特許第6857037号(P6857037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857037
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】構造体
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   E04H17/16 102Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-8864(P2017-8864)
(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公開番号】特開2018-115524(P2018-115524A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100168228
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 達則
(72)【発明者】
【氏名】赤井 忠剛
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−040032(JP,U)
【文献】 国際公開第2007/022571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/14 − 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、上桟と、引寄せ具と、キャップを備え、引寄せ具は、前側に設けた係合部と、後ろ側に設けた固定部と、係合部と固定部をつなぐ連結部を有しており、キャップは、支位の上端を覆うものであり、支柱の上端の前側に上桟が位置しており、引寄せ具により上桟を支柱に引き寄せて固定するものであって、引寄せ具の係合部が上桟に係合しており、連結部の少なくとも一部がキャップの下縁と支柱の上端の隙間から支柱の上端を越えており、支柱内に位置する固定部を支柱の後側から引き寄せてあることを特徴とする構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に上桟を取り付けたフェンスなどの構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非特許文献1に示すような、支柱の前側に上桟を取り付けた構造のフェンスにおいて、支柱101と上桟102の連結部には、図6に示すような取付具103を用いていた。この取付具103は、下部に係合部131を有し、上部に固定部132を有し、さらに上端に把持部133を有するものであって、係合部131に上桟102を係合させ、把持部133を持って位置調整を行い、固定部132を前側から支柱101の前側面にネジ止めして、上桟102を支柱101に固定するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「エクステリア総合カタログ2016−2017(STX1013A)」、三協立山株式会社、2016年3月、p.654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の上桟の取付構造は、上桟の上側で取付具を支柱に前側からネジ止めするものだったので、支柱の上端の前側面を露出させなければならず、支柱が上桟よりも上側に突出していた。これに対し、意匠性向上のため、支柱が上桟よりも上側に突出しない構造のものが求められていた。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、支柱の上端の前側に上桟を取り付け可能で、支柱が上桟よりも上側に突出しない構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支柱と、上桟と、引寄せ具と、キャップを備え、引寄せ具は、前側に設けた係合部と、後ろ側に設けた固定部と、係合部と固定部をつなぐ連結部を有しており、キャップは、支位の上端を覆うものであり、支柱の上端の前側に上桟が位置しており、引寄せ具により上桟を支柱に引き寄せて固定するものであって、引寄せ具の係合部が上桟に係合しており、連結部の少なくとも一部がキャップの下縁と支柱の上端の隙間から支柱の上端を越えており、支柱内に位置する固定部を支柱の後側から引き寄せてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支柱の上端の前側に位置する上桟が、引寄せ具により支柱に引き寄せられるものであって、引寄せ具は支柱に対して後側から引き寄せてあるので、支柱の前側面を露出させる必要がなく、支柱が上桟よりも上側に突出しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】支柱と上桟の連結部を示し、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
図2】引寄せ具の三面図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
図3】キャップの取り付けの説明図である。
図4】構造体の縦断面図である。
図5】構造体の正面図である。
図6】従来の構造体における支柱と上桟の連結部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この構造体は、種々の用途に用いられるものであるが、ここでは住宅の敷地境界などに設置されるフェンスの場合を例に挙げる。図4及び図5に示すように、このフェンスは、左右に並べて立設した支柱1の前側にパネル体10,10aを取り付けたものであり、前側が道路側、後側が家側となる。パネル体10,10aは、上下に2枚並べて設けてあり、さらに上側のパネル体10と下側のパネル体10aが、それぞれ左右に連結されて複数枚並んでいる。上下のパネル体10,10aは同じ形状であり、何れも上桟2,2aと下桟5,5aを有していて、上桟2,2aと下桟5,5aの間に面材や格子材を設けて面状に形成してある。なお、支柱1、上桟2,2a及び下桟5,5aは、何れもアルミ製の押出形材からなる。また、上側のパネル体10の下桟5と下側のパネル体10aの上桟2aの間には、弾性素材からなる隙間隠し材8を設けてある。
【0010】
支柱1は、図1に示すように、断面略正方形の中空形材からなり、前側面に、断面略凹形で上下に延びる溝部11を形成してあり、さらに溝部11の底面に、断面略C字形で上下に延びる係止溝12を形成してある。
【0011】
上下のパネル体10,10aの上桟2,2aは、図4に示すように、上端部に断面略矩形のホロー部21,21aを有しており、ホロー部21,21aの上端部から後側に延出して後端で下側に屈曲した略L字形の被係合片22,22aを設けてある。被係合片22,22aの下端部には、前側に向けて突出する係止部23,23aを形成してある。また、ホロー部21,21aの下端部から後側に向けて略矩形状に突出した突出部24,24aを設けてある。
【0012】
上下のパネル体10,10aの下桟5,5aは、図4に示すように、下端部に断面略矩形のホロー部51,51aを有しており、ホロー部51,51aの上端部から後側に延出して後端で下側に屈曲した略L字形の被係合片52,52aを設けてある。被係合片52,52aの下端部には、前側に向けて突出する係止部53,53aを形成してある。また、ホロー部51,51aの下端部から後側に延出して後端で下側に屈曲した略L字形の突出片54,54aを設けてある。なお、上桟2,2aの被係合片22,22a及び突出部24,24a並びに下桟5,5aの被係合片52,52a及び突出片54,54aの突出幅は全て同じである。
【0013】
そして、上下のパネル体10,10aは、それぞれ上桟2,2aと下桟5,5aを支柱に固定して取り付けてある。まず、上側のパネル体10の上桟2については、図1及び図2に示すような、引寄せ具3を用いている。引寄せ具3は、前側に設けた略J字形の係合部31と、後側に設けた垂直面からなる固定部32と、係合部31と固定部32の上端同士をつなぐ水平面からなる連結部33を有する金具であって、係合部31と固定部32が、連結部33よりも下側に位置する形状となっている。係合部31は、垂直向きの前側面34及び後側面35と、前側面34と後側面35の下端同士をつなぐ見込面36からなり、前側面34より後側面35の方が上下に長く、また係合部31の前側面34のみが幅広で支柱1の幅と略等しく、その他の部分は支柱1の溝部11に丁度納まる幅となっている。また、係合部31の前側面34の上端の、固定部32及び連結部33よりも左右方向外側に突出した位置には、後側に向けて突出する突起部37を形成してある。さらに、固定部32の左右方向中央部には、ネジ孔38を形成してある。
【0014】
この引寄せ具3を、支柱1の上端部に取り付けてある。図1に示すように、係合部31の後側面35が溝部11に納まり、前側面34が支柱1の前側面から突出しており、固定部32が支柱1の中空部内に入り込んでおり、連結部33が支柱1の上端を越えている。支柱1の後側面の、固定部32のネジ孔38に対向する位置には、貫通孔13を形成してあり、この貫通孔13に後側からネジ39を挿入して、支柱1内に位置する固定部32のネジ孔38に螺合してある。よって、ネジ39を回すことで、引寄せ具3が前後方向に移動する。そして、支柱1の上端の前側に上側のパネル体10の上桟2が位置しており、支柱1から突出した係合部31の前側面34に、上桟2の被係合片22が係合している。この際、上桟2が上方(係合部31と被係合片22の係合が外れる方向)に移動しても、係合部31の前側面34の突起部37に、被係合片22の係止部23が係止して、引寄せ具3から上桟2が外れることを防ぐ。このように係合部31の前側面34に上桟2の被係合片22が係合した状態で、引寄せ具3の固定部32に螺合するネジ39を回して、引寄せ具3を後側に移動させ、上桟2を支柱1に引き寄せて固定してある。
【0015】
さらに、支柱1の上端には、キャップ4を取り付けてある。キャップ4は、図1図3及び図4に示すように、支柱1の上端面を丁度覆う正方形の平板状のものであって、下面を掘り込んだ形状の空間部41を設けてあり、この空間部41に、支柱1の上端を越える引寄せ具3の連結部33が納まっている。また、キャップ4の下面の、引寄せ具3を回避する位置には、下側に突出する挿入部42を設けてあり(図1では図示省略)、挿入部42を支柱1の中空部に挿入することで、キャップ4が固定されている。なお、上桟2の上端の高さ位置は、キャップ4の上面と略一致している。
【0016】
また、上側のパネル体10の下桟5については、図4に示すような、支持具6を用いている。支持具6は、略J字形の金具であって、垂直向きの前側面61及び後側面62と、前側面61と後側面62の下端同士をつなぐ見込面63からなり、前側面61より後側面62の方が上下に長く、また前側面61のみが幅広で支柱1の幅と略等しく、その他の部分は支柱1の溝部11に丁度納まる幅となっている。この支持具6を、支柱1の前側に取り付けてあり、後側面62が支柱1の溝部11に納まり、後側面62の上部(前側面61よりも上側の位置)を、係止溝12に挿入した裏板64にネジ止めしてあって、前側面61が支柱1の前側面から突出している。そして、支持具6の前側面61に、下桟5の被係合片52が係合して載置されている。このように、下桟5が支柱1に固定した支持具6に載置され、上桟2が引寄せ具3により支柱1に引き寄せられて、上側のパネル体10が支柱1の前側に固定されている。
【0017】
一方、下側のパネル体10aの上桟2aについては、図4に示すような、取付具7を用いている。取付具7は、略J字形の金具であって、垂直向きの前側面71及び後側面72と、前側面71と後側面72の下端同士をつなぐ見込面73からなり、前側面71より後側面72の方が上下に長く、また前側面71のみが幅広で支柱1の幅と略等しく、その他の部分は支柱1の溝部11に丁度納まる幅となっている。なお、取付具7の前側面71及び後側面72は、それぞれ支持具6の前側面61及び後側面62よりも長く形成されている。また、前側面71の上端の、後側面72及び見込面73よりも左右方向外側に突出した位置には、後側に向けて突出する突起部75を形成してある。この取付具7を、支柱1の前側に取り付けてあり、後側面72が支柱1の溝部11に納まり、後側面72の上部(前側面71よりも上側の位置)を、係止溝12に挿入した裏板74にネジ止めしてあって、前側面71が支柱1の前側面から突出している。そして、取付具7の前側面71に、上桟2aの被係合片22aが係合している。この際、上桟2aが上方(前側面71と被係合片22aの係合が外れる方向)に移動しても、前側面71の突起部75に、被係合片22aの係止部23aが係止して、取付具7から上桟2aが外れることを防ぐ。このように取付具7の前側面71に上桟2aの被係合片22aが係合した状態で、取付具7を支柱1にネジ止めするネジをねじ込んで、上桟2aを支柱1に固定してある。なお、取付具7のネジ止めの位置が、上桟2aの上端よりも上側なので、前側から支障なくねじ込むことができる。
【0018】
また、下側のパネル体10aの下桟5aについては、図4に示すような、支持具6を用いている。この支持具6は、上側のパネル体10の下桟5の固定に用いるものと同じであり、後側面62が支柱1の溝部11に納まり、後側面62の上部(前側面61よりも上側の位置)を、支柱1に前側からネジ止めしてあって、前側面61が支柱1の前側面から突出している。そして、支持具6の前側面61に、下桟5aの被係合片52aが係合して載置されている。このように、下桟5aが支柱1に固定した支持具6に載置され、上桟2aが取付具7により支柱1に固定されて、下側のパネル体10aが支柱1の前側に固定されている。
【0019】
なお、この構造体を施工する際の具体的な手順は、以下のとおりである。
(1)支柱1を左右に並べて立設する。
(2)下側のパネル体10aの支持具6を、支柱1にネジ止めして固定する。
(3)取付具7に裏板74を仮止めし、取付具7の前側面71を下側のパネル体10aの上桟2aの被係合片22aに係合させる。
(4)下側のパネル体10aの下桟5aの被係合片52aを支持具6の前側面61に係合させるとともに、取付具7に仮止めした裏板74を支柱1の係止溝12に挿入して、取付具7を支柱1にネジ止めする。
(5)下側のパネル体10aの上桟2aの上面に、隙間隠し材8を取り付ける。
(6)上側のパネル体10の支持具6に裏板64を仮止めし、裏板64を支柱1の係止溝12に挿入して、支持具6を支柱1にネジ止めする。
(7)支柱1の上端部に引寄せ具3を取り付け、ネジ39で仮止めする。
(8)上側のパネル体10の下桟5の被係合片52を支持具6の前側面61に係合させるとともに、上桟2の被係合片22を引寄せ具3の係合部31の前側面34に係合させ、引寄せ具3のネジ39を本締めして、上桟2を支柱1に引き寄せる。
(9)支柱1の上端部にキャップ4を取り付ける。
【0020】
このように構成した本発明の構造体によれば、上側のパネル体10の上桟2を支柱1に取り付けるための引寄せ具3が、支柱1に対して後側から引き寄せてあるので、支柱1の前側面を露出させる必要がなく、支柱1が上桟2よりも上側に突出しない構成となっており、意匠性が良好である。また、引寄せ具3の連結部33が支柱1の上端を越えており、支柱1に連結部33を通すための孔や切欠などを設ける必要がなく、製造が容易である。そして、支柱1の上側を通す連結部33は、支柱1の上端に取り付けるキャップ4の空間部41内に納まるので、これにより意匠性を損なうことはない。さらに、このように支柱1に孔や切欠を設けないので、施工現場において支柱1の上端を切断して高さを調整することができる。
【0021】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、パネル体は上下に1枚のみ設けるものであってもよいし、3枚以上設けるものであってもよい。また、引寄せ具と上桟の係合部分の構造や、支柱に対して引寄せ具を引き寄せる部分の構造は、どのようなものであってもよい。そして、引寄せ具の連結部は、少なくとも一部が支柱の上端を越えていて、これにより支柱に連結部を通すための孔や切欠などを設ける必要がないものであればよく、連結部の支柱上端を超える部分より前側部分が、支柱の前側面の溝部内を通るものや、連結部の支柱上端を超える部分より後側部分が、支柱の中空部内を通るものであってもよい。さらに、上側のパネル体の上桟以外の支柱に対する取付部分の構造についても、どのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 支柱
2 上桟
3 引寄せ具
4 キャップ
31 係合部
32 固定部
33 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6