【実施例】
【0088】
実施例1:ルシフェラーゼを発現する同所性膵臓腫瘍モデルにおけるMM−398の活性(L3.6pl)
MM−398の抗腫瘍活性を、同所性膵臓癌モデル(L3.6pl)、高度低酸素前臨床腫瘍モデルにおいて評価した。約2.5×10
−5 L3.6pl膵臓腫瘍細胞は、膵臓への直接注射により移植した。生物発光画像(BLI)を、腫瘍負荷検知/定量化のために、時間をかけて追跡した。MM−398および遊離イリノテカンは、毎週20mg/kgの用量で、3週間投与した。
図1に示すように、MM−398(リポソームCPT11)は、対照(HBS)および遊離CPT11と比較して、大きな抗腫瘍活性を有していた。
実施例2:遊離イリノテカン、またはリポソームイリノテカンでの治療に続く、腫瘍におけるSN−38の蓄積(MM−398)
【0089】
同所性膵臓癌モデルにおいて観察された抗腫瘍活性は、イリノテカンを、局所的により活性のSN−38に変換するときの、マクロファージの影響によるものであると仮定した。この仮説を検査するために、ヒト結腸癌細胞(HT−29)をSCIDマウスに皮下注射し、腫瘍の大きさが1000mm
3に達したときに、遊離イリノテカン、またはMM−398を40mg/kg静脈注射した。担腫瘍マウスを異なる時点で犠牲にし、両方の群からの腫瘍を摘出し、SN−38の濃度を測定した。
【0090】
図2に示すように、遊離イリノテカンと比較して、MM−398の腫瘍AUC
SN―38において、20倍の増加があった。長い暴露時間は、細胞周期を通して進行するにつれ、ゆっくり増殖する癌細胞の活性代謝物への長時間暴露を可能にする。さらに、この活性は、腫瘍内低酸素症の減少、および腫瘍における血管形成、転移、および免疫抑制環境上の、後続の下流効果に起因すると、仮定した。
実施例3:HT29異種移植モデルにおける、炭酸脱水酵素IX染色に関する、MM−398の効果
【0091】
MM−398が低酸素症のマーカーを減少させるかどうかを検査するために、ヒト結腸癌細胞(HT−29)モデルで実験を行った。具体的には、HT−29細胞をヌードマウスに皮下注射し、13日目にPBS対照、または1.25、2.5、5、10、または20mg/kgのMM−398のいずれかを、静脈注射した。MM−398を表示された用量で、4週間の間、週1回投与した。両方の群からの腫瘍(n=5)は、最終の投与から24時間後に摘出した。凍結腫瘍切片を、炭酸脱水酵素IX(CAIX)の免疫組織化学的染色のために使用した。CAIX染色の定量化は、Definiens(登録商標)(Definiens AG、ミュンヘン)ソフトウェアを用いて行った。
【0092】
図3に示すように、MM−398は、低酸素症のマーカーを減少させた。具体的には、
図3のグラフは、CAIX用に中(中部3分の1目)、または高(上部の3分の1)の強度で染色された細胞の割合を示している。各群からの代表試料も、群平均値も、示されている(平均±標準偏差)。MM−398治療は、用量依存的な方法で、両方の中、および高CAIX陽性細胞の割合を減少させることにより、腫瘍の微小環境を改変する。低酸素症は、耐性疾患と侵攻性疾患の特徴であり、低酸素症の減少が、腫瘍細胞の化学療法に対する感受性を、より高めることが期待される。
実施例4:MM−398はヘキスト染色の灌流を増加する
【0093】
腫瘍微小環境の改変を通して、腫瘍細胞の化学的感受性を変えることに加え、低酸素症の低下は、小分子治療の送達を容易にできる、改善された腫瘍の血管新生を示し得る。MM−398治療は、治療後6日目に、HT29異種移植研究における、CD31(血小板内皮細胞接着分子)染色することにより測定されるような、微小血管密度の増加をもたらした。さらに小分子腫瘍血管新生に関するMM−398の効果を評価するために、ヘキスト33342灌流実験を行った。具体的には、一次膵臓腫瘍をNOD−SCIDマウスで増殖させ、MM−398(20mg/kg)の1用量を投与した。24時間後、動物を犠牲にする20分前に、ヘキスト33342染色を投与した。
図4に示すように、治療されたマウスにおける染色度の増加はp<0.001で、統計的に有意であった。これらのデータは、腫瘍低酸素症を減少させ、小分子灌流を増加させることを通して、腫瘍が5−FU/LVなどの薬剤に対して、より感受性を持たせるように、MM−398が腫瘍の微小環境を改変することを示している。
実施例5:ヒトにおけるMM−398の薬物動態(第I相)
【0094】
MM−398単剤の薬物動態プロファイルを、患者における60、120または180mg/m
2の用量レベルでの第I相臨床研究(PEP0201)、および120mg/m
2の胃癌患者での第II相臨床試験(PEP0206)、で調査した。総イリノテカン、SN−38、およびカプセル化されたイリノテカンの血漿レベルは、これらの研究で測定した。
【0095】
総イリノテカンの最高血清濃度(C
max)は、MM−398の120mg/m
2に対して48から79μg/mlまでの範囲で、125mg/m
2の遊離イリノテカンよりも約50倍高かった。MM−398の総イリノテカン半減期(t
1/2)は、21から48時間の範囲で、遊離イリノテカンの125mg/m
2より約2〜3倍高かった。全般的に見れば、1週間の総イリノテカン曝露(AUC 0−T)は、MM−398の120mg/m
2で、1回の用量で、1200〜1300(μg*h/ml)の範囲で、遊離イリノテカンの300mg/m
2よりも、約50〜100倍高かった。これとは対照的に、MM−398の120mg/m
2でのSN38C
maxレベルは、9から17ng/mlの範囲で、125mg/m
2での遊離イリノテカンよりも、約50%少なかった。全般的に見れば、1週間でのSN38の曝露(AUC 0−T)は、474から997ng*/mlの範囲で、300mg/m
2での遊離イリノテカンにより達成されるよりも、1〜2倍高いだけであった。SN38とイリノテカン総量の両方について、AUCは、MM−398の用量に比例した量よりも少なく増加した。総イリノテカンのものとほぼ一致した、カプセル化されたイリノテカンのPK指標は、イリノテカンのほとんどが、循環中にリポソームに封入されたままであることを示している。5−FU/LVと組み合わせた場合、MM−398PK指標は、有意には変化しなかった。
図5と
図6は、MM398の以前の研究での、PK所見をまとめたものである。
実施例6:第1相 用量増加研究
【0096】
フルオロウラシル、ロイコボリン、およびMM−398を組み合わせた投与法を、そのうち5人が膵臓癌の患者である、16人の被験者において、固形腫瘍の第1相試験で検討した。目標腫瘍応答率、応答時間、および疾患制御率が、研究の効能評価項目であった。15人の効能評価可能患者のうち、2人(13.3%)でPRを確認し、9人(60.0%)がSDを持っており、そして4人(26.7%)がPDを持っていた。全体的な疾患制御率は73.3%であった。部分的応答が、142日および76日それぞれの応答の持続時間で、1人の胃癌患者(80mg/m
2用量レベルで)、および1人の乳癌患者(100mg/m
2用量レベルで)で観察された。80mg/m
2のMTD用量の投与を受けた6人の患者で、1人のPR、4人のSD、および1人のPDがいた。腫瘍応答率および疾患制御率は、それぞれ16.7%、および83.3%であった。主なDLTは、グレード3の下痢、白血球減少症、および好中球減少症、および発熱性好中球減少症であった。MM−398のMTDは80mg/m
2であった。
【0097】
第1相の進行性固形腫瘍(PEP0203)における、5−FU/LVと組み合わせたMM−398の用量増加研究では、AEの合計401の発現は16人の治療被験者(安全集団)から報告され、そのうち74(18.4%)がCTCグレード3、またはそれ以上であった。すべてのAEのうち、231(57.6%)が、研究者によって治療関連であると考えられた。最も一般的な治療関連AEには、吐き気(81.3%)、下痢(75.0%)、嘔吐(68.8%)、疲労(43.8%)、粘膜炎(43.8%)、白血球減少(37.5%)、好中球減少(37.5%)、体重減少(37.5%)、貧血(31.3%)、および脱毛症(31.3%)が含まれた。急性コリン作用性下痢はほとんど観察されなかった。表1は、PEP0203の研究に見られるように、最大CTCグレード、および因果関係(発生率≧20%)による、治療中に発生した、有害反応の、発生率を提供している。表2には、PEP0203の研究で治療された、5人の膵臓癌患者に見られた、グレード3以上の、治療下で発生した有害反応の発生率を提供している。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
実施例7:第3相試験
【0098】
第1相試験(上述)からの有望な効能と安全性データは、MM−398と5−FU、さらにそのうえロイコボリンを加えた組み合わせが、第3相研究でさらに検討されることを保証する。
A.
目標
【0099】
第3相試験の主要目的は、ゲムシタビンベースの治療で進行した転移性膵臓癌患者における、MM−398を用いた、5−フルオロウラシル+ロイコボリン有りまたは無し対5−フルオロウラシルおよびロイコボリンを用いた治療後の、全生存を比較することである。第2の目的は以下を含む。
【0100】
治験治療群と対照治療群との間の、時間事象の効能評価項目を比較すること(すなわち、進行無し生存期間(PFS)、および治療失敗時間(TTF))
・治療群の間で、客観的奏効率(ORR)を比較すること、
・治療群の間で、CA19−9の腫瘍マーカーの反応を比較すること、
・治療群の間で、臨床的有益応答(CBR)率を比較すること、
・癌の研究と治療のための欧州機関(EORTC)の生活の質に関わる中核質問書(
EORTC−QLQ−C30)を用いて、治療群の間で患者報告転帰(PRO)を
評価すること、
・治療群の間で、安全性と有害反応プロファイルを比較すること、および
・単剤として、および5−FUとロイコボリンとの組み合わせで、MM−398の薬
物動態学的特性を決定すること。
【0101】
本研究の肝要な探索目標は、MM−398、およびMM−398+5−FU、およびロイコボリンでの治療後の、毒性と効能に関連するバイオマーカーを診査することである。
B.
研究設計
【0102】
これは、前のゲムシタビンベースの治療で進行した、転移性膵臓癌患者における、MM−398の5−FUとロイコボリン有り、または無し、対、5−フルオロウラシル(5−FU)とロイコボリン(フォリン酸としても知られている)の、非盲検での、無作為化された、3群の第3相試験である。
【0103】
約405人の適格患者が、プロトコル第2版またはそれ以降の下で、この世界的研究に登録されることになる。すべての患者が適格性について評価され、UGT1A1*28対立遺伝子についてスクリーニングされる、最長28日間の検査に参加することになる。適格患者は、1:1:1の比率で、以下の治療群の1つに無作為に選ばれる。
【表3】
【0104】
患者は、中央研究所で、ウエブ自動応答システム(IWRS)を使用して、均等に治療群に無作為に選ばれることになる。無作為化は、以下の予後因子に基づいて層別化される:
・ベースラインアルブミンレベル(≧4.0g/dL対<4.0g/dL)
・KPS(70および80対≧90)
・民族性(白人対東アジア人対その他すべて)
【0105】
治療には周期的に投与する。患者は、疾患の進行(放射線学的または臨床症状の悪化)、耐え難い毒性、または研究終了にいたる他の理由が現れるまで治療される。腫瘍反応は、臨床的徴候や症状に基づく疾患の進行が明らかである場合には、6週間毎またはもっと早く、RECISTガイドライン(Eisenhauer, E. A., et al., “New response evaluation criteria in solid tumors: Revised RECIST guideline (version 1.1). European Journal of Cancer, 2009. 45:pp.228−247)を使用して評価される。すべての患者の腫瘍測定画像は、研究を通して収集され、保存される。しかしながら、すべての治療の決定は、現場の放射線技師および/または疾患状態のPI評価に基づくことになる。スキャンの独立した審査は、ORRおよび/またはPFSの独立した分析が必要であるときに実行し得る。
【0106】
治療中止後は、治療後30日間の追跡調査訪問が必要である。それに引き続き、すべての患者が死亡したか、または研究を撤退したか、いずれか早い方まで、すべての患者の全生存期間を、1ヶ月毎に追跡調査することになる(電話または研究現場への訪問により)。目的疾患進行以外の理由で研究治療から撤退する患者は、追跡調査期間中に、放射線学的進行のために(症候性悪化によって中止した患者を含む)、6週間毎に評価することを継続すべきである。
【0107】
すべての患者は、研究に参加している期間を通して、痛みの評価および鎮痛剤消費量の日誌を記入するように求められ、これは、患者の痛みの強さと、毎日の鎮痛剤消費量の患者の評価を文書化する。患者の反応は、他の指標と共に、臨床的有益応答の評価のために使用される。すべての患者はまた、生活の質を評価するために、EORTC−QLQ−C30質問書に記入することも求められる。
【0108】
本研究の診査目標に対処するために、すべての現場が、地域の規制で禁止されていない限り、基礎研究から応用分野におよぶ研究(TR)手引プロトコル(MM−398−07−03−01.TR)に参加することが必要である。この研究への参加は、患者にとって任意的なものであるので、基礎研究から応用分野におよぶ研究のために、別個の同意を提供させる必要がある。
【0109】
OSの一次解析は、プロトコル第2版、またはそれ以降の下で登録された患者で少なくとも305人が死亡した事象が起きる毎に1回行われることになる。OSのための一次解析の際に研究治療を受けている患者は、中止の基準の1つが満たされるまで、治療を受け続けることになる。研究の過程における安全性データの定期的見直しは、独立したデータ安全性監視委員会(DSMB)により実施される。
図7は研究設計を示している。
C. 患者の選択および中止
【0110】
およそ405人の患者がプロトコル第2版またはそれ以降の下で、この研究に世界的に登録される。研究に含まれるためには、患者は以下を持っている/である必要がある。
1. 組織学的または細胞学的に確認された膵臓外分泌腺の腺癌
2. 文書化された転移性疾患:RECIST v1.1のガイドラインにより定義
された疾患の状態が、測定可能または測定不可能
3. 局所進行性または転移性の設定における、事前のゲムシタビンまたはゲムシタ
ビンを含んだ治療後に文書化された疾患の進行。許可療法の例は以下を含むが
、これらに限定されない
・ 単剤ゲムシタビン
・ 任意の1つのゲムシタビンベースの計画、持続ゲムシタビン有りまたは無
し
・ 白金剤、フルオロピリミジン、またはエルロチニブを後に添加した単剤ゲ
ムシタビン
・ 疾患の再発が術後補助療法を完了した後6ヶ月以内に発生した場合、ゲム
シタビンを術後補助設定で投与する
4. カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)≧70
5. 以下によって証明される適切な骨髄予備能。
・ 造血成長因子を使用しないANC>1,500細胞/μL、および
・ 血小板数>100,000細胞/μL、および
・ ヘモグロビン>9g/dL(9g/dL未満のヘモグロビンレベルを有す
る患者には輸血が許可されている)
6. 以下によって証明される適切な肝機能。
・ 施設の正常範囲内の血清総ビリルビン(胆道閉塞のための胆汁排泄は許さ
れている)
・ アルブミンのレベル≧3.0g/dL
・ アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、およびアラニンアミノ基転
移酵素(ALT)≦2.5×ULN(肝転移が存在する場合≦5×ULN
でも可)
7. 血清クレアチニン≦1.5×ULNによって証明される適切な腎機能
8. 通常のECGまたはいかなる臨床的に重要な所見も伴なわないECG
9. 事前の手術、放射線療法、または他の抗腫瘍治療の影響から回復した
10. 少なくとも18歳
11. 告知に基づく同意を理解し、署名することができる。(または、そうすること
ができる法定代理人を持っている。)
【0111】
患者はすべての上記の包含基準を満たす必要があるが、以下の除外基準のいずれも満たしてはならない。
1. 活性CNS転移(臨床症状で示される脳浮腫、ステロイド要件、または進行性
疾患)
2. 肝疾患、出血、炎症、閉塞、またはグレード>1の下痢を含む、臨床的に有意
な胃腸障害
3. 最後の5年間のすべての二次悪性腫瘍の病歴、上皮内癌または基底細胞癌、も
しくは扁平上皮細胞皮膚癌の前歴を有する被験者が適格である。少なくとも5
年間連続して無疾患であった、他の悪性腫瘍を有する被験者も適格である。
4. 包含の前6ヶ月未満の、重度の動脈血栓塞栓事象(心筋梗塞、不安定狭心症、
脳卒中)
5. NYHAクラスIII、またはIVのうっ血性心不全、心室性不整脈、または
血圧制御不良
6. 治験責任医師の意見で患者の試験への参加を危うくし得る、または研究結果に
影響を与える、スクリーニングの訪問中の、または投与の最初の予定日での、
活動性感染、または原因不明の発熱>38.5℃(治験責任医師の裁量で、腫
瘍熱を有する患者は登録し得る)
7. MM−398他のリポソーム製品、フルロピリミジン、またはロイコボリンの
いずれかの成分に対する、既知の過敏症
8. この研究における投与の最初の予定日前4週間以内に、または治験薬の少なく
とも5半減期未満の間隔、のいずれか長い方の時間内に投与する、治験療法
9. 治験責任医師によって、告知同意へ署名する、研究に協力して参加する患者の
能力を妨げる、または結果の解釈に干渉する可能性が高い、とみなされた、す
べての他の医学的または社会的条件
10. 妊娠または授乳:妊娠の可能性のある女性は、登録時の尿または血清妊娠検査
に基づいた妊娠の検査で、陰性と出なければならない、生殖能を有する男性と
女性両方の患者は、研究中および治験薬の最終投与後3ヶ月間、信頼性の高い
避妊の方法を使用することに、同意しなければならない
【0112】
登録の基準に、明確に従わなければならない。患者は、次の状況の場合、研究治療を中止されることになる。
・ 患者が、RECIST v1.1の基準に基づいた疾患進行の証拠を有している
・ 患者が、悪化の症状を示している
・ 患者が、耐え難い毒性、または以下を必要とする有害事象を体験している。
○ 3回目の用量の減少
○ 患者が、治験責任医師の意見では、研究治療から恩恵を受けていない限り、次
の周期を開始してから21日間より長く治療を保留されている
・ 患者が、PI評価あたりの研究手順に有意に適合していない
・ 患者または患者の主治医が、患者を研究治療から撤退させることを要求している
・ 治験責任医師または治験依頼者が、何らかの理由で、しかし患者(複数可)の権利
、安全性と健康を考慮し、ICH/GCPのガイドライン、および地域の規制に従
って、研究を中止する、または本研究への患者の参加を停止する。
【0113】
患者が追跡調査から失われる、または研究治療から脱退する場合、中止の理由を究明するために、患者に連絡する試みがなされるべきである。追跡調査から失われた患者については、患者を追跡調査からはずすことを検討する前に、1回は配達証明郵便経由を含む、少なくとも3回の文書化された、患者に連絡する試みがなされるべきである。患者が目標疾患の進行以外の理由で研究治療を中止する場合は、患者は、目標疾患の進行が観察されるまで、6週間毎に、放射線疾患評価を受け続ける必要がある。
【0114】
研究治療を中止するすべての患者は、プロトコルで必要とされるように、追跡調査され続ける必要がある。患者が研究の評価項目のために追跡調査されるべきではない唯一の状況は、患者が同意を撤回した場合である。同意の撤回は患者が決定すべきで、患者が研究治療と追跡調査訪問の中止を望んでいるだけでなく、患者の生存期間状況を識別するあらゆる努力を含み、治験責任医師が患者に連絡するためにさらに努力することが、もはや許されていないことも意味しなければならない。
D.
患者を治療群に割り当てる方法
【0115】
すべてのスクリーニング評価が完了し、UGT1A1*28の結果が利用可能になった後に、患者は、コンピュータ化されたウエブ自動応答システム(IWRS)を用いて、1:1:1の比で、以下の治療群のいずれかに無作為化される。
・ 治療群A(治験治療群):MM−398
・ 治療群B(対照治療群):5−FUおよびロイコボリン
・ 治療群C(治験治療群):MM−398、5−FU、およびロイコボリン
【0116】
無作為化は、計画された投与の7日以内に行われる必要がある。無作為化は、以下の予後因子に基づいて層別化される。
・ ベースラインアルブミンレベル(≧4.0g/dL対<4.0g/dL)
・ KPS(70と80対≧90)
・ 民族性(白人対東アジア人対その他)
E.
MM−398の説明
【0117】
MM−398は、リポソーム薬物送達システムの中に封入されたイリノテカン(別名CPT−11としても知られる)である。それは、5mg/mLの濃度で、MM−398を9.5mL含む無菌の、使い捨てバイアルとして供給される。このバイアルは、各10mLのバイアルからの標示量の引き出しを容易にするために、0.5mLの過剰量を含む。
【0118】
MM−398は、光から保護し、2から8℃で冷蔵保存しなければならない。点滴時には、光からの保護は必要ない。MM−398は凍結してはならない。薬物製品をバイアルから引き出して注射器に入れる前後に、責任者は粒子状物質がないか、バイアルの中身を検査すべきである。
【0119】
MM−398は、投与前に希釈しなければならない。希釈液は、室温(15〜30℃)で6時間は、物理的、化学的に安定しているが、冷蔵温度(2〜8℃)で保存し、光から保護することが好適である。希釈した溶液を凍結させてはならない。希釈中に微生物汚染の可能性があるので、希釈した溶液は、冷蔵保管したもの(2〜8℃)は24時間以内、室温(15〜30℃)で保管したものは6時間以内に、使用することを推奨する。
【0120】
MM−398のバイアル20本が、段ボール容器に包装される。個々のバイアルにも、段ボール容器の外側にも、地域の規制要件に従った標示が貼付される。
【0121】
MM−398は以下のように投与を決定し、投与する。すべての患者を、ベースライン時にUGT1A1*28対立遺伝子についてスクリーニングする。
【表4】
【0122】
治療群Aにおいては、MM−398は、治験現場で、各3週間周期の最初の日に、IV点滴により、90分にわたって投与する。治療群Cにおいては、MM−398は、最初の周期の間、IV点滴により、90分にわたって投与する、第1周期内に急性点滴反応が現れなかった場合は、第2周期以降、点滴時間を60分に減少し得る。周期の期間は、治療群Aは3週間で、治療群Cは2週間である。最初の周期の1日目は固定日である、それに続く用量は、各周期±3日の最初の日に投与すべきである。
【0123】
投与の前に、MM−398の適切な用量を、500mLの最終容量まで、5%ブドウ糖注射液(D5W)で希釈しなければならない。インラインフィルター、またはD5W以外のいかなる希釈剤も、使用しないように注意しなければならない。MM−398は、標準的なPVC含有静脈内投与用バッグ、およびチューブを用いて投与し得る。
【0124】
投与するMM−398の実際の用量は、各周期の開始時に、患者の体表面積を計算することにより決定する。計算された総用量において、±5%の変動が、用量投与を容易にするために許容される。MM−398のバイアルは使い捨てバイアルであるので、現場のスタッフは、いかなる使用済みのバイアルも、将来の使用のために保管してはならず、使用済み製品は、廃棄しなければならない。
【0125】
すべての患者は、MM−398点滴前に、イリノテカン投与のための標準的な制度的慣行に従って、デキサメタゾンと5−HT3拮抗薬の標準用量、または他の制吐薬を、前投与されなければならない。アトロピンは、前の周期で急性コリン作用性症状を体験した患者のために、予防的に処方され得る。
F.
5−FUおよびロイコボリンの説明
【0126】
5−フルオロウラシルは、核酸生合成に干渉するピリミジン拮抗薬である。薬物のデオキシリボヌクレオチドは、チミジル酸合成を阻害する、したがって、デオキシウリジル酸からのチミジル酸の形成を阻害し、それ故にDNAの合成に干渉する。それはまたRNA合成を干渉する。
【0127】
ロイコボリンは、プリンおよびピリミジンの合成における、1−炭素転移反応のための、生化学的補因子としての役割を果たす。ロイコボリンは、をテトラヒドロ葉酸への変換のために酵素ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を必要としない。メトトレキサート、および他のDHFR−拮抗薬の効果は、ロイコボリンによって阻害される。ロイコボリンは、フッ化ピリミジン(すなわち、フルオロウラシル、およびフロクスリジン)の細胞毒性効果を高め得る。5−FUは、細胞内で活性化された後に葉酸補因子に伴われ、酵素チミジル酸合成酵素を阻害し、それ故にピリミジン合成を阻害する。ロイコボリンは、葉酸プールを増加し、それによって葉酸補因子とチミジル酸合成酵素を有する活性5−FUとの結合を増加する。
【0128】
FUおよびロイコボリンは、国固有の添付文書に従って保存、および扱われる。市販の5−FUおよびロイコボリンは、治験群Bと治験群Cに無作為化された、研究に関わるすべての患者に提供される。
【0129】
5−FUおよびロイコボリンは、次のように投薬、投与される。
【表5】
【0130】
ロイコボリンは、ロイコボリンの再構成のために、パッケージに挿入された説明書、または標準的な施設のガイドラインに従って、再構成しなければならない。ロイコボリンは、5−FU点滴の前に投与すること。
【0131】
投与される5−FUおよびロイコボリンの実際の用量は、各周期の前に、患者の体表面積を計算することにより決定する。用量投与を容易にするために、計算した総用量±5%の変動は許される。
【0132】
周期1の後に、各新規周期の開始のために、±3日間の空白期間が許され、8、15、および22日目の点滴には±1日の空白期間が許される。
【0133】
すべての患者は、5−FUとロイコボリンの点滴前に、5−FU投与の標準的な施設慣行に従って、標準用量のデキサメタゾン、プロクロルペラジン、または同等の他の制吐薬を前投薬される必要がある。
G.
MM−398に関する重要な治療における留意点
【0134】
以前のMM−398研究からのデータは、広く研究されている活性成分、イリノテカン、と比較した場合、いかなる予期しない毒性も示していない。イリノテカンの使用、およびその毒性を管理する治療手順のための警告、および留意点 を以下に提供する。
下痢
【0135】
イリノテカンは、異なるメカニズムによって媒介されるようにみえる、下痢の初期および後期の両方の形態を、誘導する可能性がある。初期の下痢(イリノテカンの点滴中、または直後に発生する)は、本来はコリン作用性である。これは通常一過性で、まれにしか重篤にならない。これは、鼻炎、唾液増加、縮瞳、流涙、発汗、紅潮、および腹部痙攣を引き起こし得る、腸のぜん動亢進症状を伴うことがある。MM−398の前の周期中に、初期のコリン作用性症状を体験した患者については、治験責任医師の裁量で、アトロピンを予防的に投与すること。
【0136】
後期下痢(一般的には、イリノテカンの投与後24時間超で発生する)は長期化し、脱水、電解質不均衡、または敗血症につながるので、命に関わり得る。後期下痢は、ロペラミドで速やかに治療されるべきで、ロペラミドの後でも下痢が続く場合は、オクトレオチドを考慮すべきである。持続性のまたは重度の下痢に関連した、体液および電解質の喪失は、命を脅かす脱水、腎不全、電解質不均衡をもたらし、心血管疾患の罹患率に寄与し得る。感染性合併症の危険性が増大し、これは化学療法誘発性好中球減少症を有する患者に敗血症をもたらし得る。下痢の患者は、慎重に監視し、脱水状態になった場合は、体液と電解質の代替品を、腸閉塞、発熱、または重度の好中球減少症を発症した場合は、抗生物質的支援を与えること。
好中球減少症
【0137】
イリノテカンでの治療を受けた患者で、重度の好中球減少症後の、敗血症に起因した死亡が報告されている。好中球減少合併症は、抗生物質支援で迅速に管理すること。好中球減少症を慎重に管理するために、G−CFSを使用し得る。事前の抗腫瘍療法を受けながら、グレード3または4の好中球減少症を体験したことが知られている患者は、注意深く監視および管理しなければならない。
過敏症
【0138】
重度のアナフィラキシー、またはアナフィラキシー様反応を含む、過敏性反応が観察されている。疑いのある薬物は直ちに保留し、過敏反応が発生した場合、積極的な治療を与えること。
大腸炎/腸閉塞
【0139】
潰瘍、出血、腸閉塞、および感染症を合併する大腸炎の症例が観察されている。腸閉塞を体験している患者は、迅速な抗生物質支援を受けなければならない。
血栓塞栓症
【0140】
イリノテカン含有法を受けている患者で血栓塞栓事象が観察されているが、これらの事象の特定原因は決定されていない。
妊娠
【0141】
イリノテカンの妊娠カテゴリーはDである。妊娠し得る女性には、イリノテカンでの治療中、妊娠を避けることを助言すること。妊娠が報告された場合は、治療を中止するべきである。患者を研究から撤退させ、結果が判明するまで妊娠を観察するべきである。
静脈部位の注意
【0142】
溢出しないように注意し、点滴部位に炎症の徴候がないか監視すること。溢出が起きた場合は、無菌生理食塩水で部位を洗い流し、氷の利用を推奨する。
特定のリスクがある患者
【0143】
イリノテカンの毎週のスケジュールの臨床試験において、徐々に上昇したベースライン血清総ビリルビンレベル(1.0から2.0mg/dL)を有する患者は、1.0mg/dL未満のビリルビンレベルを有する患者よりも有意に大きな(50.0%[19/38]対17.7%[47/226]、p<0.001)、第1周期のグレード3または4の好中球減少症を体験した可能性を持っていたことが分かった。ギルバート症候群のような、ビリルビンの異常なグルクロン酸抱合を有する患者もまた、イリノテカンでの治療を受けたときに、骨髄抑制のより大きな危険に曝され得る。
急性点滴関連反応
【0144】
紅潮、息切れ、顔の腫れ、頭痛、悪寒、背痛、胸や喉のこわばり、および低血圧を特徴とする急性点滴関連反応が、リポソーム薬で治療された患者の少数で報告されている。ほとんどの患者では、これらの反応は、一般的に、点滴が終了した後24時間以内に消失する。一部の患者では、この反応は、点滴速度を遅くすることによって消失する。リポソーム薬に対して急性点滴反応を体験したほとんどの患者でも、合併症なしの、さらなる点滴を容認し得る。
他の毒性の可能性
【0145】
MM−398、イリノテカンの新しいリポソーム製剤は、カプセル化されていない製剤中のイリノテカンとは異なるので、イリノテカンによって引き起こされるもの以外の毒性の可能性がある。すべての患者は、特に治療の初期の投与中に、薬物毒性を示す兆候や症状について、綿密に監視する必要がある。
H.
用量修正要件
【0146】
投薬は、研究治療に関連する毒性から回復させるために、期日から最大3週間まで保持し得る。毒性からの回復に要する時間が3週間より長い場合、患者が研究治療から恩恵を受けていない限り、その患者の研究は中止すべきで、その場合、研究上の患者の継続は、継続のリスクと利益に関して、治験責任医師と治験依頼者または被指名人との間で、議論すること。
【0147】
毒性に起因して研究の間に患者の用量を減少させた場合、その用量は、研究の期間中減少させたままにする必要があり、以前の用量に再上昇させることは許されない。2つの用量減少を有し、3回目の用量減少が必要な有害事象を体験するいかなる患者も、研究治療を中止しなければならない。
【0148】
点滴反応を監視する。点滴反応は、下記に定義されるアレルギー反応/点滴反応、およびアナフィラキシーの国立癌研究所CTCAE(第4.0版)の定義に従って定義される:
【表6】
研究現場の方針、または以下の治療ガイドラインを、点滴反応の管理に使用すること。
【表7】
【0149】
グレード1またはグレード2の点滴反応を体験する患者のために、将来の点滴は、慎重に、減少した量で(120分にわたって)投与し得る。
【0150】
第2グレード1または2の点滴反応を体験する患者については、デキサメタゾン10mgをIV投与する。その後のすべての点滴は、ジフェンヒドラミン塩酸塩50mgをIVで、デキサメタゾン10mgをIVで、およびアセトアミノフェン65mgを経口で、前投薬すること。
I. 血液毒性のためのMM−398の用量変更
【0151】
新たな治療周期を開始する前に、患者は、
・ ANC≧1500/mm
3
・ 血小板数≧100,000/mm
3
を持っている必要がある。
治療は、回復するための十分な時間遅延されるべきで、回復した上は、治療は、以下の表のガイドラインに従って投与すること。患者が発熱性好中球減少症を持っていた場合、ANCは≧1500/mm
3まで消失されていなければならず、および患者は感染から回復
していなければならない。
【表8】
【表9】
J.
非血液毒性のためのMM−398用量の変更
【0152】
治療は、下痢が≦グレード1に消失するまで、および他のグレード3または4の非血液毒性のためには、グレード1またはベースラインに消失するまで、遅延されるべきである。薬物関連下痢、および他のグレード3または4の非血液毒性のための、MM−398の用量調節のガイドラインを、以下に示す。点滴反応は、上述のように扱われるべきである。
【表10】
【表11】
K.
5−FUおよびロイコボリンの用量変更(治療群Bおよび治療群C)
【0153】
5−FUの用量変更のためのガイドラインを以下に示す。ロイコボリンのために毒性のための用量調整は必要ない。ロイコボリンは、各5−FU投与の直前に与えられなければならない、したがって、5−FUの投与量が保持されている場合、ロイコボリンの投与量も同様に保持すること。患者が点滴反応を体験している場合は、施設のガイドライン、またはMM−398の点滴反応管理のために提供されているガイドラインの、いずれかを使用すること。
L. 血液毒性のための5−FUの用量変更
【0154】
1つの周期内の次の投与の前、または治療の新たなサイクル開始前に、患者は以下を持っていること:
・ ANC≧1500/mm
3
・ WBC≧3500/mm
3
・ 血小板数≧75,000/mm
3(5−FUの製品特性についてのヨーロッパの
要約によると、血小板は治療を開始する前に、≧100,000/mm
3まで回
復しているべきである)
【0155】
治療は、回復のための十分な時間を可能にするために遅延されるべきで、回復した上は、治療は、以下の表に提供されたガイドラインに従って、投与すること。周期の持続時間は6週に固定されており、患者がD8、D15またはD22用量を、毒性が原因で受けられない場合は、その用量は省略されるように検討されることになる。
【表12】
M. 非血液毒性のための5−FUの用量変更
【0156】
治療は、すべてのグレード3または4の、非血液学的毒性が、グレード1またはベースラインに消失されるまで、遅らせるべきである。毒性に関連する5−FUの用量調節のためのガイドラインを、以下に示す。周期の持続時間は6週に固定されていて、患者が、毒性が原因で、D8、D15またはD22用量を受けられない場合は、用量は省略するように検討されることになる。
【表13】
N.
特別な注意を要する他の毒性
【0157】
5−FUおよびMM−398の両方の治療群のために、電解質不均衡を誘発した下痢の設定において発生するQTc延長は、適切な電解質補充によって治療されるべきである。根本的な異常が治療され、ECG異常が好転したら、治療は上記のように、注意深い監視の下、および下痢のために適切な用量の変更で継続し得る。
O.
併用療法
【0158】
根本的な悪性腫瘍のすべての同時病状および合併症は、医療の受容できる地方基準に従って、治験責任医師の裁量で治療する。患者は必要に応じて鎮痛薬、制吐薬、抗生物質、解熱剤、および血液製剤を受けること。ワルファリン型抗凝血剤療法が許可されているが、すべての可能性のある薬物相互作用合併症を避けるために、凝固指標の注意深い監視が不可欠である。血液製剤の輸血を含むすべての併用薬は、適切な症例報告書に記録されることになる。
【0159】
特定の病状の治療のためのガイドラインを以下に説明する、しかしながら、これらの病状の治療のための施設のガイドラインも使用し得る。特別な注意を保証する併用療法は、以下に説明する。
制吐薬
【0160】
個々の患者に禁忌でない限り、デキサメタゾンおよび5−HT3阻害薬(例えば、オンダンセトロンまたはグラニセトロン)を前投薬として、すべての患者に投与する。研究期間中に臨床的に示されるように、制吐剤も処方する。
コロニー刺激因子
【0161】
顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の使用は、好中球減少症、または好中球減少性発熱を有する患者を治療するために許可されている、G−CSFの予防的使用は研究治療を受けている間にグレード3または4の好中球減少症または好中球減少性発熱の少なくとも1回の発症がある、または、以前の抗腫瘍治療を受けている間にグレード3または4の好中球減少症または好中球減少性発熱を文書化したことがある、患者にのみ許可される。
下痢の治療
【0162】
MM−398投与後24時間以内に発症する、急性下痢と腹部痙攣は、コリン作用性症候群の一部として発生し得る。この症候群は、アトロピンで治療される。アトロピンの予防的または治療的投与は、研究中にコリン作用性症状を体験している患者において考慮すること。
【0163】
下痢は衰弱させる可能性があり、まれに命を脅かす。ASCO委員会によって開発された、化学療法誘発性下痢の治療のためのガイドラインを、以下に要約する。
【表14】
【0164】
合成オクタペプチドオクトレオチドは、漸増用量として連続点滴または皮下注射によって投与した場合に、フッ化ピリミジンをベースとした化学療法によって誘発される、下痢の制御に有効であることが示されている。オクトレオチドは、5日間の投与法で、毎日3回2000マイクログラムを最大許容用量で、毎日2回100マイクログラムから、毎日3回500マイクログラムまでの範囲の用量で、投与し得る。患者は治療を通じて、多量の水を飲むように助言されるべきである。
その他の治療
【0165】
他の毒性のための対症療法は、施設のガイドラインに従うこと。脱毛症のコールドキャップでの、または口内炎の氷で冷やした洗口液での、予防は許可される。
P.
禁止療法
【0166】
以下の薬物が、イリノテカンと相互作用するものとして、イリノテカン処方情報に記載されている:セントジョンズワート、CYP3A4誘導抗けいれん薬(フェニトイン、フェノバルビタール、およびカルバマゼピン)、ケトコナゾール、イトラコナゾール、トロレアンドマイシン、エリスロマイシン、ジルチアゼム、およびベラパミル。イリノテカンと相互作用するこれらの薬剤と他の薬剤での治療は、可能な限り避けること。5−FUはワルファリンと相互作用するので、併用が必要な場合は、注意が必要である。すべての他の薬物相互作用については、5−FUおよびロイコボリンの、国固有のパッケージ添付文書を参照すること。
【0167】
以下の治療は、治験中に許可されていない。
・ 細胞毒性、標的薬、内分泌腺療法、または他の抗体を含む他の抗腫瘍療法、
・ 治癒する可能性がある放射線療法、緩和放射線療法が許可されている、および
・ その他すべての治験治療は許可されない。
Q.
検査法
全血球計算
【0168】
全血球計算(CBC)は現場で実行し、白血球数(WBC)、および白血球百分率、ヘモグロビン、ヘマトクリット、および血小板の数を含めること。
血清化学
【0169】
血清化学検査が中央研究室で実行されることになる。さらに、化学的性質は現場でも評価し得る、また、中央研究室検査結果が利用できない場合、現地研究室検査結果を、登録および治療の決定のために使用し得る。登録するために現地研究室検査結果を使用する場合は、現地研究室検査結果はすべての後続治療の決定のために使用すること。血清化学は、電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、および重炭酸塩)、BUN、血清クレアチニン、ブドウ糖、直接および総ビリルビン、AST、ALT、アルカリ性ホスファターゼ、LDH、尿酸、総タンパク量、アルブミン、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩を含む。
CA 19−9
【0170】
すべての患者のCA 19−9のレベルは中央研究室で測定する。
妊娠検査
【0171】
妊娠の可能性のあるすべての女性は、尿または血清妊娠検査を受けること。
UGT1A1*28対立遺伝子
【0172】
すべての血球試料は、ベースライン時に、すべての患者から採取し、UGT1A1*28対立遺伝子状態を検査するために、中央研究室に送る。中央研究室検査結果が、無作為化する時点で利用できない場合、現地研究室検査結果を使用し得る。
薬物動態学的評価
【0173】
PK解析は、中央研究室で行う。血漿PKサンプルは、次の時点で、この研究で無作為化されたすべての患者から、周期1で採取する:
・ 治療群A:点滴の直前、点滴中(点滴の開始後80から90分で)、点滴の開始後
、2.5〜4時間の間およびC1D8。
・ 治療群B:5−FU点滴の終わりに、1つの試料(C1D2)
・ 治療群C:MM−398点滴の直前、MM−398点滴中(点滴の開始後80から
90分で)、MM−398の点滴開始後2.5〜4時間の間、5−FU点滴の終わ
りおよびC1D8。
【0174】
さらに、PK試料は、この試料の採取のために追加の同意を与えた、治療群Aと治療群Cに無作為化された患者から、MM−398の投与後、8から72時間の間の任意の時間に、周期1で採取する。
R.
痛みの評価と鎮痛剤消費量
【0175】
患者が毎日の痛みの強さを、目で見て分かるアナログ尺度で記録し、鎮痛薬の毎日の使用量を文書化するために、痛みの評価と鎮痛剤の消費を記入する日誌が患者に提供される。
S.
EORTC−QLQ−C30
【0176】
生活の質は、EORTC−QLQ−C30機器によって評価される。このEORTC−QLQ−C30は、多文化臨床研究設定において、癌患者の生活の質の信頼の置ける、有効な尺度である。これは9個の複数項目尺度を組み込んでいる:5項目の機能尺度(物理的、役割的、認知的、感情的、および社会的)、3項目の症状尺度(疲労、痛み、および吐き気や嘔吐)、そして、世界的な健康と生活の質の尺度。いくつかの単一項目の症状尺度も含まれている。
【0177】
患者は、評価の表に述べられている時点で、EORTC−QLQ−C30質問票を記入することを求められる。評価は、薬剤投与を検討する前に、患者が試験薬を受け取る日には、記入されていること。EORTC−QLQ−C30質問票の有効な翻訳を入手できる患者のみが、この質問票を記入することを求められる。
T.
全体的な生存期間/研究後の追跡調査
【0178】
患者が30日間の追跡調査訪問を完了した後に、30日間の追跡調査訪問の日から、1ヶ月(+/−1週間)毎に、全体的な生存期間データを収集する。収集しなければならない中止後データが含むものは、疾患の進行の日付(既に文書化されていない場合、患者が目標疾患進行以外の理由で治験治療を中止した場合、患者は、新しい抗腫瘍療法または進行性疾患の開始までは、6週間毎に腫瘍評価を受け続けること)、すべての中止後の全身療法、放射線療法、または外科手術的介入の日付を含む、患者が受領したすべての抗癌治療の文書、および死亡の日付、である。すべての患者を、死亡または研究撤退、いずれか早い方が起きるまで、追跡調査すること。
U.
有害事象の重症度と関連性の決定
【0179】
各有害事象は、http://ctep.cancer.gov/reporting/ctc.htmlで見つけることができ、NCI CTCAE V4.0に従って等級分けされる。CTCAEに記載されていない事象については、重症度は軽度、中度、重度、または生命を脅かす度合い、または致命的度合いと指定し、以下の定義で、NCI CTCAEのグレード1、2、3、4、5にそれぞれ対応する。
・ 軽度:身体障害または無能をもたらさず、治療介入なしに消失する事象、
・ 中度:身体障害または無能はもたらさないが、治療介入を必要とする事象
・ 重度:治療介入を必要とする一時的身体障害、または無能をもたらす事象
・ 生命を脅かす度合い:事象の時に、患者に死の危険がある事象
・ 致命的度合い: 患者に死をもたらす事象
治験責任医師は、有害事象が治験薬の使用に関連している合理的な可能性が存在するかどうかを決定することを試みること。この関係は、関連している、または関連していない、と記載すること。
V.
全生存期間の解析
【0180】
全生存期間(OS)はこの研究の主要評価項目である。全生存期間は、患者を無作為化した日から、死亡の日、または判明している最後の生きていた日までの時間として定義する。死亡したことが、特定の解析のためのデータ算入締切日の時点で知られていない各患者については、締切日前の最後の接触日において、その解析のためにOSを審査する。
【0181】
研究の一次解析は、非層別ログランク検定を用いて、ITT集団において、研究治療の間の、生存期間の二対比較を伴う。検定は、0.05(両面)レベル[25]での、ファミリーワイズ誤差率を強く制御する、ボンフェローニ・ホルムの手順に従って、次のようになる。
【0182】
【数1】
の却下、すなわち、この検定のログランクp値が0.025未満である場合、またはこの検定のログランクp値が0.05未満である場合、および治療群Bと治療群C間の比較のためのログランクp値が0.025未満である場合、MM−398単剤療法は、対照と比較して効果がない。
【0183】
【数2】
の却下、すなわち、この検定のログランクp値が0.025未満である場合、またはこの検定のログランクp値が0.05未満である場合、および治療群Aと治療群B間の比較のためのログランクp値が0.025未満である場合、MM−398併用療法は、対照と比較して効果がない。
【0184】
生存機能と生存期間中央値のノンパラメトリック推定値を得るために、カプラン・マイヤー解析を各治療群に対して実施する。該当する95%の信頼区間は、対数対数法を用いて計算する。ハザード比、および該当する95%信頼区間を推定するために、コックス比例ハザードモデルを使用する。
【0185】
一次解析結果の頑健性を評価するために、ITT集団(示されたものは除く)の全生存期間のための、以下の追加の感度解析を実施する。
PP集団に対する治療のログランク比較
無作為化層別化係数を用いた、層別ログランク解析[層別コックスモデルのハザード
比推定値で]
治療のウィルコクソン比較
治療と予後因子(以下に示す)が包含の候補となるモデル項の、ステップワイズ変数
選択でのコックス転帰モデル(<0.25に入るp値、<0.15を維持するp値)
コックス転帰を使用した、潜在的な独立予後因子を評価するための、単変量解析
研究集団の異なる区分において、治療の効果の違いを検査するための、サブグループ
解析
【0186】
プロトコル・バージョン2(およびそれ以降)の下で登録された患者のみについてすべての解析(一次および感度)を繰り返す。
【0187】
検査されるべき予後因子に含まれるもの。ベースラインKPS、ベースラインアルブミン、民族性、地理的位置、診断時病期、元の腫瘍の位置、前化学療法治療の数、前放射線療法、前の手術、最後の治療からの時間、前治療に対する最高の反応、ベースラインCA19−9、性別、および年齢。
W.
二次効能解析
進行のない生存期間
【0188】
PFSは、無作為化の日から、死亡または進行の日付までの、いずれか早い方、の月数として定義される(RECIST1.1準拠)。研究中に、死亡も進行も、どちらも観察されなかった場合は、PFSデータは、最後の有効な腫瘍評価で審査されることになる。
【0189】
PFSは、対の非層別ログランク検定を用いて、治療群の間で比較する。PFS曲線は、カプラン―マイヤー推定値を用いて推定する。ハザード比、および該当する95%信頼区間の推定値は、コックス比例ハザードモデルを用いて得られる。層別解析はまた、無作為化層別化因子を用いて実施する。層別化変数と他の予後共変量のための治療効果調整を検討する。また、異なる審査および欠落データ帰属方法は、PFSにおける感度解析を実行するために使用し得る。感度解析のための方法論は、統計解析計画で完全に指定される。解析は、ITT、PP、およびEP集団について実施する。
治療失敗までの時間
【0190】
治療失敗までの時間は、無作為化から、毒性による疾患の進行、死亡、または研究中止のいずれかまでの時間で定義される。無増悪生存期間の解析として指定されているカプランマイヤー解析は治療失敗までの時間について実施される。解析は、ITT、PPおよびEP集団について実施される。
目標奏効率
【0191】
ORRに関連する腫瘍評価は、RECISTバージョン1.1を用いて決定する。治験依頼者が、新薬申請を支援するために、または他のどんな理由でも、放射線評価の独立した審査を必要とする場合は、すべての患者の反応状態を、臨床医の独立検査によって、または治験依頼者もしくはその被指名人によって審査し得る。独立検査の評価と治験責任医師の評価との間に相違がある場合は、独立検査の評価が優先される。
【0192】
各治療群の目標奏効率(ORR)は、患者の数と確認されたCR、またはRECISTに従ったPRの最良全体反応を組み合わせて計算する。ORRは、無作為化から進行または研究の終了までに記録された最良の応答である。解析時での目標応答(確認したCR+PR)を体験した患者の数と割合が提示され、比率に対する95%信頼区間が計算される。治療群からの目標奏効率は、ペアワイズフィッシャーの直接確率検定を用いて比較する。解析は、ITT、PPおよびEP集団について実施する。
腫瘍マーカー反応解析
【0193】
CA19−9血清レベルは、治療の開始(ベースライン)前7日以内、その後6週間毎に、測定する。CA19−9の腫瘍マーカー応答は、CA19−9の血清レベルの変化によって評価する。応答は、治療期間中の少なくとも1回のベースラインレベルに対して関係したCA19−9の50%の減少として定義する。腫瘍マーカー反応率の計算には、上昇したベースラインCA19−9値(>30U/mL)の患者のみが含まれる。
患者報告転帰解析
【0194】
EORTC−QLQ−C30質問票の分析は、EORTCガイドライン[22]に従って実施する。
安全性分析
【0195】
治療の緊急有害事象は、治療群、患者、NCI CTCAEグレード、およびMedDRA器官別大分類(SOC)によって提示される。別のリストは、総有害事象、重篤な有害事象、治験薬に関連する有害事象およびグレード3と4の有害事象について提示される。検査データは、治療群および訪問によって提示される。異常な臨床検査値は、できるだけ、NCI CTCAEグレードに従って評価する。QTcの評価は、フリデリシアの補正方法に基づいて行う。CTCAE基準は、QTc
F(すなわち、グレード3=QTc≧500msec)に適用する。すべての安全性分析は、適宜に、治療群、治療の周期および週、によって実行する。全体的な安全性はまた、周期、SOC、および暴露の程度にまたがるグレードによって評価する。さらに、安全性分析は、安全集団内のすべての患者における、治療群間の比較を含む。
・ 必要な輸血の数
・ G−CSFを必要とする患者の割合
・ 用量の遅延または変更をもたらす有害事象
薬物動態解析
【0196】
薬物動態データは、MM−398の治療群のいずれかに無作為化された、すべての患者について収集する。MM−398についての血漿濃度時間データは、集団薬物動態学的方法を用いて解析する。薬物動態学的指標は、NONMEM(登録商標)、第7版、レベル1.0(ICON Development Solutions、ダブリン、アイルランド)を用いて、非線形混合効果モデルによって推定する。PK指標は、血漿C
max、T
max、AUC(濃度曲線下面積)、クリアランス、分布の容積、および最終消失半減期を含む。薬物動態指標の患者特異因子(年齢、民族、性、体重、肝および腎機能測定、ECOG値など)の効果を評価する。集団PK/PD法は、薬物曝露と効能、および/または毒性との関係(例えば、好中球減少症、下痢)の指標を評価するために、使用することになる。追加の探索的分析は、研究の経過中に発生したMM−398に関連した、すべての安全性、効能、またはPK課題を明確しやすくするために、PK試料について実施し得る。5−FUの濃度レベルは、記述的に要約する。
文末脚注
【0197】
本発明をその特定の実施形態に関連づけて説明してきたが、さらなる改変が可能であり、この出願が、一般的に、本発明の原則に従い、および本発明が属する当該技術分野内で知られることになる、または慣例となる、本開示からの逸脱を含む、または、本明細書に記載された本質的特徴に応用され得る本発明のいかなる変形物、使用物、または適応物も網羅することを意図していることが理解されるであろう。本明細書で言及された、あらゆる米国、国際、または他の特許、または特許出願、もしくは公告の開示は、その全体が、参照することによって、本明細書に組み込まれる。