特許第6857099号(P6857099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857099
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】遠心機
(51)【国際特許分類】
   B04B 7/06 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   B04B7/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-137999(P2017-137999)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-18141(P2019-18141A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄貴
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−302332(JP,A)
【文献】 特開2015−226869(JP,A)
【文献】 実開平07−024451(JP,U)
【文献】 特開2001−300350(JP,A)
【文献】 特開2008−194595(JP,A)
【文献】 特開2006−142181(JP,A)
【文献】 実開平5−51461(JP,U)
【文献】 特開昭59−34383(JP,A)
【文献】 特開2002−113390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00 − 15/12
E05C 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された上壁を有する本体部と、前記本体部内に配置され前記開口部に開口するロータ室が形成された収納容器と、前記ロータ室に収容され試料を支持するロータと、前記ロータ室を開閉するように前記本体部に支持されたドアと、前記本体部に設けられ前記ドアと前記ロータ室との間をシールするシール部材と、前記ロータ室を減圧させる減圧機構と、を有する遠心機であって、
係合孔が形成され、前記ドアに設けられるフックキャッチと、
前記本体部に設けられた支持軸に設けられる基部、および前記基部に設けられ前記係合孔に進入および退出可能なフックを備えるロック部材と、を有し、
前記フックキャッチは、前記フックが前記係合孔に進入して前記フックキャッチに接触し前記ドアが第1の閉位置となる第1の位置と、前記減圧機構による前記ロータ室の減圧により前記第1の位置よりも前記基部に接近し前記ドアが前記第1の閉位置よりも前記ロータ室に接近した第2の閉位置となる第2の位置との間で移動可能であり、
前記フックキャッチが前記第2の位置のもとで、前記ロック部材を前記フックが前記係合孔から退出する方向に回動すると、前記ドアを開く方向に前記基部が前記フックキャッチの端部を押し上げる、遠心機。
【請求項2】
開口部が形成された上壁を有する本体部と、前記本体部内に配置され前記開口部に開口するロータ室が形成された収納容器と、前記ロータ室に収容され試料を支持するロータと、前記ロータ室を開閉するように前記本体部に支持されたドアと、前記本体部に設けられ前記ドアと前記ロータ室との間をシールするシール部材と、前記ロータ室を減圧させる減圧機構と、を有する遠心機であって、
係合孔が形成され、前記ドアに設けられるフックキャッチと、
前記本体部に設けられた支持軸に設けられる基部、および前記基部に設けられ前記係合孔に進入および退出可能なフックを備えるロック部材と、を有し、
前記フックキャッチは、前記フックが前記係合孔に進入して前記フックキャッチに接触し前記ドアが第1の閉位置となる第1の位置と、前記減圧機構による前記ロータ室の減圧により前記第1の位置よりも前記基部に接近し前記ドアが前記第1の閉位置よりも前記ロータ室に接近した第2の閉位置となる第2の位置との間で移動可能であり、
前記フックキャッチが前記第2の位置のもとで、前記ロック部材を前記フックが前記係合孔から退出する方向に回動すると、前記ドアを開く方向に前記フックが前記フックキャッチの前記係合孔の内端を押し上げる、遠心機。
【請求項3】
開口部が形成された上壁を有する本体部と、前記本体部内に配置され前記開口部に開口するロータ室が形成された収納容器と、前記ロータ室に収容され試料を支持するロータと、前記ロータ室を開閉するように前記本体部に支持されたドアと、前記本体部に設けられ前記ドアと前記ロータ室との間をシールするシール部材と、前記ロータ室を減圧させる減圧機構と、を有する遠心機であって、
係合孔が形成され、前記ドアに設けられるフックキャッチと、
前記本体部に設けられた支持軸に設けられる基部、および前記基部に設けられ前記係合孔に進入および退出可能なフックを備えるロック部材と、
前記支持軸に設けられたギヤに噛み合って前記ギヤの回転により、前記フックキャッチに近づく方向と離れる方向に移動する可動部材と、を有し、
前記フックキャッチは、前記フックが前記係合孔に進入して前記フックキャッチに接触し前記ドアが第1の閉位置となる第1の位置と、前記減圧機構による前記ロータ室の減圧により前記第1の位置よりも前記基部に接近し前記ドアが前記第1の閉位置よりも前記ロータ室に接近した第2の閉位置となる第2の位置との間で移動可能であり、
前記フックキャッチが前記第2の位置のもとで、前記ロック部材を前記フックが前記係合孔から退出する方向に回動すると、前記ドアを開く方向に前記可動部材が前記フックキャッチの端部を押し上げる、遠心機。
【請求項4】
前記減圧機構は真空ポンプである、請求項1乃至3の何れか1項に記載の遠心機。
【請求項5】
前記支持軸はモータの出力軸に連結されており、前記モータは前記ロック部材を動作及び停止させる、請求項1乃至4の何れか1項に記載の遠心機。
【請求項6】
前記シール部材は、前記本体部に取り付けられ、
前記シール部材は、前記ドアが前記ロータ室を開いた状態で前記ドアから離れ、
前記シール部材は、前記ドアが前記ロータ室を閉じ、かつ、前記ドアが前記第1の閉位置または前記第2の閉位置の何れにあっても前記ドアに接触して前記ロータ室をシールする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の遠心機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを収容するロータ室と、ロータ室を開閉するように動作可能なドアと、を有する遠心機に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータを収容するロータ室と、ロータ室を開閉するように動作可能なドアと、を有する遠心機の例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された遠心機は、本体、ロータ室、ロータ、駆動装置及びドアを有する。ロータ室は本体に設けられ、ロータはロータ室に収容されている。駆動装置はロータを回転させる。ドアは、蝶番によって回動可能に支持され、ドアはロータ室の開口部を開閉する。ドアパッキンが開口部の周囲に設けられている。
【0003】
ドアにフックキャッチが設けられている。本体にリッドセンサが設けられている。リッドセンサはドアの開閉状態を検出する。リッドセンサは制御装置に電気的に接続されている。操作パネルが制御装置に接続されている。ロック機構が本体に設けられている。ロック機構は、モータ及びフックを有する。モータは制御装置により回転及び停止される。
【0004】
特許文献1に記載された遠心機は、ドアが回動されてドアがロータ室の開口部を閉じると、リッドセンサはドアが閉じられたことを検出し、リッドセンサの信号は制御装置に送信される。制御装置がモータを駆動してフックを回動させると、フックがフックキャッチに係合される。すると、ドアがロータ収容室に近づく向きで移動し、ドアはドアパッキンに密着する。操作パネルによりドアのロックを解除する操作が行われると、制御装置はモータを回転させ、フックがフックキャッチから解放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4771295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている遠心機は、ロータ室を閉じているドアの操作性について改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、ロータ室を閉じているドアの操作性を向上することの可能な遠心機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の遠心機は、開口部が形成された上壁を有する本体部と、前記本体部内に配置され前記開口部に開口するロータ室が形成された収納容器と、前記ロータ室に収容され試料を支持するロータと、前記ロータ室を開閉するように前記本体部に支持されたドアと、前記本体部に設けられ前記ドアと前記ロータ室との間をシールするシール部材と、前記ロータ室を減圧させる減圧機構と、を有する遠心機であって、係合孔が形成され、前記ドアに設けられるフックキャッチと、前記本体部に設けられた支持軸に設けられる基部、および前記基部に設けられ前記係合孔に進入および退出可能なフックを備えるロック部材と、を有し、前記フックキャッチは、前記フックが前記係合孔に進入して前記フックキャッチに接触し前記ドアが第1の閉位置となる第1の位置と、前記減圧機構による前記ロータ室の減圧により前記第1の位置よりも前記基部に接近し前記ドアが前記第1の閉位置よりも前記ロータ室に接近した第2の閉位置となる第2の位置との間で移動可能であり、前記フックキャッチが前記第2の位置のもとで、前記ロック部材を前記フックが前記係合孔から退出する方向に回動すると、前記ドアを開く方向に前記基部が前記フックキャッチの端部を押し上げる。
さらに、遠心機は、開口部が形成された上壁を有する本体部と、前記本体部内に配置され前記開口部に開口するロータ室が形成された収納容器と、前記ロータ室に収容され試料を支持するロータと、前記ロータ室を開閉するように前記本体部に支持されたドアと、前記本体部に設けられ前記ドアと前記ロータ室との間をシールするシール部材と、前記ロータ室を減圧させる減圧機構と、を有する遠心機であって、係合孔が形成され、前記ドアに設けられるフックキャッチと、前記本体部に設けられた支持軸に設けられる基部、および前記基部に設けられ前記係合孔に進入および退出可能なフックを備えるロック部材と、を有し、前記フックキャッチは、前記フックが前記係合孔に進入して前記フックキャッチに接触し前記ドアが第1の閉位置となる第1の位置と、前記減圧機構による前記ロータ室の減圧により前記第1の位置よりも前記基部に接近し前記ドアが前記第1の閉位置よりも前記ロータ室に接近した第2の閉位置となる第2の位置との間で移動可能であり、前記フックキャッチが前記第2の位置のもとで、前記ロック部材を前記フックが前記係合孔から退出する方向に回動すると、前記ドアを開く方向に前記フックが前記フックキャッチの前記係合孔の内端を押し上げる。
また、遠心機は、開口部が形成された上壁を有する本体部と、前記本体部内に配置され前記開口部に開口するロータ室が形成された収納容器と、前記ロータ室に収容され試料を支持するロータと、前記ロータ室を開閉するように前記本体部に支持されたドアと、前記本体部に設けられ前記ドアと前記ロータ室との間をシールするシール部材と、前記ロータ室を減圧させる減圧機構と、を有する遠心機であって、係合孔が形成され、前記ドアに設けられるフックキャッチと、前記本体部に設けられた支持軸に設けられる基部、および前記基部に設けられ前記係合孔に進入および退出可能なフックを備えるロック部材と、前記支持軸に設けられたギヤに噛み合って前記ギヤの回転により、前記フックキャッチに近づく方向と離れる方向に移動する可動部材と、を有し、前記フックキャッチは、前記フックが前記係合孔に進入して前記フックキャッチに接触し前記ドアが第1の閉位置となる第1の位置と、前記減圧機構による前記ロータ室の減圧により前記第1の位置よりも前記基部に接近し前記ドアが前記第1の閉位置よりも前記ロータ室に接近した第2の閉位置となる第2の位置との間で移動可能であり、前記フックキャッチが前記第2の位置のもとで、前記ロック部材を前記フックが前記係合孔から退出する方向に回動すると、前記ドアを開く方向に前記可動部材が前記フックキャッチの端部を押し上げる。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態の遠心機においては、ロック部材がロック状態からアンロック状態に切り替わるように動作する際に、ドアが第2の閉位置にあるとドアに開く方向の押し上げ力が加えられる。したがって、ドアの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の遠心機の一実施形態を示す全体断面図である。
図2図1の遠心機の部分的な断面図である。
図3】ロック機構の具体例1であり、フックキャッチの端部が位置B7にある状態の断面図である。
図4】ロック機構の具体例1であり、フックキャッチの端部が位置B8にある状態の断面図である。
図5】ロック機構の具体例1であり、フックキャッチの内端が位置B8にある状態の他の断面図である。
図6】ロック機構の具体例1であり、フックキャッチの内端が位置B9にある状態の断面図である。
図7】遠心機の制御系統を示すブロック図である。
図8】ロック機構の具体例2であり、フックキャッチの内端が位置B1にある状態の断面図である。
図9】ロック機構の具体例2であり、フックキャッチの内端が位置B2にある状態の断面図である。
図10】ロック機構の具体例2であり、フックキャッチの内端が位置B2にあり、かつ、フックがフックキャッチの内端に接触している状態の断面図である。
図11】ロック機構の具体例2であり、フックキャッチの内端が位置B3にある状態の断面図である。
図12】ロック機構の具体例2であり、フックがフックキャッチから解放されている状態の断面図である。
図13】ロック機構の具体例3であり、フックキャッチの端部が位置B4にある状態の断面図である。
図14】ロック機構の具体例3であり、フックキャッチの端部が位置B5にある状態の断面図である。
図15】ロック機構の具体例3であり、可動部材がフックキャッチに接触した状態の断面図である。
図16】ロック機構の具体例3であり、フックがフックキャッチから解放されている状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る遠心機の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1に示す遠心機10は、本体部11、ドア12、収納容器13、ロータ14、ロータ用モータ15、ロック機構16、冷却装置17及び真空ポンプ18を有する。本体部11は、金属及び合成樹脂等の材料により箱形に形成されている。隔壁19が本体部11内に設けられ、隔壁19は本体部11の内部を第1室20と第2室21とに仕切っている。重力の作用方向で、第1室20は第2室21の上に位置する。
【0013】
本体部11は上壁22を有し、上壁22は隔壁19と平行に配置されている。上壁22は開口部61を有し、開口部61は第1室20につながっている。上壁22にヒンジ23が設けられている。遠心機10の平面視で、ドア12は円形や四角形、例えば正方形または長方形である。ドア12は、互いに平行な第1側縁24及び第2側縁25を有する。ドア12のブラケット26は第2側縁25に取り付けられ、ブラケット26はヒンジ23に接続されている。本体部11は、ドア12をヒンジ23を介して開閉可能に支持している。ドア12は、所定角度の範囲内で動作可能、つまり、回動可能である。
【0014】
引張りスプリング27が本体部11に設けられている。引張りスプリング27は、ドア12に開く方向の力を加える。引張りスプリング27は、金属製であり、引張りスプリング27の伸縮方向の第1端部はブラケット26に接続され、引張りスプリング27の伸縮方向の第2端部は隔壁19に接続されている。引張りスプリング27は、ドア12に対して図1で時計回りの付勢力を加える。
【0015】
収納容器13は本体部11により支持されている。収納容器13は金属製であり、収納容器13は、筒部28及び底部29を有する。筒部28は、開口部61及び第1室20に亘って配置されている。収納容器13が上壁22に支持された状態で、収納容器13の開口部31が鉛直方向で上に向いている。収納容器13の内部にロータ室32が形成されている。ドア12はロータ室32を開閉するように動作可能である。軸孔33が底部29を貫通して設けられている。
【0016】
シール部材34が本体部11に取り付けられている。シール部材34は、合成ゴム製で環状に形成されている。シール部材34は、固定要素、例えば、接着剤、ボルト等により、上壁22に固定されている。シール部材34は、図1に実線で示すようにドア12の表面35に密着可能である。表面35は平坦である。シール部材34はロータ室32を気密にシールする。ドア12が二点鎖線のように動作すると、シール部材34はドア12の表面35から離れる。つまり、ロータ室32は開放され、ユーザはロータ14をロータ室32に出し入れする作業を行える。
【0017】
ロータ14は、試料を支持、具体的には収容する。ロータ14は、金属製、合成樹脂製、ガラス製等の何れでもよい。ロータ14に識別子が設けられ、識別子はロータ14の種類等の情報を表す。試料は、液体と固体との混合物、または液体同士の混合物を含む。ロータ用モータ15は第1室20、軸孔33及び第2室21に亘って設けられている。ロータ用モータ15は電動モータであり、軸孔33をシールするシール部材37が設けられている。ロータ用モータ15の回転軸36は、ロータ室32に配置されている。回転軸36の回転中心となる中心線A1は、収納容器13の中心を兼ねている。回転軸36はロータ14に接続されており、回転軸36及びロータ14は一体回転する。
【0018】
冷却装置17は本体部11の第2室21に設けられている。冷却装置17は、冷却配管38、第1配管39、第2配管40、第3配管41、凝縮器42及び圧縮機43を有する。冷却配管38は、収納容器13の筒部28の外周に巻き付けられている。第1配管39は、冷却配管38と凝縮器42とを接続する。第3配管41は、冷却配管38と圧縮機43とを接続する。第2配管40は、圧縮機43と凝縮器42とを接続する。圧縮機43は、気体の状態で冷媒を圧縮する。圧縮機43で圧縮された冷媒は第2配管40を介して凝縮器42に送られる。凝縮器42は、冷媒を冷却して液化する熱交換器である。凝縮器42から出た液状の冷媒は、第1配管39を介して冷却配管38に送られ、ロータ室32の熱が収納容器13および冷却配管38を介して冷媒に伝達され、冷却配管38内の冷媒の温度が上昇して気化する。気化した冷媒は、第3配管41を経由して圧縮機43に送られる。
【0019】
このように、冷却装置17は、冷媒が循環する冷凍サイクルを形成し、ロータ室32の温度上昇を抑制する。冷却装置17は、インバータまたは流量調整弁のいずれか一方、または両方と、電動モータと、を有する。インバータを制御して電動モータの回転速度を制御することで冷媒の供給量を制御するか、または、流量調整弁を制御することで冷媒の圧縮圧力や供給量を制御し、ロータ室32の温度を調整可能である。流量調整弁を制御することで、冷媒の供給量を制御し、ロータ室32の温度を調整可能である。
【0020】
すなわち、流量調整弁を制御して冷媒の供給量を制御することで、ロータ室32の温度を調整することが可能である。また、圧縮機43の電動モータに印加する電圧の所定当たりの周波数を制御することで、ロータ室32の温度を調整することも可能である。
【0021】
真空ポンプ18は、第2室21に設けられている。真空ポンプ18の吸入口は、吸気管44を介してロータ室32に接続されている。真空ポンプ18が駆動すると、ロータ室32内が減圧される。
【0022】
ロック機構16は、ロータ室32を閉じたドア12が開くことを禁止するロック状態と、ロータ室32を閉じたドア12が開くことを許容するアンロック状態とに切り替えられる。ロック機構16は、ロック部材46及びロック用モータ47を有する。フックキャッチ45は、ドア12に固定されており、かつ、ドア12の表面35から突出している。フックキャッチ45は、ドア12の平面視で、第1側縁24と第2側縁25との間に配置されている。フックキャッチ45は、図3に示すように係合孔48を有する。ロック機構16の具体例を順次説明する。
【0023】
(具体例1)
図3図4図5及び図6は、ロック機構16の具体例1を示す。ロック部材46は支持軸49に取り付けられている。ロック用モータ47は、ブラケットまたはフレームを介して本体部11に固定されている。ロック用モータ47は電動モータであり、ロック用モータ47の出力軸は、減速機構を介して支持軸49に連結されている。ロック用モータ47が回転及び停止すると、ロック部材46は支持軸49を中心として回転及び停止する。ロック部材46は、支持軸49に固定された基部63と、基部63に接続されたフック50と、を有する。フック50は、支持軸49の中心線に対して垂直な平面視でL字形である。
【0024】
ドア12が図1に実線で示すように閉じられている状態で、ロック部材46が支持軸49を中心として回転すると、フック50は係合孔48に進入及び退出可能である。フック50が係合孔48に進入すると、ロック機構16はロック状態になる。ロック機構16がロック状態になると、ドア12が引張りスプリング27の付勢力で開くことを、ロック部材46とフックキャッチ45との係合力により阻止する。このようにして、ドア12は第1の閉位置に停止する。ドア12が第1の閉位置に停止していると、フック50とフックキャッチ45との間に隙間がある。このため、ドア12は第1の閉位置から更に閉じる向きで、隙間に応じた分だけ移動可能である。
【0025】
フック50が係合孔48から退出すると、ロック機構16がアンロック状態になる。ロック機構16がアンロック状態になると、ドア12の開放が許容される。このように、フック50は、フックキャッチ45に対して係合及び解放可能である。
【0026】
図7に示すように、操作表示部62が本体部11の外面に設けられている。操作表示部62は、ユーザが操作可能及び目視可能である。ユーザが操作表示部62を操作することにより、ロータ用モータ15の回転、停止及び回転速度を設定し、ロータ室32の温度を設定し、ドア12のロック解除を行うことが可能である。
【0027】
さらに、ドアセンサ51、回転速度センサ52、温度センサ53、ロータ検出センサ66及びエアリークバルブ67が設けられている。ドアセンサ51は、ドア12が閉じられているか開いているかを検出して信号を出力する。回転速度センサ52は、回転軸36の回転速度、つまり、ロータ14の回転速度を検出して信号を出力する。温度センサ53は、ロータ室32内の温度を検出して信号を出力する。ロータ検出センサ66は、ロータ14の識別子を検出することで、ロータ14の有無、ロータ14の種類を検出して信号を出力する。
【0028】
エアリークバルブ67は、収納容器13に取り付けられている。エアリークバルブ67は、ロータ室32と収納容器13の外部とを接続する管路を開閉する要素である。エアリークバルブ67としては、例えば、ソレノイドバルブを用いることが可能である。
【0029】
図1のように、制御部54が第2室21に設けられている。制御部54は、入力インタフェース、出力インタフェース、演算処理装置、記憶装置等を有するマイクロコンピュータである。制御部54は操作表示部62との間で信号の授受可能であり、ドアセンサ51、回転速度センサ52から出力される信号、温度センサ53から出力される信号、ロータ検出センサ66から出力される信号は、制御部54に入力される。制御部54は、ロータ用モータ15及びロック用モータ47を制御する信号、圧縮機43を制御する信号、真空ポンプ18を制御する信号を出力する。制御部54は、ロータ検出センサ66によって検出されたロータ14の種類に応じて、真空ポンプ18の起動及び停止、ロータ用モータ15の回転数、エアリークバルブ67を制御し、かつ、運転モードを選択する。運転モードは、大気運転モード及び真空運転モードを含む。
【0030】
次に、遠心機10の使用例を説明する。ユーザは、ドア12が開かれている状態で、ロータ14をロータ室32に配置する。ドア12は、引張りスプリング27の付勢力で開かれており、かつ、ストッパにより所定の位置で停止している。ユーザは、操作表示部62を操作して、ロータ室32の温度、ロータ14の回転速度を設定する。
【0031】
制御部54は、ドア12が開口部31を閉じているか開いているかを判断する。制御部54は、ドア12が開口部31を開いた状態にあると、ロック用モータ47を停止しており、ロック部材46は図3に二点鎖線で示すようにアンロック位置で停止している。
【0032】
ユーザがドア12をヒンジ23を中心として図1で反時計回りに動作させると、ドア12はシール部材34に近づくように移動する。ドア12がシール部材34に近づくように移動すると、引張りスプリング27は伸びる。そして、ドア12の表面35が、シール部材34に接触する。ドア12の表面35がシール部材34に接触した状態から、ユーザがドア12を更に閉じる向きに移動させると、シール部材34が弾性変形し、ドア12は、ロック機構16でロックすることが可能な位置に到達する。
【0033】
制御部54は、ドア12がロック機構16でロック可能な位置に到達したことを検出すると、ロック用モータ47を回転させる。すると、ロック部材46は支持軸49を中心として図3で反時計回りに動作する。制御部54は、ロック用モータ47を所定角度回転させ、図3に実線で示すようにフック50が係合孔48に進入すると、ロック用モータ47を停止する。つまり、ロック部材46は実線で示すロック位置で停止する。ロック部材46が図3で反時計回りで動作する間、フックキャッチ45は、ロック部材46の動作を妨げない。
【0034】
このようにして、ロック機構16はアンロック状態からロック状態に切り替わる。ロック機構16がロック状態になると、ロック部材46とフックキャッチ45との係合力により、ドア12の開放が禁止される。このようにして、ドア12は引張りスプリング27の付勢力に抗して第1の閉位置に停止する。
【0035】
ドア12が第1の閉位置で停止していると、シール部材34が表面35に押し付けられて形成されるシール面は、空気のシールに必要な接触面圧が確保される。このようにして、シール部材34はロータ室32をシールする。
【0036】
ユーザがロータ14を回転させる操作を行うと、ロータ用モータ15と共にロータ14が回転し、ロータ14内で試料の遠心分離処理が行われる。遠心分離処理は、試料の沈殿分離、精製、濃縮等を含む。遠心分離処理中、制御部54は、ロータ室32内の温度を、ユーザが設定した値に制御する。
【0037】
制御部54がロータ14の種類に応じて真空運転モードを選択すると、真空ポンプ18が起動し、かつ、エアリークバルブ67が閉じられる。すると、ロータ室32の空気圧が低下し、ドア12は、図2に二点鎖線で示す第1の閉位置から、収納容器13に近づく向きで移動する。ドア12が移動する方向は、図1に示す収納容器13の中心線A1と平行な方向である。ドア12が収納容器13に近づく向きで移動すると、図2のように、シール部材34はドア12と上壁22とにより挟まれて圧縮荷重を受け、シール部材34は弾性変形する。
【0038】
シール部材34が所定量弾性変形すると、ドア12が図2に実線で示す第2の閉位置で停止する。ドア12の第2の閉位置は、中心線A1方向で第1の閉位置よりもロータ室32に近い。ドア12が第1の閉位置から第2の閉位置に移動すると、フックキャッチ45は、図3に示す第1位置から、図4に示す第2位置に移動する。フックキャッチ45の移動方向は、図1に示す中心線A1と平行である。フックキャッチ45が第1位置から第2位置に移動すると、係合孔48の端部64は、位置B7から位置B8へ移動量L5分移動する。端部64は、フックキャッチ45のうち、図1に示す中心線A1方向で、支持軸49に最も近い箇所である。移動量L5は、図1に示す中心線A1と平行な方向の距離である。
【0039】
制御部54は、試料の遠心分離処理が終了すると真空ポンプ18を停止させ、かつ、圧縮機43を停止し、かつ、ロータ用モータ15を停止する。そして、ロータ用モータ15の減速中に、エアリークバルブ67を開く。すると、ロータ室32に外部の空気が進入する。ロータ14が完全に停止したときには、ロータ室32は大気圧の状態にある。ここで、ドア12の表面35にシール部材34が貼り付いていなければ、シール部材34は弾性復元力で元の形状に戻り、かつ、ドア12は第2の閉位置から第1の閉位置に戻る。このため、フックキャッチ45は、図4に示す第2位置から、図3に示す第1位置に戻る。
【0040】
そして、ユーザがドア12のロックを解除するために操作表示部62を操作すると、制御部54はロック用モータ47を回転させる。このため、ロック部材46は図3で支持軸49を中心として時計回りに回動する。制御部54は、フック50を図3の二点鎖線で示すように係合孔48から退出させ、ロック部材46がアンロック位置に戻るとロック用モータ47を停止する。ドア12が第1の閉位置に停止している状態で、ロック機構16がロック状態からアンロック状態に切り替わる際に、ロック部材46の動作力でドア12が付勢されることは無い。
【0041】
さらに、ドア12が第1の閉位置で停止している状態で、ロック機構16がロック状態からアンロック状態に切り替わると、ドア12は引張りスプリング27の付勢力により図1で時計回りに動作し、ドア12は所定の位置で停止する。ユーザは、ロータ室32からロータ14を取り出す。
【0042】
ところで、試料の遠心分離処理の終了後、ドア12の表面35にシール部材34が貼り付いている場合がある。例えば、ロータ室32内の温度が低下して、空気に含まれる水分が凝結し、シール部材34の表面に付着することが、その一因として挙げられる。このような場合は、ロータ室32内の空気圧が大気圧に戻っても、引張りスプリング27で付勢されるドア12は、図2に実線で示す第2の閉位置に停止した状態で停止する。
【0043】
ここで、ユーザが操作表示部62により、ドア12のロックを解除する操作を行うと、制御部54がロック用モータ47を回転させ、ロック部材46は図4で支持軸49を中心として時計回りに回動する。すると、図5に示すように、ロック部材46の基部63がフックキャッチ45の端部64に押し付けられ、ロック部材46の回転力が、フックキャッチ45に伝達される。このため、フックキャッチ45は、図6に示すように、支持軸49から離れる向きで移動する。
【0044】
次いで、制御部54は、フック50が係合孔48から退出した後、ロック用モータ47を停止し、ロック部材46がアンロック位置で停止する。基部63が、フックキャッチ45の端部64に押し付けられた時点から、ロック部材46が停止するまでの間、端部64は、位置B8から位置B9まで移動量L6分で移動する。このため、ドア12が開く方向に移動し、ドア12の表面35がシール部材34から離れる。
【0045】
このように、ユーザがロック機構16をロック状態からアンロック状態に切り替える操作を行うと、ロック部材46がドア12を開く向きに移動させ、表面35がシール部材34から離れる。このため、表面35にシール部材34が貼り付いていた場合、ユーザがドア12を掴んで表面35をシール部材34から剥がす動作を行うことなく、表面35をシール部材34から剥がすことができる。したがって、引張りスプリング27の付勢力でドア12を開く際に、ドア12をシール部材34から引き剥がすという動作を不要とし、ドア12の操作性が向上する。
【0046】
さらに、ロック機構16がロック状態で停止していると、ロック部材46はドア12を開く向きの付勢力を加えない。したがって、ロック機構16に無用な負荷が加わることを防止できる。
【0047】
なお、制御部54が大気運転モードを選択すると、ロック機構16がロック状態にある間、ドア12は第1の閉位置から第2の位置に移動することは無い。このため、ドア12が第1の閉位置で停止している際に、ロック機構16がロック状態からアンロック状態に切り替わる過程で、ロック部材46の回動力でフックキャッチ45が付勢されることは無い。
【0048】
(具体例2)
図8図9図10図11及び図12は、ロック機構16の具体例2を示す。制御部54は、ドア12が開口部31を開いた状態にあると、ロック用モータ47を停止しており、ロック部材46は図8に二点鎖線で示すようにアンロック位置で停止している。
【0049】
ユーザがドア12をヒンジ23を中心として図1で反時計回りに動作させ、制御部54は、ドア12がロック機構16でロック可能な位置に到達したことを検出すると、ロック用モータ47を回転させる。すると、ロック部材46は支持軸49を中心として図8で反時計回りに動作する。制御部54は、図8に実線で示すようにフック50を係合孔48に進入させた後、ロック用モータ47を停止する。このようにして、ロック機構16がアンロック状態からロック状態に切り替わり、ドア12が第1の閉位置に停止する。
【0050】
また、制御部54は、真空運転モードを選択すると、真空ポンプ18を起動させ、かつ、エアリークバルブ67を閉じる。すると、ロータ室32の空気圧が低下し、ドア12は、図2に二点鎖線で示す第1の閉位置から、図2に実線で示す第2の閉位置に移動して停止する。ドア12が第1の閉位置から第2の閉位置に移動する過程で、フックキャッチ45は、図8に示す第1位置から、図9に示す第2位置に移動する。フックキャッチ45が第1位置から第2位置に移動すると、係合孔48の内端48Aは、位置B1から位置B2へ移動量L1分移動する。内端48Aは、係合孔48の内周面のうち、図1に示す中心線A1方向で、支持軸49から最も離れた箇所である。移動量L1は、図1に示す中心線A1と平行な方向の距離である。
【0051】
制御部54は、試料の遠心分離処理が終了すると、ロータ用モータ15を停止し、かつ、真空ポンプ18を停止する。ロータ用モータ15の減速中にエアリークバルブ67を開く。すると、ロータ室32に外部の空気が進入し、ロータ室32が大気圧になる。ここで、ドア12の表面35にシール部材34が貼り付いていなければ、シール部材34は弾性復元力で元の形状に戻り、かつ、ドア12は第2の閉位置から第1の閉位置に戻る。このため、フックキャッチ45は、図9に示す第2位置から、図8に示す第1位置に戻る。
【0052】
そして、ユーザが操作表示部62でドア12のロックを解除する操作を行うと、制御部54はロック用モータ47を回転させる。このため、ロック部材46は図8で支持軸49を中心として時計回りに回動する。すると、フック50はフックキャッチ45の内端48Aに接触せず、フック50が係合孔48から退出する。そして、制御部54は、ロック部材46がアンロック位置に戻るとロック用モータ47を停止する。
【0053】
このように、ドア12が第1の閉位置に停止している際に、ロック機構16がロック状態からアンロック状態に切り替わる過程で、ロック部材46の動作力でドア12が付勢されることは無い。また、ロック機構16がロック状態からアンロック状態に切り替わると、ドア12は、引張りスプリングの付勢力により図1で時計回りに動作し、所定の位置で停止する。
【0054】
次に、真空ポンプ18の停止後に、ドア12が図2に実線で示す第2の閉位置に停止した状態で停止する例を説明する。ここで、ユーザが操作表示部62を操作してドア12のロックを解除する操作を行うと、制御部54がロック用モータ47を回転させ、ロック部材46は図9で支持軸49を中心として時計回りに回動する。すると、図10に示すように、ロック部材46のフック50が、フックキャッチ45の内端48Aに押し付けられ、フックキャッチ45は、図11に示すように、支持軸49から離れる向きで移動する。
【0055】
次いで、フック50が、フックキャッチ45の内端48Aから離れ、かつ、図12のようにフック50が係合孔48から退出すると、ドア12は第1の閉位置で停止する。また、制御部54は、ロック用モータ47を停止し、ロック部材46がアンロック位置で停止する。
【0056】
フック50が、フックキャッチ45の内端48Aに押し付けられた時点から、フック50が、係合孔48から退出するまでの間、内端48Aは位置B2から位置B3まで移動量L2分で移動する。このため、ドア12が開く方向に付勢され、ドア12の表面35がシール部材34から離れる。
【0057】
このように、ユーザがロック機構16をロック状態からアンロック状態に切り替える操作を行うと、ロック部材46がドア12を開く向きで付勢し、表面35がシール部材34から離れる。このため、表面35にシール部材34が貼り付いていた場合でも、ユーザがドア12を掴み、表面35をシール部材34から剥がす動作を行う必要はない。したがって、ドア12を開く際の操作性が向上する。
【0058】
さらに、ロック機構16がロック状態で停止していると、ロック部材46はドア12を開く向きの付勢力を加えない。したがって、ロック機構16に無用な負荷が加わることを防止できる。
【0059】
なお、ロック機構16の具体例2は、ロック部材46の基部63と、フックキャッチ45の端部64とが接触することは無い。さらに、制御部54が大気運転モードを選択すると、ロック機構16がロック状態にある間、ドア12は第1の閉位置から第2の閉位置に移動することは無い。このため、ドア12が第1の閉位置で停止している際に、ロック機構16がロック状態からアンロック状態に切り替わる過程で、ロック部材46の回動力でフックキャッチ45が付勢されることは無い。
【0060】
(具体例3)
図13図14図15及び図16は、ロック機構16の具体例3を示す。支持軸49にギヤ55が設けられている。ギヤ55及び支持軸49は、同一方向に回転または停止可能である。可動部材56が第1室20に配置されている。可動部材56は、図1に示す中心線A1と平行に移動可能となるように、ガイド部材により支持されている。可動部材56はラック57を有し、ギヤ55とラック57とが噛み合っている。ロック用モータ47がギヤ55を回転させると、可動部材56は中心線A1と平行に移動し、上壁22に近づく向きまたは、上壁22から離れる向きで移動する。
【0061】
次に、ロック機構16の具体例3の作用を説明する。制御部54は、ドア12が開口部31を開いた状態にあると、ロック用モータ47を停止している。ロック部材46は図13に二点鎖線で示すようにアンロック位置で停止している。
【0062】
ユーザは、開いているドア12に操作力を加え、ドア12をヒンジ23を中心として図1で反時計回りに動作させる。すると、ドア12の表面35がシール部材34に接触する。ユーザはドア12を更に閉じる向きで付勢する。
【0063】
制御部54は、ドア12がロック機構16でロック可能な位置に到達したことを検出すると、ロック用モータ47を回転させ、ロック部材46は支持軸49を中心として図13で反時計回りに動作する。制御部54は、フック50が実線で示すよう係合孔48に進入すると、ロック用モータ47を停止する。このようにして、ロック機構16はアンロック状態からロック状態になり、ドア12は第1の閉位置に停止する。また、フックキャッチ45は第1位置で停止しており、フックキャッチ45の端部45Aは位置B4で停止している。端部45Aは、フックキャッチ45の中心線A1方向で支持軸49に最も近い箇所である。フックキャッチ45が第1位置で停止していると、可動部材56は端部45Aから離れている。
【0064】
制御部54は、真空運転モードを選択すると、真空ポンプ18を起動させ、かつ、エアリークバルブ67を閉じる。すると、ロータ室32の空気圧が低下し、具体例1と同様にドア12が第1の閉位置から第2の閉位置へ移動して停止する。ドア12が第1の閉位置から第2の閉位置に移動すると、フックキャッチ45は、図13に示す第1位置から、図14に示す第2位置に移動する。フックキャッチ45の移動方向は、フックキャッチ45が第1位置から第2位置に移動すると、端部45Aは、位置B4から位置B5へ移動量L3分移動する。移動量L3は、図1に示す中心線A1と平行な方向の距離である。
【0065】
制御部54が、試料の遠心分離処理の終了後に真空ポンプ18を停止させ、かつ、ロータ用モータ15を停止する。制御部54は、ロータ用モータ15を減速中にエアリークバルブ67を開く。すると、ロータ室32に外部の空気が進入し、ロータ室32は大気圧の状態になる。ここで、ドア12の表面35にシール部材34が貼り付いていなければ、シール部材34は弾性復元力で元の形状に戻り、かつ、ドア12は第2の閉位置から第1の閉位置に戻る。このため、フックキャッチ45は、図14に示す第2位置から、図13に示す第1位置に戻る。
【0066】
そして、ユーザが操作表示部62によりドア12のロックを解除する操作を行うと、制御部54はロック用モータ47を回転させる。つまり、ロック部材46は図13で支持軸49を中心として時計回りに回動する。制御部54は、フック50が係合孔48から退出した後、ロック用モータ47を停止する。ロック部材46が図13において時計回りに動作する際に、可動部材56はフックキャッチ45に接触しない。
【0067】
次に、試料の遠心分離処理の終了後、真空ポンプ18が停止しても、ドア12が、図2に実線で示す第2の閉位置で停止している例を説明する。ここで、ユーザが操作表示部62でドア12のロックを解除する操作を行うと、制御部54はロック用モータ47を回転させる。つまり、ロック部材46は図14で支持軸49を中心として時計回りに回動し、可動部材56は中心線A1と平行に上壁22に近づく向きで移動する。すると、図15に示すように、可動部材56がフックキャッチ45の端部45Aに押し付けられ、フックキャッチ45は、支持軸49から離れる向きで移動する。制御部54は、図16のようにフック50を係合孔48から退出させた後、ロック用モータ47を停止する。このようにして、ロック機構16はロック状態からアンロック状態に切り替わる。
【0068】
可動部材56が、フックキャッチ45の端部45Aに押し付けられた時点から、ロック用モータ47が停止するまでの間、端部45Aは位置B5から位置B6まで移動量L4分で移動する。このため、ドア12は図1でヒンジ23を中心として反時計回りに回動し、ドア12の表面35がシール部材34から離れる。つまり、ドア12はロック部材46の動作力で付勢される。ドア12の表面35がシール部材34から離れると、ドア12は、引張りスプリング27の付勢力により図1で時計回りに回動し、所定の位置で停止する。
【0069】
このように、表面35にシール部材34が貼り付いていた場合でも、ユーザがドア12を掴んで表面35をシール部材34から剥がす動作を行うことなく、ドア12が開かれる。したがって、ドア12を開く動作が阻害されることを抑制でき、ドア12の操作性が向上する。
【0070】
さらに、ロック機構16がロック状態で停止していると、可動部材56はドア12を開く向きの付勢力を加えない。したがって、ロック機構16に無用な負荷が加わることを防止できる。なお、ロック機構16の具体例3は、ロック部材46が動作する際、基部63が端部45Aに接触することは無い。
【0071】
さらに、制御部54が大気運転モードを選択すると、ロック機構16がロック状態にある間、ドア12は第1の閉位置から第2の位置に移動することは無い。このため、ドア12が第1の閉位置で停止している際に、ロック機構16がロック状態からアンロック状態に切り替わる過程で、ロック部材46の回動力でフックキャッチ45が付勢されることは無い。
【0072】
実施形態で説明した事項の意味を説明する。真空ポンプ18は、減圧機構の一例であり、ロック部材46、可動部材56は、付勢機構の一例である。フックキャッチ45は、係合部の一例であり、フック50及び基部63は、ロック機構の一部である。
【0073】
遠心機は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、シール部材は、ドアに取り付けられていてもよい。この場合、ドアを閉じるとシール部材が、本体部または収納容器に接触して、ロータ室がシールされる。さらに、ロック機構を動作させる動力源は、電動モータの他、ソレノイド、油圧モータであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…遠心機、11…本体部、12…ドア、14…ロータ、16…ロック機構、18…真空ポンプ、32…ロータ室、34…シール部材、46…ロック部材、47…ロック用モータ、49…支持軸、50…フック、56…可動部材、63…基部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16