(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857094
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】無人車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20210405BHJP
B60C 27/14 20060101ALI20210405BHJP
B60C 11/16 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B60C7/00 G
B60C27/14
B60C11/16 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-129641(P2017-129641)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-11010(P2019-11010A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】517147261
【氏名又は名称】伊豆 智幸
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 智幸
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−121502(JP,A)
【文献】
実開昭59−128403(JP,U)
【文献】
特開2001−113917(JP,A)
【文献】
特開昭62−234703(JP,A)
【文献】
特開平7−257115(JP,A)
【文献】
特開平10−175407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00− 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空に形成されたタイヤ本体部と、
放射形状に配置された複数の棒状部材を含むスパイク部と、
を有し、
前記スパイク部は、前記タイヤ本体部の回転軸と平行であり、かつ、同軸上にはない回転軸で回転可能に構成されており、
前記タイヤ本体部の接地面側の壁部には、前記スパイク部が回転することによって、前記棒状部材が進退することができる複数の孔部が形成されている、
無人車両用タイヤ。
【請求項2】
前記スパイク部の直径は、前記タイヤ本体部の内部の直径と略同一である、
請求項1に記載の無人車両用タイヤ。
【請求項3】
前記スパイク部は、少なくとも一の前記棒状部材が前記孔部から前記タイヤ本体部の外側に突出し、走行路と接触することによって、回転するように構成されている、
請求項1または請求項2に記載の無人車両用タイヤ。
【請求項4】
前記孔部の外側開口部は、前記棒状部材が前記孔部の外側から内側に入るときに前記外側開口部に接触するように構成されている、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無人車両用タイヤ。
【請求項5】
前記孔部の内側開口部の外形は、前記外側開口部の外形よりも大きく、前記内側開口部と前記外側開口部との間は、傾斜部として構成されている、
請求項4に記載の無人車両用タイヤ。
【請求項6】
前記スパイク部の回転軸は、前記タイヤ本体部の内部に配置される所定の長さのリンク部に回転可能に固定されており、
前記リンク部の設定角度を変更することによって、前記棒状部材が前記孔部から突出する長さを調整することができるように構成されている、
請求項1または請求項5のいずれかに記載の無人車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人車両用のタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有人車両のタイヤについて、タイヤの表面からピンが突き出るように構成した、いわゆる、スパイクタイヤが使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6111010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が舗装されていない場所を走行すると、スパイクタイヤのピンに土などの異物が付着する場合がある。ピンに異物が付着すると、ピンによる路面のグリップが弱くなり、滑り防止効果が低下する。
【0005】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、舗装されていない場所を走行しても、滑り防止効果が低減しない無人車両用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、中空に形成されたタイヤ本体部と、放射形状に配置された複数の棒状部材を含むスパイク部と、を有し、前記スパイク部は、前記タイヤ本体部の回転軸と平行であり、かつ、同軸上にはない回転軸で回転可能に構成されており、前記タイヤ本体部の接地面側の壁部には、前記スパイク部が回転することによって、前記棒状部材が進退することができる複数の孔部が形成されている、無人車両用タイヤである。
【0007】
第一の発明の構成によれば、棒状部材は孔部から進退することができるから、タイヤ本体部の外側に突出したときに異物が付着したとしても、孔部に入るときに異物を孔部の入口において落とすことができる。これにより、舗装されていない場所を走行しても、滑り防止効果が低減しない。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の構成において前記スパイク部の直径は、前記タイヤ本体部の内部の直径と略同一である、無人車両用タイヤである。
【0009】
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の構成において、前記スパイク部は、少なくとも一の前記棒状部材が前記孔部から前記タイヤ本体部の外側に突出し、走行路と接触することによって、回転するように構成されている、無人車両用タイヤである。
【0010】
第四の発明は、第一の発明乃至第三の発明のいずれかの構成において、前記孔部の外側開口部は、前記棒状部材が前記孔部の外側から内側に入るときに前記外側開口部に接触するように構成されている、無人車両用タイヤである。
【0011】
第五の発明は、第四の発明の構成において、前記孔部の内側開口部の外形は、前記外側開口部の外形よりも大きく、前記内側開口部と前記外側開口部との間は、傾斜部として構成されている、無人車両用タイヤである。
【0012】
第六の発明は、第一の発明乃至第五の発明のいずれかの構成において、前記スパイク部の回転軸は、前記タイヤ本体部の内部に配置される所定の長さのリンク部に回転可能に固定されており、
前記リンク部の設定角度を変更することによって、前記棒状部材が前記孔部から突出する長さを調整することができるように構成されている、無人車両用タイヤである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、舗装されていない場所を走行しても、滑り防止効果が低減しない無人車両用タイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の無人車両用タイヤを装着した無人車両を示す概略斜視図である。
【
図2】無人車両用タイヤを装着した無人車両を示す概略図である。
【
図3】無人車両用タイヤの外部等を示す概略図である。
【
図4】無人車両用タイヤの内部等を示す概略図である。
【
図6】スパイク部が回転する状態等を示す概略図である。
【
図7】スパイク部が回転する状態等を示す概略図である。
【
図8】スパイク部が回転する状態等を示す概略図である。
【
図9】棒状部材が孔から進退する状態等を示す概略図である。
【
図10】棒状部材が孔から進退する状態等を示す概略図である。
【
図11】リンク部材の角度を変更する状態等を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の無人車両1は、筐体10を有する。筐体10には、無人車両1の各部を制御するコンピュータ、自律走行装置、無線通信装置、GPS(Global Positioning System)を利用した測位装置、慣性センサー、気圧センサー、バッテリー等が配置されている。また、筐体10には、無線用の通信電波及びGPS衛星からの電波を通信するためのアンテナ部18が配置されている。また、筐体10には、固定装置12を介して、センサー部14が接続されている。センサー部14には、カメラ16が配置されている。カメラ16は、可視光カメラ、または、近赤外線カメラであるが、切り替え可能なハイブリッドカメラであってもよい。
【0017】
筐体10には、無人車両用タイヤ20及び30(以下、「タイヤ20」、「タイヤ30」という。)が車軸を介して接続されている。タイヤ20及び30の表面からは、複数の棒状部材50が突出している。タイヤ20は前輪であり、タイヤ20の回転面の方向を変更し、無人車両1の進行方向を制御できるようになっている。タイヤ30は、駆動輪であり、モーター(後述)に接続されている。
【0018】
図2(a)に示すように、角度θ1を有する坂道100において、棒状部材50が坂道100の路面に接触し、あるいは、突き刺さることで、無人車両1は坂道100を滑ることなく登ることができる。
【0019】
図2(b)に示すように、舗装されておらず、凹凸のある走路110において、棒状部材50が走路110の路面に接触し、あるいは、突き刺さることで、無人車両1は走路110を滑ることなく走行することができる。
【0020】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、棒状部材50が坂道100や走路110に接触し、あるいは、突き刺さることで、無人車両1が滑ることなく走行するのであるが、各棒状部材50に着目すると、各棒状部材50はタイヤ20及び30の外側表面に形成された孔から出たり、入ったりする。各棒状部材50が、孔から出て、坂道100や走路110に接触したり、突き刺さると、土などの異物が付着する場合がある。この点、各棒状部材50が外側から孔に入る際に、異物は孔の入口でそぎ落とされ、各棒状部材50が次に孔から出て来る時には、異物は付着していない状態である。これにより、棒状部材50による滑り防止効果が維持される。
【0021】
図3(a)はタイヤ30の斜視図等であり、
図3(b)はタイヤ30の接地面を示す図である。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、タイヤ30は、タイヤ本体部31を有する。タイヤ本体部31は中空に形成されている。タイヤ本体部31には、歯車が形成されたタイヤ回転軸34が接続されている。タイヤ回転軸34は、歯車36と接続された軸38を介してモーター40と接続されている。タイヤ30の接地面側の壁部(外側壁部30a)には、複数の孔部32の開口部(外側開口部)が形成されている。タイヤ30は、タイヤ回転軸34(厳密にはその中心の軸A1)を中心に回転する。なお、タイヤ20の構造は、駆動軸に接続されておらず、回転面の方向の変更が可能である点を除いて、タイヤ30と同一であるから、説明を省略する。
【0022】
図4に示すように、タイヤ30のタイヤ回転軸34は中空であり、内部にリンク固定軸56が貫通している。リンク固定軸56は、筐体10内に固定されており、タイヤ30のタイヤ回転軸34が回転しても回転しない。リンク固定軸56は、タイヤ本体部31の内部に延在しており、その端部にリンク部材54が固定されている。リンク部材54の端部には、複数の棒状部材50及び回転軸部52から構成されるスパイク部49が配置されている。回転軸部52の回転軸A2は、タイヤ本体部31のタイヤ回転軸34の回転軸A1と平行であるが、同一軸上には位置しない。回転軸部52には動力軸は接続されていない。リンク固定軸56の一方の端部近傍に配置されたレバー58を操作することによって、リンク固定軸56を回動させ、それに伴って、リンク部材54を回動させ、リンク部材54の角度を調整し、棒状部材50の孔部32からの突出する長さを調整することができる。
【0023】
複数の棒状部材50は回転軸部52に放射形状に配置されている。複数の棒状部材50のうち、一部の棒状部材50の先端部近傍はタイヤ本体部31の孔部32から外部に突出している。
【0024】
孔部32から突出した棒状部材50が走行路に接触した状態で、タイヤ30が回転すると、棒状部材50に接続された回転軸部52が回転するようになっている。スパイク部49が回転軸A2を回転軸として回転することによって、棒状部材50は孔部32を出たり入ったり(進退)するように構成されている。
【0025】
図5(a)は孔部32をタイヤ本体部31の外側壁部30a側から視た概略図であり、
図5(b)は孔部32をタイヤ本体部31の内側壁部30b側から視た概略図である。外側壁部30a側はタイヤ本体部31の外側面(接地面)であり、内側壁部30bはタイヤ本体部31の内側面である。
図5(c)は、孔部32の孔を外側面30aと内側壁部30bを結ぶ方向において切断した概略断面図である。孔部32の外側開口部32aの外形(直径)は、棒状部材50の断面形状(直径)よりもわずかに(例えば、3%)大きい。また、孔部32の内側開口部32bの外形(直径)は、外側開口部32aの外形(直径)よりも大きく、内側開口部32bと外側開口部32aとの間は、傾斜部32cとして構成されている。
【0026】
図6乃至
図8を参照して、スパイク部49が回転して、棒状部材50が孔部32を進退する状態を説明する。スパイク部49の直径は、タイヤ本体部31の内部の直径と略同一である。本実施形態において、スパイク部49の直径は、タイヤ本体部31の内部の直径よりも、わずかに小さく、具体的には、5%小さい。複数の棒状部材50を便宜的に、棒状部材50A乃至50Pとして識別し、棒状部材50Aに着目して、スパイク部49が回転して、棒状部材50Aが孔部32を進退する状態を説明する。
【0027】
図6乃至
図8において、タイヤ30は、矢印Y1方向(時計回り)に回転し、矢印X1方向(右方向)に移動するものとする。
図6(a)の状態において、棒状部材50Aの自由端部はタイヤ本体部31の内部に位置する。ただし、棒状部材50G、50H及び50Iが走路120に接触しているため、タイヤ30が矢印Y1方向に回転して矢印X1方向へ移動すると、スパイク部49は回転軸部52(厳密には、
図4の回転軸A2)を中心として回転する。リンク部材54は、右斜め下(鉛直方向を基準とすると45度)の角度に固定されており、タイヤ30が回転しても、リンク部材54の角度は維持される。
【0028】
図6(a)の状態からタイヤ30が矢印Y1方向に回転すると、棒状部材50Aの自由端部は、複数の孔部32のうち、一つの孔部32に近づく(
図6(b)参照)。そして、タイヤ30がさらに矢印Y1方向に回転すると、棒状部材50Aの自由端部はその孔部32から外部に露出する(
図6(c)参照)。
【0029】
棒状部材50Aは、その長さ方向がリンク部材54の長さ方向と一致するとき、すなわち、棒状部材50Aがリンク部材54と同じく右斜め下方向(鉛直方向に対して45度)の角度になったときに、その自由端部の露出する部分の長さが最長になる(
図7(a)参照)。
図7(a)の状態から、タイヤ30がさらに矢印Y1方向に回転すると、棒状部材50Aの自由端部は、走路120に接触する。
【0030】
タイヤ30がさらに矢印Y1方向に回転し、棒状部材50Aの長さ方向の角度が鉛直に近くなると、棒状部材50Aが走路120と接触する長さ(走路120に食い込む長さ)は最長となる(
図7(b)参照)。
【0031】
図7(b)の状態から、タイヤ30が矢印Y1方向に回転すると、棒状部材50Aの自由端部及びその近傍部は、スパイク部49の回転により、走路120に最も食い込んだ状態から、抜かれる方向の力を受け、
図7(c)に示す状態になる。
【0032】
図7(c)の状態から、タイヤ30がさらに矢印Y1方向に回転すると、棒状部材50Aの先端部は、走路120から完全に引き抜かれ、孔部32の外側開口部32a(
図5参照)に近づく(
図8(a)参照)。そして、タイヤ30がさらに矢印Y1方向に回転すると、棒状部材50Aの先端部は、孔部32を外側から内側に貫通し、タイヤ本体部31の内部に格納される(
図8(b)参照)。棒状部材50Aの自由端部及びその近傍部が走路120に最も食い込んだ状態(
図7(b)参照)から徐々に孔部32に引き込まれる過程において、棒状部材50Aの自由端部及びその近傍部に付着した土などの異物は、棒状部材50Aが孔部32の外側開口部32aに接触することによって、そぎ落とされ、排除される。
【0033】
図9及び
図10を参照して、棒状部材50Aが一つの孔部32に入り、突出し、さらに、格納される状態を説明する。
図9(a)に示すように、棒状部材50Aの自由端部は、まず、孔部32の内側開口部32bに到達し、続いて、傾斜部32cを滑り(
図9(b)参照)、外側開口部32aから突出する(
図9(c)参照)。続いて、棒状部材50Aの先端部及びその近傍部は走路130に接触し、さらに走路130に食い込み(
図10(a)参照)、さらに、食い込み状態が最大になり(
図10(b)参照)、その後、走路130から引き抜かれ、孔部32からタイヤ本体部31に格納される際に、自由端部及びその近傍部に付着した異物200は、棒状部材50Aが外側開口部32aと接触することによってそぎ落とされる(
図10(c)参照)。
【0034】
図11を参照して、リンク部材54の角度の調整について説明する。リンク部材54の角度は、タイヤ30の回転中は固定されているが、無人車両1を動作させる前に、所定の角度に調整しておくことができる。これにより、棒状部材50と走路140との接触の程度を調整することができる。
【0035】
例えば、
図11(a)に示すように、リンク部材54の長さ方向の仮想線B2と鉛直線B1との角度を角度θ2とする。角度θ2をより鋭角にして、例えば、30度に設定すると、角度θ2が45度とのときよりも、走路140に食い込む部分の深さH1が深くなる。例えば、走路140の傾斜が大きいとか、走路140の凹凸が激しい場合には、このように、棒状部材50が走路140に食い込む深さH1を深くして、安定した走行を可能にする。
【0036】
これに対して、
図11(b)に示すように、角度θ2をより鈍角にして、例えば、120度に設定すると、タイヤ30が回転しても棒状部材50が、走路140に接触することはない。例えば、走路140がコンクリートやアスファルトのような舗装された走路である場合には、このように、棒状部材50が走路140に接することのないように設定する。
【0037】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 無人車両
10 筐体
20,30 タイヤ
31 タイヤ本体部
32 孔部
34 タイヤ回転軸
49 スパイク部
50 棒状部材
52 回転軸部
54 リンク部材
56 リンク固定軸