特許第6857140号(P6857140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857140
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】可撓性が向上したステント−グラフト
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20210405BHJP
【FI】
   A61F2/07
【請求項の数】38
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-558714(P2017-558714)
(86)(22)【出願日】2016年5月11日
(65)【公表番号】特表2018-517464(P2018-517464A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】US2016031728
(87)【国際公開番号】WO2016183128
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】62/159,415
(32)【優先日】2015年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508225004
【氏名又は名称】トリバスキュラー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】エーネス デール エス
(72)【発明者】
【氏名】キング ライリー
(72)【発明者】
【氏名】タピア イルマ
(72)【発明者】
【氏名】スタウデンメイヤー クリス
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0261734(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/022150(WO,A1)
【文献】 特表2002−501404(JP,A)
【文献】 特表2014−511202(JP,A)
【文献】 特開2005−052419(JP,A)
【文献】 特表2008−536558(JP,A)
【文献】 特表平11−509130(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0219622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内ステント−グラフトであって、
互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた管状ステント壁を有し、
厚さを有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤを有し、前記波状起伏ワイヤは、前記ステント壁を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、
前記波状起伏ワイヤは、山部および谷部によって構成された複数の波状起伏部を有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、
前記第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、
前記第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、
非テキスタイルポリマーグラフト材料の層を含むグラフトライナを有し、
非テキスタイルポリマーグラフト材料の層を含むグラフトカバーを有し、
前記グラフトライナと前記グラフトカバーは、互いに選択的に固定されて該固定部のところに固定状態のグラフト部分を構成するとともに該固定グラフト部分相互間に固定されていないグラフト部分を構成し、該非固定グラフト部分は、前記グラフトライナと前記グラフトカバーとの間にグラフトキャビティを構成し、
前記固定状態のグラフト部分の厚さは、前記非固定グラフト部分の厚さよりも半径方向に薄く、
前記管状ステント壁は、前記グラフトキャビティ内に設けられ、
前記固定状態のグラフト部分は、前記グラフトキャビティと共に波状に起伏しており、
前記グラフトキャビティは、前記波状起伏ワイヤの厚さよりも大きな長手方向広がりを有する、血管内ステント−グラフト。
【請求項2】
前記固定グラフト部分は、前記波状起伏ワイヤのほぼ厚さ以上の長手方向広がりを有する、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項3】
前記固定グラフト部分は、前記波状起伏ワイヤのほぼ厚さ以下の長手方向広がりを有する、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項4】
前記第1および前記第2の波状起伏部にそれぞれ固定されている前記第1および前記第2のワイヤ端を除き、隣り合うほぼ周方向の巻き部には相互連結ストラットおよび溶接部がない、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項5】
前記グラフトカバーのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項6】
前記グラフトライナのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項7】
前記グラフトライナと前記グラフトカバーは、前記固定グラフト部分のところで互いに貼り付けられまたは接着されている、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項8】
前記波状起伏ワイヤは、前記グラフトキャビティ内では前記グラフトライナおよび前記グラフトカバーに固定されていない、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項9】
血管内ステント−グラフトであって、
互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた管状ステント壁を有し、
厚さを有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤを有し、前記波状起伏ワイヤは、前記ステント壁を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、
前記波状起伏ワイヤは、山部および谷部によって構成された複数の波状起伏部を有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、
前記第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、
前記第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えたグラフトライナを有し、前記グラフトライナは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えたグラフトカバーを有し、前記グラフトカバーは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、
前記グラフトライナの前記第1の端部分と前記グラフトカバーの前記第1の端部分は、融着状態の第1の端を構成するよう互いに固定され、
前記グラフトライナの前記第2の端部分と前記グラフトカバーの前記第2の端部分は、融着状態の第2の端を構成するよう互いに固定され、
前記グラフトカバーおよび前記グラフトライナの前記中間部分の少なくとも一部分は、互いには固定されておらず、該非固定部には非固定状態のグラフト部分が構成され、前記非固定グラフト部分は、前記グラフトライナと前記グラフトカバーとの間にグラフトキャビティを構成し、
固定状態のグラフト部分の厚さは、前記非固定グラフト部分の厚さよりも半径方向に薄く、
前記管状ステント壁は、前記グラフトキャビティ内に設けられ
前記固定状態のグラフト部分は、前記グラフトキャビティと共に波状に起伏している、血管内ステント−グラフト。
【請求項10】
複数の非固定状態のグラフト部分を更に有する、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項11】
前記非固定グラフト部分は、実質的に前記グラフトカバーおよび前記グラフトライナの前記中間部分に沿って延びている、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項12】
前記グラフトカバーは、前記第1の端と前記第2の端との間にプリーツ付き部分を有する、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項13】
前記グラフトカバーは、前記第1の端と前記第2の端との間にクリンプ付き部分を有する、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項14】
前記第1および前記第2の波状起伏部にそれぞれ固定されている前記第1および前記第2のワイヤ端を除き、隣り合うほぼ周方向の巻き部には相互連結ストラットおよび溶接部がない、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項15】
前記グラフトカバーのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項16】
前記グラフトライナのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項17】
前記グラフトライナと前記グラフトカバーは、前記固定グラフト部分のところで互いに貼り付けられまたは接着されている、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項18】
リボン状ステント−グラフトを含む血管内ステント−グラフトであって、前記リボン状ステント−グラフトは、
互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた管状ステント壁を有し、
厚さを有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤを有し、前記波状起伏ワイヤは、前記ステント壁を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、
前記波状起伏ワイヤは、山部および谷部によって構成された複数の波状起伏部を有し、中間ワイヤ部分が前記山部および前記谷部と同一の広がりを有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、
前記第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、
前記第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに前記第1の端部分と前記第2の端部分との間に位置する中間部分を備えた細長い扁平なリボンライナを有し、前記扁平なリボンライナは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を有し、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えた細長い扁平なリボンカバーを有し、前記扁平なリボンカバーは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、
前記細長いリボンカバーは、前記中間ワイヤ部分上に設けられ、
前記細長いリボンライナは、前記中間ワイヤ部分下に設けられ、
前記細長いリボンカバーと前記細長いリボンライナは、互いにかつ前記中間ワイヤ部分に固定可能に取り付けられ
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えた管状グラフトライナを有し、前記管状グラフトライナは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を更に含み、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えた管状グラフトカバーを有し、前記管状グラフトカバーは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を更に含み、
前記管状グラフトライナの前記第1の端部分と前記管状グラフトカバーの前記第1の端部分は、融着状態の第1の端を構成するよう互いに固定され、
前記管状グラフトライナの前記第2の端部分と前記管状グラフトカバーの前記第2の端部分は、融着状態の第2の端を構成するよう互いに固定され、
前記管状グラフトカバーおよび前記管状グラフトライナの前記中間部分の少なくとも一部分は、互いには固定されておらず、該非固定部には非固定状態の管状グラフト部分が構成され、前記非固定管状グラフト部分は、前記管状グラフトライナと前記管状グラフトカバーとの間にグラフトキャビティを構成し、
前記リボン状ステント−グラフトは、前記グラフトキャビティ内に設けられている、血管内ステント−グラフト。
【請求項19】
前記細長いリボンカバーの幅部および前記細長いリボンライナの幅部は、前記波状起伏ワイヤの前記山部および前記谷部まで延びてはいない、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項20】
複数の非固定状態の管状グラフト部分を更に有する、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項21】
前記非固定管状グラフト部分は、実質的に前記グラフトカバーおよび前記グラフトライナの前記中間部分に沿って延びている、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項22】
前記管状グラフトカバーは、前記第1の端と前記第2の端との間に、前記血管内ステント−グラフトの長手方向圧縮または軸方向曲げの際にプリーツ付き部分を形成するよう構成されている、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項23】
前記管状グラフトカバーは、前記第1の端と前記第2の端との間に、前記血管内ステント−グラフトの長手方向圧縮または軸方向曲げの際にクリンプ付き部分を形成するよう構成されている、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項24】
前記第1および前記第2の波状起伏部にそれぞれ固定されている前記第1および前記第2のワイヤ端を除き、隣り合うほぼ周方向の巻き部には相互連結ストラットおよび溶接部がない、請求項19記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項25】
前記細長いリボンカバーのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項19記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項26】
前記細長いリボンライナのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項19記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項27】
前記管状グラフトカバーのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項28】
前記管状グラフトライナのための前記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項29】
前記管状グラフトライナと前記管状グラフトカバーは、前記固定グラフト部分のところで互いに貼り付けられまたは接着されている、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項30】
前記血管内ステント−グラフトは、約180°曲がるよう構成され、約6mm以下の隙間が前記曲がり部の近くに位置する前記グラフトカバーの部分相互間に存在し、前記血管内ステント−グラフトは、前記曲がり部を貫通して実質的に管の形状を維持する、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項31】
前記血管内ステント−グラフトは、約180°曲がるよう構成され、約6mm以下の隙間が前記曲がり部の近くに位置する前記グラフトカバーの部分相互間に存在し、前記血管内ステント−グラフトは、前記曲がり部を貫通して実質的に管の形状を維持する、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項32】
前記血管内ステント−グラフトは、約180°曲がるよう構成され、約6mm以下の隙間が前記曲がり部の近くに位置する前記管状グラフトカバーの部分相互間に存在し、前記血管内ステント−グラフトは、前記曲がり部を貫通して実質的に管の形状を維持する、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項33】
前記血管内ステント−グラフトは、約180°以上曲がるよう構成され、前記血管内ステント−グラフトは、前記曲がり部の一部分に実質的な直径の減少部を有することはない、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項34】
前記血管内ステント−グラフトは、約180°以上曲がるよう構成され、前記血管内ステント−グラフトは、前記曲がり部の一部分に実質的な直径の減少部を有することはない、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項35】
前記血管内ステント−グラフトは、約180°以上曲がるよう構成され、前記血管内ステント−グラフトは、前記曲がり部の一部分に実質的な直径の減少部を有することはない、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項36】
前記固定グラフト部分には縫合糸がない、請求項1記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項37】
前記グラフトライナおよび前記グラフトカバーの前記固定グラフト部分には縫合糸がない、請求項9記載の血管内ステント−グラフト。
【請求項38】
前記管状グラフトライナおよび前記管状グラフトカバーの前記固定管状グラフト部分には縫合糸がない、請求項18記載の血管内ステント−グラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術、すなわち本発明は、ステント−グラフトに関する。特に、本発明は、可撓性ステント−グラフトに関し、この可撓性ステント−グラフトは、ポリマーの非テキスタイルグラフト層を有し、2つまたはそれ以上のグラフト層相互間でのステントの運動を可能にした状態でステントが2つまたは3つ以上のグラフト層相互間に設けられている。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2015年5月11日に出願された米国特許仮出願第62/159,415号の権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
ステント−グラフトは、1つまたは2つ以上のテキスタイルグラフト層と関連したステントを含む場合がある。本明細書で用いられるテキスタイルグラフト層という用語は、典型的なテキスタイル(布)形成プロセス、例えば、織成、編成、編組などによって形成された層を意味している。ステントは、典型的には、縫合糸の使用によりグラフト層に固定される。かかるテキスタイルを含むステント−グラフトの欠点は、特にステント−グラフトが流体密であり、例えば1つまたは複数のグラフト層のテキスタイル壁の幾つかまたは全てを通る血流を制限し、阻止し、または違ったやり方で制御することになっている場合、プロフィールが高く、すなわち、テキスタイル層が比較的厚いということにある。
【0004】
ステント−グラフトのプロフィールを減少させる(ステント−グラフトを薄型にする)ため、非テキスタイル層が用いられる場合がある。本明細書で用いられるポリマーの非テキスタイル層という用語は、ポリマー材料のシートまたは筒体、例えば押し出しポリマーシートおよび筒体を意味するが、これらには限定されない。典型的には、かかるステント−グラフトは、円筒形マンドレル上で作製される場合があり、この場合、グラフトは、ステント−グラフトが長手方向圧縮を受けようとしているときにステント−グラフトの運動を制限する純粋に筒状の形態に貼り付けられまたは積層される。しかしながら、ステント−グラフトを長手方向に圧縮することができるようにすることが有用であり、したがって、ステント−グラフトは、曲がることができそして特定の解剖学的構造に容易に適合することができ、しかも導入または運搬(デリバリ)手技の実施を容易にすることができるようになっている。しかしながら、ステント−グラフトが純粋に筒状の形態に製造されているときに可撓性の量を制限する剪断力がある特定のステント−グラフト中に存在する場合が多い。これは、頂部または外側の層および底部または内側の層がステント−グラフトの形成の際に互いに完全に融着される場合に特に言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かくして、ステントが2つまたはそれ以上のグラフト層相互間に設けられた状態の1つまたは2つ以上のポリマー非テキスタイルグラフト層を有する可撓性ステント−グラフトが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステントが2つまたはそれ以上のグラフト層相互間に設けられた状態のポリマーの非テキスタイルグラフト層を有する低プロフィール可撓性ステント−グラフトを提供する。非テキスタイルグラフト層のうちの1つまたは2つ以上は、ステントのジグザグまたは開口格子模様相互間の可撓性が高まるよう加工されるのが良い。さらに、本発明のステント−グラフトは、内側グラフト層と外側グラフト層が、互いに対して積層されていない領域を有するのが良く、それによりステント部分がグラフト材料のかかる開口ポケット間で動きまたは浮動することができる。幾つかの実施形態では、ステントの相当大きな部分は、グラフト相互間で自由浮動状態であるのが良い。拘束部を除きまたは減らし、それによりステントが種々の度合いまで、例えばグラフト材料内で全体的に、実質的に、大部分または部分的に自由に浮動することができるようにする他の方法および実施形態が記載される。
【0007】
一実施形態では、血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた管状ステント壁と、厚さを有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤとを有し、波状起伏ワイヤは、ステント壁を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、波状起伏ワイヤは、山部および谷部によって構成された複数の波状起伏部を有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、血管内ステント−グラフトは、非テキスタイルポリマーグラフト材料の層を含むグラフトライナと、非テキスタイルポリマーグラフト材料の層を含むグラフトカバーとを更に有する。グラフトライナとグラフトカバーは、互いに選択的に固定されるのが良く、かかるグラフトライナとグラフトカバーは、この固定部のところに固定状態のグラフト部分を構成するとともにこれら固定グラフト部分相互間に固定されていないグラフト部分を構成し、これら非固定グラフト部分は、グラフトライナとグラフトカバーとの間にグラフトキャビティを構成する。管状ステント壁は、グラフトキャビティ内に設けられる。グラフトキャビティは、波状起伏ワイヤの厚さよりも大きな長手方向広がりを有するのが良い。
【0008】
別の実施形態では、血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた管状ステント壁と、厚さを有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤとを有し、波状起伏ワイヤは、ステント壁を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、波状起伏ワイヤは、山部および谷部によって構成された複数の波状起伏部を有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともにこれら端部分相互間に位置する中間部分を備えたグラフトライナを更に有し、グラフトライナは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともにこれら端部分相互間に位置する中間部分を備えたグラフトカバーを更に有し、グラフトカバーは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、グラフトライナの第1の端部分とグラフトカバーの第1の端部分は、互いに固定され、グラフトライナの第2の端部分とグラフトカバーの第2の端部分は、互いに固定され、グラフトカバーおよびグラフトライナの中間部分の少なくとも一部分は、互いには固定されておらず、この非固定部には非固定状態のグラフト部分が構成され、非固定グラフト部分は、グラフトライナとグラフトカバーとの間にグラフトキャビティを構成し、管状ステント壁は、グラフトキャビティ内に設けられている。
【0009】
さらに別の実施形態では、血管内ステント−グラフトは、リボン状ステント−グラフトを含み、リボン状ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた管状ステント壁と、厚さを有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤとを有し、波状起伏ワイヤは、ステント壁を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、波状起伏ワイヤは、山部および谷部によって構成された複数の波状起伏部を有し、中間ワイヤ部分が山部および谷部と同一の広がりを有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに第1の端部分と第2の端部分との間に位置する中間部分を備えた細長い扁平なリボンライナを更に有し、扁平なリボンライナは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を有し、血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともにこれら端部分相互間に位置する中間部分を備えた細長い扁平なリボンカバーを更に有し、扁平なリボンカバーは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、細長いリボンカバーは、中間ワイヤ部分上に設けられ、細長いリボンライナは、中間ワイヤ部分下に設けられ、細長いリボンカバーと細長いリボンライナは、互いにかつ中間ワイヤ部分に固定可能に取り付けられている。血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともにこれら端部分相互間に位置する中間部分を備えた管状グラフトライナを有し、管状グラフトライナは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を更に含み、血管内ステント−グラフトは、互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともにこれら端部分相互間に位置する中間部分を備えた管状グラフトカバーを更に有し、管状グラフトカバーは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を更に含み、管状グラフトライナの第1の端部分と管状グラフトカバーの第1の端部分は、互いに固定され、管状グラフトライナの第2の端部分と管状グラフトカバーの第2の端部分は、互いに固定され、管状グラフトカバーおよび管状グラフトライナの中間部分の少なくとも一部分は、互いには固定されておらず、この非固定部には非固定状態の管状グラフト部分が構成され、非固定管状グラフト部分は、管状グラフトライナと管状グラフトカバーとの間にグラフトキャビティを構成し、管状ステント壁は、グラフトキャビティ内に設けられている。
【0010】
本発明のこれらの特徴および利点ならびに他の特徴および利点は、添付の図面と関連して読まれるべき本発明の例示の実施形態についての以下の詳細な説明から明らかになろう。対応の参照符号または記号は、図面の内の幾つかの図全体を通じて対応の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のステント−グラフトの概略斜視図である。
図2図1のステント−グラフトの2‐2線矢視側面図であり、本発明のステントを示す図である。
図3】ステント−グラフトの端から切り取られたグラフト材料を有する図2のステント−グラフトの側面図である。
図4図2のステント−グラフトの4‐4線矢視断面図である。
図5】本発明のステント−グラフトの部分側面図であり、グラフト固定部分によって構成されたグラフトキャビティまたは非固定グラフト部分内に収納された波状に起伏しているワイヤステントの一部分を示す図である。
図6図5のステント−グラフトの部分断面図である。
図7】部分的に圧縮された状態の図6のステント−グラフトを示す図である。
図8】グラフト固定部分の種々の実施形態のうちの1つを含む図5のステント−グラフトを示す図である。
図9】グラフト固定部分の種々の実施形態のうちの1つを含む図5のステント−グラフトを示す図である。
図10】グラフト固定部分の種々の実施形態のうちの1つを含む図5のステント−グラフトを示す図である。
図11】本発明のステント−グラフトのステントクラウン部分の部分図である。
図12A】クリンプまたはプリーツを形成するグラフト固定および非固定部分の種々の実施形態のうちの1つを示す図である。
図12B】クリンプまたはプリーツを形成するグラフト固定および非固定部分の種々の実施形態のうちの1つを示す図である。
図12C】クリンプまたはプリーツを形成するグラフト固定および非固定部分の種々の実施形態のうちの1つを示す図である。
図12D】クリンプまたはプリーツを形成するグラフト固定および非固定部分の種々の実施形態のうちの1つを示す図である。
図13A】互いに固定されたグラフト端を有するグラフトカバーとグラフトライナとの間に設けられている本発明のステント−グラフトを示す図である。
図13B図13Aのステント−グラフトの別の実施形態を示す図である。
図14図13Aのステント−グラフトの14‐14線矢視断面図である。
図15図13Aのステント−グラフトの15‐15線矢視断面図である。
図16】本発明のステント−グラフトの部分側面図であり、ステント−グラフトが曲げられたときのステントワイヤの向きを示す図である。
図17】本発明のステント−グラフトの部分側面図であり、ステント−グラフトが長手方向に圧縮されたときのステントワイヤ向きを示す図である。
図18】本発明のグラフトクリンプおよびグラフトプリーツを示す図(A〜D)である。
図19】本発明のステント−グラフトの長手方向圧縮軸におけるグラフトプリーツの形成状態を示す図である。
図20】本発明のステント−グラフトの曲げ状態を示す図であり、ステントワイヤ要素が曲がり部の近くで曲がることができ、グラフト部分が曲がり部の近くでクリンプを形成している状態を示す図である。
図21】先行技術のステント−グラフトの曲げ状態を示す図である。
図22図20のステント−グラフトの曲げを増大させた状態を示す図である。
図23図21の先行技術のステント−グラフトの曲げを強くした状態を示す図である。
図24】本発明のマンドレル上でのリボン状ステント−グラフトの形成の仕方を示す図である。
図25図24のリボン状ステント−グラフトを示す図である。
図26図24のリボン状ステント−グラフトを示す図である。
図27図25および図26のリボン状ステント−グラフトを有する本発明の血管内ステント−グラフトの曲げ状態を示す図である。
図28図25および図26のリボン状ステント−グラフトを有する本発明の血管内ステント−グラフトの曲げ状態を示す図である。
図29】本発明の軸方向リボンを有するリボン状ステント−グラフトを示す図である。
図30】本発明の軸方向リボンを有するリボン状ステント−グラフトを示す図である。
図31】本発明で有用なステント構造体の一実施形態を示す図である。
図32】本発明で有用なステント構造体の種々の実施形態を示す図(AおよびB)である。
図33】本発明の螺旋巻ステントの種々の配置状態を示す図(A〜E)である。
図34】本発明で有用なステント−グラフト組立体を示す図(AおよびB)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において説明するグラフト、ステントまたはステント−グラフト実施形態およびこれらのコンポーネントに関し、「近位」という用語は、患者の心臓寄りの場所を意味し、「遠位」という用語は、患者の心臓から離れた場所を意味している。本明細書において説明する運搬システム、カテーテルおよびこれらのコンポーネントに関し、「遠位」という用語は、運搬システムまたはカテーテルを用いている術者から遠ざかって位置する場所を意味し、「近位」という用語は、術者寄りの場所を意味している。
【0013】
図1は、本発明のステント−グラフト10の概略斜視図である。ステント−グラフト10は、長手方向長さLまたは軸線L、開口ルーメン18を構成するための第1の開口端14および反対側の第2の開口端16を備えた管状壁12を有する中空管状器具である。図1のステント−グラフト10は、実質的に管状のものとして図示されているが、本発明は、これには限定されない。例えば、ステント−グラフト壁12の開口端14,16のうちのいずれか一方またはこれら両方のところに位置する部分は、ラッパ型に広がっていても良く(内方または外方に)あるいはフランジ付きであっても良い(内方または外方に)。さらに、開口端14,16相互間に位置するステント−グラフト壁12の部分は、非直線状の管状部分、例えばラッパ型(内方にまたは外方に)部分またはステント−グラフト壁12の部分に沿う曲率の曲がり部を備えた部分を有しても良い。さらに、開口端14,16が単一の開口ルーメン18を備えた状態で図示されているが、本発明のこれには限定されない。例えば、一方または両方の端14,16は、多ルーメン型端、例えば分岐開口端であっても良いが、これには限定されない。
【0014】
さらに、本発明は、図1に示されているような連続管状壁12には限定されない。例えば、ステント−グラフト10は、管状壁12に設けられた1つまたは2つ以上の窓部(図示せず)を有することができる。かかる窓部は、分岐ルーメンで有用な場合があり、この場合、追加のステント−グラフトを分岐ルーメンのところに、そして窓部中に配備することができる。さらに、ステント−グラフト10は、分岐ルーメン中にまたは分岐ルーメンに向かって配備可能に管状壁12の中間部分から延びる1つまたは2つ以上の側枝(図示せず)を有することができる。
【0015】
図2は、図1のステント−グラフト10の2‐2線矢視側面図である。ステント−グラフト10は、波状に起伏したワイヤ22で形成されたステント20を含む。波上記服ワイヤ22は、一連の山部28および谷部30を備えたステント20の状態に螺旋巻されまたは違ったやり方で成形されるのが良い。ステント20のそれ以上の細部については、図31図32A図32B図33A図33E、および図34A図34Bと関連して以下において説明する。ステント−グラフト10は、グラフトカバー24を有する。グラフトライナ26(図示せず)がグラフトカバー24の下に配置されている。グラフトカバー24およびグラフトライナ26のそれ以上の細部については図34Aおよび図34Bと関連して以下において説明する。グラフトカバー24およびグラフトライナ26は、ポリマー材料の1つまたは2つ以上の層であるのが良い。
【0016】
グラフトカバー24(およびグラフトライナ26‐図示せず)は、ステント−グラフト10の第1および第2の端14,16まで延びるのが良い。図2に示されているように、ステント−グラフト10は、第1の端14および第2の端16のところの波状起伏ワイヤの終端部分を越えて延びるグラフトカバーおよびグラフトライナ材料を有するのが良い。かかる形態は、例えば第1および第2の端14,16のところの他のグラフトコンポーネントを融着するための追加の領域が望ましい場合に有用な場合がある。しかしながら、本発明は、これには限定されない。例えば、図3に示されているように、ステント−グラフト10の実施形態は、第1および第2の端14,16から切り取られまたは違ったやり方で存在しないグラフトカバー24(およびグラフトライナ26‐図示せず)を有しても良い。
【0017】
図4は、図1のステント−グラフト10の4‐4線矢視断面図である。図2に示されているように、ステント20は、グラフトカバー24とグラフトライナ26との間に設けられている。代表的な先行技術のステント−グラフトとは異なり、本発明のステント20またはステント20の幾つかの部分は、グラフトカバー24とグラフトライナ26との間で自由に動きまたは浮動することができる。かかる自由運動または浮動により、とりわけ、先行技術のステント−グラフトと比較して、組み立て中ならびに配備中および配備後における本発明のステント−グラフト10の高い可撓性が得られる。
【0018】
図5は、図1のステント−グラフト10の部分側面図であり、グラフトキャビティ38または非固定状態のグラフト部分38内に納められた波状に起伏したワイヤ22の一部分を示している。波状起伏ワイヤ22は、グラフトカバー24とグラフトライナ26との間に設けられている。固定状態のグラフト部分36は、波状起伏ワイヤ22の両側部周りに形成されるのが良い。図5に示されているように、波状起伏ワイヤ22の山部28、谷部30および中間部分32は、グラフトキャビティ38または非固定グラフト部分38内に納められるのが良い。山部28および/または谷部30の終端部分は、クラウン部分34と呼ばれる場合があり、これについては以下に更に詳細に説明する。図5は、波状起伏ワイヤ22の山部28、谷部30、クラウン部分34および中間部分32の部分全体をこれらがグラフトキャビティ38または非固定グラフト部分38内に納められている状態で示しているが、本発明は、これには限定されない。例えば波状起伏ワイヤ22の山部28、谷部30、クラウン部分34および中間部分32の部分だけがグラフトキャビティ38または非固定グラフト部分38内に納められても良い。
【0019】
固定グラフト部分36は、圧力の印加の有無を問わず、熱を加えることにより、例えば、積層により、接着により、超音波接合によりまたはこれらの任意の組み合わせによって形成できる。固定グラフト部分36は、選択的に熱を加えることにより、例えば、レーザまたは加熱状態のプローブを用いることによって積層できる。さらに、ツール(図示せず)が部分38の下に設けられるのが良く、その間、ステント−グラフト10は、固定グラフト部分36の形成を助けるようマンドレル(図示せず)に取り付けられる。さらに、インフレーション用ツール(図示せず)を用いてインフレーション用媒体、例えば空気または他の適当な流体(しかしながら、これらには限定されない)を提供し、それによりグラフトカバー24とグラフトライナ26との間の領域をインフレートされ、かくしてグラフトカバー24とグラフトライナ26の部分を互いに選択的に固定した後にキャビティ38を形成するのが良い。さらにまた、本発明は、ステント20または波状起伏ワイヤ22が納められるグラフトキャビティ38の形成には限定されない。グラフトキャビティ38が所望ならばステント20の一部分を備えていない場所でグラフトカバー24およびグラフトライナ26内に形成されるのが良い。波状起伏ワイヤ22と固定グラフト部分36との間には非固定グラフト部分38またはグラフトキャビティ部分38が設けられる。かかる非固定グラフト部分またはキャビティ38は、ステント−グラフトの運動時、例えばステント−グラフト10の曲げ時、ステント−グラフト10の軸方向または長手方向圧縮または拡張時、ステント−グラフト10の半径方向圧縮または拡張時(これらには限定されない)におけるステント−グラフト10内の波状起伏ワイヤ22またはステント20の運動を可能にする。かかるステント−グラフト運動は、所望の体内場所またはルーメンへのステント−グラフト10の配備中に生じる場合が多くあるいは体内へのステント−グラフト10の配備後であっても生じる。
【0020】
本発明の一実施形態では、一方法は、ステント部材またはジグザグ部相互間に設けられた経路を溶接しまたは接合し(熱を用いて、超音波を用いて、接着剤または他の手段を用いて)各ジグザグパターンをそれ自体のパウチまたは非積層グラフト材料層の領域内に封止するステップを含むのが良い。焼結/積層は、例えば典型的には収縮または圧縮性管とともに用いられる積層中に例えば圧縮力なしで最小限の圧力を用いて実施でき、その結果、グラフト層は、一般に、ステント部材またはワイヤ周りに局所的に互いに融着することはなく、それによりこのステント部材またはワイヤは、非積層グラフト層のポケット内で自由に相対運動を行うことができる状態のままである。かかる選択的溶接は、ステント部材またはワイヤ相互間に溶接ライン経路を単に残すことができる。サーマルチップまたは超音波ホーン付きの装置が適切にはかかる溶接ラインを形成するのに用いられるのが良い。この装置は、手動操作可能であっても良く、自動式であっても良く、すなわち、ロボット式運動制御方式のものであっても良い。
【0021】
図6は、図1のステント−グラフト10の部分断面図である。波状起伏ワイヤ22は、グラフトキャビティ38内で動くことができる。例えば、図7に示されているように、図6のステント−グラフト10を圧縮すると、波状起伏ワイヤは、キャビティ38内で自由に動く。さらに、グラフトカバー24および/またはグラフトライナ26もまた、図7に示されているように圧縮時に自由に動くことができる(グラフトカバー24とグラフトライナの両方が自由に動くことができる)。
【0022】
図6に示されているように、固定グラフト部分36は、僅かなまたは小規模な長手方向広がり35、例えば波状起伏ワイヤ22の直径37よりも小さいもしくは実質的に小さい広がり、または例えばほぼ波状起伏ワイヤ22の直径37の広がりを有するのが良い。非固定部分またはキャビティ38の長手方向広がり39は、小規模な長手方向広がり35よりも大きいのが良く、しかも波状起伏ワイヤの直径37よりも大きいのが良い。しかしながら、本発明は、これには限定されない。グラフトカバー24およびグラフトライナ26の大部分または相当大きな部分、例えば隣り合う波形起伏ワイヤ部分相互間に位置するかなりのまたは相当なカバーおよびライナ部分24,26が互いに固定されるのが良い。固定グラフト部分36を形成するかかるかなりのまたは相当なカバーおよびライナ部分24,26は、ほぼ波形起伏ワイヤ22の直径のサイズまたはこれよりも著しく大きくても良い。
【0023】
一般的に言って、グラフトキャビティ38の容積または広がりを波形起伏ワイヤ22に対して大きくすると、ステント−グラフト10の可撓性もまた増大することができる。しかしながら、本発明は、ステント−グラフト10の可撓性の増大のためのグラフトキャビティ38の容積または広がりの増大には限定されず、以下に説明するような他の技術、例えばクリンプ加工および/またはプリーツ加工を適切に用いることができる。
【0024】
さらに、本発明は、図5に示されているような波状起伏ワイヤ22を包囲する固定状態のグラフト部分36には限定されない。例えば、図8に示されているように、固定グラフト部分36は、波状起伏ワイヤの山部28と谷部30との間で波状起伏ワイヤ22の中間部分32のところに形成されても良い。非固定グラフト部分またはキャビティ38が固定グラフト部分36によって形成される。かかる形態により、山部28および谷部30の自由運動の可能性を増大させることができ、というのは、グラフトコンポーネント相互間に包み込まれた山部および谷部を備えたステント−グラフトと比較して、これら山部28および谷部30は、運動、例えば長手方向運動および/または非長手方向運動、例えば曲げに対して実質的に非拘束状態にあるからである。
【0025】
さらに、図9に示されているように、固定グラフト部分36は、波形起伏ワイヤ22の山部28またはクラウン部分34のところに配置されるのが良い。図9の固定グラフト部分36は、山部8の一方の側にのみ位置したものとして示されているが、本発明は、これには限定されない。例えば、固定グラフト部分36は、山部28の両側部(図示せず)に配置されても良い。加うるに、固定グラフト部分36の中には、ステント−グラフト10の一端寄りで、例えばステント−グラフト10の第2の端16寄りで山部28の一方の側部に設けられるものがあっても良く、ステント−グラフト10の別の端、例えばステント−グラフト10の第1の端14寄りで山部の他方の側に配置されても良いものもある。
【0026】
さらに、図10に示されているように、固定グラフト部分36は、波状起伏ワイヤ22の部分、例えば図示のような中間部分32または山部分28(図示せず)もしくは谷部分30(図示せず)の端から端まで横切って形成されても良い。波形起伏ワイヤ22の特定の幾何学的形状を正確に辿る必要がないので、図10の実施形態は、固定グラフト部分36を形成するための実施が容易な製造技術として表わされているが、ステント−グラフトの可撓性の増大は依然として、グラフト層内に完全に包み込まれたステントを有する先行技術のステント−グラフトと比較して依然として達成される。
【0027】
図5図10に示されるとともにこれらの図と関連して説明されるグラフト固定部分36の種々の形態を単独でまたは任意の組み合わせ状態で用いることができる。
【0028】
図11は、波状起伏ワイヤ22のクラウン部分34の平面図である。図12A図12Dは、本発明のステント−グラフト10のクラウン部分34の周りにおけるグラフトカバー24およびグラフトライナ26の異なる配置状態を示している。
【0029】
図12Aに示されているように、グラフトカバー24のグラフトカバー部分42は、クラウン部分34のワイヤ部分周りに設けられるのが良い。グラフトカバー部分42は、クラウン部分34の少なくとも一方の側上にまたはこれを覆って設けられる。さらに、グラフトカバー部分42はまた、クラウン部分34の頂部分上にまたはこれを覆いかつクラウン部分34の底部の少なくとも一部分の下に設けられるのが良い。グラフトライナ26は、クラウン部分34の一部分の下に位置する隆起したグラフトライナ部分40を有するのが良い。グラフトカバー24とグラフトライナ26がグラフト固定部分36のところで互いに固定されているが、グラフトカバー24およびグラフトライナ26は、クラウン34に完全にはまたは直接的には固定されないのが良く、それによりグラフトカバー24とグラフトライナ26との間におけるかつグラフトカバー24およびグラフトライナ26に沿うクラウン部分34の運動が可能である。例えば、所望ならば、グラフトカバーの一部分42が図12Aに示されているようにクラウン部分34に積層されまたは貼り付けられるのが良い。
【0030】
また、図12Aに示されているように、グラフトカバークリンプまたはプリーツ(ひだ)部分44が形成され、クラウン部分34、グラフトカバー24およびグラフトライナ26の隆起部は、ステント−グラフト10の長手方向壁12の上方に位置している。製作の際、ツール(図示せず)を用いてこれら部分をマンドレル(図示せず)の上方に持ち上げてここで貼り付けるのが良い。クリンプまたはプリーツ部分44は、曲げおよび/または圧縮中、ステント−グラフト10のクラウン34のところに可撓性をもたらす。以下に説明するように、かかる可撓性の増大は、長手方向圧縮および/または拡張中における長手方向可撓性の増大および半径方向可撓性の増大が挙げられるが、これらには限定されない。というのは、曲げまたはそれどころか長手方向圧縮の際に半径方向における限定されたまたは小規模なクラウン運動が許容されるからである。
【0031】
図12Bに示されているように、本発明は、隆起ライナ部分40を有する必要はない。クリンプまたはプリーツ44がクラウン34の一部分の下に設けられるのが良い。クリンプまたはプリーツのサイズまたは広がりは、様々であって良い。図12Bのクリンプまたはプリーツは、図12Aと関連して上述したように長手方向可撓性の実現を可能にするが、クラウン部分34が図12Aの場合のように隆起されていないので半径方向可撓性は小さい。
【0032】
図12Cに示されているように、細長いグラフトプリーツ46がクラウン部分の下に設けられるのが良く、この場合、細長いグラフトプリーツ46の広がりは、クリンプまたはプリーツ44の広がりよりも大きい。クリンプまたはプリーツ44の広がりは、波状起伏ワイヤ22のほぼ外周から波状起伏ワイヤ22の外周の何分の1か、例えば半分以下までに及ぶのが良い。細長いグラフトプリーツ46は、代表的には、波状起伏ワイヤ22の直径よりも大きい。一般的に、細長いグラフトプリーツ46の広がりが増大すると、ステント−グラフトの可撓性が増大する。
【0033】
本発明は、図12A図12Cに示されているようなクラウン部分34の両側へのクリンプまたはプリーツ44,46の配置には限定されない。例えば、図12Dに示されているように、クリンプまたはプリーツ44(またはプリーツ46)は、クラウン部分34の一方の側にのみ設けられても良い。換言すると、ステント−グラフトの可撓性の増大は、特定の要望および形態に合わせて設定できる。
【0034】
図13A図15は、ステント20が実質的に、グラフトカバー24とグラフトライナ26との間でかつ非固定グラフト部分またはキャビティ38内に設けられた本発明のステント−グラフト10を示している。
【0035】
図13Aに示されているように、ステント20は、融着状態の第1の端48と融着状態の第2の端50との間に設けられるのが良い。2つの融着状態のグラフト端48,50相互間には、グラフトカバー24およびグラフトライナ26の非固定状態のグラフト部分38が位置している。この実施形態のステント20は、非固定グラフト部分38内での可撓性が増大することになり、というのは、グラフトカバー24およびグラフトライナ26内での波状起伏ワイヤ22の接合が行われずまたは実質的に行われないからである。
【0036】
図13Aは、ステント20を全体が融着端部相互間に位置した状態で示しているが、本発明は、これには限定されない。例えば、図13Bに示されているように、ステント20の幾つかの部分は、融着端部48,50内に設けられても良い。この実施形態は、ステント−グラフト10内へのステント20の固定状態を向上させることができる一方で、ステント−グラフト10内におけるステント20の向上した可撓性を依然として提供する。
【0037】
図14は、図13Aのステント−グラフト10の14‐14線矢視断面図である。図14に示されているように、グラフトカバー24とグラフトライナ26は、固定グラフト部分36によって示されているように、互いに固定されている。
【0038】
図15は、図13Aのステント−グラフト10の15‐15線矢視断面図である。図15に示されているように、グラフトカバー24とグラフトライナ26は、非固定グラフト部分またはキャビティ38によって示されているように、互いに固定されていない。ステント20は、キャビティ38内に設けられ、それにより先行技術のステント−グラフトと比較してステント20の運動性および可撓性を増大させることができる。
【0039】
図16は、曲げを受けている間におけるステント−グラフト10の実施形態の向上した可撓性を示している。クラウン部分34の下に位置するクリンプまたはプリーツ44,46により、クラウン34は、曲げ力を受けた状態でステント−グラフト10の壁12から部分的に離昇することができる。さらに、ステント波状起伏部は、この場合もまた、実施形態に本明細書において説明するような可撓性を与える本発明の設計に起因して、図16に示されているように曲がり部の底部分のところにまたは曲がり部のアールの内側でいっそう嵌まり合い状態になる。かくして、ステント−グラフト10は、高められた可撓性を有する一方で、グラフトカバー24とライナ26の一体性を依然として維持する。
【0040】
図17に示されているように、ステント波状起伏部の嵌まり具合の増大はまた、軸線Lに沿うステント−グラフト10の軸方向または長手方向圧縮時に達成される。山部28と谷部30は、ステント−グラフト10が圧縮されているときに互いにいっそう嵌まり合い状態になりまたは互いに密接状態になり、これは、とりわけ本明細書において開示するグラフトカバーおよびライナの設計ならびに形態の改良に起因して、ステント−グラフトの向上した可撓性を反映する。
【0041】
図18A図18Dは、本発明のステント−グラフト10の圧縮または曲げ中、グラフト中に与えることができまたはグラフト内で生じることができる種々のクリンプおよびプリーツ形態を示している。図13Aに示されているように、クリンプ64は、グラフトカバー24の単純な突起であっても良くまたは図18Bに示されているように半丸形形態のクリンプ66であっても良い。図13Cおよび図13Dに示されているように、プリーツ68もまた、グラフトカバー24内に生じても良くまたはこのグラフトカバー内に形成されても良い。クリンプ64,66とプリーツ68の両方は、グラフトカバー24に増大した可撓性をもたらす。ステント−グラフト10は、クリンプ64,66とプリーツ68の任意の組み合わせを有することができる。本発明の種々の実施形態の説明の一般性を制限することなく、一般的に言って本明細書で用いられる「クリンプ」(例えば、クリンプ64,66)という用語は、ステント−グラフト10が図18Aおよび図18Bに示されているような状態にあるときに全体として丸形、半円形または曲線状の表面を形成するグラフトカバーまたは他のグラフト部分もしくは層を意味し、「プリーツ」(例えば、プリーツ68)という用語は、ステント−グラフト10が例えば図18Cおよび図18Dに示されているような状態にあるときに全体としていっそう山型、しわ付きのまたは折り目付きの表面を形成するグラフトカバーまたは他のグラフト部分もしくは層を意味している。しかしながら、いずれの用語も、本発明のこの観点に言及する際は区別なく使用できることは言うまでもない。
【0042】
図19は、ステント−グラフト10が軸方向または長手方向に圧縮されているときのプリーツ68の形成状態を示している。プリーツ68は、グラフトカバーとグラフトライナが互いに完全には貼り付けられず、焼結されず、または違ったやり方で連結されずもしくは結合されていないので、この器具の可撓性のためにステント−グラフト10が圧縮されているときに生じる。かくして、ステント20の互いに異なる部分の運動がグラフトカバーまたはライナ24,26によって過剰に阻止されまたは制限されることはない。確かなこととして、上述したようなプリーツ68の形成により、ステント−グラフト10のコンポーネントの運動が可能であり、この場合、追加のグラフトプリーツ加工を長手方向圧縮時に達成することができる。
【0043】
図20は、曲げ力を受けているときの図13A図15のステント−グラフト10を示している。曲げ中、プリーツ52によって示されているようにグラフトカバー24のプリーツは、ステント20が曲げ部分を介してグラフトカバー24およびグラフトライナ26内で自由に動くことができるので、力を受けて生じる。これにより、ステント−グラフト10が約180°以上曲がることができ、この場合、ステント−グラフト10は、曲がり部の任意の部分において直径の相当な減少を呈することはない。換言すると、特に曲がり部の領域およびルーメン18の横断面部のステント−グラフト10の開存性がかかる曲げ中、維持される。この結果、配備中および配備後における臨床用途において血流がほんの僅かしか減少せずまたは全く減少しない限り、高性能のステント−グラフトが得られる。これとは対照的に、図21に示されているように、先行技術に特有な積層または焼結グラフト層相互間に設けられたステントを有するステント−グラフトは、同程度の曲げを受けている間、変形部分54を生じる。この変形部分54は、開存性の減少したルーメンおよび所望の臨床性能の低下に該当する。
【0044】
図22は、約180°まで曲げられている図13Aのステント−グラフト10を示しており、約6mm以下の隙間が曲がり部の領域に位置する管状ステント−グラフト10の部分相互間に存在している。ステント−グラフト10は、曲がり部を介して実質的に管状の形状を維持し、特に、曲がり部の領域に位置するステント−グラフト10のルーメン18は、開存状態のままであり、ステント−グラフト10またはルーメン18の断面直径の減少がほとんどなくまたは全くない。これとは対照的に、図23に示されているように、先行技術に特有の積層または焼結グラフト層相互間に設けられたステントを有するステント−グラフトは、同程度の曲げを受けている間、キンク56を生じるとともに開存性の減少を呈する。
【0045】
図24は、本発明の一実施形態としてのリボン状ステント−グラフト10′を示している。製作の際、リボン状ステント−グラフト10′は、波状起伏ワイヤ22の例えば中間部分のような部分の上にまたはこの上側を覆って設けられたポリマーの非テキスタイルグラフト材料の頂部リボン60および波状起伏ワイヤ22の例えば中間部分のような部分の下にまたはこの下側を覆って設けられたポリマーの非テキスタイルグラフト材料の底部リボン62を有する波状起伏ワイヤ22を図24に示されているようにマンドレル58に嵌めることによって形成できる。次に、リボン60,62を本明細書のどこか別のところで説明したように、貼り付け、焼結、接着などにより互いに固定的に設けるのが良い。図25は、マンドレル58からの取り出し後におけるリボン状ステント−グラフト10′を示している。
【0046】
図26は、図25のリボン状ステント−グラフト10′の一部分の拡大図であり、この器具のそれ以上の細部を示している。リボン60,62が波状起伏ワイヤ22の中間部分上にのみ配置されているので、リボン60,62は、連続したグラフト壁を形成していない。その結果、リボン60,62は、リボン状ステント−グラフト10′の波状起伏ワイヤ22の運動につれて自由に動く。換言すると、リボン60,62は、長手方向運動および/または曲げ時、波形起伏ワイヤ22の運動を甚だしくは阻止しない。
【0047】
図27および図28は、約180°の曲げを含む曲げを受けている間のステント−グラフト10′の可撓性を示しており、上述するとともに図27に示されているような約6mmの隙間が存在している。図27および図28では、ステント−グラフト10′は、図13A図15に示されているようにグラフトカバー24とグラフトライナとの間に設けられている。図28は、多数の曲げ力を受けているステント−グラフト10′を示しており、その結果、ある特定の解剖学的構造内に配備されたときに生じる場合のある2つの大きな曲がり部を備えた“S”字状ステント−グラフト10′が得られ、このことは、取り組みがいのある形態をしたステント−グラフト10′のルーメンの可撓性および開存性の増大を実証している。
【0048】
図29および図30に示されているように、リボン状ステント−グラフト10′は、所望ならば、ステント−グラフト10′の長手方向長さに沿って設けられた軸方向リボン64を更に有するのが良い。かかる軸方向リボン64は、可撓性にほんの僅かしか影響を及ぼすことはなく、他方、長手方向運動および/または曲げ中における波状起伏ワイヤ22の制御のある程度の増大をもたらすとともにこれとは異なる度合いの安定性および配備性を生体内で提供する本発明の設計を提供している。
【0049】
本発明のステント−グラフト10,10′のグラフト部分、例えばカバーおよびライナ24,26は、任意の生体適合性および耐久性のある材料で作られた壁部分を有するのが良く、かかる材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン、フッ化エチレンプロピレン、ポリビニルアセテート、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ナフタレンジカルボキシレート誘導体、例えばポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレートおよびトリメチレンジオールナフタレート、ポリウレタン、ポリウレア、シリコーンゴム、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアルデヒド、ポリエーテルエーテルケトン、天然ゴム、ポリエステルコポリマー、シリコーン、スチレン‐ブタジエンコポリマー、ポリエーテル、例えば完全または部分ハロゲン化ポリエーテル、これらのコポリマーおよび組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。本明細書で用いられるテキスタイル材料は、テキスタイルグラフト材料を形成するよう織成され、編組され、編成され、フィラメント紡糸されるなどしたフィラメントまたはヤーンである。望ましくは、グラフト材料は、テキスタイルグラフトと併用可能なノンテキスタイルグラフト材料、例えば織成されておらず、編組されておらず、編成されておらず、フィラメント紡糸されていない等の材料である。かかる有用なグラフト材料は、押し出し材料であるのが良い。特に有用な材料としては、識別可能な結節(ノード)および原線維(フィブリル)微細構造がなく、しかも結晶粒界が隣接の高密度領域の結晶粒界に直接相互連結された高密度領域を有するとともに実質的に結節および原線維微細構造のない独立気泡微細構造を含む流体透過性が低いまたは実質的にゼロである(湿潤)延伸PTFE層のない多孔質ポリテトラフルオロエチレンおよび流体透過性がゼロでありまたは実質的にゼロである多孔質PTFEが挙げられる。ePTFEの隣接の結節を相互に連結している明確な互いに平行な原線維を欠いているPTFE層は、20,000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で見て識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない。流体透過性がゼロでありまたは実質的にゼロである多孔質PTFE層は、約12時間(43,200秒)以上のガーレ数または本質的に無制限のまたは大きすぎて測定することができないガーレ数を有する場合があり、このことは、測定可能な流体透過性がゼロであることを示している。流体透過性が実質的にゼロであるPTFE層の中には、100ccの空気で約106秒以上のガーレ数を有するものがある。ガーレ秒数は、所与の量、代表的には25cc、100ccまたは300ccの空気が標準圧力、例えば水柱12.4cm下で材料またはフィルムの標準1平方インチを通って流れるのに必要な時間を測定することによって求められる。これとは対照的に、低流体透過性を有する本明細書において説明したPTFEの層の実施形態は、約1500秒以上のガーレ数を有するのが良く、この場合、100ccの空気が試験で用いられる。PTFE、例えばePTFEの流体透過性層の実施形態は、約10または15ガーレ秒以下のガーレ測定値を有するのが良い。かかる試験は、ニューヨーク州トロイ所在のガーレ・プレシジョン・インストゥルメンツ(Gurley Precision Instruments)製のGurley Densometerを用いて実施できる。かかる有用なPTFE材料およびこれを製造する方法の詳細は、ハンフェリー等(Humphery et al.)に付与された共通所有者の米国特許第8,728,372号明細書(発明の名称:PTFE Layers and Methods of Manufacturing)に見受けられ、この特許文献を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0050】
さらに、有用なPTFE分子は約2000万〜約5000万以上の平均分子量を有する。オプションとして、添加剤、例えば粉末または液体着色顔料または他の樹脂添加剤がPTFE材料に添加されるのが良い。例えば、フッ化コポリマー(例えば、ペリフルオロプロピルビニルエーテル改質PTFE)を添加してPTFE層の結合性を向上させるのが良い。添加剤は、代表的には、PTFE材料の質量の2%以下の質量で提供されるが、所望の結果を生じさせる任意の量でこれを提供しても良い。
【0051】
多孔質PTFE層が低いまたは実質的にゼロの流体浸透性を有するよう構成されるのが良いが、それにもかかわらず、多孔質PTFE層110は、多孔性を有する。多孔質PTFE層は、約20%〜約80%、具体的には約30%〜約70%の平均多孔率を有するのが良い。多孔率は、PTFE層の全体積の百分率としての中実PTFE材料の体積を表わしている。PTFE層中の平均細孔サイズは、約20ミクロン以下、具体的には約0.5ミクロン以下、例えば約0.01ミクロン〜約0.5ミクロンであるのが良い。組織の内方成長が望ましい場合、PTFE層は、約6.0ミクロン以上の平均細孔サイズを有するのが良い。
【0052】
グラフト部分は、軟質グラフト材料、例えばPTFEまたはePTFEの1つまたは複数の内側層および1つまたは複数の外側層で作られるのが良い。一実施形態では、軟質グラフト材料は、実質的に多孔質であるが、識別可能な結節および原線維構造を含んでいないPTFEを含む。グラフト材料の内側および外側層は、1種類または複数種類のグラフト材料の多数の層の管状押し出し物、積層ラップなどで作られるのが良い。グラフト材料の内側または外側層は、幾つかの実施形態については透過性(例えば、約10ガーレ秒以下)であっても良く、半透過性(例えば、約1,500ガーレ秒以上およびオプションとして約30,000以下)であっても良くまたは実質的に不透過性(例えば、約106ガーレ秒以上)であっても良い。
【0053】
図31図34Bは、本発明のステント−グラフトのさらなる細部を示している。第1の半径方向に拡張可能なステント20,300がステント−グラフトのレッグについてグラフト材料の外側層(図示せず)と内側層(図示せず)の間に介在して設けられるのが良い。グラフト材料の外側層と内側層との間に介在して設けられたステントは、複数の長手方向に間隔を置いて設けられたターンを備えた状態で開放管状形態の状態に螺旋巻きされた細長い弾性要素で作られるのが良い。螺旋巻きステントは、自己拡張型ステントであるよう構成されても良く、あるいは、器具、例えば拡張可能なバルーンなどからの外部半径方向力によって作動された状態で非弾性的に半径方向に拡張可能であるよう構成されても良い。
【0054】
ステント−グラフトのステントまたはワイヤ部分は、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金(NiTi)例えばニチノール(NITINOL)または任意他の適当な材料で構成でき、かかる任意他の適当な材料としては、コバルト基合金、例えばエルジロイ(ELGILOY)、白金、金、チタン、タンタル、ニオブおよびこれらの組み合わせが挙げられるがこれらには限定されない。ステント−グラフトは、バルーン拡張型であっても良く自己拡張型であっても良い。
【0055】
図31図32A図32B図33A図33E図34Aおよび図34Bに詳細に示されているように、全体として管状のステント20,300がステント−グラフトのために設けられるのが良い。管状ステント300は、一連の隣り合う螺旋巻き部302を形成する螺旋巻きの波状に起伏したワイヤを含み、かかるワイヤは、上述の材料(弾性金属、例えばニチノールを含む)で作られるのが良い。ステント300の端304,306は、別々の領域でステントの隣接のリング部分に固定されるのが良い。例えば、PTFEグラフト材料か場合によっては患者の皮膚かのいずれかへの要素の端の露出を回避するために図示のように第1の端が第1の固定箇所308を介して結合されるのが良く、そして第2の端が第2の固定箇所310のところで接合されるのが良い。好ましい実施形態では、固定箇所308,310は、それぞれ、第1の端304および第2の端306の近位側に配置されており、ステント300には他の固定箇所は設けられていない。すなわち、第1の端304(近位端304と称する場合がある)および第2の端306(遠位端306と称する場合がある)のそれぞれのところの螺旋巻き部302は別として、ステント300の隣り合う似通った周方向巻き部302には相互連結固定箇所が存在しない場合がある。任意の固定手段を用いることができ、かかる固定手段としては、例えば、溶接、例えばストラットおよび溶接部が挙げられる。ステントの相対剛性は、有益な耐キンク性を提供するようPTFEグラフト材料の剛性よりも高いことが望ましい。
【0056】
波状に起伏したワイヤは、延長部の一端304から延長部の他端306まで延びる一連の螺旋巻き部302を形成する連続要素であるのが良い。かくして、管状ステント300は、第1の端304から第2の端306までこれを貫通して延びる内部ルーメン320を有する。細長い要素の端304,306は、任意適当な手段、例えば接着、溶接、例えばレーザ溶接、はんだ付けなどによって隣のリング部材に固定されるのが良い。幾つかの実施形態に関し、ステント要素は、約0.005インチ(0.127mm)〜約0.015インチ(0.381mm)の横方向寸法または直径を有するのが良い。図32Aおよび図32Bで理解できるように、ステント300は、テーパしているのが良くまたはラッパ状に広がっているのが良い。加うるに、所望ならば、隣り合う螺旋巻き部302は、隣り合う螺旋巻き部302が一端のところに(第1の端304か第2の端306かのいずれかのところに)ステント300の端の近位側に位置するステント300の一部分のところに鋭角形成部を有するような配列状態315をなしているのが良い。すなわち、所望ならば、端の最も近くに位置する螺旋巻き部(302′として示されている)は、長手方向軸線とほぼ180°の角度をなすのが良く、他方、この螺旋巻き部のすぐ隣に位置する螺旋巻き部(302″として示されている)は、180°未満の角度をなしている。これら2つの螺旋巻き部(302′,302″)は、固定箇所308,310のところに取り付けられるのが良い。
【0057】
図33A図33Eは、ステント300を形成する際に波状に起伏したワイヤによって形成される螺旋巻き部302の種々の配列状態を示している。隣り合う螺旋巻き部が302A,302Bとして示されているが、理解されるように、図33A図33Eに示されている配列状態は、ステント300の各螺旋巻き部302に利用されるのが良い。変形例として、図33A図33Eに示されている配列状態は、ステント300の螺旋巻き部302のうちの幾つかにのみ利用されても良い。ステント300の波状に起伏したワイヤは、ワイヤが螺旋巻きされているときに一連の山部312および谷部314を有する。山部312と谷部314の配列状態は、様々であって良く、任意所望のやり方で配列できる。幾つかの実施形態では、例えば、図33Aの実施形態では、1つの周方向巻き部302Aの山部312は、その隣の周方向巻き部302Bの山部312と実質的に整列するのが良い。図33Bで理解できるように、隣り合う周方向巻き部302A,302Bは、互いに間隔を置いて配置されるのが良い。図33Cで理解できるように、隣り合う周方向巻き部302A,302Bは、互いに近くに位置するのが良い。図33Dに記載されている別の実施形態では、1つの周方向巻き部302Bの1つの山部312は、その隣の巻き部302Aの2つの山部312をまたぐのが良い。図33Eに記載されている別の実施形態では、1つの周方向巻き部302Aの山部312は、その隣の周方向巻き部302Bの谷部314と実質的に整列するのが良い。螺旋巻き部302の他の配列状態が想定され、これについては当業者によって容易に理解されよう。
【0058】
隣り合う巻き部302A,302B相互間の距離は、ステント300の長さに沿って様々であって良く、一端304のところの距離は、第2の端306のところの距離とは異なっている。各実施形態では、2つの距離が考慮されるべきである。第1の距離Xは、第1の巻き部(302A)の最も低い谷部(314)と第2の巻き部(302B)の最も高い山部(312)との間の距離である。第2の距離Yは、第1の巻き部(302A)の最も高い山部(312)と最も低い谷部(314)との間の距離である。
【0059】
X/Y(または均等表現として
)の少なくとも2つまたは3つ以上の互いに異なる比が器具に存在するのが良い。第1の比は、X/Yが比較的大きな正の数であるような比であり、すなわち、距離(X)とこれと比較する距離(Y)との間には比較的大きな離隔距離が存在する。第2の比は、X/Yが比較的な小さな正の数であるような比であり、すなわち、距離(X)とこれと比較する距離(Y)との間には比較的僅かな離隔距離が存在する。最後に、第3の比は、X/Yが負の数であるような比であり、すなわち、第1の巻き部(302A)の最も低い山部は、第2の巻き部(302B)の元も高い山部よりも低い箇所まで下降している。
【0060】
比X/Yは、局所領域のステント−グラフトの所望の特性を得るよう操作されるのが良い。比較的大きなX/Yの比(好ましくは、約0.5を超える)は、ステント−グラフトの可撓性の高い領域を生じさせる。小さいX/Yの比(好ましくは、約0.1〜約0.5)は、適度の可撓性および適度の半径方向力を持つステント−グラフトの領域を生じさせる。僅かなまたは負のX/Yの比(好ましくは、約0.1以下)のステント−グラフトの領域は、半径方向力が比較的高く、可撓性が比較的低い。上述のX/Yについての範囲は、ステントの高さYがステントの直径Dの約1/3からステントの直径Dにほぼ等しい寸法までの範囲にある場合に適当である。YがDと比較してこれよりも大きい場合、上述のX/Yの比に関する範囲は、縮小される。同様に、Yがステント直径Dよりも非常に小さい場合、上述の範囲に関する数値を増大させる。
【0061】
上述の原理を用いると、所望の特性を達成するために長さに沿うX/Yの様々な比を備えた状態でステント−グラフトを構成することができる。例えば、ステント−グラフトを腹大動脈瘤(AAA)のためのモジュール式血管内グラフトの腸骨動脈リムとして用いる場合、ステント−グラフトの近位端が比較的高い半径方向力を有し、それによりモジュール式システムの大動脈本体コンポーネント中への固定具合を最大にすることが望ましい場合がある。この場合、腸骨動脈リムの近位端は、X/Yの比を小さくまたは負にした状態、例えば−0.5にした状態で設計される場合があり、Yは、例えば、ステント−グラフト直径の約1/5〜1/2までとなるよう選択される場合がある。この範囲内においては、可撓性は、半径方向力よりも重要度が低く、したがって、負のX/Yの比は、所望の特性を生じさせる。ステント−グラフトの中間部では、可撓性は、AAA患者に見受けられる場合の多い曲がりくねった総腸骨動脈に対応するのに重要になる。この場合、この可撓性を達成するには比較的大きなX/Yの比、例えば約0.55を提供することが望ましい場合がある。ステント−グラフトの遠位端の近くでは、この場合もまた、患者の総腸骨動脈中への腸骨動脈リムの固着および密封状態を促進するよう大きな半径方向力を提供するが、近位端のところではそれほど大きな半径方向力を提供しないようにすることが望ましい場合がある。この場合、X/Yの比をほぼゼロに、例えば約−0.1〜約0.3にすることが望ましい場合がある。
【0062】
ステントは、ステント−グラフトの長さに沿って螺旋状に形成されるので、この長さに沿って変化が滑らかであって急峻な変化がないステント−グラフトの種々の領域に所望の特性を達成するようX/Yの比を連続的に変化させることが可能である。これら滑らかな変化は、血管系に対する形状適合性を促進し、ステント−グラフトの長さに沿う機械的特性の急激な変化に起因して生じる場合がある応力および/またはひずみの集中および潜在的なキンクを回避する。
【0063】
ステント300は、長手方向軸線(一般的に内部ルーメン320に沿って定められる)およびこの長手方向軸線に垂直な半径方向軸線を有するのが良く、この場合、螺旋巻き部302は、半径方向軸線に対して約3°〜約15°の鋭角である巻き角で巻かれる。図32Aおよび図32Bで理解できるように、第1の端304の近位側に位置するステント300の一部分のところでの鋭角としての巻き角は、第2の端306の近位側に位置するステント300の一部分のところでの鋭角としての巻き角とは異なっている。幾つかの実施形態では、第1の端304のところの第1の螺旋巻き部302は、長手方向軸線に垂直であるのが良い。さらに、第2の端306のところの螺旋巻き部302は、長手方向軸線に垂直であることが望ましい場合がある。第1の端304および第2の端306のところの螺旋巻き部302は、両方とも、長手方向軸線に垂直にあっても良く、あるいは、一方だけが長手方向軸線に垂直であっても良い。螺旋巻き部302の隣接の山部312と隣接の谷部314は、この隣接の山部の頂からこの隣接の谷部の底までの山部高さを有する。ステント300の第1の端304の近位側に位置するステント300の一部分のところの山部高さは、ステント300の第2の端306の近位側に位置するステント300の一部分のところの山部高さとは異なっていることが望ましい場合がある。
【0064】
少なくとも1つのグラフト層がステント300に設けられるのが良い。グラフト層の配置状態は、図34A図34Bおよび図30で最も良く理解できる。幾つかの実施形態では、内側グラフト層318が螺旋巻きステント300の内面に被着されるのが良く、それにより内側ルーメン320が形成される。第2のグラフト層316が螺旋巻きステント300の外面に被着されるのが良く、それにより外面が形成される。グラフト材料の2つ以上または3つ以上の層が所望に応じて螺旋巻きステント300の内部または外部に被着できる。ステント−グラフトの幾つかの実施形態に関し、互いに異なる特性を備えた材料の層を組み合わせて用いると、所望の臨床上の性能を達成することができる。例えば、ステント300を覆うPTFEの幾つかの層は、所望の性能および材料特性に応じて、透過性であっても良く、半透過性であっても良く、または実質的に不透過性であっても良い。層316,318は、様々な方法によって被着可能であり、様々な形態を有することができる。例えば、幾つかの実施形態としての層は、マンドレルまたは組立部品に嵌めて軸方向に設けられた押し出し管状構造体を有するのが良い。幾つかの層実施形態としてのグラフト層316,318は、層を周方向に巻きあるいはテープまたはリボンを、オーバーラップ螺旋パターンをなして巻くことによって被着できる。幾つかの実施形態に関し、外側層316は、半透過性または実質的に不透過性のPTFE層で作られるのが良くまたはこれを含むのが良く、内側層318は、PTFEの透過性層で作られまたはこれを含むのが良い。
【0065】
ステント−グラフトは、材料の層316,318をマンドレル、例えば円筒形マンドレル(図示せず)に嵌めた螺旋巻きステント300と一緒に形成することによって構成できる。ステント−グラフトの最も内側の層316を造形されたマンドレルの周りにいったん巻くと、螺旋ニチノールステント、例えば螺旋ステント300が最も内側の層上PTFE層316および下に位置するマンドレルに嵌めて配置されるのが良い。所望ならば、グラフト材料の1つまたは2つ以上の追加の層318がステント300の外部上に巻かれまたは違ったやり方で追加されるのが良い。所望ならば、外側層318は、低い透過性のPTFE膜または伝統的な結節・原線維微細構造を備えていない実質的に透過性のないPTFE膜を有するのが良い。
【0066】
グラフト部分は、少なくとも部分的にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作られるのが良く、かかるポリテトラフルオロエチレンは、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を含むのが良い。特に、グラフト部分は、支持または補助構造体、例えば高強度ステント、コネクタリングなどが設けられていない状態で1種類または複数種類の柔軟なグラフト材料についてだけ約0.003インチ(0.076mm)〜約0.015インチ(0.381mm)の非圧縮状態の層状厚さを有するPTFEおよび/またはePTFEの任意数の層(約2〜約15個の層を含む)を有するのが良い。かかるグラフト本体区分は、グラフト用途に適した任意の別の高い強度の柔軟な生体適合性材料、例えばダクロン(DACRON)を更に含むのが良い。グラフト本体区分ならびに本明細書において説明する実施形態の任意のものに関して任意適当な組み合わせ状態で使用できるグラフト組立体の他のコンポーネントについての種々の構成についての説明がチョボトフ等(Chobotov et al.)に付与された米国特許第7,125,464号明細書(発明の名称:Method and Apparatus for Manufacturing an Endovascular Graft Section)、チョボトフ等に付与された米国特許第7,090,693号明細書(発明の名称:Endovascular Graft joint and Method of Manufacture)、チョボトフ等に付与された米国特許第7,147,661号明細書(発明の名称:Method and Apparatus for Shape Forming Endovascular Graft Material)、チョボトフ等に付与された米国特許第7,147,660号明細書(発明の名称:Advanced Endovascular Graft )およびハンフレー等に付与された米国特許第8,728,372号明細書(発明の名称:PTFE Layers and Methods of Manufacturing)に見受けられ、これら米国特許の各々を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0067】
モジュール式コンポーネントを含む上述のグラフト組立体の追加の細部がヤング等(Young et al.)名義の米国特許出願公開第2013/0261734号明細書(発明の名称:Advanced Kink Resistant Stent-graft)に見受けられ、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。さらに、モジュール式コンポーネントを含む上述のグラフトおよびステントグラフト組立体の追加の細部がチョボトフ名義の米国特許出願公開第2015/0088244号明細書(発明の名称:Tandem Modular Endograft)に見受けられ、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0068】
運搬システムおよび患者の体内への器具の運搬の種々の方法がチョボトフ等名義の米国特許出願公開第2009/0099649号明細書(発明の名称:Modular Vascular Graft for Low Profile Percutaneous Delivery)に記載された方法を含み、この米国特許出願公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。血管内方法に関し、患者の血管系へのアクセスは、患者の大腿動脈に対する動脈切開術またはカットダウン法を実施することによりまたは他の一般的な技術、例えば経皮セルディンガー法によって達成できる。かかる技術に関し、運搬シース(図示せず)を拡張器・ガイドワイヤ組立体の使用により、患者の血管、例えば大腿動脈と連絡関係をなして配置するのが良い。運搬シースをいったん位置決めすると、患者の血管系に対するアクセスは、運搬シースを介して達成でき、この運搬シースは、オプションとして、止血弁または他の適当な機構によって密封されるのが良い。幾つかの手技に関し、運搬シースが患者の大動脈に向かって上流側に差し向けられた状態で運搬シースまたは他の適当な手段による患者の両方の大腿動脈へのアクセスを得ることが必要な場合がある。幾つかの用途では、運搬シースが必要ではない場合があり、運搬カテーテルを血管切開術か経皮穿刺かのいずれかによって患者のアクセス血管中に直接挿入することができる。
【0069】
本発明のシステム、器具、方法および技術を腹大動脈瘤の治療のためのシステム、器具、方法および技術とともに使用できる。腹大動脈瘤を治療するのに有用な血管内プロテーゼおよび/またはグラフト延長部の詳細が共通所有者の米国特許第6,395,019号明細書、同第7,081,129号明細書、同第7,147,660号明細書、同第7,147,661号明細書、同第7,150,758号明細書、同第7,651,071号明細書、同第7,766,954号明細書および同第8,167,927号明細書ならびに共通所有者の米国特許出願公開第2009/0099649号明細書に見受けられ、これら特許文献の全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。かかる血管内プロテーゼの製造に関する詳細が共通所有者の米国特許第6,776,604号明細書、同第7,090,693号明細書、同第7,125,464号明細書、同第7,147,455号明細書、同第7,678,217号明細書および同第7,682,475号明細書に見受けられ、これら米国特許の全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。インフレート可能なグラフトのための有用なインフレーション材料が共通所有者の米国特許出願公開第2005/0158272号明細書および同第2006/0222596号明細書に見受けられ、これら米国特許出願公開の全てを参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。腹大動脈瘤のための適当な血管内運搬システムの追加の細部が米国特許第9,233,015号明細書、同第9,066,828号明細書および同第9,132,025号明細書(これらには限定されない)に見受けられ、これら米国特許を参照により引用し、これらの記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0070】
本発明の種々の実施形態を具体的に図示するとともに/あるいは本明細書において説明したが、当業者であれば、本発明の精神および意図した範囲から逸脱することなく本発明の改造例および変形例を想到することができることは理解されよう。さらに、特許請求の範囲および明細書に説明している本発明の実施形態または観点のうちの任意のものを1つおよび別の実施形態と共に用いることができ、これは本発明を限定するものではない。
【0071】
本発明の以下の実施態様項または観点を任意の仕方でかつ組み合わせ状態に組み合わせることができ、これらは本発明の範囲に含まれ、かかる実施態様項または観点は、次の通りである。
【0072】
〔実施態様項1〕
血管内ステント−グラフト(10)であって、
互いに反対側に位置する第1の端(14)と第2の端(16)を備えた管状ステント壁(12)を有し、
厚さ(37)を有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤ(22)を有し、上記波状起伏ワイヤ(22)は、上記ステント壁(12)を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、
上記波状起伏ワイヤ(22)は、山部(28)および谷部(30)によって構成された複数の波状起伏部を有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部(28)は、互いに距離を隔てて配置され、
上記第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、
上記第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、
非テキスタイルポリマーグラフト材料の層を含むグラフトライナ(26)を有し、
非テキスタイルポリマーグラフト材料の層を含むグラフトカバー(24)を有し、
上記グラフトライナ(26)と上記グラフトカバー(24)は、互いに選択的に固定されて該固定部のところに固定状態のグラフト部分(36)を構成するとともに該固定グラフト部分相互間に固定されていないグラフト部分(38)を構成し、該非固定グラフト部分(38)は、上記グラフトライナ(26)と上記グラフトカバー(24)との間にグラフトキャビティ(38)を構成し、
上記管状ステント壁は、上記グラフトキャビティ(38)内に設けられ、
上記グラフトキャビティ(38)は、上記波状起伏ワイヤ(22)の厚さ(37)よりも大きな長手方向広がり(39)を有する、血管内ステント−グラフト(10)。
【0073】
〔実施態様項2〕
上記固定グラフト部分(36)は、上記波状起伏ワイヤ(22)のほぼ厚さ(37)以上の長手方向広がり(35)を有する、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0074】
〔実施態様項3〕
上記固定グラフト部分(36)は、上記波状起伏ワイヤ(22)のほぼ厚さ(37)以下の長手方向広がり(35)を有する、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0075】
〔実施態様項4〕
上記第1および上記第2の波状起伏部にそれぞれ固定されている上記第1および上記第2のワイヤ端を除き、隣り合うほぼ周方向の巻き部には相互連結ストラットおよび溶接部がない、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0076】
〔実施態様項5〕
上記グラフトカバー(24)のための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0077】
〔実施態様項6〕
上記グラフトライナ(26)のための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0078】
〔実施態様項7〕
上記グラフトライナ(26)と上記グラフトカバー(24)は、上記固定グラフト部分(36)のところで互いに貼り付けられまたは接着されている、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0079】
〔実施態様項8〕
上記波状起伏ワイヤ(22)は、上記グラフトポケット(38)内では上記グラフトライナ(26)および上記グラフトカバー(24)に固定されていない、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0080】
〔実施態様項9〕
血管内ステント−グラフト(10)であって、
互いに反対側に位置する第1の端(14)と第2の端(16)を備えた管状ステント壁(12)を有し、
厚さ(37)を有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤを有し、上記波状起伏ワイヤ(22)は、上記ステント壁(12)を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、
上記波状起伏ワイヤ(22)は、山部および谷部によって構成された複数の波状起伏部を有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、
上記第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、
上記第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えたグラフトライナ(26)を有し、上記グラフトライナ(26)は、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えたグラフトカバー(24)を有し、上記グラフトカバー(24)は、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、
上記グラフトライナ(26)の上記第1の端部分と上記グラフトカバー(24)の上記第1の端部分は、融着状態の第1の端(48)を構成するよう互いに固定され、
上記グラフトライナ(26)の上記第2の端部分と上記グラフトカバー(24)の上記第2の端部分は、融着状態の第2の端(50)を構成するよう互いに固定され、
上記グラフトカバー(24)および上記グラフトライナ(26)の上記中間部分の少なくとも一部分は、互いには固定されておらず、該非固定部には非固定状態のグラフト部分(38)が構成され、上記非固定グラフト部分(38)は、上記グラフトライナ(26)と上記グラフトカバー(24)との間にグラフトキャビティ(38)を構成し、
上記管状ステント壁(12)は、上記グラフトキャビティ(38)内に設けられている、血管内ステント−グラフト(10)。
【0081】
〔実施態様項10〕
複数の非固定状態のグラフト部分(38)を更に有する、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0082】
〔実施態様項11〕
上記非固定グラフト部分(38)は、実質的に上記グラフトカバー(24)および上記グラフトライナ(26)の上記中間部分に沿って延びている、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0083】
〔実施態様項12〕
上記グラフトカバー(24)は、上記第1の端(48)と上記第2の端(50)との間にプリーツ付き部分(44,46)を有する、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0084】
〔実施態様項13〕
上記グラフトカバー(24)は、上記第1の端(48)と上記第2の端(50)との間にクリンプ付き部分(44)を有する、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0085】
〔実施態様項14〕
上記第1および上記第2の波状起伏部にそれぞれ固定されている上記第1および上記第2のワイヤ端を除き、隣り合うほぼ周方向の巻き部には相互連結ストラットおよび溶接部がない、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0086】
〔実施態様項15〕
上記グラフトカバーのための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0087】
〔実施態様項16〕
上記グラフトライナのための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0088】
〔実施態様項17〕
上記グラフトライナ(26)と上記グラフトカバー(24)は、上記固定グラフト部分(36)のところで互いに貼り付けられまたは接着されている、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0089】
〔実施態様項18〕
リボン状ステント−グラフト(10′)を含む血管内ステント−グラフト(10)であって、上記リボン状ステント−グラフト(10′)は、
互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた管状ステント壁を有し、
厚さ(37)を有するとともに互いに反対側に位置する第1の端と第2の端を備えた波状に起伏しているワイヤ(22)を有し、上記波状起伏ワイヤは、上記ステント壁を構成するよう複数のほぼ周方向の巻き部の状態に螺旋に巻かれており、
上記波状起伏ワイヤ(22)は、山部(28)および谷部(30)によって構成された複数の波状起伏部を有し、中間ワイヤ部分(32)が上記山部および上記谷部(30)と同一の広がりを有し、隣り合うほぼ周方向の巻き部の山部は、互いに距離を隔てて配置され、
上記第1のワイヤ端は、第1の波状起伏部に第1の端のところで固定され、
上記第2のワイヤ端は、第2の波状起伏部に第2の端のところで固定され、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに上記第1の端部分と上記第2の端部分との間に位置する中間部分を備えた細長い扁平なリボンライナ(62)を有し、上記扁平なリボンライナ(62)は、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を有し、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えた細長い扁平なリボンカバー(60)を有し、上記扁平なリボンカバーは、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を含み、
上記細長いリボンカバー(60)は、上記中間ワイヤ部分(32)上に設けられ、
上記細長いリボンライナ(62)は、上記中間ワイヤ部分(32)下に設けられ、
上記細長いリボンカバー(60)と上記細長いリボンライナ(62)は、互いにかつ上記中間ワイヤ部分(32)に固定可能に取り付けられている、血管内ステント−グラフト(10)。
【0090】
〔実施態様項19〕
上記細長いリボンカバー(60)の幅部および上記細長いリボンライナ(62)の幅部は、上記波状起伏ワイヤ(22)の上記山部(28)および上記谷部(30)まで延びてはいない、実施態様項18記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0091】
〔実施態様項20〕
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えた管状グラフトライナ(26)を有し、上記管状グラフトライナ(26)は、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を更に含み、
互いに反対側に位置する第1の端部分と第2の端部分を備えるとともに該端部分相互間に位置する中間部分を備えた管状グラフトカバー(24)を有し、上記管状グラフトカバー(24)は、非テキスタイルのポリマーグラフト材料の層を更に含み、
上記管状グラフトライナ(26)の上記第1の端部分と上記管状グラフトカバー(24)の上記第1の端部分は、融着状態の第1の端(48)を構成するよう互いに固定され、
上記管状グラフトライナ(26)の上記第2の端部分と上記管状グラフトカバー(24)の上記第2の端部分は、融着状態の第2の端(50)を構成するよう互いに固定され、
上記管状グラフトカバー(24)および上記管状グラフトライナ(26)の上記中間部分の少なくとも一部分は、互いには固定されておらず、該非固定部には非固定状態の管状グラフト部分(38)が構成され、上記非固定管状グラフト部分(38)は、上記管状グラフトライナ(26)と上記管状グラフトカバー(24)との間にグラフトキャビティ(38)を構成し、
上記リボン状ステント−グラフト(10′)は、上記グラフトキャビティ(38)内に設けられている、実施態様項18記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0092】
〔実施態様項21〕
複数の非固定状態の管状グラフト部分(38)を更に有する、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0093】
〔実施態様項22〕
上記非固定管状グラフト部分(38)は、実質的に上記グラフトカバー(24)および上記グラフトライナ(26)の上記中間部分に沿って延びている、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0094】
〔実施態様項23〕
上記管状グラフトカバー(24)は、上記第1の端(48)と上記第2の端(50)との間に、上記血管内ステント−グラフト(10)の長手方向圧縮または軸方向曲げの際にプリーツ付き部分(44,46)を形成するよう構成されている、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0095】
〔実施態様項24〕
上記管状グラフトカバー(24)は、上記第1の端(48)と上記第2の端(50)との間に、上記血管内ステント−グラフト(10)の長手方向圧縮または軸方向曲げの際にクリンプ付き部分(44)を形成するよう構成されている、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0096】
〔実施態様項25〕
上記第1および上記第2の波状起伏部にそれぞれ固定されている上記第1および上記第2のワイヤ端を除き、隣り合うほぼ周方向の巻き部には相互連結ストラットおよび溶接部がない、実施態様項19記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0097】
〔実施態様項26〕
上記細長いリボンカバー(60)のための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項19記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0098】
〔実施態様項27〕
上記細長いリボンライナ(62)のための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項19記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0099】
〔実施態様項28〕
上記管状グラフトカバー(24)のための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0100】
〔実施態様項29〕
上記管状グラフトライナ(26)のための上記非テキスタイルポリマーグラフト材料層は、識別可能な結節および原線維微細構造を備えていない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、結節および原線維微細構造を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性が低いまたは実質的にゼロであり、隣り合う高密度領域の結晶粒界に直接的に相互連結された結晶粒界を備えた高密度領域を有する独立気泡微細構造を有しかつ結節および原線維微細構造が実質的にないポリテトラフルオロエチレンと、流体浸透性がなくまたは実質的にない多孔質ポリテトラフルオロエチレンと、半浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、浸透性ポリテトラフルオロエチレンと、これらの組み合わせとから成る群から選択されたポリテトラフルオロエチレンで構成されている、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0101】
〔実施態様項30〕
上記管状グラフトライナ(26)と上記管状グラフトカバー(24)は、上記固定グラフト部分(36)のところで互いに貼り付けられまたは接着されている、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0102】
〔実施態様項31〕
上記血管内ステント−グラフト(10)は、約180°曲がるよう構成され、約6mm以下の隙間が上記曲がり部の近くに位置する上記グラフトカバー(24)の部分相互間に存在し、上記血管内ステント−グラフト(10)は、上記曲がり部を貫通して実質的に管の形状を維持する、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0103】
〔実施態様項32〕
上記血管内ステント−グラフト(10)は、約180°曲がるよう構成され、約6mm以下の隙間が上記曲がり部の近くに位置する上記グラフトカバー(24)の部分相互間に存在し、上記血管内ステント−グラフト(10)は、上記曲がり部を貫通して実質的に管の形状を維持する、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0104】
〔実施態様項33〕
上記血管内ステント−グラフト(10)は、約180°曲がるよう構成され、約6mm以下の隙間が上記曲がり部の近くに位置する上記管状グラフトカバー(24)の部分相互間に存在し、上記血管内ステント−グラフト(10)は、上記曲がり部を貫通して実質的に管の形状を維持する、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0105】
〔実施態様項34〕
上記血管内ステント−グラフト(10)は、約180°以上曲がるよう構成され、上記血管内ステント−グラフト(10)は、上記曲がり部の一部分に実質的な直径の減少部を有することはない、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0106】
〔実施態様項35〕
上記血管内ステント−グラフト(10)は、約180°以上曲がるよう構成され、上記血管内ステント−グラフト(10)は、上記曲がり部の一部分に実質的な直径の減少部を有することはない、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0107】
〔実施態様項36〕
上記血管内ステント−グラフト(10)は、約180°以上曲がるよう構成され、上記血管内ステント−グラフト(10)は、上記曲がり部の一部分に実質的な直径の減少部を有することはない、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0108】
〔実施態様項37〕
上記固定グラフト部分(36)には縫合糸がない、実施態様項1記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0109】
〔実施態様項38〕
上記グラフトライナ(26)および上記グラフトカバー(24)の上記固定グラフト部分(36)には縫合糸がない、実施態様項9記載の血管内ステント−グラフト(10)。
【0110】
〔実施態様項39〕
上記管状グラフトライナ(26)および上記管状グラフトカバー(24)の上記固定管状グラフト部分(36)には縫合糸がない、実施態様項20記載の血管内ステント−グラフト(10)。
図1
図2
図3
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図12A
図12B
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図13B
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図25
図26
図27-28】
図29
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図32B
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図33B
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図33D
図33E
図34A
図34B