特許第6857146号(P6857146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857146
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F01P 5/06 20060101AFI20210405BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20210405BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F01P5/06 510B
   E02F9/00 M
   F01P11/10 K
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-43050(P2018-43050)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2019-157692(P2019-157692A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 正雄
(72)【発明者】
【氏名】菅原 浩紀
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−039936(JP,A)
【文献】 実開平07−030321(JP,U)
【文献】 特開2016−089422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01P 5/06、11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに設けられた原動機と、
前記車体フレーム上に設けられた熱交換器と、
外部から吸込んだ冷却風を前記熱交換器に流通させる吸込式の冷却ファンと、
前記原動機の下側に位置して前記車体フレームの下面に設けられたアンダカバーとを備えてなる建設機械において、
前記アンダカバーには、前記冷却風の流れ方向で前記冷却ファンよりも下流側に位置して前記原動機が有するホースを挿通させるためのホース挿通開口と、前記冷却風の流れ方向で前記ホース挿通開口の上流側に配置され、前記熱交換器を通過した前記冷却風を前記熱交換器から離れる方向に向けて外部に排出する導風開口と、が設けられ、
前記導風開口は、前記冷却風の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のスリット部と、前記各スリット部の前記熱交換器側を開口させ、前記熱交換器から離れた側を閉塞するように前記スリット部上を覆ってそれぞれ設けられた複数のルーバ部とにより構成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記冷却ファンは、前記熱交換器と前記原動機との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記アンダカバーには、前記導風開口とは別の他の導風開口が前記ホース挿通開口よりも前記冷却風の流れ方向の下流側に位置して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱交換器を通過した冷却風を原動機の下側に配置されたアンダカバーの開口から外部に排出する構成となった油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走が可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載され下部走行体と共に車体を構成する上部旋回体と、上部旋回体の前側に俯仰の動作が可能に設けられたフロント装置とにより構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体をなし前側にフロント装置が取付けられる車体フレームとしての旋回フレームと、旋回フレームに対して左,右方向に延びる横置き状態で設けられた原動機としてのエンジンと、エンジンに対して左,右方向の一側に配置された熱交換器と、熱交換器とエンジンとの間に設けられ外部から吸込んだ冷却風を前記熱交換器に流通させる吸込式の冷却ファンと、エンジンおよび熱交換器を取囲んで内部に機械室を形成する建屋カバーとを備えている。
【0004】
旋回フレームの下面には、機械室を下側から閉塞するアンダカバーが設けられている。このアンダカバーには、熱交換器を通過して温度上昇した冷却風を、機械室の外部に排出するための開口が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−30321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、冷却ファンの下側に位置して排気用の開口を設けている。この場合、排気用の開口は、熱交換器を通過した直後の一部の冷却風を排出できるが、大部分の冷却風はエンジン側に流れてしまう。ここで、機械室は、エンジンと油圧ポンプとの境界位置に設けられたファイヤウォールによって、エンジン室とポンプ室とに区分されている。従って、冷却風の大部分は、エンジン室から外部に排出されることになるから、冷却ファンの下側に配置された特許文献1の排気用の開口は、冷却風を効率よく排出することができない。
【0007】
また、特許文献1では、温度上昇した冷却風が再度機械室に吸込まれないように、冷却風の排出口を全てルーバとし、このルーバによって冷却風を吸込側とは反対側に誘導して排出している。しかし、ルーバは、一般的な開口に比較して冷却風が流れる通路面積が小さいから、冷却風を効率よく流通させることが難しく、排出口を全てルーバとした場合、機械室内のヒートバランスが成り立たない虞がある。
【0008】
さらに、エンジンには、各種ドレンを排出するためのホースが設けられており、アンダカバーには、ドレンホースを通すための開口を設ける必要がある。この場合、ドレンホースを通すための開口にはルーバを設けることができないから、ドレンホース用の開口から排出された冷却風が熱交換器の上流側に回り込んで吸込まれる虞があり、熱交換器による冷却効率が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、温度上昇した冷却風が再度熱交換器に供給されるのを防止しつつ、各種冷却に関わるヒートバランスを良好にして信頼性を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車体フレームと、前記車体フレームに設けられた原動機と、前記車体フレーム上に設けられた熱交換器と、外部から吸込んだ冷却風を前記熱交換器に流通させる吸込式の冷却ファンと、前記原動機の下側に位置して前記車体フレームの下面に設けられたアンダカバーとを備えてなる建設機械において、前記アンダカバーには、前記冷却風の流れ方向で前記冷却ファンよりも下流側に位置して前記原動機が有するホースを挿通させるためのホース挿通開口と、前記冷却風の流れ方向で前記ホース挿通開口の上流側に配置され、前記熱交換器を通過した前記冷却風を前記熱交換器から離れる方向に向けて外部に排出する導風開口と、が設けられ、前記導風開口は、前記冷却風の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のスリット部と、前記各スリット部の前記熱交換器側を開口させ、前記熱交換器から離れた側を閉塞するように前記スリット部上を覆ってそれぞれ設けられた複数のルーバ部とにより構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度上昇した冷却風が再度熱交換器に供給されるのを防止できる上に、各種冷却に関わるヒートバランスを良好にして信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
図2図1の油圧ショベルを上部旋回体の後部を矢示II−II方向から破断して示す拡大断面図である。
図3】旋回フレームとアンダカバーを拡大して示す平面図である。
図4】単体のアンダカバーを拡大して示す平面図である。
図5】アンダカバーを図4中の矢示V−V方向から見た断面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態によるアンダカバーを示す平面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態によるアンダカバーを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走が可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回が可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に俯仰の動作が可能に設けられたフロント装置5とを備えている。フロント装置5は、土砂の掘削作業等を行うものである。
【0015】
旋回フレーム6は、上部旋回体4の支持構造体を形成する車体フレームを構成している。図3に示すように、旋回フレーム6は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる平板状の底板6Aと、底板6A上に立設され、前,後方向と交差する左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板6B,右縦板6Cと、底板6A、各縦板6B,6Cから左,右方向の外側に向けて張出し、前,後方向に間隔をもって複数本設けられた張出しビーム6Dと、各縦板6B,6Cの左,右方向に間隔をもって前,後方向に延び、各張出しビーム6Dの先端側に取付けられた左サイドフレーム6E,右サイドフレーム6Fとを含んで構成されている。
【0016】
図2図3に示すように、底板6Aは、前側に位置して左,右方向に広幅に形成され前記旋回装置3が取付けられる広幅板部6A1と、この広幅板部6A1から後側に延び、左,右の縦板6B,6Cの幅寸法と同じ幅寸法となった狭幅板部6A2とにより形成されている。狭幅板部6A2は、後述のエンジン8よりも後側に延びている。この狭幅板部6A2には、エンジン8(オイルパン8A)の下側に位置してメンテナンス開口6A3が形成されている。メンテナンス開口6A3は、例えばエンジン8のメンテナンスを行うための開口で、通常は後述のアンダカバー15によって閉じられている。
【0017】
さらに、旋回フレーム6の後側には、メンテナンス開口6A3を取囲むように4個のエンジン支持台6Gが設けられている。各エンジン支持台6Gには、エンジンマウント(図示せず)を介してエンジン8を取付けることができる。また、旋回フレーム6には、アンダカバー15以外にも、底板6Aと各サイドフレーム6E,6Fとの間を覆うように、他のアンダカバー15が取付けられている。
【0018】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム6の後側、即ち、左,右の縦板6B,6Cの後部に取付けられている。カウンタウエイト7は、フロント装置5との重量バランスをとるもので、凸円弧状をした後面を有する重量物として形成されている。
【0019】
エンジン8は、原動機を構成するもので、カウンタウエイト7の前側となる旋回フレーム6の後部位置に、旋回フレーム6に対して左,右方向に延びる横置き状態で設けられている。エンジン8の左側には、後述の熱交換器10に冷却風を供給するための冷却ファン11が設けられている。一方、エンジン8の右側には、後述の油圧ポンプ9が取付けられている。
【0020】
また、エンジン8は、各部をエンジンオイルによって潤滑、冷却するようになっている。このため、エンジン8の下部には、エンジンオイルを貯留するためのオイルパン8Aが設けられている。さらに、エンジン8には、例えばエンジン8内の水等を排出するためのドレンホース8Bが下向きに延びて設けられている。このドレンホース8Bの先端側(下端側)は、アンダカバー15のホース挿通開口17を通って機械室13の外部に延びている。
【0021】
油圧ポンプ9は、エンジン8の右側に設けられている。油圧ポンプ9は、エンジン8によって回転駆動されることにより、作動油タンク(図示せず)から供給される作動油を、圧油として制御弁装置(図示せず)に向け吐出するものである。
【0022】
熱交換器10は、エンジン8に対して左,右方向の一側となる左側に配置され、旋回フレーム6に取付けられている。熱交換器10は、エンジン冷却水を冷やすラジエータ、作動油を冷やすオイルクーラ、これらを囲む枠体等を含んで構成されている。
【0023】
冷却ファン11は、熱交換器10とエンジン8との間に設けられ、例えばエンジン8によって回転されるものである。この冷却ファン11は、熱交換器10とエンジン8と左,右方向の一直線上に配置され、後述する建屋カバー12の外部から吸込んだ冷却風を熱交換器10に流通させる吸込式の冷却ファンとして構成されている。そして、冷却ファン11は、外部から冷却風を吸込むことにより、この冷却風を熱交換器10に供給する。また、熱交換器10を通過して温度上昇した冷却風は、エンジン8の周囲を流れ、建屋カバー12の排気口(図示せず)、アンダカバー15の導風開口18から外部に排出される。なお、冷却ファン11は、エンジン8と切離し、電動モータまたは油圧モータを用いて回転させる構成としてもよい。
【0024】
建屋カバー12は、後述のキャブ22とカウンタウエイト7との間に位置して旋回フレーム6上に設けられている。建屋カバー12は、エンジン8、油圧ポンプ9、熱交換器10を含む旋回フレーム6上の搭載機器を覆うものである。具体的には、建屋カバー12は、熱交換器10の左側を覆う左面カバー部12Aと、油圧ポンプ9等の右側を覆う右面カバー部12Bと、各カバー部12A,12Bの上側に位置してエンジン8、油圧ポンプ9および熱交換器10の上側を覆う上面カバー部12Cとを含んで構成されている。
【0025】
ここで、冷却風の流れ方向の上流側となる左面カバー部12Aの上側位置には、外気を吸込むための吸気口12A1が設けられている。一方、冷却風の流れ方向の下流側となる上面カバー部12Cの右側部位には、温度上昇した冷却風を排出するための排気口(図示せず)が設けられている。
【0026】
また、建屋カバー12の内部には、エンジン8、油圧ポンプ9、熱交換器10を覆う機械室13が形成されている。この機械室13は、建屋カバー12の左面カバー部12A、右面カバー部12B、上面カバー部12C、旋回フレーム6および後述のアンダカバー15によって覆われた左,右方向に長尺な空間として形成されている。一方で、機械室13は、冷却風の流れ方向の上流側に位置する吸込室13Aと、エンジン8が配置されるエンジン室13Bと、油圧ポンプ9が配置されるポンプ室13Cとに区画されている。吸込室13Aとエンジン室13Bとは、熱交換器10によって仕切られ、エンジン室13Bとポンプ室13Cとは、後述のファイヤウォール14によって仕切られている。
【0027】
ファイヤウォール14は、エンジン8と油圧ポンプ9との境界位置に配置され、旋回フレーム6と建屋カバー12の上面カバー部12Cとに亘って上,下方向に延びている。ファイヤウォール14は、エンジン8と油圧ポンプ9との間を遮るものである。これにより、ファイヤウォール14は、油圧ポンプ9の周囲で作動油の漏れが生じた場合でも、漏れ出た作動油がエンジン8側に飛散するのを防止することができる。
【0028】
ここで、ファイヤウォール14は、冷却ファン11によってエンジン8の周囲を流れる冷却風を遮るから、流れが遮られた冷却風は、エンジン室13Bから外部に排出されることになる。このときに、冷却風は、上面カバー部12Cの排気口と後述するアンダカバー15の導風開口18を通って排出される。
【0029】
次に、本実施の形態の特徴部分となるアンダカバー15の構成および冷却風の排出方向について詳細に説明する。
【0030】
図2図3に示すように、アンダカバー15は、エンジン8の下側に位置して旋回フレーム6を構成する底板6Aの下面に設けられている。アンダカバー15は、他のアンダカバー20,21と協働して機械室13を下側から閉塞するものである。アンダカバー15は、底板6Aのメンテナンス開口6A3を覆うもので、周囲が複数本のねじ部材16を用いて底板6Aの狭幅板部6A2に下側から取付け、取外しが可能に取付けられている。
【0031】
図4図5に示すように、アンダカバー15は、エンジン8に沿って延びるように長方形状の板体として形成されている。アンダカバー15の周囲には、ねじ部材16が挿通される複数個、例えば5個のねじ挿通孔15Aが設けられている。アンダカバー15には、底板6Aに取付けられた状態において冷却風の流れ方向の上流側から導風開口18、ホース挿通開口17および他の導風開口19が形成されている。
【0032】
ホース挿通開口17は、開口を構成するもので、導風開口18と他の導風開口19との間に1個配置されている。ホース挿通開口17は、アンダカバー15の長さ方向の中間部よりも冷却風の下流側に位置して上,下方向に貫通した正方形状の開口として形成されている。このホース挿通開口17は、前述したエンジン8のドレンホース8Bを挿通させるものである。なお、ホース挿通開口17は、ドレンホース8Bを挿通させる開口であるから、正方形状以外にも、長方形、円形等の他の形状とすることができる。
【0033】
ここで、ホース挿通開口17は、上,下方向に貫通しただけの開口となっている。従って、機械室13(エンジン室13B)からホース挿通開口17を通じて排出された温度上昇した冷却風は、仮想線の矢示Aで示すように、排出されてから様々な方向、例えば、熱交換器10側、下側、油圧ポンプ9側に流れる。この場合、温度上昇した冷却風が熱交換器10側に逆流すると、再度機械室13の吸込室13Aに吸込まれることがあり、熱交換器10に供給された場合には冷却性能の低下を招いてしまう。
【0034】
そこで、本実施の形態では、アンダカバー15に導風開口18を設けることにより、温度上昇した冷却風が熱交換器10側に逆流するのを防止する構成としている。
【0035】
導風開口18は、アンダカバー15に設けられ、エンジン室13B内の温度上昇した冷却風を排出するものである。このときに、導風開口18は、機械室13内の冷却風を熱交換器10から離れる方向に向けて外部に排出するものである。導風開口18は、アンダカバー15を底板6Aに取付けた状態で、冷却ファン11とホース挿通開口17との間に配置されている。図4図5に示すように、導風開口18は、複数のスリット部18Aと、各スリット部18Aにそれぞれ設けられたルーバ部18Bとにより構成されている。
【0036】
スリット部18Aは、冷却風の流れ方向に対して交差する方向、即ち、アンダカバー15を底板6Aに取付けときの前,後方向に延び、左,右方向に間隔をもって例えば9本設けられている。各スリット部18Aは、冷却風の流れ方向の上流側が直線部18A1となり、下流側が湾曲部18A2となることにより縦長なD字状の開口として形成されている。
【0037】
ルーバ部18Bは、各スリット部18Aの上側(エンジン室13B側)を覆うようにそれぞれ設けられている。各ルーバ部18Bは、各スリット部18Aの熱交換器10側、即ち、直線部18A1側を開口させ、熱交換器10から離れた側、即ち、湾曲部18A2側を閉塞するようにスリット部18A上を覆っている。ここで、ルーバ部18Bは、スリット部18Aの上側を覆うものであるから、エンジン8の騒音が外部に漏れるのを防止できる上に、外部の異物が入り込むのを防止することができる。
【0038】
図5に示すように、導風開口18は、エンジン室13B内を流通する冷却風を、各ルーバ部18Bで案内して各スリット部18Aから外部に排出することができる。この場合、導風開口18は、冷却風を各ルーバ部18Bに沿って流すことにより、実線の矢示Bで示す方向、即ち、熱交換器10から離れる方向(冷却風の流れ方向の下流側)に向けて外部に排出することができる。従って、導風開口18から排出された冷却風は、ホース挿通開口17から排出された冷却風を白抜きで示す矢示C方向に押圧し、熱交換器10から離すことができる。
【0039】
他の導風開口19は、導風開口18とは別にアンダカバー15に設けられている。他の導風開口19は、ホース挿通開口17よりも冷却風の流れ方向の下流側に配置されている。他の導風開口19は、導風開口18のスリット部18A、ルーバ部18Bと同様のスリット部19Aとルーバ部19Bとが左,右方向に間隔をもって例えば3本ずつ設けられている。これにより、他の導風開口19は、導風開口18と同様に、冷却風を矢示Bで示す方向に向けて外部に排出することができる。
【0040】
また、旋回フレーム6には、機械室13を下側から覆う他のアンダカバー20,21等が設けられている。熱交換器10側のアンダカバー20には、導風開口18,19と同様の導風開口20Aが設けられている。一方、油圧ポンプ9の下側に位置するアンダカバー21には、油圧ポンプ9が発生する熱を排出するために、複数個の丸孔からなる排熱用の開口21Aが設けられている。
【0041】
なお、図1図2に示すように、キャブ22は、旋回フレーム6の左前側に位置して設けられている。このキャブ22は、オペレータが搭乗するもので、その内部には、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0042】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0043】
油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体4のキャブ22に搭乗し、エンジン8を始動して油圧ポンプ9を駆動する。これにより、油圧ポンプ9から圧油が吐出され、この圧油は制御弁装置(図示せず)を介して、下部走行体2、フロント装置5の各種油圧アクチュエータに供給される。
【0044】
キャブ22に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(図示せず)を操作したときには、下部走行体2により車両を前進または後退させることができる。一方、キャブ22内のオペレータが作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、フロント装置5を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0045】
油圧ショベル1を稼動しているときには、冷却ファン11が回転駆動されることにより、建屋カバー12の左面カバー部12Aに設けられた吸気口12A1から機械室13の吸込室13A内に外気を吸込み、冷却風として熱交換器10に供給する。これにより、熱交換器10では、エンジン冷却水や作動油を冷却することができる。
【0046】
一方、熱交換器10を通過して温度上昇した冷却風は、エンジン室13B内をファイヤウォール14に向けて流れる。この冷却風の一部は、アンダカバー15に設けたホース挿通開口17、導風開口18および他の導風開口19から外部に排出される。このときに、ホース挿通開口17は、ドレンホース8Bを挿通させるために上,下方向に貫通した開口となっているから、エンジン室13Bからホース挿通開口17を通じて排出された温度上昇した冷却風は、熱交換器10側に逆流することがある。
【0047】
然るに、本実施の形態によれば、旋回フレーム6の下面には、エンジン8の下側に位置して建屋カバー12によって形成された機械室13を下側から閉塞するアンダカバー15が設けられている。このアンダカバー15には、冷却風の流れ方向で冷却ファン11よりも下流側に位置して開口としてのホース挿通開口17が設けられている。さらに、アンダカバー15には、冷却ファン11とホース挿通開口17との間に配置され、熱交換器10を通過した冷却風を熱交換器10から離れる方向に向けて外部に排出する導風開口18が設けられている。
【0048】
従って、導風開口18は、熱交換器10を通過した冷却風を熱交換器10から離れる方向に向けて外部に排出することにより、ホース挿通開口17から排出される温度上昇した冷却風を、熱交換器10から離すように案内することができる。この結果、温度上昇した冷却風が再度吸込まれるような事態を防止できるから、熱交換器10による各種流体の冷却効率を向上することができる。
【0049】
エンジン8の下側に位置するアンダカバー15にホース挿通開口17、導風開口18等を設ける構成としているから、スリット状の導風開口18だけではなく、大きく開口したホース挿通開口17からも冷却風を排出することができる。これにより、機械室13内におけるヒートバランスを良好にして信頼性を向上することができる。
【0050】
また、導風開口18は、冷却風の流れ方向に対して交差する方向に延びる複数のスリット部18Aと、各スリット部18Aの熱交換器10側を開口させ、熱交換器10から離れた側を閉塞するようにスリット部18A上を覆ってそれぞれ設けられた複数のルーバ部18Bとにより構成されている。エンジン8の周囲を流れる冷却風を、各ルーバ部18Bに沿わせることにより、この冷却風を熱交換器10から離れるように各スリット部18Aから排出することができる。
【0051】
さらに、アンダカバー15には、導風開口18とは別に、ホース挿通開口17よりも冷却風の流れ方向の下流側に位置して他の導風開口19が設けられている。これにより、温度上昇した冷却風の排出量を増やすことができ、機械室13内のヒートバランスをより一層良好にすることができる。
【0052】
次に、図6は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、アンダカバーに開口と導風開口だけを設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
図6において、第2の実施の形態によるアンダカバー31は、第1の実施の形態によるアンダカバー15と同様に、長方形状の板体からなり、前述したホース挿通開口17と導風開口18とが設けられている。しかし、第2の実施の形態によるアンダカバー31は、第1の実施の形態で設けられていた他の導風開口19が廃止されている点で、第1の実施の形態と相違している。
【0054】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態は、例えば、機械室13内での発熱量が小さい機種に適している。
【0055】
次に、図7は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、アンダカバーに開口と導風開口だけを設けると共に、開口を複数個の孔から形成したことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0056】
図7において、第3の実施の形態によるアンダカバー41は、第1の実施の形態によるアンダカバー15と同様に、長方形状の板体からなり、開口としてのホース挿通開口42と前述した導風開口18とが設けられている。しかし、第3の実施の形態によるアンダカバー41は、第1の実施の形態で設けられていた他の導風開口19が廃止されている点と、ホース挿通開口42が複数個の丸孔42Aによって形成されている点とで、第1の実施の形態と相違している。
【0057】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、ホース挿通開口42を複数個の丸孔42Aによって形成しているから、外部からの石や木片といった異物が入り込むのを防止しつつ、各丸孔42Aから機械室13内の冷却風を効率よく排出することができる。
【0058】
なお、第1の実施の形態では、アンダカバー15に1個のホース挿通開口17を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、アンダカバー15に2個以上のホース挿通開口17を設ける構成としてもよい。
【0059】
第1の実施の形態では、導風開口18を形成するスリット部18Aとルーバ部18Bとは、それぞれ9本設けた場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、スリット部18Aとルーバ部18Bとを、それぞれ1〜8本または10本以上設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態に同様に適用できるものである。また、他の導風開口19についても、スリット部19Aとルーバ部19Bとを1,2本または4本以上設ける構成としてもよい。
【0060】
第3の実施の形態では、ホース挿通開口42を複数個の丸孔42Aによって形成した場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、ホース挿通開口を複数個の四角孔、三角孔等の他の形状の孔によって形成することもできる。
【0061】
さらに、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
4 上部旋回体(車体)
6 旋回フレーム(車体フレーム)
8 エンジン(原動機)
10 熱交換器
11 冷却ファン
15,31,41 アンダカバー
17,42 ホース挿通開口(開口)
18 導風開口
18A スリット部
18B ルーバ部
19 他の導風開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7