(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
操作部の操作を訓練する訓練シミュレータに備えられ、前記操作部を操作する訓練者の体部位に装着されて、訓練者に前記操作部の操作方向を指示する訓練シミュレータ用デバイスであって、
前記操作部の操作方向を指示する操作指示信号をシミュレータ本体から受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記操作指示信号に基づいて、訓練者の前記体部位に接触した状態で、当該操作指示信号が指示する操作方向に対応付けられた動作方向に動作する可動部と、
を備え、
訓練者の体部位のうち、前記操作部を操作する手の手首、または前記操作部を操作する足の足首に装着されることを特徴とする訓練シミュレータ用デバイス。
前記可動部は、前記操縦桿を握った状態の訓練者の手首に対し、その上下左右に位置するように4つ設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の訓練シミュレータ用デバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の航空機においては、感圧式の操縦桿を採用するものが増えてきている。感圧式の操縦桿は、従来のものに比べて動作範囲が狭く、位置が大きく動くことがない。
そのため、このような感圧式の操作部の操作を従来の訓練シミュレータによって訓練した場合、操作部をアクチュエータで動かしてもその動作変化が体感的にも視覚的にも分かりにくく、訓練者はその模範操作を理解することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、動作範囲の狭い操作部の操作訓練においても、この操作部の模範操作を訓練者が体感できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、操作部の操作を訓練する訓練シミュレータに備えられ、前記操作部を操作する訓練者の体部位に装着されて、訓練者に前記操作部の操作方向を指示する訓練シミュレータ用デバイスであって、
前記操作部の操作方向を指示する操作指示信号をシミュレータ本体から受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した前記操作指示信号に基づいて、訓練者の前記体部位に接触した状態で、当該操作指示信号が指示する操作方向に対応付けられた動作方向に動作する可動部と、
を備え
、
訓練者の体部位のうち、前記操作部を操作する手の手首、または前記操作部を操作する足の足首に装着されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の訓練シミュレータ用デバイスにおいて、
前記訓練シミュレータは航空機の操縦訓練を行うものであり、
前記操作部は操縦桿であり、
当該訓練シミュレータ用デバイスは、リストバンド状に形成されて、操縦桿を操作する訓練者の腕の手首に装着されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の訓練シミュレータ用デバイスにおいて、
円環状のデバイス本体を備え、
前記可動部は、
少なくとも前記デバイス本体の中心軸を挟んで互いに対向する二箇所に設けられ、
前記操作指示信号が指示する操作方向に対し、訓練者による前記操縦桿の傾倒操作に伴って手首のうち伸長する側の一方の可動部が訓練者の前方へ移動し、収縮する側の他方の可動部が訓練者の後方へ移動することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の訓練シミュレータ用デバイスにおいて、
前記可動部は、前記操縦桿を握った状態の訓練者の手首に対し、その上下左右に位置するように4つ設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、訓練シミュレータであって、
前記シミュレータ本体と、
前記操作部と、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の訓練シミュレータ用デバイスと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、訓練者の体部位に装着された訓練シミュレータ用デバイスの可動部が、シミュレータ本体から送信された操作指示信号に基づいて、訓練者の体部位に接触した状態で、当該操作指示信号が指示する操作部の操作方向に対応付けられた動作方向に動作する。これにより、訓練者は、操作部を操作させるべき方向を体感的に認識することができる。
したがって、動作範囲の狭い操作部の操作訓練においても、この操作部の模範操作を訓練者に好適に体感させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
[外観構成]
まず、本実施形態における訓練シミュレータ用デバイス(以下、「訓練用デバイス」という。)1の外観構成について説明する。
図1(a),(b)は、訓練用デバイス1の正面図及び側面図である。
【0016】
本実施形態における訓練用デバイス1は、航空機の操縦訓練を行う訓練シミュレータ100に備えられ、操縦桿(コントロールスティック)120の操作方向を訓練者に指示するものである(
図2参照)。
この訓練用デバイス1は、
図1(a),(b)に示すように、リストバンド状に形成され、訓練者の手首Wに装着可能に構成されている。具体的に、訓練用デバイス1は、デバイス本体10と、4つの可動部11と、4つの固定部12とを備えている。
【0017】
デバイス本体10は、人間の手首よりも一回り大きい円環状に形成されている。このデバイス本体10は、訓練者の手首Wに対して可動部11が所定の位置に配置されるように、所定の向きで手首Wに装着されるように構成されている。また、デバイス本体10は、図示は省略するが、訓練者の手首Wへの脱着が容易なように、開口可能または分割可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
4つの可動部11は、訓練者の手首Wに対して操縦桿120の操作方向を指示する部分であり、デバイス本体10の内周面に周上等配で設けられている。各可動部11は、後述の駆動モータ13(
図2参照)により、デバイス本体10に対し、正面視で前後方向(デバイス本体10の中心軸に沿った方向)に移動可能に設けられている。
なお、可動部11の数量は特に限定はされない。ただし、可動部11は、デバイス本体10の中心軸を挟んで互いに対向する二箇所に設けられていることが好ましい。また、各可動部11の表面は、訓練者の手首Wに触れるため、柔らかい樹脂等で覆われていることが好ましい。
【0019】
4つの固定部12は、訓練者の手首Wに対して訓練用デバイス1を固定する部分である。これら4つの固定部12は、隣り合う2つの可動部11の間に位置するように、デバイス本体10の内周面に周上等配で設けられている。また、各固定部12のうち、訓練者の手首Wに直接触れる先端部(内周端部)は、柔らかい樹脂等で覆われている。
なお、固定部12は、訓練用デバイス1を緩みなく訓練者の手首Wに固定可能であれば、その数量、位置及び構造等については特に限定はされない。さらに言えば、例えば複数の可動部11を同時に動作させないようにするなどして、可動部11のみによって当該可動部11自体を動作させつつ訓練用デバイス1を手首Wに固定可能であれば、固定部12は設けられていなくともよい。
【0020】
[機能構成]
続いて、訓練用デバイス1の機能構成について説明する。
図2は、訓練用デバイス1を含む訓練シミュレータ100全体の機能構成を示すブロック図である。
【0021】
この図に示すように、訓練用デバイス1は、上述のとおり、訓練シミュレータ100に備えられている。
【0022】
訓練シミュレータ100は、航空機の操縦訓練を行うフライトシミュレータ、フライトトレーナまたはプロシージャトレーナであり、本実施形態においては、特に操縦桿120の操作訓練を行うためのものである。この訓練シミュレータ100は、訓練用デバイス1のほか、シミュレータ本体110と、操縦桿120とを備えて構成されている。
シミュレータ本体110は、訓練シミュレータ100全体の動作を制御して、各種の飛行状況を模擬するものである。このシミュレータ本体110は、無線通信により訓練用デバイス1との間で互いに各種信号を送受信可能な無線通信部111と、当該シミュレータ本体110の各部を中央制御する本体制御部112とを備えている。また、シミュレータ本体110は、予め教本データ113aが記憶された記憶部113を備えている。教本データ113aは、シミュレータ本体110に各種の飛行状況を模擬させるためのデータであり、各飛行状況における操縦桿120の模範操作(操作方向及び操作量)が設定されたものである。
操縦桿120は、訓練者に操作される操作部である。この操縦桿120は、シミュレータ本体110と電気的に接続されており、当該操縦桿120の操作入力(操作方向及び操作量)を検出してシミュレータ本体110に出力する。
【0023】
訓練用デバイス1は、4つの駆動モータ13と、無線通信部14と、制御部15とを、デバイス本体10の内部に備えている。
このうち、4つの駆動モータ13は、4つの可動部11に対応して設けられており、制御部15からの制御指令に基づいて、各々が、対応する可動部11を動作させる。
【0024】
無線通信部14は、シミュレータ本体110の無線通信部111との間で、無線通信により互いに各種信号を送受信可能となっている。ただし、無線通信部14は、操縦桿120の操作方向を指示する操作指示信号をシミュレータ本体110から受信可能に構成されていればよい。
【0025】
制御部15は、訓練用デバイス1の各部の動作を制御する。具体的に、制御部15は、無線通信部14が受信した操作指示信号に基づいて、4つの駆動モータ13を駆動して4つの可動部11を動作させたりする。
【0026】
[動作]
続いて、操縦桿120の操作訓練が行われる際の訓練用デバイス1の動作について説明する。
図3は、この訓練用デバイス1の動作を説明するための図である。
【0027】
まず、訓練開始にあたり、訓練者は、操縦桿120を握る腕の手首Wに訓練用デバイス1を装着する。
このとき、訓練用デバイス1は、
図3(a)に示すように、操縦桿120を握った状態の訓練者の手首Wに対し、4つの可動部11がその上下左右に位置しつつ各々が手首Wに接触するように装着される。ここで、各可動部11は、手首Wの地肌に直接触れた状態に装着されることが好ましい。
【0028】
訓練者が訓練用デバイス1を装着して訓練が開始されると、シミュレータ本体110の本体制御部112は、記憶部113から所定の教本データ113aを読み出す。そして、本体制御部112は、この教本データ113aの訓練内容に沿ってシミュレータ本体110を動作させ、訓練を実行する。
【0029】
このとき、操縦桿120は、訓練者による操縦桿120の実際の操作入力(操作方向及び操作量)を検出し、シミュレータ本体110に出力する。シミュレータ本体110の本体制御部112は、操縦桿120から出力された実際の操作入力を、教本データ113aに設定された模範入力(模範操作)と比較する。そして、これらの入力に所定以上の差があった場合に、本体制御部112は、この差を解消するための操縦桿120の操作方向を指示する操作指示信号を生成し、無線通信部111により訓練用デバイス1に送信する。
【0030】
すると、訓練用デバイス1では、シミュレータ本体110から送信された操作指示信号が無線通信部14により受信される。そして、制御部15は、この操作指示信号に基づいて、4つの駆動モータ13を駆動し、4つの可動部11を訓練者の手首Wに接触した状態で動作させる。より詳しくは、制御部15は、操作指示信号が指示する操作方向に対応付けられた動作方向に、4つの可動部11を動作させる。
【0031】
ここで、4つの可動部11の動作方向は、本実施形態においては、操縦桿120の操作方向(傾倒方向)に対し、その傾倒操作に伴う手首Wの曲げまたは捻りを促すような方向に対応付けられている。より詳しくは、4つの可動部11の動作方向は、操縦桿120の操作方向に対し、その傾倒操作に伴って手首Wのうち伸長する側の可動部11が前方(訓練者から見て前方;腕の先端方向)へ移動し、収縮する側の可動部11が後方へ移動するように対応付けられている。
つまり、4つの可動部11のうち、上下2つの可動部11によって操縦桿120の前後方向への傾倒操作が指示され、左右2つの可動部11によって操縦桿120の左右への傾倒操作が指示される。
【0032】
例えば、操縦桿120を前方へ傾倒させて機首下げの操縦操作を行うべきときに、訓練者による入力が不足していた場合、本体制御部112は、操縦桿120を前方へ傾倒させる操作指示信号を生成して訓練用デバイス1に送信する。
すると、訓練用デバイス1では、
図3(b)に示すように、制御部15が、4つの可動部11を訓練者の手首Wに接触させた状態のまま、そのうち上側のものを前方へ移動させ、下側のものを後方へ移動させる。このように、上下2つの可動部11が訓練者の手首W表面を撫でるようにして前方または後方に移動することにより、訓練者は、操縦桿120の前方への傾倒操作を指示されたことを体感的に認識する。
【0033】
そして、訓練者は、
図3(c)に示すように、認識した指示内容に従って、操縦桿120を前方へ傾倒させる。本体制御部112は、この操縦桿120の操作入力と、教本データ113aに設定された模範入力(模範操作)とを比較し、これらの差が所定未満であった場合に、動作させた上下2つの可動部11を初期位置に戻す指令信号を訓練用デバイス1に送信する。すると、訓練用デバイス1の制御部15は、この指令信号に基づいて、上下2つの可動部11を前方または後方に移動させて初期位置に戻す。
【0034】
[効果]
以上のように、本実施形態によれば、訓練者の手首Wに装着された訓練用デバイス1の可動部11が、シミュレータ本体110から送信された操作指示信号に基づいて、訓練者の手首Wに接触した状態で、当該操作指示信号が指示する操縦桿120の操作方向に対応付けられた動作方向に動作する。これにより、訓練者は、操縦桿120を操作させるべき方向を体感的に認識することができる。
したがって、動作範囲の狭い操縦桿(例えば感圧式のもの)の操作訓練においても、この操縦桿の模範操作を訓練者に好適に体感させることができる。
【0035】
また、操縦桿をアクチュエータで動作させることで訓練者に模範操作を体感させていた従来の訓練シミュレータと異なり、操縦桿120の操作入力は訓練者が自律的に行う。
したがって、従来と異なり、訓練者は実機により近い環境で操縦桿120の操作感覚を習得することができる。
【0036】
[変形例]
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態では、訓練者が操縦桿120を前後左右に傾倒させる場合について説明した。しかし、本発明を適用可能な操作部は、操縦桿に限定されず、傾倒するもの以外の操作部であってもよい。
具体的には、
図4に示すように、前後の一方向に動作するスロットルレバー130が操作部であってもよい。この場合、制御部15は、訓練用デバイス1の上下2つの可動部11(または4つ全ての可動部11)を共に前方へ移動させることより、スロットルレバー130の前方への移動を訓練者に指示すればよい(
図4(a))。そして、訓練者が教本データ113a通りにスロットルレバー130を前方へ移動させたら(
図4(b))、制御部15は、上下2つの可動部11(または4つ全ての可動部11)を初期位置に戻せばよい(
図4(c))。
【0038】
また、可動部11の動作方向は、その動作が指示する方向を訓練者が認識できるものであれば、特に限定されない。
例えば、可動部11をデバイス本体10の内周面に沿って周方向へ移動可能に構成しておき、訓練者に手首Wを左右に捻らせて操縦桿120を左右へ傾倒させる場合に、その手首Wの捻り方向に沿ったデバイス本体10の周方向に可動部11を移動させてもよい。
あるいは、可動部11をデバイス本体10の径方向に沿った中心軸回りに回転可能に構成しておき、訓練者に手首Wを曲げさせる場合に、その手首Wの曲げ方向に可動部11を回転させてもよい。
【0039】
また、可動部11は、操縦桿120の操作方向を指示する動作方向に動作するものであればよい。例えば、可動部11は、訓練者の体部位表面に貼付される貼付部を有し、この貼付部を上記動作方向に引っ張るように構成されていてもよい。
【0040】
また、訓練用デバイスを装着する体部位は手首に限定されない。ただし、当該体部位は、操作部を操作する操作体部位(上記実施形態では手)の近くであることが好ましく、操作部に応じた体部位とするのがよい。
例えば、
図5(a)に示すように、ペダル140の操作訓練用の訓練用デバイス1Aの場合には、当該ペダル140を踏む足の足首に装着するものとするのがよい。
あるいは、
図5(b)に示すように、訓練者の視認方向の訓練に用いる訓練用デバイス1Bの場合には、頭部に装着するヘッドバンド状のものとするのがよい。この場合、操作部は、訓練者が視認するディスプレイや計器類等である。
【0041】
また、上記実施形態では、シミュレータ本体110(本体制御部112)が操作指示信号を生成し、訓練用デバイス1(制御部15)が、この操作指示信号に基づいて、4つの駆動モータ13を駆動して4つの可動部11を所定の動作方向に動作させることとした。しかし、シミュレータ本体110が、4つの駆動モータ13の駆動量までを演算することとしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、訓練用デバイス1とシミュレータ本体110とが無線通信可能に構成されていることとした。しかし、これら訓練用デバイス1とシミュレータ本体110とは、有線通信によって信号を送受信可能に構成されていてもよい。ただし、これらが無線通信可能に構成されている方が、訓練用デバイス1が訓練者の体部位を拘束しないため、より実機環境に近い状態で訓練実施が可能である。
【0043】
また、上記実施形態では、操縦桿120の模範操作が教本データ113aに設定されていることとした。しかし、この教本データ113aに代えて、訓練者を指導する教官が模範操作を手動で入力できる教官用操作部を設けることとしてもよい。
さらに、例えば教本データ113aを保存したデータプレイヤーを訓練用デバイス1に内蔵させるなどして、当該訓練用デバイス1をシミュレータ本体から独立して動作可能に構成してもよい。このように構成すれば、訓練用デバイス1のみを装着して実際に実機上で訓練することなども可能である。この場合、デバイス本体10に設けた各種ボタンで教本データ113aの再生や停止等を操作したり、あるいは実機に搭載されたデータレコーダー/プレイヤーから教本データ113aや電力を受信したりすることも可能である。
【0044】
また、本発明に係る訓練シミュレータ用デバイスを適用可能な訓練シミュレータは、航空機の操縦訓練を行うものに限定されない。本発明は、例えばドライブシミュレータや鉄道シミュレータなど、所定の操作部の操作を訓練する訓練シミュレータ全般に広く適用可能である。