(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体のガラス転位温度(Tg)が、60℃以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の化粧板。
表面に凹凸を有する樹脂基材上に、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート40〜95質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体60〜5質量部[ただし、(A)と(B)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)と(B)の合計量に対して1〜10質量部を含んでなる硬化性コーティング材を被覆し、次いで鏡面転写した後、前記硬化性コーティング材を硬化させて、基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下の膜厚の被覆膜が積層された化粧板を製造する方法。
表面に凹凸を有する樹脂基材上に、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート30〜75質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体5〜50質量部、および(C)60℃における粘度が500〜3000mPa・sであり重合性基を3個有するウレタンアクリレート20〜65質量部[ただし、(A)、(B)および(C)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)、(B)および(C)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなる硬化性コーティング材を被覆し、次いで鏡面転写した後、前記硬化性コーティング材を硬化させて、基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下の膜厚の被覆膜が積層された化粧板を製造する方法。
(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体のガラス転位温度(Tg)が、60℃以上であることを特徴とする請求項7〜9の何れか一項に記載の化粧板を製造する方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは上記問題点について鋭意検討した結果、硬化性コーティング材の組成と、当該コーティング材を硬化させて形成する被覆膜の構造や厚みとで解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
更に、鏡面の発現と共に被覆膜に柔軟性を付与して曲げ部における鏡面表面のクラック発生を防止した化粧板も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明によって、
表面に凹凸を有する樹脂基材上に、被覆膜が積層された化粧板であって、
被覆膜が、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート40〜95質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体60〜5質量部[ただし、(A)と(B)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)と(B)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなる硬化性コーティング材の硬化体からなり、
樹脂基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下の膜厚の被覆膜を有
し、被覆膜の表面粗さが0.1μm以下であって光沢度が80以上である
ことを特徴とする前記化粧板が提供される。
上記化粧板の発明において、硬化性コーティング材が、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート50〜80質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体50〜20質量部[ただし、(A)と(B)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)と(B)の合計量に対して1〜7質量部を、含んでなることが好適である。
【0006】
また、本発明によって、
表面に凹凸を有する樹脂基材上に、被覆膜が積層された化粧板であって、
被覆膜が、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート30〜75質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体5〜50質量部、および(C)60℃における粘度が500〜3000mPa・sであり重合性基を3個有するウレタンアクリレート20〜65質量部[ただし、(A)、(B)および(C)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)、(B)および(C)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなる硬化性コーティング材の硬化体からなり、
樹脂基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下の膜厚の被覆膜を有
し、被覆膜の表面粗さが0.1μm以下であって光沢度が80以上である
ことを特徴とする前記化粧板が提供される。
【0007】
上記各化粧板の発明において、
1)(A)多官能アクリレートが、多官能ウレタンアクリレートであること、
2)(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体のガラス転位温度(Tg)が、60℃以上であること、
3)表面に凹凸を有する樹脂基材が、表面の算術平均粗さ(Ra)が1〜100μmのインクジェット印刷樹脂基材であること、
4)表面に凹凸を有する樹脂基材が、表面の算術平均粗さ(Ra)が1〜10μmの発泡樹脂基材である
こと
が好適である。
【0008】
更に、他の発明によって、
表面に凹凸を有する樹脂基材上に、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート40〜95質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体60〜5質量部[ただし、(A)と(B)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)と(B)の合計量に対して1〜10質量部を含んでなる硬化性コーティング材を被覆し、次いで鏡面転写した後、前記硬化性コーティング材を硬化させて、基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下の膜厚の被覆膜が積層された化粧板を製造する方法が提供される。
上記化粧板を製造する方法の発明において、硬化性コーティング材が、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレー50〜80質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体50〜20質量部[ただし、(A)と(B)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)と(B)の合計量に対して1〜7質量部を、含んでなることが好適である。
【0009】
更にまた、他の発明によって
表面に凹凸を有する樹脂基材上に、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート30〜75質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体5〜50質量部、および(C)60℃における粘度が500〜3000mPa・sであり重合性基を3個有するウレタンアクリレート20〜65質量部[ただし、(A)、(B)および(C)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)、(B)および(C)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなる硬化性コーティング材を被覆し、次いで鏡面転写した後、前記硬化性コーティング材を硬化させて、基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下の膜厚の被覆膜が積層された化粧板を製造する方法が提供される。
【0010】
上記各化粧板を製造する方法の発明において、
6)(A)多官能アクリレートが、多官能ウレタンアクリレートであること、
7)(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体のガラス転位温度(Tg)が、60℃以上であること、
8)鏡面転写が、フィルム鏡面転写であること、
9)化粧板表面の光沢度が、80以上であること
が好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧板は、その表面には梨はだ状態が認められず、極めて均一で光沢性のある鏡面を有する。当該化粧板が、通常の転写法を用いて簡便且つ再現性良く製造される。更に、鏡面を構成する被覆膜が柔軟性に富み、曲げ部からのクラック発生を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化粧板は、樹脂基材とその上に積層された、鏡面を有する被覆膜とからなる。被覆膜は、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート40〜95質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体60〜5質量部[ただし、(A)と(B)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)と(B)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなる硬化性コーティング材(I)の硬化体からなり、その厚みは、基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下であるという特徴を有している。
更に、鏡面の発現と共に鏡面を構成する被覆膜に柔軟性を付与して、曲げ部からのクラックの発生を防止するために、被覆膜は、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート30〜75質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体5〜50質量部、および(C)60℃における粘度が500〜3000mPa・sであり重合性基を3個有するウレタンアクリレート20〜65質量部[ただし、(A)、(B)および(C)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)、(B)および(C)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなる硬化性コーティング材(II)の硬化体からなり、その厚みは、基材の凸部頂点からの厚みが5μm以上であり、凹部底点からの厚みが500μm以下であるという特徴を有している。
【0014】
[樹脂基材]
化粧板は、軽量化を図るために樹脂製の基材を用いるが、特に発泡樹脂基材が好ましく採用される。当該発泡樹脂基材としては、発泡塩化ビニル樹脂基材、発泡スチレン樹脂基材、発泡ポリエチレン樹脂基材、発泡ポリプロピレン樹脂基材等が挙げられるが、加工性の点で、特に発泡塩化ビニル樹脂基材が好適である。
これらの発泡樹脂基材は、通常、その表面は、算術平均粗さ(Ra)が1〜10μm程度の凹凸状態となっている(株式会社東京精密製:ハンディサーフ E−35Aを用いて測定)。
上記樹脂基材は、化粧板に木目調の模様等を付与するために印刷が施されていてもよい。印刷方法として、簡便性、再現性の点で、インクジェット印刷が好適であり、このインクジェット印刷としては、従来公知の方法が何ら制限なく採用される。
上記インクジェット印刷がなされた樹脂基材は、通常、その表面はインクのドットの分布の偏りによって変化しており、算術平均粗さ(Ra)が1〜100μm程度の凹凸状態となっている(株式会社東京精密製:ハンディサーフ E−35Aにて測定)。
いずれの樹脂基材を用いた場合も、この樹脂基材表面の凹凸が、その上に鏡面用の被覆膜を積層した場合に被覆膜表面を梨はだ状態にして、鏡面の形成を妨げる要因となる。
【0015】
[硬化性コーティング材]
後出の鏡面形成のための鏡面転写工程において、一様で優れた光沢性を有する鏡面を発現させ、しかも、耐温水性、耐擦傷性および硬度、更には、樹脂基材、印刷面との密着性を向上させるため、当該硬化性コーティング材の成分組成とその配合比率が重要となる。
即ち、本発明の硬化性コーティング材(I)は、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート40〜95質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体60〜5質量部[ただし、(A)と(B)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)と(B)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなることを特徴とする。
【0016】
更に、鏡面や上記諸特性の発現と併せて被覆膜の柔軟性を向上させるために、硬化性コーティング材(II)は、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート30〜75質量部、(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体5〜50質量部、および(C)60℃における粘度が500〜3000mPa・sであり重合性基を3個有するウレタンアクリレート20〜65質量部[ただし、(A)、(B)および(C)の合計量は100質量部とする]、および(D)重合開始剤が(A)、(B)および(C)の合計量に対して1〜10質量部を、含んでなることを特徴とする。
本発明の化粧板は、施工時に曲げられたり、曲面状に施行されたりする場合がある。(C)3官能ウレタンアクリレート成分を配合しないと、曲げ部に応力が掛かった場合にクラックが発生し商品価値を無くすため、平板での利用以外の利用形態がある場合は(C)成分の存在と配合量が重要となる。
上記各硬化性コーティング材は、樹脂基材上に被覆され、その後転写、硬化工程を経て鏡面を有する被覆膜となる。
【0017】
[(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有する多官能アクリレート;以下、多官能アクリレートという]
当該多官能アクリレートは、(A)25℃における粘度が10000mPa・s以上であり重合性基を5個以上有することが必要である。
粘度が10000mPa・s未満では、被覆膜表面の梨はだが解消されないだけでなく、クラックが発生しやすく耐温水性や耐擦傷性も劣る。重合性基が5個未満の多官能アクリレートでは、密着性等が劣るだけでなく、本発明の目的である被覆膜表面の梨はだが解消されない。被覆膜の硬度に優れる点から重合性基が6個以上のものが好ましく、表面の艶(光沢性)、表面硬度、耐擦傷性及び耐温水性の観点から重合性基が9個以上ある多官能アクリレートが特に好ましい。粘度の上限は特に限定されないが、塗布操作性、硬化性コーティング材の調整のし易さから2000000mPa・s程度までが好ましい。
多官能アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能エステルアクリレート、以下の方法で製造される多官能ウレタンアクリレートなどが挙げられる。特に、多官能ウレタンアクリレートが、架橋密度が高くて被覆層の硬度が高くなる一方、柔軟性がありクラックの発生が防止できるため好ましく採用される。
多官能ウレタンアクリレートは、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて得られるイソシアネート化合物を、水酸基を複数有している(メタ)アクリレート化合物と付加反応させて得られる重合性化合物であり、これら両原料を、(メタ)アクリロイル基が5倍モル以上となる量比で用いて、それ自体公知の方法で反応させて得ることができる。
ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール化合物、ポリエーテルポリオール化合物、ポリカーボネートジオール化合物等が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートや1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ジイソシアネートが例示される。一方の原料となる(メタ)アクリレート化合物としては、トリメチロールプロバン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタオエリスリトール(メタ)アクリレートが例示される。
【0018】
具体的な多官能ウレタンアクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー;グリセリンジ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、グリセリンジ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー等が挙げられるが、これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。なお、これら多官能ウレタンアクリレートは、例えば、アートレジンシリーズ(根上工業社),NKオリゴシリーズ(新中村工業社)、紫光シリーズ(日本合成化学社)、ウレタンアクリレートシリーズ(共栄社化学社)等として市販されており、一般に入手可能である。
上記多官能性アクリレートは、塗布を容易にするための粘度調整や硬化後の表面硬度向上の観点から、複数組み合せて用いることが好ましい。
【0019】
[(B)25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有するアクリレート単量体;以下、低官能アクリレート単量体という]
当該低官能アクリレート単量体は、25℃における粘度が1500mPa・s以下であり重合性基を1または2個有することが必要である。
粘度が1500mPa・sを超えると、凹凸を有する印刷面などとの密着性が悪くなり好ましくない。粘度の下限は特に限定されないが、塗布操作性の観点から5mPa・s程度までが好ましい。該アクリレート単量体を所定量含有させずに、重合性基が2個を超える数のアクリレート単量体のみで構成した場合は、梨はだが発生し、更に耐温水性および耐擦傷性も低下する。
アクリレート単量体としては、メチル(メタ)アクリリレート、エチル(メタ)アクリリレート、nープロピル(メタ)アクリリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、iso−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキエチルサクシネート等の一官能アクリレート単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサインジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の二官能アクリレート単量体などが挙げられる。特に二官能アクリレート単量体が、耐温水性、クラック防止の点で好ましく採用される。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタアクリレートの両方を含む概念である。
これら低官能アクリレート単量体は、複数組み合せて用いてもよい。
【0020】
[(C)60℃における粘度が500〜3000mPa・sであり重合性基を3個有するウレタンアクリレート;以下3官能ウレタンアクリレートという]
3官能ウレタンアクリレートは、分子内にウレタン結合を有し、60℃における粘度が500〜3000mPa・sであって重合性基を3個有するウレタンアクリレート化合物である。
当該3官能ウレタンアクリレートは、60℃における粘度が500〜3000mPa・sであることが重要である。500mPa・s未満である場合は、クラックの発生や曲げ耐性の点では満足できるが密着性、耐温水性、耐擦傷性、鉛筆硬度が悪化する。3000mPa・sを超えると凹凸を有する印刷面などとの密着性が悪くなる。
当該3官能ウレタンアクリレートの製法等は、(A)多官能アクリレートの項の多官能ウレタンアクリレートの記載に準じる。
具体的には、巴工業社「CNシリーズ」、ダイセル社「EBECRYLシリーズ」、日本合成化学社「紫光シリーズ」として市販されており一般に入手可能である。
【0021】
[硬化性コーティング材]
本発明の硬化性コーティング材(I)は、前記(A)多官能アクリレートと前記(B)低官能アクリレート単量体とを、両者の合計量を100質量部として、(A)40〜95質量部、(B)60〜5質量部で配合する必要がある。(A)多官能アクリレートが40質量部未満である場合は、鏡面性、耐温水性、および耐擦傷性が十分発現しない。95質量部を超えると、耐温水性や耐擦傷性には向上するものの鏡面性が逆に低下する。これら諸物性を考慮すると、(A)50〜80質量部、(B)50〜20質量部が好ましい。
上記低官能アクリレート単量体は、その硬化体のガラス転位温度(Tg)が60℃以上である場合は、被覆膜の吸水性が減少して耐温水性が向上するので特に好ましい。被覆膜の耐擦傷性も勘案すると、Tgの好適な範囲は、60〜120℃である。
【0022】
更に、本発明の硬化性コーティング材(II)は、(A)多官能アクリレート、(B)低官能アクリレート単量体、および(C)3官能ウレタンアクリレートを、(A)〜(C)の合計量を100質量部として、(A)30〜75質量部、(B)5〜50質量部、(C)20〜65質量部で配合する必要がある。(A)多官能アクリレートが30質量部未満である場合は、耐温水性、および耐擦傷性が十分発現しない。75質量部を超えると、柔軟性に乏しくクラックが発生しやすくなる。(B)低官能アクリレート単量体が5質量部未満である場合は密着性が悪くなり、50質量部を超えると耐温水性、および耐擦傷性が十分発現しない。(C)3官能ウレタンアクリレートが20質量部未満である場合は、被覆膜が柔軟性に乏しくクラックが発生しやすく、65質量部を超えると、耐擦傷性や被覆膜の硬度が低下する。得られる被覆膜の上記諸特性を考慮すると、(A)30〜60質量部、(B)10〜40質量部、(C)30〜60質量部が好適である。
【0023】
[(D)重合開始剤]
硬化性コーティング材は、鏡面転写工程後に硬化させて被覆膜とするため、重合開始剤が必要である。
重合開始剤としては、化学硬化型の化学重合開始剤と光重合型の光重合開始剤があり、硬化工程の硬化方法によって使い分けられる。樹脂基材の負荷が少なく、硬化操作が簡便でしかもそれに使用する装置の簡略さから、光重合開始剤が好ましく採用される。
化学重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジーt―ブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物が好適に採用される。
光重合開始剤としては、公知のものを単独でもしくは組み合わせで使用することができ、ベンジル、カンファーキノン等のジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン又はベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類などが挙げられる。
(D)重合開始剤は、効果的に重合を進行させて硬化させるために、重合性化合物である(A)多官能アクリレートと(B)低官能アクリレート単量体との合計量、或いは(A)多官能アクリレートと(B)低官能アクリレート単量体と(C)3官能ウレタンアクリレートとの合計量に対して1〜10質量部、好ましくは、1〜7質量部配合される。上限を超えると被覆膜が黄変しやすくなる。
上記重合開始剤は、重合促進剤として機能する、従来公知の種々のアミン化合物と組み合わせて使用しても良い。
【0024】
[添加剤]
本発明の硬化性コーティング材は、上記必須成分に加えて紫外線吸収剤、光安定剤などの他の添加剤を、その性能を低下させない範囲において適宜配合することができる。
紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−bis(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のヒドロキシフェニルトリアジン類等の有機紫外線吸収剤;シリカ、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤など、従来公知のものが挙げられる。
光安定剤としては、フェニル−4−ピペリジニルカーボネート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等従来公知のヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
その他添加剤として、酸化防止剤、抗菌剤、防黴剤、離型剤,レベリング剤等を添加しても良い。特に、フィルム鏡面転写法を採用する場合は、離型剤を配合することが好ましい。なお、有機溶媒は使用しない方が好ましい。
【0025】
[被覆膜の形成]
前記必須成分並びに必要に応じて配合される任意の成分を、攪拌機などを用いて、室温下で均一に混合することによって硬化性コーティング材が調整される。
当該硬化性コーティング材を、ロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、カーテンフローコーター、ディップコーター、スリットコーター等の塗布手段を用いて、前記樹脂基材上に塗付する。塗布量(塗布膜の厚み)は、樹脂基材の凹凸の度合い、目的とする硬化後の被覆膜の厚み、硬化性コーティング材の粘度、コーティング速度やコーティング温度等の被膜形成条件などを勘案して適宜決定されるが、通常、5〜510μmである。
硬化性コーティング材を塗布後、平滑なポリカーボネート(PC)フィルムやポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを使用するフィルム鏡面転写法、或いは金属鏡面ロールを使用するロール鏡面転写法で、被覆膜表面を鏡面とする必要がある。フィルム鏡面転写法、ロール鏡面転写法としては、従来公知の技術、装置および条件が何ら制限なく採用される。優れた鏡面を発現し且つ表面保護の観点から、フィルム鏡面転写法が特に好ましい。なお、鏡面板を使用した熱プレス鏡面転写法は、樹脂基材が発泡樹脂基材の場合、気泡が潰れて基材としての価値が無くなる傾向にあるため不向きである。
転写後、転写表面上から紫外線を照射して硬化性コーティング材を硬化させて被覆膜とする。紫外線照射方法は、転写面上に均一に照射可能であれば特に制限なく、従来公知の高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを光源として用いて照射する方法が採用される。照射光量や照射時間も特に制限はないが、通常、500〜1000mJ/cm
2で、0.5〜5分である。
紫外線照射後は、樹脂基材のソリを補整するため、通常50〜60℃で2〜8時間アニール処理をする。
【0026】
[被覆膜]
前記樹脂基材、硬化性コーティング材並びに形成方法で得られた化粧板は、樹脂基材の凸部頂点からの厚み(最浅部厚み)が5μm以上であり、凹部底点からの厚み(最深部厚み)が500μm以下の膜厚の被覆膜を有することが重要である。好ましくは5μm以上300μm以下、特に好ましくは5μm以上50μm以下である。
凸部頂点からの厚みが5μm未満である場合は、梨はだを抑制できない結果表面の光沢性が劣る。一方、凹部底点からの厚みが500μmを超えると、被覆膜にクラックが発生しやすくなる。なお、凸部頂点の高さは一様ではないが、最も高い凸部頂点からの厚みが5μm以上あれば、全ての凸部が厚み5μm以上の被覆膜で覆われることになる。凹部底点も同様であり、最も低い凹部からの厚みが500μm以下であれば、全ての凹部が厚み500μm以下の被覆膜で覆われることになる。被覆膜の厚みは、マイクロスコープを用いて断面観察で実測した。
本発明において得られる化粧板の被覆膜は、表面粗さが0.1μm以下で梨はだが認められない均一な表面を有し、しかも、光沢度が80以上の優れた鏡面特性を有するので、美感に優れた内装材として使用できる。
【実施例】
【0027】
本発明を実施例で更に説明する。以下の実施例は、説明のためのものであり、いかなる意味においても本発明はこれに限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0028】
以下の実験例において得られた化粧板の特性は、次の方法により評価した。
<クラック>
目視で表面の状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:被覆膜にクラックが発生していない状態。
×:被覆膜にクラックが1本以上発生している状態。
<表面粗さ>
表面粗さ計(株式会社東京精密製:ハンディサーフ E−35)を用いて、被覆膜表面の算術平均粗さをJIS B 0601に準拠して測定した。表面粗さが、0.1μm以下であれば梨はだとはみなさない。
<密着性>
2mm間隔のカッターガイドを用い、化粧板表面にカッター碁盤目状の切り傷を付け、その上にセロハンテープを貼り、プラスチック製消しゴムで十分密着させた状態で数分間放置する。その後、テープの端を持って一気に90°方向に剥がし、碁盤目の剥がれを以下の基準で評価した。
〇:剥がれたマス目が0点
△:剥がれた碁盤目の面積が全体の5%未満
×:剥がれた碁盤目の面積が全体の5%以上
<光沢度>
光沢度計(株式会社堀場製作所製:グロスチェッカIG−320)を用いて、JIS Z 8741に準拠して測定した。なお、光沢度が80以上あれば、鏡面と評価される。
【0029】
<耐温水性>
化粧板の被覆膜面を、50℃に保持した温水の水面から5cm上に治具を用いて保持して、一週間曝した。その後、前記碁盤目剥離試験を行い評価した。
〇:剥がれたマス目が0点
△:剥がれた碁盤目の面積が全体の5%未満
×:剥がれた碁盤目の面積が全体の5%以上
<耐擦傷性>
学振式摩耗検漏試験機[II型]を使用して、晒し綿を用い200gfの荷重圧力で500回往復したときの、被覆膜面上の傷の発生の有無を、以下の基準で判定した。
〇:被覆膜に全くキズが無い
×:被覆膜にキズが有る
<表面硬度>
PMMA基材上に各硬化性コーティング材を被覆、硬化後、ヨシミツ精機製硬度計(C−2210)を用い、荷重500gの条件で三菱Uni鉛筆を用いての鉛筆硬度でJIS K 5600−5−4引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して評価した。この硬度が硬いほど、耐擦傷性が良好である。
〈曲げ耐性〉
化粧板の片端を固定し、反対の端部を下方へ20°曲げて表面状態を観察し判定した。
〇:被覆膜にクラックが全く見られない
×:被覆膜にクラックが見られた
【0030】
また、以下の実験例で、化粧板の製造に用いた各種材料は、以下の通りである。
樹脂基材:
基材1:発泡塩化ビニル樹脂基材の上にインクジェット印刷を施した基材
算術平均粗さ(Ra)=2μm、厚み=4mm
基材2:発泡塩化ビニル樹脂基材の上にインクジェット印刷を施した基材
算術平均粗さ(Ra)=20μm、厚み=4mm
基材3:発泡塩化ビニル樹脂基材の上にインクジェット印刷を施した基材
算術平均粗さ(Ra)=100μm、厚み=4mm
基材4:発泡塩化ビニル樹脂基材(表面無処理)
算術平均粗さ(Ra)=1μm、厚み=4mm
基材5:発泡塩化ビニル樹脂基材(表面無処理)
算術平均粗さ(Ra)=5μm、厚み=4mm
基材6:発泡塩化ビニル樹脂基材(表面無処理)
算術平均粗さ(Ra)=10μm、厚み=4mm
【0031】
(A)多官能アクリレート
A−1:10官能ウレタンアクリレート、
粘度=2000000mPa・s(25℃)
A−2:9官能ウレタンアクリレート、
粘度=2000000mPa・s(25℃)
A−3:10官能ウレタンアクリレート、
粘度=250000〜750000mPa・s(25℃)
A−4:9官能ウレタンアクリレート、
粘度=300000〜600000mPa・s(25℃)
A−5:10官能ウレタンアクリレート、
粘度=217000mPa・s(25℃)
A−6:6官能ウレタンアクリレート、
粘度=15000mPa・s(25℃)
A−7:5官能ウレタンアクリレート、
粘度=10000mPa・s(25℃)
(B)低官能アクリレート単量体
B−1:2官能アクリレート単量体、
粘度=1000mPa・s(25℃)、Tg=75℃
B−2:1官能アクリレート単量体、
粘度=5〜10mPa・s(25℃)、Tg=94℃
B−3:2官能アクリレート単量体、
粘度=5〜6mPa・s(25℃)、Tg=117℃
B−4:2官能アクリレート単量体、
粘度=6mPa・s(25℃)、Tg=63℃
(C)3官能ウレタンアクリレート
C−1:3官能ウレタンアクリレートオリゴマー
粘度=800〜1800mPa・s(60℃)
【0032】
(D)重合開始剤
D−1:アルキルフェノン系光重合開始剤
(E)他の多官能アクリレート
E−1:5官能アクリレート、
粘度=6000mPa・s(25℃)
(F)他のアクリレート単量体
F−1:3官能アクリレート単量体、
粘度=106mPa・s(25℃)、Tg=62℃
F−2:3官能ウレタンアクリレート、
粘度=15000〜20000mPa・s(60℃)
(G):他の添加材
G−1:有機紫外線吸収剤
G−2:無機紫外線吸収剤
G−3:レベリング剤
【0033】
実施例1〜17
表1に示す処方で、攪拌機(阪和化工機株式会社:HSLS―7603L1―15AV)を用いて各成分を撹拌混合して均一な硬化性コーティング材(I)を調製した。この硬化性コーティング材(I)を、ロールコーター機を用いてインクジェット印刷を施した樹脂基材に塗布量(厚み)を変えて塗布した後、その上にPCフィルムを被せ、ロール間のニップ圧25N/cm
2で加圧鏡面転写した。次いで80W/cm
2の高圧水銀ランプを備えた紫外線照射装置を使用して、ランプ高さ15cmで空気中下2分照射して硬化させ化粧板を作製した。なお、硬化性コーティング材(I)の塗布厚みは樹脂基板の凸部頂点を基準として機械的に制御するが、塗布工程において、硬化性コーティング材(I)は凹部へも流れ込み被覆膜を形成する。被覆膜最浅部厚みは、最も高い凸部から膜表面までの高さであり、被覆膜最深部厚みは、最も深い凹部底点から膜表面までの高さである。
この化粧板について、前記した方法に従って各種特性を評価し、実施例1〜10の結果を表1に、実施例11〜17の結果を表2に示した。
【0034】
実施例18〜20
樹脂基材を、表面無処理の発泡樹脂基材に変えた。これ以外は、表2に示す処方に従い実施例1に準じて化粧板を作製し、各種特性を評価した。処方と結果を表2に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
比較例1〜8
比較例1においては(B)低官能アクリレート単量体を使用しなかった。比較例2においては(A)多官能アクリレートを使用しなかった。比較例3においては(B)低官能アクリレート単量体に代えて3官能アクリレート単量体を使用した.比較例4においては(A)多官能アクリレートと(B)低官能アクリレート単量体との配合比率が本発明の範囲外にある。比較例5においては(A)多官能アクリレートの粘度が本発明の範囲を満たさない。比較例6〜8においては被覆膜の厚みが本発明の範囲外にあり、更に比較例7,8においては樹脂基材を変更した。これら以外は、表3に示す処方に従い実施例1に準じて化粧板を作製し、各種特性を評価した。処方と結果を表3に示した。
【0038】
【表3】
【0039】
実施例21〜25
表4に示す処方に従い実施例1に準じて硬化性コーティング材(II)を調整し次いで化粧板を作製し、各種特性を評価した。結果を表5に示した。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】