブロック30を相対的に移動させると、負荷ボール転走路24において、複数のボール11は荷重を受けながら転がり運動する。負荷ボール転走路24の一端まで転がったボール11は、一対の方向転換路35の一方側を経由した後、ボール戻り通路34に入る。ボール戻り通路34を通過したボール11は、一対の方向転換路35の他方側を経由した後、再び負荷ボール転走路24に入る。
【0020】
さて、移動ブロック30には、軌道レール20の凹部51に対応する抱え込み凸部53が形成される。本実施形態では、抱え込み凸部53は、軌道レール20の凹部51の形状に対応して略倒台形状に形成されるとともに、軌道レール20を水平面に配置した状態において負荷ボール転走溝33の下側に形成されている。そして、
図2に示すように、凹部51と抱え込み凸部53との間には隙間αが形成される。
【0021】
そして、本実施形態に係る運動案内装置10は、移動ブロック30と軌道レール20とを相対的に離間させる方向の外部荷重(逆ラジアル荷重)が一定以上加わったとき、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点が変動するとともに、凹部51と抱え込み凸部53とが接触する。そして、凹部51と抱え込み凸部53とが接触し、抱え込み凸部53が凹部51を抱え込むことで外部荷重(逆ラジアル荷重)を抱え込み凸部53および凹部51が受けることとなる。このような構成により、本実施形態に係る運動案内装置10は、軌道レール20と移動ブロック30とが分離不能となっている。
【0022】
抱え込み凸部53および凹部51が外部荷重を受け止めた後、移動ブロック30と軌道レール20とを相対的に離間させる方向の外部荷重(逆ラジアル荷重)が解除されると、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点が元に戻るとともに、凹部51と抱え込み凸部53との接触が解除されて隙間αが形成される。
【0023】
このとき、隙間αは、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点変動に適した幅に形成されることが好ましい。具体的に説明すると、隙間αは、まず、移動ブロック30と軌道レール20とを相対的に離間させる方向の外部荷重(逆ラジアル荷重)が加わっていないときに、軌道レール20に対する移動ブロック30の相対的な往復運動がスムーズに行われる寸法である必要がある。また、隙間αは、移動ブロック30と軌道レール20とを相対的に離間させる方向の外部荷重(逆ラジアル荷重)が加わることで、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点変動が発生した場合であっても、ボール11がボール転走溝23から脱落しない範囲内においては、隙間αは維持され、軌道レール20に対する移動ブロック30の相対的な往復運動がスムーズに行われる寸法である必要がある。さらに、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点変動が大きくなり、ボール11がボール転走溝23から脱落する状態となる少なくとも直前に、隙間αがゼロとなって抱え込み凸部53および凹部51が外部荷重を受け止める必要がある。そのような条件を満たすように、隙間αを設定することで、運動案内装置としての本来の案内機能を維持しつつも、軌道レール20と移動ブロック30とが分離不能である本実施形態に係る運動案内装置10が実現可能となる。
【0024】
なお、本実施形態に係る運動案内装置10では、ボール転走溝23および負荷ボール転走溝33がサーキュラーアーク溝として形成されているため、上述した接点変動がスムーズに行われるとともに、凹部51および抱え込み凸部53の接触・非接触がスムーズに行われるように構成されている。
【0025】
以上、本実施形態に係る運動案内装置10の基本的な構成について、説明した。次に、本実施形態に係る運動案内装置10の具体的な適用例である、実施例に係る運動案内装置100について、
図4ないし
図13を用いて説明する。ここで、
図4は、実施例に係る運動案内装置を示す外観斜視図であり、
図5は、実施例に係る運動案内装置を示す正面図であり、さらに、
図6は、実施例に係る運動案内装置を示す側面図である。また、
図7は、実施例に係るベース部材を示す外観斜視図である。さらに、
図8は、実施例に係る軌道レールを示す図である。また、
図9は、実施例に係る軌道レールのベース部材への固定方法を説明するための図であり、
図10は、実施例に係る軌道レールがベース部材に固定された状態を示す外観斜視図である。さらに、
図11は、実施例に係る運動案内装置が備える軌道レールおよび移動ブロックの断面を含む正面図である。また、
図12は、実施例に係る移動ブロックの分解図である。さらに、
図13は、実施例に係るブレーキピンによる移動ブロックの固定・固定解除の方法を説明するための図であり、
図13中の分図(a)は、移動ブロックが固定された状態を示す図であり、
図13中の分図(b)は、移動ブロックの固定が解除された状態を示す図である。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0026】
[実施例に係る運動案内装置100]
実施例に係る運動案内装置100は、
図4ないし
図6に示すように、ベースとなるベース部材12と、軌道部材としての軌道レール20と、軌道レール20と複数のボール11を介して直線移動可能に取り付けられる移動ブロック30とを備える。
【0027】
ベース部材12には、
図7に示すように、軌道レール20を固定するための固定孔16と、後述するブレーキピン43を挿入可能な挿入孔19が形成される。また、これら固定孔16と挿入孔19は、ベース部材12の長手方向に対して交互に複数形成されている。
【0028】
軌道レール20は、上述した実施形態と同様に、
図8ないし
図10に示すように、その長手方向に凹部51が形成される。本実施例に係る凹部51は、断面略倒台形状に形成されるとともに、軌道レール20をベース部材12に配置した状態においてボール転走溝23の下側に形成されている。軌道レール20には、
図8に示すように、軌道レール20をベース部材12に固定するための固定孔21が形成される。この固定孔21は、軌道レール20をベース部材12に固定するためだけではなく、後述するブレーキピン43が挿入されて移動ブロック30を固定状態にするための固定手段としても機能する。そして、軌道レール20のボール転走溝23の断面形状は、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝として形成される。
【0029】
さらに、本実施例に係る軌道レール20は、
図8に示すように、固定孔21が形成される箇所の側面に切欠き部22を有して形成される。この切欠き部22を有することにより、本実施例では、塵芥などが固定孔21に侵入した場合に、当該塵芥などを切欠き部22から排出することができるようになっている。したがって、本実施例に係る運動案内装置100は、塵芥等の影響を受けることなく、軌道レール20に対する移動ブロック30のスムーズな相対的移動が維持されることとなる。
【0030】
軌道レール20は、
図9に示すように、軌道レール20に形成される固定孔21およびベース部材12に形成される固定孔16にボルト21aを挿入して締結することにより、
図10に示すように、ベース部材12に対して固定設置される。
【0031】
移動ブロック30には、
図4ないし
図6に示すように、一対の蓋体としてのエンドプレート37と、移動ブロック30の移動方向の前後両端に設けられる蓋部材としてのカバープレート39と、他部材と移動ブロック30とを接合するためのアダプタープレート41と、移動ブロック30の固定および固定解除を行うためのブレーキピン43とが設けられる。
【0032】
本実施例に係る移動ブロック30は、
図12に示すように、軌道レール20をベース部材12に配置した状態において軌道レール20の上面に対向する中央部31に、アダプタープレート41を設置するためのアダプタープレート設置部31aが形成される。アダプタープレート設置部31aは、
図11で示されるように、縦断面視において略逆T字形をした溝形状部として形成される部位である。一方、アダプタープレート41は、縦断面視において略逆T字形をしたアダプタープレート設置部31aの形状に対応して、こちらも縦断面視において略逆T字形をした外郭形状を有している。したがって、アダプタープレート設置部31aの略逆T字形をした溝形状部に対して、アダプタープレート41の略逆T字形をした外郭形状が嵌まり込むように、アダプタープレート41をアダプタープレート設置部31aの長手方向に向けて、つまり、
図12における紙面右上から紙面左下に向けてスライドさせながら挿入することで、アダプタープレート41をアダプタープレート設置部31aに対して設置することが可能となっている。また、アダプタープレート設置部31aに挿入されたアダプタープレート41は、略逆T字形をした溝形状部と外郭形状の作用によって、容易に分離できない形態となっている。したがって、アダプタープレート設置部31aとアダプタープレート41とを固定接続するボルト(詳細は後述する)が万一外れたとしても、アダプタープレート設置部31aとアダプタープレート41とは容易に分離しないので、実施例に係る運動案内装置100は、非常に安全性の高い装置構成となっている。このように、本実施例に係る移動ブロック30は、外部部材を取り付けるためのアダプタープレート41と、アダプタープレート41を設置するためのアダプタープレート設置部31aと、を備えており、アダプタープレート設置部31aが溝形状部を有するとともに、アダプタープレート41が前記溝形状部と相似形の外郭形状を有することで、アダプタープレート設置部31aに対してアダプタープレート41がスライド挿入可能に構成されているが、アダプタープレート41に対して溝形状部を形成するとともに、アダプタープレート設置部31aに対して前記溝形状部と相似形の外郭形状を形成するようにしてもよい。
【0033】
また、
図12に示すように、移動ブロック30の側壁部32には、エンドプレート37を固定するための固定孔32aが形成される。さらに、移動ブロック30の中央部31には、カバープレート39を固定するための固定孔31bと、アダプタープレート41を固定するための固定孔31cと、ブレーキピン43を挿入するための挿入孔31dとが形成される。
【0034】
移動ブロック30には、上述した実施形態と同様に、
図11に示すように、軌道レール20の凹部51に対応する抱え込み凸部53が形成される。本実施例では、抱え込み凸部53は、軌道レール20の凹部51の形状に対応して略倒台形状に形成されるとともに、軌道レール20をベース部材12に配置した状態において負荷ボール転走溝33の下側に形成されている。また、軌道レール20の凹部51と、移動ブロック30の抱え込み凸部53との間には隙間αが形成される(
図2参照)。なお、この隙間αは、上述した実施形態と同様に、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点変動に適した幅に形成される。移動ブロック30の負荷ボール転走溝33の断面形状は、ボール転走溝23と同様に、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝として形成される。
【0035】
移動ブロック30に対して軌道レール20から相対的に離間させる方向の外部荷重(逆ラジアル荷重)が一定以上加わったとき、本実施例に係る運動案内装置100では、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点が変動するとともに、凹部51と抱え込み凸部53とが接触する。そして、凹部51と抱え込み凸部53とが接触し、抱え込み凸部53は凹部51を抱え込むことで、外部荷重(逆ラジアル荷重)を抱え込み凸部53および凹部51が受けるように構成されている。このような構成により、本実施例に係る運動案内装置100は、軌道レール20と移動ブロック30とが分離不能となっている。そして、抱え込み凸部53および凹部51が外部荷重を受け止めた後、外部荷重の影響が解除されると、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点が元に戻るとともに、凹部51と抱え込み凸部53との接触が解除されて隙間αが形成され、本実施例に係る運動案内装置100の初期状態が回復される。
【0036】
本実施例に係る運動案内装置100は、ボール転走溝23および負荷ボール転走溝33がサーキュラーアーク溝として形成されているため、上述した接点変動がスムーズに行われるとともに、凹部51および抱え込み凸部53の接触・非接触がスムーズに行われるように構成されている。
【0037】
さらに、エンドプレート37は、
図12に示すように、移動ブロック30に固定するための固定孔37aを有して形成される。この固定孔37aと、移動ブロック30の側壁部32に形成されるエンドプレート37を固定するための固定孔32aとにボルトを挿入して締結することにより、一対のエンドプレート37が移動ブロック30の移動方向の前後両側に設置される。そして、エンドプレート37内には、上述した無限循環路を構成する方向転換路35が形成される。なお、本実施例に係るエンドプレート37は、正面視略矩形状となっている。
【0038】
カバープレート39は、
図5に示すように、軌道レール20を覆うように正面視略H字形状に形成される部材である。また、カバープレート39は、
図12に示すように、移動ブロック30に固定するための固定孔39aを有して形成される。カバープレート39は、固定孔39aと、移動ブロック30の中央部31に形成されるカバープレート39を固定するための固定孔31bとにボルトを挿入して締結することにより、移動ブロック30の移動方向の前後両端に設置される。カバープレート39には、
図5に示すように、軌道レール20の凹部51に対応する蓋部材抱え込み凸部としてのカバープレート抱え込み凸部54が形成される。本実施例では、カバープレート抱え込み凸部54は、軌道レール20をベース部材12に配置した状態においてカバープレート39の下端に、軌道レール20の凹部51の形状に対応して略倒台形状に形成されている。カバープレート39は、移動ブロック30を軌道レール20に設置する際に、エンドプレート37が軌道レール20に当ってしまうことを防ぐとともに、移動ブロック30の設置を案内するといった機能を発揮する。
【0039】
アダプタープレート41は、移動ブロック30の中央部31に形成される固定孔31cに対応する固定孔41aと、外部部材を取り付けるための取付孔41bと、ブレーキピン43を挿入するための挿入孔42とを備える。アダプタープレート41は、
図11および
図12に示すように、アダプタープレート41をアダプタープレート設置部31aに対してスライド挿入した状態で、移動ブロック30の中央部31に形成される固定孔31cと、アダプタープレート41に形成される固定孔41aとにボルトを挿入して締結することにより、アダプタープレート41が移動ブロック30のアダプタープレート設置部31aに固定設置される。また、アダプタープレート41には、ブレーキピン43が樹脂製のブッシュ44を介して挿入孔42に挿入される。
【0040】
ブレーキピン43は、
図12および
図13中の分図(a)に示すように、アダプタープレート41の挿入孔42と、移動ブロック30の挿入孔31dと、軌道レール20の固定孔21とに挿入されて移動ブロック30を固定する。なお、ブレーキピン43は、アダプタープレート41の挿入孔42、移動ブロック30の挿入孔31d、および軌道レール20の固定孔21に加え、ベース部材12に形成される挿入孔19にまで挿入しても良い。そして、
図13中の分図(a)に示される固定状態から、
図13中の分図(b)に示すように、ブレーキピン43を持ち上げて、ブレーキピン43の軌道レール20に形成される固定孔21への挿入を解除すると、移動ブロック30は軌道レール20に対する固定状態が解除されて相対移動可能となる。本実施例では、樹脂製のブッシュ44を介してブレーキピン43が挿入孔42,31dに挿入されているので、ブレーキピン43をスムーズに上下に動かすことができ、軌道レール20に対する移動ブロック30の固定・固定解除動作をスムーズに行うことが可能となっている。
【0041】
また、ブレーキピン43の下方側の先端部周辺には、テーパー形状をしたテーパー凸部43aが形成されており、このテーパー凸部43aは、ブレーキピン43が挿入孔42,31dに挿入される際のガイドとして機能するとともに、挿入孔42,31dからブレーキピン43が簡単に抜けないようにするためのブレーキとしての機能も発揮できるように構成されている。なお、挿入孔42に対してブレーキピン43をスムーズに挿入できるようにするために、挿入孔42の孔入口周辺に面取りを施す形態を採用することも好ましい。
【0042】
上記の構成により、本実施例に係る運動案内装置100は、移動ブロック30を軌道レール20の所望の位置で固定することができるとともに、当該固定を解除して軌道レール20に対して移動ブロック30を相対移動させることができる。
【0043】
以上、本実施例に係る運動案内装置100の具体的な装置構成についての説明を行った。次に、実施例に係る運動案内装置100の適用例について、
図14〜
図16を用いて説明する。ここで、
図14は、実施例に係る運動案内装置が適用された座席装置を示す外観斜視図であり、
図15は、
図14に示した座席装置の前側の脚の部分および運動案内装置の拡大図であり、
図16は、
図14に示した座席装置の後側の脚の部分および運動案内装置の拡大図である。
【0044】
[実施例に係る運動案内装置100の適用例]
実施例に係る運動案内装置100は、
図14に示すように、例えば、航空機の座席装置200に適用することが可能である。
【0045】
座席装置200は、
図14に示すように、脚部210,215と座席部220とを有して構成される。
図15および
図16に示すように、脚部210,215は、運動案内装置100の移動ブロック30に設置されるアダプタープレート41に接合される。なお、この接合は、アダプタープレート41に形成された取付孔41bを用いることで可能となる。また、アダプタープレート41に対して様々な形状の外部部材(脚部210,215)を取り付けることができるように、実施例に係る運動案内装置100を構成する移動ブロック30の中央部31には、取付孔41bの周辺空間を空けることで前記外部部材(脚部210,215)が傾動可能となるように、中央部31の両側壁の上方側を切り欠くようにして形成された逃し形状部31eが設けられている。逃し形状部31eは、中央に位置する直線部分と、この直線部分の両側に位置する2つの曲線部分とによって形成されており、例えば、航空機の座席装置200の脚部210,215が折り畳み可能な可動式の場合においても、当該脚部210,215の傾動動作を阻害することがないような形状となっている。なお、本実施例に係る逃し形状部31eは、中央に位置する直線部分と、この直線部分の両側に位置する2つの曲線部分とによって形成されており、略長円形を半分に割った形状が採用されている。ただし、本発明に係る逃し形状部の形状については、脚部210,215のような外部部材の傾動動作を阻害することがなければどのような形状を採用してもよい。例えば、
図16に示す取付孔41bに設置される外部部材(脚部215)における取付孔41bとの設置箇所での外部部材(脚部215)の外形寸法が(L)であるとしたときに、中央部31の両側壁の上方側で切り欠かれた逃し形状部の切り欠き形状寸法(L1)が、(L1)>(L)となるように構成することが好ましい。このような形態の逃し形状部31eが形成されることで、アダプタープレート41に対する外部部材の取り付けを移動ブロック30が阻害することがなくなる。したがって、本実施例では、あらゆる形式の外部部材の取り付けが可能な運動案内装置100が実現できるという効果を得ることができる。
【0046】
図16で示すように、座席装置200の後側の脚部215が接合される運動案内装置100の移動ブロック30は、ブレーキピン43がアダプタープレート41に形成される挿入孔42や移動ブロック30に形成される挿入孔31dに挿入されている。一方、
図15で示すように、座席装置200の前側の脚部210が接合される運動案内装置100の移動ブロック30は、ブレーキピン43がアダプタープレート41に形成される挿入孔42や移動ブロック30に形成される挿入孔31dに挿入されていない場合が例示されている。ただし、後側の脚部215が接合される移動ブロック30の挿入孔42,31dに対して、ブレーキピン43を挿入することとしてもよい。また、後側の脚部215が接合される移動ブロック30の挿入孔42,31dにブレーキピン43を挿入し、前側の脚部210が接合される移動ブロック30の挿入孔42,31dにブレーキピン43を挿入しない構成を採用してもよい。
【0047】
この座席装置200では、後側の脚部215が接合されるアダプタープレート41の挿入孔42と、移動ブロック30に形成される挿入孔31dと、軌道レール20に形成される固定孔21とにブレーキピン43を挿入することで、後側の脚部215が軌道レール20に固定される。そして、座席装置200は、後側の脚部215が軌道レール20に固定されることで装置全体が軌道レール20に固定される。
【0048】
また、後側の脚部215が接合されるアダプタープレート41の挿入孔42と、移動ブロック30に形成される挿入孔31dと、軌道レール20に形成される固定孔21とに挿入されているブレーキピン43を持ち上げて、ブレーキピン43の軌道レール20に形成される固定孔21への挿入を解除することで、移動ブロック30および後側の脚部215は、移動ブロック30の移動方向に移動可能となる。そして、座席装置200は、ブレーキピン43の軌道レール20に形成される固定孔21への挿入が解除されることで固定が解除され、装置全体が軌道レール20に対して移動可能となる。
【0049】
以上より、本実施例に係る座席装置200によれば、脚部210,215および座席部220を軌道レール20の所望の位置に移動・固定することが可能である。
【0050】
そして、座席装置200では、運動案内装置100の移動ブロック30と脚部210とを接合することにより、例えば、衝撃荷重が座席装置200に加わった場合、上述したように、運動案内装置100のボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点が変動するとともに、凹部51と抱え込み凸部53とが接触して、抱え込み凸部53が凹部51を抱え込むことで、移動ブロック30を軌道レール20から離間させる方向の衝撃荷重(逆ラジアル荷重)を抱え込み凸部53および凹部51が受けることとなる。このような構成により、座席装置200では、軌道レール20と移動ブロック30に接合される脚部210,215とが分離不能となっている。そして、抱え込み凸部53および凹部51が衝撃荷重を受け止めた後に、ボール11とボール転走溝23および負荷ボール転走溝33の接点が元に戻ると、凹部51と抱え込み凸部53との接触が解除されて隙間αが形成され、運動案内装置100と座席装置200の初期状態が回復することとなる。
【0051】
このように、運動案内装置100は、衝撃荷重を受けても軌道レール20と移動ブロック30とが分離しないため、軌道レール20と移動ブロック30に接合された脚部210,215が分離しないこととなる。したがって、本実施例に係る運動案内装置100によれば、外部からの衝撃荷重を受けない通常状態のときには、脚部210,215および座席部220をスムーズに移動することが可能であるため利便性が非常に高く、さらに、外部からの衝撃荷重を受けた非常時状態のときには、軌道レール20と移動ブロック30および移動ブロック30に接合される脚部210,215が分離しないため、極めて安全性が高い座席装置200を提供することが可能となっている。
【0052】
以上、実施例に係る運動案内装置100の適用例の一つである座席装置200について説明した。本実施形態および本実施例に係る運動案内装置10,100は、上述したように、軌道レール20に形成される凹部51と移動ブロック30に形成される抱え込み凸部53とが、外部荷重を適切に受けることができるので、強い外部荷重が加わる可能性がある装置に対して好適に適用することが可能である。また、従来技術では、強い外部荷重に耐えられるように運動案内装置を大きくしていたが、上述した運動案内装置10,100によれば、軌道レール20に形成される凹部51と移動ブロック30に形成される抱え込み凸部53とを形成すれば外部荷重を好適に受けることができるので、運動案内装置の大きさを大きくすることなくコンパクトにすることが可能である。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、軌道レール20の長手方向に凹部51が形成され、移動ブロック30には当該凹部51に対応する抱え込み凸部53が形成されているが、軌道レール20の長手方向に凸部を形成する一方、移動ブロック30には当該凸部に対応する抱え込み凹部を形成することとしてもよい。なお、カバープレート39を設置する場合も同様に、軌道レール20に形成される凸部に対応する蓋部材抱え込み凹部としてのカバープレート抱え込み凹部をカバープレート39に形成することとしてもよい。
【0055】
また例えば、上述した実施例に係るアダプタープレート41において、
図17で示すように、アダプタープレート41の底面側に挿入溝41cを形成しておき、アダプタープレート41をアダプタープレート設置部31aに対してスライドさせながら挿入する際に、挿入溝41cの内壁がブッシュ44に対して所定の位置で突き当たって接触するように構成することができる。
図17で示すような挿入溝41cを形成することで、アダプタープレート設置部31aに対するアダプタープレート41の挿入時の位置決めが、挿入溝41cの内壁とブッシュ44との突き当り接触によって可能となり、アダプタープレート設置部31aに対するアダプタープレート41のボルトによる取り付け作業が容易化し、好ましい。なお、
図17は、実施例に係るアダプタープレートの改良形態を例示する図である。
【0056】
また例えば、上述した実施例では、アダプタープレート41が移動ブロック30とは別に設けられているが、移動ブロック30と一体形成することも可能である。
【0057】
また例えば、上述した実施例では、
図12等で示したように、移動ブロック30の移動方向の前後両端に設けられる蓋体としてのエンドプレート37と、蓋部材としてのカバープレート39とは、別部材として形成される形態が例示されていた。しかしながら、エンドプレート37とカバープレート39については、一体の部材として構成することができる。そのような変形形態を例示する図として、
図18ないし
図20を示す。ここで、
図18ないし
図20は、本発明に係る運動案内装置が取り得る多様な形態の一例を示す図であり、特に、
図18が本発明の変形形態に係る運動案内装置の要部概観斜視図であり、
図19が本発明の変形形態に係る運動案内装置の正面図であり、
図20が本発明の変形形態に係る運動案内装置のさらなる改良形態を示す正面図である。なお、以下の説明では、上述した実施形態および実施例の説明で用いた図面中の部材と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略することとする。
【0058】
図18で示すように、本発明の変形形態に係る運動案内装置300では、移動ブロック30を構成する一対の蓋部材としてのカバープレート部339と、一対の方向転換路35が形成される一対の蓋体としてのエンドプレート部337とが、一体の部材であるカバーエンドプレート340として構成されている。このカバーエンドプレート340には、上述した実施例に対してさらなる改良が施されており、例えば、
図19に示すように、カバーエンドプレート340における軌道レール20と対向する部位には、面取り形状341が形成されている。ここで、本発明のような運動案内装置では、軌道レール20から移動ブロック30を取り外してメンテナンスや調整作業、あるいは外部部材の取り付け作業等を行いたいという要請がある。このような場合、再度軌道レール20に対して移動ブロック30を取り付ける必要があり、当該取り付け作業をスムーズに行いたいという要請があった。そこで、本発明の変形形態に係る運動案内装置300では、カバーエンドプレート340における軌道レール20と対向する部位に、面取り形状341を形成することとした。この面取り形状341は、移動ブロック30における移動方向の前後両端に設けられるので、軌道レール20に対して移動ブロック30を挿入する際に、軌道レール20の外郭形状に沿うことで挿入動作の案内を行うこととなり、スムーズな取り付け作業の実現を助けることとなる。
【0059】
また、
図19で示す本発明の変形形態に係るカバーエンドプレート340の面取り形状341においては、軌道レール20に形成される転動体転走面23に対応した形状の案内部341aと、軌道レール20に形成される凹部51から離れて形成される離間部341bといった形状を有する部位として形成されている。このように、面取り形状341に対して案内部341aと離間部341bを設けることで、さらに面取り形状341が軌道レール20の外郭形状に沿うこととなり、例えば、移動ブロック30の側壁部32に形成された抱え込み凸部53が軌道レール20に形成される転動体転走面23に挿入されるといった誤挿入を好適に防止することが可能となる。
【0060】
また例えば、上述した実施例では、
図2で示したように、本実施形態に係る運動案内装置20の凹部51と抱え込み凸部53との間に形成される隙間αについては、当該隙間αを形成する凹部51と抱え込み凸部53との対向面が、運動案内装置20を縦断面で見たときに、平行に配置された二面によって形成されていた。しかし、本発明に係る運動案内装置においては、軌道レール20に組みつけられた移動ブロック30に対して及ぼされる外部荷重は、鉛直上方向に作用する逆ラジアル荷重だけではなく、軌道レール20に対して移動ブロック30が回転する方向に作用する荷重も及ぼされることとなる。つまり、外部荷重は、あらゆる方向から加わることとなるので、そのようなあらゆる方向の外部荷重に対応できる形態を採用する必要がある。そこで、本発明の変形形態に係る運動案内装置300では、凹部51と抱え込み凸部53との間に形成される隙間αについて、運動案内装置300を縦断面で見たときに、凹部51と抱え込み凸部53との間の対向面を非平行に配置した。この非平行に配置された凹部51と抱え込み凸部53との間の対向面については、例えば、
図20で示すように角度δを持った状態で対向する面として形成することができる。このような非平行に配置された二面によって隙間αを形成することで、あらゆる方向の外部荷重を受け止めることが可能となる。そのような構成を有するように隙間αを設定することで、運動案内装置としての本来の案内機能を維持しつつも、軌道レール20と移動ブロック30とが分離不能である本発明の変形形態に係る運動案内装置300が実現可能となる。
【0061】
また例えば、本発明の変形形態に係る運動案内装置300については、
図20で示すように、移動ブロック30に形成される抱え込み凸部53が、軌道レール20に形成される転動体転走面23に対して挿入不能となるような寸法形状で形成することも可能である。具体的には、軌道レール20を基準として運動案内装置30を縦断面で見たときに、転動体転走面23の最もレール内方側の面底の位置に比べて、抱え込み凸部53の最もレール内方側の先端部の位置が、寸法βだけ軌道レール20の内側に位置するように構成されている。すなわち、軌道レール20に対して左右一対形成される転動体転走面23の面底間の距離に対して、移動ブロック30に対して左右一対形成される抱え込み凸部53の先端部間の距離の方が、「2×β」分だけ短くなるように形成されているのである。かかる構成に採用によって、移動ブロック30の側壁部32に形成された抱え込み凸部53が軌道レール20に形成される転動体転走面23に挿入されるといった誤挿入を物理的に完全に防止することが可能となる。以上の構成を有することで、本発明の変形形態に係る運動案内装置300は、軌道レール20に対する移動ブロック30のスムーズな取り外し作業および取り付け作業が実施可能となっている。
【0062】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。