(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、測定対象からの電磁波反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と装置との正対からのずれ角度とから、測定対象の厚さを演算する演算機構を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の可搬型測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の船舶内部のような複雑な形状を有する大型鋼構造物に塗装された塗膜を測定対象とする場合、現行の接触方式による測定では、高所での危険な作業が必要となる上、作業のための足場を組むことによる経済的な不利益がある。そのため、非接触方式の測定方法の開発が望まれている。また、上記以外の場合であっても、測定対象に対して損傷を与えるおそれのない非接触方式が好ましい。
【0006】
その一方、電磁波の一種である赤外線を用いた膜厚測定方法において、検出できる赤外線反射強度は、測定対象からの距離や測定対象に対する正対からのずれ角度の影響を受ける。従来の赤外線膜厚測定方法では、この影響が考慮されていない。
【0007】
本発明は、測定対象からの電磁波反射強度を基に、各種パラメータを非接触方式により精度良く測定可能な測定装置、およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、
測定対象に対する非接触式の測定装置であって、
電磁波が照射された測定対象からの電磁波反射強度を測定する検出器と、
測定対象からの距離を計測する距離計と、
測定対象と測定装置との正対からのずれ角度を計測するずれ角度計測機構と、
を含む、測定装置である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
測定対象に対して電磁波を照射する発振部を更に含む。
【0010】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の態様であって、
前記発振部が、温度調節機能付きレーザーダイオードである。
【0011】
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様に記載の態様であって、
前記発振部から照射される電磁波の一部を取り出し、前記検出器とは別の検出器にて前記発振部の出力変動を監視する。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜第4のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記ずれ角度計測機構では、前記距離計により計測された距離に基づき、ずれ角度を演算する。
【0013】
本発明の第6の態様は、第1〜第5のいずれかの態様に記載の態様であって、
可搬型である。
【0014】
本発明の第7の態様は、第1〜第6のいずれかの態様に記載の態様であって、
さらに、偏光フィルターを有する。
【0015】
本発明の第8の態様は、第1〜第7のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記電磁波は非可視光であり、前記距離計からは可視光が照射される。
【0016】
本発明の第9の態様は、第1〜第8のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記距離計を複数有する。
【0017】
本発明の第10の態様は、第9の態様に記載の態様であって、
測定対象に対して電磁波を照射する発振部を更に含み、
前記距離計はいずれも同一平面上にて前記発振部からの距離を等しくして配置され、かつ、前記発振部は前記距離計の位置の重心に配置される。
【0018】
本発明の第11の態様は、第1〜第10のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記電磁波の波長範囲は780nmを超え且つ3,000μm以下である。
【0019】
本発明の第12の態様は、第1〜第11のいずれかの態様に記載の態様であって、
さらに、測定対象からの電磁波反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と装置との正対からのずれ角度とから、測定対象の厚さを演算する演算機構を含む。
【0020】
本発明の第13の態様は、第1〜第11のいずれかの態様に記載の態様であって、
さらに、測定対象からの電磁波反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と装置との正対からのずれ角度から、測定対象の濃度を演算する演算機構を含む。
【0021】
本発明の第14の態様は、
第12の態様に記載の測定装置を用いて測定対象の厚さを測定する、測定方法である。
【0022】
本発明の第15の態様は、
第13の態様に記載の測定装置を用いて測定対象の濃度を測定する、測定方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、測定対象からの電磁波反射強度を基に、各種パラメータを非接触方式により精度良く測定可能な測定装置、およびその関連技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、
図1および
図2を用いて説明する。変形例については後述する。本明細書において「〜」は所定の値以上かつ所定の値以下を指す。
【0026】
本実施形態において例示する測定装置1は、少なくとも以下の構成を含む。
・測定対象に対して電磁波を照射する発振源11
・測定対象からの電磁波反射強度を測定する検出器12
・測定対象からの距離を計測する距離計13(13a〜13d)
・測定対象と測定装置1との正対からのずれ角度を計測するずれ角度計測機構14
【0027】
また、本明細書において“正対からのずれ角度”とは、測定装置1から照射される電磁波の光軸が測定対象に対して垂直となる位置を“正対”とし、その光軸からのずれを角度で表したものである。以降、特記無い限り、ずれ角度とは上記を意味する。
【0028】
また、本明細書における電磁波とは、電磁場の周期的な変化で起こる波動のことであり、波長の長い方から電波、赤外線、可視光、紫外線、放射線が挙げられる。本実施形態における測定装置1の発振源が採用する電磁波の種類は、各種パラメータを非接触方式により精度良く測定可能であれば特に限定されない。本実施形態においては、一例として、780nmから3,000μm(3mm)までの波長範囲の電磁波を例示する。本明細書においてはこの波長範囲の電磁波を、説明の便宜上、赤外線と称する。
【0029】
本実施形態における測定装置1により測定される各種パラメータとしては、測定対象からの赤外線反射強度を基に得ることができる。この各種パラメータとしては特に制限は無く、例えば“厚さ”または“濃度”、或いは赤外線反射強度そのものが挙げられる。
【0030】
ここで言う“厚さ”とは、測定対象の塗膜、防錆油や樹脂膜等の厚みであって、ウェット塗膜の厚み、乾燥膜厚のいずれであってもよい。なお、上記測定対象としては、測定対象に赤外線を照射した際、測定対象の厚みに応じて赤外線反射強度が変化するものであれば、特に制限されない。
【0031】
本実施形態においては説明の便宜上、“厚さ”を測定する場合を例示する。本実施形態の中では、塗膜を測定対象とする場合を例示するが、本発明は膜厚測定に限定されるものではなく、以降に述べる好適例は、濃度を測定する場合にも有効である。濃度を測定する場合については後で詳述する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態における測定装置1は、大きく分けて、各機構が収納された略立方体状の筐体10と、該筐体の上面10aから外に向けて弧状に延在するハンドル20(すなわち測定装置1搬出時の持ち手)とを有し、可搬型である。ハンドル20には、赤外線の照射を行うための赤外線発振ボタン21を備えている。
【0033】
赤外線を照射する発振源11は、筐体10に設けられ、筐体の前面10bから測定対象に対して赤外線を照射可能な構造を有している。このとき、赤外線の光軸が筐体の前面10b(更に言うと後述の4つの距離計13a、13b、13c、13d(4つをまとめたものには符号13を付す)が配置された同一平面)に対して垂直となるように発振源11を配置する。また、本実施形態において、発振源11における赤外線の出射部分も上記の同一平面上に配置してもよいが、出射部分を筐体の前面10bよりも測定対象側(すなわち外側)に配置しても構わないし、出射部分を筐体10の内部に設けても構わない。
【0034】
この発振源11としては、発光ダイオード、レーザーダイオード、ハロゲンランプなど、赤外線を出力できるものであればよく、直線的に強いエネルギーの赤外線を出力できるレーザーダイオードが好ましい。発振源11としてレーザーダイオードを選択することで、ハロゲンランプ等を使用する場合よりも省スペース化を図れるうえ、省電力により測定装置1の電池15の軽量化および小型化を図れる。
【0035】
発振源11から照射される赤外線は、分解能に優れる点で近赤外線であることが好ましい。詳しく言うと、検出器12での赤外線の検出の際、赤外線の中でも近赤外線の検出精度が高く、分解能に優れる。具体的な波長の値は、好ましくは780nmを超え且つ30,000nm以下(或いは830nmを超え且つ30,000nm以下)、より好ましくは780nmを超え(或いは830nmを超え)且つ2,600nm以下、特に好ましくは830nmを超え且つ1,200nm以下である。また、上記発振源11から照射される赤外線は、使用環境による影響を受けにくい点より、超遠赤外線あるいはテラヘルツ波であることも好ましく、具体的には、波長が好ましくは30μmを超え且つ3,000μm以下、より好ましくは40〜300μmである。
【0036】
赤外線レーザーダイオードを使用する場合、温度調節機能付きレーザーダイオードであることが好ましい。レーザーダイオードの連続発振等により、温度が変動することに起因する赤外線の出力変動を抑制することが可能となり、ひいては各種パラメータを更に精度良く測定することが可能となる。この温度調節機能を実現する機構としては、例えばペルチェ素子が挙げられる。
【0037】
また、赤外線の出力変動は、上記のようにコントロールする方法以外に、赤外線の出力を監視する方法が挙げられる。一実施形態としては、電磁波反射強度を測定する検出器とは別の検出器を備えた構成とすることで、上記レーザーダイオードから照射される赤外線の一部をNDフィルターなどの光学フィルターで取り出し、上記別の検出器にて出力変動を監視することができる。例えば、照射される赤外線の90%が測定対象に照射され、残り10%を出力変動の監視に利用することができる。得られた出力変動に関する記録を基に強度への影響を解析する構成としてもよいし、出力変動に合わせて発振源の出力を変動させる構成としてもよい。
【0038】
測定対象からの赤外線反射光は、筐体10の内部であって筐体の後面10cに設けられた検出器12により強度が測定される。検出器12により測定された赤外線反射強度に基づいて、測定対象の膜厚を測定することができる。なお、検出器12としては、測定対象からの赤外線反射光を検知可能なものであって、赤外線反射強度を電圧値として測定可能なものであれば、公知のものを使用することができる。
【0039】
なお、筐体の前面10bに集光レンズ16を設けても良い。これにより赤外線反射光(
図2の破線矢印)を効率良く検出器12に向かわせることが可能となり、ひいては感度良く強度を測定することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の測定装置1は、偏光フィルター17a、17b(まとめたものは符号17)を有することが好ましい。その理由は以下の通りである。
【0041】
測定対象からの反射光には、鏡面反射による正反射光と、測定対象内における拡散反射による散乱光とが含まれている。仮に、測定装置1が測定対象に対して正対ではなく、ずれ角度が存在する場合、正反射光の強度はずれ角度に依存して変化する。これは、測定対象に対する角度による感度差が大きくなることを意味する。
【0042】
その一方、偏光フィルター17により正反射光をカットすることができれば、検出器12は散乱光のみを検出して赤外線反射強度を測定することになるので、測定結果に対する測定装置1のずれ角度による影響を小さくすることが可能となる。
【0043】
さらに、正反射光の強度は、測定対象の膜厚に加え、測定対象の表面状態に一部依存する。つまり、偏光フィルター17により正反射光をカットすることにより、膜厚に起因する反射光強度を精度良く測定することが可能となる。
【0044】
ただし、正反射光は強度の高い光であり、測定対象によっては膜厚測定に好適な場合がある。偏光フィルター17は、反射光全体の強度は低下させるため、操作者の意図に応じて偏光フィルター17の機能のオン/オフを切り替えられる偏光フィルター切替機構(不図示)を測定装置1に備えさせても良い。この偏光フィルター切替機構としては、例えば筐体10のタッチパネルである液晶ディスプレイ18やスイッチ(不図示)等で操作することにより、偏光フィルター17の有無を切り替えても良いし、偏光フィルター17の位置を物理的に変更してもよい。
【0045】
なお、
図2には、偏光フィルター17の配置を概略的に記載しているが、偏光フィルター17を配置する態様には特に制限は無く、例えば発振源11における赤外線の出射部分に第1の偏光フィルター17aを設けて一方向のみの波とし、検出器12に対して正反射光をカットすべく、該一方向と直交する方向の第2の偏光フィルター17bを設けても構わない。
【0046】
また、本実施形態の測定装置1は、分光器を備えた構成とすることができる。
一具体例としては、発振源11から照射される電磁波の入射波と反射波の位相差を基に、測定対象の膜厚を測定してもよい。
位相差は、電磁波が膜内で往復する距離に膜の屈折率を乗じた値によって決定される。つまり、位相差は膜厚に依存する。そのため、予め位相差と膜厚との関係性(例えば検量線)を得ていれば、分光器によって分離した上記入射波と上記反射波の位相差を検出器12で測定することにより、膜厚を測定することが可能となる。
別の具体例としては、近赤外分光カメラや近赤外分光組成分析装置のように、特定波長における電磁波反射強度を検出器12により測定してもよい。なお、特定波長における電磁波の反射強度は一次元解析してもよいし、二次元解析(イメージング)してもよい。
【0047】
本実施形態の特徴の一つであるが、筐体の前面10bには、測定対象からの距離を計測する距離計13が4つ設けられている。距離計13はいずれも同一平面上にて正方形または長方形の頂点の位置に配置され、かつ、発振源11は距離計13の重心に配置されている。この距離計13としては、測定対象からの距離を計測可能なものであれば公知のものを使用して構わず、例えばパルスレーザーを照射し、反射光が再び距離計13に入射する時間を基に距離を計測しても構わない。なお、本実施形態において、距離計13の内部に上記パルスレーザーの反射光を検出する機構が設けられており、赤外線反射強度を測定する検出器12とは別である場合を例示する。
【0048】
また、本実施形態においては、距離計13からは可視光(波長400〜780nm(或いは830nm)、なお、この範囲以外の電磁波のことを非可視光と称する。)が照射されることが好ましい。その理由は以下の通りである。
【0049】
本実施形態の測定装置1を用いて測定を実施する際、測定対象には発振源11より赤外線が照射されるが、赤外線は不可視光線であるため、発振源11だけでは測定対象のどの位置に赤外線が照射されているのか、操作者が把握できない。
【0050】
一方、距離計13から可視光(例えば、可視光のパルスレーザー)が照射される場合、本実施形態において距離計13は同一平面上にて正方形または長方形の頂点の位置に配置され、かつ、発振源11は距離計13の重心に配置しているため、4つの距離計13から可視光が照射されることで、操作者は、測定対象上に4つの光点を視認することができ、4つの光点を対角線で結んだ交点上に赤外線が照射されていることを容易に把握できる。
【0051】
その際、測定装置1のハンドルに備えられたボタンに対し、浅く押す場合は距離計13のみを起動して可視光を照射し、操作者による目視の位置決めが完了した後にボタンを深押しして赤外線を照射する構成を採用しても構わない。つまり、可視光と赤外線とで光線の種類を切り替える切替機構を設けても構わない。もちろん、この具体的な構成以外であってもよく、例えば1回目にボタンを押したときには可視光が照射され、2回目にボタンを押したときには赤外線が照射される構成でもよい。
【0052】
本実施形態の特徴の一つは、測定対象と測定装置1との正対からのずれ角度を計測する、ずれ角度計測機構14を有していることにある。ずれ角度計測機構14として一例を挙げると、距離計13により計測された距離に基づき、ずれ角度を計測する機構である。その計測の一例を、測定対象からの距離を計測する具体例と共に、以下に示す。
【0053】
本実施形態の測定装置1の発振源11から赤外線(上記例では赤外線レーザー)を照射すると同時に、4つの距離計13から可視光のパルスレーザーが測定対象へ同時に照射される。赤外線レーザーを照射した測定対象からの反射光は、集光レンズ16を通して検出器12で検知され、電圧値としてその強度を得ることができる。
【0054】
測定対象からの距離の計測であるが、4つの距離計13は、測定装置1の前面10bにおいて、正方形または長方形の頂点の位置となるよう設置されている。また、発振源11である赤外線レーザーダイオードは、4つの距離計13の設置位置から対角線で結んだ交点上(重心)に配置されている。そのため、4つの距離計13から得られた距離の平均値は、赤外線レーザーダイオードから測定対象までの距離とみなしても構わないし、測定対象が平面状ならば測定対象までの距離そのものである。なお、この手法は、赤外線レーザーダイオードを取り囲む距離計13の数が3個であっても実現可能である。
【0055】
そして、ずれ角度の計測であるが、測定装置1の前面10bに向かって見た時、距離計13は発振源11から等しい水平距離に配置されていることから、水平ずれ角度およびその角度を有する平面の方程式を得ることができる。同様に、発振源11から等しい垂直距離に距離計13が配置されていることから、垂直ずれ角度およびその角度を有する平面の方程式も得ることができる。本実施形態において、測定対象と前面10bの2つの平面が成す角はずれ角度と等しい。
【0056】
以上の構成により、測定対象からの距離および測定対象に対する正対からのずれ角度を計測することが可能となる。本実施形態の測定装置1は、測定対象の赤外線反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と装置との正対からのずれ角度とから、測定対象の膜厚を演算する演算機構19を更に設けることが好ましい。
【0057】
例えば、特許文献2の
図3等や後述の実施例の
図3等の検量線に示されるように、測定対象の膜厚は、測定対象の赤外線反射強度と相関関係がある。
【0058】
そして、測定装置1により検出される赤外線反射強度は、測定対象からの距離が遠くなるほど減衰する。その際に、測定対象の赤外線反射強度と測定対象からの距離との間には相関関係がある(後述の実施例の
図4の検量線参照)。
【0059】
ずれ角度についても同様であり、ずれ角度が大きくなるほど赤外線反射強度は減衰する。その際に、測定対象の赤外線反射強度とずれ角度との間には相関関係がある(後述の実施例の
図5の検量線参照)。
【0060】
後述の実施例に示す検量線により表される関係は、測定対象の組成や各組成の含有量が同等ならば維持される。その一方で、組成や各成分の含有量が異なる測定対象に対して測定を行う場合、上記関係をそのまま使用したり、上記関係に対して何らかの補正を行うよりも、その測定対象と同じ種類の物質に対する、膜厚と、赤外線反射強度と、該物質からの距離と、該物質と測定装置1との正対からのずれ角度との関係、すなわち検量線を予め得ておくことが好ましい。なお、この検量線は一つである必要は無く、
図3〜5に示すように複数の検量線からなっても良い。
【0061】
その結果、上記の各相関関係から得られた検量線により、測定装置1から測定対象に対して照射された赤外線反射強度から、測定対象からの距離およびずれ角度の影響を排した膜厚を測定することが可能となり、その結果を筐体10の液晶ディスプレイ18等にリアルタイムに表示することも可能となる。
【0062】
なお、測定対象の種類ごとに用意された上記検量線を、測定対象の種類に応じて切り替え可能な種類選択機構(不図示)を、本実施形態の測定装置1に更に設けることが好ましい。なお、上記検量線は、筐体10内のメモリ(不図示)に保存しておき、演算機構19が作動する際にメモリから引き出せばよい。
【0063】
演算機構19は、ずれ角度計測機構14と共通の構成としてもよく、例えば筐体10内に設けられた一つの演算機構19により、膜厚の演算およびずれ角度の計測を行っても構わない。また、演算機構19は、測定装置1と接続したパソコンやタブレット等の外部端末であってもよい。
【0064】
なお、上記の構成により、本発明の効果に加え、以下の効果も奏する。
【0065】
前述のように、本実施形態の測定装置1が検出できる赤外線反射強度は、測定対象からの距離が遠くなるほど減衰し、その測定精度も低下する。もちろん測定可能な距離は発振源11のパワーにも依存するが、本実施形態の測定装置1に使用した発振源11は、測定対象までの距離が5mであっても十分な精度で塗膜の膜厚を測定できることが確認されている。ちなみに、先に挙げた偏光フィルター切替機構にて偏光フィルター17の機能をオフにする場合は、正反射光を検出可能となるため、赤外線反射光の強度を大きく確保することができ、距離が10〜15mであっても十分な精度で塗膜の膜厚が測定できる。
【0066】
また、上記赤外線反射強度は、測定対象に対する正対からのずれ角度が大きくなるほど減衰するため、測定対象と装置の前面10bが正対に近いほど良好な測定精度を有する。その一方、本実施形態の測定装置1は、ずれ角度が大きくとも精度良く膜厚を測定することが可能である。例えば、本実施形態の測定装置1においては、測定対象に対する正対からのずれ角度は、85°以下であっても非常に良好な精度で測定を実施することが可能であり、75°以下であれば更に良好な精度となる。
【0067】
もちろん本発明は本実施形態に限定されるものではない。以下、適用例または変形例を列挙する。なお、本実施形態にて挙げた好適例を以下の例に適宜組み合わせても構わない。
【0068】
例えば、測定対象としては、特に制限されないが、チタン白、亜酸化銅、酸化亜鉛、弁柄、黄色弁柄、クロムグリーンブラックヘマタイト、マンガンビスマスブラック、クロミウムアイアンオキサイド、ニッケルアンチモンチタニウムイエロールチル、クロムアンチモンチタニウムバフルチルおよびルチルスズ亜鉛等より選択される1種以上の赤外線反射材料を含有する塗膜であることが好ましく、また、赤外線に対する反射性と透過性の両方を併せ持つ性質を有する塗膜であることが好ましい。
【0069】
このような塗膜の内、赤外線反射材料を多く含有する場合は、赤外線の透過率が下がるため、本装置により測定できる膜厚の範囲が狭くなる傾向にある。よって、測定対象の塗膜は、膜厚が2,000μm以下が好ましく、1,000μm以下がより好ましい。
【0070】
また、その他の測定対象としては、赤外線を反射する基材、例えば鋼板などに塗布された防錆油や樹脂膜等の厚みを測定することも可能である。
【0071】
防錆油や樹脂膜は、厚みが増すと赤外線の吸収が大きくなるため、基材から反射する赤外線反射強度は減衰する。したがって、該相関関係を利用することで、赤外線を吸収する防錆油や樹脂膜等の厚みを非接触方式によりオンサイトで測定することも可能である。
【0072】
また、本実施形態の測定装置1は、測定対象中に含有する赤外線反射材料の濃度を測定することができる。この“濃度”とは、赤外線反射材料がどれだけ含有されているかを示すものであり、(重量、体積)含有率でもある。該濃度の測定は、前述の測定対象の厚さ測定と同様に、赤外線反射強度を測定対象からの距離と正対からのずれ角度に応じて補正することで測定される。
【0073】
具体例を挙げると、前述の厚さ測定の場合と同様に、測定対象と同じ塗料に対する濃度と、赤外線反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と測定装置1との正対からのずれ角度との関係、すなわち検量線を予め得ておくことで、測定対象からの距離およびずれ角度の影響が排された濃度を演算機構19によって演算することができる。
【0074】
また、測定装置1を用いて、“濃度”が既知の塗料より形成された特定の膜厚(例えば、膜厚tμm)の塗膜に対し、赤外線反射強度を測定する。そして、その測定結果より、測定対象からの距離およびずれ角度の影響を排することで濃度を測定する。
【0075】
このようにして赤外線反射材料の濃度を測定することで、例えば、測定対象の塗膜が2成分型塗料より形成される場合、その混合比に誤りがないかを非破壊で容易に検査することができる。ちなみに上述の厚さ測定や濃度測定以外でも、本発明の技術的思想を適用可能であり、本明細書でいう各種パラメータのうち任意のパラメータと、測定対象からの電磁波反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と装置との正対からのずれ角度との関係から、該任意のパラメータを演算機構14にて演算してもよい。
【0076】
なお、本実施形態の測定装置1の使用態様として特に制限は無いが、近赤外線を含む太陽光の下では、天候や測定対象の方位などによって影響を受けるおそれがあるため、近赤外線がほとんど含まれない照明(例えば、蛍光灯等)下の屋内での使用が好ましい。さらに、本実施形態の測定装置1は、完全な暗所であっても使用することができ、例えば夜間の屋外、船舶や構造物のブロック内部等のほとんど照明がない環境でも測定することができる。また、外光の赤外線強度が非常に高い環境でなければ、測定により得られた赤外線反射強度から外光による影響を排して厚さを求めることもできる。
一方、発振源の波長が、一般に超遠赤外線あるいはテラヘルツ波、サブテラヘルツ波と呼ばれる波長(例えば30μmを超え且つ3,000μm以下)である場合、太陽光の影響を受けにくいといった利点がある。
【0077】
以下、本測定装置の変形例を列挙する。
【0078】
本実施形態においては、測定対象の赤外線反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と装置との正対からのずれ角度とから、測定対象の厚さを演算する演算機構19を設ける例を挙げた。その一方、上記距離およびずれ角度が液晶ディスプレイ18等に表示されることにより距離およびずれ角度を操作者が把握できれば、本実施形態の可搬型の測定装置1を測定対象に対して適切に配置することが可能となる。その結果、演算機構19を使用しない場合であっても、測定対象からの赤外線反射強度の基となる各種パラメータを非接触方式により短時間で精度良く測定可能となる。ただし、演算機構19を設ける方が操作者の負担が減る上、測定結果の精度も向上する。
【0079】
本実施形態の測定装置1において、ずれ角度計測機構14は、距離計13により計測された距離に基づき、ずれ角度を計測する例を挙げたが、それ以外にも、測定装置1に重力センサー(不図示)を搭載する場合、測定対象を前面10bに対して垂直に配置することにより、測定装置1とのずれ角度を計測することが可能である。
【0080】
本実施形態の測定装置1は、距離計13を4つ有し、距離計13はいずれも同一平面上にて正方形または長方形の頂点の位置に配置され、かつ、発振源11が距離計13の重心に配置された場合を例示した。本実施形態において、距離計13を複数有することが好ましく、距離計13を3つ以上有することがより好ましい。その一方、距離計13は、例えば筐体の前面10bにおいて発振源11を中心として配置された1つの円環状の距離計であってもよく、測定対象からの距離(平均値)や、測定装置1に対する垂直方向、水平方向のずれ角度を得ることが可能となる。また、発振源11を挟んで2つの長尺な距離計を水平(垂直)方向に配置した態様であってもよい。
【0081】
本実施形態の測定装置1は、距離計13がいずれも同一平面上にて発振源11からの距離を等しくして配置され、かつ、発振源11は距離計13の位置の重心に配置された場合を例示したが、この態様に限定されない。例えば、各距離計13の発振源11からの距離が異なる場合であっても、各距離計と発振源11との位置関係を基に、測定対象からの距離および正対からのずれ角度を、演算機構19によって演算することができる。
【0082】
本実施形態の測定装置1は、絶対値としての厚さを得るべく、予め検量線を得ておく例を挙げたが、相対値としての厚さを得る場合、検量線は不要となる。例えば、測定対象が大面積である場合、測定対象の数箇所に対してランダムに赤外線を照射し、各測定箇所間での赤外線反射強度の差の有無を調べることにより、測定対象の厚さにバラツキがあるかどうかを調べることが可能となる。本明細書において、“演算機構19によって、測定対象の厚さおよび濃度の少なくともいずれかを演算する”とは、絶対値として、例えば厚さを得るための演算はもとより、相対値として、例えば厚さ(より詳細には、厚さの基となる赤外線反射強度)を得るための演算をも意味する。
【0083】
本実施形態において述べた、絶対値としての厚さを得る場合に加え、上記のように相対値としての厚さを得る場合において、測定対象の数箇所に対してランダムに赤外線を照射した際、各測定箇所での測定結果をメモリに保存し、上記演算機構19または別の演算機構により、測定結果の平均値や標準偏差等を算出しても良い。
【0084】
本実施形態の測定装置1について詳述したが、この測定装置1を用いて測定対象の厚さおよび濃度の少なくともいずれかを測定することに、本発明の技術的思想が反映されている。
【0085】
また、本実施形態の測定装置1における厚さ補正に関する測定システムや測定プログラムについても本発明の技術的思想が反映されている。
【0086】
測定システムとしての一構成としては、上記の測定装置1を測定システムと読み替えれば足りる。この測定システムは、例えば筐体10内の制御部(不図示)で制御される。
【0087】
また、ずれ角度計測機構14や演算機構19は、サーバーを介して遠隔地にて接続されていても構わない。その逆に、演算機構19(または、それに加えてずれ角度計測機構14)を手元に存在させ、それ以外の構成はサーバーを介して遠隔地にて接続されていても構わない。また、測定対象の検量線が筐体10内のメモリに保存されていない場合、筐体10内の制御部(不図示)により、サーバーを介してメモリに上記検量線をダウンロードさせるような構成を採用しても構わない。
【0088】
測定プログラムとしての一構成としては、測定装置1を、上記の各構成として機能させる測定プログラムであればよい。筐体10内の制御部により、コンピュータとしての測定装置1を機能させることにより測定プログラムは実行される。
【0089】
本明細書において、実施形態として可搬型の測定装置1を例示したが、測定装置1を据置型とした上で本発明の技術的思想を適用することに妨げは無い。
【0090】
また、測定装置1の構成の一部を据置型としても構わない。例えば、筐体10の外に発振源を配置しつつ、該発振源に導光部材(例:光ファイバ)の一端を接続し、該光ファイバの別の一端を筐体10内に収め、
図1および
図2の発振源11の位置に配置してもよい。このように発振源11の駆動源が筐体10の外に配置された場合にも、
図1および
図2に示すように電磁波(例:赤外線)が放出される発振源11そのものが配置された場合にも、本発明の技術的思想を適用可能である。本明細書では、発振源または導光部材にて電磁波を放射するもののことを「発振部」と称する。つまり、発振部の少なくとも一部を、
図1および
図2の発振源11の位置に配置してもよい。
【0091】
更に言うと、上記発振部を測定装置1とは別体の装置として配置しても構わない。また、上記発振部をそもそも設けず、例えば太陽光が照射された測定対象からの電磁波反射強度を検出器12により測定しても構わない。
【0092】
なお、測定装置1の電源を筐体10の外に配置しても構わない。電源を外に配置する場合は、外部からの電力供給を受けることになる。
【実施例】
【0093】
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明する。以下の実施例において、本実施形態の測定装置1(
図1)を塗膜の膜厚測定に用いた例を示すが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0094】
本例においては、特開2016−17164号公報の実施例5に記載のように、下塗り塗料SP−GYからなる下塗り塗膜を形成し、上塗り塗料IR−Uからなる上塗り塗膜を形成したものを合わせて測定対象塗膜とした。その上で、厚さを求める対象としては、上塗り塗料IR−Uの塗膜(以降、塗膜Xと称する。)を選択した。
【0095】
予め塗膜Xにおける検量線を得るべく、以下の手順を行った。
【0096】
まず、下記の手順で塗膜Xの乾燥膜厚が108μm、243μm、469μm、701μm、935μmの5つの膜厚の試験片を作成した。
<試験片の作成手順>
鋼板(幅70mm×長さ150mm×厚み1.6mm、ISO8501−1:2007に準拠した処理グレードSA2.5のサンドブラスト処理鋼板、以下同様)上に、下塗り塗料SP−GYを、約10μmとなるようにスプレー塗装し、室温で1週間乾燥させた。なお、下塗り塗膜の膜厚は、電磁膜厚計(Kett社製、LZ−990)で測定した。
得られた下塗り塗膜付き鋼板の下塗り塗膜上に、上塗り塗料IR−Uを、5種類の膜厚となるようにスプレー塗装した。得られたウェット塗膜を60℃で24時間乾燥させ、下塗り塗膜と塗膜Xからなる測定対象塗膜付き試験片を作成した。測定対象塗膜の膜厚を上記電磁膜厚計で測定し、得られた値から下塗り塗膜の膜厚を差し引いた値を塗膜Xの膜厚とした。
【0097】
上記試験片を用い、測定装置1の前面10bの測定対象塗膜に対する正対からのずれ角度θ=0°、測定対象塗膜と測定装置1の前面10bとの間の距離が1m(4つの各距離計13と測定対象との間の距離La、Lb、Lc、Ldの平均値L=1m)であるときの測定装置1に設けられた赤外線レーザーダイオード(型式:QFLD−850−100S−PM、波長:855nm、QPhotonics,LLC社製)から発せられた赤外線反射強度を測定した。測定装置1に設けられた検出器12は、Si PINフォトダイオード(型式:S3204−08、寸法:18mm×18mm、浜松ホトニクス(株)製)とした。その測定結果、すなわち測定対象と同じ種類の物質(上記塗膜X)に対する赤外線反射強度と厚さ(膜厚)との関係を表すグラフを
図3に示す。
【0098】
図3に示すように、距離と角度を固定したとき、塗膜Xにおいて、測定装置1が検出する赤外線反射強度は、膜厚が厚くなるにつれて大きくなった。
【0099】
次に、上記試験片を用い、前面10bの測定対象塗膜に対する正対からのずれ角度をθ=0°とし、測定対象塗膜と測定装置1の前面10bとの間の距離を、50cm〜5mの範囲で変動させた場合の赤外線レーザーダイオードから発せられた赤外線反射強度を測定した。その測定結果、すなわち測定対象と同じ種類の物質に対する赤外線反射強度と、該物質からの距離との関係を表すグラフを
図4に示す。
【0100】
図4に示すように、角度を固定し、距離を変動させたとき、測定装置1が検出する赤外線反射強度は、距離が遠くなるほど小さくなった。
【0101】
次に、上記試験片を用い、測定対象塗膜と測定装置1の前面10bとの間の距離を1mとし、前面10bの測定対象塗膜に対する正対からのずれ角度を、θ=−65〜+65°の範囲で変動させた場合の赤外線レーザーダイオードから発せられた赤外線反射強度を測定した。その測定結果、すなわち測定対象と同じ種類の物質に対する赤外線反射強度と、測定装置1の該物質に対する正対からのずれ角度との関係を表すグラフを
図5に示す。
【0102】
図5に示すように、距離を固定し、ずれ角度を変動させたとき、装置が検出する赤外線反射強度は、正対からのずれ角度が大きくなるにつれて小さくなった。
【0103】
上記の手順により、測定対象と同じ種類の物質に対する、膜厚と、赤外線反射強度と、該物質からの距離と、測定装置1の該物質に対する正対からのずれ角度との関係(検量線)を得た。
【0104】
そして、膜厚が未知である塗膜Xを含む測定対象塗膜に対し、本実施形態の測定装置1を用いて膜厚測定を行った。その結果は以下の通りであった。
赤外線レーザーダイオードから発せられた赤外線反射強度=0.850V
距離計13aの値La=980mm
距離計13bの値Lb=1,040mm
距離計13cの値Lc=1,020mm
距離計13dの値Ld=960mm
La、Lb、Lc、Ldの平均値(距離)=1,000mm(1m)
ずれ角度=41.1度
そして上記数値を、本実施形態にて述べた演算機構19にて先の関係(検量線)に当てはめた結果、得られた膜厚は322μmであった。
【0105】
上記の測定結果の精度を確認すべく、前述の試験片の作成手順に従い、先の測定対象塗膜の塗膜Xの膜厚を測定した。その結果、膜厚は320μmであった。電磁膜厚計の誤差範囲は2%とされているところ、本実施形態の測定装置1ならば、接触式に匹敵する精度で厚みを測定できることがわかった。
【0106】
なお、本発明者は、上記の赤外線レーザーダイオードに代え、以下の各種発振源を用いた場合についても試験を行った。
・「H8385030D」(Egismos Technology社製、小型レーザーダイオード、波長850nm)
・「KEDE1452H」(京都セミコンダクター(株)製、発光ダイオード、波長1200〜1600nm、2.8mW)
・「FLD−980−100S」(QPhotonics,LLC社製、温度調節機能付きファイバーレーザーダイオード、波長975nm)
・パナソニック(株)製のレフライト(写真撮影用、500W型散光タイプ)を測定装置1の筐体側方に設置した(すなわち測定装置1とは別体の発振源を筐体側方に設置した)。そして、塗膜から反射された波長900〜1700nmの電磁波の反射強度を赤外線カメラ「SC2500−NIR」(FLIR Systems社製)を用いて測定した。
その結果、これらの各種発振源を用いた場合、上記の実施例と同様、接触式に匹敵する精度で厚みを測定できることがわかった。
【0107】
更に、本発明者は、波長3,000μmのテラヘルツ波を本発明の技術的思想に適用可能であることを示すべく試験を行った。この試験には以下の装置を使用した。
・発振源11として、Terasense社製のテラヘルツ光源(波長3,000μm(100GHz)、出力200mW)
・検出器12として、Terasense社製のテラヘルツイメージングカメラ(Tera−1024、100GHz)
なお、この試験においては発振源11と検出器12とは別装置である。
【0108】
互いに隣り合って配置された発振源11および検出器12に正対するよう、距離20cmの位置にプラスチックボード(厚さ3mm)を設置した。そして、検出器12が捉えたプラスチックボードからの電磁波反射強度(電圧値)を測定した。その結果、電磁波反射強度は6.2×10
−2Vであった。
【0109】
上記発振源および検出器と上記プラスチックボードとの間の距離を19cmに変更し、測定を行った。その結果、電磁波反射強度は7.1×10
−2V(距離20cm、正対状態の場合の電磁波反射強度(電圧値)に対する相対値1.18)であった。
【0110】
距離20cmは変更せず、上記プラスチックボードに対する正対からのずれ角度を30°に変更し、測定を行った。その結果、電磁波反射強度は4.1×10
−2V(距離20cm、正対状態の場合の電磁波反射強度(電圧値)に対する相対値0.66)であった。
【0111】
この試験により、長波長領域の電磁波(テラヘルツ波)であっても、電磁波反射強度は距離と角度の影響を受けることを確認した。
【0112】
次に、<試験片の作成手順>にて説明した前記鋼板に対し、「CMP ノバ2000 ライトグレー」(中国塗料(株)製)を2種類の膜厚となるようにスプレー塗装した。得られたウェット塗膜を60℃で24時間乾燥させ、乾燥膜厚が262μm、431μmの2つの測定対象塗膜付き試験片2を作成した。
【0113】
発振源および検出器との間の距離が20cmであり、且つ、正対となる位置に、上記測定対象塗膜付き試験片2を設置し、検出器が捉えた試験片からの電磁波反射強度(電圧値)を測定した。
【0114】
前記電磁膜厚計で測定した該試験片の乾燥膜厚が262μmの場合、電磁波反射強度は1.0×10
−2Vであった。
【0115】
また、該試験への乾燥膜厚が431μmの場合、電磁波反射強度は4.2×10
−2V(乾燥膜厚が262μmの場合に対する相対値4.2)であった。
【0116】
この試験により、長波長領域の電磁波(テラヘルツ波)であっても、測定対象の塗膜の膜厚が、電磁波反射強度に影響することを確認した。
【0117】
上記2つの試験結果から、測定対象からの電磁波反射強度と、測定対象からの距離と、測定対象と装置との正対からのずれ角度と、膜厚との関係を得られることが分かった。同様に濃度との関係を得ることも可能である。
【0118】
前記関係が得られることに加え、測定対象からの距離は、測定装置1における距離計13にて、また、測定対象に対する正対からのずれ角度は、ずれ角度計測機構14にて測定でき、並びに、電磁波反射強度は、上記テラヘルツイメージングカメラを測定装置1に組み込んだうえで検出器12とすることで得られる。
【0119】
以上の結果、電磁波が波長3,000μmのテラヘルツ波であっても、本実施形態に係る測定装置1ならば、膜厚等を測定可能であることがわかった。
【0120】
以上の結果より、本実施形態の測定装置1ならば、膜厚を非接触方式により精度良く測定可能であることがわかった。なお、膜厚以外の各種パラメータ(例えば、厚さ、濃度)であっても同様の手順を踏めば本発明の効果を奏する。