特許第6857222号(P6857222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6857222銀面を有する基材に対する曇りから銀を保護する層を接着させて材料を作る方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857222
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】銀面を有する基材に対する曇りから銀を保護する層を接着させて材料を作る方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20210405BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20210405BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20210405BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20210405BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20210405BHJP
   G04B 19/06 20060101ALI20210405BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20210405BHJP
   C22C 5/08 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B32B15/04 Z
   C23C14/06 N
   C23C14/08 A
   C23C14/08 E
   C23C14/14 D
   C23C16/40
   G04B19/06 B
   G04B37/22 J
   C22C5/08
【請求項の数】29
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-165900(P2019-165900)
(22)【出願日】2019年9月12日
(65)【公開番号】特開2020-97213(P2020-97213A)
(43)【公開日】2020年6月25日
【審査請求日】2019年9月12日
(31)【優先権主張番号】18195859.6
(32)【優先日】2018年9月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・マナステルスキ
(72)【発明者】
【氏名】ヴラディスラフ・スパソフ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・フォール
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0060758(US,A1)
【文献】 特開2006−250654(JP,A)
【文献】 特開2013−151137(JP,A)
【文献】 特開昭53−004021(JP,A)
【文献】 特開平05−001393(JP,A)
【文献】 特表2011−527505(JP,A)
【文献】 特表2009−525406(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/005383(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/077660(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/088249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C22C 5/08
C23C 14/06
C23C 14/08
C23C 14/14
C23C 16/40
G04B 19/06
G04B 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上がり銀面を有する基材に対する曇りから銀を保護するための層の接着性を向上せる方法であって、
(a)銀ベースでない材料からなり、かつ初期の銀面を形成するために厚みが1000〜3000nmの純銀の層が表面に堆積する基材(1、10)を得るステップと、
(b)前記仕上がり銀面を得るように、前記ステップ(a)で得られた前記初期の銀面を有する前記基材(1、10)上に、合金の総重量に対して銅を0.1〜10重量%含有する銀−銅合金の層(2)を堆積させるステップと、
(c)前記ステップ(b)において得られた前記仕上がり銀面の少なくとも一部上に、厚みが1〜200nmである曇りから銀を保護する層(4)を少なくとも1つ堆積させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記曇りから銀を保護する層(4)の厚みは、40〜100nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記純銀の層(20)の厚みは、1500〜2500nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記銀−銅合金の層(2)の厚みは、200〜600nmである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記銀−銅合金の層(2)の厚みは、300〜400nmである
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記銀−銅合金は、合金の総重量に対する銅の含有量が、0.2〜8重量%である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記銀−銅合金は、合金の総重量に対する銅の含有量が、0.5〜7重量%である
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(c)において堆積される前記曇りから銀を保護する層(4)を作るために、Al、Ta、HfO、ZnO、SiO及びTiOからなる群から選ばれる金属酸化物又は窒化物を用いる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)は、
前記ステップ(b)において得られた前記仕上がり銀面の少なくとも一部上に、Alの第1の層(4a)を堆積させるステップ(c1)と、及び
前記ステップ(c1)において得られたAlの第1の層(4a)上に、TiOの第2の層(4b)を堆積させるステップ(c2)と
を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記Alの第1の層(4a)の厚みは、0.5〜100nmであり、
前記TiOの第2の層(4b)の厚みは、0.5〜100nmである
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Alの第1の層(4a)の厚みは、30〜50nmであり、
TiOの第2の層(4b)の厚みは、10〜50nmである
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)は、ALD、PVD、CVD及びゾルゲル法からなる群から選ばれる方法によって行われる
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(c)は、ALDによって行われる
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(c2)前かつ/又は後に、プラズマ処理ステップを有する
ことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(b)の前かつ/又は前記ステップ(c)の前に、前記基材(1、10)におけるいずれの潜在的な内部応力を解放するように前記基材(1、10)を熱処理するステップを有する
ことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(b)と前記ステップ(c)の間に、前記ステップ(b)において得られた基材の仕上がり銀面に対して行われるプラズマを用いた前処理のステップに関するステップ(d)を少なくとも1つ有する
ことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記プラズマを用いて前処理をするステップ(d)は、Arプラズマ又はAr/Hプラズマの前処理を行う
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(c)は、前記ステップ(d)とこのステップ(c)の間に前記基材の仕上がり銀面を換気せずに行われる
ことを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップ(d)と前記ステップ(c)の間に、酸化を行う前処理をするステップ(e)を有する
ことを特徴とする請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化を行う前処理をするステップ(e)は、酸化剤を用いてプラズマ前処理を行う
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酸化を行う前処理をするステップ(e)は、液体状の水又は過酸化水素を真空の前処理チャンバーに注入することを伴う
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(e)は、前記ステップ(d)とこのステップ(e)の間に前記基材の仕上がり銀面を換気せずに行う
ことを特徴とする請求項19〜21に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップ(c)は、前記ステップ(e)とこのステップ(c)の間に前記基材の仕上がり銀面を換気せずに行う
ことを特徴とする請求項19〜22に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(d)、(e)及び(c)は、同じ広範囲な処理装置において行われる
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記基材(1、10)は計時器の要素である
ことを特徴とする請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記基材(1、10)の表面上に構造が形成される
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記基材(1、10)は、金属的な材料である
ことを特徴とする請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記基材(1、10)は、金ベースの材料である
ことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
仕上がり銀面を有する基材を作るために、銀ベースでない材料からなり、かつ初期の銀面を有する基材(1、10)に堆積される合金の総重量に対して銅を0.1〜10重量%含有する銀−銅合金の層(2)を用いる方法であって、
請求項1〜28のいずれかに記載の前記仕上がり銀面上に堆積した曇りから銀を保護する層(4)の接着性を向上させる方法に用いることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀面を有する基材に対する曇りから銀を保護する層の接着性を向上させる方法に関する。銀面を有するこのような基材は、特に、銀の薄い層で被覆された計時器の要素である。
【背景技術】
【0002】
計時器分野において、計時器の要素は、一般的には、好ましくは直流電気を用いて堆積される、銀の薄い層で基材を覆うことによって作られ、これによって、計時器の要素に銀の非常に白く固有な外観を与える。このような計時器の要素は、例えば、銀の薄い層で被覆された黄銅又は金によって作られた表盤である。
【0003】
しかし、銀には時間が経過するにしたがって曇りが発生するという課題がある。この課題を解決するための既知の手法として、セルロースニス塗布によって計時器の要素の敏感な銀面を保護すること伴うものがある。セルロースニスは、溶剤で薄めることができるニスである。セルロースニス塗布は、霧吹きなどによって、保護される面にセルロースニスの複数の層を塗布し、そして、これを炉内に通して、早く硬化させることを伴う方法である。最終的な被覆の総厚みは、約8〜15μmである。
【0004】
しかし、このセルロースニスは敏感な金属を完璧に保護するわけではない。また、堆積しなければならないセルロースニスの厚みが、表盤を飾るために用いられることが多いギローシュ加工のような精巧な細かい構造の隙間に埋まる。この結果、ギローシュ加工の細かい構造が目立たなくなり、また、ニスの層の下で完全に見えなくなることもある。最後に、セルロースニスの層は、(CIE L*a*b*色空間の)L*パラメーターを変えることによって、保護された銀面の色と外観を変える。
【0005】
セルロースニス法をやめて置き換えるために、欧州特許文献EP1994202に記載されているように、ALD法によって敏感な銀面上に保護層を堆積させることが提案されている。この方法は、非常に薄く(50nm〜100nm)、非常に保護性能が高い被覆の堆積を可能にし、この保護は、セルロースニスの10μm被覆で得られる保護よりも大きい。
【0006】
しかし、このALD法には、基材の銀面上に形成する保護層が、その銀面に対して接着性が低いという主な課題があり、これによって、ALDによって堆積される前記保護層が、わずかな要因でもあれば、離層してしまう。例えば、パッド転写又は他の方法による最終的な装飾操作時に、離層してしまう。
【0007】
さらに、基材の銀面に堆積される保護層として不適切なものを用いると、銀の輝きや色を弱くし、銀面の美的外観を変えてしまうという問題を発生させることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、銀面を有する基材に対する曇りから銀を保護する層の接着性を向上させる方法を提案することによって、前記課題を解決することである。
【0009】
本発明は、さらに、銀面の最終的な外観を保持しつつ、銀の曇りから有効に保護される銀面が基材にある、基材を得ることが可能になる方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明は、仕上がり銀面を有する基材に対する曇りから銀を保護する層の接着性を向上させる方法に関する。これは、
(a)初期の銀面を有している又は有していない基材を得るステップと、
(b)前記仕上がり銀面を得るように、ステップ(a)で得られた前記基材上に、合金の総重量に対して銅を0.1〜10重量%含有する銀−銅合金の層を堆積させるステップと、
(c)ステップ(b)において得られた前記仕上がり銀面の少なくとも一部上に、厚みが1〜200nm、好ましくは40〜100nmである曇りから銀を保護する層を少なくとも1つ堆積させるステップと
を有する。
【0011】
本発明は、さらに、初期の銀面を有している又は有していない基材に堆積される合金の総重量に対して銅を0.1〜10重量%含有する銀−銅合金の層を用いて仕上がり銀面を有する基材を作る方法に関する。これは、
前記仕上がり銀面上に堆積した曇りから銀を保護する層の接着性を向上させ、
前記曇りから銀を保護する層の厚みは、1〜200nm、好ましくは、40〜100nmである。
【0012】
基材に堆積されたこのような銀−銅合金の層を用いることによって、Cuラジカルを表面上に発生させることが可能になり、このことによって、基材の銀色の光沢を保持しつつ、曇りから銀を保護する層を接着させることが可能になる。
【0013】
以下の説明を添付の図面を参照しながら読むことで、他の具体的な特徴や利点を理解することができるであろう。これらは、おおまかなガイドとして与えられ、限定するためのガイドとして与えられるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にしたがって処理される基材の第1の代替的実施形態の線図である。
図2】本発明にしたがって処理される基材の第2の代替的実施形態の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、仕上がり銀面を有する基材に対する曇りから銀を保護する層の接着性を向上させる方法に関する。
【0016】
本発明に係る方法の第1のステップ(a)は、初期の銀面を有している又は有していない基材1を得ることを伴う。
【0017】
このような基材1は、例えば、計時器の要素や装飾品の要素であり、特に、計時器の外装要素である。具体的には、当該基材は、計時器の表盤であることができ、これは、その表面上に、ギローシュ加工(guilloche work)、すなわち、精巧であり細かい交差している線の集合であって装飾効果を発揮するもの、のような構造を有することができる。このために、前記方法のステップ(a)は、前記構造を基材の表面に作るサブステップを有する。
【0018】
基材1は、好ましくは、金属で作られている。基材1は、黄銅で作ったり、イエローゴールド又はホワイトゴールド又は銀の基礎を有していたり、貴金属であっても貴金属でなくてもよい他の適切な金属又は金属合金で作ったりすることができる。
【0019】
図1は、本発明の第1の代替的実施形態にしたがって処理された基材1を示している。これにおいて、基材1は、初期の銀面を有していなくてもよく、又は材料に由来する銀面を有していてもよい。初期の銀面を有していない第1のケースにおいて、当該基材は、例えば、黄銅で作ったり、イエローゴールド又はホワイトゴールドの基礎を有していたり、貴金属であっても銀を例外として貴金属でなくてもよい他の適切な金属又は金属合金で作ったりすることができる。材料に由来する銀面を有している第2のケースにおいて、基材1は、銀ベースの材料であり、例えば、純銀によって作られており、材料に由来する初期の銀面を有する。
【0020】
図2は、本発明の第2の代替的実施形態にしたがって処理された基材10を示している。これによると、基材10は、銀ベースの材料ではなく、初期の銀面を有する。これは、ステップ(a)のサブステップによって、前記基材10上に実質的に純銀の中間層20を堆積させることによって得られる。このような層20は、好ましくは、直流電気を用いて堆積される。基材10は、それ自体を黄銅で作ることができ、また、貴金属の層で被覆することができる。例えば、直流電気を用いて、金の層などを堆積することができる。また、基材10を固体の貴金属、例えば、固体の金、で作ることもできる。
【0021】
前記実質的に純銀の層20の厚みは、200〜3000nmであることができる。
【0022】
1つの実施形態において、実質的に純銀の層20の厚みは、薄い銀被覆を形成するように、200〜600nm、好ましくは、300〜500nmである。
【0023】
別の実施形態において、実質的に純銀の層20の厚みは、厚い銀被覆を形成するように、1000〜3000nm、好ましくは、1500〜2500nmである。
【0024】
このような厚い銀被覆には、孔がない実質的に純銀の中間層を得ることができるという利点がある。これによって、下で説明するように、この後でステップ(b)によって、孔がない銀−銅層を得て、したがって、前記銀−銅層に対する曇りから銀を保護する層の接着性が向上することを確実にすることができる。
【0025】
ここで、本発明によると、ステップ(a)の基材1、10がステップ(b)にしたがって処理される。このステップ(b)は、ステップ(a)の前記基材1、10上に、合金の総重量に対して銅を0.1〜10重量%含有する銀−銅合金の層2を堆積させることを伴う。これによって、仕上がり銀面を有する基材1、10を得る。
【0026】
好ましくは、銀−銅合金の層2の厚みは、200〜600nm、好ましくは、300〜400nmである。
【0027】
好ましくは、銀−銅合金は、合金の総重量に対して銅を0.2〜8重量%、好ましくは、0.5〜7重量%含有する。銀に対する銅の割合は、表面上に十分な量のCuラジカルが発生するように選ばれる。このことによって、銀の色を変えずに、曇りから銀を保護する層の接着性が確実になる。なぜなら、銀−銅合金の層が基材の仕上がり銀面を形成するからである。
【0028】
図1に示しているように、銀−銅合金の層2は、基材1上に直接堆積させることができ、伝統的に用いられている薄い銀被覆の代わりに置き換わることができる。銀−銅合金の層2を、さらに、図2に示している実質的に純銀20の中間層上に堆積させることができる。銀−銅合金の層2は、PVD(ストライクめっき)、適切な銀と銅の直流電気槽を用いる直流電気を用いる方法のような任意の適切な方法によって堆積させることができる。
【0029】
そして、本発明の方法のステップ(c)は、ステップ(b)において得られた少なくとも一部の仕上がり銀面上に、曇りから銀を保護する層4を少なくとも1つ堆積することを伴う。この曇りから銀を保護する層4の厚みは、1nm〜200nm、好ましくは、1nm〜100nm、より好ましくは、40nm〜100nmである。
【0030】
ステップ(c)は、ALD(原子層堆積法)、PVD(物理的蒸着法)、CVD(化学的蒸着法)及びゾルゲル法からなる群から選ばれる方法によって行うことができる。好ましくは、ステップ(c)は、緻密層を形成し非常に薄く保護性が高い被覆を得て特別に良好な審美的な結果を得るためにALDによって行われる。このようなALD法の詳細やパラメーターは、当業者に知られており、例えば、欧州特許文献EP1994202に記載されている。Al23層は、TMA(トリメチルアルミニウム)前駆体から得ることができ、その酸化は、H2O、O2、さらにはO3を用いて行うことができる。TiO2層は、TTIP(テトライソプロポキシ化チタン)やTiCl4(三塩化チタン)から得ることができ、その酸化は、H2O、O2、O3によって行うことができる。
【0031】
好ましくは、ステップ(c)において堆積された曇りから銀を保護する層4を作るために、金属酸化物が用いられる。この金属酸化物は、所望の厚みに応じて理想的にはできるだけ透明であり、好ましくは、Al23、Ta25、HfO2、ZnO、SiO2及びTiO2からなる群から選ばれる。また、Sixyのような窒化物も用いることができる。また、いくつかの異なる層を積層させることも可能である。
【0032】
好ましくは、ステップ(c)は、ステップ(b)において得られた前記仕上がり銀面の少なくとも一部上にAl23の第1の層4aを堆積させるステップ(c1)と、及びステップ(c1)において得られた前記Al23の第1の層4a上にTiO2の第2の層4bを堆積させるステップ(c2)とを有する。
【0033】
好ましくは、Al23の第1の層4aの厚みは、0.5〜100nm、好ましくは、0.5〜50nmであり、TiO2の第2の層4bの厚みは、0.5〜100nm、好ましくは、0.5〜50nmである。
【0034】
より好ましくは、Al23の第1の層4aの厚みは、30〜50nmであり、TiO2の第2の層4bの厚みは、10〜50nmである。
【0035】
特に好ましい形態において、前記曇りから銀を保護する層4は、厚みが30〜50nmであるAl23の第1の層と厚みが10〜50nmであるTiO2の第2の層4bのALDによって得られる。
【0036】
上記厚みを有するAl23の第1の層4aとTiO2の第2の層4bのこのような組み合わせは、銀の白い色を向上させる。
【0037】
好ましくは、本発明の方法は、ステップ(c2)の前かつ/又は後に、通常Arプラズマを用いて保護層の堆積とプラズマ処理を組み合わせることができ、これによって、堆積された保護層の内部応力を減らす。この組み合わせによって、保護層をより柔軟にすることができ、これによって、機械的、熱的又は他の要因のような環境的な要因の下で壊れにくくする。
【0038】
好ましくは、本発明の方法は、ステップ(b)とステップ(c)の間に、ステップ(b)において得られた基材の仕上がり銀面に対してプラズマを用いて前処理をする少なくとも1つのステップ(d)を有することができる。
【0039】
このプラズマ前処理ステップ(d)は、基材の仕上がり銀面に対してピックリング(pickling)をすることを伴う。これによって、空気に露出した基材の面に自然に形成され保護層4の良好な接着性を妨げるようなAgS/Ag2S硫化物を除去する。
【0040】
好ましくは、このステップ(d)は、Arプラズマ又はAr/H2プラズマの前処理を伴う。
【0041】
本発明の方法の1つの実施形態において、ステップ(c)は、ステップ(d)の直後に他の付加的な前処理なしで行われる。
【0042】
好ましくは、銀基材1、10をステップ(b)の前又はステップ(c)の前に熱処理することができる。これによって、前の加工ステップや層堆積ステップに関連する任意の潜在的な内部応力を解放する。処理の温度と回数は、基材と層の性質に依存し、ステップ(c)における保護層の堆積の前に部品の審美性に影響を与えてはならない。熱処理パラメーターは当業者に知られており、ここではさらなる説明を必要としない。
【0043】
別の実施形態において、本発明の方法は、ステップ(d)とステップ(c)の間に、第1の層4a内に存在するAl23と基材の仕上がり銀面の銀との間の共有結合を形成するAgO/Ag2Oサイトの形成を可能にする酸化前処理を行う付加的な中間的なステップ(e)を有する。これによって、基材上の保護層4の接着を促進する。
【0044】
1つの代替的実施形態において、ステップ(e)の酸化前処理は、酸素のような酸化剤やAr/O2を用いるプラズマ酸化の前処理を伴うことができ、これによって、AgO/Ag2Oサイトの形成を可能にする。
【0045】
プラズマにおけるO2の量は、銀の白さを確実にしつつ十分な量のAgO/Ag2Oサイトを形成するように正確でなければならないが、このことは銀を黄色にする傾向がある。
【0046】
プラズマ処理パラメーターは、当業者に知られており、ここではさらなる説明を必要としない。
【0047】
別の代替的実施形態において、ステップ(e)の酸化前処理は、液体状の水又は過酸化水素を真空の前処理チャンバー内に注入することを伴うことができ、これによって、その水又は過酸化水素が気化して、これが基材との接触箇所においてAgO/Ag2Oサイトを形成する。注入される水又は過酸化水素の量は、約数十μモルである。
【0048】
特に有利な手法において、ステップ(e)は、ステップ(d)とそのステップ(e)の間に換気せずに行われる。このために、ステップ(d)にしたがって前処理をされる基材は、真空を維持したままステップ(e)にしたがって付加的な前処理を経る。
【0049】
また、ステップ(b)によって得られ、ステップ(d)のみ又はステップ(d)及び(e)にしたがって、前処理をされた基材は、好ましいことに、真空で成長室、好ましくはALD成長室、に移され、これによって、基材の仕上がり銀面を換気させずに、ステップ(d)、又はステップ(d)及び(e)によって得られた、前処理をされた基材に対してステップ(c)を直接行う。
【0050】
このために、前処理ステップ(d)及び(e)、及び好ましくはALDによる保護層堆積ステップ(c)は、好ましいことに、同じ広範囲な処理装置において行われ、ステップ(d)、又はステップ(d)及び(e)にしたがう前処理デバイスは、好ましくはALDデバイスである保護層4の堆積デバイスと一体化されており、これによって、ステップ(d)、行う場合はステップ(e)、そしてステップ(c)を行うために、基材の仕上がり銀面を換気せずに、好ましくは真空にて、広範囲な処理を行うことができる。
【0051】
本発明の方法によって処理される仕上がり銀面を有する基材には、接着不良がないような曇りから銀を保護する層がある。また、特に曇りから銀を保護する層がALDによって堆積される場合に、曇りから銀を保護する層の存在にもかかわらず銀の非常に白い効果が保持される。基材がエンジンターンされている場合、ギローシュ加工の精巧な細かい構造は、曇りから銀を保護する前記層の存在にもかかわらず、依然としてはっきり目に見える。
【0052】
好ましいことに、装飾品、筆記用具、眼鏡及び皮革製品もこの方法を用いて処理することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、10 基材
2 銀−銅合金の層
4 曇りから銀を保護する層
4a Al23の第1の層
4b TiO2の第2の層
20 実質的に純銀の中間層
図1
図2