(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高温冷却ステージと、軸方向先端ステージ面を有する低温冷却ステージと、前記高温冷却ステージから前記低温冷却ステージへと軸方向に延在する冷凍機構造部と、を備える冷凍機と、
前記高温冷却ステージに熱的に結合される放射シールドであって、シールド主開口を定めるシールド前端と、前記軸方向先端ステージ面を前記シールド主開口に向けるよう前記冷凍機構造部を受け入れる冷凍機挿通孔を有するシールド底部と、を備える放射シールドと、
前記軸方向先端ステージ面を非接触に囲み、前記高温冷却ステージに熱的に結合される非接触キャップ部材と、
軸方向に前記非接触キャップ部材と前記高温冷却ステージとの間に配設され、前記低温冷却ステージに熱的に結合される低温クライオパネル部と、を備え、
前記低温クライオパネル部は、前記軸方向に垂直な径方向に延在するトップクライオパネルを含み、前記トップクライオパネルは、前記非接触キャップ部材の径方向外側まで延在していることを特徴とするクライオポンプ。
前記軸方向先端ステージ面は、前記シールド前端から前記シールド底部へのシールド深さの上半分に位置し、前記低温クライオパネル部のトップクライオパネルは、前記シールド深さの下半分に位置することを特徴とする請求項1または2に記載のクライオポンプ。
前記キャップ部材は、前記軸方向先端ステージ面の軸方向上方に位置するキャップ上端と、前記軸方向先端ステージ面の軸方向下方に位置するキャップ下端と、を備え、前記キャップ上端から前記キャップ下端へのキャップ軸長が前記キャップ上端から前記軸方向先端ステージ面への軸方向距離より長いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクライオポンプ。
前記キャップ上端から前記軸方向先端ステージ面への軸方向距離が、前記シールド前端から前記シールド底部へのシールド深さの1/10未満であることを特徴とする請求項4に記載のクライオポンプ。
前記シールド前端から前記低温クライオパネル部のトップクライオパネルへの軸方向距離は、前記シールド前端から前記軸方向先端ステージ面への軸方向距離の2倍以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のクライオポンプ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るクライオポンプ10を概略的に示す上面図である。
図2は、
図1に示されるクライオポンプ10のA−A線断面を概略的に示す。
【0012】
クライオポンプ10は、例えばイオン注入装置、スパッタリング装置、蒸着装置、またはその他の真空プロセス装置の真空チャンバに取り付けられて、真空チャンバ内部の真空度を所望の真空プロセスに要求されるレベルまで高めるために使用される。クライオポンプ10は、排気されるべきガスを真空チャンバから受け入れるための吸気口12を有する。吸気口12を通じてガスがクライオポンプ10の内部空間14に進入する。
【0013】
なお以下では、クライオポンプ10の構成要素の位置関係をわかりやすく表すために、「軸方向」、「径方向」との用語を使用することがある。軸方向は吸気口12を通る方向(
図2において上下方向)を表し、径方向は吸気口12に沿う方向(
図2において左右方向)を表す。便宜上、軸方向に関して吸気口12に相対的に近いことを「上」、相対的に遠いことを「下」と呼ぶことがある。つまり、クライオポンプ10の底部から相対的に遠いことを「上」、相対的に近いことを「下」と呼ぶことがある。径方向に関しては、吸気口12の中心に近いことを「内」、吸気口12の周縁に近いことを「外」と呼ぶことがある。なお、こうした表現はクライオポンプ10が真空チャンバに取り付けられたときの配置とは関係しない。例えば、クライオポンプ10は鉛直方向に吸気口12を下向きにして真空チャンバに取り付けられてもよい。
【0014】
また、軸方向を囲む方向を「周方向」と呼ぶことがある。周方向は、吸気口12に沿う第2の方向であり、径方向に直交する接線方向である。
【0015】
クライオポンプ10は、冷凍機16、1段クライオパネル18、2段クライオパネル20、及び、クライオポンプハウジング70を備える。1段クライオパネル18は、高温クライオパネル部または100K部とも称されうる。2段クライオパネル20は、低温クライオパネル部または10K部とも称されうる。
【0016】
冷凍機16は、例えばギフォード・マクマホン式冷凍機(いわゆるGM冷凍機)などの極低温冷凍機である。冷凍機16は、二段式の冷凍機である。そのため、冷凍機16は、第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24を備える。冷凍機16は、第1冷却ステージ22を第1冷却温度に冷却し、第2冷却ステージ24を第2冷却温度に冷却するよう構成されている。第2冷却温度は第1冷却温度よりも低温である。例えば、第1冷却ステージ22は65K〜120K程度、好ましくは80K〜100Kに冷却され、第2冷却ステージ24は10K〜20K程度に冷却される。よって、第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24はそれぞれ、高温冷却ステージ及び低温冷却ステージとも称しうる。
【0017】
また、冷凍機16は、第2冷却ステージ24を第1冷却ステージ22に構造的に支持するとともに第1冷却ステージ22を冷凍機16の室温部26に構造的に支持する冷凍機構造部21を備える。そのため冷凍機構造部21は、軸方向に沿って同軸に延在する第1シリンダ23及び第2シリンダ25を備える。第1シリンダ23は、冷凍機16の室温部26を第1冷却ステージ22に接続する。第2シリンダ25は、第1冷却ステージ22を第2冷却ステージ24に接続する。室温部26、第1シリンダ23、第1冷却ステージ22、第2シリンダ25、及び第2冷却ステージ24は、この順に直線状に一列に並ぶ。
【0018】
第1シリンダ23及び第2シリンダ25それぞれの内部には第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサ(図示せず)が往復動可能に配設されている。第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサにはそれぞれ第1蓄冷器及び第2蓄冷器(図示せず)が組み込まれている。また、室温部26は、第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサを往復動させるための駆動機構(図示せず)を有する。駆動機構は、冷凍機16の内部への作動ガス(例えばヘリウム)の供給と排出を周期的に繰り返すよう作動ガスの流路を切り替える流路切替機構を含む。
【0019】
冷凍機16は、作動ガスの圧縮機17に接続されている。冷凍機16は、圧縮機17により加圧された作動ガスを内部で膨張させて第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24を冷却する。膨張した作動ガスは圧縮機17に回収され再び加圧される。冷凍機16は、作動ガスの給排とこれに同期した第1ディスプレーサ及び第2ディスプレーサの往復動とを含む熱サイクルを繰り返すことによって寒冷を発生させる。
【0020】
図示されるクライオポンプ10は、いわゆる縦型のクライオポンプである。一般に、縦型のクライオポンプとは、冷凍機16がクライオポンプ10の中心軸に沿って配設されているクライオポンプをいう。
【0021】
クライオポンプハウジング70は、1段クライオパネル18、2段クライオパネル20、及び冷凍機16を収容するクライオポンプ10の筐体であり、内部空間14の真空気密を保持するよう構成されている真空容器である。クライオポンプハウジング70は、1段クライオパネル18及び冷凍機構造部21を非接触に包含する。クライオポンプハウジング70は、冷凍機16の室温部26に取り付けられている。
【0022】
クライオポンプハウジング70は、その前端から径方向外側に向けて延びている吸気口フランジ72を備える。吸気口フランジ72は、クライオポンプハウジング70の全周にわたって設けられている。吸気口フランジ72が吸気口12を画定する。クライオポンプ10は、吸気口フランジ72を用いて真空排気対象の真空チャンバに取り付けられる。
【0023】
図示されるように、入口クライオパネル31は、軸方向に吸気口フランジ72の上方に位置してもよい。ただし、入口クライオパネル31は、クライオポンプ10が取り付けられる真空チャンバ(または真空チャンバとクライオポンプ10との間のゲートバルブ(図示せず))に干渉しないように定められている。
【0024】
1段クライオパネル18は、2段クライオパネル20を包囲する。1段クライオパネル18は、クライオポンプ10の外部またはクライオポンプハウジング70からの輻射熱から2段クライオパネル20を保護するための極低温表面を提供する。1段クライオパネル18は第1冷却ステージ22に熱的に結合されている。よって1段クライオパネル18は第1冷却温度に冷却される。1段クライオパネル18は2段クライオパネル20との間に隙間を有しており、1段クライオパネル18は2段クライオパネル20と接触していない。1段クライオパネル18はクライオポンプハウジング70とも接触していない。
【0025】
1段クライオパネル18は、放射シールド30、入口クライオパネル31、及び非接触キャップ部材(以下、キャップ部材ともいう)32を備える。
【0026】
放射シールド30は、クライオポンプハウジング70の輻射熱から2段クライオパネル20を保護するために設けられている。放射シールド30は、クライオポンプハウジング70と2段クライオパネル20との間にあり、2段クライオパネル20を囲む。放射シールド30は、クライオポンプ10の外部から内部空間14にガスを受け入れるためのシールド主開口34を有する。シールド主開口34は、吸気口12に位置する。
【0027】
放射シールド30は、シールド主開口34を定めるシールド前端36と、シールド主開口34と反対側に位置するシールド底部38と、シールド前端36をシールド底部38に接続するシールド側部40と、を備える。シールド側部40は、第2冷却ステージ24を包囲するよう周方向に延在する。
【0028】
シールド底部38は、その中心部に、冷凍機構造部21を受け入れる冷凍機挿通孔42を有する。冷凍機挿通孔42を通じて放射シールド30の外から第2冷却ステージ24及び第2シリンダ25が放射シールド30の中に挿入される。冷凍機挿通孔42は、シールド底部38に形成された取付穴であり、例えば円形である。第1冷却ステージ22は放射シールド30の外に配置されている。
【0029】
放射シールド30は、伝熱スリーブ44を介して第1冷却ステージ22に熱的に結合されている。伝熱スリーブ44の一端が冷凍機挿通孔42を囲むようにシールド底部38に取り付けられ、伝熱スリーブ44の他端が第1冷却ステージ22に取り付けられている。なお、放射シールド30は、第1冷却ステージ22に直接取り付けられてもよい。
【0030】
図示される実施形態においては、放射シールド30は一体の筒状に構成されている。これに代えて、放射シールド30は、複数のパーツにより全体として筒状の形状をなすように構成されていてもよい。これら複数のパーツは互いに間隙を有して配設されていてもよい。例えば、放射シールド30は軸方向に2つの部分に分割されていてもよい。
【0031】
冷凍機16には、第2シリンダ25を包囲する第2シリンダカバー27が設けられている。第2シリンダカバー27は、第2冷却ステージ24から第1冷却ステージ22に向けて放射シールド30を貫通して延びている。第2シリンダカバー27は、放射シールド30と接触せずに冷凍機挿通孔42を通過する。第2シリンダ25の露出を最小化するように第2シリンダカバー27の端部は第1冷却ステージ22に近接しているが接触はしていない。第2シリンダカバー27は第2冷却ステージ24に熱的に結合されているので、第2冷却温度に冷却される。
【0032】
また、第2冷却ステージ24は、軸方向先端ステージ面(以下、先端ステージ面ともいう)24aを備える。冷凍機挿通孔42は、先端ステージ面24aがシールド主開口34を向くよう冷凍機構造部21(第2シリンダ25)を受け入れる。よって、先端ステージ面24aは、冷凍機16のうち軸方向に最も上方に位置する部位である。
【0033】
入口クライオパネル31は、クライオポンプ10の外部の熱源(例えば、クライオポンプ10が取り付けられる真空チャンバ内の熱源)からの輻射熱から2段クライオパネル20を保護するために、シールド主開口34に設けられている。入口クライオパネル31は、輻射熱だけではなくクライオポンプ10へのガス分子の進入も制限する。入口クライオパネル31は、放射シールド30内へのガス流入を所望量に制限するようにシールド主開口34の開口面積の一部(例えば大部分)を占有する。また、入口クライオパネル31の冷却温度で凝縮するガス(例えば水分)がその表面に捕捉される。
【0034】
入口クライオパネル31はジョイントブロック46を介してシールド前端36に取り付けられる。こうして入口クライオパネル31は放射シールド30に固定され、放射シールド30に熱的に接続されている。入口クライオパネル31はシールド主開口34の中心部に配置されている。
【0035】
入口クライオパネル31は、複数の羽板31aから形成されており、各羽板31aはそれぞれ径の異なる円すい台側面の形状に形成されて同心円状に配列されている。
図1では各羽板31aの間に隙間があるが、隣接する羽板31aが互いに重なり合って上から見たときに隙間のないよう各羽板31aが密に配列されてもよい。各羽板31aは十字形状の支持部材31bの上面に取り付けられ、この支持部材31bがジョイントブロック46に取り付けられている。
【0036】
ジョイントブロック46は、シールド前端36から径方向内側に突き出す凸部であり、周方向に等間隔(例えば90°おき)に形成されている。入口クライオパネル31は適切な手法でジョイントブロック46に固定される。例えば、ジョイントブロック46及び支持部材31bはそれぞれボルト孔(図示せず)を有し、支持部材31bがジョイントブロック46にボルト留めされる。
【0037】
入口クライオパネル31は、吸気口12に配設される平面的な構造を備える。よって、入口クライオパネル31は、同心円状ではなく、格子状等他の形状に形成されていてもよい。また、入口クライオパネル31は、平板(例えば円板)のプレートを備えてもよい。
【0038】
キャップ部材32は、先端ステージ面24aを非接触に囲む。キャップ部材32は、入口クライオパネル31の中心部から吊下され、軸方向下方に向けて延びている。キャップ部材32は、先端ステージ面24aを覆う箱状の非接触カバー(または蓋)である。キャップ部材32は例えば、下端が開放された直方体形状であるが、円筒状などその他の形状を有してもよい。
【0039】
キャップ部材32は、入口クライオパネル31に取り付けられている。よって、キャップ部材32は、入口クライオパネル31および放射シールド30を介して第1冷却ステージ22に熱的に結合される。キャップ部材32は、第1冷却ステージ22とは物理的に接触していない。また、キャップ部材32は、放射シールド30とも物理的に接触していない。キャップ部材32を第1冷却ステージ22(または放射シールド30)と物理的に直接取り付けて熱的に結合する場合に比べて、キャップ部材32の形状をより単純にすることができる。
【0040】
キャップ部材32は、キャップ上端32a、キャップ側部32b、及びキャップ下端32cを備える。キャップ上端32aは、支持部材31bの下面に取り付けられ、先端ステージ面24aの軸方向上方に位置する。キャップ上端32aは、先端ステージ面24aに面する板状部分である。キャップ側部32bは、キャップ上端32aの外周部から軸方向下方に延びる筒状部分(例えば矩形の筒状)であり、キャップ下端32cで終端する。キャップ下端32cは、先端ステージ面24aの軸方向下方に位置する。キャップ下端32cは開放されているから、キャップ部材32はキャップ下端32cに底板を有しない。
【0041】
キャップ上端32aは、先端ステージ面24aと軸方向にごく近接して配設される。
【0042】
本書において、ある部材と他の部材とが「ごく近接して配設される」との言及は、それら2つの部材の温度差が保たれるよう非接触に配設されることを指す。2つの部材間には、例えば、少なくとも3mm、または少なくとも5mm、または少なくとも7mmの隙間がある。隙間は、例えば、20mm以内、または15mm以内、または10mm以内であってもよい。
【0043】
キャップ上端32aから先端ステージ面24aへの軸方向距離33は、例えば、シールド前端36からシールド底部38へのシールド深さ41の1/10未満である。軸方向距離33は、シールド深さ41の1/20未満であってもよい。このように第2冷却ステージ24はキャップ部材32に近いので、クライオポンプ10の軸方向の全長を短くすることができる。
【0044】
キャップ上端32aからキャップ下端32cへのキャップ軸長32dは、キャップ上端32aから先端ステージ面24aへの軸方向距離33より長い。キャップ軸長32dは、軸方向距離33の2倍より長く、または5倍より長く、または10倍より長くてもよい。このようにして、キャップ部材32は第2冷却ステージ24の全体を覆うことができる。よって、キャップ部材32は、第2冷却ステージ24への凝縮物の付着を抑制することができる。
【0045】
ただし、キャップ部材32は、第2シリンダ25については一部のみを覆うにすぎない。キャップ下端32cは、第2シリンダ25のうち第2冷却ステージ24と隣接する部位を囲んでいる。キャップ部材32は、冷凍機16の第2段のうち低温部のみを覆う。ここで、冷凍機16の第2段は、第2冷却ステージ24及び第2シリンダ25を含む。
【0046】
また、キャップ軸長32dは、入口クライオパネル31からトップクライオパネル52への軸方向距離より短い。このようにして、入口クライオパネル31の下方かつトップクライオパネル52の上方のスペースにキャップ部材32を収めることができる。キャップ上端32aが入口クライオパネル31の下面に取り付けられており、キャップ部材32は、入口クライオパネル31の上方には突き出していない。
【0047】
2段クライオパネル20は、複数のクライオパネル50を備える。また、第2冷却ステージ24から軸方向に下方に向けて延びる低温クライオパネル取付部材(以下、クライオパネル取付部材ともいう)51が設けられている。2段クライオパネル20は、クライオパネル取付部材51を介して第2冷却ステージ24に取り付けられている。このようにして、2段クライオパネル20は、第2冷却ステージ24に熱的に接続されている。よって、2段クライオパネル20は第2冷却温度に冷却される。
【0048】
複数のクライオパネル50が、シールド主開口34からシールド底部38へと向かう方向に沿って(即ち軸方向に)クライオパネル取付部材51上に配列されている。複数のクライオパネル50はそれぞれ軸方向に垂直に延在する平板(例えば円板)であり、互いに平行にクライオパネル取付部材51に取り付けられている。説明の便宜上、複数のクライオパネル50のうち最も吸気口12に近いものをトップクライオパネル52と呼び、複数のクライオパネル50のうち最もシールド底部38に近いものをボトムクライオパネル53と呼ぶことがある。
【0049】
複数のクライオパネル50は図示されるようにそれぞれ同一形状を有してもよいし、あるいは異なる形状(例えば異なる径)を有してもよい。また、複数のクライオパネル50の間隔は図示されるように一定であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0050】
2段クライオパネル20においては、少なくとも一部の表面に吸着領域54が形成されている。吸着領域54は非凝縮性ガス(例えば水素)を吸着により捕捉するために設けられている。吸着領域54は、例えば、各クライオパネル50の下面に形成されている。吸着領域54は例えば吸着材(例えば活性炭)をクライオパネル表面に接着することにより形成される。
【0051】
2段クライオパネル20の少なくとも一部の表面には凝縮性ガスを凝縮により捕捉するための凝縮領域56が形成されている。凝縮領域56は、例えば、各クライオパネル50の上面に形成されている。凝縮領域56は例えば、クライオパネル表面上で吸着材の欠落した区域であり、クライオパネル基材表面例えば金属面が露出されている。
【0052】
トップクライオパネル52は比較的大型であり、そのため、放射シールド30との間に比較的狭い径方向隙間58を形成する。トップクライオパネル52の径は、例えば、シールド主開口34の径の70%以上である。また、トップクライオパネル52の径はシールド主開口34の径の98%以下である。こうして、トップクライオパネル52が放射シールド30に確実に非接触とすることができる。
【0053】
トップクライオパネル52は、軸方向にキャップ下端32cとごく近接して配設される。トップクライオパネル52がキャップ下端32cから非接触に配設され、トップクライオパネル52とキャップ部材32との温度差が保たれる。
【0054】
シールド前端36からトップクライオパネル52への軸方向距離は、シールド前端36から先端ステージ面24aへの軸方向距離(または、キャップ上端32aから先端ステージ面24aへの軸方向距離33)の2倍以上であってもよい。また、シールド前端36からトップクライオパネル52への軸方向距離は、シールド前端36から先端ステージ面24aへの軸方向距離の5倍以上または10倍以上であってもよい。このようにして、軸方向に比較的広い環状の空きスペース64が入口クライオパネル31とトップクライオパネル52との間に形成される。
【0055】
2段クライオパネル20は、軸方向においてキャップ部材32とシールド底部38との間に配設される。第1冷却ステージ22がシールド底部38よりも軸方向に下方にあるから、2段クライオパネル20は、軸方向にキャップ部材32と第1冷却ステージ22との間に配設される。先端ステージ面24aは、シールド前端36からシールド底部38へのシールド深さ41の上半分41aに位置する。先端ステージ面24aには、どのクライオパネル50も設けられていない。トップクライオパネル52は、シールド深さ41の下半分41bに位置する(すなわち、すべてのクライオパネル50がシールド深さ41の下半分41bに位置する)。あるいは、トップクライオパネル52(すなわちクライオパネル50)は、シールド深さ41を三等分した領域のうち最下領域に位置してもよい。このことも、空きスペース64を広くすることに役立つ。
【0056】
キャップ部材32とシールド側部40との径方向距離62は、クライオパネル50とシールド側部40の径方向隙間58より大きい。これにより、空きスペース64を径方向に広くなる。空きスペース64は、トップクライオパネル52上に凝縮して堆積する凝縮物を収容するための何も無い空間である。キャップ側部32bとシールド側部40との間にはクライオパネルまたはその他の部材は設けられていない。とくに、キャップ側部32bの外周面には、他の部材は取り付けられていない。
【0057】
クライオパネル取付部材51は、キャップ部材32と第2冷却ステージ24との隙間60において第2冷却ステージ24から2段クライオパネル20へと延在する。クライオパネル取付部材51の上端が第2冷却ステージ24に取り付けられ、下端がボトムクライオパネル53に取り付けられている。こうして、クライオパネル取付部材51は、先端ステージ面24aからボトムクライオパネル53へと延在する。クライオパネル取付部材51は、径方向にキャップ側部32bとごく近接して配設される。
【0058】
キャップ部材32(より具体的には、キャップ側部32b)と第2シリンダ25との径方向距離(すなわち隙間60の幅)は、第2シリンダ25の径より小さい。キャップ部材32と第2シリンダ25との径方向距離は、第2シリンダ25の半径または第2シリンダ25の径の1/4より小さくてもよい。このようにすれば、キャップ部材32が第2シリンダ25に近接して配置されるので、空きスペース64を広くとることができる。空きスペース64に所望の容積を確保するために吸気口12の口径(または、クライオポンプハウジング70または放射シールド30の径)を不必要に大きくすることを避けることができる。また、隙間60を狭くすることにより、隙間60へのガスの流入を抑制することができる。
【0059】
また、キャップ部材32の径は、第1シリンダ23の径と同程度であってもよく、または、第1シリンダ23の径より小さくてもよい。
【0060】
図3は、第1実施形態に係るクライオパネル取付部材51を概略的に示す斜視図である。
図3においては理解の容易のために、キャップ部材32を破線で示すとともに、クライオパネル50の図示は省略する。
【0061】
クライオパネル取付部材51は、先端ステージ面24aがキャップ部材32と直接面するよう第2冷却ステージ24の側面24bに取り付けられている。クライオパネル取付部材51は先端ステージ面24aを覆わないので、その分だけ先端ステージ面24aをキャップ部材32に近づけることができる。このこともクライオポンプ10の軸長の短縮に役立つ。
【0062】
図4は、第1実施形態に係るトップクライオパネル52を概略的に示す上面図である。上述のように、トップクライオパネル52の上面は全域が凝縮領域56であり吸着材は設けられていない。トップクライオパネル52の下面には破線で図示するように吸着領域54が設けられている。
【0063】
トップクライオパネル52には、外周の一部分から中心部へと切欠部52aが形成されている。切欠部52aは、クライオパネル取付部材51にトップクライオパネル52を取り付けるために設けられている。切欠部52aが設けられていることにより、トップクライオパネル52は、横型のクライオポンプと共用することができる(つまり、横型のクライオポンプへの取付が容易である)。
【0064】
なお、トップクライオパネル52は、切欠部52aのうち外周部分を有しなくてもよい。この場合、トップクライオパネル52は、中心穴を有する円板状またはドーナツ状であってもよい。あるいは、トップクライオパネル52は、切欠部52aを有さず、円板状であってもよい。
【0065】
上記の構成のクライオポンプ10の動作を以下に説明する。クライオポンプ10の作動に際しては、まずその作動前に他の適当な粗引きポンプで真空チャンバ内部を1Pa程度にまで粗引きする。その後、クライオポンプ10を作動させる。冷凍機16の駆動により第1冷却ステージ22及び第2冷却ステージ24がそれぞれ第1冷却温度及び第2冷却温度に冷却される。よって、これらに熱的に結合されている1段クライオパネル18、2段クライオパネル20もそれぞれ第1冷却温度及び第2冷却温度に冷却される。
【0066】
入口クライオパネル31は、真空チャンバからクライオポンプ10に向かって飛来するガスを冷却する。入口クライオパネル31の表面には、第1冷却温度で蒸気圧が充分に低い(例えば10
−8Pa以下の)ガスが凝縮する。このガスは、第1種ガスと称されてもよい。第1種ガスは例えば水蒸気である。こうして、入口クライオパネル31は、第1種ガスを排気することができる。第1冷却温度で蒸気圧が充分に低くないガスの一部は、吸気口12から内部空間14へと進入する。あるいは、ガスの他の一部は、入口クライオパネル31で反射され、内部空間14に進入しない。
【0067】
内部空間14に進入したガスは、2段クライオパネル20によって冷却される。2段クライオパネル20の表面には、第2冷却温度で蒸気圧が充分に低い(例えば10
−8Pa以下の)ガスが凝縮する。このガスは、第2種ガスと称されてもよい。第2種ガスは例えばアルゴンである。こうして、2段クライオパネル20は、第2種ガスを排気することができる。
【0068】
第2冷却温度で蒸気圧が充分に低くないガスは、2段クライオパネル20の吸着材に吸着される。このガスは、第3種ガスと称されてもよい。第3種ガスは例えば水素である。こうして、2段クライオパネル20は、第3種ガスを排気することができる。したがって、クライオポンプ10は、種々のガスを凝縮または吸着により排気し、真空チャンバの真空度を所望のレベルに到達させることができる。
【0069】
図5は、あるクライオポンプ80の運転中の様子を概略的に示す。クライオポンプ80においては、第2冷却ステージ81の上面に2段クライオパネル82が取り付けられている。そのため、2段クライオパネル82と1段クライオパネル83との間の空間が比較的狭い。図示されるように、クライオポンプ80の使用につれて2段クライオパネル82には第2種ガスが凝縮し、霜状の凝縮物84が成長する。凝縮物84が1段クライオパネル83に接触すると、凝縮物84からガスが気化する。こうしてクライオポンプ80は吸蔵限界に達する。
【0070】
図6は、第1実施形態に係るクライオポンプ10の運転中の様子を概略的に示す。
図6においては簡明のため、トップクライオパネル52に堆積する凝縮物66を示し、他のクライオパネル50に堆積する凝縮物の図示を省略する。
【0071】
クライオポンプ10には上述のように、凝縮物66を収容するために、広い空きスペース64が確保されている。先端ステージ面24aがキャップ部材32で覆われているので、先端ステージ面24aにはガスがほとんど又は全く凝縮しない。先端ステージ面24aだけでなく、第2冷却ステージ24の全体およびその近傍のクライオパネル取付部材51もキャップ部材32で覆われている。このようにして、第2種ガスの吸蔵限界が向上されたクライオポンプ10を提供することができる。とくに、縦型クライオポンプにおける第2種ガスの吸蔵量を向上することができる。
【0072】
また、第2冷却ステージ24が入口クライオパネル31にごく近接して配設される。そのため、クライオポンプ10の軸方向の全長を短くすることができる。軸長が短縮された縦型クライオポンプを提供することができる。
【0073】
図7は、第2実施形態に係るクライオポンプ10を概略的に示す上面図である。
図8は、
図7に示されるクライオポンプ10のB−B線断面を概略的に示す。第2実施形態において第1実施形態と同様の箇所については冗長を避けるため説明を適宜省略する。
【0074】
第1実施形態と異なり、クライオパネル50は円すい状の形状を有する。トップクライオパネル52は、シールド深さ41の上半分41aに位置し、ボトムクライオパネル53は、シールド深さ41の下半分41bに位置する。
【0075】
しかし、第1実施形態と同様に、トップクライオパネル52は、軸方向にキャップ部材32とごく近接して配設される。シールド前端36からトップクライオパネル52への軸方向距離は、シールド前端36から先端ステージ面24aへの軸方向距離の2倍以上である。
【0076】
第1実施形態と同様に、キャップ部材32は、放射シールド30及び冷凍機16の第1冷却ステージとは物理的に接触していない。キャップ部材32は、入口クライオパネル31を介して放射シールド30に取り付けられ、冷凍機16の第1冷却ステージに熱的に結合されている。また、キャップ部材32と冷凍機16の第2シリンダとの径方向距離は、第2シリンダの径より小さい。
【0077】
キャップ部材32とトップクライオパネル52との接触を避けるため、第2実施形態においては、軸長が短いキャップ部材32が用いられる。キャップ部材32の軸長は、キャップ上端32aから先端ステージ面24aへの軸方向距離より長い。キャップ上端32aから先端ステージ面24aへの軸方向距離がシールド深さ41の1/10未満であってもよい。また、キャップ部材32の軸長は、入口クライオパネル31からトップクライオパネル52への軸方向距離より短い。
【0078】
クライオパネル取付部材51は、先端ステージ面24aがキャップ部材32と直接面するよう第2冷却ステージ24の側面に取り付けられている。
【0079】
入口クライオパネル31は、プレート部材を備える。プレート部材は、シールド主開口34を横断する一枚の平板(例えば円板)であり、ジョイントブロック46を介してシールド前端36に取り付けられている。プレート部材の下面中心部にはキャップ上端32aが取り付けられている。プレート部材には、キャップ上端32aを囲むように小孔31cが配列されている。小孔31cはプレート部材を貫通しており、小孔31cを通じてクライオポンプ10の外から中へのガス流れが許容される。
【0080】
このように、キャップ部材32は、任意の縦型クライオポンプに適用することができる。
【0081】
第2実施形態においても先端ステージ面24aを入口クライオパネル31にごく近接して配設することができるので、クライオポンプ10の軸方向の全長を短くすることができる。軸長が短縮された縦型クライオポンプを提供することができる。
【0082】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。