特許第6857240号(P6857240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サミ ラブズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6857240-筋肉痛の治療管理のための酵素組成物 図000005
  • 特許6857240-筋肉痛の治療管理のための酵素組成物 図000006
  • 特許6857240-筋肉痛の治療管理のための酵素組成物 図000007
  • 特許6857240-筋肉痛の治療管理のための酵素組成物 図000008
  • 特許6857240-筋肉痛の治療管理のための酵素組成物 図000009
  • 特許6857240-筋肉痛の治療管理のための酵素組成物 図000010
  • 特許6857240-筋肉痛の治療管理のための酵素組成物 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857240
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】筋肉痛の治療管理のための酵素組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20210405BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61K38/48
   A61K38/47
   A61K38/46
   A61P21/00
   A61P25/04
   A61P29/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-522829(P2019-522829)
(86)(22)【出願日】2016年11月3日
(65)【公表番号】特表2020-500172(P2020-500172A)
(43)【公表日】2020年1月9日
(86)【国際出願番号】US2016060207
(87)【国際公開番号】WO2018084841
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ ラブズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリアナム
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】マジード シャヒーン
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0064712(US,A1)
【文献】 米国特許第5569458(US,A)
【文献】 Sports Nutr. Ther., (2016.11.11:Online), 1,[3], Article.113, <doi:10.4172/2473-6449.1000113>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ及びセルラーゼを含む包括的な消化酵素混合物を使用した、遅発性筋肉痛の治療管理方法であって、前記方法が、有効濃度の酵素混合物を遅発性筋肉痛の症状を表すヒト以外の哺乳類に投与する工程を含み、
前記消化混合物中の前記個々の酵素が、
a)アミラーゼ:24000DU/g、b)セルラーゼ:1100CU/g、c)リパーゼ:200FIP/g、d)ラクターゼ:4000ALU/g及びe)プロテアーゼ:6000PC/g
の濃度で存在する、方法。
【請求項2】
遅発性筋肉痛の前記症状が、疼痛、圧痛、炎症、筋損傷及び柔軟性を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ及びセルラーゼの包括的な消化酵素混合物を含み
前記消化混合物中の前記個々の酵素が、
a)アミラーゼ:24000DU/g、b)セルラーゼ:1100CU/g、c)リパーゼ:200FIP/g、d)ラクターゼ:4000ALU/g及びe)プロテアーゼ:6000PC/g
の濃度で存在する、遅発性筋肉痛(DOMS)の治療管理に使用するための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、酵素に関連する。より具体的には、本発明は遅発性筋肉痛(DOMS)の症状を緩和するための消化酵素の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
遅発性筋肉痛(DOMS)は、運動誘発性の現象であり、かつスポーツ外傷の再発形態である。それは、主に不慣れな身体活動の後の骨格筋についての、不快な感覚として現れる。関係のある症状は、筋短縮、増大した受動的スティフネス(passive stiffness)、腫れ、強度及び力の減少、局部的な痛み並びに分散された固有受容性感覚を包含する。これは、筋肉及び結合組織への構造損傷さえも引き起こし、筋機能及び関節力学(joint mechanics)の変化をもたらし、アスリートやスポーツマンのパフォーマンスを損ない得る。
【0003】
DOMSのための治療方針は、予防的及び治療的の両方とも、当技術分野において周知であり、細胞療法、ストレッチ、抗炎症、薬、超音波、電流法、ホメオパシー、マッサージ、圧迫、高気圧酸素及び運動を包含する(Cheung et al.,Delayed Onset Muscle Soreness Treatment Strategies and Performance Factors,Sports Medicine 2003;33(2):145−164)。分岐鎖アミノ酸(Shimomura et al.,Branched−Chain Amino Acid Supplementation Before Squat Exercise and Delayed−Onset Muscle Soreness, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism,2010;20:236−244)及びビタミンC(Connolly et al.,The effects of Vitamin C supplementation on symptoms of delayed onset muscle soreness,Journal of Sports Medicine and Physical Fitness,2006;46:462−467)の形態での補給もまた、DOMSのための治療として施される。Beckら(Effects of A Protease Supplement On Eccentric Exercise−Induced Markers Of Delayed−Onset Muscle Soreness And Muscle Damage,Journal of Strength and Conditioning Research,2007;21(3):661−667)は、DOMS及び筋損傷の標識におけるプロテアーゼベースサプリメントの有効性を試験した。しかしながら、吸収の問題及び腸内における酵素の破壊は、伝統的な抗DOMS酵素(プロテアーゼ)療法の有効性を制限し得る。また、これらの治療の効能は、DOMSの正確なメカニズムを取り巻く理解の欠如により、制限され及び矛盾する。利用可能な治療法は、DOMSの一部の症状の改善に役立つが、すべての症状が扱われるわけではない。
【0004】
包括的な消化酵素混合物−DOMSの症状を緩和するための治療用サプリメントとしてのDigeZyme(登録商標)(プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、セルラーゼ)の能力を開示することは、本発明の主目的である。
本発明は前記目的を果たし、かつ他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、消化酵素(プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、セルラーゼ)の組み合わせ−遅発性筋肉痛(DOMS)の治療管理のためのDigeZyme(登録商標)を開示する。
本発明の他の特徴及び利点は、以下のより詳細な記述説明によって、例として発明の原理を説明する添付の図面と併せて、明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、来診0〜3中のDigeZyme(登録商標)及びプラセボを消費する被検者の、平均手持ち動力計読み値のグラフ表示を示す。
図2図2は、来診0〜3中のDigeZyme(登録商標)及びプラセボを消費する被検者の大腿筋からの、kg/cm2で表す平均痛覚計読み値のグラフ表示を示す。
図3図3は、来診0〜3中のDigeZyme(登録商標)及びプラセボを消費する被検者の腓腹からの、kg/cm2で表す平均痛覚計読み値のグラフ表示を示す。
図4図4は、来診0〜3中のDigeZyme(登録商標)及びプラセボを消費する被検者による、イリノイアジリティのアジリティランテスト(Illinois Agility agility run test)にかかった総時間の平均値のグラフ表示である。
図5図5は、来診0〜3中のDigeZyme(登録商標)及びプラセボを消費する被検者を評価したマギル疼痛質問票試験(McGill pain questionnaire test)の平均値のグラフ表示である。
図6図6は、来診0〜3中のDigeZyme(登録商標)及びプラセボを消費する被検者の、平均血清クレアチンキナーゼレベルのグラフ表示である。
図7図7は、来診0〜3中のDigeZyme(登録商標)及びプラセボを消費する被検者の、平均血清乳酸脱水素酵素レベルのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最も好ましい実施形態においては、本発明は、プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ及びセルラーゼの包括的な消化酵素混合物(DigeZyme(登録商標))を使用した、遅発性筋肉痛の治療管理方法を開示し、前記方法は、有効濃度の酵素を遅発性筋肉痛の症状を表す哺乳類に投与する工程を含む。関連する実施形態においては、消化混合物中の個々の酵素は、以下の濃度で存在する:a)アミラーゼ:24000DU/g、b)セルラーゼ:1100CU/g、c)リパーゼ:200FIP/g、d)ラクターゼ:4000ALU/g及びe)プロテアーゼ:6000PC/g。別の関連する実施形態においては、遅発性筋肉痛の症状は、疼痛、圧痛、炎症、筋損傷及び柔軟性を包含する。
別の好ましい実施形態においては、本発明は、プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ及びセルラーゼの包括的な消化酵素混合物(DigeZyme(登録商標))を含む、遅発性筋肉痛(DOMS)の治療管理に使用するための組成物を開示する。
以下に包含する具体例は、本発明の前記最も好ましい実施形態を説明する。
【0008】
実施例1:研究デザイン
製品概要:DigeZyme(登録商標)は、「多酵素複合体の、オフホワイトからクリーミーホワイトの粉末」である。この多酵素複合体は、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ及びラクターゼからなる。プラセボカプセルは、同等量のマルトデキストリンを含有する。2つの製品の間に、色、味、質感又は包装の違いは見つからない。カプセルを全く同じ外見となるように、高密度のポリエチレン瓶に乾燥剤とともに封をした。多酵素複合体の組成物を表1に示す。
【表1】
【0009】
倫理的承認:倫理的承認を、Sparsh Hospital for Advanced Surgeries、#146、Infantry Road、Bangalore(central drugs standard control organization のもとで、官報通知番号F.28−10/45−H(1)、1945年12月21日発行及び最終改正された参照通知番号G.S.R.76(E)2012年2月8日発行により記載された)から、研究の開始に先立って取得した。
インフォームドコンセント:合計20人の健康なボランティアを本研究に包含した。書面によるインフォームドコンセントを、ボランティアから、予定された最初の来診の間に取得した。十分な口頭及び書面の、本研究に関する情報を被検者に提供し、かつ被検者に本研究への参加を考える十分な機会を与えた。署名されたインフォームドコンセントを取得した後に、被検者を本研究のために検査した。
研究デザイン:研究下のDOMSモデルのため、プロスペクティブな、二重盲検の、ランダム化された、及びプラセボ対照のデザイン特徴を選択した。DigeZyme(登録商標)の鎮痛性効果を、釣り合う用量のプラセボと比較した。本研究の事前に指定された有効性エンドポイントを、0日目(運動前)及び運動後72時間において評価した。
【0010】
参加者:公知の筋骨格の病態を有しない、20人の健康な男性が本研究に参加した。被検者を、彼らが以下の除外基準、即ち、前の月の抗炎症の/鎮痛性の/抗酸化の薬による治療、異常な肝臓又は腎臓の機能試験、進行中の炎症性又は伝染性のプロセスを示唆する検査所見、及びいずれかの公知の疾患の存在のうち、1又は複数に合致する場合には、除外した。参加者は、運動中における心血管の又は整形外科の合併症の危険性の程度を見極めるための、健康歴質問票も完成させた。研究の進行中での離脱はなかった。
多酵素複合体の補給:実験群のすべての参加者は、3日間にわたってDigeZyme多酵素複合体の補給を受け取った。この期間中に、彼らは多酵素複合体の1カプセルを1日に3度消費した。プラセボ群の参加者は、同様の大きさ及び色のカプセルを受けとった。彼らに、以下の研究サプリメントの、1回分の服用量についての同一の指示を与えた。研究サプリメントは、Sami Labs Limited、Bangaloreによって準備及び提供された。治療及びプラセボの投与を、参加者及び研究者の両方に対して盲検化した。補給の結果、参加者からの副作用の報告はなかった。
【0011】
データ収集実施要領:被験者は、診療所を0日目(ベースライン来診)並びにその後の1日目、2日目及び3日目に来診した。バイタルサイン(血圧、脈拍数、心拍数及び呼吸数)、病歴及び薬物治療歴を記録した後、身体検査を行った。
ランダム化及び割り付けの秘匿:ランダム化シーケンスを、主催組織から独立し、かつ本研究の運営及び報告に関係のない、独立した統計家によって準備した。英数字コードを有効な及びプラセボの両方に対して生成して、研究の盲検性及び割り付けの秘匿性を向上させた。秘匿の割り付けには、コンピュータ生成ランダム割り付けソフトウェア(computer generated random allocation software)(バージョン2.0)を使用した。続いてブロックランダム化(1ブロックのみ)し、被験者を、有効な及びプラセボのいずれかを受け取るようにランダム化した。ランダム化コードを、盲検化を解除するまで、極秘に保管し、かつ主催者の標準的な操作手順に従って、緊急時に権限を与えられた人のみが入手できるようにした。
盲検化:本研究を二重に盲検化し、研究者及び試験参加者のどちらも、彼らが有効な及びプラセボのいずれを受け取るかがわからないようにした。臨床試験用医薬品を、先入観をなくすために予めラベルした容器で提供した。
【0012】
実施例II:従った手順:
DOMS誘発の実施要領:被験者に、研究サプリメントを摂取し、かつ24時間後にベースラインの読み値を拠点に報告するように指示した。10時間の絶食の後、心拍数及び自覚的運動強度を、安静時、運動中の5分毎及び回復までの10分間において観察した。参加者は、電動トレッドミルのレベルを固定し、かつ自分で選択した速度で5分間ウォームアップした。5分間のウォームアップの後、トレッドミルの速度を心拍数が予想される最大心拍数の80%に達するまで上昇させ、参加者にこの速さを5分間維持するように指示した。この時のトレッドミルのグレードを10%に調節し、30分間維持した。そして被験者は、自分で選択した速さでの5分間の積極的なクールダウン及び5分間の座った状態の消極的な回復期を完了させた。被験者は、運動時間の24時間前及び72時間後は、他のいかなる自由な身体活動も制限された。
【0013】
痛覚計を用いた筋肉痛の定量化:筋肉痛質問票(Muscle Soreness Questionnaires:MSQ)においては、参加者が、彼らの一般的な痛みを、右前大腿部及び右後大腿部について1(標準的)から10(非常に、ひどく痛む)の尺度で評価する必要があった(Miller et al., The effects of protease supplementation on skeletal muscle function and DOMS following downhill running.Journal of Sports Sciences 2004;22:365−372)。痛覚計を、筋肉上に直接的な圧力をかけることで筋肉痛を定量化するために用いた。これは、筋肉上にかけられた圧力が、圧迫感よりも痛みの感覚として知覚される閾値を記録することを含み、この閾値は圧痛閾値(PPT)として言及される。PPTは、疼痛閾値の計測に適していることが証明されてきた。痛覚計の標準は、Fischerによって推量されてきた方法に従って、5秒かけて5kg/cm2まで圧力を直線的に増加させることである。この器具は、1cm2ゴム製の標尺台、及び0.2kg/cm2ごとに増加する2から20kg/cm2まで刻まれた尺度を有する。被験者に、圧力の感覚が疼痛に変わるとすぐに、「痛い」、及び「止めます」と言うことで報告するように指示した。痛覚計の標尺台を筋腹に対して垂直に保持し、計器を被験者及び検査官から外した。圧力を、およそ1kg/cm2/sの割合で、被験者が「痛い」と報告するまで増加させた。検査官は、その後圧力を解除し、かつ計器を筋肉から持ち上げて、計器を読みかつ測定値を記録した。計器上の針を、各試験の前に、痛覚計上の圧力解除ボタンを用いてベースラインに戻した。
【0014】
手持ち動力計を用いた筋肉の強度及び力について:手持ち動力計(Hand Held Dynamometer:HHD)を、筋肉の最大随意筋力(MVC)中に強度を測定することにより、筋力の変化を定量化するために用いた(Kellen et al.,Hand−Held Dynamometry:Reliability of Lower Extremity Muscle Testing in Healthy,Physically Active,Young Adults,Journal of Sport Rehabilitation,2008;17:160−170)。各参加者に、最大膝伸長及び屈曲収縮(MVC)を、3つの異なる膝の可動域(0度、90度、120度)で3反復行うように頼んだ。この試験角度を、膝の異なる位置における筋肉の長さの変化によって生じ得る、筋力の変化を説明するために選択した。
【0015】
イリノイアジリティランテスト:アジリティを、イリノイアジリティランテスト(Getchell B.Physical Fitness:A Way of Life,2nd ed. New York:John Wiley and Sons,Inc.,1979)を用いて測定した。試験は、10メートルの長さかつ5メートルの幅のコース上で行った。アジリティタイム(agility time)を、ストップウォッチを用いて記録した。スタート、フィニッシュ及び2つの曲がり角を4つのコーンで標識し、かつ別の4つのコーンを、3.3メートル離して等間隔で中央に置いた。被検者を、(スタートラインに頭を向けて)うつ伏せにさせ、かつ手を彼らの肩に置かせた。「ゴー(Go)」という命令に基づいて走行をスタンディングスタートで開始させ、ストップウォッチを開始し、かつ被検者に、可能な限り速く起き上がり、そして示された方向に従って、コーンを倒すことなく、タイマーを止めるフィニッシュラインまでコースを走り回るように指示した。
【0016】
評価項目:0(疼痛なし)から10(考えられる最悪の疼痛)の10のサブスケールを含むマギル疼痛質問票(McGill pain questionnaire)を、疼痛を評価するために用いた(Melzack R.The McGill Pain Questionnaire:Major properties and scoring methods.Pain.1975;1:277−299;Sullivan et al.,An experimental investigation of the relation between catastrophizing and activity intolerance.Pain 2002;100:47−53)。痛覚計を、疼痛を実験的に誘発するため、膝蓋中心から5センチメートル上の膝蓋腱上の、予め決められた位置上で使用し、柔軟性を評価した。被検者は、痛覚を0から10の尺度で評価した。3日目に、試験の各群について、ベースライン(運動前)、運動後並びにさらに運動後24、48及び72時間に評価を行った。第2の結果は、炎症、筋損傷、柔軟性、及び運動前に拡大したエネルギー量の評価を包含していた。バイオマーカーであるクレアチンキナーゼ及び乳酸脱水素酵素を、運動前及び運動後72時間において観察した。サプリメントの安全プロフィールを、ルーチン血液学、腎臓及び肝臓機能試験によって評価した。有害事象を、研究を通して観察した。
【0017】
統計解析:すべての試験を、Statistical Analysis Software(SAS)version 9.2を用いて行った。すべての解析を、intent−to−treat populationを用いて実施した。特定のパラメーターのためのデータが記録されていない患者は、そのパラメーターの解析から自動的に除外された。すべてのデータセット変数に、共分散分析(ANCOVA)及びウィルコクソンの符号順位検定を用い、有意水準をP<0.05に設定した。
【0018】
実施例III:結果:
身体的特徴:母集団は基本的に健康であり、目立った合併症及び薬剤服用がなかった。患者のスクリーニング特性を、表2に示す。
【表2】
【0019】
プラセボ群(n=10)とDigeZyme(登録商標)群(n=10)との間に、統計的に有意な差はなかった。スクリーニング日において、すべての登録された被検者の平均体重は59.3±4.64kg、平均身長は163.8±4.99cm及び平均BMIは22.2±1.50Kg/m2であった。
効能評価:遅発性筋肉痛−クオリティ・オブ・ライフを、研究期間を通して、主要な効能の尺度として解析した。「p」値が、ベースラインから最後の来診まで、プラセボと有効群の間の症状における、統計的に有意な変化を示した。共分散分析(ANCOVA)を用いた統計解析は、主要な効能のパラメーターが、多酵素複合体群とプラセボ群との間で統計的に有意(p<0.05)であることを示した(表3)。
【表3】
【0020】
さらに、多酵素複合体群とプラセボ群との間の、種々の来診(ベースライン、1日目、2日目及び3日目)にまたがる効能評価の相対的な平均値を、有効性パラメーターとして示している(図1〜7)。多酵素複合体を受けた患者は、プラセボと比較した場合に、効能パラメーターについて統計的に有意な差を有していた。
疼痛評価:マギル疼痛質問票は、多次元的な疼痛の手段であり、最終スコアは10の個々の疼痛についての質問の合計である。マギル疼痛質問票の最初の9つは、疼痛(現在の疼痛、最も軽い疼痛、及び最もひどい疼痛)の評価に基づき、一方で10個目はしびれの程度及びその機能妨害に基づく。多酵素複合体とプラセボとの間の違いを比較した場合、疼痛スコアは高い統計的有意性(p=0.0061)を示した。
圧痛評価:圧痛指数において、多酵素複合体を摂取する被検者は、運動後72時間にかなり低い圧痛を示した(p=0.042)。
【0021】
筋損傷評価:クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素、タンパク質代謝物質及びミオグロビンのような生化学物質は運動後およそ24時間で筋細胞から生じ、かつ48時間まで血漿中にみられる。クレアチンキナーゼは、筋損傷の代替的な指数であり、筋細胞膜の損傷又は裂け目をより強く示す。CK反応は多酵素複合体群では比較的小さく、プラセボ群に比べて膜統合性(membrane integrity)を高度に維持していることを示唆している(図6)。運動後24時間で、プラセボ群の被検者は、多酵素複合体群に比べて高水準のCKの傾向を示した。この傾向は、72時間の評価を通して続いた。CK値についての多酵素複合体群とプラセボ群との間の違いは、統計的に有意ではなかった。乳酸脱水素酵素も同様の現象を示し、その傾向はプラセボ群において運動後24時間及び72時間により強かった(図7)。
【0022】
屈曲及び伸長の測定:運動前の下肢屈曲測定値の解析において、下肢屈曲測定値は、左脚については群の間で等しいことが明らかとなった。一方で、屈曲測定値は、右脚については、プラセボ群において有意に大きい(p=0.049)であることが明らかとなった。運動後の屈曲測定値を解析すると、24時間後の右脚の屈曲測定値のみが多酵素複合体群において有意である(p=0.004)ことが明らかとなった。
安全性評価:血圧、呼吸数、脈拍数及び任意の異常な実験パラメーターのようなバイタルサインを、安全性評価とみなした。記述的身体検査における臨床的に有意な変化は、両方の群(多酵素複合体及びプラセボ)においても記録されなかった。多酵素複合体の安全性を、有害事象データ(発生、強度、及び治験薬との関係)を用いて評価した。本研究において、有害事象は認められなかった。
【0023】
本研究においては、DigeZyme(登録商標)多酵素複合体カプセルは、主観的な疼痛及び圧痛における有意な改善を示し、炎症、筋損傷又は筋屈曲のマーカーのレベルの有意な改善を伴わなかった。
本発明を好ましい実施形態を参照しながら説明したが、本発明がそれに限定されないことは、当技術分野の当業者に明確に理解される。むしろ、本発明の範囲は添付の請求の範囲と併せてのみ理解される。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ及びセルラーゼを含む包括的な消化酵素混合物(DigeZyme(登録商標))を使用した、遅発性筋肉痛の治療管理方法であって、前記方法が、有効濃度の酵素混合物を遅発性筋肉痛の症状を表す哺乳類に投与する工程を含む、方法。
〔2〕前記消化混合物中の前記個々の酵素が、
a)アミラーゼ:24000DU/g、b)セルラーゼ:1100CU/g、c)リパーゼ:200FIP/g、d)ラクターゼ:4000ALU/g及びe)プロテアーゼ:6000PC/g
の濃度で存在する、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕遅発性筋肉痛の前記症状が、疼痛、圧痛、炎症、筋損傷及び柔軟性を包含する、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕前記哺乳類が、ヒトである、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕プロテアーゼ、アミラーゼ、ラクターゼ、リパーゼ及びセルラーゼの包括的な消化酵素混合物(DigeZyme(登録商標))を含む、遅発性筋肉痛(DOMS)の治療管理に使用するための組成物。
〔6〕前記消化混合物中の前記個々の酵素が、
a)アミラーゼ:24000DU/g、b)セルラーゼ:1100CU/g、c)リパーゼ:200FIP/g、d)ラクターゼ:4000ALU/g及びe)プロテアーゼ:6000PC/g
の濃度で存在する、前記〔2〕に記載の組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7