(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857083
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】プレキャスト床版の接合構造
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
E01D19/12
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-107674(P2017-107674)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-204203(P2018-204203A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 潤
(72)【発明者】
【氏名】岡田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆一
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−083072(JP,A)
【文献】
特開2017−106231(JP,A)
【文献】
特開2005−226246(JP,A)
【文献】
特開2017−172143(JP,A)
【文献】
特開2009−209600(JP,A)
【文献】
特開平10−266467(JP,A)
【文献】
特開平06−306930(JP,A)
【文献】
特開2012−026088(JP,A)
【文献】
特開2009−264040(JP,A)
【文献】
特開2012−062664(JP,A)
【文献】
特開2012−132251(JP,A)
【文献】
特開2008−303538(JP,A)
【文献】
特開2004−324211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに長手方向に直交する方向に間隔をおいて配置された複数の継手鉄筋を端部側がプレキャスト床版の端面から延出するように設けるとともに、プレキャスト床版の端面間に間詰め材を充填することにより、複数のプレキャスト床版同士を接合するようにしたプレキャスト床版の接合構造において、
互いに上下方向に間隔をおいて隣り合う上側継手鉄筋の端部側及び下側継手鉄筋の端部側に上端側及び下端側をそれぞれ固定された継手部材を備え、
継手部材を厚さ方向が継手鉄筋の長手方向に直交する方向となるように配置された板状部材によって形成した
ことを特徴とするプレキャスト床版の接合構造。
【請求項2】
互いに隣り合うプレキャスト床版のうち一方のプレキャスト床版側の継手鉄筋と他方のプレキャスト床版側の継手鉄筋とを互いに継手鉄筋の長手方向に直交する方向に交互に位置するように配置した
ことを特徴とする請求項1記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項3】
前記継手部材を互いに上下方向に隣り合う上側継手鉄筋の端部側及び下側継手鉄筋の端部側の間隔よりも大きくなるように形成した
ことを特徴とする請求項1または2記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項4】
前記継手部材を互いに厚さ方向に重なり合う複数の板状部材によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項5】
前記継手部材を互いに継手鉄筋の長手方向に間隔をおいて配置された複数の板状部材によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項6】
前記継手部材の厚さ方向の少なくとも一方の面に凹部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項7】
前記継手部材の厚さ方向の少なくとも一方の面に凸部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項8】
前記継手部材の上端及び下端の少なくとも一方に切り欠き部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項9】
前記継手部材に継手鉄筋の長手方向に直交する方向に延びる他の鉄筋を受容可能な鉄筋受容部を設けた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載のプレキャスト床版の接合構造。
【請求項10】
前記継手部材を上側継手鉄筋及び下側継手鉄筋と一体に成形された合成樹脂成形品によって形成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、6、7、8または9記載のプレキャスト床版の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般道や高速道路等の高架橋の架設に用いられるプレキャスト床版の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の高架橋の架設においては、工場等で製作されたコンクリート製の複数のプレキャスト床版を主桁上に橋軸方向に配列し、プレキャスト床版同士を接合することにより床版全体を構築するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プレキャスト床版には橋軸方向に延びる複数の継手鉄筋が端部側を床版本体の接合端面から延出するように設けられ、各継手鉄筋の端部側が床版本体間の間詰め部内に位置するようにプレキャスト床版を配置するとともに、橋軸直角方向に延びる複数の補強鉄筋を間詰め部内の各継手鉄筋に結束した後、間詰め部内にコンクリートを充填するようにしている。
【0004】
また、前記継手鉄筋としては、床版本体の上側に配置される鉄筋と下側に配置される鉄筋が床版本体の端面から延出してループ状に連続したものも知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来例では、互いに隣り合うプレキャスト床版のうち一方のプレキャスト床版側の継手鉄筋と他方のプレキャスト床版側の継手鉄筋とを互いにループ状部分が橋軸直角方向に交互に位置するように配置し、各ループ状部分の内側に橋軸直角方向に延びる補強鉄筋を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−264040号公報
【特許文献2】特許第5337122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の従来例の場合は、橋軸直角方向に延びる多数の補強鉄筋を各継手鉄筋に結束する作業が必要となるため、施工現場での作業工数が増大して施工時間が長くなるという問題点があった。一方、後者の場合は、ループ状部分によって間詰めコンクリートからの支圧力が得られるため、補強鉄筋の本数を少なくすることができる。しかしながら、ループ状部分は鉄筋を曲げて形成しているため、上側の鉄筋と下側の鉄筋との間隔はループ状部分の直径と等しくなり、しかもループ状部分の直径を小さくするには鉄筋の曲げ強度上の限度がある。このため、床版の設計条件では上側の鉄筋と下側の鉄筋との間隔がループ状部分の直径よりも小さくなる場合でも、ループ状部分の直径に合わせなければならず、床版厚が必要以上に大きくなる。これにより、床版の重量による主桁への負荷や床版本体のコンクリート使用量を無用に増大させるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工現場での作業工数を低減することができるとともに、床版厚を無用に増大させることのないプレキャスト床版の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、互いに長手方向に直交する方向に間隔をおいて配置された複数の継手鉄筋を
端部側がプレキャスト床版の端面から延出するように設けるとともに、プレキャスト床版の端面間に間詰め材を充填することにより、複数のプレキャスト床版同士を接合するようにしたプレキャスト床版の接合構造において、互いに
上下方向に間隔をおいて隣り合う
上側継手鉄筋
の端部側及び
下側継手鉄筋
の端部側に
上端側及び
下端側をそれぞれ固定された継手部材を備え
、継手部材を厚さ方向が継手鉄筋の長手方向に直交する方向となるように配置された板状部材によって形成している。
【0009】
これにより、継手部材によって間詰め材からの支圧力が得られることから、継手鉄筋の長手方向に直交する方向に延びる補強鉄筋の本数を少なくすることが可能となる。また、継手部材を継手鉄筋とは別部品から形成することができるので、互いに隣り合う継手鉄筋の間隔が継手部材によって制約を受けることがない。
更に、継手部材が厚さ方向を継手鉄筋の長手方向に直交する方向とする板状部材によって形成されていることから、継手鉄筋の横方向の間隔を狭くしても継手部材同士が干渉することがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補強鉄筋の本数を少なくすることができるので、補強鉄筋の結束に要する現場作業を軽減することができ、プレキャスト床版を用いた急速施工に極めて有利である。この場合、継手部材によって支圧力を得ることができるので、プレキャスト床版同士の接合強度(引張強度)をより高めることができる。また、互いに隣り合う継手鉄筋の間隔が継手部材によって制約を受けることがないので、従来のループ継手を用いる場合のように床版厚がループ部分によって必要以上に大きくなることがなく、床版厚を設計条件通りの寸法にすることができる。これにより、プレキャスト床版の重量による主桁への負荷や床版本体のコンクリート使用量を無用に増大させることがないという利点がある。
また、継手鉄筋の横方向の間隔を狭くしても継手部材同士が干渉することがないので、継手鉄筋を高密度に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すプレキャスト床版の正面断面図
【
図3】プレキャスト床版の接合部分を示す側面断面図
【
図9】プレキャスト床版の接合工程を示す側面断面図
【
図10】プレキャスト床版の接合工程を示す側面断面図
【
図13】本発明の第2の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図15】本発明の第3の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図16】第3の実施形態の変形例を示す継手部材の斜視図
【
図17】第3の実施形態の変形例を示す継手部材の斜視図
【
図18】第3の実施形態の変形例を示す継手部材の斜視図
【
図19】第3の実施形態の変形例を示す継手部材の斜視図
【
図21】本発明の第4の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図22】本発明の第5の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図25】第5の実施形態の変形例を示す継手部材の斜視図
【
図26】本発明の第6の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図28】本発明の第7の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図30】本発明の第8の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図31】本発明の第9の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図32】本発明の第10の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図34】本発明の第11の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図36】本発明の第12の実施形態を示す継手部材の斜視図
【
図38】第12の実施形態の変形例を示す継手部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図12は本発明の第1の実施形態を示すもので、例えば一般道や高速道路等に用いられる高架橋の架設に用いられるプレキャスト床版の接合構造を示すものである。
【0013】
本実施形態では、主桁10上にプレキャスト床版20が橋軸方向に並べて配列され、プレキャスト床版20同士は以下の接合構造によって互いに接合される。
【0014】
主桁10は、ウエブ11の上端及び下端にそれぞれ上フランジ12及び下フランジ13を有する鋼桁からなり、互いに橋軸直角方向に間隔をおいて複数列に配置されている。
【0015】
プレキャスト床版20は、例えば工場や製造ヤードで製作され、施工現場に搬送されて主桁10上に設置される。プレキャスト床版20は、コンクリート製の床版本体21の橋軸方向端面から橋軸方向に延出する複数の上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23を有し、各継手鉄筋22,23は上下方向及び橋軸直角方向にそれぞれ配列され、互いに長手方向に直交する方向に間隔をおいて配置されている。各継手鉄筋22,23は異形棒鋼からなり、床版本体21内には橋軸直角方向に延びる他の鉄筋(図示せず)が設けられている。尚、
図4以外の図面では、異形棒鋼の外周面の凹凸は省略している。
【0016】
また、各継手鉄筋22,23の端部側には継手部材24が設けられている。継手部材24は橋軸直角方向に所定の厚さtを有する四角形状の鋼板によって形成され、その上端及び下端を上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23に溶接されている。この場合、継手部材24は、上下方向の高さ寸法H1 が各継手鉄筋22,23の間隔Lと等しくなるように形成され、その厚さ方向中央が各継手鉄筋22,23の中心位置と一致するように配置されている。継手部材24は、橋軸方向一端側の面(床版本体21の橋軸方向端面に対向する面)が後述する支圧力を受ける受圧面24aとなっており、受圧面24aは継手部材24の厚さtに高さ寸法H1 を乗じた面積となる。
【0017】
前記プレキャスト床版20を架設する場合は、プレキャスト床版20を施工現場に搬送し、
図8に示すようにクレーン車Aによって吊り上げて主桁10上に載置する。その際、隣り合うプレキャスト床版20は橋軸方向端面間に間隔を有するように配置され、これらの橋軸方向端面の間には、各プレキャスト床版20から延出する各継手鉄筋22,23及び各継手部材24が配置される。その際、一方のプレキャスト床版20側の各継手鉄筋22,23と他方のプレキャスト床版20側の各継手鉄筋22,23は互いに橋軸直角方向に交互に位置するように配置される。この場合、一方のプレキャスト床版20側の継手部材24は他方のプレキャスト床版20側の継手部材24よりも他方のプレキャスト床版20寄りに配置され、他方のプレキャスト床版20側の継手部材24は一方のプレキャスト床版20側の継手部材24よりも一方のプレキャスト床版20寄りに配置される。
【0018】
また、プレキャスト床版20の橋軸方向端面間には橋軸直角方向に延びる複数の補強鉄筋25が設けられ、各補強鉄筋25は上側継手鉄筋22の上側と下側継手鉄筋23の下側にそれぞれ橋軸方向に間隔をおいて複数本ずつ配置される。この場合、下側継手鉄筋23側に配置される補強鉄筋25は予め工場等で継手鉄筋23に鋼線や番線によって結束され、上側継手鉄筋22側に配置される補強鉄筋25は、プレキャスト床版20を主桁10上に載置した後、現場で継手鉄筋22に結束される。
【0019】
次に、
図3に示すようにプレキャスト床版20の橋軸方向端面間に速硬性のコンクリートやモルタルからなる間詰め材20aを充填する。これにより、各継手鉄筋22,23と間詰め20aとの間に生ずる付着力と、各継手部材24と間詰め材20aとの間に生ずる支圧力によって橋軸方向の引張強度が得られ、各プレキャスト床版20同士が接合される。その際、
図4の白抜き矢印に示すように、支圧力Fが継手部材24の受圧面24aに生ずる。尚、間詰め部20aで互いに対向する床版本体21の橋軸方向端面は、テーパ状に傾斜した傾斜面であってもよく、或いは端面の下端側が顎状に張り出すように形成されたものであってもよい。
【0020】
前述のように橋軸方向に配列された複数のプレキャスト床版20が間詰め材20aと各継手鉄筋22,23及び各継手部材24により接合され、床版全体が形成される。そして、床板の幅方向両側には壁高欄20bが設けられ、床版上面にはアスファルト20cによって路面が形成される。
【0021】
このように、本実施形態によれば、互いに上下方向に間隔をおいて配置された上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23をそれぞれ床版本体21の橋軸方向端面から延出するように設けるとともに、各継手鉄筋22,23には上端側及び下端側をそれぞれ上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23に固定された継手部材24を設けたので、継手部材24によって間詰め材20aからの支圧力を得ることができ、その分だけ補強鉄筋25の本数を少なくすることができる。これにより、補強鉄筋25の結束に要する現場作業を軽減することができるので、プレキャスト床版20を用いた急速施工に極めて有利である。
【0022】
また、継手部材24を各継手鉄筋22,23とは別部品から形成することができるので、上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23の上下方向の間隔が継手部材24によって制約を受けることがない。これにより、従来のループ継手を用いる場合のように床版厚がループ部分によって必要以上に大きくなることがなく、床版厚を設計条件通りの寸法にすることができる。これにより、プレキャスト床版20の重量による主桁10への負荷や床版本体21のコンクリート使用量を無用に増大させることがないという利点がある。
【0023】
更に、継手部材24を厚さ方向が橋軸直角方向となる板状部材によって形成したので、各継手鉄筋22,23の橋軸直角方向の間隔を狭くしても継手部材24同士が干渉することがなく、各継手鉄筋22,23を高密度に配置することができる。
【0024】
また、互いに橋軸方向に隣り合うプレキャスト床版20のうち一方のプレキャスト床版20側の継手鉄筋22,23と他方のプレキャスト床版20側の継手鉄筋22,23とを互いに橋軸直角方向に交互に位置するように配置したので、プレキャスト床版20の橋軸方向端面間の距離を短くすることができ、間詰め材20aの使用量を少なくすることができる。
【0025】
図13乃至
図38は継手部材の他の実施形態を示すもので、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0026】
図13及び
図14に示す第2の実施形態の継手部材26は、上下方向の高さ寸法H2 が上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23の間隔Lよりも大きくなるように形成したものである。継手部材26の厚さ方向一方の面には各継手鉄筋22,23が接合され、継手部材26の上端側及び下端側が上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23から上方及び下方にそれぞれ突出している。これにより、継手部材26の受圧面Sが上下方向に大きくなり、支圧力を高めることができる。
【0027】
図15に示す第3の実施形態の継手部材27は、2枚の板状部材27aを互いに橋軸直角方向に重なるように設けたものである。各板状部材27aは互いに同一の形状に形成され、一方の板状部材27aが各継手鉄筋22,23に接合され、他方の板状部材27aは一方の板状部材27aの厚さ方向一方の面に接合されている。これにより、継手部材27の受圧面Sが板状部材27aの2枚分の端面となり、支圧力を高めることができる。
【0028】
尚、前記実施形態では同一形状の板状部材27aを重ねたものを示したが、
図16に示すように橋軸方向の長さが一方の板状部材27aよりも短い他方の板状部材27bを一方の板状部材27aの橋軸方向一端側に重ねたものや、
図17に示すように橋軸方向の長さが一方の板状部材27aよりも短い他方の板状部材27cを一方の板状部材27aの橋軸方向他端側に重ねたものであってもよい。
【0029】
また、
図18に示すように同一形状の板状部材27aを3枚重ねるようにしてもよい。この場合、中央の板状部材27aが各継手鉄筋22,23に接合され、他の2つの板状部材27aが一方の板状部材27aの厚さ方向両面にそれぞれ接合される。これにより、継手部材27の受圧面Sが板状部材27aの3枚分の端面となり、支圧力をより高めることができる。
【0030】
更に、
図19及び
図20に示すように、橋軸方向の長さが一方の板状部材27aよりも短い2枚の他方の板状部材27dを互いに間隔をおいて一方の板状部材27aの橋軸方向一端側と他端側に重ねるようにしてもよい。この場合、他方の板状部材27dは一方の板状部材27aの厚さ方向両面に2枚ずつ設けられる。これにより、継手部材27の受圧面Sが一方の板状部材27aと4枚の他方の板状部材27dの5枚分の端面となり、支圧力をより高めることができる。
【0031】
図21に示す第4の実施形態の継手部材28は、2枚の板状部材28aを橋軸方向に間隔をおいて設けたものである。各板状部材28aは互いに同一の形状に形成され、上端及び下端をそれぞれ上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23に接合されている。これにより、継手部材28の受圧面Sが板状部材28aの2枚分の面積となるので、支圧力を高めることができる。また、各板状部材28aが1枚ずつ橋軸方向に配列されるので、各継手部材28の厚さ方向の寸法が大きくなることがなく、各継手鉄筋22,23を高密度に配置する場合に有利である。
【0032】
図22乃至
図24に示す第5の実施形態の継手部材29は、互いに高さ寸法の異なる2枚の板状部材29a,29bを互いに橋軸直角方向に重なうように設けたものである。一方の板状部材29aは上下方向の高さ寸法H1 が上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23の間隔Lと同等の寸法に形成され、上端及び下端をそれぞれ上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23に接合される。他方の板状部材29bは上下方向の高さ寸法H2 が上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23の間隔Lよりも大きくなるように形成されるとともに、その厚さ方向一方の面を各継手鉄筋22,23に接合され、その上端側及び下端側が上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23から上方及び下方にそれぞれ突出している。また、各板状部材29a,29bはそれぞれ同一の厚さ寸法tに形成され、互いに厚さ方向に接合されている。
【0033】
本実施形態によれば、継手部材29の受圧面Sが一方の板状部材29aの端面と他方の板状部材29bの端面となるとともに、他方の板状部材29bの受圧面Sが上下方向に大きくなるので、支圧力をより高めることができる。この場合、
図24に示すように各板状部材29a,29b同士が予め接合された継手部材29を各継手鉄筋22,23に接合するようにすれば、各板状部材29a,29bの段差部分で継手部材29と各継手鉄筋22,23とを位置決めすることができ、継手部材29と各継手鉄筋22,23との接合作業を容易に行うことができる。
【0034】
また、
図25に示すように、互いに高さ寸法の異なる2枚の板状部材30a,30bを互いに橋軸直角方向に重なうように設けるとともに、各板状部材30a,30bを橋軸方向に間隔をおいて2つ設けるようにしてもよい。これにより、継手部材30の受圧面Sが各板状部材30a,30bの2つ分の端面となるので、支圧力をより高めることができる。この場合、橋軸方向一方の板状部材30a,30bと他方の板状部材30a,30bとを互いに橋軸直角方向反対側に配置することにより、各継手鉄筋22,23の両側にバランスよく支圧力を生じさせることができる。
【0035】
図26及び
図27に示す第6の実施形態の継手部材31は、厚さ方向一方の面に凹部31aを設けたものである。凹部31aは円形に形成され、例えば切削加工によって形成されている。これにより、継手部材31の受圧面Sが継手部材31の橋軸方向一端面と凹部31aの内周面の一部(半周分)となり、支圧力を高めることができる。
【0036】
図28及び
図29に示す第7の実施形態の継手部材32は、厚さ方向一方の面に凸部32aを設け、他方の面に凹部32bを設けたものである。凸部32a及び凹部32bは円形に形成され、例えばプレス加工によって形成されている。これにより、継手部材32の受圧面Sが継手部材32の橋軸方向一端面と凸部32aの外周面の一部(半周分)及び凹部32bの内周面の一部(半周分)となり、支圧力をより高めることができる。
【0037】
図30に示す第8の実施形態の継手部材33は、上端側に四角形状の切り欠き部33aを設けたものである。これにより、継手部材33の受圧面Sが継手部材33の橋軸方向一端面と切り欠き部33aの内面の一部(四角形の一辺分)となり、支圧力を高めることができる。
【0038】
図31に示す第9の実施形態の継手部材34は、上端側及び下端側にそれぞれ略半円形状の切り欠き部34aを設けたものである。これにより、継手部材34の受圧面Sが継手部材34の橋軸方向一端面と各切り欠き部34aの内周面の一部(略1/4周分)となり、支圧力を高めることができる。
【0039】
図32及び
図33に示す第10の実施形態の継手部材35は、上端側及び下端側にそれぞれ四角形状の切り欠き部35aを設けたものである。これにより、継手部材35の受圧面Sが継手部材35の橋軸方向一端面と各切り欠き部35aの内面の一部(四角形の一辺分)となり、支圧力を高めることができる。この場合、各切り欠き部35aを互いに橋軸方向に間隔をおいて配置するとともに、各切り欠き部35aの高さ寸法H3 を継手部材35の高さ寸法H1 の1/2よりも大きくすることにより、継手部材35の受圧面Sを大きくすることができる。
【0040】
図34及び
図35に示す第11の実施形態の継手部材36は、橋軸方向一端側に橋軸直角方向に延びる他の鉄筋(補強鉄筋25)を上下方向から受容可能な鉄筋受容部を設けたものである。継手部材36の橋軸方向一端側の上部には切り欠き部36aが設けられ、切り欠き部36aの下端には鉄筋受容部としての溝36bが設けられている。本実施形態では、継手部材36の受圧面Sが継手部材36の橋軸方向一端面(切り欠き部36a以外の部分)と切り欠き部36aの内面の一部となる。この場合、橋軸方向一端面の高さ寸法H4 と切り欠き部36aの内面の高さ寸法H5 とを合わせた寸法は、溝36bの深さ分だけ継手部材36の高さ寸法H1 よりも大きくなることから、継手部材36の受圧面Sを大きくすることができる。
【0041】
図36及び
図37に示す第13の実施形態の継手部材37は、硬化プラスチック等の合成樹脂成形品によって形成したもので、インサート成形によって上側継手鉄筋22及び下側継手鉄筋23と一体に成形されている。この場合、各継手鉄筋22,23は異形棒鋼の表面凹凸によって継手部材37の樹脂との付着力を生ずるため、継手部材37の成形品と一体化される。本実施形態では、継手部材37の橋軸方向一端面が受圧面Sとなり、継手部材37の高さ寸法及び厚さ寸法を大きくすることにより、支圧力を高めることができる。
【0042】
また、
図38に示すように、継手部材37の厚さ方向両面に上下方向に延びる複数の凸部37aを互いに橋軸方向に間隔をおいて設けるようにすれば、支圧力をより高めることができる。
【0043】
尚、前記各実施形態では、橋軸方向に並べて配列されたプレキャスト床版20同士を橋軸直角方向に接合するようにしたものを示したが、例えば既設の床版を半幅員ずつ取り替える場合など、プレキャスト床版同士を橋軸直角方向に接合する接合構造にも適用することができる。この場合、継手鉄筋をプレキャスト床版の幅方向の端面から橋軸直角方向に延出するように設けることにより、前記実施形態と同様に継手鉄筋に固定された継手部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
10…主桁、20…プレキャスト床版、20a…間詰め材、21…床版本体、22…上側継手鉄筋、23…下側継手鉄筋、24…継手部材、25…補強鉄筋、26…継手部材、27…継手部材、27a…板状部材、27b…板状部材、27c…板状部材、27d…板状部材、28…継手部材、28a…板状部材、29…継手部材、29a…板状部材、29b…板状部材、30…継手部材、30a…板状部材、30b…板状部材、31…継手部材、31a…凹部、32…継手部材、32a…凸部、32b…凹部、33…継手部材、33a…切り欠き部、34…継手部材、34a…切り欠き部、35…継手部材、35a…切り欠き部、36…継手部材、36a…切り欠き部、36b…溝、37…継手部材、37a…凸部、S…受圧面。