(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗体または前記抗原結合フラグメントは、配列番号8に示される重鎖可変領域アミノ酸配列と約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号10に示される軽鎖可変領域アミノ酸と約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、約99%の配列同一性を占めるアミノ酸の相違は、どのCDR領域中にもあたらない、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
前記抗体または前記抗原結合フラグメントは、癌の処置及び管理のために患者をスクリーニングするコンパニオン診断(CDx)として用いられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【発明を実施するための形態】
【0023】
節の概要
I.)定義
II.)AXL抗体
III.)AXLを発現する癌の診断
IV.)AXLを発現する癌の処置
V.)抗体ベース治療のための、標的としてのAXL
VI.)AXL ADCカクテル
VII.)併用療法
VIII.)キット/製造品
【0024】
I.)定義:
別段の定めがない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語、表記、および他の科学用語または専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語が、本明細書中で、明瞭化のために、かつ/または容易な参照のために定義されており、本明細書におけるそのような定義の包含は、必ずしも、当該技術分野において一般に理解されるものに対する実質的な差異を表すと解釈されるべきでない。本明細書中で記載または参照される技術および手順の多くは、当業者によって、従来の方法論、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd. edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載される、広く利用されている分子クローニング方法論を用いて、よく理解され、かつ一般的に使用される。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用を含む手順は、特記しない限り、一般に、製造者が定義したプロトコルおよび/またはパラメータに従って実施される。
【0025】
本明細書中で商標名が用いられる場合、商標名の参照はまた、文脈によって他に示されない限り、製品の配合、ジェネリック薬、および商標名の製品の医薬品有効成分をも参照する。
【0026】
用語「進行癌」、「局所進行癌」、「進行性疾患」、および「局所進行性疾患」は、関連する組織カプセルを通り抜けた癌を意味し、米国泌尿器科学会(AUA)系に基づくステージCの疾患、Whitmore−Jewett系に基づくステージC1〜C2の疾患、ならびにTNM(腫瘍、結節、転移)系に基づくステージT3〜T4およびN+疾患を含むことを意味する。一般に、局所進行性疾患の患者に外科手術は推奨されず、当該患者は、臨床的に局在化した(臓器限局的)癌に苦しむ患者と比較して、結果が実質的に良好でない。
【0027】
「本来のグリコシル化パターンを変更する」とは、本明細書中で、本来の配列AXLに見出される1つもしくは複数の炭水化物部分を(基本的なグリコシル化部位を除去することによって、または化学的手段および/もしくは酵素的手段によってグリコシル化を除去することによって)欠失させること、かつ/または本来の配列AXL中に存在しない1つまたは複数のグリコシル化部位を加えることを意味することが意図される。また、当該フレーズは、天然タンパク質のグリコシル化における質的変化を含み、存在する様々な炭水化物部分の性質および割合の変化を含む。
【0028】
用語「類似体」は、別の分子(例えばAXL関連タンパク質)と構造的に類似する、または類似もしくは対応する属性を共有する分子を指す。例えば、AXLタンパク質の類似体は、AXLに特異的に結合する抗体またはT細胞によって特異的に結合され得る。
【0029】
用語「抗体」は、別段の明確な指示がない限り、最も広い意味で用いられる。したがって、「抗体」は、天然に存在するものであってもよいし、従来のハイブリドーマ技術によって産生されるモノクローナル抗体等の人工的なものであってもよい。AXL抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびにこれらの抗体の抗原結合ドメインおよび/または1つもしくは複数の相補性決定領域を含有するフラグメントを含む。本明細書中で用いられる用語「抗体」は、AXLに特異的に結合し、かつ/または所望の生物活性を示すあらゆる形態の抗体またはそのフラグメントを指し、そして特に、AXLに特異的に結合し、かつ/または所望の生物活性を示すものであれば、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体が挙げられる)、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、および抗体フラグメントを包含する。あらゆる特異的抗体が、本明細書中で提供される方法および組成物に用いられ得る。ゆえに、一実施形態において、用語「抗体」は、標的抗原に対する特異的結合部位を組み合わせて形成する、軽鎖免疫グロブリン分子由来の少なくとも1つの可変領域、および重鎖分子由来の少なくとも1つの可変領域を含む分子を包含する。一実施形態において、抗体はIgG抗体である。例えば、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である。本方法および本組成物に有用な抗体は、細胞培養で、ファージ内で、またはウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、および類人猿が挙げられるがこれらに限定されない種々の動物内で、作出され得る。したがって、一実施形態において、本発明の抗体は、哺乳動物抗体である。初期抗体を単離し、または特異性もしくは結合力特性が変更された変異体を生じさせるために、ファージ技術が用いられ得る。そのような技術はルーチンであり、当該技術分野において周知である。一実施形態において、抗体は、当該技術分野において知られている組換え手段によって生産される。例えば、組換え抗体は、抗体をコードするDNA配列を含むベクターで宿主細胞をトランスフェクトすることによって、生産され得る。1つまたは複数のベクターが用いられて、宿主細胞中の少なくとも1つのVLおよび1つのVH領域を発現するDNA配列をトランスフェクトすることができる。抗体の作出および生産の組換え手段の例示的な記載として、Delves, ANTIBODY PRODUCTION:ESSENTIAL TECHNIQUES (Wiley, 1997); Shephard, et al, MONOCLONAL ANTIBODIES (Oxford University Press, 2000); Goding, MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE (Academic Press, 1993);およびCURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY (John Wiley & Sons,最新版)が挙げられる。本発明の抗体は、所望の機能を媒介する抗体の有効性を高めるように、組換え手段によって修飾されてよい。ゆえに、組換え手段を用いた置換によって抗体が修飾されてよいことは、本発明の範囲内である。典型的には、置換は保存的置換であろう。例えば、抗体の定常領域における少なくとも1つのアミノ酸が、異なる残基で置換されてよい。例えば、米国特許第5624821号明細書、米国特許第6194551号明細書、国際公開第99/58572号パンフレット、およびAngal,et al,Mol.Immunol.30:105−08(1993)参照。アミノ酸の修飾として、アミノ酸の欠失、付加、および置換が挙げられる。場合によっては、そのような変更は、不所望の活性、例えば補体依存性細胞傷害を減少させるようになされる。頻繁に、抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を、共有結合または非共有結合のいずれかで結合することによって、標識される。幅広い種類の標識技術および結合技術が知られており、科学文献および特許文献の双方において広範に報告されている。当該抗体は、正常なAXLまたは欠陥のあるAXLへの結合に関してスクリーニングされてよい。例えば、ANTIBODY ENGINEERING:A PRACTICAL APPROACH (Oxford University Press, 1996)参照。所望の生物活性を有する適切な抗体が、以下が挙げられるがそれらに限定されないインビトロアッセイを用いて、同定され得る:増殖、遊走、接着、軟寒天増殖、血管新生、細胞間コミュニケーション、アポトーシス、輸送、シグナル伝達、および以降の腫瘍増殖の阻害等のインビボアッセイ。本明細書中で提供される抗体はまた、診断用途にも有用であり得る。当該抗体は、捕捉抗体または非中和抗体として、抗原の受容体結合活性または生物活性を阻害することなく特異的抗原に結合する能力に関して、スクリーニングされてよい。中和抗体として、当該抗体は、競合結合アッセイに有用であり得る。当該抗体はまた、AXLまたはその受容体を定量化するのに用いられ得る。
【0030】
本明細書中で用いられる用語、抗体の「抗原結合部分」、「抗体フラグメント」、または「抗原結合フラグメント」(または単に「抗体部分」)は、抗原(例えば、AXLおよび変異体;
図1)に特異的に結合する能力を保持するAXL抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示された。用語、抗体の「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例として、(i)VL、VH、CL、およびCHIのドメインからなる一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域にてジスルフィド架橋によって連結される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHドメインおよびCHIドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単腕のVLドメインおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544−546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、これらは、組換え法を用いて、単一のタンパク質鎖として構成されることを可能にする合成リンカーによって結合されて、VL領域およびVH領域が対になって一価の分子(単鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)が形成され得る。そのような一本鎖抗体はまた、用語、抗体の「抗原結合部分」に包含されることが意図される。当該抗体フラグメントは、当業者に知られている従来技術を用いて得られ、そしてフラグメントは、無傷抗体と同じようにして、有用性に関してスクリーニングされる。
【0031】
AXLに特異的な抗体を生じさせるために、本明細書中で用いられる「抗原」のあらゆる形態が用いられ得る。ゆえに、誘発抗原は、単一のエピトープ、複数のエピトープ、またはタンパク質全体の単独であってもよいし、当該技術分野において知られている1つまたは複数の免疫原性増強剤と組み合わされたものであってもよい。誘発抗原は、単離された全長タンパク質であっても、細胞表面タンパク質(例えば、抗原の少なくとも一部でトランスフェクトされた細胞で免疫化する)であっても、可溶性タンパク質(例えば、タンパク質の細胞外ドメイン部分のみで免疫化する)であってもよい。抗原は、遺伝子組換え細胞内で産生され得る。抗原をコードするDNAは、ゲノムであっても非ゲノム(例えばcDNA)であってもよく、細胞外ドメインの少なくとも一部をコードする。本明細書中で用いられる用語、抗原の文脈における「部分(一部)」は、必要に応じて、注目する抗原の免疫原性エピトープを構成するための、最小限の数のアミノ酸または核酸を指す。注目する細胞の形質転換に適したあらゆる遺伝的ベクターが使用され得、アデノウイルスベクター、プラスミド、および非ウイルスベクター、例えばカチオン性脂質が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本明細書中の方法および組成物の抗体は、注目するAXLの細胞外ドメインの少なくとも一部に特異的に結合する。
【0032】
本明細書中で提供される抗体またはその抗原結合フラグメントは、「生物活性剤」に結合されてよい。本明細書中で用いられる用語「生物活性剤」は、抗原に結合し、かつ/または細胞殺傷性の毒素を増強するように所望の生物効果を増強もしくは媒介するあらゆる合成化合物または天然化合物を指す。一実施形態において、本発明に有用な結合フラグメントは、生物活性フラグメントである。本明細書中で用いられる用語「生物活性」は、所望の抗原性エピトープに結合し、かつ生物効果を直接的にまたは間接的に発揮することができる抗体または抗体フラグメントを指す。直接的な効果として、増殖シグナルの調節、刺激、および/または阻害、抗アポトーシスシグナルの調節、刺激および/または阻害、アポトーシスシグナルまたは壊死シグナルの調節、刺激および/または阻害、ADCCカスケードの調節、刺激、および/または阻害、ならびにCDCカスケードの調節、刺激、および/または阻害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
「二重特異的」抗体もまた、本方法および本組成物に有用である。本明細書中で用いられる用語「二重特異的抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原エピトープに対する結合特異性を有する抗体、典型的にはモノクローナル抗体を指す。一実施形態において、エピトープは、同じ抗原に由来する。別の実施形態において、エピトープは、2つの異なる抗原に由来する。二重特異的抗体を作製する方法が、当該技術分野において知られている。例えば、二重特異的抗体は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現を用いて、組換えにより生産され得る。例えば、Milstein et al,Nature 305:537−39(1983)参照。これ以外にも、二重特異的抗体は、化学結合を用いて調製され得る。例えば、Brennan,et al.,Science 229:81(1985)参照。二重特異的抗体として、二重特異的抗体フラグメントが挙げられる。例えば、Hollinger,et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6444−48(1993)、Gruber,et al,J.Immunol.152:5368(1994)参照。
【0034】
本明細書中に記載されるモノクローナル抗体として、具体的には、一部の重鎖および/または軽鎖が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である一方、残りの鎖が、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびに当該抗体のフラグメントが挙げられるが、標的抗原に特異的に結合し、かつ/または所望の生物活性を示す場合に限る(米国特許第4816567号明細書;およびMorrison et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。
【0035】
用語「化学療法剤」は、腫瘍増殖を阻害するのに有効な全ての化合物を指す。化学療法剤の非限定的な例として、アルキル化剤;例えば、窒素マスタード、エチレンイミン化合物、およびアルキルスルホネート;代謝拮抗薬、例えば、葉酸、プリンまたはピリミジン拮抗薬;有糸分裂阻害剤、例えば、抗チューブリン剤、例えばビンカアルカロイド、アウリスタチン、およびポドフィロ毒素の誘導体;細胞傷害性抗生物質;DNAの発現または複製に損傷を与え、または妨害する化合物、例えばDNAマイナーグルーブバインダ;ならびに増殖因子受容体アンタゴニストが挙げられる。また、化学療法剤として、細胞傷害剤(本明細書中で定義される)、抗体、生体分子、および小分子が挙げられる。
【0036】
用語「化合物」は、化合物それ自体、ならびに、明示的に記載されているか否かに拘らず、そして文脈が、以下のものが除外されるべきであることを明確にしていない限り:化合物の無晶形および結晶形(多形形態が挙げられ、これらの形態は、混合物の一部であっても、単離体であってもよい);化合物の遊離酸形態および遊離塩基形態(典型的には、本明細書中で提供される構造において示される形態である);化合物の異性体(光学異性体および互変異性異性体を指し、光学異性体として、エナンチオマーおよびジアステレオマー、キラル異性体および非キラル異性体が挙げられ、光学異性体として、単離された光学異性体、ならびにラセミおよび非ラセミ混合物が挙げられる光学異性体の混合物が挙げられ;異性体は、単離された形態であっても、1つまたは複数の他の異性体との混合物であってもよい);化合物の同位体(ジュウテリウム含有化合物およびトリチウム含有化合物が挙げられ、放射性同位体を含有する化合物が挙げられ、治療上、そして、診断上有効な放射性同位体が挙げられる);化合物の多量体の形態(二量体、三量体等の形態が挙げられる);化合物の塩、好ましくは薬学的に許容可能な塩(酸付加塩および塩基付加塩が挙げられ、有機対イオンおよび無機対イオンを有する塩が挙げられ、そして双性イオン形態が挙げられ、化合物が2つ以上の対イオンと結合するならば、2つ以上の対イオンは、同じであっても異なっていてもよい);ならびに化合物の溶媒和物(ヘミソルベート、モノソルベート、ジソルベート等が挙げられ、有機溶媒和物および無機溶媒和物が挙げられ、前記無機溶媒和物として水和物が挙げられ:化合物が2つ以上の溶媒分子と結合するならば、2つ以上の溶媒分子は、同じであっても異なってもよい)を指し、かつこれらを包含する。一部の例では、本明細書中でなされる本発明の化合物への言及は、先の形態、例えば塩および/または溶媒和物の1つまたは複数への明示的な言及を含むこととなる;しかしながら、この言及は、強調するためにあるに過ぎず、先で同定された先の形態の他のものを排除すると解釈されるべきではない。
【0037】
用語「相補性決定領域」および「CDR」は、抗原特異性および結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことが、当該技術分野において知られている。一般に、各重鎖可変領域内に3つのCDR(CDR−H1、CDR−H2、CDR−H3)があり、各軽鎖可変領域内に3つのCDR(CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3)がある。
【0038】
所与のCDRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabat et al.(1991),「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al−Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927−948(「Chothia」ナンバリングスキーム)、MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732−745(1996),「Antibody−antigen interactions:Contact analysis and binding site topography」,J.Mol.Biol.262,732−745.(「Contact」ナンバリングスキーム)、Lefranc MP et al,「IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V−like domains」,Dev Comp Immunol,2003 Jan;27(l):55−77(「IMGT」ナンバリングスキーム)、およびHonegger A and Pliickthun A,「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool」,J Mol Biol,2001 Jun 8;309(3):657−70(AHoナンバリングスキーム)によって記載されるものが挙げられる、いくつかの周知のスキームのいずれかを用いて、容易に判断され得る。
【0039】
所与のCDRの境界は、同定に用いられるスキームに応じて変わり得る。例えば、Kabatスキームは、構造アラインメントに基づく一方、Chothiaスキームは、構造情報に基づく。KabatスキームおよびChothiaスキームの双方のナンバリングは、最も一般的な抗体領域配列長に基づいており、挿入文字、例えば、「30a」によって対応される挿入および欠失が、いくつかの抗体において現れる。2つのスキームは、異なる位置に、ある挿入および欠失(「indel」)を配置して、異なるナンバリングが生じる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の分析に基づいており、多くの点で、Chothiaナンバリングスキームに類似する。後出の表Vは、Kabat、Chothia、およびContactのスキームによってそれぞれ同定された、CDR−L1、CDR−L2、CDR−L3、およびCDR−H1、CDR−H2、CDR−H3の位置を列挙する。CDR−H1について、残基ナンバリングが、KabatおよびChothiaのナンバリングスキームの双方を用いて列挙されている。
【0040】
ゆえに、別段の定めがない限り、所与の抗体またはその領域、例えば可変領域の用語「CDR」および「相補性決定領域」、ならびに抗体またはその領域の個々のCDR(例えば、CDR−H1、CDR−H2)は、本明細書中で先に記載される既知のスキームのいずれかによって定義される相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。場合によっては、Kabat、Chothia、またはContactの方法によって定義されるCDR等の、特定のCDR(複数可)の同定のためのスキームが、特定される。他の場合には、CDRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0041】
本明細書中で用いられる用語「保存的置換」は、当業者に知られており、概して、生じる分子の生物活性を変えることなくなされ得るアミノ酸の置換を指す。当業者であれば、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が、生物活性を実質的に変えないことを認識する(例えば、Watson,et al,MOLECULAR BIOLOGY OF THE GENE,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Edition 1987)参照)。そのような例示的な置換は、好ましくは、表IIおよび表III(a−b)に記載される置換に従ってなされる。例えば、そのような変更として、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のいずれかを、これらの疎水性アミノ酸のあらゆる他の疎水性アミノ酸の代わりに;アスパラギン酸(D)をグルタミン酸(E)の代わりに、そしてその逆;グルタミン(Q)をアスパラギン(N)の代わりに、そしてその逆;そしてセリン(S)をスレオニン(T)の代わりに、そしてその逆を用いることが挙げられる。他の置換もまた、特定のアミノ酸の環境およびそのタンパク質の三次元構造における役割に応じて、保存的であるとみなされ得る。例えば、グリシン(G)およびアラニン(A)は、アラニン(A)およびバリン(V)がそうであるように、頻繁に交換可能であり得る。比較的疎水性であるメチオニン(M)は頻繁に、ロイシンおよびイソロイシンと、そして時にはバリンと交換され得る。リシン(K)およびアルギニン(R)は頻繁に、アミノ酸残基の重要な特徴がその電荷であり、かつこれらの2つのアミノ酸残基の異なるpKが重要でない位置において、交換可能である。更なる他の変更が、特定の環境において「保存的」であるとみなされ得る(例えば、本明細書中の表III(a);pages 13−15「Biochemistry」2nd ED.Lubert Stryer ed(Stanford University);Henikoff et al.,PNAS 1992 Vol 89 10915−10919;Lei et al,J Biol Chem 1995 May 19;270(20):11882−6参照)。他の置換も許容され、経験的にまたは既知の保存的置換に従って、決定され得る。
【0042】
本明細書中で用いられる用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小抗体フラグメントを指し、このフラグメントは、軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を、同じポリペプチド鎖(VR−VL)内に含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短か過ぎるリンカーを用いることによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対形成させられて、2つの抗原結合部位が生じる。ダイアボディは、例えば、EP404097号明細書;国際公開第93/11161号パンフレット;およびHollinger et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−48(1993)においてより完全に記載されている。
【0043】
AXL発現細胞に及ぼすAXL結合剤の効果の文脈における用語「枯渇」は、AXL発現細胞の数の減少またはその除去を指す。
【0044】
用語「遺伝子産物」は、本明細書中で、ペプチド/タンパク質またはmRNAを示すのに用いられる。例えば、「本発明の遺伝子産物」は時折、本明細書中で、「癌アミノ酸配列」、「癌タンパク質」、「表Iに列挙される癌のタンパク質」、「癌mRNA」、「表Iに列挙される癌のmRNA」等と呼ばれる。一実施形態において、癌タンパク質は、
図1の核酸によってコードされる。癌タンパク質は、フラグメントであってもよいし、代わりに、
図1の核酸によってコードされる全長タンパク質であってもよい。一実施形態において、癌アミノ酸配列が、配列同一性または類似性を判定するために用いられる。別の実施形態において、配列は、
図1の核酸によってコードされるタンパク質の、天然に存在する対立遺伝子変異体である。別の実施形態において、配列は、本明細書中でさらに記載される配列変異体である。
【0045】
「ヘテロ結合」抗体は、本方法および本組成物に有用である。本明細書中で用いられる用語「ヘテロ結合抗体」は、2つの共有結合した抗体を指す。そのような抗体は、架橋剤を用いることを含む、合成タンパク質化学において知られている方法を用いて、調製され得る。例えば、米国特許第4676980号明細書参照。
【0046】
用語「相同体」は、例えば、対応する位置にて同じであるまたは類似する化学残基の配列を有することによって、別の分子との相同性を示す分子を指す。
【0047】
一実施形態において、本明細書中で提供される抗体は、「ヒト抗体」である。本明細書中で用いられる用語「ヒト抗体」は、相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖および重鎖の配列の本質的に全配列が、ヒト遺伝子に由来する抗体を指す。一実施形態において、ヒトモノクローナル抗体が、トリオーマ技術、ヒトB細胞技術(例えば、Kozbor,et al,Immunol.Today 4:72(1983)参照)、EBV形質転換技術(例えば、Cole et al.MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY 77−96(1985)参照)によって、またはファージディスプレイ(例えば、Marks et al,J.Mol.Biol.222:581(1991)参照)を用いて、調製される。特定の実施形態において、ヒト抗体は、トランスジェニックマウスにおいて作出される。そのような部分的ヒト抗体から完全ヒト抗体までを作製するための技術が、当該技術分野において知られており、そのいずれの技術も用いられ得る。1つの特に好ましい実施形態に従えば、完全ヒト抗体配列は、ヒト重鎖および軽鎖抗体の遺伝子を発現するように操作されたトランスジェニックマウスにおいて、作製される。ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスの調製の例示的な記載が、国際公開第02/43478号パンフレット、米国特許第6657103号明細書(Abgenix)およびその後続において見出される。次いで、所望の抗体を産生するトランスジェニックマウス由来のB細胞が融合されて、抗体の連続産生用のハイブリドーマ細胞株が作製され得る。例えば、米国特許第5569825号明細書;米国特許第5625126号明細書;米国特許第5633425号明細書;米国特許第5661016号明細書;および米国特許第5545806号明細書;ならびにJakobovits,Adv.Drug Del.Rev.31:33−42(1998);Green,et al,J.Exp.Med.188:483−95(1998)参照。
【0048】
本明細書中で用いられる用語「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えばマウス)抗体およびヒト抗体由来の配列を含有する抗体の形態を指す。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むこととなり、超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含むこととなる。例えば、Cabillyの米国特許第4816567号明細書;Queen et al.(1989)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033;およびANTIBODY ENGINEERING:A PRACTICAL APPROACH(Oxford University Press 1996)参照。
【0049】
本明細書中で用いられる用語「阻害する」または「阻害」は、測定可能な量だけ減少させること、または完全に防止することを意味する。
【0050】
フレーズ「単離された」または「生物学的に純粋な」は、その天然の状態で見出されるままの物質に通常付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。ゆえに、本発明に従う、単離されたペプチドは好ましくは、そのインサイチュ環境においてペプチドに通常付随する物質を含有しない。例えば、AXL遺伝子以外の遺伝子に対応し、もしくはこれに相補的であり、またはAXL遺伝子産物もしくはそのフラグメント以外のポリペプチドをコードする混入ポリヌクレオチドからポリヌクレオチドが実質的に分離される場合に、ポリヌクレオチドは「単離される」と言われる。当業者は、単離されたAXLポリヌクレオチドを得るための核酸単離手順を容易に使用することができる。タンパク質は、例えば、タンパク質に通常付随する細胞成分からAXLタンパク質を取り出すための物理的、機械的、または化学的方法が使用される場合に、「単離される」と言われる。当業者であれば、標準的な精製方法を容易に使用して、単離されたAXLタンパク質を得ることができる。これ以外にも、化学的手段によって、単離されたタンパク質が調製され得る。
【0051】
適切な「標識」として、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子等が挙げられる。そのような標識の使用を教示する特許として、米国特許第3817837号明細書;米国特許第3850752号明細書;米国特許第3939350号明細書;米国特許第3996345号明細書;米国特許第4277437号明細書;米国特許第4275149号明細書;および米国特許第4366241号明細書が挙げられる。また、本明細書中で提供される抗体は、フルオロボディの抗原結合成分として有用であり得る。例えば、Zeytun et al.,Nat.Biotechnol.21:1473−79(2003)参照。
【0052】
用語「哺乳動物」は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、およびヒトが挙げられる哺乳動物として分類されるあらゆる生物を指す。本発明の一実施形態において、哺乳動物はマウスである。本発明の別の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0053】
用語「転移性癌」および「転移性疾患」は、局所リンパ節または遠隔部位に転移した癌を意味し、AUA系に基づくステージD疾患、およびTNM系に基づくステージTxNxM+を含むことを意味する。
【0054】
本明細書中で用いられる用語「モジュレータ」、「試験化合物」もしくは「薬物候補」または文法上の等価物は、癌表現型、癌配列、例えば核酸配列もしくはタンパク質配列の発現、または癌配列の効果(例えば、シグナル伝達、遺伝子発現、タンパク質相互作用等)を直接的または間接的に変更する能力について試験されることになるあらゆる分子、例えばタンパク質、オリゴペプチド、有機小分子、多糖類、ポリヌクレオチド等を記載する。一態様において、モジュレータは、本発明の癌タンパク質の作用を中和することとなる。「中和する」とは、タンパク質の活性が阻害または阻止されて、結果として細胞に作用することを意味する。別の態様において、モジュレータは、前記タンパク質のレベルを正常化することによって、本発明の遺伝子およびその対応するタンパク質の効果を中和することとなる。好ましい実施形態において、モジュレータは、発現プロファイル、または本明細書中で提供される核酸もしくはタンパク質の発現プロファイル、または下流エフェクタ経路を変更する。一実施形態において、モジュレータは、癌の表現型を、例えば正常な組織フィンガープリントまで、抑制する。別の実施形態において、モジュレータは、癌の表現型を誘導した。一般に、複数のアッセイ混合物が、様々な薬剤濃度と並行して実行されて、様々な濃度に対する様々な反応が得られる。典型的には、これらの濃度の1つ、すなわちゼロ濃度、または検出レベル未満のものが、ネガティブコントロールとして機能する。
【0055】
モジュレータ、薬物候補、または試験化合物が、多数の化学クラスを包含するが、典型的にはそれらは、有機分子、好ましくは分子量が100ダルトンを超えるが約2,500ダルトン未満である有機小分子化合物である。好ましい小分子は、2000D未満、1500D未満、1000D未満、または500D未満である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必須の官能基を含み、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの官能性化学基を含む。候補薬剤は多くの場合、先の官能基の1つまたは複数で置換された環状炭素構造もしくは複素環構造、および/または芳香族構造もしくは多環芳香族構造を含む。モジュレータはまた、生体分子、例えばペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの組合せを含む。ペプチドが特に好ましい。モジュレータの一クラスが、例えば約5から約35個のアミノ酸のペプチドであり、約5から約20個のアミノ酸が好ましく、約7から約15個が特に好ましい。好ましくは、癌調節タンパク質は可溶性であり、非膜貫通領域を含み、かつ/または可溶性の一助となるN末端Cysを有する。一実施形態において、フラグメントのC末端は、遊離酸として維持され、N末端は、カップリングの一助となる遊離アミン、すなわちシステインである。一実施形態において、本発明の癌タンパク質は、本明細書中で考察されるような免疫原に結合される。一実施形態において、癌タンパク質は、BSAに結合される。本発明の、例えば好ましい長さのペプチドは、互いに、または他のアミノ酸に連結されて、より長いペプチド/タンパク質を生成し得る。調節ペプチドは、先で概説されるような天然に存在するタンパク質の消化物、ランダムペプチド、または「偏った」ランダムペプチドであってよい。好ましい実施形態において、ペプチド/タンパク質ベースのモジュレータは、本明細書中で定義される抗体およびそのフラグメントである。
【0056】
本明細書中で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る、天然に起こり得る突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性エピトープに対して向けられる。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、異なるエピトープに対して向けられる(またはこれらに特異的な)多数の抗体を含む。一実施形態において、ポリクローナル抗体は、複数の抗原エピトープを含有する単一の抗原内のエピトープの特異性、親和性、または結合力が異なる、複数のモノクローナル抗体を含有する。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特性を示しており、特定のいずれかの方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って用いられることになるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号明細書参照)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)およびMarks et al,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記載される技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。これらのモノクローナル抗体は、通常ELISAにより判定されて、一般的には少なくとも約1μM、より一般的には少なくとも約300nM、典型的には少なくとも約30nM、好ましくは少なくとも約10nM、より好ましくは少なくとも約3nM以上のKdで結合することとなる。
【0057】
「医薬賦形剤」は、アジュバント、キャリア、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、防腐剤等の物質を含む。
【0058】
「医薬的に許容可能な」は、非毒性であり、不活性であり、かつ/またはヒトもしくは他の哺乳動物と生理学的に適合する組成を指す。
【0059】
用語「ポリヌクレオチド」は、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態の、長さが少なくとも10塩基または10塩基対のヌクレオチドのポリマー形態を意味し、DNAおよび/またはRNAの一本鎖形態および二本鎖形態を含むことを意味する。当該技術分野において、当該用語は、多くの場合、「オリゴヌクレオチド」と互換的に用いられる。ポリヌクレオチドは、本明細書中に開示されるヌクレオチド配列を含んでよく、ここで、例えば
図1に示されるチミジン(T)は、ウラシル(U)であってもよい;この定義は、DNAとRNAとの化学構造の差異、特にRNA中の4つの主要塩基の1つが、チミジン(T)の代わりにウラシル(U)であるという観察に関連する。
【0060】
用語「ポリペプチド」は、少なくとも約4、5、6、7、または8アミノ酸のポリマーを意味する。本明細書の全体を通して、アミノ酸についての標準的な3文字(表III参照)または1文字の名称が用いられる。当該技術分野において、当該用語は、多くの場合、「ペプチド」または「タンパク質」と互換的に用いられる。
【0061】
「組換え」DNA分子または「組換え」RNA分子は、インビトロでの分子操作に曝されたDNA分子またはRNA分子である。
【0062】
本明細書中で用いられる用語「一本鎖Fv」、「scFv」または「一本鎖」抗体は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む抗体フラグメントを指し、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、Fvポリペプチドはさらに、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含み、これによりsFvは、抗原結合にとって所望される構造を形成することが可能となる。sFvの総説について、Pluckthun,THE PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)参照。
【0063】
本明細書中で用いられる用語「特異的な」および「特異的に結合する」は、標的抗原エピトープへの抗体の選択的結合を指す。抗体は、所定の条件下で、適切な抗原への結合を、無関係の抗原または抗原混合物への結合と比較することによって、結合の特異性について試験され得る。抗体が、無関係な抗原または抗原混合物に結合するよりも少なくとも2倍、5倍、7倍、好ましくは10倍以上、適切な抗原に結合するならば、それは特異的であるとみなされる。一実施形態において、特異的抗体は、AXL抗原にのみ結合するが、無関係な抗原には結合しない抗体である。別の実施形態において、特異的抗体は、ヒトAXL抗原に結合するが、AXL抗原とのアミノ酸相同性が70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の非ヒトAXL抗原に結合しない抗体である。別の実施形態において、特異的抗体は、ヒトAXL抗原に結合し、かつマウスAXL抗原に結合するが、ヒト抗原への結合の程度がより高い抗体である。別の実施形態において、特異的抗体は、ヒトAXL抗原に結合し、かつ霊長目AXL抗原に結合するが、ヒト抗原への結合の程度がより高い抗体である。別の実施形態において、特異的抗体は、ヒトAXL抗原およびあらゆる非ヒトAXL抗原に結合するが、ヒト抗原またはそのあらゆる組合せへの結合の程度がより高い。
【0064】
本明細書中で用いられる「処置すること」または「治療的」および文法的に関連する用語は、生存の延長、罹患率の引下げ、および/または代替治療法の副産物である副作用の軽減等の、疾患のあらゆる結果の何らかの向上を指す;当該技術分野において容易に理解されるように、疾患の完全根絶が好ましいとはいえ、処置行為の必要条件ではない。
【0065】
用語「変異体」は、記載されるタイプまたは基準からの変異を示す分子、例えば具体的に記載されるタンパク質(例えば、
図1に示されるAXLタンパク質)の対応する位置において1つまたは複数の異なるアミノ酸残基を有するタンパク質を指す。類似体は、変異体タンパク質の例である。スプライスアイソフォームおよび単一ヌクレオチド多型(SNP)は、変異体の更なる例である。
【0066】
本発明の「AXLタンパク質」および/または「AXL関連タンパク質」として、本明細書中で具体的に同定されるもの(
図1参照)、ならびに、本明細書中で概説される方法または当該技術分野において容易に利用可能な方法に従って、過度の実験をすることなく単離/作出され、かつ特徴付けされ得る、対立遺伝子変異体、保存的置換変異体、類似体、および相同体が挙げられる。異なるAXLタンパク質またはそのフラグメントの部分を組み合わせている融合タンパク質、ならびにAXLタンパク質および異種ポリペプチドの融合タンパク質もまた挙げられる。そのようなAXLタンパク質は、一括して、AXL関連タンパク質、本発明のタンパク質、またはAXLと呼ばれる。用語「AXL関連タンパク質」は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または25を超えるアミノ酸;あるいは少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、225、250、275、280、290、300、325、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、810、820、830、840、841、842、843、844、845、850、855、860、865、870、875、880、885、890、891、892、893、または894以上のアミノ酸のポリペプチドフラグメントまたはAXLタンパク質配列を指す。
【0067】
II.)AXL抗体
本発明の別の態様は、AXL関連タンパク質に結合する抗体を提供する(
図1参照)。一実施形態において、AXL関連タンパク質に結合する抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むAXLタンパク質に特異的に結合する抗体である。配列番号2のアミノ酸配列を含むAXLタンパク質に特異的に結合する抗体として、他のAXL関連タンパク質に結合し得る抗体が挙げられる。例えば、配列番号2のアミノ酸配列を含むAXLタンパク質に結合する抗体は、AXL変異体等のAXL関連タンパク質、およびその相同体または類似体に結合し得る。
【0068】
本発明のAXL抗体は特に、癌(例えば、表I参照)予後アッセイ、画像化、診断、および治療法に有用である。同様に、そのような抗体は、肉腫、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、または肺癌、および、他の癌においてもAXLが発現または過剰発現される範囲で、他の癌の処置および/または予後に、有用である。さらに、細胞内発現抗体(例えば一本鎖抗体)は、AXLの発現が伴う癌、例えば進行性もしくは転移性の肉腫、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、もしくは肺癌、または他の進行性もしくは転移性の癌の処置に治療上有用である。
【0069】
抗体、具体的にはモノクローナル抗体の調製のための種々の方法が、当該技術分野において周知である。例えば、抗体は、AXL関連タンパク質、ペプチド、またはフラグメントを、単離された形態で、または免疫結合された(immunoconjugated)形態で用いて、適切な哺乳動物宿主を免疫化することによって、調製され得る(Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press,Eds.,Harlow,and Lane(1988);Harlow,Antibodies,Cold Spring Harbor Press,NY(1989))。また、AXL GST融合タンパク質等の、AXLの融合タンパク質も用いられ得る。特定の実施形態において、
図1のアミノ酸配列の全てまたは大部分を含むGST融合タンパク質が生産されてから、免疫原として用いられて、適切な抗体が作出される。別の実施形態において、AXL関連タンパク質が合成されて、免疫原として用いられる。
【0070】
また、当該技術分野において知られている裸DNA免疫化技術が用いられて(精製されたAXL関連タンパク質またはAXL発現細胞があってもなくてもよい)、コードされた免疫原に対する免疫反応が生じる(総説について、Donnelly et al.,1997,Ann.Rev.Immunol.15:617−648参照)。
【0071】
図1に示すようなAXLタンパク質のアミノ酸配列が分析されて、抗体を生じさせるためのAXLタンパク質の特定の領域が選択され得る。例えば、AXLアミノ酸配列の疎水性分析および親水性分析が用いられて、AXL構造中の親水性領域が同定される。免疫原性構造ならびに他の領域およびドメインを示すAXLタンパク質の領域が、当該技術分野において知られている他の様々な方法、例えばChou−Fasman、Garnier−Robson、Kyte−Doolittle、Eisenberg、Karplus−Schultz、またはJameson−Wolfの分析を用いて、容易に同定され得る。親水性プロファイルは、Hopp,T.P.and Woods,K.R.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:3824−3828の方法を用いて作成され得る。疎水親水性プロファイルは、Kyte,J.and Doolittle,R.F.,1982,J.Mol.Biol.157:105−132の方法を用いて作成され得る。アクセス可能残基パーセント(%)プロファイルは、Janin J.,1979,Nature 277:491−492の方法を用いて作成され得る。平均可撓性プロファイルは、Bhaskaran R.,Ponnuswamy P.K.,1988,Int.J.Pept.Protein Res.32:242−255の方法を用いて作成され得る。ベータターンプロファイルは、Deleage,G.,Roux B.,1987,Protein Engineering 1:289−294の方法を用いて作成され得る。ゆえに、これらのプログラムまたは方法のいずれかによって同定された各領域は、本発明の範囲内である。AXL抗体の作出のための好ましい方法が、本明細書中で提供される実施例によってさらに説明される。免疫原として用いるタンパク質またはポリペプチドを調製する方法が、当該技術分野において周知である。BSA、KLH、または他のキャリアタンパク質等の、キャリアとのタンパク質の免疫原結合体を調製する方法もまた、当該技術分野において周知である。一部の状況において、例えばカルボジイミド試薬を用いた直接結合が用いられる;他の場合には、連結試薬、例えばPierce Chemical Co.,Rockford,ILによって供給されるものが有効である。AXL免疫原の投与は、多くの場合、当該技術分野において理解されているように、適切な期間にわたる注射によって、そして適切なアジュバントを用いて、行われる。免疫スケジュールの間、抗体の力価が測定されて、抗体形成の妥当性を判定することができる。
【0072】
AXLモノクローナル抗体は、当該技術分野において周知の様々な手段によって生産され得る。例えば、所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株が、一般的に知られている、KohlerおよびMilsteinの標準的なハイブリドーマ技術、または抗体産生B細胞を不死化する改変を用いて、調製される。抗原がAXL関連タンパク質であるイムノアッセイによって、所望の抗体を分泌する不死化細胞株がスクリーニングされる。適切な不死化細胞培養体が同定されると、細胞が増殖されて、抗体がインビトロ培養体からまたは腹水から生産され得る。
【0073】
本発明の抗体またはフラグメントはまた、組換え手段によって生産され得る。AXLタンパク質の所望の領域に特異的に結合する領域もまた、複数の種起源のキメラ抗体または相補性決定領域(CDR)移植抗体の関連で生産され得る。ヒト化AXL抗体またはヒトAXL抗体もまた生産され得、治療の関連で用いるのに好ましい。非ヒト抗体CDRの1つまたは複数を、対応するヒト抗体配列の代わりに用いることによって、マウスおよび他の非ヒト抗体をヒト化する方法が周知である(例えば、Jones et al.,1986,Nature 321:522−525;Riechmann et al.,1988,Nature 332:323−327;Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534−1536参照)。また、Carter et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285およびSims et al,1993,J.Immunol.151:2296も参照。
【0074】
好ましい実施形態において、免疫グロブリン重鎖(VH、DH、およびJHのセグメント)および/またはカッパ軽鎖(VKおよびJK)の遺伝子座に内在性マウス可変セグメントを有するゲノム配列が、全体的にまたは部分的に、ヒト免疫グロブリン重鎖(VH、DH、およびJH)および/またはカッパ軽鎖(VKおよびJK)の遺伝子座の再配置されていない生殖細胞系可変セグメントを有するヒトゲノム配列と置き換えられているVeloclmmuneマウス(Regeneron,Tarrytown,NY)を用いて、本発明のヒトモノクローナル抗体が調製され得る。例えば、米国特許第6586251号明細書、米国特許第6596541号明細書、米国特許第7105348号明細書、米国特許第6528313号明細書、米国特許第6638768号明細書、および米国特許第6528314号明細書参照。
【0075】
また、本発明のヒト抗体は、HuMAbマウス(Medarex,Inc.)を用いて作出され得、これは、再配列されていないヒト重鎖(ミューおよびガンマ)およびカッパ軽鎖免疫グロブリン配列を、内因性ミュー鎖およびカッパ鎖の遺伝子座を不活化する標的突然変異と一緒にコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含有する(例えば、Lonberg,et al.(1994)Nature 368(6474):856−859参照)。
【0076】
別の実施形態において、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウス、例えばヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスを用いて、本発明の完全ヒト抗体が生産され得る。本明細書中で「KMマウス」と呼ばれるそのようなマウスは、Tomizuka et al.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727およびPCT国際公開第02/43478号パンフレット(Tomizuka,et al.)に記載されている。
【0077】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリをスクリーニングするファージディスプレイ法を用いて調製され得る。ヒト抗体を単離するそのようなファージディスプレイ法は、当該技術分野において確立されている。例えば:米国特許第5223409号明細書;米国特許第5403484号明細書;米国特許第5571698号明細書(Ladner et al.);米国特許第5427908号明細書および米国特許第5580717号明細書(Dower et al.);米国特許第5969108号明細書および米国特許第6172197号明細書(McCafferty et al.);ならびに米国特許第5885793号明細書;米国特許第6521404号明細書;米国特許第6544731号明細書;米国特許第6555313号明細書;米国特許第6582915号明細書、および米国特許第6593081号明細書(Griffiths et al.)参照。
【0078】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、免疫化して直ぐにヒト抗体反応が起こり得るようにヒト免疫細胞が再構成されているSCIDマウスを用いて、調製され得る。そのようなマウスは、例えば、米国特許第5476996号明細書および米国特許第5698767号明細書(Wilson et al.)に記載されている。
【0079】
加えて、本発明のヒト抗体は、Xenomouse(Amgen Fremont,Inc.)と呼ばれるヒト重鎖および軽鎖の遺伝子座で操作された、抗体産生のために不活化されたトランスジェニックマウスを用いる技術で、作出され得る。ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスを調製する例示的な記載は、米国特許第6657103号明細書中に見出され得る。また、米国特許第5569825号明細書;米国特許第5625126号明細書;米国特許第5633425号明細書;米国特許第5661016号明細書および米国特許第5545806号明細書ならびにMendez,et al.Nature Genetics,15:146−156(1998);Kellerman,S.A.& Green,L.L.,Curr.Opin.Biotechnol 13,593−597(2002)参照。
【0080】
一実施形態において、本発明のAXL MAbは、V77−2a37.1と称される抗体の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含み、重鎖可変領域は、
図3Aにおいて配列番号8として示され、軽鎖可変領域は、
図3Bにおいて配列番号10として示される。本発明の一態様において、本発明のAXL MAbは、残基31〜37(配列番号20)からなるCDR−H1、残基50〜65(配列番号22)からなるCDR−H2、および残基95〜102(配列番号23)からなるCDR−H3を含む重鎖、ならびに残基24〜34(配列番号11)からなるCDR−L1、残基50〜56(配列番号12)からなるCDR−L2、および残基89〜97(配列番号13)からなるCDR−L3を含む軽鎖を含む。好ましい実施形態において、本発明のAXL MAbは、V77−2a37.1と称される抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、
図3Aにおいて配列番号8として示され、軽鎖可変領域は、
図3Bにおいて配列番号10として示される。本発明のMAbは、V77−2a37.1の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列に相同であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、当該抗体は、本発明のAXL MAbの所望の機能的特性を保持している。本発明の抗体の定常領域として、定常領域のあらゆるサブクラスが選択され得ることが留意されるべきである。一実施形態において、重鎖定常領域としてのヒトIgG2定常領域および軽鎖定常領域としてのヒトIgカッパ定常領域が用いられ得る。他の実施形態において、重鎖定常領域としてのマウスIgG1定常領域および軽鎖定常領域としてのマウスIgカッパ定常領域が用いられ得る。
【0081】
本発明の操作された抗体として、(例えば、抗体の特性を向上させるように)VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に修飾がなされた抗体が挙げられる。典型的には、そのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を引き下げるようになされる。例えば、一アプローチが、1つまたは複数のフレームワーク残基を、対応する生殖系列配列に「復帰突然変異させる」ものである。より具体的には、体細胞突然変異を経験した抗体は、当該抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含有し得る。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって、同定され得る。フレームワーク領域配列をその生殖系列配列に戻すために、体細胞突然変異は、例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR介在突然変異誘発(例えば、ロイシンからメチオニンへの「復帰突然変異誘発」)によって、生殖系列配列に「復帰突然変異」されてよい。そのような「復帰突然変異した」抗体もまた、本発明によって包含されることが意図される。
【0082】
別のタイプのフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去することによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させるように、フレームワーク領域内の、またはさらには1つもしくは複数のCDR領域内の、1つまたは複数の残基を突然変異させることを含む。このアプローチは、「脱免疫化」とも呼ばれ、Carr et al.による米国特許出願公開第2003/0153043号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0083】
フレームワーク領域またはCDR領域内でなされる修飾に加えて、またはその代わりに、本発明の抗体は、Fc領域内に修飾を含めて、典型的には、抗体の1つまたは複数の機能的特性、例えば血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞傷害を変更するように、操作される。さらに、本発明のAXL MAbは、ここでも、MAbの1つまたは複数の機能的特性を変更するために、化学的に修飾されてもよい(例えば、1つまたは複数の化学的部分が抗体に取り付けられてもよい)し、そのグリコシル化を変更するように修飾されてもよい。これらの実施形態はそれぞれ、以下でさらに詳細に記載される。
【0084】
一実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変更され、例えば増加または減少するように、修飾される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5677425号明細書にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の集合を容易にするように、またはAXL MAbの安定性を増大もしくは低下させるように、変更される。
【0085】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、AXL MAbの生物学的半減期を引き下げるように突然変異する。より具体的には、抗体のブドウ球菌プロテインA(SpA)結合が、天然のFc−ヒンジドメインSpA結合に対して弱まるように、1つまたは複数のアミノ酸突然変異が、Fc−ヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメイン界面領域中に導入される。このアプローチは、Ward et al.による米国特許第6165745号明細書中にさらに詳細に記載されている。
【0086】
別の実施形態において、AXL MAbは、その生物学的半減期を増大させるように修飾される。様々なアプローチが可能である。例えば、突然変異は、米国特許第6277375号明細書(Ward)に記載されるようにして導入され得る。これ以外にも、生物学的半減期を増大させるために、Presta et al.による米国特許第5869046号明細書および米国特許第第6121022号明細書に記載されるように、抗体は、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるエピトープ結合サルベージ受容体を含有するように、CH1領域またはCL領域内で変更されてよい。
【0087】
さらに他の実施形態において、Fc領域は、AXL MAbのエフェクタ機能を変更するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なるアミノ酸残基で置換することによって、変更される。例えば、アミノ酸特異的残基から選択される1つまたは複数のアミノ酸は、抗体が、エフェクタリガンドに対する親和性を変更するが親抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基で置換されてよい。親和性が変更されるエフェクタリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のCI成分であり得る。このアプローチは、Winter et al.による米国特許第5624821号明細書および米国特許第5648260号明細書中にさらに詳細に記載されている。
【0088】
AXL関連タンパク質とのAXL抗体の反応性は、いくつかの周知の手段によって確立され得、ウエスタンブロット分析、免疫沈降分析、ELISA分析、およびFACS分析が挙げられ、これらは必要に応じて、AXL関連タンパク質、AXL発現細胞、またはそれらの抽出物を用いる。AXL抗体またはそのフラグメントは、検出可能なマーカーで標識されてもよいし、第2の分子に結合されてもよい。適切な検出可能マーカーとして、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、または酵素が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、2つ以上のAXLエピトープに特異的な二重特異的抗体が、当該技術分野において一般に知られている方法を用いて作出される。ホモ二量体抗体もまた、当該技術分野において知られている架橋技術(例えば、Wolff et al.,Cancer Res.53:2560−2565)によって作出され得る。
【0089】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明のAXL MAbは、V77−2a37.1と称される抗体の重鎖および軽鎖を含む抗体である。好ましい実施形態において、V77−2a37.1は、造影剤に結合される。さらに好ましい実施形態において、V77−2a37.1は、コンパニオン診断(CDx)として、小分子化合物と併せて用いられる。
【0090】
III.) AXLを発現する癌の診断
本発明のAXL MAbは、対象における癌の存在の検出方法にまたは対象における癌の診断方法に用いられ得る。検出方法または診断方法における癌の例として、肉腫、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、および肺癌が挙げられる。また、本発明のAXL MAbは、癌患者等の対象から得られるサンプルにおけるAXL発現の検出方法に用いられ得る。癌細胞におけるAXL発現は、EGFR阻害剤(例えばエルロチニブ)による処置を経験した癌患者におけるEGFR阻害剤に対する耐性に関係があることが知られている。したがって、AXLキナーゼ阻害剤とEGFR阻害剤の組合せは、EGFR阻害剤抵抗性の低下および癌増殖の抑制に用いられ得る。本発明のAXL MAbは、AXL発現が陽性であるため、AXLキナーゼ阻害剤および/またはEGFR阻害剤による処置に曝される癌患者を同定する方法に用いられ得る。一実施形態において、癌は、肉腫、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、および肺癌からなる群から選択される。一実施形態において、患者は、EGFR阻害剤による処置を経験しており、癌は、EGFR阻害剤に対して耐性である。
【0091】
検出方法は、対象から得られるサンプル中のAXLタンパク質の存在を検出する工程を含む。対象から得られるサンプルとして、対象から採取される物質(生体から分離されるサンプル)、具体的には、採取される組織、体液(好ましくは血液)、気管支肺胞洗浄液、生検を経験したサンプル、尿中の癌細胞、および喀痰サンプルのあらゆるタイプが用いられる。好ましい一実施形態において、対象の臓器(例えば肺)の罹患部位から採取される生検サンプルが用いられ得る。また、ホルマリンを用いてサンプルを固定して、パラフィン中に包埋してサンプルを安定化させることによって得られる標本(FFPE)を用いることも可能である。さらに、FFPEを薄いスライスに切ることによって得られるFFPEスライスが用いられてよい。FFPEスライスが用いられるならば、スライス中に存在するAXLタンパク質を直接検出することが可能である。
【0092】
AXLタンパク質を検出する工程は、当業者に知られている一方法を用いて行われ得る。例えば、検出は、イムノアッセイと酵素活性アッセイの組合せとしての方法によって実行され得、この中で、試験対象から得られるサンプル(例えば、試験対象から得られる癌組織または癌細胞)由来の可溶化溶液が調製されて、当該溶液中に含有されるAXLタンパク質が、本発明のAXL抗体と組み合わされる。さらに、検出は、免疫組織染色技術によって実行され得、この中で、必要に応じて前処理(例えば、パラフィンの除去)が施された、試験対象から得られたサンプル中に含有されるAXLタンパク質(例えばFFPEフラグメント)が、本発明のAXL抗体と組み合わされる。これらの技術の例として、酵素イムノアッセイ、二重抗体サンドイッチELISA、蛍光イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティング、および免疫組織染色等の技術が挙げられる。
【0093】
先の実施形態に加えて、以下の段落は、更なる抗体、抗原結合フラグメント、ならびにこれらによる方法および使用を記載する。
【0094】
本明細書中で、例えば第1段落に記載されるのは、AXLタンパク質、適切にはヒトAXLタンパク質に結合する抗体および当該抗体の抗原結合フラグメントである。特定の実施形態において、抗体および抗原結合フラグメントは、AXLタンパク質、適切にはヒトAXLタンパク質に特異的に結合する。そのような抗体は、Kabatスキーム、Chothiaスキーム、およびContactスキームによって同定される、表VIIに示される配列番号に示されるアミノ酸配列からなる相補性決定領域を含む。ゆえに、一実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L1、配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L2、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L3、配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H1、配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H2、および配列番号23に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H3を含む。代替的な実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L1、配列番号15に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L2、配列番号16に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L3、配列番号25に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H1、配列番号26に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H2、および配列番号27に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H3を含む。さらに別の代替的な実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号17に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L1、配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L2、配列番号19に示されるアミノ酸配列からなるCDR−L3、配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H1、配列番号30に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H2、および配列番号31に示されるアミノ酸配列からなるCDR−H3を含む。
【0095】
別の実施形態は、先の段落に従う抗体または抗原結合フラグメントであり、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号10に示されるアミノ酸からなる軽鎖可変領域を含む。
【0096】
本明細書中で、例えば第3段落に開示される別の実施形態は、全長抗体である。ゆえに、一実施形態は、先の段落のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントであり、抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、および配列番号9に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含む。
【0097】
また、本明細書中で、例えば第4段落に開示されるのは、先の段落に記載されるものとかなりの配列同一性を有するAXLタンパク質、適切にはヒトAXLタンパク質に結合する抗体である。ゆえに、この段落の一実施形態は、先のいずれかの段落の抗体または抗原結合フラグメントに対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%を有する抗体またはその抗原結合フラグメントである。更なる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、先のいずれかの段落に従う抗体または抗原結合フラグメントに対して95%以上の配列同一性を有する。更なる実施形態において、本段落における抗体または抗原結合フラグメントは、元の未修飾配列に対する結合親和性を実質的に変化させないアミノ酸変化を有する。特定の実施形態において、そのような抗体または抗原結合フラグメントは、ほぼ同じ結合親和性を有する。すなわち、この段落の抗体または抗原結合フラグメントは、AXLタンパク質に特異的に結合するが、先の段落のいずれか1つに従う元の抗体または抗原結合フラグメントの結合親和性と比較して、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、10%、11%、12%、13%、14%、または15%未満しか変化していない。更なる適切な実施形態が、先の段落のいずれか1つに従う元の抗体またはフラグメントに対して99%の配列同一性を有する抗体または抗原結合フラグメントであり、あらゆるアミノ酸変化が、どのCDR領域中の残基にもあたらず、ここでCDR領域は、Kabatナンバリングを用いて判断される。代替的な実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、先の段落における元の抗体またはフラグメントに対して99%の配列同一性を有し、あらゆるアミノ酸変化が、どのCDR領域中の残基にもあたらず、ここでCDR領域は、Chothiaナンバリングによって判断される。代替的な実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、先の段落における元の抗体またはフラグメントに対して99%の配列同一性を有し、あらゆるアミノ酸変化が、どのCDR領域中の残基にもあたらず、ここでCDR領域は、Contact法によって判断される。更なる実施形態において、先の段落の元の抗体または抗原結合フラグメントに対して99%の配列同一性を有する抗体または抗原結合フラグメントは、元の抗体または抗原結合フラグメントとほぼ同じ結合親和性を有する。
【0098】
本明細書中で、例えば第5段落に開示される別の実施形態は、先のいずれかの段落に従う抗体またはその抗原結合フラグメントであり、フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fv、またはscFvのフラグメントである。特定の実施形態において、この段落、または先のいずれかの段落の抗原結合フラグメントが、異種Fc領域または異種定常領域に融合されて、キメラ抗体が生じ得る。
【0099】
本明細書中で、例えば第6段落に開示される別の実施形態は、先のいずれかの段落に従う抗体または抗原結合フラグメントであり、抗体または抗原結合フラグメントは、完全ヒト抗体である。
【0100】
本明細書中で、例えば第7段落に開示される別の実施形態は、先のいずれかの段落に従う抗体または抗原結合フラグメントであり、抗体は、V77−2a37.1と呼ばれる抗体である。
【0101】
本明細書中で、例えば第8段落に開示される別の実施形態は、先の段落のいずれか1つに従う抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドである。一実施形態において、重鎖可変領域または重鎖は、1つのポリヌクレオチドによってコードされ、軽鎖可変領域または軽鎖は、第2のポリヌクレオチド上にコードされる。更なる実施形態において、1つまたは複数のポリヌクレオチドは、ベクターである。
【0102】
本明細書中で、例えば第9段落に開示される更なる実施形態において、宿主細胞が、先の段落の1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む。一実施形態において、宿主細胞は、段落1〜7のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントの重鎖可変領域または重鎖を含むあるベクター、および段落1〜7のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域または軽鎖を含む別のベクターを含む。
【0103】
本明細書で、例えば第10段落に開示される更なる実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、先の段落の宿主細胞によって産生される。更なる実施形態において、そのようにして産生された抗体または抗原結合フラグメントはさらに、当該技術分野において知られている1つまたは複数の技術によって単離され、イオン交換クロマトグラフィ、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィ、SDS PAGE、親和性クロマトグラフィ等が挙げられる。更なる実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、約90%以上の純度である。本明細書中で、例えば第10段落に開示される別の実施形態は、段落1〜7のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントとの結合について競合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。更なる実施形態において、抗体は、AXLタンパク質、適切にはヒトタンパク質でコーティングされたマルチウェルプレートを含むELISAアッセイにおいて、結合について競合する。
【0104】
別の実施形態は、段落1〜7または段落10のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントであり、抗体または抗原結合フラグメントは、組換えにより生産される。
【0105】
別の実施形態は、段落1〜7または段落10のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントであり、抗体または抗原結合フラグメントは、造影剤に結合されている。代替的な実施形態において、先のいずれかの段落に従う抗体または抗原結合フラグメントは、造影剤として用いられる。更なる実施形態において、先の段落のいずれか1つの抗体または抗原結合フラグメントは、インビボ造影剤として用いられる。代替的な実施形態において、先の段落のいずれか1つの抗体または抗原結合フラグメントは、エクスビボ造影剤として用いられ、適切には検出アッセイに用いられる;そのようなアッセイとして、免疫組織化学、免疫細胞化学、イムノアッセイ、ELISA(二重抗体サンドイッチELISAが挙げられる)、およびウェスタンブロッティングが挙げられるが、これらに限定されない。更なる実施形態は、先のいずれかの段落に従う抗体または抗原結合フラグメントであり、抗体または抗原結合フラグメントは、1つまたは複数の検出試薬に、直接的にまたは間接的に結合されている。アッセイは、定性的であっても定量的であってもよく、放射能、蛍光、化学発光が挙げられるがこれらに限定されない任意の数の検出試薬を使用してよく、そしてまた、前述の試薬のいずれかを用いた酵素結合検出を含んでもよい。
【0106】
異なる実施形態において、段落1〜7または段落10のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントは、癌、適切には肉腫、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、および肺癌の診断および/または処置および/または管理のために、1人以上の患者をスクリーニングするコンパニオン診断(CDx)として用いられる。
【0107】
異なる実施形態において、対象における1つまたは複数の腫瘍細胞におけるAXL発現を検出する方法が、段落1〜7または段落10のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントを、対象から得られる1つまたは複数の細胞のサンプルと接触させる工程を含む。更なる実施形態において、対象はヒトである。更なる実施形態において、ヒトは、癌の診断および/または処置を必要とする。更なる実施形態において、1つまたは複数の腫瘍細胞は、適切には、固形臓器腫瘍、適切には膵臓、卵巣、肺、および皮膚の腫瘍の細胞である。代替的な実施形態において、1つまたは複数の腫瘍細胞は、間葉起源の軟組織細胞である。別の実施形態において、1つまたは複数の細胞は、肉腫細胞、膵臓腫瘍細胞、黒色腫細胞、卵巣腫瘍細胞、および肺腫瘍細胞からなる群から選択される。更なる実施形態において、対象、適切にはヒトは、EGFR阻害剤で以前に処置された。更なる実施形態において、EGFR阻害剤で以前に処置された対象、適切にはヒトは、EGFR阻害剤に実質的に反応しない癌、すなわちEGFR耐性癌を有すると判断された。
【0108】
異なる実施形態において、AXLの発現が陽性である1つまたは複数の癌細胞を有する対象、適切にはヒトを同定する方法は、段落1〜7または段落10のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントを、対象、適切にはヒトから得られる1つまたは複数の細胞のサンプルと接触させることと、抗体または抗原結合フラグメントの、AXLへの結合を検出することとを含む。更なる実施形態において、対象、適切にはヒトは、EGFR阻害剤で以前に処置された。更なる実施形態において、EGFR阻害剤で以前に処置された対象、適切にはヒトは、EGFR耐性癌を患うと判断された。
【0109】
さらに異なる実施形態において、対象、適切にはヒトにおける癌を診断する方法は、段落1〜7または段落10のいずれか1つに従う抗体または抗原結合フラグメントを、対象、適切にはヒトから得られる1つまたは複数の細胞のサンプルと接触させることと、抗体または抗原結合フラグメントの、AXLへの結合を検出することと、正常者由来の1つまたは複数の細胞、すなわち非腫瘍性または非癌性の細胞のコントロールサンプルと比較した、AXLレベルの増大を判定することによって、癌を診断することとを含む。更なる実施形態において、対象、適切にはヒトは、EGFR阻害剤で以前に処置された。更なる実施形態において、EGFR阻害剤で以前に処置された対象、適切にはヒトは、EGFR耐性癌を患うと判断された。
【0110】
IV.)AXLを発現する癌の処置
制限された組織において正常に発現されるが、表Iに列挙されるような癌においても発現されるタンパク質としてのAXLの同定は、そのような癌の処置へのいくつかの治療的アプローチおよび診断的アプローチを開く。
【0111】
注目すべきことに、標的抗腫瘍療法は、標的タンパク質が正常な組織上で、さらには生命に不可欠な正常な臓器組織上で発現される場合ですら、有用であった。生命に不可欠な臓器とは、生命を維持するのに必須の臓器、例えば心臓または結腸である。生命に不可欠でない臓器は、取り出されて直ぐにその個体がなお生き残ることができる臓器である。生命に不可欠でない臓器の例として、卵巣、乳房、および前立腺がある。
【0112】
正常な組織における、さらには生命に不可欠な正常な組織における標的タンパク質の発現は、タンパク質が過剰発現される特定の腫瘍用の治療薬としてのタンパク質について、標的剤の有用性を損なわない。例えば、生命に不可欠な臓器における発現は、それ自体有害なものではない。また、無くても構わないとみなされる臓器、例えば前立腺および卵巣は、死亡率に影響を及ぼさずに除去され得る。最後に、一部の生命に不可欠な臓器は、免疫特権のために、正常な臓器の発現に影響を受けない。免疫特権臓器は、血液−臓器関門によって血液から保護されることで、免疫療法にアクセス可能でない臓器である。免疫特権臓器の例として、脳および精巣がある。
【0113】
したがって、AXLタンパク質の活性を阻害する治療アプローチは、AXLを発現する癌に苦しむ患者にとって有用である。当該治療アプローチは一般に、3つのクラスに分類される。第1のクラスは、腫瘍細胞の増殖に関係して、腫瘍細胞の増殖の阻害もしくは遅延、またはその死滅の誘導に至るようにAXL機能を調節するものである。第2のクラスは、AXLタンパク質の、その結合パートナとの、または他のタンパク質との結合を阻害する様々な方法を含む。第3のクラスは、AXL遺伝子の転写またはAXL mRNAの翻訳を阻害する様々な方法を含む。
【0114】
したがって、好ましくは腫瘍組織の免疫組織化学的評価、定量的AXL画像化、またはAXL発現の存在および程度を確実に示す他の技術を用いて、癌患者は、AXL発現の存在およびレベルについて評価され得る。この目的のために、腫瘍生検または外科標本の免疫組織化学的分析が好ましい。腫瘍組織の免疫組織化学的分析方法は、当該技術分野において周知である。
【0115】
V.)抗体ベース治療のための、標的としてのAXL
AXLは、抗体ベースの治療戦略にとって魅力的な標的である。細胞外分子および細胞内分子の双方を標的とするいくつかの抗体戦略が、当該技術分野において知られている(例えば、補体およびADCC媒介死、ならびにイントラボディの使用を参照)。AXLは、正常細胞に対して、対応する様々な系列の癌細胞によって発現されるので、免疫反応性組成物の、非標的臓器および非標的組織への結合によって、毒性、非特異的作用、および/または非標的作用が引き起こされることのない、優れた感受性を示す全身投与AXL免疫反応性組成物が調製される。AXLのドメインと特異的に反応する抗体は、好ましくは抗体薬物結合体(すなわちADC)として、AXL発現癌を全身的に処置するのに有用であり、結合体は、造影剤、毒素、または治療剤と共にある。
【0116】
当業者であれば、抗体が、
図1に示されるAXL配列の免疫原性領域等の免疫原性分子を特異的に標的とし、かつこれに結合するように用いられ得ることを理解する。また、当業者であれば、抗体を細胞傷害剤に結合させることがルーチンであることを理解する(例えば、Slevers et al.Blood 93:11 3678−3684(June 1,1999)参照)。例えば、細胞を、当該細胞によって発現される分子(例えば、AXL)に特異的な抗体に結合させることによって、細胞傷害剤および/または治療剤が当該細胞に直接送達される場合、細胞傷害剤は、その知られている生物効果(すなわち細胞毒性)を当該細胞に発揮することとなる。
【0117】
抗体−細胞傷害剤結合体を用いて細胞を殺すための多種多様な組成物および方法が、当該技術分野において知られている。癌との関連において、典型的な方法は、腫瘍を有する哺乳動物に、発現され、結合するのにアクセス可能であり、または細胞表面上に局在している抗原(例えば、AXL)に結合する標的剤(例えば、AXL MAb、好ましくはV77−2a37.1)に連結された、選択された細胞毒性剤および/または治療剤を含む結合体の生物学的に有効な量を投与することを伴う。典型的な実施形態は、AXLを発現する細胞に細胞毒性剤および/または治療剤を送達する方法であって、AXLエピトープに免疫特異的に結合する抗体に細胞毒性剤を結合させることと、細胞を抗体薬物結合体(ADC)に曝すこととを含む方法である。別の例示的な実施形態は、転移癌を患っていると疑われる個体を処置する方法であって、前記個体に、細胞傷害剤および/または治療剤に結合された抗体の治療的に有効な量を含む医薬組成物を非経口投与する工程を含む方法である。
【0118】
AXL抗体を用いた癌免疫療法が、他のタイプの癌の処置に首尾よく用いられている様々なアプローチに従ってなされ得、結腸癌(Arlen et al,1998,Crit.Rev.Immunol.18:133−138)、多発性骨髄腫(Ozaki et al,1997,Blood 90:3179−3186、Tsunenari et al,1997,Blood 90:2437−2444)、胃癌(Kasprzyk et al,1992,Cancer Res.52:2771−2776)、B細胞リンパ腫(Funakoshi et al,1996,J.Immunother.Emphasis Tumor Immunol.19:93−101)、白血病(Zhong et al,1996,Leuk.Res.20:581−589)、結腸直腸癌(Moun et al,1994,Cancer Res.54:6160−6166;Velders et al,1995,Cancer Res.55:4398−4403)、および乳癌(Shepard et al.,1991,J.Clin.Immunol.11:117−127)が挙げられるが、これらに限定されない。裸抗体の、毒素または放射性同位体への結合、例えば、Y91またはI131の、抗CD20抗体(例えば、それぞれZevalin(商標),IDEC Pharmaceuticals Corp.またはBexxar(商標),Coulter Pharmaceuticals)への結合を含む治療アプローチもあれば、抗体および他の治療剤、例えばハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)の、パクリタキセル(Genentech,Inc.)との共投与を含む治療アプローチもある。好ましい実施形態において、抗体は、造影剤と結合されることとなる。更に好ましい実施形態において、MAbは、コンパニオン診断薬として、疾患の処置用の別の化合物と併用されることとなる。
【0119】
AXL抗体療法は、癌の全ステージに有用であるが、抗体療法は、進行癌または転移癌において特に適切であり得る。本発明の抗体療法による処置は、1ラウンド以上の化学療法を受けた患者に適する。これ以外にも、本発明の抗体療法は、化学療法処置を受けていない患者について、化学療法レジメンまたは放射線レジメンと組み合わされる。加えて、抗体療法は、特に化学療法剤の毒性に十分な忍容性がない患者にとって、同時化学療法の投薬量を減らして用いることを可能にする。Fan et al.(Cancer Res.53:4637−4642,1993)、Prewett et al.(International J.of Onco.9:217−224,1996)、およびHancock et al.(Cancer Res.51:4575−4580,1991)は、種々の抗体の、化学療法剤との併用を記載している。
【0120】
表Iに示される癌を処置するAXLモノクローナル抗体として、腫瘍に対して強力な免疫反応を開始する抗体、または直接的に細胞傷害性である抗体が挙げられる。この点に関して、AXLモノクローナル抗体(MAb)は、補体媒介機構または抗体依存性細胞傷害(ADCC)機構のいずれかによって、腫瘍細胞溶解を誘発することができ、これらは双方とも、補体タンパク質上でのエフェクタ細胞Fc受容体部位との相互作用のために、免疫グロブリン分子の無傷Fc部分を必要とする。また、腫瘍増殖に及ぼす直接的な生物効果を発揮するAXL MAbは、AXLを発現する癌を処置するのに有用である。直接細胞傷害性MAbが作用する機構として:細胞増殖の阻害、細胞分化の調節、腫瘍血管新生因子プロファイルの調節、およびアポトーシスの誘導が挙げられる。特定のAXL MAbが抗腫瘍効果を発揮する機構は、細胞死を評価する任意の数のインビトロアッセイ、例えば、当該技術分野において一般に知られている、ADCC、補体媒介性細胞溶解等を用いて、評価される。
【0121】
したがって、本発明の治療方法に用いられる好ましいモノクローナル抗体は、完全ヒト抗体であり、かつ標的AXL抗原に特異的に、高い親和性で結合する抗体である。
【0122】
VI.)AXL ADCカクテル
本発明の治療方法は、単一のAXL ADC、および異なるMAb(すなわち、AXL MAb、または別のタンパク質に結合するMAb)の組合せまたはカクテルの投与を意図する。そのようなMAbカクテルは、異なるエピトープを標的とするMAbを含有し、異なるエフェクタ機構を利用し、または直接細胞毒性MAbを、免疫エフェクタ機能に依存するMAbと組み合わせるので、ある種の利点を有し得る。そのようなMAbは組み合わされて、相乗的な治療効果を示し得る。また、AXL MAbは、様々な化学療法剤および生物剤、アンドロゲン遮断薬、免疫調節剤(例えば、IL−2、GM−CSF)、外科手術、または放射線が挙げられるが、これらに限定されない、他の治療法と同時に施され得る。好ましい実施形態において、AXL MAbは、結合形態で投与される。
【0123】
AXL ADC製剤は、あらゆる経路を介して投与されて、抗体を腫瘍細胞に送達することができる。投与経路として、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内等が挙げられるが、これらに限定されない。処置は、一般に、許容可能な投与経路、例えば、静脈内注射(TV)を介したAXL ADC調製物の反復投与を含み、典型的には0.1、.2、.3、.4、.5、.6、.7、.8、.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25mg/体重kgが挙げられるが、これらに限定されない範囲内の用量である。一般に、1週あたり10〜1000mg MAbの範囲の用量が効果的であり、十分な忍容性がある。
【0124】
転移性乳癌の処置におけるハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)での臨床経験に基づいて、MAb調製物の約4mg/患者体重kg IVの初期負荷用量に続く、約2mg/kg IVの毎週用量が、許容可能な投薬レジメンを表す。好ましくは、初期負荷用量は、90分以上の注入として投与される。初期用量に十分な忍容性があるならば、定期的な維持用量が、30分以上の注入として投与される。当業者によって理解されるように、特定のケースにおいて、様々な要因が、理想的な用量レジメンに影響を及ぼす可能性がある。そのような要因として、例えば、用いられるMAbの結合親和性および半減期、患者におけるAXL発現の程度、循環するshed AXL抗原の程度、所望される定常状態抗体濃度レベル、処置の頻度、および本発明の処置方法と組み合わせて用いられる化学療法剤または他の薬剤の影響、ならびに特定の患者の健康状態が挙げられる。
【0125】
場合によっては、患者は、最も有効な投薬レジメン等の決定の一助とするために、所与のサンプル中のAXLのレベル(例えば、循環AXL抗原および/またはAXL発現細胞のレベル)について評価されるべきである。そのような評価はまた、治療の全体を通してのモニタリング目的のために用いられ、他のパラメータ(例えば、膀胱癌治療における尿細胞学および/もしくは免疫細胞レベル、または類推による、前立腺癌治療における血清PSAレベル)の評価と組み合わせた治療の成功を評価するのに有用である。
【0126】
本発明の目的は、AXL ADCを提供することであり、これは、AXLを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害し、または遅延させる。本発明の更なる目的は、そのようなAXL ADCを用いて、特にそのようなAXL ADCを、他の薬物または免疫学的に活性な処置と併用して、血管新生機能および他の生物学的機能を阻害することによって、哺乳動物、好ましくはヒトにおける腫瘍増殖を低下させる方法を提供することである。
【0127】
VII.)併用療法
一実施形態において、ヒト腫瘍が挙げられる腫瘍が、化学療法剤もしくは放射線またはそれらの組合せと併せて、AXL ADCで処置される場合、相乗効果がある。換言すれば、AXL ADCによる腫瘍増殖の阻害は、化学療法剤もしくは放射線、またはそれらの組合せと組み合わされた場合、予想されるよりも増強される。相乗効果は、例えば、AXL ADCのみの処置、またはAXL ADCおよび化学療法剤または放射線による処置の相加効果から予想されるよりも、併用処置による腫瘍増殖の阻害が大きいことによって、示され得る。好ましくは、相乗効果は、AXL ADCによる処置から、またはAXL ADCと化学療法剤もしくは放射線の付加的な組合せを用いた処置から寛解が予想されない場合での癌の寛解によって、示される。
【0128】
AXL ADC、および化学療法もしくは放射線、またはそれらの双方の組合せを用いて、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法は、化学療法または放射線療法の開始前、開始中、または開始後に、そしてそれらのあらゆる組合せで(すなわち、化学療法および/または放射線療法の開始前と開始中、開始前と開始後、開始中と開始後、または開始前と開始中と開始後)、AXL ADCを投与することを含む。例えば、AXL ADCは、典型的には、放射線療法および/または化学療法を開始する前の、1〜60日、好ましくは3〜40日、より好ましくは5〜12日の間に、投与される。しかしながら、処置プロトコルおよび特定の患者のニーズに応じて、当該方法は、最も効果的な処置を提供し、そして最終的に患者の寿命を延ばすこととなるやり方で実行される。
【0129】
化学療法剤の投与は、非経口経路および経腸経路による全身的なものが挙げられる、様々な方法で達成され得る。一実施形態において、AXL ADCおよび化学療法剤は、別個の分子として投与される。化学療法剤または化学療法の特定の例として、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(窒素マスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、ダカルバジン、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、インターフェロンアルファ、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、ゲムシタビン、クロラムブシル、タキソール、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0130】
AXL ADCと併用される放射線の源は、処置されることになる患者の体外にあっても体内にあってもよい。源が患者の体外にある場合、治療は体外照射療法(EBRT)として知られている。放射線源が患者の体内にある場合、その処置は近接照射療法(BT)と呼ばれる。
【0131】
先に記載される治療レジメンはさらに、追加の癌処置剤および/またはレジメン、例えば追加の化学療法、癌ワクチン、シグナル伝達阻害剤、異常な細胞増殖もしくは癌の処置に有用な剤、IGF−1Rに結合することによって腫瘍増殖を阻害する抗体(例えば、国際公開第2005/092380号パンフレット(Pfizer)に記載されるような抗CTLA−4抗体)または他のリガンド、およびサイトカインと組み合わされてよい。
【0132】
哺乳動物が更なる化学療法に曝される場合、先に記載される化学療法剤が用いられてよい。加えて、増殖因子阻害剤、生物反応改変剤、抗ホルモン療法、選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)、血管新生阻害剤、および抗アンドロゲンが用いられてよい。例えば、抗ホルモン、例えばNolvadex(タモキシフェン)等の抗エストロゲン、またはCasodex(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)プロピオンアニリド)等の抗アンドロゲンが用いられてよい。
【0133】
先の治療アプローチは、多種多様な外科手術レジメン、化学療法レジメン、または放射線療法レジメンのいずれか1つと組み合わされ得る。本発明の治療アプローチは、化学療法(または他の療法)の低い投薬量および/またはより少ない投与頻度での使用を可能にし、全ての患者にとって、特に化学療法剤の毒性に十分な忍容性がない患者にとって、有利である。
【0134】
VIII.)キット/製造品
本明細書中に記載される実験室、予後、予防、診断、および治療の用途に用いるためのキットが、本発明の範囲内である。そのようなキットは、バイアル、チューブ等の1つまたは複数の容器を受け入れるように区画されているキャリア、パッケージ、または容器を、本明細書中に記載される使用等の使用についての説明書を含むラベルまたは挿入物と共に含んでよく、各容器は、当該方法において用いられることになる別個の要素の1つを含む。例えば、容器は、検出可能に標識されている、または検出可能に標識され得る抗体を含んでよい。キットは、薬物単位を含む容器を含んでよい。
【0135】
本発明のキットは、典型的に、先に記載される容器、およびこれと関連する、商業的観点およびユーザの観点から所望される、バッファ、希釈剤、フィルタ、針、シリンジなどの材料を含む1つまたは複数の他の容器;内容物および/または使用説明書を記載する、キャリア、パッケージ、容器、バイアル、および/またはチューブのラベル、ならびに使用説明書付きパッケージ挿入物を含むこととなる。
【0136】
組成物が、特定の治療、または非治療的用途、例えば、予後、予防、診断、または実験の用途に用いられることを示すためのラベルが、容器上に、または容器と共に存在してよく、そしてまた、本明細書中に記載される使用等の、インビボまたはインビトロでの使用についての手引きを示してよい。また、手引きおよび/またはその他の情報が、キットと共に、またはキット上に含まれる挿入物またはラベル上に含められてもよい。ラベルは、コンテナ上にあってもよいし、コンテナに付随してもよい。ラベルを形成する文字、数字、または他の記号が容器自体に成形またはエッチングされる場合、ラベルは容器上に存在してよい;ラベルは、コンテナを保持もするレセプタクルまたはキャリア内に、例えばパッケージ挿入物として存在する場合に、コンテナに付随してよい。ラベルは、組成物が、表Iに示される組織の癌等の症状の診断、処置、予防、または予後に用いられることを示してよい。
【0137】
用語「キット」および「製造品」は、同義語として用いられ得る。
【0138】
本発明の別の実施形態において、組成物、例えば抗体、または抗体薬物結合体(ADC)、例えば、表Iに示されるような組織の癌の診断、予後、予防、および/または処置に有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、典型的には、少なくとも1つの容器および少なくとも1つのラベルを含む。適切な容器として、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、様々な材料、例えばガラス、金属、またはプラスチックから形成されてよい。容器は、アミノ酸配列、小分子、核酸配列、細胞集団、および/または抗体を保持することができる。別の実施形態において、容器は、細胞および組織におけるAXLのタンパク質発現を評価するのに使用される、または関連の実験、予後、診断、予防、および治療の目的のための抗体、その結合フラグメント、または特異的な結合タンパク質を含む;そのような使用の指示および/または手引きは、そのような容器上に、または容器と共に含められてよく、これらの目的のために用いられる試薬および他の組成物、またはツールも同様である。
【0139】
容器は、代わりに、症状の処置、診断、予後、または予防に有効な組成物を保持し得、そして滅菌アクセスポートを有してよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿孔可能なストッパを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の活性剤は、AXLに特異的に結合することができる抗体であってもよいし、AXLに特異的に結合する抗体薬物結合体であってもよい。
【0140】
製造品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、および/またはデキストロース溶液等の医薬的に許容可能なバッファを含む第2の容器をさらに備えてよい。これはさらに、他のバッファ、希釈剤、フィルタ、スターラ、針、シリンジ、ならびに/または使用の指示および/もしくは説明書付きパッケージ挿入物が挙げられる、商業的観点およびユーザの観点から所望される他の材料を含んでよい。
【実施例】
【0141】
本発明の様々な態様が、以下のいくつかの実施例によってさらに説明かつ例示されるが、いずれも、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0142】
実施例1
AXL抗原
AXL(それ以外ではTyro7、UFO、およびARK(ならびにGenBank登録番号:NM_021913)として知られている)は、ヒトtrk、eph、eck、およびrosタンパク質、ならびにインスリン様増殖因子1受容体とのアミノ酸類似度が高い受容体チロシンキナーゼをコードするタンパク質である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、Rse/Tyro3受容体およびMER受容体を含む膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(TRK)ファミリに属する。このファミリは、免疫グロブリン様フィブロネクチンIII様ドメインの特有の細胞外組成物によって特徴付けられる。これらの構造的所見は、Axlファミリメンバが、細胞接着および細胞内シグナル伝達の双方に関与している可能性があることを示唆している。Sainaghi,et al,J.Cell.Phys.204:36−44(2005)参照。また、O’Bryan,et al,J.Bio.Chem.,Vol.270 no.2,pp.551−557(1995)参照。また、Axlは、複数の癌、例えば肺癌、乳癌、卵巣癌、甲状腺癌、胃癌、腎臓癌、結腸癌、および骨髄性白血病において発現されることが指摘されてきた。更なる参考文献について、Shieh,et al,Neoplasia,vol 7,No.12 pp 1058−1064(Dec.2005);Berclaz,et al.Annals of Oncology,vol.12 pp.819−824(2001);Sun,et al.Oncology 2004;66:450−457(2004);Ito,et al,Thyroid,vol.9:No.6,pp.563−567(1999);Wu,et al,Anticancer Res.,vol.22,pp.1071−1078(2002);Chung,et al.DNA and Cell Bio.,Vol.22:No.8,pp.533−540(2003);Craven,et al,Int.J.Cancer,vol.60 pp.791−797(1995)。AXL cDNAは、4,743bpの長さであり、894個のアミノ酸ORFをコードする(
図1参照)。AXL抗原の例示的な実施形態について、
図1参照。
【0143】
実施例2
AXLモノクローナル抗体(MAb)の作出
一実施形態において、AXLに対する診断用モノクローナル抗体(「mAb」)は、AXLに特異的なエピトープと反応する抗体を含み、これは、患者の生検から調製した、凍結し、またはパラフィン包埋し、ホルマリン固定した組織切片中の細胞上に発現されたAXLに結合するであろう。そのようなMAbの作出用の免疫原として、AXLタンパク質配列をコードまたは含有するように設計された免疫原が挙げられる。免疫原として、ペプチド、組換えタンパク質、AXLを内在的に発現する細胞、またはAXLを発現するように操作された細胞(293T−AXL等)が挙げられる。
【0144】
Veloclmmune(登録商標)マウスまたはbalb/cマウスのいずれかを用いて、AXLに対するMAbを作出した。AXLを発現する組換え293T細胞でvelocimmuneマウスを免疫化した後に、V77−2a37.1と命名したmAbが生じた。AXL MAb、V77−2a37.1は、患者の生検から調製した、凍結し、またはパラフィン包埋し、ホルマリン固定した組織切片中のAXL発現細胞(組換えおよび内因性)およびAXL発現腫瘍細胞に、特異的に結合する。
【0145】
Trizol試薬(Life Technologies,Gibco BRL)により各ハイブリドーマ細胞からmRNAを単離した後、AXL MAb V77−2a37.1のDNAコード配列を決定した。
【0146】
以下のプロトコルを用いて、抗AXL V77−2a37.1の重鎖および軽鎖の可変核酸配列を、ハイブリドーマ細胞から配列決定した。V77−2a37.1分泌ハイブリドーマ細胞を、Trizol試薬(Life Technologies,Gibco BRL)で溶解した。全RNAを精製して、定量した。Gibco−BRL Superscript Preamplification系を用いて、オリゴ(dT)12−18プライミングにより、全RNAから第1鎖cDNAを作出した。ヒト免疫グロブリン可変重鎖プライマー、およびヒト免疫グロブリン可変軽鎖プライマーを用いて、第1鎖cDNAを増幅した。PCR産物を配列決定して、可変重鎖領域および可変軽鎖領域を判断した。
【0147】
完全長の重鎖および軽鎖の核酸配列およびアミノ酸配列を、
図2Aおよび
図2B、ならびに
図3Aおよび
図3Bに列挙する。V77−2a37.1MAbの、ヒトIg生殖系列に対するアラインメントを、
図4A〜
図4Bに示す。
【0148】
実施例3
AXL ADCを用いた、ヒト癌腫の処置および診断についてのヒト臨床試験
AXLに特異的に結合するAXL ADCを、本発明に従って用いて、特定の腫瘍、好ましくは表1に列挙する腫瘍の処置に用いる。これらの徴候のそれぞれに関して、2つの臨床的アプローチを首尾よく遂行する。
【0149】
I.) 補助療法:補助療法において、AXL ADCを、化学療法剤もしくは抗腫瘍剤、および/または放射線療法、あるいはそれらの組合せと組み合わせて、患者を処置する。標準的なプロトコル下で、標準的な1次治療および2次治療にAXL ADCを加えることによって、表Iに列挙するような原発性癌標的を処置する。プロトコル設計は、以下の実施例によって評価する、原発性病変または転移性病変の腫瘍塊の縮小、無増悪生存、全生存の延長、患者の健康の向上、疾患の安定化、ならびに標準的な化学療法および他の生物剤の通常の用量を引き下げる能力が挙げられるが、これらに限定されない有効性を扱う。この投薬量の引下げは、化学療法剤または生物剤の用量関連毒性を引き下げることによって、追加療法および/または長期療法を可能にする。AXL ADCを、化学療法剤または抗腫瘍剤と組み合わせて、いくつかの補助的臨床試験で利用する。
【0150】
II.) 単剤療法:腫瘍の単剤療法におけるAXL ADCの使用に関して、AXL ADCを、化学療法剤も抗腫瘍剤もなしで患者に投与する。一実施形態において、広範囲の転移性疾患に苦しむ末期癌患者において、単剤療法を臨床的に行う。プロトコル設計は、以下の実施例によって評価する、原発性病変または転移性病変の腫瘍塊の縮小、無増悪生存、全生存の延長、患者の健康の向上、疾患の安定化、ならびに標準的な化学療法および他の生物剤の通常の用量を引き下げる能力が挙げられるが、これらに限定されない有効性を扱う。
【0151】
投薬量
投薬レジメンを調節して、最適な所望の反応を実現することができる。例えば、単回のボーラス投与をしてもよいし、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよいし、治療状況の示される緊急性に比例させて用量を増減させてもよい。投与を容易にし、かつ投薬量を均一にするために、非経口組成物を投薬単位形態で処方することが特に有利である。本明細書中で用いる投薬単位形態とは、処置することになる哺乳動物対象のための単位投薬量として適した、物理的に別個の単位を指す;各単位は、必要とされる医薬キャリアと協働して所望の治療効果をもたらすように算出した所定量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態についての仕様は、(a)抗体および/またはADCの特有の特徴、ならびに達成されることになる特定の治療効果または予防効果、ならびに(b)調剤技術において固有の制限、例えば処置用の活性化合物の、個体における感受性によって決定され、かつこれらに直接依存する。
【0152】
本発明に従う組合せで投与するAXL ADCの治療的に有効な量についての例示的な非限定的範囲は、約0.5〜約10mg/kg、約1〜約5mg/kg、少なくとも1mg/kg、少なくとも2mg/kg、少なくとも3mg/kg、または少なくとも4mg/kgである。他の例示的な非限定的範囲は、例えば約0.5〜約5mg/kg、例えば約0.8〜約5mg/kg、または例えば約1〜約7.5mg/kgである。本発明の高用量の実施形態は、10mg/kgを超える投薬量に関係する。投薬量の値は、緩和すべき症状のタイプおよび重症度によって変わり得、単回用量または複数回用量を含み得ることに留意すべきである。特定のあらゆる対象について、個々のニーズ、および組成物の投与を管理または監督する者の専門的判断に従って、特定の投薬レジメンを経時的に調整すべきであること、そして本明細書中に示す投薬量範囲は、例示に過ぎず、特許請求する組成物の範囲または実施を限定することを意図しないことがさらに理解されるべきである。
【0153】
臨床開発計画(CDP)
CDPを、補助療法または単剤療法と併せたAXL ADCの処置に従わせて開発する。治験は、最初に、安全性を実証し、その後、反復用量の有効性を確認する。治験は、標準的な化学療法を、標準的な治療法プラスAXL ADCと比較する非盲検である。認識されるように、患者の登録に関連して利用することができる非限定的な一基準が、生検によって判断した当該患者の腫瘍におけるAXL発現レベルである。
【0154】
あらゆるタンパク質または抗体の注入ベースの治療薬と同様に、安全性の問題は主に、(i)サイトカイン放出症候群、すなわち低血圧、発熱、震え、悪寒;(ii)その物質に対する免疫原性反応の発現(すなわち、抗体治療剤に対する、患者によるヒト抗体の発現、またはHAMA反応);および(iii)AXLを発現する正常細胞に対する毒性に関係する。標準的な試験およびフォローアップを利用して、これらの安全上の懸念のそれぞれを監視することができる。AXL ADCは、ヒト投与直後に安全であることが見出されている。
【0155】
実施例4
IHCによる、癌患者標本におけるAXLタンパク質の検出
免疫組織化学によるAXLタンパク質の発現を、肉腫、膵臓癌、黒色腫、卵巣癌、および肺癌のサンプル由来の腫瘍標本において試験した。簡潔には、ホルマリン固定したパラフィンワックス包埋組織を4ミクロン切片に切って、ガラススライド上に載せた。切片を脱ワックスして、再水和させて、BOND−MAX自動化IHC染色系(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)内で、Novocastra Bond Epitope Retrieval Solution 2(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)と 100℃にて30分間処理してから、室温にて12分間放置した。次いで、切片を、V77−2a37.1と表したモノクローナルマウス抗AXL抗体またはアイソタイプコントロールとインキュベートした。その後、切片を、Novocastra Bond Polymer Refine Detection Systemで処理した。これは、ポストプライマリウサギ抗マウスIgG試薬中でのインキュベーションに続く、ポリマー抗ウサギポリHRP−IgG試薬(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)とのインキュベーションからなる。次いで、切片を3%過酸化水素溶液で処理して、内因性ペルオキシダーゼ活性を不活化した。DAB精製キット(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)を用いて、クロモゲン基質の可視化を進め、ヘマトキシリンを用いて核を染色し、そしてAperio ePathology Scanscope撮像系(Leica Biosystems,Vista,CA)上でスライドをスキャンして分析した。AXL特異的V77−2a37.1抗体を用いて、患者標本において、ブラウン染色によって示される特異的染色を検出した。(
図5A、
図5C、
図5E、
図5G、および
図5I参照)。対照的に、アイソタイプコントロール抗体は、腫瘍標本を染色しなかった。(
図5B、
図5D、
図5F、
図5H、および
図5J参照)。
【0156】
結果は、患者の肉腫(
図5A)、膵臓癌(
図5C)、黒色腫(
図5E)、卵巣癌(
図5G)、および肺癌(
図5I)の組織の腫瘍細胞におけるAXLの発現を示している。これらの結果は、AXLが、ヒト癌において発現されていること、そしてこの抗原に向けられる抗体が、診断および予後の目的に有用であることを示している。(
図5A〜
図5J)。
【0157】
実施例5
V77−2a37.1 MAbのエピトープマッピング
2つの抗体のエピトープが重なっており、または互いに近接しているならば、当該エピトープ同士の近接によって決定される程度に、抗体は互いを阻止すると予想されることが、当該技術分野において知られている。一抗体を標識して、モル過剰の非標識抗体でチャレンジしてから、固定化した標的タンパク質と反応させる抗体競合実験は、2つの抗体が互いに近接して位置するエピトープに結合するかを判定する容易な方法である。
【0158】
AXLに結合することで、重なるエピトープに結合する別のMAbを、本発明の抗AXL抗体(すなわち、V77−2a37.1)が妨害するかを判定するために、抗体競合実験を行った。
【0159】
この実験では、試験抗体を最初にビオチン化した。次いで、ビオチン化抗体を、AXL結合アッセイにおいて、非標識抗体(全て、ビオチン化抗体に対して50倍のモル過剰にて存在)のパネルでチャレンジした。非標識抗体パネルは、2つの試験抗体の非標識バージョン、Cell Signaling由来の、AXLに向けられる第3の抗体、および適切なアイソタイプコントロールを含んだ。ビオチン化抗体と未標識抗体との混合物を、ELISAプレート上に固定化した組換えヒトAXLと反応させた、2時間のインキュベーション時間の後に、非結合抗体を洗浄によって除去して、固定化したビオチンを、ストレプトアビジン−HRPに続くTMB基質溶液で検出した。
【0160】
v77−2a37.1の非標識バージョンは、それ自体のビオチン化バージョンを阻止すると予想された。他のAXL MAbの非標識バージョンおよびビオチン化バージョンについても同じ結果が予想された。しかしながら、v77−2a37.1の非標識バージョンが、他のAXL MAbのビオチン化バージョンを阻止することが見出されたならば、またはその逆があったならば、AXLタンパク質上のエピトープが近接していることに起因して、当該抗体は互いに競合したであろうという結論となる。Cell Signaling抗体で得た結果は、この抗体のエピトープが、v77−2a37.1のエピトープと遠く離れていたかまたは近接していたかを示すであろう。
【0161】
材料および方法
【0162】
この実験で用いたタンパク質および抗体を、表IVに要約する。
【0163】
抗体のビオチン化:20倍のモル比のSulfo−NHS−LC−Biotin(Thermo−Fisher,Waltham,MA)を用いて、室温にて2時間、AXL抗体v77−2a37.1およびM77−297b81.1.1のアリコートをビオチン化した。組み込まれていないビオチンを、PBSに対する徹底的な透析によって除去した。
【0164】
組換えAXLの固定化:組換えヒトAxlタグ5タンパク質を、最初に、炭酸塩バッファ中0.5μg/mLに希釈した。希釈したタンパク質溶液のアリコート(50μL)を、96ウェルNunc Maxisorp ELISAプレート(Thermo−Fisher,Waltham,MA)のウェル中にピペットで入れた。プレートを覆って、室温にて一晩インキュベートして、タンパク質を固定化した。次いで、プレートを吸引して、1洗浄サイクルにつきウェルあたり200μLのPBST(PBSプラス0.05%Tween−20)で3回、洗浄した。プレートを、200μLのブロッキング溶液(PBSプラス3%脱脂粉乳)で、室温にて1時間、ブロッキングした。
【0165】
抗体競合:非標識抗体を、PBSTプラス3%脱脂粉乳中100μg/mLの濃度に希釈した一方、2つのビオチン化抗体を、PBSTプラス3%脱脂粉乳中2μg/mLの濃度に希釈した。各非標識抗体のアリコート(25μL)に続いて、ビオチン化抗体の25μLアリコートを、コーティングしたプレートの指定されたウェル中にピペットで入れた。溶液を十分に混合して、室温にて2時間、プレート中でインキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄した。結合したビオチン化抗体を、50μLストレプトアビジン−HRP(Southern Biotech,Birmingham,AL)で検出した(3%脱脂粉乳入りPBST中に1〜5000倍希釈;室温にて1時間)。次いで、プレートを3回洗浄して、70μLのTMB(室温にて20分)に続く50μL停止溶液により、結合したHRPを検出した。次いで、プレートの光学密度を、650nmにて測定した。
【0166】
結果:結果は、あらゆる非標識抗体の不在下で、V77−2a37.1およびM77−297b81.1.1双方のMAbのビオチン化バージョンが、AXLコーティングしたELISAプレートでロバストなシグナルを与えたことを示す。この結果は、プレートが十分にコーティングされていること、そしてビオチン化反応が良好な結果をもたらすことを示した。
【0167】
さらに、この実験に含まれるアイソタイプコントロール抗体、cmlys−lc3.1は、2つのビオチン化抗体がAXLに結合する能力を妨害せず、このことは、アイソタイプコントロールが、2つのビオチン化抗体のいずれとも競合しないことを示している。
【0168】
予想されるように、ビオチン化バージョンの50倍のモル過剰にて存在する抗体V77−2a37.1の非標識バージョンは、固定化AXLへの結合について、それ自体のビオチン化バージョンと競合する。同様に、M77−297b81.1.1の非標識バージョンは、それ自体のビオチン化バージョンと競合する。しかしながら、V77−2a37.1のビオチン化バージョンが、M77−297b81.1.1の50倍のモル過剰で提示される場合、競合は観察されず、このことは、これらの2つの抗体のエピトープが、実際には異なることを示している。この観察を支持して、M77−297b81.1.1のビオチン化バージョンが、V77−2a37.1の50倍のモル過剰で提示される場合、競合は観察されない(表Vおよび表VI)。
【0169】
加えて、この実験はまた、Cell Signalingウサギモノクローナル抗AXL抗体がビオチン化V77−2a37.1およびビオチン化M77−297b81.1.1MAbと競合する能力を試験した。示された結果は、Cell Signalingウサギモノクローナル抗AXL抗体が、ビオチン化V77−2a37.1の、AXLへの結合能力に及ぼす影響が小さく(3.3%の競合)、そしてビオチン化M77−297b81.1.1の、AXLへの結合能力に及ぼす影響が、同様に小さい(1.5%)ことを示している。これらの結果は、Cell Signalingウサギモノクローナル抗AXL抗体のエピトープと、2つの試験抗体との間の重なり度合の潜在性が最小であることを示唆している(表VI)。
【0170】
実施例6
細胞ブロックサンプルを用いたAXL検出用の免疫組織化学試薬としてのC89E7 MAbおよびAF154 MAbの評価
この実験では、ヒト肺癌細胞株NCI−H292およびHCC827(American Type Culture Collectionから購入)、ならびにNCI−H727(European Collection of Cell Cultureから購入)の3つの細胞ブロックサンプルを、10%ウシ胎児血清(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を補充したRPMI1640培地(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)中で培養して、遠心分離して洗浄した後に、細胞を10%リン酸塩緩衝ホルマリン中で一晩固定した。次いで、細胞ペレットを、O.C.T.コンパウンド(サクラファインテックジャパン株式会社)と混合して、細胞ブロックを得、これをその後、パラフィン包埋した。
【0171】
細胞ブロックを切って、ガラススライド上に載せた後、切片におけるAXL発現を、RNA ISHキット(提供されるユーザーマニュアルに従って、QuantiGene ViewRNA TYPE1 Probe Set Human AXL(Affymetrix,Santa Clara,CA)による、QuantiGene ViewRNA ISH tissue 1−Plex Assayキット(Affymetrix,Santa Clara,CA)およびQuantiGene ViewRNA Chromogenic Signal Ampキット(Affymetrix,Santa Clara,CA))を用いたRNAインサイチュハイブリダイゼーション(RNA ISH)によって、確認した。アルカリホスファターゼ(AP)で標識したAXL mRNAを視覚化するために、キットに含まれるプロトコルに従って、WarpRed Chromogen Kit(Biocare Medical,Concord,CA)を色原体として用いた。次いで、スライドをヘマトキシリンで対比染色して、空気乾燥させて、キシレン中でクリアにして、永久マウント媒体Entellan new試薬(Merck,Darmstadt、ドイツ)と載せた。AXL発現の特異的シグナルが、NCI−H292細胞において観察された(
図6A(i))一方、HCC827(
図6A(ii))およびNCI−H727細胞(
図6A(iii))においてシグナルは実質的に観察されず、このことは、NCI−H292細胞株がAXL陽性であるが、HCC827細胞株およびNCI−H727細胞株が双方ともAXL陰性であったことを示す。
【0172】
次に、2つの抗AXL抗体、Cell Signalingウサギモノクローナル抗体[C89E7](Cell Signaling Technologies,Danvers,MA)、およびR&Dヤギポリクローナル抗体[AF154](R&D systems,Minneapolis,MN)を、細胞ブロックサンプルを用いて、免疫組織化学(IHC)によって評価した。簡潔には、細胞ブロックの切片を脱ワックスして、再水和させて、オートクレーブ(121℃で10分間)またはマイクロ波(100℃で15分間)によって抗原回収を実行してから、内因性ペルオキシダーゼを、3%H
2O
2−メタノールで不活化した。次いで、スライドを、1%BSAを含有するTBSでブロッキングして、同バッファ中1:100希釈抗体とインキュベートした。TBST(TBSプラス0.05%Tween20)で3回洗浄した後、第2の抗体、3,3’−ジアミノベンジジン、および表VIIIに列挙するテトラヒドロクロライド(DAB)試薬で、スライド中のAXLを検出して視覚化してから、マイヤーヘマトキシリンで対比染色した。IHC実験で用いた詳細な条件を、表VIIIに記載している。これらの3つの細胞ブロックについてのAXLのIHC染色の結果を、
図6B(i)〜
図6B(vi)に示した。NCI−H292細胞における抗AXLモノクローナル抗体[C89E7]によるAXLについてのIHCは、強い染色を示した(
図6B(i))が、HCC827細胞(
図6B(ii))およびNCI−H727細胞(
図6B(iii))では、染色は実質的に観察されなかった。これは、RNA ISH実験によって得られたAXL発現の観察結果と一致した。一方、ぎりぎりの、または弱いIHC染色シグナルが、抗AXLポリクローナル抗体[AF154]によって、HCC827細胞(
図6B(v))およびNCI−H727細胞(
図6B(vi))において観察された。これは、RNA ISHの結果と一致しなかった。これらの観察は、抗AXLモノクローナル抗体[C89E7]が、抗AXLポリクローナル抗体[AF154]よりも、IHC試薬として適しているようであることを示唆した。なぜなら、抗AXLモノクローナル抗体[C89E7]は、これらの3つの細胞ブロックを用いたこれらの実験において観察されるような非特異的シグナルを示さなかったからである。
【0173】
実施例7
抗AXL V77−2a37.1MAb、M77−297b81.1.1MAb、およびC89E7MAbを用いた、選択されたAXL RNA(+)(−)FFPEサンプルにおける比較免疫組織化学
抗AXL抗体V77−2a37.1、M77−297b81.1.1(ATCC名称PT A−122092)、およびAXL(C89E7)による非特異的IHC染色を、乳房(
図7A〜
図7D)、肝細胞(
図7E〜
図7H)、および結腸(
図7I〜
図7L)の癌腫サンプル由来のAXL陰性腫瘍標本(qPCRによって測定した)において、評価した。
【0174】
簡潔には、ホルマリン固定したパラフィンワックス包埋組織を4ミクロン切片に切って、ガラススライド上に載せた。切片を脱ワックスして、再水和させて、BOND−MAX自動化IHC染色系(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)内で、Novocastra Bond Epitope Retrieval Solution 2(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)と 100℃にて30分間、続いて室温にて12分間、処理した。次いで、切片を、モノクローナル抗AXL抗体V77−2a37.1、M77−297b81.1、モノクローナルウサギ抗AXL抗体Axl(C89E7)(Cell Signaling Technology,Danvers,MA)、またはアイソタイプコントロールとインキュベートした。その後、切片を、Novocastra Bond Polymer Refine Detection Systemで処理した。これは、ポストプライマリウサギ抗マウスIgG試薬中でのインキュベーションに続く、ポリマー抗ウサギポリHRP−IgG試薬(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)とのインキュベーションからなる。次いで、切片を3%過酸化水素溶液で処理して、内因性ペルオキシダーゼ活性を不活化した。DAB精製キット(Leica Biosystems,Buffalo Grove,IL)を用いて、クロモゲン基質の可視化を進め、ヘマトキシリンを用いて核を染色し、そしてAperio ePathology Scanscope撮像系(Leica Biosystems,Vista,CA)上でスライドをスキャンして分析した。
【0175】
結果は、AXL特異的V77−2a37.1抗体(
図7A、
図7E、
図7I)およびM77−297b81.1.1抗体(
図7B、
図7F、および
図7J)を用いて、ブラウン染色の欠如によって示される、非特異的染色の制限または不在が、腫瘍標本の全てにおいて観察されたことを示している。さらに、アイソタイプコントロール抗体もまた、腫瘍標本において非特異的染色を示さなかった(
図7D、
図7H、
図7L)。対照的に、市販の抗AXL抗体、AXL(C89E7)は、AXL mRNA発現が制限された腫瘍標本において、顕著なブラウン染色を示した(
図7C、
図7G、
図7K、矢印参照)。
【0176】
図7A〜
図7Lにおける結果は、AXL mRNA陰性組織サンプルにおける非特異的染色の不在に起因して、V77−2a37.1およびM77−297b81.1.1が、優れたIHC抗体であることを示している。
【0177】
本出願の全体を通して、様々なウェブサイトのデータの内容、出版物、特許出願、および特許が参照されている。(ウェブサイトは、ユニフォームリソースロケータ、すなわちURL、ワールドワイドウェブ上のアドレスによって参照される)。これらの引用の開示はそれぞれ、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0178】
本発明は、本明細書中で開示される実施形態によって範囲が限定されるべきでなく、実施形態は、本発明の個々の態様の単なる例示として意図されており、機能的に等価なものは全て、本発明の範囲内である。本明細書に記載されたものに加えて、本発明のモデルおよび方法に対する様々な修正が、上記の説明および教示から当業者に明らかであろうし、同様に、本発明の範囲内に含まれることが意図される。そのような修正または他の実施形態が、本発明の真の範囲および精神から逸脱せずに実施されてよい。
【0179】
表
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
【表3】
【0183】
【表4】
【0184】
【表5】
【0185】
【表6】
【0186】
【表7】
【0187】
【表8】