特許第6857249号(P6857249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857249
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】アンテナアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/20 20060101AFI20210405BHJP
   H01Q 19/10 20060101ALI20210405BHJP
   H01Q 3/04 20060101ALI20210405BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01Q3/20
   H01Q19/10
   H01Q3/04
   H01Q21/06
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-540085(P2019-540085)
(86)(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公表番号】特表2020-506604(P2020-506604A)
(43)【公表日】2020年2月27日
(86)【国際出願番号】KR2018001182
(87)【国際公開番号】WO2018139896
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0012671
(32)【優先日】2017年1月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イン−ホ キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョウン−ソク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ソン−マン カン
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−184769(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0120202(US,A1)
【文献】 特開平11−353824(JP,A)
【文献】 特開2006−096243(JP,A)
【文献】 特開平09−069721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/00− 3/46
H01Q 15/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ要素が前面に配置されたリフレクターと、
前記リフレクターに離間配置された支持軸
前記支持軸を中心に前記リフレクターを回動させるアンテナリフレクターステアリング機構とを備え
前記アンテナリフレクターステアリング機構は、
前記支持軸に固定され、外周面に扇型ギア部を有する扇型ラックギア(rack gear)と、
前記扇型ラックギアに噛合する衛星ギア(planet gear)と、
一側に前記支持軸回転自在につながる少なくとも1つのボス(boss)及び他側に前記リフレクターの背面に固定される固定部が形成されたギアハウジングと、
前記ギアハウジングに固定され、前記衛星ギアにつながって前記扇型ラックギアに沿って前記衛星ギアを前記支持軸を中心に公転させる駆動モータとを含み、
前記衛星ギアが前記支持軸を中心に公転すると、前記リフレクターと、前記ギアハウジングと、前記駆動モータとが前記支持軸を中心に公転することを特徴とするアンテナアセンブリ。
【請求項2】
前記アンテナリフレクターステアリング機構は、
前記リフレクターの高さ方向を基準に上部に1組が設けられ、下部に1組が設けられることで一対を成すように構成される、請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項3】
前記扇型ラックギアは、前記扇型ギア部の両端に突出段を含み、
前記突出段は、前記衛星ギアの離脱を防止する請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項4】
前記衛星ギアは、円周面を包む絶縁バンドを含み、
前記絶縁バンドは、前記衛星ギアと前記扇型ラックギアの噛合部の屈曲に沿って変形する柔軟性を有するように形成された請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項5】
前記絶縁バンドは、フッ素樹脂、超高分子量ポリエチレンのうちのいずれかの材料からなる請求項4に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項6】
前記扇型ラックギア及び前記衛星ギアは、アルミ素材からなり、表面がアノダイジングされた請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項7】
前記ギアハウジングは、クレビス(clevis)の形態であり、
一側に位置する二つのボス(boss)が前記支持軸に回転自在につながり、
前記二つのボスの間に前記扇型ラックギアが収容される請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項8】
前記ギアハウジングは、
前記固定部前記リフレクターの背面との間に、電気的に絶縁された状態で固定するための絶縁インサート及び絶縁テープをさらに含む、請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項9】
前記ギアハウジングは、
前記ボス内周面に前記ボスの軸方向に沿って形成された3列あるいは4列の溝
前記溝に収容される複数の非導電性材料の軸受ボールとをさらに含む、請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項10】
前記軸受ボールは、ポリマー素材またはセラミック素材のうちのいずれかの材料からなる請求項9に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項11】
前記軸受ボールは、
前記ギアハウジングが前記支持軸周りを回動するに際し、前記ギアハウジングの回動抵抗を減少させるために、軸方向及び半径方向において軸受の役割を実行することのできるサイズおよび個数である、請求項9に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項12】
前記支持軸、上部軸と、下部軸、前記上部軸および前記下部軸間に配置され、前記上部軸および前記下部軸にカップリングによってつながる中間軸を含む請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項13】
前記カップリングは、前記カップリングによってつながる両側の軸を電気的に絶縁する請求項12に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項14】
前記駆動モータは、DCモータである請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項15】
前記駆動モータは、少なくとも一つのロータリーエンコーダを含み、
RET(remote electric tilt)コントローラによって制御される請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項16】
前記支持軸上に補助ブラケットが設けられ、
前記補助ブラケットは、
前記支持軸が貫通するボディと、
前記ボディの両脇にて、前記リフレクターの側面に延び、前記リフレクターに端部が固定されたアーム(arm)とを含む、請求項1に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項17】
請求項1に記載のアンテナアセンブリを3つ含み、
前記3つのアンテナアセンブリは、3分割された円柱のそれぞれのセクター(sector)に配置される移動通信基地局アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体通信基地局のアンテナアセンブリに関し、より詳しくは、個別回転式分割型アンテナアセンブリに関する。
【0002】
この部分に記述された内容は、単に本実施例についての背景情報を提供するに留まり、従来の技術を構成するものではない。
【0003】
移動通信システムにおいて、セル設計時の基地局に装着されるアンテナの位置は、該当セルのカバレッジ(coverage)を決定する重要な変数となる。アンテナは、電波の到達距離を最大限に増やすために、都心の建物の屋上や都心近郊の基地局用鉄塔に設けられる。
【0004】
*4最近では、基地局周辺の建物の地形変化やイベント等による通話量密集地域での通話品質を向上させるために、アンテナリフレクターの向きを調整する必要があり、隣接する基地局の電波干渉の程度を含むすべての基地局の設定を一緒に考慮して調整される。
【0005】
アンテナリフレクターの水平方位角の場合、各放射素子に伝送される信号の位相を制御して調整する電気的水平ステアリング(steering)をするようになれば、スキャンロス(scan loss)が発生し、サイドローブ(side lobe)が増加する。したがって、水平ステアリングの場合には、アンテナリフレクターを機械的な方法で調整することが望ましい。機械的なステアリング機構では、リフレクターと、これにつながった軸を一緒に回動(pivot)させる装置は、主に採用されてきた。このような構造は、米国特許第7、145,515号及び7,015,871号と韓国特許第0774262号などに開示される。
【0006】
しかし、リフレクターは重量物であり、これを固定する軸はリフレクター背面に偏心して位置する。軸とリフレクターを回転させるためには、かなりの容量の駆動部が必要となり、設置スペースの多くを占有する欠点がある。また、都心の建物や小型タワーの場合、都市美観に支障を与えない小型化及び軽量化されたアンテナを利用した通信網の構築が今後の通信事業者の課題になるとも予測される。
【0007】
これに対応して、一つのタワーにアンテナを3つ設置して円筒状のキャニスター(canister)を覆う技術が適用されるが、リフレクターを十分な力で回動させながらも、設置スペースを小さく占めるアンテナリフレクターステアリング機構が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、リフレクターをステアリングする十分な力を提供し、設置スペースが最小化され、基地局アンテナシステムの電波性能を阻害しないリフレクターステアリング構造を有するアンテナアセンブリを提供するものである。
【0009】
より具体的には、リフレクターの水平方位角を調整することにおいて、リフレクターを支持する回転軸は固定し、回転軸を中心にリフレクターのみ回動するようにして回動部の重量を最小化し、円滑なステアリングを提供することと、駆動部の動作部品間の電気的特性がPIMD(passive intermodulation distortion)の増加を招かないリフレクターステアリング構造を有するアンテナアセンブリを提供することに主な目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような課題を解決するために、本発明の一実施例に係るアンテナリフレクターステアリング構造を有するアンテナアセンブリは、アンテナ要素が前面に配置されたリフレクターと、リフレクターに離間配置された支持軸、及び支持軸を中心にリフレクターを回動されるアンテナリフレクターステアリング機構を含み、アンテナリフレクターステアリング機構は、支持軸に結合し、外周面に扇型ギア部を有する扇型ラックギア(rack gear)と、扇型ラックギアに噛合する衛星ギア(planet gear)と、一側に位置し、支持軸に回転自在につながる少なくとも一つのボス(boss)及び他側にリフレクターの背面と結合する固定部が形成されたギアハウジング、及びギアハウジングに固定され、衛星ギアにつながって扇型ラックギアに沿って衛星ギアを支持軸を中心に公転させる駆動モータを含むことを特徴とする。
【0011】
また、アンテナリフレクターステアリング機構は、リフレクターの高さ方向を基準に上部に1組設置され、下部に1組が設置されて対を成すことを特徴とする。
【0012】
また、扇型ラックギアは扇型ギア部の両端に突出段を含み、突出段は、衛星ギアの離脱を防止することを特徴とする。
【0013】
また、衛星歯車は円周面を包む絶縁バンドを含み、絶縁バンドは、衛星ギアと扇型ラックギアの噛合部の屈曲に沿って変形する柔軟性を有するように形成したことを特徴とする。
【0014】
また、絶縁バンドはフッ素樹脂、超高分子量ポリエチレンのうちのいずれかの材料からなることを特徴とする。
【0015】
また、扇型ラックギア及び衛星ギアはアルミ素材からなり、表面がアノダイジングされたことを特徴とする。
【0016】
また、ギアハウジングはクレビス(clevis)の形態であり、一側に位置する二つのボス(boss)が支持軸に回転自在につながり、二つのボスの間に扇型ラックギアが収容されることを特徴とする。
【0017】
また、ギアハウジングは、固定部リフレクターの背面に固定するにあたり、絶縁インサート及び絶縁テープをさらに含み、電気的に絶縁した状態で固定されることを特徴とする。
【0018】
また、ギアハウジングのボスは内周面にボスの軸方向に並ぶ3列以上の溝を含み、溝に収容される複数の非導電性材料の軸受ボールを具備することを特徴とする。
【0019】
また、軸受ボールは、ポリマー材料またはセラミック材料のうちのいずれかの材料からなることを特徴とする。
【0020】
また、軸受ボールはギアハウジングが支持に回動するとき、ギアハウジングの回動抵抗を減少させるように、軸方向及び半径方向の軸受の役割を実行するサイズと個数で備えたことを特徴とする。
【0021】
また、支持軸は上部軸と、下部軸、及び、上部軸と下部軸との間に配置され、上部軸と下部軸にカップリングによってつながる中間軸を含むことを特徴とする。
【0022】
また、カップリングは、カップリングにつながる両側の軸を電気的に絶縁することを特徴とする。
【0023】
また、駆動モータは、DCモータであることを特徴とする。
【0024】
また、駆動モータは、少なくとも一つのロータリーエンコーダを含み、RET(remote electric tilt)コントローラによって制御されることを特徴とする。
【0025】
また、支持軸上に支持軸が貫通するボディと、ボディの両側からリフレクターの側面に延び、端部がリフレクターに固定されたアーム(arm)を含む補助ブラケットをさらに含むことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の一実施例に係る移動通信基地局アンテナは、アンテナアセンブリを3つ搭載し、3つのアンテナアセンブリがそれぞれ3分割された円柱のそれぞれのセクター(sector)に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、リフレクターの水平方位角を調整することにおいて、リフレクターの背面に配置された駆動モータ、駆動モータによって回動される衛星ギア(planet gear)、及び、衛星ギアと噛合し、支持軸に固定された扇型ラックを含むリフレクターステアリング構造を提供することで、全体のアンテナ構造の小型化をなす効果がある。
【0028】
また、駆動部の転がり、スライドなど接触部及び接触圧力が変動する部分に電気的絶縁が補強された構造を適用することにより、リフレクターのステアリングによるアンテナシステムの電波性能の変動が防止される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施例に係る3分割型アンテナの全体の外観斜視図である。
図2】本発明の一実施例に係る単一セクターの内部構造及びリフレクターステアリング機構を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施例に係るリフレクターステアリング機構の主要部をギアハウジングを除いて示す斜視図である。
図4】本発明の一実施例に係る3分割型アンテナの回動範囲を示す概念図である。
図5】本発明の一実施例に係る扇型ラック歯車と衛星ギア、その間に配置される絶縁バンドを示した概念図である。
図6】本発明の一実施例に係るギアハウジングを示す斜視図である。
図7】本発明の一実施例に係る補助ブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一部の実施例を例示的な図面を用いて詳しく説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されても、可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明を説明するにあたり、関連した公知の構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、その詳しい説明は省く。
【0031】
また、本発明の構成要素を説明するにあたって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用する。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するのに留まり、その用語によって、該当構成要素の本質や順番や順序などは限定されない。明細書全体で、どの部分がどのような構成要素を「含む」、「備える」とするとき、これは特に正反対の記載がない限り、他の構成要素を除外せず、他の構成要素をさらに含むことを意味する。また、明細書に記載された「...部」、「モジュール」などの用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これはハードウェアやソフトウェアまたはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで具現される。
【0032】
図1は、本発明の一実施例に係る3分割型アンテナの全体の外観斜視図である。
【0033】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る3分割型アンテナ1は、長い円筒形の構造を有する。アンテナリフレクター110は、円周を均等に三等分し、3つが円筒の長さ方向に配置される。各アンテナリフレクター110は、円筒の中央に落雷吸収のための接地ラインが貫通する中央柱160を囲み、組み立て後、全体の形状が円筒形の構造になるように形成されたそれぞれのレドーム(radome)140内に配置される。
【0034】
便宜上3分割型アンテナ1の構造のうちに分割された1つのセクター(sector)10を基準に説明するが、これは本発明の範囲を制限するものではない。
【0035】
図2は、本発明の一実施例に係る単一セクターの内部構造及びリフレクターステアリング機構を示す詳細図である。
【0036】
図2を参照すると、本発明の一実施例に係る単一のセクター10は、リフレクター110、支持軸150、第1のリフレクターステアリング機構22、第2のリフレクターステアリング機構24、上部カバー120、下部カバー130及びレドーム140を含む。
【0037】
リフレクター110は、前面に電波送受信が行われる各種のアンテナを含み、背面には送受信される電波信号を制御する信号コンディショニング部品114を含む。信号コンディショニング部品114は、位相遷移器、または内部機器及び放射素子の送受信信号分配及び結合するための分配/結合装置である。各種送受信信号は、同軸ケーブルのような信号伝達用伝送線(図示せず)につながり、セクター下部カバー130を貫通してアンテナ構造の外部につながる。
【0038】
*支持軸150は、上部カバー120及び下部カバー130に固定される。支持軸150は、上部軸152、中間軸154、下部軸156及び中間軸154と、上部及び下部軸をつなぐカップリング158を含む。上部軸152は、上部カバー120に固定され、第2のリフレクターステアリング機構24が上部軸152とリフレクター110背面との間に設けられる。下部軸156は、下部カバー130に固定され、第1のリフレクターステアリング機構22が下部軸156とリフレクター110背面との間に設けられる。中間軸154は、カップリング158によって上部軸152及び下部軸156とつながる。
【0039】
リフレクターステアリング機構22、24がリフレクター110の高さ方向に両端に近接して設けられ、固定された支持軸150を中心にリフレクター110を回動させるように構成される。リフレクター110アセンブリは、重量物ではあるが、リフレクター110自体は、横剛性が大きくない。リフレクターステアリング機構22、24は、リフレクター110の両端から同時に回動することでリフレクター110にねじり荷重を加えない。また、前面に向かって偏心装着されるリフレクター110の偏荷重を支持するために、高い剛性が要求される支持軸150の重量を回動部から排除することができ、駆動部品を小型化できる。
【0040】
リフレクターステアリング機構22、24は、それぞれ扇型ラックギア(rack gear)210、衛星ギア220、絶縁バンド240、駆動モータ260、ギアハウジング230及びRET(remote electrical tilt)制御部(図示せず)を含む。ステアリングによる回動角度をRET制御部に提供するロータリーエンコーダ(図示せず)は、第1または第2のリフレクターステアリング機構22、24に少なくとも一つ含まれる。一実施例では、第1のリフレクターステアリング機構22のみがロータリーエンコーダを含み、これを基準に第1のリフレクターステアリング機構22及び第2のリフレクターステアリング機構24の角度位置が制御される。詳細な説明は、便宜上、第1のリフレクターステアリング機構22を基準に記述する。
【0041】
図3は、本発明の一実施例に係るリフレクターステアリング機構の主要部をギアハウジングを除いて示す斜視図である。
【0042】
図3を参照すると、扇型ラックギア210は、一側が下部軸156に軸結合するように形成され、他側は下部軸156の回転軸を中心に円弧形状のラックギア部が形成される。下部軸156と軸結合する構造は、下部軸156が挿入されるように形成した穴の内周面から半径方向外側に貫通するセットスクリュー孔214が一つないし三つが形成され、セットスクリューによって下部軸156に結合する。または、ラックギア部が形成される方向の反対側に切開部を有し、穴の直径を減少させるように形成したCークランプの形態である。通常の技術者であれば、さまざまな方法で扇型ラックギア210と下部軸156を軸結合できることは自明である。
【0043】
図4は、本発明の一実施例に係る3分割型アンテナの回動範囲を示す概念図である。
【0044】
図4を参照すると、リフレクター110は、アンテナのケーシングであるレドーム140に囲まれ、支持軸150を中心に回動する。3分割型アンテナ1の各リフレクター110は、例えば、50度、通常40度の回動の範囲を有する。一実施例では、3つのセクター10で構成されたアンテナである場合や、アンテナの分割個数はアンテナの仕様や設置場所に応じて変更される。
【0045】
本発明の一実施例では、3分割型アンテナ1の直径は減らし、各セクター10のリフレクター110左右の幅は広く確保しつつ、必要なリフレクター110の回動範囲を確保するように支持軸150とリフレクター110の位置などを選定する。例えば、一実施例では、3分割型アンテナ1の半径を10とすると、各支持軸150の半径位置は、3分割型アンテナ1の中心軸から4であり、支持軸150とリフレクター110との間の距離は2、リフレクター110の左右幅は、11の割合で構成する。
【0046】
リフレクター110の回動中心は、アンテナ1の直径とリフレクター110の回動範囲を考慮し、次の2つの場合の中間に最適化した位置として選定する。もしリフレクター110の位置にリフレクター110の回転中心が位置すると仮定すると回動が可能な範囲は、レドーム140の半径方向の幅によって決定される。もしリフレクター110の回転中心がアンテナの中央柱160に位置すると仮定するとリフレクター110の回動範囲は、リフレクター110の左右幅とリフレクター110の中央柱160からの半径方向の位置によって決定される。
【0047】
リフレクターステアリング機構22、24は、駆動モータ260の要求動力を最小限に抑え、駆動部品を小型に採用するように構成したのが特徴である。図3を再度参照すると、扇型に一部区間のみラックを形成した扇型ラックギア210を下部軸156に固定する。扇型ラックギア210の半径を大きくし、衛星ギア220の位置をリフレクター110の背面に近接して配置することにより、ギアの減速比を大きくして全体駆動装置を小型化できる。
【0048】
扇型ラックギア210は、重量物であるリフレクター110アセンブリを回動するのに十分な強度を有するように金属素材にするが、駆動部品によるアンテナ内部の電気的または周波数特性の低下がないように、ハードアノダイジング処理されたアルミニウム素材であることが望ましい。電気的特性だけを考慮すれば、プラスチック材料にするが、要求される剛性を確保するためには、サイズが大きくなるしかなく、アンテナが使用される屋外の温度環境を考慮すると、プラスチック材料は、耐久性に問題が発生するおそれがある。
【0049】
移動通信基地局アンテナは、動作周波数帯域で極端に低いノイズ特性を確保することが重要である。これにより、各種RF接続素子の機械的接続部だけでなく、金属の接触が行われる部分、異種金属がコーティングされた部品の内部などで引き起こされるPIMDを最小限に抑える必要がある。特に、高い周波数及び高いエネルギーを有する電波信号は、これらの接触部などでの電圧、電流の非線形性により、複数の周波数間のミキシング(mixing)による中間周波数(intermediate frequency)を引き起こす。このように引き起こされた中間周波数のうちの主要な信号の周波数と近い中間周波数によって、アンテナの信号品質が大幅に低下する。したがって、リフレクターステアリング機構22、24は、PIMDを最小化するための検討が必要である。
【0050】
本発明の一実施例に係るリフレクターステアリング機構の扇型ラックギア210及び衛星ギア220は、PIMDを引き起こす可能性がある強磁性体(ferromagnetic)または常磁性体(paramagnetic)特性を持たないハードアノダイジングされたアルミニウム素材からなる。アノダイジングされたギアの表面は、表面硬度が上がり、電気的に絶縁するが、かみ合うギア部の両側は同一の表面硬度を有するため、持続的な摩擦が起こると摩耗が発生する。また、通常、最大50μmレベルであるアノダイジング層の厚さを考慮すると、PIMDの増加をもたらす高周波信号のミキシングが接触部で発生しないとは限らない。このような問題を解決するために、本発明の一実施例では、ギア噛合部の間に絶縁バンド240を挿入する。
【0051】
図5は、本発明の一実施例に係る扇型ラック歯車と衛星ギア、その間に配置される絶縁バンドを示した概念図である。
【0052】
図5を参照すると、扇型ラックギア210と衛星ギア220との間には、高周波信号のカップリングを遮断するように絶縁バンド240が含まれる。絶縁バンド240は、衛星ギア220よりも大きい幅を有し、衛星ギア220の外周面を緩めに包み込む形で配置され、扇型ラックギア210と衛星ギア220が噛合した状態で噛合部の間の屈曲した部分に沿って隙間を絶縁し、この時、噛合部以外の衛星ギア220の外周面に中間嵌合程度の状態になる厚さと大きさで挿入される。絶縁バンド240は、ギアハウジング230によって軸方向離脱が防止される。一実施例では円形のバンドが開示されたが、これに限定するものではなく、絶縁を達成するために、他の形態の構造も適用するとよい。絶縁バンド240は、駆動ギア220と軸結合されたDCモータから流入されるノイズ及び中間周波数成分を遮断するための絶縁の役割もする。絶縁バンド240は、フッ素樹脂や超高分子ポリエチレンのような材料からなる。
【0053】
アノダイジングされた扇型ラックギア210、衛星ギア220及びその間の噛合部を絶縁する絶縁バンド240を含むリフレクターステアリング機構22、24の駆動部が構成されることにより、モータ260側と下部軸156が高周波信号帯域まで完全に絶縁され、駆動部によるPIMDが最小化する。フッ素樹脂または超高分子ポリエチレンは、摩擦係数が非常に小さく、柔軟な素材でありながら耐久性に優れた素材である。必要に応じて断続的に少量の回動だけ行われる本発明の一実施例のようなリフレクターステアリング機構22、24の場合、長期間十分な耐久性を有して電気絶縁の役割をする。
【0054】
扇型ラックギア210のギア部両端はギア部から半径方向外側に突出した突出段212を含む。ギア部両端の突出段212は、これに噛合する衛星ギア220の移動範囲を制限する役割をする。固定した扇型ラックギア210に沿って衛星ギア220が公転しながら突出段212に衛星ギア220が当たると、それ以上の回転または移動が防止される。
【0055】
一実施例に係るリフレクターステアリング機構22、24は、少なくとも一つのロータリーエンコーダ(図示せず)を含む。ロータリーエンコーダを基準にした位置制御を通しても衛星ギア220が扇型ラックギア210から離脱することを防止できるが、両端に備えられた突出段212は、二重の安全装置の役割をする。移動通信基地局アンテナは、落雷などによる予期せぬ状況が発生し得ることで、設置位置が接近が容易でない場合が多い。扇型ラックギア210に備えられた突出段212は、誤動作が発生した場合でも、組立状態に支障を与えないようにし、遠隔地からのソフトウェアの操作によって、独自のリセット及び補正を可能にする。例えば突出段212に衛星ギア220があたって停止されると、DCモータで過負荷を検出して限界位置を確認できる。
【0056】
図6は、本発明の一実施例に係るギアハウジングを示す斜視図である。
【0057】
図6を参照すると、ギアハウジング230は、クレビス(clevis)またはヨーク(yoke)の基本構造を有する。ギアハウジング230は、上部軸152または下部軸156に回動自在に組み立てられる一対のボス232、扇型ラックギア210が挿入されて回動自在に両側ボス232の間に形成された切開部234、駆動モータ260が結合するモータ結合部235及びリフレクター110の背面にギアハウジング230を固定するための固定部236を含む。
【0058】
ボス232の内周面には、軸方向に形成された3列、あるいは4列の溝233が形成される。ホーム233には、複数の軸受ボール(bearing ball)254が挿入され、ボス232の両外側には軸受ボール254の離脱を防止するためのキャップ252が組み立てられる。軸受ボール254は、非導電性材料で構成され、ギアハウジング230と、これに組み立てられる上部軸152または下部軸156を電気的に絶縁する役割をする。
【0059】
軸受ボール254は、半径方向の軸受の役割をするだけでなく、切開部234側に少しずつ突出するように組み立てられて扇型ラックギア210を基準にギアハウジング230が回動したとき、軸方向軸受の役割をする。扇型ラックギア210の両側には、非導電性材料のワッシャー(washer)が挿入されて軸受を補助し、軸方向荷重を支持する。
【0060】
上述したように、移動通信基地局アンテナは非常に低いノイズ特性を確保する必要がある。これを達成するために、ギアハウジング230及び、これに結合される上部軸152または下部軸156との間の絶縁が高いレベルで具現したらPIMDを最小限に抑えることができる。特に、扇型ラックギア210と衛星ギア220の噛合部と同様に、上部軸152または下部軸156と回動するボス232及び軸受要素は、電気的な接触を排除することが望ましい。金属間の接触状態が可変し得る部分を基本的に遮断することはPIMDを最小化するための重要な技術的な特徴である。
【0061】
モータ結合部235は、ギアハウジング230のボス232と固定部236との間に位置し、ギアハウジング230の一側面に形成される。上部軸152に組み立てられるギアハウジング230は、モータ結合部235が上に行くように配置され、下部軸156に組み立てられるギアハウジング230は、モータ結合部235が下に行くように配置される。一実施例では、下部軸156に組み立てられるギアハウジング230に組み立てられるモータ260にのみロータリーエンコーダが装着される。リフレクターステアリング機構22、24は、RET制御部によって上部及び下部に装着された駆動モータ260を制御することでステアリングされる。駆動モータ260は、低速で高いトルク(torque)を出せるDCモータが好ましく、減速比を高めるために駆動モータ260と衛星ギア220との間に減速機をさらに含む。
【0062】
ギアハウジング230の固定部236の固定穴238には、絶縁インサート及び絶縁テープ112などが挿入され、ギアハウジング230とリフレクター110が電気的に絶縁した状態で固定される。
【0063】
図7は、本発明の一実施例に係る補助ブラケットを示す斜視図である。
【0064】
図7を参照すると、中間軸154には、少なくとも一つの補助ブラケット310が含まれる。補助ブラケット310は、中間軸154に回動自在につながり、リフレクター110の幅よりも小さい幅で形成された両側のアーム(arm)312によってリフレクター110の背面に固定される。中間軸154と補助ブラケット310の回動部には、補助ブラケット310の回動による摩擦抵抗を低減するための軸受314を含む。通常のスチールボール軸受も使用していいが、セラミックボール軸受またはポリマーボール軸受などの軸とブラケットを電気的に絶縁する軸受が用いられることが望ましい。
【0065】
以上の説明は、本実施例の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであり、本実施例の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本実施例の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能である。したがって、本実施例は、本実施例の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例により、本実施例の技術思想の範囲が限定されるものではない。本実施例の保護範囲は次の請求の範囲によって解釈されるべきであり、その同等の範囲内にあるすべての技術思想は、本実施例の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0066】
CROSSーREFERENCE TO RELATED APPLICATION
本特許出願は、2017年1月26日に韓国に出願した特許出願番号第10−2017−0012671号の米国特許法119(a)条(35USC§119(a))に基づいて優先権を主張し、そのすべての内容は、参考文献として本特許出願に併合される。さらに、本特許出願は、米国以外の国でも、前記と同じ理由で優先権を主張し、そのすべての内容は、参考文献として本特許出願に併合される。
図1
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図6
図7