【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のようなトレーラに高圧ガス容器を搭載する場合等には、複数の容器をコンパクトに配置でき、かつ安定的に固定できることが望ましい。コンパクトに配置できるなら、限られたスペース内に多めの高圧ガス容器を設置でき、トレーラにおいては台車を小型化または低重心化できることになる。安定的に固定できることも、当然ながら高圧ガス容器を取り扱ううえできわめて重要である。
【0007】
上記の点に関し、特許文献1・2に記載された高圧ガス容器の固定構造には改善の余地がある。同文献1の例(
図9参照)では、高圧ガス容器の真上に他の高圧ガス容器を配置する構造であるため、上下方向に複数段の容器を配置するとき、1段あたりに、各容器の直径に容器同士の接触を避けるための隙間を加えた高さ寸法が必要となり、搭載高さが増加しがちである。同文献2の例も、拘束部材である板(縦・横の各寸法が高圧ガス容器の胴部の直径より大きい)の上に同様の他の板を載せることによって上下に複数段の高圧ガス容器を配置することになるため、搭載高さが増すことについて同文献1の場合と同じである。
【0008】
請求項に係る発明は、複数の高圧ガス容器を、限られたスペース内にコンパクトに配置し安定的に固定するうえで有利な高圧ガス容器の固定構造、およびそのような固定構造を有する好ましい水素トレーラを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明による高圧ガス容器の固定構造は、筒状の胴部の両端部に当該胴部よりも小径のネック部を有する複数の高圧ガス容器を、上下の複数段にわたり結合して固定するためのもので、特許文献1に記載の例(
図9参照)と同様、2枚の横長のパネルが上記容器の長さ方向に間隔をあけて平行に配置され、各パネルに複数形成された支持孔のそれぞれに上記ネック部が挿入され保持されることによって横並びに複数の上記容器が平行に支持され、各パネルが、上下の縁部同士を突き合わせて積み重ねられたものである。
ただし、発明による固定構造は特許文献1の例とは異なり、上記の各パネルについて、複数形成された上記支持孔の位置が、上記縁部同士を突き合わせて積み重ねられた隣接の(つまり上下に隣接する)パネル2枚において鉛直線上に並んでおらず、かつ、各パネルが、固定用フレームとして設けられた一対の支持柱の間に横長方向の端部を挿入して固定されていることを特徴とする。
図1に示すものは本発明の一例であり、上記の特徴を有している。
【0010】
上記した高圧ガス容器の固定構造には、作用効果に関してつぎのような特徴がある。
a) 上下に隣接するパネル2枚において、支持孔の位置(したがって高圧ガス容器の中心線の位置)が鉛直線上に並んでいない(すなわち、いわゆる千鳥配置またはそれに近い配置となっている)。そのため、各パネルの上下(高さ)方向の寸法を高圧ガス容器の直径以下にすることが可能で、限られたスペースに多数の高圧ガス容器を固定することができる。
たとえば、高圧ガス容器の位置が鉛直線上に並んだ
図9(b)の例では、上下の容器間の接触を防止する目的で上下の各段間に各容器の直径を超える間隔が必要になり、各パネルの上下方向寸法を容器の直径よりも大きくしなければならない。
図10の例でも、パネルに相当する拘束部材の上下方向寸法は容器の直径より大きい。しかし、発明の固定構造では、高圧ガス容器の位置を鉛直線上に並べないため、
図1(a)に示すとおり、上下各段間の容器の間隔、すなわち各パネルの上下方向寸法を、容器の直径と同じかまたはそれより短くすることができる。こうして容器の上下間間隔を短くできると、限られたスペース内に多数の高圧ガス容器を固定できることになる。
b) パネルの高さ寸法を高圧ガス容器の直径以下にすると、積み重ねるとき左右方向へのパネルの位置が正しくなかった場合や左右に移動した場合等に、高圧ガス容器同士が衝突したり不適切な力を受けたりする恐れがある。しかし、発明による固定構造では、上記のように各パネルが固定用フレーム(
図1の符合30)の一対の支持柱(同32・33)の間に挿入されることから、そのような不都合が生じない。そして、各パネルが支持柱間に挿入されて固定されることから、高圧ガス容器がしっかりと安定的に支持される。
【0011】
上記発明の固定構造について、各パネルにおける上記支持孔の位置は、上下に隣接するパネル2枚において、一方のパネルにおける支持孔が、他方(隣接相手側)のパネルに設けられた各支持孔間の中央位置を通る鉛直線上に設けられているとともに、各パネルの上下方向寸法が、高圧ガス容器における胴部の直径以下(つまり胴部の直径と同等またはそれより小さい)であると、とくに好ましい。
【0012】
上下に隣接するパネル2枚においては、上記支持孔の位置が、上下隣接のパネル2枚において鉛直線上に並んでいないというだけでなく、水平方向にできるだけ大きく離れているのが、各支持孔に取り付けられる高圧ガス容器の高さ方向の間隔を狭くするうえで有利である。上に記載したように、隣接のパネル2枚において、一方のパネルの支持孔が他方のパネルに設けられた支持孔間の中央位置を通る鉛直線上に設けられているなら、上下隣接のパネル2枚において支持孔の位置が水平方向に最も離れていることになり、上記した容器間の高さ方向の間隔を最も狭めることができる。
上記のように各パネルの支持孔の位置を定めるとともに、各パネルの上下方向寸法(高圧ガス容器間の上記の間隔に相当する)を容器胴部の直径以下にすることで、高圧ガス容器の配置を最も効果的にコンパクト化することが可能になる。
【0013】
上記発明の固定構造における各パネルは、上記積み重ねのための上下の縁部に、曲げ加工または付加部材の溶接によってそのパネルの主面と直角な部分を設けたものであると、さらに好ましい。
図3の例では、当該直角な部分を、そのパネルの主面と一体の部分を曲げ加工することにより形成している。しかし、パネルの上下の縁部に、山形鋼や帯状部材などの付加部材を溶接することによって、同様にパネルの主面と直角な部分を設けるのもよい。
【0014】
各パネルの上下の縁部に上記のとおりパネルの主面部分と直角な部分を形成すると、前記のように上下の縁部同士を突き合わせて各パネルを積み重ねることが容易になる。上下の縁部同士を突き合わせて各パネルを積み重ねるためには、各パネルに十分な厚みをもたせるのが一般的である。しかし、パネルを厚くすると重量化し、それによって設備コストも取扱い上のコストも増加してしまう。その点、各パネルの上下の縁部に上記のとおり直角な部分を設けると、パネルの厚さを増すことなく、パネルを積み重ねることが容易になる。それは、パネルを含む固定構造を軽量化して、設備上および取扱い上のコストを削減することに通じる。
【0015】
上記各パネルの各支持孔(すなわち、上記のとおり各高圧ガス容器のネック部を挿入する各支持孔)には、そのネック部を挿入し拘束することができるブラケットが取り付けられていると好ましい。
高圧ガス容器のネック部を、それが挿通されたパネル自体によって保持するためには、パネルそのものに相当の厚みをもたせる必要がある。厚みがないと、ネック部を十分に拘束することができず、また高圧ガス容器から作用する力により簡単に変形するため当該容器をしっかりと固定することができないからである。しかし、そのためにパネルの全体を厚くすると、やはりパネルが重くなり、設備コストも取扱いコストも増加してしまう。上記のように各パネルの各支持孔にブラケットを取り付け、高圧ガス容器のネック部をそれらブラケットに挿通して拘束するなら、各パネルの重量化を抑制できるとともに、ネック部の拘束ないし保持を確実化することが可能である。
【0016】
上記の各パネルに、高圧ガス容器の上記ネック部の先端の側から上記胴部の側を観察することを可能にする開口が、上記支持孔とは別に設けられているのもよい。
各パネル(の主面)に上記の各支持孔のみが開いているとすると、複数の高圧ガス容器を各パネルに取り付けて積み上げた状態では、容器の状況や、場合によっては容器の有無を外側から観察することが難しくなる。その点、上記した開口が各パネルに設けられていると、上記ネック部の先端の側から、その開口を通して高圧ガス容器の胴部をいつでも観察することができ、各容器の概略の状況を確認したり容器の数をチェックしたりすることが容易になる。
【0017】
上記の各パネルに、高圧ガス容器と接続された配管(配管の付属機器を含む)を支持するための部材が取り付けられているのも好ましい。
固定された状態の複数の高圧ガス容器のそれぞれには、ガスを供給するための配管が接続される。その配管は、各部に分岐・合流部分を有するうえ、安全弁や各種の調整弁、各種の計器類等を付属させたものであるため、全体として相当の長さがあり重量を有している。そのため、各種の弁や計器類を含む配管が適切なフレーム類により支持されているのが好ましい。上記のように、高圧ガス容器を支持する上記のパネルに配管支持用の適切な部材が取り付けられていて、その部材に配管等を支持させることができるなら、他に専用のフレーム類を設けることなく配管系を効果的に支持することができる。
【0018】
水素が充填された高圧ガス容器を複数搭載して移送する水素トレーラとしては、当該容器が、上記いずれかの固定構造によって台車上に搭載されているものが好ましい。
そのような水素トレーラでは、複数の高圧ガス容器が、コンパクトなスペースに収められるとともに安定的に固定されるからである。高圧ガス容器の搭載高さを抑制できることから、低重心にしてトレーラの走行を安定化させるという利点もある。