(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857202
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】時計の時打ち機構用音楽櫛
(51)【国際特許分類】
G10F 1/06 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
G10F1/06 P
G10F1/06 K
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-37241(P2019-37241)
(22)【出願日】2019年3月1日
(65)【公開番号】特開2019-159320(P2019-159320A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年3月1日
(31)【優先権主張番号】18162207.7
(32)【優先日】2018年3月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ユネス・カドミリ
(72)【発明者】
【氏名】ポリクロニス・ナキス・カラパティス
【審査官】
中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−035264(JP,A)
【文献】
特開2006−201705(JP,A)
【文献】
米国特許第03646848(US,A)
【文献】
実開昭58−052597(JP,U)
【文献】
特開2012−159501(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0366705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10F 1/06,5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計の時打ち機構に適した音楽櫛(1)であり、該音楽櫛は、前記時計内部で前記櫛を固着するためのヒール(2)に接続した数本の歯(3)を備え、前記音楽櫛(1)は、隣接する前記歯(3)の各間隙の延長線上に其々が延伸する前記ヒール(2)における溝(6)を含み、前記歯(3)は、直線で、前記ヒール(2)から同じ平面において互いに平行に配設される、音楽櫛(1)であって、各歯(3)は、作動する各歯(3)の湾曲平面に対して、前記ヒール(2)への接続点(A1、B1)間を対称的に機械加工することによって得られ、前記ヒール(2)の厚さは、前記機械加工の加工端縁に含まれるように形成される前記各歯(3)の前記接続点(A1、B1)間における厚さよりも大きく、前記各溝(6)の前記延長線に沿って伸長する深さは、いずれも前記各歯(3)の前記厚さ以上であることを特徴とする、音楽櫛(1)。
【請求項2】
前記歯(3)を前記ヒール(2)と一体化して、同じ材料で作製した単一片部品を形成することを特徴とする、請求項1に記載の音楽櫛(1)。
【請求項3】
前記歯(3)は、全て又は一部を、前記ヒールから自由端までの長さが異なるものとし、それにより各歯が、作動時に、特定の音を出すようにすることを特徴とする、請求項1または2に記載の音楽櫛(1)。
【請求項4】
各歯(3)は、自由端付近に、カム要素(4)を含み、該カム要素は、傾斜部を形成して、前記時打ち機構の作動部材が、前記傾斜部の通過中に前記歯を作動可能にすることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の音楽櫛(1)。
【請求項5】
各歯(3)の前記自由端側で各カム要素(4)の後方に存在する、各歯(3)の直線部分は、前記音楽櫛(1)の周波数の調節を、前記歯の長さを短くすることによって、達成可能にすることを特徴とする、請求項4に記載の音楽櫛(1)。
【請求項6】
前記ヒール(2)における各溝(6)を、前記ヒール(2)の全厚にも亘り作製することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の音楽櫛(1)。
【請求項7】
前記ヒール(2)の厚さは、各歯(3)の厚さより2〜10倍厚いことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の音楽櫛(1)。
【請求項8】
時計の時打ち機構に適した音楽櫛(1)を製造する方法であって、該方法は:
−ヒール(2)の形状をした部分を含む初期プリフォームを提供するステップであって、前記ヒール(2)は、前記初期プリフォームの片側から自身の厚さより薄い平坦部分の際まで延伸するステップ;
−前記平坦部分に歯(3)を、隣接する歯(3)の各対間に同一の間隙を設けて、前記ヒール(2)からの各歯(3)の長さを異なる又は部分的に異なる長さで、及び作動する各歯(3)の湾曲平面に対して前記ヒール(2)への接続点(A1、B1)間を対称的に、機械加工するステップ;及び
−前記ヒール(2)において、2本の隣接する歯(3)の前記間隙の各延長線上に溝(6)を機械加工するステップ
を含む方法。
【請求項9】
前記歯(3)を、該歯の自由端から、該歯の前記ヒール(2)への取着点まで個別に機械加工することを特徴とする、請求項8に記載の音楽櫛(1)を製造する方法。
【請求項10】
隣接する歯(3)の各対の前記間隙を、フライスカット又はワイヤカットによって作製することを特徴とする、請求項8または9に記載の音楽櫛(1)を製造する方法。
【請求項11】
前記歯(3)を、前記ヒール(2)から前記歯の自由端まで機械加工するステップを、作動する各歯(3)の湾曲平面に対して前記ヒール(2)への前記接続点(A1、B1)間を対称的にするために、円形又は円筒形のフライスカッタを用いて実行すること、及び前記歯及び各歯(3)の前記自由端にある各カム要素(4)の厚さを、円形又は円筒形カッタでフライス加工することによって実現することを特徴とする、請求項8ないし10のいずれか1項に記載の音楽櫛(1)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の時打ち機構のために最適化した音楽櫛に関する。
【0002】
また、本発明は、時計の時打ち機構のために最適化した音楽櫛を作製する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
時計学の分野では、所定時点で又は要求に応じて音又はメロディを発生できる時打ち機構を有する、腕時計等の、時計を提供することができる。メロディを発生するために、時打ち機構内部に、少なくとも1個の音楽櫛を持つ音楽モジュールを取付けることが知られている。この音楽櫛は、数本の歯から成り、該歯を、一般的に、例えば、ブリッジ又はプレート又はケース中間部等の時計の固定部品に取付けるための同じベース又はヒールに、全て接続している。歯は、好適には、直線で、同じ平面において互いに平行である。
【0004】
通常、歯の長さは、音楽モジュールの対応する作動部材によって作動される際に、特定の音を規定する。作動部材は、歯の自由端に作用して、該歯を振動させ、それにより規定した音を発生させる。勿論、数群の同じ長さの平行な歯を有して、それにより作動時に同じ楽音を発生させるようにすることも知られている。
【0005】
図1a及び
図1bは、従来の時打ち機構用音楽櫛の一実施形態を、立体図及び平面図で表している。音楽櫛1は、一片体である。音楽櫛1は、1組の直線的な歯3を含み、該歯3を、該櫛1のヒール2にある穴5を貫通するネジ(図示せず)を特に用いて時計ケース内部に取着するためのヒール2に接続している。これらの歯3は、同じ平面において互いに平行に配設できる。各歯3の間隙は、同一としてもよい。
【0006】
歯3の各自由端は、傾斜部を形成するカム要素4を含む。好適には、傾斜部は、歯3の自由端に対して鋭角を形成する斜面を画成する。音楽櫛1の少なくとも1本の歯3を作動するために、ピン等の作動部材が設けられており、該ピンは、上記作動部材が歯の自由端の方向に移動すると、カム4の傾斜部と接触して、歯3を上昇又は湾曲させる。作動部材が上記カム4を超えて移動すると、歯3は解放され、それにより該歯3は振動して、所定の音を発生する。
【0007】
音楽櫛1の歯3の製造を容易にするために、円形又は円筒形のフライスカッタを、櫛1のヒール2を横断して使用して、作製する歯の長さに応じて線pを画成できる。歯の長さは、特定の周波数を得るように計算され、歯の幅及び厚さは、全ての歯に対して同一である。このように、
図1bで見られるように、点Aと点Bは、歯3の湾曲面に関して対称でなく、それが原因で、ピンが通過することによって歯が湾曲する際に、歯が捩れる。その結果、湾曲エネルギは、湾曲及び捩れモードでは、分散されてしまう。湾曲は、純粋ではなくなり、その結果、歯に伝達されるエネルギは、放出されるのが望ましいモードである、第1湾曲モードで最大にならない。
【0008】
歯3の第1固有湾曲モードは、正確に作動されず、歯3が、湾曲及び捩りモードで振動するため、弱音(dampening)が一層発せられる。これらの状態では、作動する歯3が湾曲する際、歯3をヒール2に取着した点で応力が発生するため、作動した歯3から別の隣接する歯3に振動伝達があることに注目されたい。この応力は、隣接する歯3同士が結合し、その結果、かかる歯3の不所望な湾曲が生じた場合に、隣接する歯3に予応力を加えるかも知れない。その結果、ピンが、歯3の自由端でカム4を通過すると、ピンは、この歯3だけでなく、隣接する歯3も作動させる。その際、単一の歯3を作動することによって発生する単音の代わりに、同時に振動するが、低い振幅で振動する2、3又は4本の隣接する歯3があるかも知れないため、メロディに音の干渉がある。そのために、不協和音を生成し、音は、所望するような単音ではなくなることが観察され、先行技術の音楽櫛の欠点となっている。
【0009】
米国特許第3,013,460号(特許文献1)では、特定数の歯を有する音楽櫛について開示しており、該歯全てがヒールに接続され、ヒールと歯が一体となっている。櫛は、ネジによってプレートに固定されてもよく、該ネジは、ヒールの上にあるカバープレートの開口部、及びヒールの開口部を貫通する。歯の厚さを、研削ホィールによって調節するが、該ホィールを、ヒールから各歯の一部分上に移動して、櫛のメロディを調節できる。プレートカバーは、各歯の機械加工部分を隠すのに役立つ。しかしながら、欠点としては、歯の1本を作動した際の不協和音を回避するために、ヒールから歯を機械加工する点に関して、全く記載されていないことがある。
【0010】
スイス国特許第498463号(特許文献2)では、音楽櫛について開示している。この音楽櫛は、ヒールに接続し、該ヒールと一体化して形成された数本の直線的な歯を含む。また、ヒールは、歯の間隙の延長線上に溝も含む。しかしながら、欠点としては、歯の1本を作動した際の不協和音を回避するために、本体から歯を機械加工する点に関して、全く記載されていないことがある。
【0011】
日本国特許出願第2001−215956号(特許文献3)では、互いに平行な歯及びヒールに作製した溝を有する音楽櫛について開示している。しかしながら、欠点としては、歯の1本を作動した際の不協和音を回避するために、ヒールから歯を機械加工する点に関して、全く記載されていないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,013,460号
【特許文献2】スイス国特許第498463号
【特許文献3】日本国特許出願第2001−215956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、作動した歯から隣接する歯に振動が伝達するのを回避し、且つ不協和音を生成させないようにするために、時計の時打ち機構用に最適化した音楽櫛を提供することによって、現状技術の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は、独立請求項1で規定した特徴を含む、時計の時打ち機構用に最適化した音楽櫛に関する。
【0015】
音楽櫛の特定の実施形態については、従属請求項2〜8で規定する。
【0016】
本発明による時打ち機構用に最適化した音楽櫛の一利点は、各歯の間隙の延長線上で、ヒールに溝を作製し、該溝により、歯を互いから分離し、1本の歯から別の歯に振動が伝達するのを抑制できる点である。更に、これは、作動した歯とヒールとの間の取着点への応力も、高精度で抑制する。実際に、歯を作動させると、歯の湾曲により、歯の取着点で応力が発生するが、ヒールにある溝のために、この応力は、隣接する歯に予応力を加えるのに十分ではなく、従って、作用しないままとなる。
【0017】
有利には、かかる最適化した音楽櫛を製造中、各歯を、円形又は円筒形のフライスカッタで個別に機械加工して、歯の湾曲平面に対してヒールへの接続点間を対称的にする。その結果、第1湾曲モードを、作動ピンが通過するにつれて該ピンが歯を湾曲する際に、完全に作動させる。第1湾曲モードでは、その結果、伝達されたエネルギは、最大になる。同じことが、振幅に関しても当てはまり、振幅も最大になり、メロディの音響レベルや音に対する知覚を増大させる効果がある。
【0018】
また、本発明は、独立請求項9で規定した特徴を含む、時計の時打ち機構用に最適化した音楽櫛を製造する方法にも関する。
【0019】
音楽櫛を製造する方法の特定のステップを、従属請求項10〜12で規定する。
【0020】
時計の時打ち機構用音楽櫛の、及び該音楽櫛を製造する方法の目的、利点及び特徴については、以下の記載で、特に図面を参照して、一層明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】時打ち機構用の先行技術の音楽櫛の一実施形態の立体図を表す。
【
図1b】時打ち機構用の先行技術の音楽櫛の一実施形態の平面図を表す。
【
図2a】本発明による時打ち機構用に最適化した音楽櫛の一実施形態の立体図を示す。
【
図2b】本発明による時打ち機構用に最適化した音楽櫛の一実施形態の平面図を示す。
【
図3a】歯の各作動時に音の干渉を生じる従来の音楽櫛を示す。
【
図3b】歯の各作動時に音の干渉の無い本発明による最適化した音楽櫛を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の記載では、少なくとも1個の音楽櫛を備えた時計の時打ち機構の、当該技術分野で周知である全ての部品については、簡潔にのみ記載する。
【0023】
図2a及び
図2bは、時打ち機構の音楽モジュール用音楽櫛1の一実施形態を表している。櫛1は、1組の歯3を含み、該歯は、直線としてもよい。これら歯3を、同じ平面において互いに平行に配設できる。各歯3の間隙を、同一にしてもよい。各歯の片端部を、同じヒール2に固定する。ヒール2は、該ヒール2を例えば、プレートに接続したブリッジに固定するために、又は音楽腕時計等の時計のケース内部にあるプレート又は中間部に直接固定するために、ネジ(図示せず)を通すための穴5を有する。好適には、同じ材料製の単一部品、即ち一片体の音楽櫛1を形成するように、歯3をヒール2と一体化させる。材料は、例えば、鋼鉄若しくは銅等の金属素材、又は金若しくはプラチナ等の貴金属、又は金属ガラス等の非晶質構造の材料としてもよい。
【0024】
音楽櫛1の歯3を作動させるために、カム要素4を設けてもよく、該カム要素4は、各歯3の自由端で、傾斜部を画成する。好適には、カム4の傾斜部は、歯3の自由端に対して鋭角を画成する斜面を形成する。ピン等の作動部材は、対応する歯3を持上げる又は湾曲させるように、カム4の傾斜部と接触できる。対応する歯3の各作動ピンを、例えば、時打ち機構の円筒又は円板上に配置してもよい。一般に、カム4による各歯の作動を、歯3に平行な平面で、作動させる歯3の自由端の方向に、各ピンを移動させることによって、達成する。作動部材、即ち、ピンが上記カム4を超えて移動すると、歯3が解放され、それにより歯が振動し始めて、特にヒール2からの歯の長さによって規定される特定の音を放つ。
【0025】
各歯3の自由端の各要素4より後方にある歯の直線部分は、音楽櫛1の周波数調律に必要である。音楽櫛1を、歯の基本的な周波数が、メロディ又はチャイムを形成する所望の周波数より低い状態に保つ歯3を有するように寸法取りする。この端部から材料を除去することで、各歯3の周波数を増大でき、その結果、各歯を5Hz以内に正確に調律できる。こうして各歯3の長さを調節することで、歯3の周波数が所望の周波数より高い場合に、歯3の厚さを調節せずに済む。厚さの調節は、各歯3の剛性を低下させるであろう。歯3の湾曲中に蓄えたエネルギが減少すると、同様に音響レベルも低下するであろう。
【0026】
本発明によると、歯3のヒール2への取着点に、即ち歯3をヒール2に接合する箇所に、溝6を、ヒール2内で、隣接する歯3の各間隙の延長線上に延伸させて、配設する。好適には、各溝6の幅は、2本の隣接する歯3の間隙と同一にできる。各溝6は、直線で、2本の隣接する歯3の対応する間隙の方向に沿って作製できる。各溝6の深さを、各歯3の厚さと同一にする、又は大きくして、上記歯の作動中に1本の歯3から別の隣接する歯3に振動が伝達するのを回避してもよい。ヒール2の厚さを、各歯3の厚さより2倍から10倍の間で選択してもよい。また、溝6を、ヒール2の厚さ全体に亘り作製してもよい。
【0027】
このヒール2の厚さは、各歯3の状態を挟着ビーム(clamped beam)として規定するのに必要である。このヒール2の余分な厚さが無い、即ち、ヒール2が歯3の又は溝6の厚さと同様な厚さであれば、各歯3の剛性は、低下するであろう。その結果、ヒール2と各溝6の端部までの歯3を構成する組立体は、各歯3の作動中に変形を受けるであろう。また、ヒールの厚さにより、歯3を自由に振動可能にしつつ、時計のプレート又は外装部品と共に支え面を有することも可能になる。ヒール2無しでは、各歯3を様々な歯3の長さに応じて異なる位置に取着するため、幾つかの歯3は、プレート又はケース中間部と直接接触した状態になるだろう。これは、作動した歯3が適切に振動するのを妨げ、弱音を増加させるだろう。
【0028】
音楽櫛1を作製するために、片側から歯を作製するより薄い厚さの平坦部分の際まで垂直に延伸するヒール2の形状を既に含むプリフォームを選択可能である。平坦部分の上面は、ヒール2の上面に平行に延伸した状態にする。
【0029】
従って、音楽櫛1の歯3を、歯3の自由端からヒール2への取着点まで個別に機械加工する。2本の隣接する歯3の間隙を、例えば、フライスカッタ又はワイヤカッタとしてもよい機械加工ツールによって作製する。ヒール2にある溝6を、2本の隣接する歯の各間隙の後に、又は音楽櫛1の機械加工の終わりに、機械加工ツールによってそのまま直に得られる。各歯3、及び各歯3の自由端のカム4の厚さを、フライス加工によって、特に円形又は円筒形のフライスカッタを用いて、調節する。
【0030】
図2bに示したような、ヒール2への各歯3の取着点で、この種の機械加工は、ヒール2に接続した歯3の湾曲平面に対して点A1と点B1とを対称にできる。点A1とB1を接続する各線p1は、各歯3の方向に直交する。その結果、ピンが通過するにつれてピンが歯3を湾曲する際に、第1湾曲モードを、完全に作動する。第1湾曲モードでは、伝達したエネルギは、最大となる。また、振幅も最大となり、メロディの音響レベル及び音に対する知覚を増大させる効果がある。
【0031】
また、音楽櫛1のヒール2にある溝6に関して、該溝は、歯3を互いに分離させ、1本の歯3から別の隣接する歯3への振動伝達を抑制することを意図する点にも注目すべきである。実際に、歯3を作動する、例えばピンによって湾曲すると、歯3の湾曲により、歯3のヒール2に対する取着点に応力が生じる。これらの溝6は、音楽櫛1の歯3間の結合を防ぎ、作動した各歯3の取着点に対する応力を高精度で抑制する。溝6は、通常の運動が隣接する歯に伝わるのを防ぐ。本発明のこの構成において音楽櫛1が発生するメロディは、単音(pure)であり、音の干渉又は不協和音の影響を受けないと考えられる。
【0032】
比較目的で、
図3aと
図3bは、作動中の、例えば、最高音を有する歯3について、
図3aの従来の音楽櫛1と、
図3bの本発明による溝6付きの最適化した音楽櫛1との比較を表している。最小歯3である最高音の歯3の湾曲を受けて、作動した歯3がピンの通過後に振動する点に注目されたい。同じことが、従来の音楽櫛1の場合には、作動した歯3に隣接する歯3にも適用され、隣接する歯も湾曲動作を受けるが、これは、溝6付きの最適化した音楽櫛1の場合には、当てはまらない。最小から最大の振動の大きさを、従来の音楽櫛1でも最適化した音楽櫛1でも3本の歯3で提供し、表すが、最適化した音楽櫛1では、最高音の作動した歯3に隣接する2本の歯3が、通常振動しないため、不協和音を生成せずに、提供し、表せる。
【0033】
以上の記載から、時計の時打ち機構用音楽櫛の幾つかの変形例を、当業者は、クレームで規定した本発明の範囲から逸脱せずに、考案できる。各歯は、長方形又は円形又は他の断面を有する直線形状としてもよく、該断面は、歯の全長に亘り同一としてもよい。また、断面は、各歯の長さに沿って徐々に又は断続的に変化してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 音楽櫛
2 ヒール
3 歯
4 カム要素
5 穴
6 溝