(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送出し管の内部を中心線方向に見て、前記スクリューの螺旋羽根の断面積に相当するスクリュー運搬断面積と、前記送出し管の内径との間の前記螺旋羽根の外径との隙間部分であって前記支持ブロックを除く断面に相当する隙間断面積とが同程度である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスクリューコンベア。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係るスクリューコンベアの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。ここで、
図1は、本実施形態のスクリューコンベアを示した斜視図である。
図2は、内部構造が分かり易くなるように、
図1示すスクリューコンベアの図面手前側に位置する側面などの一部を除いて示した斜視図である。このスクリューコンベア1は、工作機械の下に設置されるものである。工作機械では、ワークの切削加工や穴あけ加工などによって切屑が発生し、また、ワークに対して工具が当たる加工部にはクーラントがかけられる。そのため、加工時の工作機械からは切屑やクーラントが下に落ちている。そこで、工作機械の下側にはスクリューコンベア1が設置され、切屑やクーラントを受け、切屑のみを機外へと搬送するようにしている。
【0011】
本実施形態のスクリューコンベア1は、上側が開放された箱型の本体2の中に貯留槽3が嵌め込まれている。その貯留槽3には、工作機械側から落ちた液体であるクーラントや切屑が溜められるようになっている。スクリューコンベア1は、
図2に示すように、貯留槽3の上方が蓋部材4によって閉じられているが、図面手前側の一部(スクリューコンベア1の前部)が開口し、クーラントや切屑が投入される投入口305が形成されている。そして、貯留槽3の中には、回転軸501に対して帯状の螺旋羽根502が一体に形成されたスクリュー5が、回転可能な状態で組み込まれている。
【0012】
貯留槽3は、スクリューコンベア1の前後方向に長く、幅方向の左右両側から中央部分にかけて深くなるようにV字形をしたものであり(
図3参照)、スクリュー5は、その貯留槽3の底部に長手方向に沿って配置されている。また、貯留槽3は、長手方向の両端部が垂直な壁となる端部板301,302によって仕切られている。
図2に示すように、後方側の端部板302には貫通孔321が形成されており、スクリュー5がその貫通孔321を通って更に後方側へと延びている。一方、前方側の端部板301でもスクリュー5の回転軸501が貫通しているが、そこにはシール部材を介して軸受部材が設けられ、その軸受部材によってスクリュー5が回転支持されている。
【0013】
スクリュー5の回転軸501は、本体前部201に設けられた回転伝達部を介して駆動機構からの回転を受けるように構成されている。ここで、
図3は、本体2を前側から見た正面図であり、内部に組み込まれた回転伝達部の構成が破線示されている。先ず、スクリューコンベア1に設けられた駆動機構は、
図1に示すように、本体2の後方側に駆動モータ6が設置され、その出力軸に連結されたシャフト11が、
図3に示すように貯留槽3の下を通って本体前部201まで延びている。その本体前部201では、シャフト11の端部にスプロケット12が固定され、スクリュー5の回転軸501に固定されたスプロケット13との間にチェーン14が掛け渡されている。
【0014】
次に、貯留槽3の後方側では、貫通孔321の位置に合わせて円筒形状の送出し管7が端部板302に対して固定され、更にその後方側では、送出し管7に対して円筒形状の排出管8が接続されている。スクリュー5は、貫通孔321を通って送出し管7の中にまで入り込んでいるため、貯留槽3内の切屑がスクリュー5によって送出し管7へと送り込まれるようになっている。送出し管7は、その中心線がスクリュー5の回転軸501の軸心とほぼ一致するように水平な状態で取り付けられているが、その送出し管7に接続された排出管8は、後方側に上昇するよう傾斜した状態で取り付けられている。従って、送出し管7内のスクリュー5は、その後端が排出管8の手前の位置までとなっている。
【0015】
スクリューコンベア1では、スクリュー5によって送出し管7内へと送られた切屑が、次に排出管8内に順次送り込まれ、その排出管8内に堆積していく。そして、排出管8内の切屑は、その堆積量が増えることで傾斜部分を下から上へと押し上げられ、ついには後端の排出口801から押し出される。排出口801の下には回収ボックスが置かれているため、落下した切屑はその回収ボックスによって回収される。
【0016】
ところで、工作機械から発生する切屑は、細かい金属片だけではなく、加工の種類によって様々な大きさや形などがあり、長く伸びた帯状の切屑なども発生する。そうした切屑はスクリューコンベア内で詰まってしまうことがあり、スクリュー5の回転を止めてしまうことがある。特に、スクリューコンベア1のような構造のものは、スクリュー5が送出し管7までしかなく、排出管8内では切屑の移動方向も上向きになるため、送出し管7と排出管8と境目部分で切屑の詰まりが生じやすくなる。
【0017】
しかも、本実施形態のスクリューコンベア1は、送出し管7の中にスクリュー5を回転支持する支持ブロック21が設けられている。スクリュー5は、その一端部が本体前部201において回転軸501が軸受部材によって回転支持されているが、切屑を通過させる後端部側には軸受部材を設けることができない。そのため、支持ブロック21によって螺旋羽根502の外周部が摺接支持されている。スクリューコンベア1の場合、送出し管7の内周面に3つの支持ブロック21が固定されている。
【0018】
図4は、送出し管7を示した外観斜視図であり、内部の支持ブロック21を破線で示したものである。また、
図5は、送出し管7の部分を示した断面図である。この送出し管7は、スクリュー5が入る直線部701と、排出管8へと繋げるための屈折部702とから構成されている。その直線部701側の前端部には固定用フランジ22が、屈折部702側の後端部には連結用フランジ23がそれぞれ溶接によって一体に形成されている。そして、送出し管7は、固定用フランジ22が端部板302に対してシール部材を介してボルトによって締結され、連結用フランジ23が排出管8のフランジにシール部材を介してボルトによって締結される。
【0019】
こうした送出し管7の中には、前方側に支持ブロック21が固定されている。すなわち、切屑の詰まりを回避するため、本実施形態では排出管8からより離れた位置に全ての支持ブロック21が設けられている。その支持ブロック21は、スクリュー5を本体前部201の軸受部材とともに後方側でも回転支持し、その回転を安定させることで切屑を円滑に送ることができるようにしたものである。ところが、狭い送出し管7の中に支持ブロック21が突起物として存在することになるため、それがスクリュー5によって送られる切屑の障害物になり、特に帯状の切屑などが引っ掛かり易く、詰まりを生じさせる要因になると考えられる。
【0020】
切屑が送出し管7の中などで詰まってしまうと、スクリュー5の回転を停止させてしまう。その場合は、作業者が切屑を掻き出し、スクリュー5の回転を正常に戻さなければならなくなる。この点で、支持ブロック21は、なるべく切屑が引っ掛からないような形状で形成されている。具体的には、支持ブロック21は、前後方向に見た断面が外側を広くした円弧形状であって、前側部分は三角形状で形成され、送出し管7の径方向つまり厚さ方向の寸法が後方にかけて厚くなるように傾斜が付けられている。しかし、こうした支持ブロック21であっても切屑の引っ掛かりを生じさせてしまうことがある。
【0021】
そこで、詰まりの原因と考えられる支持ブロック21に関して検討が加えられた。ここでは、特に支持ブロック21の配置について比較が行われ、その結果、
図4に示すように、排出管8から遠い位置の送出し管7の前方側に配置させるのが好ましいことがわかった。例えば、逆に支持ブロック21を排出管8(屈折部702)に近い送出し管7の後方側配置にした場合は、ある一定量の切屑の送出しによって詰まりが生じ、スクリュー5の回転停止が起こってしまう。これに対して、本実施形態のように支持ブロック21を前方側配置にした場合には、そのようなことが起きなかった。
【0022】
支持ブロック21の後方側配置での状況を確認したところ、屈折部702から排出管8の内側上面に切屑が強く押し付けられたようなキズが多くみられた。その原因を考えてみる。支持ブロック21は、スクリュー5と送出し管7との間の径方向のスペースを小さくしてしまっている。排出管8の中では、切屑はスクリュー5の押し込み力により下から押し上げられているだけであり、その移動が極端に低下している。従って、送出し管7の後方側空間が支持ブロック21によって狭くなってしまうと、送られてきた切屑が当該後方側空間で圧縮される。そのような状況で帯状の切屑などが支持ブロック21に引っ掛れば、切屑が移動しにくくなってしまう。よって、送出し管7内の特に後方側空間で切屑がより圧縮され、それが原因として詰まりを生じさせていると考えられる。
【0023】
そこで、本実施形態では、送出し管7の後方側のスペースをより広くすることや、切屑の引っ掛かりが生じないようにすることを考慮し、支持ブロック21を送出し管7の前方側に配置させるようにした。3つの支持ブロック21は、送出し管7(直線部701)の中心線方向(前後方向)の位置が揃えられ、円周方向には等間隔に配置されている。更に、送出し管7の径は
端部板302の貫通孔321の径よりも大きく形成されている。そのため、貯留槽3側から送出し管7側を見た場合には、支持ブロック21が端部板302の後方側に隠れるような配置になっている。
【0024】
以上のような構成のスクリューコンベア1では、工作機械の加工室から落下したクーラントや切屑が投入口305から貯留槽3内に入り、回転するスクリュー5によって後方側へと送られる。クーラントは切屑を残して貯留槽3から溢れるようにして流れ出し、本体2内のタンクに戻され、フィルタを通すなどして再生される。一方、切屑は、スクリュー5によって貫通孔321を通って送出し管7へと送られる。その際、本実施形態では、貫通孔321の大きさに応じて切屑が入ってくるため、帯状の切屑であっても支持ブロック21には引っ掛かり難くなっている。
【0025】
そして、送出し管7の中を後方側に送られる切屑は、後方向側へと向かうにつれて徐々に移動しにくくなり密度が高くなっていく。本実施形態では、その後方側に支持ブロック21が存在しないため、スクリュー5と送出し管7との隙間が確保でき、切屑が無理に押し込まれて強く圧縮されることはない。それゆえ、送出し管7や排出管8内で切屑が詰まりにくくなっている。よって、切屑の詰まりが生じないことで、スクリュー5の回転を停止させることなくスクリューコンベア1の連続運転を可能にする。
【0026】
続いて、スクリューコンベアの他の実施形態について以下に説明する。なお、前記第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明する。先ず、
図6は、送出し管7を示した外観斜視図であり、内部の支持ブロック21を破線で示したものである。この第2実施形態では、支持ブロック21の配置が第1実施形態のものと異なっている。具体的には、3つの支持ブロック21が円周方向には等間隔であるが、送出し管7(直線部701)の中心線方向(前後方向)にはずれた位置にあり、いわゆる螺旋上に配置されている。このとき、3つの支持ブロック21の螺旋方向は、固定用フランジ22に近いものから遠いものの配置が、スクリュー5の回転方向に倣った配置と、回転方向とは逆方向の配置とがある。
【0027】
この第2実施形態では、3つの支持ブロック21が前後方向に離れているが、スクリュー5を回転支持する機能を損なうことはない。そして、切屑の密度が高くなる送出し管7の後方側にも支持ブロック21が配置されているが、1つだけであるため、詰まってしまうほどに切屑を圧縮させるようなこともない。また、支持ブロック21同士が離れて配置されているため、スクリュー5と送出し管7との隙間が全体的に確保でき、切屑の円滑な搬送を可能にしている。さらに、3つの支持ブロック21の螺旋配置をスクリュー5の回転と逆方向にすることにより、切屑がより引っ掛かり難くなると考えられる。
【0028】
次に、
図7は、送出し管を前後方向に示した簡略図である。第3実施形態の送出し管27は、第1実施形態の送出し管7よりも径が大きく形成された円筒管であり、同じように3つの支持ブロック28,29が内周面に固定されている。ただし、3つのうち1つの支持ブロック28が他の2つの支持ブロック29よりも送出し管27の径方向、つまり厚さ方向の寸法が大きく形成されている。そして、その支持ブロック28は送出し管27内の最も高い位置に配置されている。図面には、一点鎖線でスクリュー5の位置が示されているが、ここから分かるように送出し管27の中心と回転軸501の軸心とが上下方向にずれている。なお、支持ブロック28,29の前後方向の位置は、前記第1または第2実施形態と同じである。
【0029】
本実施形態では、支持ブロック28を上部に設けることによりスクリュー5と送出し管27との隙間が、スクリュー5の上側で広くなっている。これは、スクリュー5の回転によって撹拌されながら送られる切屑は上側に移動しやすいからである。よって、このような構成にすることで、切屑の圧縮が抑えられ、送出し管27や排出管8内で切屑を詰まらせにくくすることができる。
【0030】
更に、
図8は、送出し管を前後方向に示した簡略図である。この第4実施形態の送出し管31は、U字形の溝形本体311の上に蓋体312が接合されて一体に形成されたものである。そして、同じく3つの支持ブロック32,33が内周面に固定されている。ただし、3つのうち1つの支持ブロック32が他の2つの支持ブロック33よりも大きく形成され、蓋体312に固定されている。そして、本実施形態でもスクリュー5と送出し管31との隙間が、スクリュー5の上側で広くなっている。よって、スクリュー5が回転して撹拌されながら送られる切屑は上側に移動しやすくなり、切屑の圧縮が抑えられ、送出し管31や排出管8内で切屑を詰まらせにくくすることができる。
【0031】
ところで、第3及び第4実施形態では、厚みのある支持ブロック28,32を設けて送出し管27,31内におけるスクリュー5との隙間が大きくなっている。特にスクリュー5の上側の隙間が大きくなっている。しかし、隙間拡大の効果は、第1及び第2実施形態のように各方向の隙間が均等であっても良い結果が得られる。一方で、スクリューコンベア1のように背の低い薄型構造の場合には送出し管の径をあまり大きくすることは好ましくない。そこで、隙間の観点から切屑の詰まり防止とコンパクト化の要求に対応する構成を検討したところ、次のような構成が好ましいことが分かった。
【0032】
具体的に
図7の例では、送出し管27の内部を中心線方向(図面を貫く方向)に見た場合に、スクリュー5の螺旋羽根502の断面積に相当するスクリュー運搬断面積と、送出し管27の内径との間の螺旋羽根502の外径との隙間部分であって、支持ブロック28,29を除く断面積に相当する隙間断面積とが、ほぼ同程度になるように設計する。送出し管7,31の場合も同様であり、その内部を中心線方向に見た場合に、スクリュー5が占めるスクリュー運搬断面積と、そのスクリュー5と支持ブロック21,32,33を除く隙間断面積とがほぼ同じになるようにすることが好ましい。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、支持ブロックの形状や配置位置などについて更に別の構成であってもよい。