特許第6857089号(P6857089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857089
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】容器の補強方法及び容器の支持構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/38 20060101AFI20210405BHJP
   B65D 90/12 20060101ALI20210405BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   E02D27/38 C
   B65D90/12 C
   E02D27/38 Z
   E04G23/02 F
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-123061(P2017-123061)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-7205(P2019-7205A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 佳人
(72)【発明者】
【氏名】古舘 翔一
(72)【発明者】
【氏名】上田 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】植田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】網野 允則
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−269342(JP,A)
【文献】 実開昭61−180994(JP,U)
【文献】 特開2012−232790(JP,A)
【文献】 特開2009−132428(JP,A)
【文献】 特開昭51−105612(JP,A)
【文献】 特開昭51−105613(JP,A)
【文献】 特開2006−168799(JP,A)
【文献】 特開2006−273398(JP,A)
【文献】 米国特許第04489846(US,A)
【文献】 中国実用新案第204197724(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/38
B65D 90/12
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持脚により支持された容器を支持治具により仮支持する工程と、
前記複数の支持脚を撤去する工程と、
前記容器の下部外周に配管を避けて湾曲形状をなす複数の支持板を固定することでスカート形状をなす支持筒を形成する工程と、
前記支持筒の下部に基礎を設けることで前記支持筒により前記容器を支持する工程と、
前記容器から前記支持治具を撤去する工程と、
を有することを特徴とする容器の補強方法。
【請求項2】
2個の前記支持板の側端部に半円形状をなす第1切欠部が形成され、前記第1切欠部が前記配管に嵌合すると共に前記第1切欠部が形成された前記支持板の側部同士が固定されることを特徴とする請求項1に記載の容器の補強方法。
【請求項3】
前記支持板は、鉛直方向に沿うと共に前記容器の外周方向に沿って湾曲する支持部と、水平方向に沿うと共に前記容器の外周方向に沿って湾曲して前記支持部の下部に連結される設置部とを有し、前記支持部は、側部と下部との角部に第2切欠部が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の容器の補強方法。
【請求項4】
前記支持部と前記設置部との連結部に補強用リブが設けられることを特徴とする請求項3に記載の容器の補強方法。
【請求項5】
前記支持板は、メンテナンス用開口部が設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の容器の補強方法。
【請求項6】
前記支持治具は、前記容器の下部を仮支持して地面に設置される下部支持治具を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の容器の補強方法。
【請求項7】
前記支持治具は、前記支持脚の上部に固定されることで前記容器の側部を仮支持して地面に設置される側部支持治具を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の容器の補強方法。
【請求項8】
前記支持治具は、前記容器の上側部と縦壁部の間に配置される上部支持治具を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の容器の補強方法。
【請求項9】
前記複数の支持脚を撤去した後に前記支持脚の基礎の少なくとも一部を撤去し、前記容器の下部外周に前記複数の支持板を固定することでスカート形状をなす前記支持筒を形成した後に、前記支持筒の下部にリング形状をなす新たな前記基礎を設けることで前記支持筒の下部を支持することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の容器の補強方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の容器の補強方法により改修されたことを特徴とする容器の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に流体を貯留する容器の支持部を補強する容器の補強方法及び容器の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に流体を貯留する容器として使用されるタンクは、球形状をなすことから、支持部を用いて所定の位置に設置する必要がある。この支持部は、一般的に複数の脚部により構成されており、この複数の脚部をタンクの下部に固定し、所定の位置に設置している。
【0003】
ところが、複数の脚部を用いたタンクの支持構造にあっては、耐震強度が十分ではない。例えば、地震の発生時にタンクが転倒し、内部に貯留した流体が漏洩してしまうおそれがある。そのため、タンクを複数の脚部ではなく、スカート形状をなす支持筒により支持することが考えられている。このような容器の支持構造としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平04−101897号公報
【特許文献2】実用新案登録第3017746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようにタンクをスカート形状の支持筒により支持することで、耐震性を向上することができる。この場合、複数の支持脚に支持された旧型のタンクの支持構造を解体し、スカート形状の支持筒に支持された新型のタンクの支持構造に新設することとなる。しかし、新型のタンクの支持構造に新設すると、製造コストが大幅に増加するだけでなく、内部に貯留している流体を一時的に別のタンクに移す必要があり、この作業によるコストも発生してしまう。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、容器の支持剛性の向上を図ると共に発生するコストの増加を抑制する容器の補強方法及び容器の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の容器の補強方法は、複数の支持脚により支持された容器を支持治具により仮支持する工程と、前記複数の支持脚を撤去する工程と、前記容器の下部外周に配管を避けて湾曲形状をなす複数の支持板を固定することでスカート形状をなす支持筒により前記容器を支持する工程と、前記容器から前記支持治具を撤去する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
従って、容器を支持する支持脚をスカート形状の支持筒に変更することで、容器の支持剛性の向上を図ることができる。また、容器を交換することなく、この容器の支持剛性を向上することができることから、内部の流体を移送する必要がなく、発生するコストの増加を抑制することができる。
【0009】
本発明の容器の補強方法では、2個の前記支持板の側端部に半円形状をなす第1切欠部が形成され、前記第1切欠部が前記配管に嵌合すると共に前記第1切欠部が形成された前記支持板の側部同士が固定されることを特徴としている。
【0010】
従って、容器に配管が連結されていても、支持筒を構成する支持板の側端部に半円形状をなす第1切欠部を形成しておき、配管を避けるように第1切欠部を配管に嵌合させた状態で支持板の側部同士を固定すればよく、支持筒を適正に形成することができる。
【0011】
本発明の容器の補強方法では、前記支持板は、鉛直方向に沿うと共に前記容器の外周方向に沿って湾曲する支持部と、水平方向に沿うと共に前記容器の外周方向に沿って湾曲して前記支持部の下部に連結される設置部とを有し、前記支持部は、側部と下部との角部に第2切欠部が形成されることを特徴としている。
【0012】
従って、湾曲する支持部の下部に設置部を連結して支持板を構成することで、支持板における高い剛性を確保することができ、支持部の角部に第2切欠部を形成することで、各支持板の設置部同士を連結するときの作業空間を第2切欠部により確保することができ、作業性を向上することができる。
【0013】
本発明の容器の補強方法では、前記支持部と前記設置部との連結部に補強用リブが設けられることを特徴としている。
【0014】
従って、支持部と設置部との連結部に補強用リブを設けることで、支持板における高い剛性を確保することができる。
【0015】
本発明の容器の補強方法では、前記支持板は、メンテナンス用開口部が設けられることを特徴としている。
【0016】
従って、支持板にメンテナンス用開口部を設けることで、容器にスカート形状の支持筒を固定した後、容器の下部を支持する支持治具をこのメンテナンス用開口部から容易に外部に取り出すことができ、作業性を向上することができる。
【0017】
本発明の容器の補強方法では、前記支持治具は、前記容器の下部を仮支持して地面に設置される下部支持治具を有することを特徴としている。
【0018】
従って、下部支持治具により容器の下部を仮支持することで、容器の自重を効率的に支持することができる。
【0019】
本発明の容器の補強方法では、前記支持治具は、前記支持脚の上部に固定されることで前記容器の側部を仮支持して地面に設置される側部支持治具を有することを特徴としている。
【0020】
従って、支持脚の上部に固定される側部支持治具により容器の側部を仮支持することで、側部支持治具が各種作業の邪魔になることはなく、作業性を向上することができる。
【0021】
本発明の容器の補強方法では、前記支持治具は、前記容器の上側部と縦壁部の間に配置される上部支持治具を有することを特徴としている。
【0022】
従って、上部支持治具を容器の上側部と縦壁部の間に配置することで、容器の支持の耐震性を向上して容器の転倒を抑制することができる。
【0023】
本発明の容器の補強方法では、前記複数の支持脚を撤去した後に基礎を撤去し、前記容器の下部外周に前記複数の支持板を固定することでスカート形状をなす前記支持筒を形成し、前記支持筒の下部にリング形状をなす基礎を設けることで前記支持筒の下部を支持することを特徴としている。
【0024】
従って、複数の支持脚と基礎を撤去した後、スカート形状の支持筒とリング形状をなす基礎を設けることで、新たに配置した支持筒の支持剛性を向上することができる。
【0025】
また、本発明の容器の支持構造は、前記容器の補強方法により改修されたことを特徴とするものである。
【0026】
従って、容器を支持する支持脚をスカート形状の支持筒に変更することで、容器の支持剛性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の容器の補強方法及び容器の支持構造によれば、容器の支持剛性の向上を図ることができると共に、発生するコストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施形態の容器の補強方法により補強された容器の支持構造を表す斜視図である。
図2図2は、本実施形態の容器の補強方法により補強する容器の支持構造を表す斜視図である。
図3図3は、容器の支持筒を表す展開図である。
図4図4は、容器の支持板を表す斜視図である。
図5図5は、本実施形態の容器の補強方法を表すフローチャートである。
図6図6は、容器の補強方法を説明するための正面概略図である。
図7図7は、容器の補強方法を説明するための正面概略図である。
図8図8は、容器の補強方法を説明するための平面概略図である。
図9図9は、容器の補強方法を説明するための正面概略図である。
図10図10は、容器の補強方法を説明するための正面概略図である。
図11図11は、容器の補強方法を説明するための正面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る容器の補強方法及び容器の支持構造の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0030】
図1は、本実施形態の容器の補強方法により補強された容器の支持構造を表す斜視図、図2は、本実施形態の容器の補強方法により補強する容器の支持構造を表す斜視図、図3は、容器の支持筒を表す展開図、図4は、容器の支持板を表す斜視図である。
【0031】
図2に示すように、旧型の容器の支持構造は、容器としてのタンク11が複数(本実施形態では、4個)の支持脚12により支持されている。タンク11は、円筒部の上下に半球部が設けられた球形状をなしている。タンク11は、上部に複数(本実施形態では、4個)の吊部13が設けられると共に、下部に流体排出部(図示略)が設けられ、流体排出部に排出配管14が連結されている。各支持脚12は、タンク11の周方向に均等間隔を空けて配置されている。各支持脚12は、上端部がタンク11の外周下部に溶接により固定されており、下端部が地面Gの形成された基礎15に設置されている。
【0032】
一方、図1に示すように、本実施形態の容器の補強方法により補強されて改修された新型の容器の支持構造は、複数の支持脚12に代えてスカート形状をなす支持筒21によりタンク11を支持するものである。
【0033】
図1図3及び図4に示すように、支持筒21は、複数(本実施形態では、8個)の支持板22a,22b,22c,22dにより構成されている。各支持板22a,22b,22c,22dは、4種類のものからなり、それぞれ支持部23a,23b,23c,23dと、設置部24a,24b,24c,24dとから構成されている。支持部23a,23b,23c,23dは、鉛直方向に沿うと共にタンク11の外周方向に沿って湾曲している。設置部24a,24b,24c,24dは、水平方向に沿うと共にタンク11の外周方向に沿って湾曲している。そして、各支持板22a,22b,22c,22dは、支持部23a,23b,23c,23dの下端部が設置部24a,24b,24c,24dの上面部に接触し、溶接により連結されて構成されている。この場合、各支持部23a,23b,23c,23dは、下端部が各設置部24a,24b,24c,24dにおける幅方向(図3の紙面直交方向)の中間部に連結されている。
【0034】
2個の支持板22a,22bは、それぞれの対向する側端部に半円形状をなす第1切欠部25a,25bが形成されている。支持板22aは、支持部23aの一方側の側端部に第1切欠部25aが形成されている。支持板22bは、支持部23bの他方側の側端部に第1切欠部25bが形成されている。各支持板22a,22bは、各第1切欠部25a,25bが対向するように隣接して配置されている。そして、各第1切欠部25a,25bがタンク11の排出配管14に嵌合した状態で、各支持部23a,23b及び各設置部24a,24bの側端部同士が溶接により連結されている。このとき、第1切欠部25a,25bと排出配管14との間に隙間を設けることで、両者の接触による排出配管14の摩耗による損傷を抑制することが望ましい。
【0035】
1個の支持板22cは、支持部23cにメンテナンス用開口部26cが設けられている。残りの5個の各支持板22dは、第1切欠部25a,25bやメンテナンス用開口部26cが設けられていない。
【0036】
全ての各支持板22a,22b,22c,22dは、支持部23a,23b,23c,23dにおける側部と下部との角部に第2切欠部27a,27b,27c,27dが形成されている。各支持板22a,22b,22c,22dは、各側部が対向するように隣接して配置されており、側部が接触した状態で各支持部23a,23b,23c,23d及び各設置部24a,24b,24c,24dの側端部同士が溶接により連結されている。この場合、各設置部24a,24b,24c,24dの側端部同士の接触部の上方側に第2切欠部27a,27b,27c,27dが設けられることで、作業空間部が確保されている。
【0037】
また、各支持板22a,22b,22c,22dは、支持部23a,23b,23c,23dと設置部24a,24b,24c,24dとの連結部における外側に補強用リブ28a,28b,28c,28dが溶接により固定されている。
【0038】
支持筒21は、8個の支持板22a,22b,22c,22dが円筒形状をなすように配置され、各支持部23a,23b,23c,23d及び各設置部24a,24b,24c,24dの側端部同士が溶接により連結されることで、スカート形状に形成されている。
【0039】
ここで、本実施形態の容器の補強方法について説明する。図5は、本実施形態の容器の補強方法を表すフローチャート、図6から図11は、容器の補強方法を説明するための概略図である。
【0040】
本実施形態の容器の補強方法は、複数の支持脚12により支持されたタンク11を支持治具により仮支持する工程と、複数の支持脚12を撤去する工程と、タンク11の下部外周に排出配管14を避けて湾曲形状をなす複数の支持板22a,22b,22c,22dを固定することでスカート形状をなす支持筒21によりタンク11を支持する工程と、タンク11から支持治具を撤去する工程とを有している。
【0041】
図6に示すように、タンク11は、外周の下部に複数の支持脚12が固定されており、各支持脚12は、下部が地面Gに形成された基礎15上に支持されている。そして、タンク11は、下部からの排出配管14が各支持脚12の間を通って外部に延出されている。
【0042】
図5図7及び図8に示すように、ステップS11にて、複数の支持脚12により支持されたタンク11を支持治具31,32,33によりそれぞれ仮支持する。下部支持治具31は、タンク11の下部を仮支持して地面Gに設置されるものである。下部支持治具31は、軸方向(鉛直方向)に伸縮自在な複数の支持ロッド41と、複数の支持ロッド41をリング形状に連結する複数の連結部42とから構成されている。下部支持治具31は、タンク11の下方の地面Gに配置され、各支持ロッド41を伸長し、上端部がタンク11の下面に当接した位置でロックする。そのため、タンク11は、自重が複数の支持ロッド41を介して地面Gに支持されることとなる。
【0043】
側部支持治具32は、各支持脚12の上部に固定されることでタンク11の側部を仮支持して地面Gに設置されるものである。側部支持治具32は、支持脚12の上部に溶接により固定される連結部43と、上端部が連結部43に連結されて下端部がタンク11から離間する傾斜方向に延出して地面Gに設置される仮支持部44とから構成される。各側部支持治具32が各支持脚12にそれぞれ配置されることで、タンク11は、自重が複数の側部支持治具32を介して地面Gに支持されることとなる。
【0044】
上部支持治具33は、タンク11の上側部と縦壁部Wの間に配置されることでタンク11の倒れを防止するものである。上部支持治具33は、圧縮コイルばねを有するサポート部材45により構成されている。サポート部材45は、タンク11の上側部と縦壁部Wの間に張設され、縦壁部Wからタンク11に対して押圧力(ばね力)が作用されている。各上部支持治具33は、タンク11の外周部に周方向均等間隔で各支持脚12の間にそれぞれ配置されることで、タンク11は、転倒力が複数の上部支持治具33を介して縦壁部Wに支持されることとなる。
【0045】
タンク11が支持治具31,32,33により仮支持されると、図5及び図9に示すように、ステップS12にて、タンク11を支持している複数の支持脚12を撤去する。即ち、各支持脚12の上部を切断し、タンク11の側部に固定されている支持脚12の一部12aを残したまま、下部を撤去する。このとき、各側部支持治具32は、タンク11の側部に固定されている支持脚12の一部12aに固定されていることから、タンク11を適正に仮支持することができる。
【0046】
ステップS13にて、各支持脚12の下部を撤去した後に基礎15の一部を撤去する。支持脚12は、下端部が基礎15上に設置されており、各支持脚12の下部を撤去するときに、基礎15の一部、または、全てを破砕して撤去する。
【0047】
図5及び図10に示すように、ステップS14にて、タンク11の下部外周に複数の支持板22a,22b,22c,22dを固定することでスカート形状をなす支持筒21を形成する。各支持板22a,22b,22c,22dは、支持部23a,23b,23c,23dと設置部24a,24b,24c,24dが連結されて構成されたものであり、事前に工場などで製造して現地に搬送しておく。そして、2個の支持板22a,22bは、各第1切欠部25a,25bがタンク11の排出配管14に嵌合した状態で、各支持部23a,23b及び各設置部24a,24bの側端部同士を溶接により連結する。
【0048】
そして、全ての各支持板22a,22b,22c,22dをタンク11の外周下部に円筒形状をなすように配置し、各支持部23a,23b,23c,23d及び各設置部24a,24b,24c,24dの側端部同士を溶接により連結する。このとき、各支持部23a,23b,23c,23dは、両側の下部に第2切欠部27a,27b,27c,27dが設けられているため、各第2切欠部27a,27b,27c,27dを作業空間部として、各設置部24a,24b,24c,24d同士を連結する溶接作業を適正に実施することができる。
【0049】
タンク11の下部外周に複数の支持板22a,22b,22c,22dを固定することでスカート形状をなす支持筒21が形成されると、図5及び図11に示すように、ステップS15にて、支持筒21の下部にリング形状をなす基礎51を設けることで支持筒21の下部を支持する。この場合、支持筒21は、下端部が基礎51に埋設されることで、この基礎51を介して地面Gに設置されることとなる。
【0050】
タンク11がスカート形状をなす支持筒21により支持されると、ステップS16にて、タンク11から各支持治具31,32,33を撤去する。このようにしてタンク11の支持が複数の支持脚12からスカート形状をなす支持筒21に変更され、補強作業が完了する。
【0051】
このように本実施形態の容器の補強方法にあっては、複数の支持脚12により支持された容器としてのタンク11を支持治具31,32,33により仮支持する工程と、複数の支持脚12を撤去する工程と、タンク11の下部外周に排出配管14を避けて湾曲形状をなす複数の支持板22a,22b,22c,22dを固定することでスカート形状をなす支持筒21によりタンク11を支持する工程と、タンク11から支持治具31,32,33を撤去する工程とを有している。
【0052】
従って、タンク11を支持する支持脚12をスカート形状の支持筒21に変更することで、タンク11の支持剛性の向上を図ることができる。例えば、タンク11を支持する支持脚12を増加して補強することが考えられるが、排出配管14などにより支持脚12を周方向に均等配置することが困難である。また、複数の支持脚12によるタンク11の支持構造では、タンク11を支持する支持位置が増加し、タンク11の多数の位置で局部応力が発生してしまい、タンク11自体の強度が低下してしまうおそれがある。スカート形状の支持筒21によるタンク11の支持構造では、タンク11を支持する支持位置が周方向に沿うものとなり、タンク11に対して局部応力が発生しにくくなり、タンク自体の強度の低下を抑制することができる。また、タンク11を交換することなく、このタンク11の支持剛性を向上することができることから、内部の流体を移送する必要がなく、発生するコストの増加を抑制することができる。
【0053】
本実施形態の容器の補強方法では、2個の支持板22a,22bの側端部に半円形状をなす第1切欠部25a,25bを形成し、第1切欠部25a,25bが排出配管14に嵌合すると共に第1切欠部25a,25bが形成された支持板22a,22bの側部同士を固定している。従って、タンク11に排出配管14が連結されていても、支持筒21を構成する支持板22a,22bの側端部に半円形状をなす第1切欠部25a,25bを形成しておき、排出配管14を避けるように第1切欠部25a,25bを排出配管14に嵌合させた状態で支持板22a,22bの側部同士を固定すればよく、支持筒21を適正に形成することができる。
【0054】
本実施形態の容器の補強方法では、鉛直方向に沿うと共にタンク11の外周方向に沿って湾曲する支持部23a,23b,23c,23dと、水平方向に沿うと共にタンク11外周方向に沿って湾曲して支持部23a,23b,23c,23dの下部に連結される設置部24a,24b,24c,24dとにより支持板22a,22b,22c,22dを構成し、支持部23a,23b,23c,23dの側部と下部との角部に第2切欠部27a,27b,27c,27dを形成している。従って、支持板22a,22b,22c,22dにおける高い剛性を確保することができ、第2切欠部27a,27b,27c,27dにより各支持板22a,22b,22c,22dの設置部24a,24b,24c,24d同士を連結するときの作業空間を確保することができ、作業性を向上することができる。
【0055】
本実施形態の容器の補強方法では、支持部23a,23b,23c,23dと設置部24a,24b,24c,24dとの連結部に補強用リブ28a,28b,28c,28dを設けている。従って、支持板22a,22b,22c,22dにおける高い剛性を確保することができる。
【0056】
本実施形態の容器の補強方法では、支持板22cにメンテナンス用開口部26cを設けている。従って、タンク11にスカート形状の支持筒21を固定した後、支持筒21の内側でタンク11の下部を支持する下部支持治具31をこのメンテナンス用開口部26cから容易に外部に取り出すことができ、作業性を向上することができる。
【0057】
本実施形態の容器の補強方法では、支持治具として、タンク11の下部を仮支持して地面Gに設置される下部支持治具31を設けている。従って、下部支持治具31によりタンク11の下部を仮支持することで、タンク11の自重を効率的に支持することができる。
【0058】
本実施形態の容器の補強方法では、支持治具として、支持脚12の上部に固定されることでタンク11の側部を仮支持して地面Gに設置される側部支持治具32を設けている。従って、支持脚12の上部に固定される側部支持治具32によりタンク11の側部を仮支持することで、側部支持治具32が既設の支持脚12の近傍に配置されるため、各種作業の邪魔になることはなく、作業性を向上することができる。
【0059】
本実施形態の容器の補強方法では、支持治具として、タンク11の上側部と縦壁部Wの間に配置される上部支持治具33を設けている。従って、上部支持治具33をタンク11の上側部と縦壁部Wの間に配置することで、タンク11の支持の耐震性を向上してタンク11の転倒を抑制することができる。
【0060】
本実施形態の容器の補強方法では、複数の支持脚12を撤去した後に基礎15を撤去し、タンク11の下部外周に複数の支持板22a,22b,22c,22dを固定することでスカート形状をなす支持筒21を形成し、支持筒21の下部にリング形状をなす基礎51を設けることで支持筒21の下部を支持する。従って、新たに配置した支持筒21の支持剛性を向上することができる。
【0061】
また、本実施形態の容器の支持構造にあっては、本実施形態の容器の補強方法により改修されたものである。従って、容器としてのタンク11を支持する支持脚12をスカート形状の支持筒21に変更することで、タンク11の支持剛性の向上を図ることができる。
【0062】
なお、上述した実施形態では、複数の支持板22a,22b,22c,22dによりスカート形状の支持筒21を形成したが、この支持板22a,22b,22c,22dの分割数は、実施形態の数に限定されるものではない。また、各支持板22a,22bに第1切欠部25a,25bを設け、第1切欠部25a,25bを排出配管14に嵌合して支持板22a,22b同士を連結したが、第1切欠部25a,25bを設ける支持板22a,22bの個数は、配管の個数に合わせて適宜設定すればよいものである。また、第1切欠部25a,25bを隣接する支持板22a,22bの両側部に設けたが、第1切欠部を隣接する支持板の一側部にU字形状をなして設けてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、容器としてのタンク11を下部支持治具31と側部支持治具32と上部支持治具33により仮支持したが、上部支持治具33を設けなくてもよく、また、下部支持治具31と側部支持治具32のいずれか一つだけ設けてもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、容器としてタンク11を適用したが、その他に熱交換器などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
11 タンク(容器)
12 支持脚
14 排出配管(配管)
15,51 基礎
21 支持筒
22a,22b,22c,22d 支持板
23a,23b,23c,23d 支持部
24a,24b,24c,24d 設置部
25a,25b 第1切欠部
26c メンテナンス用開口部
27a,27b,27c,27d 第2切欠部
28a,28b,28c,28d 補強用リブ
31 下部支持治具(支持治具)
32 側部支持治具(支持治具)
33 上部支持治具(支持治具)
図1
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