特許第6857041号(P6857041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857041
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】カルノシン製造方法及び新規微生物
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20210405BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C12P21/02 AZNA
   C12N1/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-16950(P2017-16950)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-121583(P2018-121583A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月10日
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02379
(73)【特許権者】
【識別番号】394027559
【氏名又は名称】三谷産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229519
【氏名又は名称】日本ハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】阿戸 雅之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 尚充
(72)【発明者】
【氏名】菅原 幸博
(72)【発明者】
【氏名】武部 英日
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−081405(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/108493(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/139392(WO,A1)
【文献】 特開2000−106869(JP,A)
【文献】 特表2009−500035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルノシン産生能を有する、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca) HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)を、培地を用いて培養する培養工程を備えて構成されることを特徴とするカルノシン製造方法。
【請求項2】
前記培地にカゼイン、カゼイン加水分解物、乳成分、及び、乳成分加水分解物からなる群より選択される1種以上が含まれることを特徴とする請求項1に記載のカルノシン製造方法。
【請求項3】
前記培地にカザミノ酸が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のカルノシン製造方法。
【請求項4】
カルノシン産生能を有する微生物であるクレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)であることを特徴とする新規微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルノシン製造方法及びカルノシン産生能を有する新規微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
カルノシンは、β−アラニンとヒスチジンが結合したジペプチドである。カルノシンは、生体内において筋肉や脳組織に存在しており、特に渡り鳥や回遊魚などの持久力を必要とする生物の骨格筋に多く存在していることが分かっている。また、カルノシンは、抗酸化作用を有することが知られており、機能性成分としてサプリメントや機能性食品等に添加されている。
【0003】
従来、カルノシンの製造方法として、抽出や化学合成による方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載の方法は、家禽類、畜肉類又はマグロ等の回遊性魚類の筋肉から抽出する方法である。これらの材料から熱水抽出することにより得られた抽出液をイオン交換クロマトグラフィーに供して、夾雑物を除去することにより、カルノシンを製造することができる。また、特許文献2に記載の方法は、β−アラニンとL−ヒスチジンを用いてカルノシンを化学合成する方法である。すなわち、まず、β−アラニンをβ−アラニンクロライドとし、さらにβ−アラニンクロライドとL−ヒスチジンとを反応させることにより、カルノシンを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−46451号公報
【特許文献2】特開2005−306782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のカルノシン製造方法は、可食物を原料として使用することから、製造時の原料コストが高いという問題があった。また、特許文献2に記載の化学合成法は、生成物のラセミ化やトリペプチドの生成等の副反応により、副生成物が生成してしまうという問題があった。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題点に着目し、安価な原料を用いて、かつ、比較的容易な方法でカルノシンを製造する方法及びカルノシン産生能を有する微生物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のカルノシン製造方法は、カルノシン産生能を有する、Klebsiella属細菌を、培地を用いて培養する培養工程を備えて構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のカルノシン製造方法において、前記カルノシン産生能を有する、Klebsiella属細菌が、Klebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)であることが好ましい。
【0009】
また、本発明のカルノシン製造方法において、前記培地にカゼイン、カゼイン加水分解物、乳成分、及び、乳成分加水分解物からなる群より選択される1種以上が含まれることが好ましい。
【0010】
また、本発明のカルノシン製造方法において、前記培地にカザミノ酸が含まれることが好ましい。
【0011】
本発明の新規微生物は、カルノシン産生能を有する微生物であるKlebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカルノシン製造方法によれば、カルノシン産生能を有する細菌を、培地を用いて培養する培養工程を備えることから、可食物を原料として用いることなく、安価な原料を用いて、かつ、比較的容易な方法でカルノシンを製造することができる。
【0013】
本発明の新規微生物によれば、カルノシン産生能を有する微生物であることから、本菌株を培養することにより、安価な原料を用いて、かつ、比較的容易な方法でカルノシンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】カルノシン標準溶液のUVスペクトルを示す図である。
図2】Klebsiella oxytoca HYFR8株の培養上清から分取した画分のUVスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[新規微生物]
本発明の一実施形態にかかる微生物について説明する。なお、本明細書において、カルノシンとは、β−アラニンとL−ヒスチジンが結合したジペプチドである、β−アラニル−L−ヒスチジンのことを指す。
【0016】
本実施形態の微生物は、カルノシン産生能を有する、Klebsiella属細菌であり、中でも、カルノシン産生能を有するKlebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)(以下、単に「HYFR8株」とも称する。)であることが好ましい。
【0017】
<Klebsiella oxytoca HYFR8株の取得>
(カルノシン産生能を有する菌株のスクリーニング)
Klebsiella oxytoca HYFR8株は以下に記載するスクリーニング方法により取得した。スクリーニング源として豆腐よう等の市販の発酵食品を用いた。まず、スクリーニング源1gを10mL(ミリリットル)の滅菌した生理食塩水に懸濁した懸濁液をLB液体培地に接種して培養したのち、単離用平板培地に塗抹して30℃、7日間培養し、約2000株を単離した。
【0018】
単離用平板培地は表1の組成で調製した。なお、単位は質量/体積濃度を示す。
表1に示した材料を0.1mol/L−リン酸緩衝液(pH6.8)に溶解させて、121℃、15分間滅菌して調製した。なお、0.1mol/L−リン酸緩衝液(pH6.8)は、リン酸二水素ナトリウム二水和物を7.8gと、リン酸水素二ナトリウム十二水和物を17.9gと、を水に溶解させ、水を用いて全量を1L(リットル)として調製した。
【0019】
[表1]
大豆ペプトン(オリエンタル酵母工業株式会社製) 0.2%
グルコース 0.2%
寒天 2%
【0020】
次に、単離した菌株をカルノシン産生能確認培地において培養し、カルノシン産生能を確認した。単離した菌株をそれぞれカルノシン産生能確認培地に接種し、ロータリーシェーカーを用いて、37℃、200rpm(回転/分)で7日間振とう培養した。さらに、この培養液を遠心加速度5000gで10分間遠心分離することにより菌体を沈殿させて、培養上清を得た。得られた培養上清を高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography、以下、「HPLC」と記載する。)に供し、培養上清にカルノシンが含まれるかを確認した。すなわち、培養上清においてカルノシンが検出された菌株を、カルノシン産生能を有するものとした。
【0021】
なお、カルノシン産生能確認培地は、以下のように調製した。まず、グルコース、カゼインの酸加水分解物であるカザミノ酸、L−ヒスチジン、L−アルギニンは、それぞれ水に溶解させて個別に市販の孔径が0.22μmのフィルターを用いて滅菌した。次に、NaCl(培地における終濃度0.5%)を0.01mol/L−リン酸緩衝液(pH6.8)に溶解させて121℃、15分間滅菌した。滅菌したリン酸緩衝液に上記グルコース溶液、カザミノ酸溶液、L−ヒスチジン溶液及びL−アルギニン溶液を終濃度がそれぞれ表2に示す濃度になるように添加して調製した。なお、0.01mol/L−リン酸緩衝液(pH6.8)は、リン酸二水素ナトリウム二水和物を0.78gと、リン酸水素二ナトリウム十二水和物を1.79gと、を水に溶解させ、水を用いて全量を1Lとして調製した。
【0022】
[表2]
グルコース 1.0%
カザミノ酸(Difco社製) 0.82%
L−ヒスチジン 0.2%
L−アルギニン 0.2%
【0023】
表3に、HPLCによる測定条件を示す。また、分析用カラムの上流側にはガードカラムを接続して用いた。
【0024】
[表3]
システム :ウォーターズ社製HPLC
分析用カラム :TSKgel ODS−80Ts(4.6mmI.D.×150mm)(東ソー社製)
ガードカラム :TSK guardgel ODS−80Ts(東ソー社製)
カラム温度 :30℃
流速 :0.8mL/分
移動相 :下記の組成となるようにそれぞれの化合物を混合して、孔径0.45μmのフィルターで濾過した後、脱気した。なお、単位(%)は体積濃度を示す。
リン酸二水素アンモニウム 0.2mol/L
1−ペンタンスルホン酸ナトリウム 0.1mol/L
(HClによりpH2.0に調整)
アセトニトリル 4%
検出 :UV220nm
【0025】
上記HPLCにおけるカルノシンの保持時間を確認した。市販のカルノシン(浜理薬品工業製)を用いて1mg/mLのカルノシン水溶液を調製し、このカルノシン水溶液を標準溶液とした。この標準溶液を上記条件のHPLCにより分析したところ、保持時間は12.53分であった。
【0026】
単離した菌株の培養上清を上記条件のHPLCにより分析したところ、HYFR8株の培養上清において保持時間が12.6分付近のピークが確認された。また、このピークに対応する画分を分取し、紫外可視近赤外分光光度計V−700(日本分光社製)を用いて、UVスペクトルを確認した。その結果、図1図2に示すように、カルノシンの標準溶液とHYFR8株由来の培養上清由来の画分とが、同様のUVスペクトルを有することが確認された。以上の結果から、HYFR8株はカルノシン産生能を有するものであることが確認された。
【0027】
本実施形態においては、好気性の条件においてカルノシン産生能を有する微生物をスクリーニングしたが、嫌気性の条件においてスクリーニングを行ってもよい。また、カルノシンの生合成に関与する酵素等の遺伝子配列を用いて、分子生物学的手法によりカルノシン産生能を有する微生物をスクリーニングしてもよい。これらの手法により得られた、カルノシン産生能を有する微生物の候補株は、前述したように、例えば、培養上清をHPLC等により分析することでカルノシン産生能を確認することができる。
【0028】
また、本実施形態においては、スクリーニング源として食品を用いていたが、スクリーニング源は特に限定されるものではない。例えば、家禽類、畜肉類又はマグロ等の回遊性魚類等の、カルノシンを豊富に有する生物の内臓や消化管内容物等をスクリーニング源として用いてもよい。
【0029】
<HYFR8株の同定>
次に、HYFR8株の同定を行った。
【0030】
(16SrRNA遺伝子配列の相同性解析)
本菌株の16SリボソームRNAをコードする遺伝子(以下、「16SrRNA遺伝子」と記載する。)の塩基配列を公知の方法により決定した。決定した塩基配列を配列番号1に示す。この決定した塩基配列について、国際塩基配列データベースであるGenBankに登録されている塩基配列との相同性検索を行った。
【0031】
その結果、本菌株の配列番号1に示す塩基配列は、Klebsiella oxytocaの基準株であるKlebsiella oxytoca ATCC13182株の16SrRNA遺伝子の塩基配列と最も高い相同性を示し、相同性は97.6%であった。また、本菌株の配列番号1に示す塩基配列と高い相同性を示した配列の多くは、Klebsiella属細菌由来の配列であった。
【0032】
本菌株は、カルノシン産生能を有するクレブシエラ属細菌の菌株が報告されていないことや、16SrRNA遺伝子の塩基配列がKlebsiella oxytoca ATCC13182株と97.6%の相同性を示したことから、Klebsiella oxytoca ATCC13182に近縁ではあるが、異なる菌株であり、新規微生物であると判断された。
【0033】
以上の結果から、本菌株は、Klebsiella oxytoca HYFR8株と命名され、2017年1月17日付で、受託番号 NITE P−02379として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託された。
【0034】
Klebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)を培養することによりカルノシンが産生されることから、培地の原料となるグルコースやカザミノ酸等の安価な原料を用いて、かつ、比較的容易な方法でカルノシンを製造することができる。
【0035】
[カルノシン製造方法]
次に、本発明の一実施形態にかかるカルノシン製造方法について説明する。本実施形態のカルノシン製造方法は、カルノシン産生能を有する、Klebsiella属細菌を、培地を用いて培養する培養工程を備えて構成される。
【0036】
<培養工程>
培養工程は、カルノシン産生能を有する、Klebsiella属細菌(以下、「カルノシン生産株」と称する。)をカルノシン生産培地において培養する工程である。なお、以下の工程は、培養工程の一例を示すものであり、培地組成や培養条件等は適宜改変することができる。
【0037】
(カルノシン生産株)
本実施形態のカルノシン製造方法には、カルノシン産生能を有する微生物を用いることができる。当該微生物は、カルノシン産生能を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、カルノシン製造方法には、カルノシン産生能を有するKlebsiella属細菌を用いることができ、中でも、Klebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)を好適に用いることができる。Klebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)の詳細は、前述した内容と同じである。
【0038】
(培養方法)
まず、グリセロールストック等で保存されたカルノシン生産株をシード培地に接種して、ロータリーシェーカーを用いて、30℃、150rpmで120時間、シード培養を行う。シード培養後の培養液を遠心加速度5000gで10分間遠心分離し、上清を廃棄して沈殿した菌体を洗浄して、カルノシン生産株菌体を得る。なお、カルノシン生産株のシード培養方法は保存形態により適宜変更することができる。
【0039】
なお、シード培地は表4に示した組成で調製する(単位は質量/体積濃度を示す。)。すなわち、表4に示した材料を0.01mol/L−リン酸緩衝液(pH6.8)に溶解させて、121℃、15分間滅菌して調製した。
【0040】
[表4]
グルコース 0.2%
大豆ペプトン(オリエンタル酵母工業株式会社製) 0.2%
【0041】
次に、得られたカルノシン生産株菌体をカルノシン生産培地に接種して、ロータリーシェーカーを用いて、30℃、150rpmで1週間、振とう培養する。
【0042】
カルノシン生産培地は、例えば、以下のように調製したものを用いることができる。カルノシン生産培地には、カゼイン、カゼイン加水分解物、乳成分、及び、乳成分加水分解物からなる群より選択される1種以上が含まれることが好ましい。また、特にカゼイン加水分解物であるカザミノ酸が含まれていることがさらに好ましい。
【0043】
具体的には、例えば、まず、グルコース、カザミノ酸、L−ヒスチジン、L−アルギニンを、それぞれ水に溶解させて個別に市販の孔径が0.22μmのフィルターを用いて滅菌する。次に、NaCl(培地における終濃度0.5%)を0.01mmol/L−リン酸緩衝液(pH6.8)に溶解させて121℃、15分間滅菌する。滅菌したリン酸緩衝液にグルコース溶液、カザミノ酸溶液、L−ヒスチジン溶液、L−アルギニン溶液を終濃度がそれぞれ表5に示した濃度になるように添加して調製する。
【0044】
[表5]
グルコース 1.0%
カザミノ酸(Difco社製) 0.47%
L−ヒスチジン 0.1%
L−アルギニン 0.1%
【0045】
なお、カルノシン生産培地は、上記のものに限らず、カルノシンの生産に必要な炭素源や窒素源を含む種々の組成の培地を用いることができる。
【0046】
(カルノシンの精製)
以上のようにして培養したカルノシン生産株の培養液を遠心加速度5000gで10分間遠心分離し、カルノシンを含有する培養上清を得る。このカルノシンを含有する培養上清から既知のクロマトグラフィーによる方法等によりカルノシンを精製することができるなお、精製方法は上記のものに限らず、他の方法を用いることができる。
【0047】
本実施形態によれば、カルノシン産生能を有する菌株を、培地を用いて培養する培養工程を備えることから、可食物を原料とすることなく、培地の原料となるグルコースやカザミノ酸等の安価な材料を用いて、かつ、比較的容易な方法でカルノシンを製造することができる。
【0048】
また、本実施形態のカルノシン製造方法において、カルノシン産生能を有するKlebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)を用いることにより、より効率的にカルノシンを製造することができる。
【0049】
また、培地にカゼイン、カゼイン加水分解物、乳成分、及び、乳成分加水分解物からなる群より選択される1種以上が含まれることから、安価な材料を用いて、かつ、比較的容易な方法でカルノシンを製造することができる。
【0050】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、変形等も本発明に含まれる。本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0051】
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
まず、グリセロールストックで保存されたKlebsiella oxytoca HYFR8株(受託番号 NITE P−02379)をシード培地に接種して、ロータリーシェーカーを用いて、30℃、150rpmで120時間、シード培養を行った。培養後の培養液を遠心加速度5000gで10分間遠心分離し、上清を廃棄して沈殿した菌体を洗浄してKlebsiella oxytoca HYFR8株菌体を得た。
【0054】
なお、シード培地は表6に示した材料を0.05mol/L−リン酸緩衝液(pH6.5)に121℃、15分間滅菌して調製した。0.05mol/L−リン酸緩衝液(pH6.5)は、リン酸二水素ナトリウム二水和物を5.05gと、リン酸水素二ナトリウム十二水和物を3.01gと、を水に溶解させ、水を用いて全量を1Lとして調製した。
【0055】
[表6]
グルコース 0.2%
大豆ペプトン(オリエンタル酵母工業株式会社製) 0.2%
【0056】
次に、得られたKlebsiella oxytoca HYFR8株菌体をカルノシン生産培地に接種して、ロータリーシェーカーを用いて、30℃、150rpmで1週間、振とう培養した。
【0057】
カルノシン生産培地は、下記の組成で調製したものを用いた。まず、グルコース、カザミノ酸、L−ヒスチジン、L−アルギニンを、それぞれ水に溶解させて個別に市販の孔径が0.22μmのフィルターを用いて滅菌した。次に、NaCl(培地における終濃度0.5%)を0.01mmol/L−リン酸緩衝液(pH6.8)に溶解させて121℃、15分間滅菌した。滅菌したリン酸緩衝液にグルコース溶液、カザミノ酸溶液、L−ヒスチジン溶液、L−アルギニン溶液を終濃度がそれぞれ表7に示した濃度になるように添加して調製した。また、以下の単位(%)は質量/体積濃度を示す。
【0058】
[表7]
グルコース 1.0%
カザミノ酸(Difco社製) 0.47%
L−ヒスチジン 0.1%
L−アルギニン 0.1%
【0059】
以上のようにしてカルノシン生産培地において培養したKlebsiella oxytoca HYFR8株の培養液を遠心加速度5000gで10分間遠心分離し、カルノシンを含有する培養上清を得た。培養上清をHPLCにより分析したところ、この培養上清のカルノシン濃度は32mg/Lであった。なお、HPLCの条件は、前述の、<Klebsiella oxytoca HYFR8株の取得>(カルノシン産生能を有する菌株のスクリーニング)の項目に記載の条件と同じものとした。
【0060】
以上の結果より、本発明の例示的態様である実施例1において、カルノシン産生能を有するKlebsiella oxytoca HYFR8株を培養することにより、安価な材料を用いて、かつ、比較的容易な方法でカルノシンを製造可能であることが示された。
【受託番号】
【0061】
受託番号 NITE P−02379
図1
図2
【配列表】
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