(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共振回路は、前記送電コイルと結合されており、かつ、2つのフィールドが同時に機能しうるようにODフィールドを前記IPTフィールドに重ねるよう構成されている、請求項1に記載の誘導送電器。
【背景技術】
【0002】
IPTは、ポータブル電子デバイスの無線充電を含む多くのアプリケーションにおいて使用される、確立された技術についての周知の領域である。充電マットは、ポータブルデバイスに対して充電面を提供する1つの方法であり、時変の磁界を生成する1つ以上の送信コイルを有する送電器を内蔵したインタフェース面を有する。この磁界は、受電器の適切な受信コイルに交流電流を誘導し、それにより、当該受信コイルは、バッテリーを充電するために、又はデバイス若しくは他の負荷に電力を供給するために使用されうる。
【0003】
無線送電器についてのIPTシステムがいわゆる「異物(foreign objects)」に対してではなく受電器のみに対して電力を伝達することが、特に重要である。異物は、充電面上に位置しているが受信デバイスの一部ではない任意の物体として定義される。そのような異物の典型的な例は、コイン、鍵、ペーパークリップ等の、金属製の要素である。例えば、金属体が、アクティブなIPTフィールド(場)の近くにある場合、振動する磁界から生じる渦電流に起因して熱せられる可能性がある。このような寄生性の金属の温度が、許容され得ないレベルまで上昇するのを防ぐためには、送電器は、受電器と異物とを区別できる必要があるとともに、伝達される電力を低減できる又は完全に動作を中断できる必要がある。
【0004】
技術的に異物を検出する1つの方法は、電力損失法として知られている。この方法では、受電された電力は、送電器によって生成された磁界に起因して、ハンドヘルドデバイスに含まれる受電器内で消散した電力の総量を示す。受電された電力は、受電器の出力から使用可能な電力に、その出力電力を生成する際に失われたあらゆる電力を加えたものと等しい。受電器は、電力損失が、許容されうる設定限界の範囲内であるかを送電器が判定でき、かつ、範囲内でない場合に、異物の存在を示す特異な挙動を送電器が判定するように、その受電した電力をもとの送電器へ伝達する。しかし、電力損失の計算は、それ自体、異物の現実の検出をもたらさず、予期されない挙動の発生のみをもたらす。更に、送電器及び受電器は、互いに通信するよう予め構成されなければならず、それにより、デバイスの多用途性が制限され、送電器と受電器との間の距離に依存して精度が広範囲にわたって変化する。
【0005】
技術的な他の方法は、国際公開第2014/095722号に記載されており、送電器内での個別の励磁及び検出コイルによって異物が検出されている。本方法では、検出コイルにおける出力電圧の変化、又は検出コイルのインダクタンスの変化を検出することで、異物の存在を判定することを述べている。しかし、この方法は、基礎となるインダクタンス特性を判定するために複雑なキャリブレーションを要する。また、この方法では、金属体と鉄の物体又は磁性物体とを区別することができず、それ故に、異物と、受信デバイスのようなフレンドリーな物体とを判別する手段を提供しない。検出におけるプライマリIPTフィールドの動作の望ましくない効果も何ら考慮されていないか特徴付けられておらず、それ故にこの方法は頼りにならない。
【0006】
技術的な他の方法は、US特許出願20130176023号に記載されており、インダクタの両端電圧の変化の測定により、受信コイルの品質係数又はQ値をアクティブにモニタリングすることで、異物が検出される。受信機又は検出コイルにおける共振電圧をアクティブに生成し、更に、送信コイルを介したQ値の変化を検出することによって、異物が検出される。しかし、この方法は、送信コイル及び受信コイルの両方からの損失を取り込むことで不正確さをもたらしてしまい、これは、受信機によって引き起こされる損失が、異物等の、システム内の他のコンポーネントによって引き起こされる損失から区別できないためである。更に、受信機及び送信機上の個別の回路は、この機能を提供することが求められ、それにより、製造コスト及び物理サイズの要求条件の増加につながる。
【0007】
本発明は、改良された誘導送電器を公に提供しうるか、又は少なくとも有用な選択肢を公に提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に組み込まれ、かつ、本明細書の一部を構成する、以下の添付の図面は、本発明の実施形態を示しており、また、上記で与えられた本発明の概要、及び以下で与えられる実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するのに貢献する。
【0012】
【
図1a】
図1aは、誘導電力伝送システムの概略図である。
【
図1b】
図1bは、物体検出システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、誘導電力伝送システムにおける共振タンクの概略図である。
【
図3】
図3は、
図2の共振タンクにおけるエネルギー減衰のグラフである。
【
図4a】
図4aは、共振タンク回路の回路図である。
【
図4b】
図4bは、
図4aの回路における、時間に応じたエネルギー減衰のグラフである。
【
図5a】
図5aは、共振タンク回路及び近接した誘導受電器の回路図である。
【
図5b】
図5bは、
図4aの回路における、時間に応じたエネルギー減衰のグラフである。
【
図6a】
図6aは、共振タンク回路、及び近接した誘導受電器のモデルの回路図である。
【
図6b】
図6bは、共振タンク回路における、時間に応じた対応するエネルギーのグラフである。
【
図7】
図7は、3つの誘導送電コイルを備える誘導送電回路の一例の回路図である。
【
図8】
図8は、3つの誘導送電コイルと別個に設置されるが近接した3つの共振タンク回路を備える誘導送電回路の一例の回路図である。
【
図9a】
図9aは、誘導送電回路の他の例の回路図である。
【
図9b】
図9bは、
図9aに示される例のような送電コイルに誘導結合された共振回路の動作中の電圧のグラフである。
【
図10】
図10は、異なる複数の周波数が生成されうる一例の回路の概略図である。
【
図11】
図11は、他のコイルによって共振回路のコイルL10に誘導結合されたエネルギーの回路図である。
【
図12】
図12は、DC源からのエネルギーの結合を制御するスイッチM2によって共振器に結合されたエネルギーの回路図である。
【
図14a】
図14aは、同心円状に配置された共振コイル内に位置付けられたソースコイルの上面図である。
【
図14b】
図14bは、同心円状に配置されたソースコイル内に位置付けられた共振コイルを有する代替の配置の上面図を示す。
【
図14c】
図14cは、2つの共振コイルとオーバラップするように位置付けられたソースコイルを有する、更なる代替の配置の上面図である。
【
図14d】
図14dは、内側の中心ソースコイルが、カスケード構成の外側の2つの同心円状の共振コイル内に位置付けられた、更なる代替の配置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1aには、誘導電力伝送(IPT)システム1が大まかに示されている。IPTシステムは、典型的には誘導送電器2及び誘導受電器3を備える。誘導送電器2は、主電源又はバッテリー等の適切な電源4に接続される。誘導送電器2は、(使用される電源のタイプに依存して)例えばAC−DCコンバータであるコンバータ5と、(存在する場合に)例えばコンバータ5に接続されるインバータ6と、のうちの1つ以上を有する送信回路を備えうる。インバータ6は、一つ又は複数の送信(送電)コイル7が交流磁界を生成するよう、当該一つ又は複数の送信コイル7へAC信号を供給する。いくつかの構成では、(複数の)送信コイル7は、インバータ5から分離されていると考えられてもよい。一つ又は複数の送信コイル7は、共振回路を作るために、コンデンサ(図示せず)に並列又は直列に接続されてもよい。
【0014】
コントローラ8は、IPT送電器2の各部に接続されうる。コントローラ8は、IPT送電器2の各部からの入力を受けて、各部の動作を制御する出力を生成するよう構成されうる。コントローラ8は、例えば、異物検出、電力フロー、チューニング(同調)、送信コイルへの選択的な通電、誘導受電器の検出、及び/又は通信を含む、IPT送電器の能力に依存した当該IPT送電器2の種々の態様を制御するよう構成された、単一のユニット又は個別のユニットとして実装されうる。コントローラ8は、1つ以上のユニット/部品を有してもよく、マイクロコントローラ、PID、FPGA、CPLD、ASIC等のコントローラであってもよい。更に、無線受信回路全体のうちのかなりの部分を単一の集積回路に統合することが可能であってもよい。
【0015】
誘導受電器3は、負荷11へ電力を順に供給する電力調節回路10を含みうる受信回路に接続された一つ又は複数の受信コイル9を備える。IPT送電器2及び誘導受電器3のコイルが適切に結合されている場合、一つ又は複数の送信コイル7によって生成される交流磁界が、一つ又は複数の受信コイル9に交流電流を誘導する。電力調節回路10は、誘導電流を、負荷11に適した形式に変換するように構成されており、例えば、電力整流器、電力調整回路、又はその両方の組み合わせを備えうる。一つ又は複数の受信コイル9は、共振回路を作るために、コンデンサ(図示せず)に並列又は直列に接続されてもよい。いくつかの誘導受電器において、当該受電器は、一つ若しくは複数の受信コイル9のチューニング(同調)、電力調節回路10の動作、及び/又は通信を制御しうるコントローラ12を備えうる。
【0016】
用語「コイル」は、電流が磁界を生成する導電性構造を含みうる。例えば、誘導「コイル」は、3次元形状又は2次元平面形状の導電性ワイヤ、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)技術を使用して複数のPCB「層」の上に3次元形状に加工された導電性材料、及び他のコイル状の形状でありうる。単数形又は複数形での用語「コイル」の使用は、この意味で限定的であることは意図されていない。アプリケーションに依存して他の構成が使用されてもよい。
【0017】
特定のアプリケーションでは、IPT送電器が、関連する受電デバイス(例えば、携帯電話、リモコン装置等)に電力を選択的に供給し、異物(FO:foreign objects)(例えば、ペーパークリップ、コイン等)には電力を供給しないことが望ましい可能性がある。このために、IPT送電器は、物体検出(OD:Object Detection)システムを備えうる。ODシステムは、非受電デバイスに応じてコイルを非アクティブ化するか、又は受電デバイスの唯一の存在下でのみコイルをアクティブ化しうる。(例えば、充電マットにおける)複数のコイルのアレイのように複数の送信コイルが存在する状況において、ODシステムは、受電/非受電デバイスの位置にそれぞれ従って、コイルのサブセットのみを非アクティブ化/アクティブ化しうる。
【0018】
大まかに言えば、この実施形態は、既知の初期エネルギーによりコイルを充電すること、通電を除去すること、及び、その後に、減衰性能を、異物若しくは非受電デバイス、受電デバイス、及び/又はデバイス無しについての既知の特性と比較すること、を含みうる。
【0019】
図1bには一例の送電器2が示されている。インバータ6は、IPTフィールドを生成するための送信コイル7に電力を供給する。OD回路200は、ODフィールド及び/又は初期検出エネルギーを生成するための一つ又は複数の励磁コイル202と、送電器2上にある又は当該送電器の近傍にある物体の存在及び/又は位置の検知に使用される検出回路204と、を備える。送電器2のコントローラ8は、直接的に又は別個の制御回路を介して、励磁コイル202に与えられる励磁を決定し、かつ、OD回路204からの出力信号を処理するよう構成されうる。
【0020】
これは、アプリケーションの要求条件に依存して、コイルのアレイ及び/又は複数のOD回路(及び、IPT周波数を使用すること、又はIPTフィールドに対して励磁信号を変調すること)とかかわりうる。
【0021】
ODフィールドは、送信コイル7によって生成されうるか、個別のコイルでありうるか、さもなければ結合されうる。ODフィールドは、IPTフィールドと連続して動作させられうるか、又は同時に動作させられうる。同時に動作させられる場合、異なる周波数でODフィールドを動作させることが望ましい可能性がある。IPT周波数と異なる周波数で動作させる利点は、受電デバイスが効果的に見えなくなることである(これは、共振IPT周波数でのみ電力を受電するように同調されるためである)。これにより、受信物体の存在とオーバラップしていてもFOの導入に対してより高い感度を有するように、システムを設計できる。
【0022】
例えば、ODフィールドは、5〜50kHZで動作しうるとともに、IPTフィールドは、50kHz〜500kHZで動作しうる。ODフィールドは、IPTフィールドより高い又は低い周波数に対して同調されうる。受信物体の存在の最良の動作性能を確保するために、ODフィールドは、IPTフィールドの周波数の少なくとも5倍の周波数に同調されうる。例えば、100kHzのIPT周波数に対して、OD周波数は20kHz以下に同調されうるか、200kHzのIPT周波数に対して、OD周波数は少なくとも1MHzに同調されうる。更に、受電デバイスにおける高調波共振(及び、それにより生じるODフィールドからの受電器損失)を避けるために、IPT周波数がOD周波数の高調波ではない又はその逆ではないことが望ましい可能性がある。例えば、IPT送電器が100kHzで動作するよう構成されている場合、ODコイルは、10.5kHz又はある程度のオフセットで動作するよう構成されうる。
【0023】
IPT送電器2は、ハイQ共振タンクを形成するために(複数の)送信コイル7に選択的に結合されたコンデンサを備える。Q値は、共振周波数における共振回路の共振の度合いを示す指標である。ハイQ共振タンク回路は、より低いQの回路よりも長く振動を持続する。減衰率を決定するのが振動の包絡線であるため、より大きな振動(より高いQ)は、より容易、かつ、より精密な検出を意味する。加えて、測定された減衰率又は電力損失は、コイル(Q)のESRと、FOに起因した損失との両方の影響を受け、それ故に、より高いQ(より低いESR)は、より小さな又はより精密なFO損失を測定できる。例えば、2WコイルのESR損失に加えて250mWの追加のFO損失を精密に判定することは、250mWコイルのESR損失に加えて同じFO損失を精密に判定するよりも難しい。
【0024】
図2は、コンデンサC3及びインダクタコイルL1を備える共振タンク回路20を示す。これは、所望の初期エネルギーレベルを生成するための所望の周波数及び大きさで、インバータ6によって通電されうる。インバータ6が切断された後のエネルギーレベルの減衰が、その後に測定される。エネルギーが、共振タンクに無線結合されている場合、使用される周波数は、どの程度、エネルギーが共振タンクに結合しているかに影響し、これは、周波数が共振周波数に近い場合に、より大きなエネルギーが結合されるためである。
【0025】
初期エネルギーが大きいほど、FOにおいて大きな電力損失を引き起こす、大きな電流を流れさせる。同様に、離れたFOは、送電器から遠くなるほど、より小さな電力損失を生成し、次第に検出不可能になる。したがって、共振回路に供給される初期エネルギーのレベルは、FOがIPT送電器の有効範囲内にあるかどうかで選択されうるか、最小の検出距離で選択されうる。
【0026】
更に、(FO周波数がRx共振周波数に同調されていなくても)受電器が近くなるほど、引き起こされる損失が次第に大きくなる。ある時点で、これら2つの損失はクロスオーバーし、その結果として見分けることが不可能となる。したがって、FOが引き起こす損失をキャプチャするが受電器が引き起こす損失はキャプチャしないために、適切な量のエネルギーで共振コイルに通電することが重要である。
【0027】
図3は、
図2の共振タンクにおけるエネルギー減衰のグラフを示す。T=0より前にタンクが通電され、E=1/2*C*V^2のタンクにおいてトラップされた既知のエネルギーを生成するために、t=0において通電が停止される。コンデンサC1の両端電圧は、測定可能なエネルギー減衰を発生させる期間の後に測定される。いくつかの実施形態では当該期間は0.5ミリ秒であるが、特定の期間は、大まかに予想される減衰時間に従った一部を占めるように選択される必要がある。減衰時間の前と後のエネルギーの差分は、コイル及びコンデンサの抵抗による自然損失と、誘導フィールド内の異物によって生成された何らかの損失と、に起因した電力損失である。妨げられていないフィールドについてのエネルギー損失と、それにより誘導受電器が存在するフィールドとの知識が、フィールドに異物が存在するかどうかの判定を可能にするために、何らかの新しいフィールド測定値と比較されうる。
【0028】
コンデンサ電圧の測定は、理想的には、各サイクルのピーク電圧の測定のような、包絡線検出又は波形のピークについての類似の方法によって実行される。測定された電圧から、E=(1/2)CV
2 を用いてエネルギーを決定でき、Cは事前に既知である。キャパシタンス値は、フェライトの存在又は反射インピーダンスの影響を受けない。したがって、ピーク端子電圧は、タンク内のエネルギーの直接の測定値である。
【0029】
図4から
図6は、3つのシナリオについてのエネルギー減衰データの例を示している。具体的には、
図4aは、10kHzで共振するよう構成された共振タンク回路20を示し、
図4bは、時間に応じた、当該回路における対応するエネルギーのグラフを示している。エネルギー減衰の割合は、フィールドに異物が存在しないことを示している。
【0030】
図5aは、送信コイルL1に近接した位置にある受信コイルL2を有するIPT受信回路21とともに共振タンク回路20を示している。
図5bは、時間に応じた、共振タンク回路における対応するエネルギーのグラフを示しており、具体的には、
図4の妨げられていないフィールドと比べて、ほとんど同じようなエネルギー減衰率を示している。
【0031】
図6aは、送信コイルに近接した、等価インダクタンスL9及び抵抗R4を有する金属の異物22の回路モデルとともに、共振タンク回路20を示している。
図6bは、時間に応じた、共振タンク回路における対応するエネルギーのグラフを示しており、具体的には、損失の増加に起因して、
図4b及び
図5bの減衰率と比べて、急激な減衰率を示している。
【0032】
減衰率は、又は同様に、期間後に共振タンクに残っているエネルギーは、送信コイルに近接した物体の特性を示す。このため、送信コイルに近接した物体の特性は、期間後に共振タンクに残っているエネルギーと、1つ以上のエネルギー閾値又はエネルギー範囲との比較によって判定できる。
【0033】
したがって、異物検出は、生成されたフィールドに存在する誘導受電器の存在を用いずに行うことができる。検出の精度は、さもなければ送電器内の検出システムがさらされる受電器の存在に起因したエネルギー損失を軽減又は回避することによって改善されうる。更なる利点は、送電器と受電器との間の通信が必要とされないことでありうる。
【0034】
いくつかの実施形態では、送電器は、誘導送電用に構成され、かつ、ODフィールドの生成用にも構成されたコイルを備える。代替の実施形態では、送電器は、誘導送電用に構成されたコイルと、OD用に構成された別個のコイルとを備える。
【0035】
図7は、それぞれ共振タンク回路を有する3つの誘導送電コイルL7、L8及びL9を備える誘導送電回路の一例を示している。25.3μFのコンデンサC8,C10及びC12の値、及び10μFのインダクタL7,L8及びL9の値は、それぞれ、10kHzの周波数に同調される共振タンクを構成する。コンデンサC7,C9及びC11は、AC結合スイッチM8,M10及びM12に構成される。共振タンクのインダクタは、送電器からのコイルを内蔵する。スイッチM8,M10及びM12を切断し、かつ、スイッチM9,M11及びM13を接続することによってODフィールドが生成されている間、IPTフィールドは一時的に停止される。
【0036】
FODフィールドが生成される間にIPTフィールドが一時的に無効化されている場合、送電器のオフ時間が、受電器の通常動作に実質的に影響がないようにすることが必要である。例えば、出力電圧のリップルの回避又は通信の再初期化が望ましい。
【0037】
他の実施形態では、ODフィールドは、IPTフィールドに対して重ねられ、その両方が送電器によって生成される。ODフィールドが定期的に生成される間に、常に送電を有利に維持することが可能である。例えば、
図8は、3つの誘導送電コイルと別個に設置されるが近接した3つの共振タンク回路を備える誘導送電回路を示している。物体検出のために望ましい場合、各共振タンク回路が動作させられている間に誘導送電コイルL1,L3,L5の動作が一時的に停止する。送電インダクタコイルL1,L3及びL5のそれぞれは、インバータによって100kHzで駆動される。L2 C2、L4 C4及びL8 C8の組み合わせを有する各共振タンクは、ODフィールドの動作中にIPTフィールドに影響を与えないように、10kHzで共振するよう構成される。スイッチM3,M4及びM5が開いている場合、コイルL2,L4及びL6の残りのエネルギーによって、回路が共振してODコイルとして機能することができる。
【0038】
図9aは、IPTコイルが、IPTコイルL1に対する直列のコンデンサC1の接続によって共振タンクの一部を形成する回路の他の例を示している。この回路では、IPTフィールド及びODフィールドの動作は同時に生じることができ、IPTフィールドがODフィールドに重ねられる。
図9bは、
図9に示されるそのような共振回路の動作中の電圧のグラフを示している。期間30の間には、IPTコイルは、示されるように100kHzの周波数でインバータ(M1及びM2)によって駆動される送信コイル電流を有する。コンデンサC1及びスイッチM3は、各コイルにおけるフィールドの振幅制御用のACスイッチを形成する。これが、振幅制御と組み合わせてアレイに対して使用される場合、3Dの全フィールドの方向が制御されうる。
【0039】
M4は、FOD減衰包絡線のピーク値(ピーク値もRの値によって決定される)を制御するための期間においてショートされる。コンデンサC1は、10kHzでL1と共振するために選択された値である。スイッチM4は、短期間にL1及びC1が共振することを可能にするために互換性を有するエネルギー源を提供する。
【0040】
時点31において、スイッチM4は、短パルス(例えば、50μs)の間にオンにされ、これにより、摂動が生じるとともに、インバータ共振回路が(L1及びC1の組み合わせによって与えられる)その固有共振周波数で発振する。期間32の間には、同時に動作するようにIPTフィールドに対してODフィールドが重ねられる。ODフィールドは、ここでは、IPTフィールドよりも低い周波数を有するように示されている。時点33において、ODフィールドのエネルギーは、当該フィールド内の物体の特性に依存した割合で失われている。期間34の間には、誘導送電フィールドの通常動作が継続する。ODフィールド内の受信デバイスの電流は、OD周波数に対して同調されないため、影響を受けない。スイッチM4に対して供給される電圧のスイッチングが、時点31における短期間に接続されるように示されており、それにより共振回路が通電される。
【0041】
いくつかの実施形態では、ソースコイルは、共振タンク回路内のコイルに誘導的に通電するよう構成され、そのタンクコイルは、十分な電力の伝達のために必要となる大きなIPTフィールドを生成することに関与する。この構成は、大きなエアギャップのような低結合(低いk)のアプリケーションに最も適している。ODフィールドは、ソースコイルに対して直接生成され、それに対して結合されない。したがって、この場合、ソースコイルはODフィールドを生成し、共振コイルは、当該ソースコイルから通電されるIPTフィールドを生成する。別個の共振コイルが存在せず、かつ、ソースコイルのみが存在する、他の実施形態では、ODフィールド及びIPTフィールドの両方が、ソースコイルに対して生成される。
【0042】
図14a〜dは、誘導結合用に構成されたソースコイル及び共振コイルについての3D平面配置を示している。例えば、
図14aは、同心円状に配置された共振コイル41内に位置付けられたソースコイル40の上面図である。インバータは、ソースコイル40に電力を供給するよう構成される。
図14bは、同心円状に配置されたソースコイル40内に位置付けられた共振コイル41を有する代替の配置の上面図を示す。
図14cは、2つの共振コイル41とオーバラップするように位置付けられたソースコイル40を有する、更なる代替の配置の上面図である。この配置は、単一のソースコイルにより複数の共振コイルを駆動できる点で有利でありうる。
図14dは、内側の中心ソースコイル40が、カスケード構成の外側の2つの同心円状の共振コイル41,42内に位置付けられた、更なる代替の配置の上面図である。
【0043】
1つの典型的な実施形態において、共振コイルは、ソースコイルに対して緩く結合される(kは約0.2)。共振回路は、送電器の動作周波数よりわずかに低い周波数に同調され、例えば、送電器は、110kHzで動作するように同調され、共振器は、100kHzに同調される。110kHzでは、共振器は、非常に小さいインダクタンスを有するインダクタのように見える。したがって、ソースコイルに流れる小電流によって、十分に大きな電流が共振コイルに流れる。これは、共振コイルが、電力の伝達のために必要となるVAの大部分を提供することを意味する。
【0044】
ソースコイルと共振コイルとの間の結合距離Kは、特に重大ということはなく、共振コイルがどの程度、コンデンサによって補償されるかに関連して選択される。例えば、結合係数Kは、0.2でありうる。
【0045】
この配置は、小さいVAのみがソースコイル内にあるために、更なる利点を与え、結合効率にそれほど影響することなく低い固有Qを有しうる。ソースコイルを実装するためにPCBトラックを使用でき、それにより製造コストが低くなる。スイッチは、非常に小さいVAをスイッチングすることのみが必要となるため、非常に低い定格で評価されうる。スイッチング損失及び伝導損失は、より低い。VAが非常に小さいため、ソースコイルに対して反射される実負荷は、より容易に検出可能である。共振回路は受動素子のみから成り、それにより、共振コイルの固有Qの増加の簡易な調整が可能になる。更に、受電器が送電器の近くにあり、かつ、結合条件が良好である場合、あり得るフェライトの存在が、コイルのインダクタンスを増加させ、生じる総VAを自動的に減少させる。
【0046】
上述のように、共振タンク回路20の共振周波数は、アプリケーションの要求条件に依存して、受信コイルに対するIPTのために使用される周波数から大きな間隔を有する周波数に、同調されうる。間隔は更に、物理的に小さな金属体において確立される共振の可能性に起因して、送電器の近くの当該金属体の感度を増加させる可能性がある。
【0047】
例えば、IPT周波数は、約110kHzから約205kHzの範囲内の動作周波数を有するように、同調されうる。更に、共振タンクは、例えば約1Mzhの、MHz領域のように高い共振周波数を有するか、又は約5kHzのように低いkHz領域の共振周波数を有するように、同調される。
【0048】
いくつかの実施形態では、ODフィールドは、いわゆる周波数「ホッピング」又は「スイーピング」を使用してODフィールド周波数の範囲が使用されるように構成される。いくつかの異なる周波数が、物体検出用の測定が行われる、既に説明した典型的なレベルについて使用されうる。例えば、IPTフィールド周波数測定よりも高いODフィールド周波数は、約800kHz、約1MHz及び約1.2MHzにおいて得られ、IPTフィールド周波数測定よりも低いODフィールド周波数は、約1kHz、約5kHz及び約10kHzのそれぞれにおいて得られうる。
【0049】
周波数ホッピングは、異物とフレンドリーな物体との区別を増大させる能力を提供する点で有利である。例えば、金属又はフェライトは、選択されたODフィールド周波数が、IPTフィールド周波数の高調波であることに起因して、特定のODフィールド周波数においてODフィールドに対して同様の反応を提供しうる。しかし、非共振物体の反応が周波数に無関係であるのに対して、このような材料は異なるODフィールド周波数において異なる反応を提供する。したがって、ODフィールド内で種々の材料の検出及び区別を可能にするために、種々の周波数でODフィールドを生成するように、回路を構成可能である。
【0050】
2.53マイクロファラッドとして示される、共振タンク内のC1の容量値を、より高い及び/又はより低い容量値を用いて変化させることによって、異なる周波数のODフィールドが作り出される。半導体スイッチングデバイスの使用により共振タンクの内外の容量値をアクティブにスイッチングすることによって、周波数ホッピング又はスイーピングが実現される。いいくつかの実施形態では、コントローラ8は、スイッチングデバイスの動作を制御し、共振タンクに通電することによって、ある周波数範囲におけるODフィールドのセットの生成を制御するように構成されている。
【0051】
図10は、異なる複数の周波数が生成されうることによって、例えば、IPTフィールド及びODフィールド、又は可変周波数のODフィールドを提供する、一例の回路の概略図を示す。とりわけ、
図10は、スイッチにより並列に接続可能なコンデンサのペアを有する共振タンク回路23を示す。回路内のスイッチの動作を制御することによって、コンデンサが並列に接続される又は個別に操作されることができ、その結果として、f=(LC)
-0.5の関係に従って同調周波数を変化させる。例えば、スイッチM4の接続は、23.3nFのC2コンデンサ値によって定められる100kHzの動作周波数を有する回路を形成する。スイッチM4及びM5の接続は、2.52μFのC3コンデンサ値によって定められる10kHzの動作周波数を有する回路を形成する。このため、L2は、100kHz等の1つの周波数で動作するよう構成される場合にIPTフィールドを生成するために共振するよう構成されうるとともに、更に、10kHz等の、FOフィールドを生成するための他の周波数で動作するよう構成されうる。
【0052】
IPTコイルは、長方形アレイ構成で配置されうるとともに、線形(2D)配置、オーバラップ配置、又は3次元配置されうる。コイル及びアレイは、異なる幾何学的形状又は任意の形状を有するようにも配置されうる。
【0053】
図11及び
図12は、共振器に通電するよう構成され、それによりコイルからODフィールドを生成する実施形態の例を示している。とりわけ、
図11は、エネルギーが他のコイルL11によって共振回路のコイルL1に誘導的に結合されることを示している。コイルL11は、例えば、示されるようなIRF1503 FETとしての固体スイッチM1によって選択的に通電される。
図12は、DC源V2からのエネルギーの結合を制御するスイッチM2によってエネルギーが共振器に結合されることを示している。
【0054】
IPTフィールドから分離されているため、ODフィールドから絶対測定を取り入れることが可能である。しかし、開始時にFOが既に送電器「パッド」上に存在する場合、FOは検出されず周囲環境の一部にすぎなくなる。したがって、いいくつかの実施形態では、コントローラ8は、システムの事前キャリブレーションを行うよう構成される。物理的(例えば、金属ディスク)であるか又はデジタル(例えば、既知の特性のキャリブレーション係数)であるキャリブレーション・トークンが、使用前の送電器のキャリブレーションに使用される。特定の位置に当該トークンを位置付けて、位置及び物体タイプが正確に判定されるまで、アルゴリズム出力が調整される。他の実施形態では、一次コイル、励磁コイル、及び検出コイル間の相対的な位相及び振幅の測定値が、スタートアップ環境において何か異常があるかを判定するために、相対的な期待値と比較される。いいくつかの実施形態では、環境を手動でチェックするためにアラートが生成され、又は他の実施形態では、出力が、アルゴリズムを調整するために使用される。
【0055】
いくつかの実施形態では、任意のFOが物体検出フィールド内に位置付けられている場合に、共振タンク回路の固有共振周波数の変化が検出可能である。FO及びフェライトからの反射インピーダンスは、共振タンク回路の共振周波数に影響を与える。したがって、タンク回路の共振周波数の変化のモニタリングは、FOが検出フィールド内に存在することを示す。金属等のFOは、誘導電圧及び/又は電流の位相及び振幅を調べることによって検出可能である、容量性又は抵抗性負荷を、もとの一次コイルへ反射する。周波数を測定する1つの方法は、マイクロコンピュータ内のソースコイルのOD電流をサンプリングすることである。共振周波数の変化は反射インピーダンスの変化又はインダクタンスの変化を示し、それに基づいて、FOの特性が予測されうる。
【0056】
共振周波数を測定することは、より簡単でありうるとともに、最小限の回路を必要としうる。しかし、周波数測定は、kが高い状況に最も適している。kが低い状況では、反射インピーダンス又はフェライトの効果が、検出には小さくなり過ぎ、それ故に、周波数の変化の測定に依存することは、kが低い状況において信頼できなくなる。また、フェライト及び金属の両方の同時の存在は、共振周波数の小さな全体的な変化を生じさせ、それ故に、特定のケースにおいて検出方法を信頼できなくする。これらの欠点は、FOの存在を示すエネルギー減衰の使用によって克服され、それは、k又は物体の配置への依存がないためである。
【0057】
図13は、
図1に示されるようなタンク回路の周波数応答のグラフの例を示している。いくつかの実施形態では、コントローラ8は、例えば、ゼロクロスのような、振動する電圧の1つ以上の半波長間の測定することによって、共振タンク回路の共振周波数を判定するよう構成される。
図6において、反射容量性負荷の導入は、共振周波数を増加させる効果を有する。逆に、近くのIPT受電器からのような、フェライトの存在は、共振周波数を減少させる効果を有する。
【0058】
したがって、IPT送電器だけのコイルと併用したハイQ共振タンクの使用は、FOによって引き起こされる電力損失を正確に測定し、かつ、IPT受電器からFOを区別するために使用可能である。タンクにおけるエネルギー減少率を測定することによって、損失を測定できるとともに、損失がFO及びIPT受電器に起因すると考えることができる。更に、タンクがIPT周波数と大きな差がある周波数に同調される場合に、検出フィールドに近接したIPT受電器に起因した損失を避けることができる。そのような実施形態では、測定された損失が、簡単に補償可能なコイル固有の損失と、FOによって引き起こされる損失とに純粋に起因している。
【0059】
更に、FO及び受信器の両方が同時に存在する場合、それらは両方とも遠く離れている。既存のFOD方法ではFOを検出することができず、それは、低いkが、反射インピーダンスが検出には小さすぎることを意味するためである。提案方法は、電力損失のみを調べ、kには依存しない。したがって、FOが遠く離れていても、ODフィールドに電力損失を生じさせる限り、FOを、エネルギー減衰率の増加として検出可能である。
【0060】
発明の実施形態の記述によって本発明を説明してきたが、また、実施形態を詳細に説明してきたが、添付の請求項の範囲を多少なりともそのような詳細に限定することは、出願人の意図ではない。更なる利点及び変更が、当業者には容易に見てとれることになる。したがって、より広い態様の発明が、図示及び記述されている具体的な詳細、代表的な装置及び方法、並びに例示的な例に限定されることはない。このため、出願人の全体的な発明概念の精神又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細からの逸脱がなされてもよい。