特許第6857129号(P6857129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857129
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】2型糖尿病患者処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20210405BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61K38/28
   A61K38/22ZNA
   A61K31/155
   A61P3/10
   A61P43/00 121
   A61P3/04
【請求項の数】14
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2017-548095(P2017-548095)
(86)(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公表番号】特表2018-509419(P2018-509419A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016055267
(87)【国際公開番号】WO2016146514
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】15159064.3
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーヌ・ロワ
(72)【発明者】
【氏名】エリザベート・スアミ
(72)【発明者】
【氏名】ナシマ・デミール
(72)【発明者】
【氏名】ジェニー・イェ
【審査官】 吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−526788(JP,A)
【文献】 特表2009−523139(JP,A)
【文献】 特表2012−511899(JP,A)
【文献】 特表2015−501314(JP,A)
【文献】 DIABETES CARE,2013年 9月,VOL:36, NR:9,PAGE(S):2497 - 2503,URL,http://dx.doi.org/10.2337/DC12-2462
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病患者における血糖管理における使用のための組み合わせ医薬であって、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含み、
該2型糖尿病は、基礎インスリンと1〜3つの経口抗糖尿病薬のみとで適切に管理されず、該1〜3つの経口抗糖尿病薬は、スルホニル尿素、DPP−4阻害剤及びグリニドからなる群より選択され、
患者は、スルホニル尿素、DPP−4阻害剤及びグリニドの少なくとも1つを用いる併用処置を受けない、
上記の組み合わせ医薬。
【請求項2】
処置しようとする2型糖尿病が、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない、請求項1に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項3】
処置しようとする患者が肥満である、請求項1又は2に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項4】
処置しようとする患者が、少なくとも65歳の年齢を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項5】
請求項1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、基礎インスリンと1〜3つの経口抗糖尿病薬のみとで処置された場合に、少なくとも9mmol/Lの空腹時血
漿グルコースを有し、該1〜3つの経口抗糖尿病薬は、スルホニル尿素、DPP−4阻害 剤及びグリニドからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項6】
請求項1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、化合物(b)及び場合
により化合物(c)のみで処置された場合に、5.6〜6.9mmol/Lの範囲の空腹
時血漿グルコース濃度又は少なくとも6.6mmol/Lの空腹時血漿グルコース濃度を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項7】
請求項1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、基礎インスリンと1〜3つの経口抗糖尿病薬のみとで用いて処置された場合に、少なくとも8.5%のHbA1cを有し、該1〜3つの経口抗糖尿病薬は、スルホニル尿素、DPP−4阻害剤及びグリニドからなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項8】
請求項1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、化合物(b)及び場合
により化合物(c)のみで処置された場合、少なくとも7.5%のHbA1cを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項9】
基礎インスリンが、インスリングラルギン、インスリンデテミル及びイソフェンインスリン(NPHインスリン)から選択される、請求項5〜8のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項10】
処置しようとする患者において、2型糖尿病は、化合物(a)、(b)及び場合により(c)を用いた治療の開始前少なくとも1年間又は少なくとも少なくとも2年間診断されていた、請求項1〜のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項11】
組み合わせの投与が:
(i) 少なくとも4週間、化合物(b)及び(c)を投与する工程、並びに
(ii)化合物(a)、(b)及び(c)の投与による処置を継続する工程
を含み、
ここで、工程(i)において投与しようとする化合物(b)の量は、所定の空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び所定の自己測定血漿グルコースレベルが達成されるか又は 所定の空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び所定の自己測定血漿グルコースレベルに少なくとも近くなるように調整される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項12】
工程(i)において投与しようとする化合物(b)の量は、
(I) 約4.4 mmol/l〜約5.6mmol/lの空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び空腹時自己測定血漿グルコースレベル、又は/並びに
(II) 約7.8mmol/l(又は約140mg/dl)又はそれ以下の自己測定血漿グルコースレベル(SMPG)が達成されるか又は少なくともこれらに近くなるように調整される、請求項11に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項13】
(II)における自己測定血漿グルコースレベルは、4ポイント自己測定血漿グルコースレベル又は7ポイント自己測定血漿グルコースレベルである、請求項12に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【請求項14】
(a) リキシセナチド若しくは/及びその薬学的に許容しうる塩が、非経口投与用に製造され、
(b) インスリングラルギン若しくは/及びその薬学的に許容しうる塩が、非経口投与用に製造され、又は/かつ
(c) メトホルミン若しくは/及びその薬学的に許容しうる塩は、経口投与用に製造される、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明の主題は、2型糖尿病患者における、血糖管理における使用のため、HbA1c値、空腹時血漿グルコース又は/及び食事2時間後血漿グルコースの減少における使用のため、体重増加の予防又は/及び体重減少の誘導における使用のため、低血糖のリスクの低減における使用のための組み合わせ医薬であり、該組み合わせは、
(i) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(ii) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(iii) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む。
【背景技術】
【0002】
健常なヒトにおいて、膵臓によるインスリンの放出は、血中グルコース濃度に厳密に連結している。食後に現れるような血中グルコースの増加したレベルは、インスリン分泌の個別の増加により急速に釣り合いが取られる。空腹状態において、血漿インスリンレベルは、インスリン感受性の器官及び組織への継続的なグルコース供給を確実にし、かつ夜間に肝臓グルコース産生を低レベルに維持するために十分な基礎値まで低下する。
【0003】
1型糖尿病と対照的に、2型糖尿病では一般的にインスリンの欠乏はないが、多くの場合、特に進行性の症例において、経口投与される抗糖尿病薬との組み合わせが必要とされる場合、インスリンを用いた処置が最も適した治療であるとみなされる。
【0004】
初期症状を伴わない数年にわたり増加した血中グルコースレベルは、重大な健康上の危険性を示す。血中グルコースの慢性的に増加したレベルは、糖尿病合併症の発症の主な原因であるということは、米国における大規模DCCT研究(非特許文献1)により明らかに示された。糖尿病合併症の例は、網膜症、腎症、又はニューロパチーで現れる可能性があり、そして失明、腎不全及び四肢喪失に至り、そして心血管疾患の増加した危険性を伴う大血管及び小血管損傷である。従って、糖尿病の改善された治療は、血中グルコースを可能な限り生理的範囲に近く維持することを主に目指さなければならないと結論付けることができる。
【0005】
2型糖尿病に罹患した過体重の患者、例えば、ボディ・マス・インデックス(BMI)≧30 kg/m2の患者には特定の危険性が存在する。これらの患者において、糖尿病の危険性は、例えば、正常体重の2型糖尿病患者と比較して心血管疾患の増加をもたらす過体重の危険性と重なる。従って、これらの患者において過体重を減らしながら糖尿病を処置することが特に必要である。
【0006】
化合物desPro36Exendin-4(1-39)-Lys6-NH2(AVE0010、リキシセナチド)は、エキセンディン-4(Exendin-4)の誘導体である。リキシセナチドは特許文献1において配列番号93として開示される:
配列番号1 :リキシセナチド (44アミノ酸)
H-G-E-G-T-F-T-S-D-L-S-K-Q-M-E-E-E-A-V-R-L-F-I-E-W-L-K-N-G-G-P-S-S-G-A-P-P-S-K-K-K-K-K-K-NH2
配列番号2:エキセンディン-4 (39アミノ酸)
H-G-E-G-T-F-T-S-D-L-S-K-Q-M-E-E-E-A-V-R-L-F-I-E-W-L-K-N-G-G-P-S-S-G-A-P-P-P-S-NH2
【0007】
エキセンディン類は、血中グルコース濃度を低下させることができる一群のペプチドである。エキセンディンアナログのリキシセナチドは、天然エキセンディン-4配列のC末端短縮を特徴とする。リキシセナチドは、エキセンディン-4には存在しない6つのC末端リジン残基を含む。
【0008】
リキシセナチドは、des-38-プロリン-エキセンディン-4(アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum))-(1-39)-ペプチジルペンタ-L-リジル-L-リジンアミド(CAS番号320367-13-3)とも呼ばれる。本発明において、「リキシセナチド」は、その薬学的に許容しうる塩を含む。当業者は、リキシセナチドの適切な薬学的に許容しうる塩が分かる。
【0009】
インスリングラルギンはヒトインスリンのアナログである。インスリングラルギンは、位置A21におけるアスパラギンのグリシンによるさらなる置換を有する31B-32B-ジ-Argヒトインスリンである。インスリングラルギンは、Gly(A21)-Arg(B31)-Arg(B32)ヒトインスリンとも呼ばれる。インスリングラルギンのCAS番号は160337-95-1である。本発明において、「インスリングラルギン」はその薬学的に許容しうる塩を含む。当業者は、インスリングラルギンの適切な薬学的に許容しうる塩がわかる。
【0010】
メトホルミンは、1,1-ジメチルビグアニド(CAS番号657-24-9)の国際一般名である。メトホルミンは、食事改善に応答しないインスリン非依存性糖尿病(2型糖尿病)の処置において使用されるビグアナイド血糖降下薬である。メトホルミンは、インスリン感受性を改善し、そしてグルコースの腸管吸収を減少させることにより血糖管理を改善する。メトホルミンは、通常は経口投与される。しかし、肥満患者におけるメトホルミンによる2型糖尿病管理は、不十分かもしれない。従って、これらの患者において、2型糖尿病を管理するためのさらなる尺度が必要とされるかもしれない。本明細書において使用される「メトホルミン」はその薬学的に許容しうる塩を含んでいた。当業者は、メトホルミンの適切な薬学的に許容しうる塩が分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 01/04156
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】The Diabetes Control and Complications Trial Research Group (1993) N. Engl. J. Med. 329、977-986
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施例において、リキシセナチド、インスリングラルギン及び場合によりメトホルミンの組み合わせの効果は、基礎インスリン単独又はメトホルミン、スルホニル尿素、ジペプチジル−ペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤及びグリニドから選択される1〜3の経口抗糖尿病薬と組み合わせた基礎インスリンで十分に管理されない肥満2型糖尿病患者において試験された。この処置によってさえ、糖尿病患者はなお、約9.2〜9.5 mmol/Lの空腹時血漿グルコース濃度及び約8.5%のHbA1c値を有していた。食事2時間後血漿グルコースは、約13.8〜14.5 mmol/L (249〜262 mg/dL)であった。これらの値はなお正常血糖値を超える。
【0014】
驚くべきことに、約6.6mmol/L (119 mg/dL)までの空腹時グルコース血漿濃度の減少を、リキシセナチド、インスリングラルギン及び場合によりメトホルミンの組み合わせを用いた処置により観察することができた。体重の減少は、1日に1回又は1日に3回のインスリングルリジンを用いた比較処置を考慮してリキシセナチドについて統計的に優れていた。
【0015】
リキシセナチド、インスリングラルギン及び場合によりメトホルミンの組み合わせを用いた処置の開始前に、上に示した前処置の終了、及び再発も重篤な低血糖もなく空腹時SMPGに関して4.4〜5.6 mmol/Lの血糖目標を達成するための12週間のインスリングラルギン(場合によりメトホルミンと組み合わせた)の用量設定により、9.16 mmol/Lから6.91 mmol/Lへの空腹時グルコース血漿濃度及び8.51%から7.87%へのHbA1cの初期減少を生じた。
【0016】
記録された低血糖は、インスリングルリジンでの1日1回又は1日3回の比較処置を考慮して、リキシセナチドで数値的かつ有意により低かった。
【0017】
結論として、リキシセナチド及び場合によりメトホルミンと組み合わせたインスリングラルギンは、管理が困難で肥満のインスリンで処置された2型糖尿病患者において、基礎インスリンと経口抗糖尿病化合物又は基礎インスリンと食前インスリン(prandial insulin)(ボーラス投与)として、食前インスリン(例えば、インスリングルリジン)と比較してより少ない低血糖及び体重減少とともに意味のある血糖目標を達成する好ましい選択肢になり得る。
【0018】
本発明の第一の局面は、2型糖尿病患者における血糖管理における使用のための組み合わせ医薬であって、該組み合わせは、
(i) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(ii) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、ならびに
(iii) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む。
【0019】
この局面において、処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。
【0020】
本明細書に開示される実施例により実証されるように、本明細書に記載される組み合わせは、血糖管理を改善するために使用され得る。本発明において、「血糖管理の改善」又は「血糖管理」は、特に、食事2時間後血漿グルコース濃度の改善、空腹時血漿グルコース濃度の改善、又は/及びHbA1c値の改善を指す。
【0021】
特に、「血糖管理の改善」又は「血糖管理」は、食事2時間後血漿グルコース濃度の改善を含む。
【0022】
特に、「血糖管理の改善」又は「血糖管理」は、食事2時間後血漿グルコース濃度の減少を含む。減少は、詳細には、食事2時間後血漿グルコース濃度が正常血糖値に達するか又は少なくともこれらの値に近づくことを意味する。
【0023】
特に、「血糖管理の改善」又は「血糖管理」は、空腹時血漿グルコース濃度の改善を含む。
【0024】
特に、空腹時血漿グルコース濃度の改善は、空腹時血漿グルコース濃度の減少を含む。減少は、詳細には、空腹時血漿グルコース濃度が正常血糖値に達するか又は少なくともこれらの値に近づくことを意味する。
【0025】
特に、「血糖管理の改善」又は「血糖管理」は、HbA1c値の改善を含む。
【0026】
特に、HbA1c値の改善はHbA1c値の減少を含む。HbA1c値の減少は、詳細には、HbA1c値が6.5%又は7%未満に減少することを意味する。
【0027】
本発明のさらに別の局面は、2型糖尿病患者におけるHbA1c値、空腹時血漿グルコース又は/及び食事2時間後血漿グルコースの改善における使用のための組み合わせ医薬であり、該組み合わせは、
(i) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(ii) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(iii) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む。
【0028】
この局面において、処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。
【0029】
本発明において、正常血糖値は、特に60〜140 mg/dl(3.3〜7.8 mmol/Lに対応する)の血中グルコース濃度である。この範囲は、特に、空腹条件下及び食後条件下での血中グルコース濃度を指す。
【0030】
2型糖尿病診断のための基準は:
− 空腹時血漿グルコース濃度(FPG)が≧7.0 mmol/L(126 mg/dl)であること、又は
− 負荷後血漿グルコース濃度が、水に溶解した75g無水グルコースの等価物を含有するグルコース負荷を使用して、世界保健機関により記載されるように(Definition、Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus and its Complications. Part 1: Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus. WHO/NCD/NCS/99.2. Geneva; 1999)行って、>11.1 mmol/L (200 mg/dl)であること、又は
− 糖尿病の症状及び随時(casual)血漿グルコース
≧200 mg/dl (11.1 mmol/L)
を含む。
【0031】
これらの基準は、小児思春期糖尿病のためのグローバルIDF/ISPADガイドライン(国際糖尿病連合、ISBN 2-930229-72-1)において記載される。
【0032】
2型糖尿病の診断は、単一の血漿グルコース濃度に基づくべきである。診断は、空腹時若しくは/及び食後血中グルコースレベル又は/並びに経口耐糖能試験の継続した観察を必要とし得る。
【0033】
Craig (Type 2 diabetes mellitus Diabetes 2014: 15(Suppl. 20): 4-17)によれば、空腹時血漿グルコース(FPG)及び負荷後(post challenge)(負荷後(postload))グルコースは、以下のように分類することができる:
− FPG<5.6 mmol/L (100 mg/dL) = 正常空腹時グルコース濃度。
− FPG 5.6〜6.9 mmol/L (100〜125 mg/dL) = 不良空腹時グルコース濃度。
− FPG≧7.0 mmol/L (126 mg/dL) = 糖尿病の暫定診断(診断は、上記のように確認されなければならない)。
【0034】
経口耐糖能試験(OGTT)が使用される場合の対応する分類は以下のとおりである:
− 負荷2時間後グルコース<7.8 mmol/L (140 mg/dL) = 正常耐糖能。
− 負荷2時間後グルコース 7.8〜<11.1mmol/L (140〜200 mg/dL) = 耐糖能障害。
− 負荷2時間後グルコース ≧ 11.1 mmol/L (200 mg/dL) = 糖尿病の暫定診断(診断は上記のように確認されなければならない)。
【0035】
耐糖能障害(IGT)及び空腹時グルコース濃度障害(IFG)は、正常グルコース恒常性と糖尿病との間の炭水化物代謝障害の自然な経過における中間段階である。
【0036】
本発明において、空腹時血漿グルコースの正常血糖値は、特に<5.6 mmol/Lの血中グルコース濃度である。
【0037】
本発明において、食後血漿グルコースの正常血糖値は、本明細書において定義されるように、特に<7.8 mmol/Lの血中グルコース濃度である。
【0038】
本発明において、特定の抗糖尿病処置により「適切に管理されない」は、この処置が、2型糖尿病の症状を除去するために十分ではないということを意味する。特に、この処置により「適切に管理されない」は、患者が、例えば、食事2時間後血漿グルコース濃度、HbA1c値又は/及び空腹時血漿グルコース濃度に関して正常血糖値に達しないということを意味する。
【0039】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病患者は、2型糖尿病に罹患している被験体であり得、ここで2型糖尿病は、基礎インスリン単剤療法を用いた処置により適切に管理されない。
【0040】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病患者は、2型糖尿病に罹患しており、ここで2型糖尿病は、基礎インスリンとメトホルミン単独との組み合わせ、例えば、(a)少なくとも1.0 g/日メトホルミン若しくは少なくとも1.5 g/日メトホルミンを少なくとも3ヶ月間の用量、又は/及び(b)最大で2.0 g/日メトホルミンを少なくとも3ヶ月間若しくは最大で3.5 g/日メトホルミンを少なくとも3ヶ月の用量との組み合わせを用いた処置により適切に管理されない。
【0041】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病患者は、2型糖尿病に罹患している被験体であり得、ここで処置しようとする2型糖尿病は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。
【0042】
本発明に従う処置により、2型糖尿病の適切な管理が、本明細書に記載されるような、特定の処置により適切に管理されない2型糖尿病患者において達成され得る。
【0043】
本明細書で使用される「基礎インスリン」としては、インスリングラルギン、インスリンデテミル及びイソフェンインスリン(NPHインスリン)が挙げられる。基礎インスリンは、特に、インスリングラルギン、インスリンデテミル及びイソフェンインスリン(NPHインスリン)から選択される。
【0044】
本明細書で使用される「本発明に従って処置しようとする」、「本発明に従う処置」、又は「本発明に従う治療」は、本明細書に記載されるように、
(i) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(ii) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(iii) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
を含む組み合わせ医薬による2型糖尿病患者の処置に関する。
【0045】
本発明のさらなる局面は、2型糖尿病患者における、体重増加の予防における使用のため、又は/かつ体重減少を誘導するための組み合わせ医薬であり、該組み合わせは、
(i) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(ii) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(iii) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む。
【0046】
この局面において、処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで適切に管理されない。
【0047】
本発明の実施例は、特許請求される組み合わせが、本明細書で定義されるような、2型糖尿病患者において体重を減少させることができるということを実証し、ここで比較処置(1日に1回又は1日に3回のインスリングルリジン)は有意な体重増加を誘導する。
【0048】
本発明のさらに別の局面は、2型糖尿病患者における低血糖のリスクの低減における使用のための組み合わせ医薬であって、該組み合わせは、
(i) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(ii) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(iii) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む。
【0049】
この局面において、処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び化合物(c)のみで適切に管理されない。
【0050】
本発明の実施例は、1日に1回又は1日に3回のインスリングルリジンを用いた比較処置を考慮して、記録された低血糖が、特許請求された組み合わせを用いて、数値的にかつ有意により低かったということを実証する。
【0051】
低血糖は、短期及び長期の両方において血糖管理における決定的な制限因子である。糖尿病の血糖管理における一定の改善にもかかわらず、集団ベースのデータは、低血糖が1型及び2型糖尿病の両方を有する人々にとって主要な問題であり続けているということを示す(American diabetes association、workgroup on hypoglycemia: Defining and Reporting Hypoglycemia in Diabetes. Diabetes Care 28(5)、2005、1245-1249)。
【0052】
本発明の組み合わせは、本明細書に記載されるように、2型糖尿病患者に投与された場合、低血糖を予防し得る。「低血糖の予防」は、低血糖事象数及び/又は低血糖事象の重篤度の減少を含む。本明細書に記載される組み合わせは、低血糖の予防における使用に適している。
【0053】
本発明において、低血糖は、2型糖尿病患者が、70 mg/dL未満(又は3.9 mmol/L未満)、60 mg/dL未満(又は3.3 mmol/L未満)、54 mg/dL(又は3.0 mmol/L未満)、50 mg/dL未満、40 mg/dL未満、又は36 mg/dL未満の血漿グルコース濃度を経験する状態である。
【0054】
本発明において、「症候性低血糖」又は「症候性低血糖事象」は、低血糖から生じる臨床症状に関連する状態であり、ここで血漿グルコース濃度は、70 mg/dL未満(又は3.9 mmol/L未満)、60 mg/dL未満(又は3.3 mmol/L未満)、54 mg/dL未満(又は3.0 mmol/L未満)、50
mg/dL未満、又は40 mg/dL未満であり得る。臨床症状は、例えば、発汗、動悸、空腹感、不穏状態、不安、疲労、易刺激性、頭痛、集中力低下、傾眠、精神障害、視覚障害、一過性感覚障害、一過性運動障害、混乱、痙攣、及び昏睡であり得る。本発明において、本明細書に示される症候性低血糖の1つ又はそれ以上の臨床症状が選択され得る。症候性低血糖は、経口炭水化物投与後の即座の回復と関連し得る。症候性低血糖事象は、好ましくは、60 mg/dL未満(又は3.3 mmol/L未満)の血漿グルコース濃度を有する。
【0055】
本発明において、「重篤な症候性低血糖」又は「重篤な症候性低血糖事象」は、低血糖から生じる、本明細書に示されるような臨床症状を伴う状態であり、ここで、血漿グルコース濃度は、70mg/dL未満(又は3.9 mmol/L未満)、54mg/dL未満(又は3.0 mmol/L未満)又は36 mg/dL(又は2.0 mmol/L未満)であり得る。重篤な症候性低血糖は、低血糖事象から生じる急性神経学的障害と関連し得る。重篤な症候性低血糖において、患者は、炭水化物、グルカゴン、又は他の蘇生行動を積極的に施与するために別の人物の補助を必要とし得る。これらのエピソードは、発作、意識喪失又は昏睡を含むのに十分な神経低糖症を伴うかもしれない。血漿グルコース測定は、このような事象の間は利用可能ではないかもしれないが、血漿グルコースの正常までの回復に起因する神経学的回復は、その事象が低い血漿グルコース濃度により誘導されたということの十分な証拠とみなされる。重篤症候性低血糖事象は、好ましくは、36 mg/dL未満(又は2.0 mmol/L未満)の血漿グルコース濃度を有する。
【0056】
重篤症候性低血糖の定義は、神経学的障害が自己処置を妨げるのに十分重篤であり、かつ従って患者自身又は他人を傷害の危険性にさらすと考えられた全ての事象を含み得る。急性神経学的障害は、傾眠、精神障害、視覚障害、一過性感覚障害、一過性運動障害、錯乱、痙攣、及び昏睡から選択される少なくとも1つであり得る。「補助を必要とする」は、患者が彼自身又は彼女自身を助けることができなかったということを意味する。補助が必要でない場合に親切から患者を補助することは、「補助を必要とする」事柄とみなされるべきではない。
【0057】
重篤症候性低血糖は、経口炭水化物、静脈内グルコース、又は/及びグルカゴン投与の後の即座の回復と関連し得る。
【0058】
本発明において、「記録された症候性低血糖」又は「記録された症候性低血糖事象」は、その事象の間に低血糖の典型的な症状が≦70 mg/dL (≦ 3.9 mmol/L)、又は54mg/dLに等しいか若しくはそれ以下(≦ 3.0 mmol/L)の測定された血漿グルコース濃度を伴っていた事象である。低血糖事象から生じると考えられる臨床症状は、例えば、増加した発汗、神経過敏、無力症/脱力感、眩暈、振戦、食欲亢進、動悸、頭痛、睡眠障害、錯乱、発作、意識不明、昏睡である。
【0059】
本発明において、「無症候性低血糖」又は「無症候性低血糖事象」は、低血糖の典型的な症状を伴っていなかったが、70mg/dL(3.9 mmol/L)に等しいか若しくはそれ以下、又は54mg/dL(3.0 mmol/L)に等しい以下若しくはそれ以下の測定された血漿グルコース濃度を伴う事象である。
【0060】
本発明において、「推定症候性低血糖」又は「推定症候性低血糖事象」は、その事象の間に、低血糖の症状は血漿グルコース測定を伴わないが、70 mg/dLに等しいか若しくはそれ以下(又は3.9 mmol/Lに等しいか又はそれ以下)、又は54mg/dLに等しいか若しくはそれ以下(又は3.0 mmol/Lに等しいか又はそれ以下)の血漿グルコース濃度によりおそらく引き起こされた事象である;血漿グルコースの試験なしに経口炭水化物で処置された症状。
【0061】
本発明において、「相対的低血糖」又は「相対的低血糖事象」は、その事象の間に、糖尿病を有する人物が低血糖の典型的な症状を報告し、かつ症状が低血糖を示すと解釈するが、測定された血漿グルコース濃度が70 mg/dLより高い(又は3.9 mmol/Lより高い)事象である。
【0062】
本発明において、低血糖は、症候性低血糖、重篤症候性低血糖、記録された症候性低血糖、推定症候性低血糖、相対的症候性低血糖、又は無症候性低血糖であり得る。症候性低血糖が好ましく、重篤症候性低血糖がさらに好ましい。
【0063】
本明細書で使用される「低血糖のリスクを低減すること」は、低血糖の発生率を低減することを含み得る。患者年あたりの低血糖の発生率は、患者あたり: 365.25 x (低血糖のエピソードの数)/(曝露された日数)として計算され得、そして事象の種類及び処置群ごとにまとめられる。本明細書で使用される「低血糖のリスクを低減すること」は、本明細書に記載される製剤が2型糖尿病患者に投与される場合の低血糖の予防をさらに含み得る。
本明細書で使用される「低血糖のリスクを低減すること」は、低血糖事象の数、及び/又は低血糖事象の重篤度の低減をさらに含み得る。
【0064】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病に罹患している2型糖尿病患者は、肥満であってもよい。患者は、ボディ・マス・インデックスが少なくとも30 kg/m2である場合に肥満とみなされ得る。本発明において、肥満2型糖尿病患者は、少なくとも30 kg/m2のボディ・マス・インデックスを有し得る。肥満2型糖尿病患者は、少なくとも87 kg、少なくとも88 kg、少なくとも89 kg又は少なくとも90 kgの体重を有し得る。2型糖尿病患者は、本発明に従う組み合わせを用いた治療の開始前に肥満であってもよい。
【0065】
処置しようとする患者は50歳未満の年齢を有し得る。患者はまた、少なくとも50歳の年齢、又は50〜64歳の範囲の年齢を有し得る。患者はまた、少なくとも65歳の年齢、又は65〜74歳の範囲の年齢を有し得る。患者はまた少なくとも75歳の年齢を有し得る。患者が少なくとも65歳の年齢を有することが好ましい。
【0066】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病は、基礎インスリン単剤療法又は基礎インスリンとメトホルミン、スルホニル尿素、DPP-4阻害剤又はグリニド単独からなる群より選択される1〜3つの経口抗糖尿病薬とを用いて適切に管理されない2型糖尿病に罹患していもよい。この文脈において、基礎インスリンは、特に、インスリングラルギン、インスリンデテミル及びイソフェンインスリン(NPHインスリン)から選択される。さらに、処置しようとするこの2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみを用いて適切に管理されない。
【0067】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病患者は、基礎インスリン単剤療法又は基礎インスリンとメトホルミン、スルホニル尿素、DPP-4阻害剤又はグリニド単独からなる群より選択される1〜3つの経口抗糖尿病薬のみとで処置された場合に、少なくとも9 mmol/L又は少なくとも9.5 mmol/Lの空腹時血漿グルコースを有し得る。特に、患者は、本発明に従う組み合わせを用いた治療の開始前に少なくとも9 mmol/L L又は少なくとも9.5 mmol/Lのこの空腹時血漿グルコースを有し得る。この文脈において、基礎インスリンは、特に、インスリングラルギン、インスリンデテミル及びイソフェンインスリン(NPHインスリン)から選択される。さらに、処置しようとするこの2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで適切に管理されない。
【0068】
本発明に従う組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで処置された場合に、5.6〜6.9mmol/Lの範囲の空腹時血漿グルコースを有し得る。この範囲は、空腹時血漿グルコース濃度は、空腹時血漿グルコース濃度障害とみなされ得る。
【0069】
本発明に従う組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで処置された場合、少なくとも6.6 mmol/L、少なくとも6.7 mmol/L、少なくとも6.8 mmol/L又は少なくとも6.9 mmol/Lの空腹時血漿グルコースを有し得る。
【0070】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病患者は、基礎インスリン単剤療法又は基礎インスリンとメトホルミン、スルホニル尿素、DPP-4阻害剤又はグリニドからなる群より選択される1〜3つの経口抗糖尿病薬のみとで処置された場合、少なくとも8.5%のHbA1cを有し得る。特に、患者は、本発明に従う組み合わせを用いた値用の開始前に少なくとも8.5%のこのHbA1cを有し得る。この文脈において、基礎インスリンは、特に、インスリングラルギン、インスリンデテミル及びイソフェンインスリン(NPHインスリン)から選択される。さらに、この処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで適切に管理されない。
【0071】
本発明に従う組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで処置された場合に、少なくとも7.5%又は少なくとも7.8%のHbA1cを有し得る。
【0072】
特に、本発明に従って処置しようとする患者は、スルホニル尿素、DPP-4阻害剤及びグリニドのうちの少なくとも1つを用いた併用処置を受けない。
【0073】
特に、本発明に従って処置しようとする患者において、2型糖尿病は、本発明に従う治療の開始前少なくとも1年間又は少なくとも2年間診断されていた。
【0074】
本発明に従う組み合わせの投与は:
(i) 化合物(b)及び(c)を少なくとも4週間投与する工程、並びに
(ii) 化合物(a)、(b)及び(c)の投与による処置を継続する工程
を含み得、
ここで、工程(i)又は/及び(ii)において投与しようとする化合物(b)の量は、所定の空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び所定の自己測定(self-monitored)血漿グルコースレベルが達成されるか又は所定の空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び所定の自己測定血漿グルコースレベルに少なくとも近くなるように調整される(用量設定される)。特に、化合物(b)の調整(用量設定)は工程(i)において行われる。
【0075】
工程(i)において、本発明の組み合わせ医薬の化合物(b)及び(c)は、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、又は少なくとも16週間投与され得る。好ましくは、工程(i)は、化合物(b)及び(c)の少なくとも約12週間の投与を含む。
【0076】
工程(i)は、最大で約8週間、最大で約12週間、最大で約16週間、最大で約20週間、又は最大で約24週間行われ得る。約12週間の工程(i)の期間が好ましい。
【0077】
工程(i)は、化合物(a)が投与されないという条件で行われ得る。本発明の実施例により実証されるように、インスリングラルギン、リキシセナチド及び場合によりメトホルミンの組み合わせを用いた処置は、処置をインスリングラルギン及び場合によりメトホルミンのみの投与で開始する場合、空腹時血漿グルコース濃度、HbA1c値、体重及び低血糖のリスクを改善することができる。この処置プロトコルにより、インスリングラルギンの用量を減少させることができる。
【0078】
本発明の医薬組成物において、工程(i)又は/及び(ii)において投与しようとする化合物(b)の量は、所定の空腹時血漿グルコースレベル又は/及び所定の自己測定血漿グルコースレベルに達するか又は少なくともそれらに聞かづくように調整される。工程(i)又は/及び(ii)において投与しようとする化合物(b)の量は、血漿グルコース濃度の毎日の測定に基いて調整され得る。特に、工程(i)又は/及び(ii)において投与しようとする化合物(b)の量は、
(I) 約4.4 mmol/l〜約5.6 mmol/lの空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び空腹時自己測定血漿グルコースレベル、又は/並びに
(II) 約7.8 mmol/l(又は約140 mg/dl)若しくはそれ以下の自己測定血漿グルコースレベル(SMPG)
に達するか又は少なくともそれらに近づくように調整され得る。
【0079】
本明細書で使用される「自己測定血漿グルコース(SMPG)」は、「4ポイント自己測定血漿グルコース」又は「7ポイント自己測定血漿グルコース」であり得る。4ポイント及び7ポイント自己測定血漿グルコース値は、特に、空腹時及び食後条件を含む平均血漿グルコース濃度である。
【0080】
「4ポイント自己測定血漿グルコース」は、特に、1日に4回の血漿グルコース測定及びそれらからの平均血漿グルコース濃度の計算を指す。特に、4ポイント自己測定血漿グルコース測定は、朝食前、朝食後、夕食前及び夕食後に行われる。
【0081】
「7ポイント自己測定血漿グルコース」は、特に、1日に7回の血漿グルコース測定及びそれらからの平均血漿グルコース濃度の計算を指す。特に、7ポイント自己測定血漿グルコース測定は、朝食前、朝食後、昼食前、昼食後、夕食前、夕食後及び就寝時に行われる。
【0082】
本明細書で使用される「空腹時自己測定血漿グルコース(SMPG)」は、朝食前、特にインスリングラルギン又は/及びリキシセナチド注射及びメトホルミン摂取の前に患者により測定される。
【0083】
本発明において、2型糖尿病患者は、7%〜10%の範囲のHbA1c値を有し得る。特に、処置しようとする2型糖尿病患者は、少なくとも約7%、少なくとも約7.5%、少なくとも約7.8%、少なくとも約8%、少なくとも約8.5%、又は少なくとも約9%のHbA1c値を有し得る。これらの値は正常血糖値を超えており、本明細書に記載されるように、抗糖尿病化合物で処置された場合に2型糖尿病が適切に管理されないことを示す。
【0084】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病患者は、少なくとも11.1 mmol/L、少なくとも12 mmol/L、少なくとも13 mmol/L、少なくとも13.5 mmol/L又は少なくとも14 mmol/Lの食事2時間後血漿グルコース濃度を有し得る。これらの血漿グルコース濃度は、正常血糖濃度を超えており、本明細書に記載されるように、抗糖尿病化合物で処置された場合に2型糖尿病が適切に管理されないことを示す。
【0085】
「食後」は、糖尿病学の当業者に周知の用語である。用語「食後」は、特に、食事の摂取又は/及び実験条件下でのグルコースへの曝露後の段階を記載する。健常なヒトにおいて、この段階は、血中グルコース濃度の増加及びその後の減少を特徴とする。食後段階は、典型的には食事又は/及びグルコースへの曝露の2時間後までに終わる(食事2時間後血漿グルコース濃度)。
【0086】
食後血漿グルコースの決定は周知である(例えば、Crapo et al.、Diabetes、1977、26(12):1178-1183を参照のこと)。
【0087】
本発明に従って処置しようとする2型糖尿病患者は、少なくとも8 mmol/L、少なくとも8.5 mmol/L、少なくとも9 mmol/L、又は少なくとも9.5 mmol/Lの空腹時血漿グルコース濃度を有し得る。これらの血漿グルコース濃度は正常血糖濃度を超えており、本明細書に記載されるように、抗糖尿病化合物で処置された場合に2型糖尿病が適切に管理されないことを示す。
【0088】
本発明において、メトホルミンは、製造承認の条件に従うメトホルミンの一般的に知られる投与プロトコルに従って投与され得る。例えば、メトホルミンは、1日に1回、1日に2回又は1日に3回投与され得る。特に、本明細書に開示される治療の開始前に適用されたメトホルミン用量は、本明細書に開示されるように、(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩と組み合わせて継続される。
【0089】
本発明において、メトホルミンは経口投与され得る。当業者は、経口投与による2型糖尿病の処置に適したメトホルミンの処方が分かる。メトホルミンは、それを必要とする2型糖尿病患者に、治療効果を誘導するために十分な量で投与され得る。メトホルミンは、少なくとも1.0 g/日又は少なくとも1.5 g/日の用量で投与され得る。メトホルミンは、最大で2.0 g/日又は最大で3.5 g/日の用量で投与され得る。メトホルミン日用量は、2又は3つの別個の用量に分けられ得る。経口投与のために、メトホルミンは、錠剤又は丸剤のような固形投薬形態で製剤化され得る。メトホルミンは、適切な薬学的に許容しうる担体、アジュバント、又は/及び補助物質を用いて製剤化され得る。
【0090】
本発明において、リキシセナチド又は/及び薬学的に許容しうる塩は、インスリングラルギン及び場合によりメトホルミンの投与に対する追加治療で投与され得る。
【0091】
本発明において、用語「追加(add-on)」、「追加処置」、及び「追加治療」は、インスリングラルギン及びリキシセナチド、並びに場合によりメトホルミンを用いた本発明に従う処置に関する。メトホルミン、インスリングラルギン又は/及びリキシセナチドはそれぞれ、1日1回の投薬量(once-a-day-dosage)で投与され得る。メトホルミン、インスリングラルギン及びリキシセナチドは、異なる投与経路で投与され得る。メトホルミンは経口投与され得、そしてリキシセナチド及びインスリングラルギンは非経口投与され得る。
【0092】
特に、「追加」、「追加処置」及び「追加治療」は、本明細書に開示されるように、本発明に従う処置の開始前に投与されたメトホルミンの用量が本発明の処置において継続され得るということを意味する。
【0093】
本発明において、リキシセナチドは、その薬学的に許容しうる塩を含む。当業者は、リキシセナチドの適切な薬学的に許容しうる塩が分かる。本発明において使用されるリキシセナチドの好ましい薬学的に許容しうる塩は、リキシセナチドの酢酸塩である。
【0094】
本発明において、リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、それを必要とする2型糖尿病患者に、治療効果を誘導するために十分な量で投与され得る。
【0095】
本発明において、リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、適切な薬学的に許容しうる担体、アジュバント、又は/及び補助物質を用いて製剤化され得る。
【0096】
リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、例えば、注射により(例えば、筋内又は皮下注射により)非経口投与され得る。適切な注射デバイス、例えば、活性成分を含むカートリッジを含むいわゆる「ペン」、及び注射針が公知である。リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、適切な量、例えば、用量あたり10μg〜20μgの範囲の量で投与され得る。
【0097】
本発明において、リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、10μg〜20μgの範囲の日用量で投与され得る。リキシセナチド又は及びその薬学的に許容しうる塩は、1日あたり1回の注射により投与され得る。リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、朝食の約30分前に投与され得る。
【0098】
本発明において、リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、液体組成物で提供され得、これは、好ましくは水性製剤である。液体組成物は、非経口投与に、特に注射に適していることが好ましい。当業者は、リキシセナチドのこのような液体組成物がわかる。本発明の液体組成物は、酸性又は生理的pHを有し得る。酸性pHは、好ましくは、pH 1〜6.8、pH 3.5〜6.8、又はpH 3.5〜5の範囲である。生理的pHは、好ましくはpH 2.5〜8.5、pH 4.0〜8.5、or pH 6.0〜8.5の範囲である。pHは、薬学的に許容しうる希酸(典型的にはHCl)又は薬学的に許容しうる希塩基(典型的にはNaOH)により調整され得る。
【0099】
リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む液体組成物は、適切な保存料を含み得る。適切な保存料は、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール及びp-ヒドロキシ安息香酸エステルから選択され得る。好ましい保存料はm-クレゾールである。
【0100】
リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む液体組成物は、等張剤を含み得る。適切な等張剤は、グリセロール、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、グルコース、NaCl、カルシウム又はマグネシウムを含有する化合物例えばCaCl2から選択され得る。グリセロール、ラクトース、ソルビトール、マンニトール及びグルコースの濃度は、100〜250 mMの範囲であり得る。NaClの濃度は150 mMまでであり得る。好ましい等張剤はグリセロールである。
【0101】
リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む液体組成物は、0.5μg/mL〜20μg/mL、好ましくは1μg /ml〜5μg/mlのメチオニンを含みえる。好ましくは、液体組成物はL-メチオニンを含む。
【0102】
本発明において、インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、液体組成物で提供され得、これは、好ましくは水性製剤である。液体組成物は、非経口投与に、特に注射に適していることが好ましい。当業者は、インスリングラルギンのこのような液体組成物が分かる。
【0103】
界面活性剤、例えば、とりわけ非イオン性界面活性剤は、インスリングラルギンを含む医薬製剤に添加され得る。特に、製剤で通常の界面活性剤が好ましい、例えば: グリセロール、ソルビトールなど(Span(R)、Tween(R)、特にTween(R)20及びTween(R)80、Myrj(R)、Brij(R))、Cremophor(R)又はポロキサマーのような多価アルコールの部分的及び脂肪酸エステル及びエーテル。界面活性剤は、5〜200μg/ml、好ましくは5〜120μg/mlの濃度、そして特に好ましくは20〜75μg/mlの濃度で医薬組成物中に存在する。
【0104】
インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む製剤は、保存料(例えば、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、パラベン)、等張剤(例えば、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、デキストロース、トレハロース、塩化ナトリウム、グリセロール)、緩衝物質、塩、酸及びアルカリそしてまたさらに賦形剤もさらに含有し得る。これらの物質は、各場合において、個々に、あるいは混合物として存在し得る。
【0105】
グリセロール、デキストロース、ラクトース、ソルビトール及びマンニトールは、インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む医薬製剤中に、100〜250 mMの濃度で、NaClは150 mMまでの濃度で存在し得る。例えば、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アルギニン、グリシルグリシン又はTRIS(すなわち、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール)緩衝剤及び対応する塩のような緩衝物質は、5〜250 mM、好ましくは10〜100 mMの濃度で存在し得る。さらなる添加物は、とりわけ、塩又はアルギニンであり得る。
【0106】
インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む製剤の亜鉛濃度は、0〜1000 μg/mL、好ましくは20〜400 μg/mL亜鉛、最も好ましくは90 μg/mLの存在により達する濃度の範囲である。しかし、亜鉛は塩化亜鉛の形態で存在し得るが、塩は塩化亜鉛に限定されない。
【0107】
インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む医薬製剤において、グリセロール及び/又はマンニトールは、100〜250 mmol/Lの濃度で存在し得、かつ/又
はNaClは好ましくは150 mmol/Lまでの濃度で存在する。
【0108】
インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む医薬製剤において、緩衝物質は、5〜250 mmol/Lの濃度で存在し得る。
【0109】
インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩は、60〜6000 nmol/ml、好ましくは240〜3000nmol/mlの濃度で医薬製剤中に存在し得る。
【0110】
インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩を含む製剤のpHは、pH 1〜6,8、好ましくはpH 3,5〜6,8、より好ましくはpH 3,5〜4,5、なおより好ましくはpH 4,0〜4,5の範囲であり得る。
【0111】
本発明のさらに別の局面は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む組み合わせの、2型糖尿病患者における血糖管理のための薬剤の製造のための使用であり、ここで処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義されるとおりであり得る。
【0112】
本発明のさらに別の局面は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む組み合わせの、2型糖尿病患者におけるHbA1c値、空腹時血漿グルコース又は/及び食事2時間後血漿グルコースの改善のための薬剤の製造のための使用であり、ここで、処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義される患者であり得る。
【0113】
本発明のさらに別の局面は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含み組み合わせの、2型糖尿病患者における体重増加の予防のため又は/及び体重減少を誘導するための薬剤の製造のための使用であり、ここで、処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義される患者であり得る。
【0114】
本発明のさらに別の局面は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含み組み合わせの、2型糖尿病患者における低血糖のリスクを低減するための薬剤の製造のための使用であり、ここで、処置しようとする2型糖尿病は、好ましくは、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義される患者であり得る。
【0115】
本発明のさらに別の局面は、2型糖尿病患者における血糖管理のための方法であり、該方法は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む組み合わせの投与を含み、ここで、処置しようとする2型糖尿病は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義される患者であり得る。
【0116】
本発明のさらに別の局面は、2型糖尿病患者におけるHbA1c値、空腹時血漿グルコース又は/及び食事2時間後血漿グルコースの改善のための方法であり、該方法は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む組み合わせの投与使用を含み、ここで、処置しようとする2型糖尿病は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義される患者であり得る。
【0117】
本発明のさらに別の局面は、2型糖尿病患者における体重増加の予防又は/及び体重減少を誘導するための方法であり、該方法は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む組み合わせの投与使用であり、ここで、処置しようとする2型糖尿病は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義される患者であり得る。
【0118】
本発明のさらに別の局面は、2型糖尿病患者における低血糖のリスクを低減するための方法であり、該方法は、
(a) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(b) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(c) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩,
を含む組み合わせの投与使用を含み、ここで、処置しようとする2型糖尿病は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない。この局面において、患者は本明細書において定義される患者であり得る。
【0119】
本出願の主題は、以下の項目において記載される:
1. 2型糖尿病患者における、血糖管理における使用のため、HbA1c値、空腹時血漿グルコース又は/及び食事2時間後血漿グルコースの低減における使用のため、体重増加の予防又は/及び体重減少の誘導のための使用のため、低血糖のリスクの低減における使用のための組み合わせ医薬であって、
(i) リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩、
(ii) インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩、並びに
(iii) 場合により、メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩
を含む、上記組み合わせ。
2. 処置しようとする2型糖尿病が、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみでは適切に管理されない、項目1に記載の使用のための組み合わせ医薬。
3. 処置しようとする患者が肥満である、項目1又は2に記載の使用のための組み合わせ医薬。
4. 処置しようとする患者が少なくとも30 kg/m2のボディ・マス・インデックスを有する、項目1〜3のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
5. 処置しようとする患者が、少なくとも65歳の年齢を有する、項目1〜4のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
6. 項目1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、基礎インスリン単剤療法又は基礎インスリンとメトホルミン、スルホニル尿素、DPP−4阻害剤若しくはグリニド単独からなる群より選択される1〜3の経口抗糖尿病薬のみとで処置された場合に、少なくとも9mmol/Lの空腹時血漿グルコースを有する、項目1〜5のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
7. 項目1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで処置された場合に、5.6〜6.9mmol/Lの範囲の空腹時血漿グルコース濃度又は少なくとも6.6mmol/Lの空腹時血漿グルコース濃度を有する、項目1〜6のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
8. 項目1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、基礎インスリン単剤療法、又は基礎インスリンとメトホルミン、スルホニル尿素、DPP−4阻害剤若しくはグリニド単独からなる群より選択される1〜3つの経口抗糖尿病薬のみとで用いて処置された場合に、少なくとも8.5%のHbA1cを有する、項目1〜7のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
9. 項目1に記載の組み合わせを用いた治療の開始前に、患者は、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみで処置された場合、少なくとも7.5%のHbA1cを有する、項目1〜8のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
10. 基礎インスリンが、インスリングラルギン、インスリンデテミル及びイソフェンインスリン(NPHインスリン)から選択される、項目6〜9のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
11. 患者は、スルホニル尿素、DPP−4阻害剤及びグリニドの少なくとも1つを用いる併用処置を受けていない、項目1〜10のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
12. 処置しようとする患者において、2型糖尿病は、化合物(a)、(b)及び場合により(c)を用いた治療の開始前少なくとも1年間又は少なくとも少なくとも2年間診断されていた、項目1〜11のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
13. 組み合わせの投与が:
(i) 少なくとも4週間、化合物(b)及び(c)を投与する工程、並びに
(ii) 化合物(a)、(b)及び(c)の投与による処置を継続する工程
を含み、
ここで、工程(i)において投与しようとする化合物(b)の量は、所定の空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び所定の自己測定血漿グルコースレベルが達成されるか又は所定の空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び所定の自己測定血漿グルコースレベルに少なくとも近くなるように調整される、項目1〜12のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
14. 工程(i)において投与しようとする化合物(b)の量は、
(I) 約4.4mmol/l〜約5.6mmol/lの空腹時血漿グルコースレベル若しくは/及び空腹時自己測定血漿グルコースレベル、又は/並びに
(II) 約7.8mmol/l(又は約140mg/dl)又はそれ以下の自己測定血漿グルコースレベル(SMPG)
が達成されるか又は少なくともこれらに近くなるように調整される、項目13に記載の使用のための組み合わせ医薬。
15. (II)における自己測定血漿グルコースレベルは、4ポイント自己測定血漿グルコースレベル又は7ポイント自己測定血漿グルコースレベルである、項目14に記載の使用のための組み合わせ医薬
16. リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩が、非経口投与用に製造される、項目1〜15のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
17. リキシセナチド又は/及びその薬学的に許容しうる塩が、10μg〜20μgの範囲から選択される日用量での投与のために製造される、項目1〜16のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
18. インスリングラルギン又は/及びその薬学的に許容しうる塩が、非経口投与用に製造される、項目1〜17のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
19. メトホルミン又は/及びその薬学的に許容しうる塩が経口投与用に製造される、項目1〜18のいずれか1項に記載の使用のための組み合わせ医薬。
20. 血糖管理を改善するため、HbA1c値若しくは/及び空腹時血漿グルコースの低減のため、又は体重増加の予防若しくは及び体重減少の誘導における使用のため、低血糖のリスクの低減のための方法であって、該方法は、項目1〜18のいずれか1項に記載の組み合わせを、それを必要とする被験体に投与することを含む。
21. 処置しようとする2型糖尿病が、化合物(b)及び場合により化合物(c)のみを用いて適切に管理されない、項目20に記載の方法。
22. 被験体は、項目2〜15のいずれか1項において定義される被験体である、項目20又は21に記載の方法。
【0120】
本発明は、以下の実施例及び図面によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1図1 - 来診ごとのベースラインからのHbA1cの平均変化(%)のプロット - mITT集団
図2図2 - 来診ごとのベースラインからの体重(kg)の平均変化のプロット - mITT集団
図3図3 - 来診ごとの平均インスリングラルギン日用量(U)のプロット - mITT集団
図4図4 - 来診ごとの平均インスリングルリジン日用量(U)のプロット - mITT集団
図5図5 - 来診ごとの平均総インスリン用量(U)のプロット - mITT集団
図6図6 - 図式研究設計。 1 インスリングラルギンは、夕食又は朝食時に1日1回皮下注射されるべきである(患者/治験責任医師の選択に従って)。注射時間(夕食又は朝食)は、V2時に固定され、そして研究全体を通して同じ時間のままであるべきである。 2 リキシセナチドの注射は、夕食又は朝食の30〜60分前に行われるべきである(3つの異なる日にわたって最も高い自己測定2h-PPG中央値に関連するもの)。リキシセナチド投薬に使用される食事は、26週の処置期間にわたって同じままであるべきである。 3 インスリングルリジンの注射は、夕食又は朝食の0〜15分前に行われるべきである(3つの異なる日にわたって最も高い事故測定2h-PPG中央値に関連するもの)。インスリングルリジン投薬に使用される食事は、26週の処置期間にわたって同じままであるべきである。 4 朝食、昼食及び夕食の前のインスリングルリジンの注射。
【発明を実施するための形態】
【0122】
〔実施例〕
実施例1
メトホルミンを用いるか又は用いずにインスリングラルギンで十分に管理されない2型糖尿病患者において、リキシセナチドの有効性及び安全性を、1日に1回のインスリングルリジン及び1日に3回のインスリングルリジンの有効性及び安全性と比較する、無作為化、非盲検、実薬対照、3アーム並行群、26週研究
【0123】
1 略号
AE: 有害事象
ANCOVA: 共分散分析
BMI: ボディ・マス・インデックス
CI: 信頼区間
CMH: Cochran-Mantel-Haenszel
ECG: 心電図
FPG: 空腹時血漿グルコース
GLP-1: グルカゴン様ペプチド-1
IMP: 治験医薬品
LOCF: 最終観察繰越法
LS: 最小二乗
mITT: 修正治療企図
PG: 血漿グルコース
PT: 基本語
QD: Quague die(1日に1回)
SAE: 重篤有害事象
SMPG: 自己測定血漿グルコース
SOC: 器官別大分類
TEAE: 治療下で発現した有害事象
TID: Ter in die (1日に3回)
【0124】
2 概要
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
3 結果
3.1 研究患者
3.1.1 患者説明責任
【表9】
【0134】
3.1.2 研究配置
【表10】
【0135】
3.1.3 人口統計及びベースライン特徴
【0136】
【表11】
【0137】
【表12】
【0138】
【表13】
【0139】
【表14】
【0140】
3.1.4 投薬量及び処置コンプライアンス
【0141】
【表15】
【0142】
3.2 有効性
3.2.1 主要有効性評価項目
【0143】
【表16】
【0144】
【表17】
【0145】
図1は、mITT集団における来診ごとのベースラインからのHbA1cの平均変化(%)を示す。図2は、mITT集団における来診ごとのベースラインからの体重(kg)の平均変化を示す。
【0146】
3.2.2 他の鍵となる有効性評価項目
【0147】
【表18】
【0148】
【表19】
【0149】
図3は、mITT集団における来診ごとの平均インスリングラルギン日用量(U)を示す。図4は、mITT集団における来診ごとの平均インスリングルリジン日用量(U)を示す。図5は、mITT集団における来診ごとの平均総インスリン用量(U)を示す。
【0150】
3.3 安全性
3.3.1 治療下で発現した有害事象
【表20】
【0151】
【表21】
【0152】
3.3.2 重篤な治療下で発現した有害事象
【0153】
【表22】
【0154】
【表23】
【0155】
3.3.3 恒久的IMP中止に至る有害事象
【0156】
【表24】
【0157】
【表25】
【0158】
3.3.4 その他の重大な有害事象
症候性低血糖
【表26】
【0159】
アレルギー反応
【表27】
【0160】
膵炎
【表28】
【0161】
カルシトニン
【表29】
【0162】
実施例2
肥満T2DMにおける食事リキシセナチド QD対インスリングルリジン QD又はTIDを用いた基礎インスリングラルギンの進歩: GetGoal-Duo2根拠に基づく試験
基礎インスリン(BI)の進歩の方法に関する根拠を示すために、我々は、リキシセナチド
20μg QD (LIXI)、インスリングルリジン QD (GLU-1)、又はGLU TID (GLU-3)に無作為に選ばれた、十分に管理されないBI処置 (≧6 mo ± 1-3 OAD)T2DM肥満成人において処置選択肢を調査し、他のOADを中止した12週のIG最適化導入期間の後にHbA1cが>7〜9%である場合は全てインスリングラルギン (IG) ± メトホルミンに追加した。26週目の複合主要評価項目は、(1) GLU-1に対してLIXIを用いたHbA1c減少における非劣性(95% CI上界<0.4%)、及び(2) GLU-3に対してLIXIについて、HbA1c減少における非劣性(2a) 又は 体重変化における優位性(片側α≦0.025)(2b)のいずれかであった。FPG、PPG、IG用量、複合結果、AE、及び低血糖を評価した。各アームに298人の患者を無作為に選んだ(T2DM 期間12年、BI期間3年、体重約90 kg)。LIXIはHbA1c減少についてGLU-1及びGLU-3に対して非劣性であり、かつ 体重減少については両方に対して統計的に優性であったので、全ての複合主要評価項目が満たされた(表)。記録された低血糖は、それぞれGLU-1及びGLU-3を用いたよりもLIXIを用いて数値的かつ有意により低かった。結論として、BIプラスLIXIは、許容される場合、BIの進歩のための好ましい選択肢になり得、インスリン処置肥満T2DMを管理することが困難な基礎プラス又は基礎/ボーラスとしての食事インスリンと比較してより少ない低血糖で、かつ体重減少を伴う意味のある血糖目標を達成する。
【0163】
【表30】
【0164】
【表31】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]