(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857235
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】光導波路構造、蛍光体素子および光導波路構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20210405BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20210405BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
G02B6/122
G02B6/13
G02B6/12 371
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-510713(P2019-510713)
(86)(22)【出願日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】JP2018033066
(87)【国際公開番号】WO2019102685
(87)【国際公開日】20190531
【審査請求日】2020年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-223494(P2017-223494)
(32)【優先日】2017年11月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】岩田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 順悟
(72)【発明者】
【氏名】山口 省一郎
【審査官】
奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−188399(JP,A)
【文献】
特開2009−139920(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/183606(WO,A1)
【文献】
国際公開第2017/006797(WO,A1)
【文献】
特開2010−282770(JP,A)
【文献】
特開平08−148703(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0253728(US,A1)
【文献】
特許第6367515(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12− 6/14
F21V 8/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨された端面を有する光導波路、
前記光導波路上に設けられ、前記光導波路内を伝搬する光を反射する反射膜、
前記反射膜上に設けられた金属膜、および
前記金属膜上に設けられ、前記金属膜の表面酸化による表面酸化膜
を備えていることを特徴とする、光導波路構造。
【請求項2】
前記表面酸化がプラズマアッシングによることを特徴とする、請求項1記載の光導波路構造。
【請求項3】
前記光導波路と前記反射膜との間に設けられたクラッド層を備えていることを特徴とする、請求項1または2記載の光導波路構造。
【請求項4】
前記反射膜が銀、金、白金、アルミニウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれた一種以上の金属からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の光導波路構造。
【請求項5】
前記金属膜が、チタン、クロム、タンタル、ニッケルおよびこれらの合金からなる群より選ばれた一種以上の金属からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の光導波路構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の光導波路構造を備えており、前記光導波路が、励起光を伝搬して蛍光を発生する蛍光体からなることを特徴とする、蛍光発生素子。
【請求項7】
端面を有する光導波路、
前記光導波路上に設けられ、前記光導波路内を伝搬する光を反射する反射膜、および
前記反射膜上に設けられた金属膜を備えている部品を得、この部品の前記金属膜を表面酸化処理することによって、前記金属膜の表面に表面酸化膜を生じさせ、次いで前記光導波路の前記端面を研磨することを特徴とする、光導波路構造の製造方法。
【請求項8】
前記表面酸化処理がプラズマアッシングであることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記光導波路構造を超純水によって処理することを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記反射膜が銀、金、白金、アルミニウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれた一種以上の金属からなることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属膜が、チタン、クロム、タンタル、ニッケルおよびこれらの合金からなる群より選ばれた一種以上の金属からなることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路構造、蛍光体素子および光導波路構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、レーザー光源を用いた自動車用ヘッドライトの研究が盛んに行われており、その内の一つに、青色レーザーあるいは紫外レーザーと蛍光体を組み合わせた白色光源がある。レーザー光を集光することにより、励起光の光密度を高めることができる上に、複数のレーザー光を蛍光体上に重ねて集光することで、励起光の光強度も高めることができる。これによって、発光面積を変えずに光束と輝度とを同時に大きくすることができる。このため、半導体レーザーと蛍光体とを組み合わせた白色光源が、LEDに替わる光源として注目されている。例えば、自動車用ヘッドライトに使用する蛍光体ガラスは、日本電気硝子株式会社の蛍光体ガラス「ルミファス」や国立研究開発法人物質・材料研究機構と株式会社タムラ製作所、株式会社光波のYAG単結晶蛍光体が考えられている。
【0003】
特許文献1によれば、平板型の光導波路の入射面に、励起光に対する無反射膜かつ蛍光に対する全反射膜を形成する。光導波路中で発振した入射面側に戻ってきた蛍光は、入射面上の全反射膜で反射し、出射面側から出射させることができる。
【0004】
また、特許文献2によれば、平板型の透過型蛍光体の側面に反射膜を形成し、平板型蛍光体の側面からの蛍光の出射を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2014-203488 A1
【特許文献2】特開2014−116081
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、平板形状の蛍光体中に励起光を伝搬させて蛍光を発生させる素子では、蛍光および励起光の光密度に限界がある。
【0007】
このため、本発明者は、リッジ型光導波路を蛍光体によって成形し、蛍光体を発光する素子を作製してみた。しかし、現実に蛍光体素子を作製してみると、リッジ型光導波路の側面から蛍光が漏れ、所望の方向へと向かう蛍光が十分に得られないことがわかった。すなわち、光導波路内で蛍光体粒子に励起光が当たり、蛍光が発光したとき、蛍光は蛍光体粒子から全方位に向かって発光する。この結果、蛍光の多くは光導波路の側面や入射面へと向かって伝搬するので、所望方向への蛍光出力が十分に得られないことになる。
【0008】
このため、本発明者は、光導波路の側面を被覆するように反射膜を設けることを検討した。しかし、実際に蛍光体素子を作製してみると、反射膜が部分的に剥離ないし消失し、反射膜が剥離ないし消失した部分から蛍光が漏れるという問題が生ずることが判明してきた。
【0009】
本発明の課題は、光導波路上に反射膜を設けた光導波路構造において、反射膜の局所的な剥離や消失を抑制し、これによる伝搬光の光導波路外への漏れを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光導波路構造は、
研磨された端面を有する光導波路、
前記光導波路上に設けられ、前記光導波路内を伝搬する光を反射する反射膜、
前記反射膜上に設けられた金属膜、および
前記金属膜上に設けられ、前記金属膜の表面酸化による表面酸化膜
を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記光導波路構造を備えており、前記光導波路が、励起光を伝搬して蛍光を発生する蛍光体からなることを特徴とする、蛍光発生素子に係るものである。
【0012】
また、本発明は、
端面を有する光導波路、
前記光導波路上に設けられ、前記光導波路内を伝搬する光を反射する反射膜、および
前記反射膜上に設けられた金属膜を備えている部品を得、この部品の前記金属膜を表面酸化処理することによって、前記金属膜の表面に表面酸化膜を生じさせ
、次いで前記光導波路の前記端面を研磨することを特徴とする、光導波路構造の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明者は、光導波路上に設けた反射膜が局所的に消失する原因について検討し、以下の知見に至った。
すなわち、光導波路を設けた光導波路素子のチップを作製するには、ダイシング工程や洗浄工程において超純水を使用し、スーパークリーン状態を保持する必要がある。しかし、光導波路上の反射膜は、超純水に触れると腐蝕し、部分的に消失してしまい、反射膜として機能しなくなるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明者は、光導波路上の反射膜を酸化させることで、腐蝕による消失を回避することを検討したが、この場合には、光導波路を伝搬する光の反射率の低下を招く。また、反射膜上に、アルミナやシリカからなる酸化物膜を保護膜として設けることで、反射膜の腐食を防止することを試みた。しかし、この場合には、洗浄工程では反射膜の腐食防止には有効であったが、素子の端面を研磨する工程において、加工用ブレードの負荷により端面近傍で反射膜の剥がれが生じ、保護膜として機能しないことがわかった。
【0015】
更に、本発明者は、この反射膜上に、金属膜を保護膜として形成してみた。この場合には、酸化物からなる保護膜のような剥離は生じなかったが、金属膜が腐蝕により部分的に消失することがわかった。
【0016】
これらの知見を踏まえ、本発明者は、この反射膜上に金属膜を成膜し、その後にプラズマアッシングなどの酸化方法によって金属膜の表面を酸化し、この金属の酸化物からなる表面酸化膜を形成することを試みた。これによって、反射膜やその上の金属膜の腐食による消失を防止できるのと同時に、光導波路の端面研磨加工時にも金属膜や反射膜の剥離を抑制でき、これによって光導波路の伝搬光の漏れを防止できることを見いだし、本発明に到達した。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は、光導波路2の表面にクラッド層4および反射膜5を形成した状態を示す横断面図であり、(b)は、反射膜5上に金属膜6を形成した状態を示す横断面図である。
【
図2】光導波路2の表面にクラッド層4および反射膜5を形成した状態を示す斜視図である。
【
図3】金属膜の表面酸化により表面酸化膜を設けた状態を示す断面図である。
【
図4】金属膜の表面酸化により表面酸化膜を設けた状態を示す斜視図である。
【
図5】比較例の光導波路構造において、光導波路の上面付近を示す写真である。
【
図6】比較例の光導波路構造において、光導波路の側面付近を示す写真である。
【
図7】実施例の光導波路構造において、光導波路の上面付近を示す写真である。
【
図8】実施例の光導波路構造において、光導波路の側面付近を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照しつつ、本発明を更に説明する。
図1〜
図4は、本発明の一実施形態に係る光導波路素子に関するものである。
【0019】
図1(a)、
図2に示すように、支持基板1の主面1dには一つまたは複数の突起1aが設けられている。突起1aの上面1b上には、リッジ型光導波路2が形成されている。本例では、リッジ型光導波路2は、突起1aに対して接合され、固定されている。隣り合う複数の突起の間に溝を形成してもよい。
【0020】
本例では、リッジ型光導波路2および支持基板1が全体的にクラッド層4および反射膜5によって被覆されている。すなわち、突起1aの上面1b上には反射膜3が形成されている。そして、クラッド層4は、支持基板1の主面1dを被覆する主面被覆部4d、突起1aの側面1cおよび光導波路2の側面2cを被覆する側面被覆部4c、光導波路2の上面2aを被覆する上面被覆部4aを有している。更に、反射膜5も、主面被覆部5d、側面被覆部5cおよび上面被覆部5aを有している。本例では、クラッド層4は、反射膜3と光導波路2の底面2bとの間に底面被覆部4bを有する。
【0021】
次いで、
図1(b)に示すように、反射膜上に金属膜6を形成し、部品11を得る。本例では、金属膜6は、主面被覆部6d、側面被覆部6cおよび上面被覆部6aを有している。
【0022】
次いで、
図3、
図4に示すように、金属膜6の表面を酸化し、金属膜6を構成する金属の酸化物からなる表面酸化膜8を形成する。この際、表面酸化膜8と反射膜5との間には中間金属膜7が残留する。この結果、得られた光導波路構造10においては、中間金属膜7は、主面被覆部7d、側面被覆部7cおよび上面被覆部7aを有しており、表面酸化膜8は、主面被覆部8d、側面被覆部8cおよび上面被覆部8aを有している。なお、
図3、
図4では、クラッド層4、反射膜5、中間金属膜7、表面酸化膜8は支持基板1の主面1d上を被覆しているが、支持基板1の主面1dは光が伝播しないため、主面1d上のクラッド層4、反射膜5、中間金属膜7、表面酸化膜8はなくてもよい。
【0023】
このような光導波路構造によれば、表面酸化膜8の作用によって、反射膜やその上の金属膜の腐食による消失を防止できる。これと同時に、光導波路の端面研磨加工時にも金属膜や反射膜の剥離を抑制でき、これによって光導波路の伝搬光の漏れを防止できることを見いだした。
【0024】
以下、本発明の光導波路構造の構成要素について更に述べる。
支持基板の具体的材質は特に限定されず,ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、石英ガラスなどのガラスや水晶であってよい。しかし、光源の熱が光導波路に伝導すること、あるいは、波長変換や外部から光導波路自体が加熱することを抑制するために、放熱特性のよい支持基板を使用することができる。この場合には、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、Si、窒化珪素、タングステン、銅タングステン、酸化マグネシウムなどを例示することができる。
【0025】
支持基板とクラッド層、反射膜との間には、光導波路のはがれを防止するために、剥離防止層、好ましくは酸化膜を形成してもよい。このような酸化膜の材質は特に限定はされないが、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンが好ましい。しかし熱伝導率が蛍光体よりも大きい方が好ましく、このような観点から酸化アルミニウムが最も好ましい。
【0026】
クラッド層の材質は、光導波路の材質よりも屈折率の小さい材料であればよく、クラッド層が接着層を兼ねていても良い。こうしたクラッド層の材料は、SiO
2、Al
2O
3、MgF
2、CaF
2、MgOなどがよい。また蛍光体基板で発生した熱を支持基板を通して放熱するという観点では、蛍光体よりも熱伝導率を高くする方がよく、こうした材料として、Al
2O
3、MgOが特に好ましい。
【0027】
反射膜の材質としては、金、アルミニウム、銅、銀等の金属膜、またはこれらの金属成分が含まれる合金膜、あるいは、誘電体多層膜であってよい。好ましくは、反射膜が銀、金、白金、アルミニウムおよびこれらの合金からなる群より選ばれた一種以上の金属からなる。反射膜として金属膜を使用する場合には、クラッド層がはがれないようにするために、Cr、Ni、Ti等の金属層を金属膜のバッファ層として形成することができる。
【0028】
クラッド層と反射膜との間に接合層を設けることができる。こうした接合層の材質は特に限定はされないが、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンが好ましい。しかし熱伝導率が蛍光体よりも大きい方が好ましく、このような観点から酸化アルミニウムが最も好ましい。
【0029】
こうした接合層は、反射膜と支持基板との間にあってもよい。この場合は、光導波路側に底面側クラッド層と底面側反射膜、接合層を形成し、支持基板側に接合層を形成し、両者を直接接合するようなプロセスで製造することができる。ここで反射膜と接合層、および支持基板と接合層の間に剥離防止層があってもよい。
【0030】
反射膜上に形成する金属膜は、チタン、クロム、タンタル、ニッケルおよびこれらの合金からなる群より選ばれた一種以上の金属からなることが好ましい。
【0031】
クラッド層、反射膜、金属膜の成膜方法は、スパッタリング法,蒸着法、メッキ法,CVD法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
次いで、金属膜を表面酸化処理に供することによって、表面酸化膜を形成すると共に、表面酸化膜と反射膜との間に中間金属膜を残留させる。ここで、中間金属膜の厚さは、反射膜の腐食防止の観点からは、1μm以上が好ましく、また、コスト、成膜時間の観点からは、5μm以下が好ましく、3μm以下が更に好ましい。
【0033】
また、表面酸化処理としては、プラズマアッシング、高温アニールを例示できるが、プラズマアッシングが特に好ましい。プラズマアッシングとは、真空中に酸素を導入した後、高周波電源により酸素をプラズマ化し、対象物を酸素ラジカルと反応させることである。プラズマアッシングは、一般的には、フォトレジストの剥離工程等に使われる。プラズマアッシング時の投入電力は200〜400Wが好ましく、酸素ガス圧は100〜200Paが好ましい。プラズマアッシングに供する時間は30〜90分間が好ましい。
【0034】
表面酸化膜を構成する材質は、下地である中間金属膜を構成する金属の酸化物であり、中間金属膜を構成する材質が合金である場合には複合酸化物である。表面酸化膜の厚さは、下地である中間層および反射膜を腐食から保護するという観点からは、7nm以上が好ましく、8nm以上が更に好ましい。また、表面酸化膜の厚さは、実際上は10nm以下となることが多い。
【0035】
本発明の光導波路素子は、受動型の光部品として使用できる。あるいは、本発明の光導波路素子は、波長変換素子や導波路型蛍光体発生素子としても利用できる。
【0036】
本発明の光導波路素子は、グレーティング(回折格子)を光導波路内に含んでいない無グレーティング型素子であってよく、あるいはグレーティング素子であってよい。
【0037】
光導波路を構成する材質は、高屈折率の化学的に安定な材質であれば良いが、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、五酸化タンタル、チッ化珪素を例示できる。
【0038】
導波路型蛍光体素子の場合には、光導波路が蛍光体からなっていてよい。蛍光体は、蛍光体ガラス、単結晶、多結晶であってよい。
蛍光体ガラスの場合は、ベースとなるガラス中に希土類元素イオンを分散したものである。
【0039】
ベースとなるガラスとしては、シリカ、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化ランタン、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化リン、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、塩化バリウムを含む酸化ガラスが例示でき、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)であってもよい。
【0040】
ガラス中に分散される希土類元素イオンとしては、Tb、Eu、Ce、Nd、が好ましいが、La、Pr、Sc、Sm、Er、Tm、Dy、Gd、Luであってもよい。
【0041】
蛍光体単結晶としてはY
3Al
5O
12、Ba
5Si
11A
l7N
25、Tb
3Al
5O
12が好ましい。また、蛍光体中にドープするドープ成分としては、Tb、Eu、Ce、Nd等の希土類元素イオンとする。熱劣化を抑制するという観点では、蛍光体は単結晶が好ましいが、多結晶であっても緻密体であれば粒界部での熱抵抗を下げることができ、かつ透光性をあげることができ、光導波路として機能することができる。
【0042】
光源としては、照明用蛍光体の励起用として高い信頼性を有するGaN材料による半導体レーザーが好適である。また、一次元状に配列したレーザーアレイ等の光源も実現可能である。スーパールミネッセンスダイオードや半導体光アンプ(SOA)であってもよい。
【0043】
半導体レーザーと蛍光体から白色光を発生する方法は、特には限定されないが、以下の方法が考えられる。
青色レーザーと蛍光体により黄色の蛍光を発生し、白色光を得る方法
青色レーザーと蛍光体により赤色と緑色の蛍光を発生し白色光を得る方法
また青色レーザーや紫外レーザーから蛍光体により赤色、青色、緑色の蛍光を発生し白色光を得る方法
青色レーザーや紫外レーザーから蛍光体により青色と黄色の蛍光を発生し白色光を得る方法
【実施例】
【0044】
図3、
図4に示すような形態の光導波路素子を作製した。
具体的には、厚み1mm、4インチウエハーの窒化アルミニウムからなる支持基板1上に、スパッタリングにて、Ag系合金からなる反射膜3、Al
2O
3からなるクラッド層4bを介して、光導波路2を設けた。光導波路2の材質はYAGとした。次いで、光導波路2および支持基板1の表面に、アルミナからなるクラッド層4を8000オングストローム、Agからなる反射膜5を1000オングストローム成膜した。次いで、反射膜5の上に、Tiからなる金属膜6を厚さ2.56μm成膜した。これらの成膜はいずれもスパッタリングによって行った。
【0045】
次いで、金属膜をプラズマアッシング装置にて、酸素圧133Pa,投入電力250Wでアッシングした。ただし、アッシング時間は、表1に示すように変更した。この後、ダイシングソーにて端面出し加工し、超音波洗浄を行い、リッジ型導波路構造を作製した。
【0046】
【表1】
【0047】
なお、表面酸化膜(酸化チタン膜)の膜厚をX線反射率法(XRR)にて測定した。また、各例の構造について、ダイシング後の写真を撮影することで、層構造と欠陥の有無を観察した。
【0048】
表1に示すように、アッシング時間が長くなるのと共に、酸化チタンからなる表面酸化膜の厚さは大きくなるが、60分間のアッシング処理時に膜厚が最大になった。また、いずれの実施例においても,表面酸化膜/中間金属膜/反射膜の3層構造になっていることを確認した。ただし、比較例1では、アッシング処理を行っていない。
【0049】
図5に示すように、比較例1の構造では、光導波路の上面側が純水に侵され、矢印で示す領域で反射膜の消失が観測された。また、
図6に示すように、比較例1の構造では、光導波路の側面側が純水に侵され、反射膜の消失が観測された。
【0050】
一方、実施例(Ti/Ag系合金/Al
2O
3)の構造では、
図7に示すように、光導波路の上面側において反射膜の腐食や消失は見られず、
図8に示すように、側面側においても、反射膜の腐食や消失は見られなかった。
他の実施例として、表面酸化膜の金属成分としてTiの代わりにTa,Ni,Crを用い、反射膜にAl系合金を用い、クラッド層にSiO2を用いた場合でも、同様の結果が得られた。
また、実施例1、2、3、4の各光導波路構造においては、端面研磨加工後にも金属膜や反射膜の剥離は見られていない。