(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
4−ビニルグアイアコールの含有量(単位:質量ppb)に対するn−酪酸エチル及びγ−ノナラクトンの合計含有量(単位:質量ppb)の比〔(n−酪酸エチル+γ−ノナラクトン)/4−ビニルグアイアコール〕が、1.7〜12.0である、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.ビールテイスト飲料
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつアルコール含有又はノンアルコールの炭酸飲料をいう。そのため、「ビールテイスト飲料」には、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる麦芽発酵飲料であるビールだけでなく、ビール風味を有する炭酸飲料をも包含する。つまり、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、特に断りが無い限り、エステルや高級アルコール(例えば、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n−プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド、カプロン酸エチル)、リナロール等を含むビール香料が添加され、ビール風味を有するいずれの炭酸飲料をも包含する。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、酵母を用いて発酵工程を経た発酵ビールテイスト飲料であってもよく、発酵工程を経ない非発酵ビールテイスト飲料であってもよい。
さらに、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール度数が1(v/v)%以上のアルコール含有ビールテイスト飲料であってもよく、アルコール度数が1(v/v)%未満のノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。なお、ノンアルコールビールテイスト飲料は、発酵工程を経た後、当該発酵工程で生じたアルコールを除去して製造されたノンアルコール発酵ビールテイスト飲料であってもよく、発酵工程を経ずにビール様の風味をもつように調製したノンアルコール非発酵ビールテイスト飲料であってもよい。
加えて、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、原料として麦芽を用いた麦芽使用ビールテイスト飲料であってもよく、麦芽を用いない麦芽不使用ビールテイスト飲料であってもよいが、麦芽使用ビールテイスト飲料が好ましく、大麦麦芽使用ビールテイスト飲料がより好ましい。
他に、本発明の一態様の発酵ビールテイスト飲料は、上面発酵酵母を用いた発酵工程を経て醸造されたエールビールテイスト飲料であってもよく、下面発酵酵母を用いた発酵工程を経て醸造されたラガービールテイスト飲料であってもよい。
そして、本発明の一態様の発酵ビールテイスト飲料は、スピリッツ、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒を含有する、蒸留酒含有ビールテイスト飲料であってもよく、その中でも、スピリッツ含有ビールテイスト飲料が好ましい。
【0008】
これらの中でも、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、発酵ビールテイスト飲料であることが好ましく、アルコール含有発酵ビールテイスト飲料であることがより好ましく、麦芽使用発酵ビールテイスト飲料、及び、エールビールテイスト飲料が更に好ましく、エールビールも含むビールであることがより更に好ましい。
【0009】
本発明のビールテイスト飲料は、香気成分である、4−ビニルグアイアコール(以下、「4VG」ともいう)、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンに着目した飲料である。
本発明のビールテイスト飲料において、4VGは、飲みごたえの向上に寄与し、軽快な飲み口の飲料とし得る成分である。また、n−酪酸エチルは、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの向上に寄与する成分である。さらに、γ−ノナラクトンは、ビールテイスト飲料に適した甘い香りの向上に寄与する成分である。
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、これらの成分の含有量を調製することで、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香り及び甘い香りをバランス良く感じることができ、より軽快な飲み口の飲料としている。
【0010】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、飲みごたえを向上させ、軽快な飲み口の飲料とする観点から、4VGを含有していればよい。
ただし、飲みごたえをより向上させた飲料とする観点から、4VGの含有量は、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは1質量ppb以上、より好ましくは5質量ppb以上、より好ましくは10質量ppb以上、更に好ましくは20質量ppb以上、更に好ましくは30質量ppb以上、より更に好ましくは40質量ppb以上、特に好ましくは50質量ppb以上であり、また、60質量ppb以上、70質量ppb以上、80質量ppb以上、90質量ppb以上、100質量ppb以上、150質量ppb以上、190質量ppb以上、250質量ppb以上、290質量ppb以上、350質量ppb以上、390質量ppb以上、450質量ppb以上、又は、490質量ppb以上としてもよい。
また、ビールテイスト飲料には不適な燻製様の香りを抑制し、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香り及び甘い香りが引き立つ飲料とする観点から、4VGの含有量は、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは1000質量ppb以下、より好ましくは920質量ppb以下、より好ましくは820質量ppb以下、更に好ましくは720質量ppb以下、更に好ましくは620質量ppb以下、より更に好ましくは580質量ppb以下、特に好ましくは520質量ppb以下であり、また、480質量ppb以下、420質量ppb以下、380質量ppb以下、320質量ppb以下、280質量ppb以下、又は、220質量ppb以下としてもよい。
【0011】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りに優れた飲料とする観点から、n−酪酸エチルを含有していればよい。
ただし、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りをより向上させた飲料とする観点から、n−酪酸エチルの含有量は、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは140質量ppb以上、より好ましくは150質量ppb以上、更に好ましくは160質量ppb以上、より更に好ましくは170質量ppb以上、特に好ましくは175質量ppb以上である。
また、上記と同様の観点から、n−酪酸エチルの含有量は、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは1000質量ppb以下、より好ましくは900質量ppb以下、より好ましくは800質量ppb以下、更に好ましくは700質量ppb以下、更に好ましくは600質量ppb以下、より更に好ましくは550質量ppb以下、特に好ましくは450質量ppb以下であり、400質量ppb以下、350質量ppb以下、300質量ppb以下、又は280質量ppb以下としてもよい。
【0012】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、ビールテイスト飲料に適した甘い香りに優れた飲料とする観点から、γ−ノナラクトンを含有していればよい。
ただし、ビールテイスト飲料に適した甘い香りをより向上させた飲料とする観点から、γ−ノナラクトンの含有量は、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは3質量ppb以上、より好ましくは5質量ppb以上、より好ましくは7質量ppb以上、更に好ましくは9質量ppb以上、更に好ましくは11質量ppb以上、より更に好ましくは14質量ppb以上、特に好ましくは17質量ppb以上である。
また、上記と同様の観点から、γ−ノナラクトンの含有量は、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは500質量ppb以下、より好ましくは400質量ppb以下、より好ましくは300質量ppb以下、更に好ましくは200質量ppb以下、更に好ましくは100質量ppb以下、より更に好ましくは80質量ppb以下、特に好ましくは60質量ppb以下であり、50質量ppb以下、45質量ppb以下、40質量ppb以下、35質量ppb以下、又は30質量ppb以下としてもよい。
【0013】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、n−酪酸エチルの含有量(単位:質量ppb)とγ−ノナラクトンの含有量(単位:質量ppb)との比〔n−酪酸エチル/γ−ノナラクトン〕は、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りを程よく感じ得る飲料とする観点から、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.5以上、更に好ましくは5.2以上、より更に好ましくは5.8以上、特に好ましくは6.5以上であり、また、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りを感じつつも、ビールテイスト飲料らしい甘い香りも十分に感じ得る飲料とする観点から、好ましくは23以下、より好ましくは21以下、更に好ましくは19.5以下、より更に好ましくは16以下、特に好ましくは13以下である。
【0014】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、4−ビニルグアイアコールの含有量(単位:質量ppb)に対するn−酪酸エチル及びγ−ノナラクトンの合計含有量(単位:質量ppb)の比〔(n−酪酸エチル+γ−ノナラクトン)/4−ビニルグアイアコール〕は、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香り及び甘い香りが引き立つ飲料とする観点から、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは1.9以上また、より更に好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.3以上であり、また、好ましくは12.0以下、より好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.0以下、より更に好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.1以下である。
【0015】
なお、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量は、例えば、各成分の添加量を調整するだけでなく、これらの成分の含有量の多い原材料(例えばホップ等)の品種やその使用量、当該原材料の添加のタイミング、発酵条件等を適宜調整することによって制御できる。
【0016】
また、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定することができる。
【0017】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りや甘い香りをバランス良く感じることができ、より軽快な飲み口の飲料とする観点から、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量を調整することが好ましい。
【0018】
上記観点に基づく本発明の具体的な一態様として、下記要件(I)〜(III)を満たすビールテイスト飲料が挙げられる。
・要件(I):4−ビニルグアイアコール(4VG)を1000質量ppb以下で含有する。
・要件(II):n−酪酸エチルの含有量が140質量ppb以上である。
・要件(III):n−酪酸エチルの含有量(単位:質量ppb)とγ−ノナラクトンの含有量(単位:質量ppb)との比〔n−酪酸エチル/γ−ノナラクトン〕が23以下である。
なお、本態様のビールテイスト飲料において、要件(I)〜(III)で規定する、4VGの含有量、n−酪酸エチルの含有量、及び比〔n−酪酸エチル/γ−ノナラクトン〕、それぞれの範囲は、上述の記載に基づき設定することができる。
また、上記態様のビールテイスト飲料において、上記要件(I)〜(III)以外にも、上述の各種要件(γ−ノナラクトンの含有量や、比〔(n−酪酸エチル+γ−ノナラクトン)/4−ビニルグアイアコール〕に関する要件)を、上記要件(I)〜(III)と共に、さらに課すこともできる。
【0019】
また、上記観点に基づく本発明の別の具体的な一態様として、下記要件(IV)を満たすビールテイスト飲料が挙げられる。
・要件(IV):4−ビニルグアイアコールの含有量(単位:質量ppb)に対するn−酪酸エチル及びγ−ノナラクトンの合計含有量(単位:質量ppb)の比〔(n−酪酸エチル+γ−ノナラクトン)/4−ビニルグアイアコール〕が、1.7〜12.0である。
なお、本態様のビールテイスト飲料において、要件(IV)で規定する比〔(n−酪酸エチル+γ−ノナラクトン)/4−ビニルグアイアコール〕の範囲は、上述の記載に基づき設定することができる。
また、上記態様のビールテイスト飲料において、上記要件(IV)以外にも、上述の各種要件(4VGの含有量、n−酪酸エチルの含有量、γ−ノナラクトンの含有量、及び比〔n−酪酸エチル/γ−ノナラクトン〕に関する要件)を、上記(IV)と共に、さらに課すこともできる。
【0020】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の苦味価は、ビールテイスト飲料らしい飲料とする観点から、好ましくは60BUs未満、より好ましくは55BUs以下、更に好ましくは50BUs以下、より更に好ましくは45BUs以下、特に好ましくは40BUs以下であり、35BUs以下、30BUs以下、又は25BUs以下としてもよい。
なお、本発明の一態様のビールテイスト飲料が原材料としてホップを用いた飲料である場合、当該飲料の苦味価は、5BUs以上、7BUs以上、10BUs以上、12BUs以上、又は15BUs以上としてもよい。
また、本発明の一態様のビールテイスト飲料が原材料としてホップを用いない飲料である場合、当該飲料の苦味価は、5.0BUs未満、3.0BUs以下、2.0BUs以下、1.0BUs以下、0.5BUs以下、又は0.3BUs以下としてもよい。
なお、本発明の一態様のビールテイスト飲料の苦味価は、イソフムロンを主成分とするホップ由来成分により与えられる苦味の指標であり、ホップまたはホップエキス等のホップ由来成分の使用量を適宜調整することにより制御できる。
また、本明細書において、飲料の「苦味価」は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載された測定法よって測定することができる。
【0021】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、オリジナルエキス(O−Ex)濃度は、飲料に軽快な飲み口を付与して飲みやすさをより良好とする観点、及び、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香り及び甘い香りが引き立つ飲料とする観点から、好ましくは4.0〜20.0質量%、より好ましくは4.5〜18.0質量%、更に好ましくは7.0〜16.0質量%、より更に好ましくは8.0〜15.0質量%、特に好ましくは8.5〜13.5質量%である。
なお、本明細書において、「オリジナルエキス濃度」は、「原麦汁エキス濃度」と同義である。また、本明細書における「オリジナルエキス濃度」は、アルコール度数が1(v/v)%以上であるアルコール含有飲料においては、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15℃の時において原容量100cm
3中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。また、アルコール度数が1(v/v)%未満のノンアルコール飲料においては、脱ガスしたサンプルをビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)が定める分析法(BCOJビール分析法(日本醸造協会発酵、ビール酒造組合編集、2013年増補改訂版))に従い測定したエキス値(質量%)をいう。
【0022】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、総ポリフェノールの含有量は、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、良質な味わいを有し、よりビールらしいビールテイスト飲料とする観点から、好ましくは60質量ppm以上、より好ましくは65質量ppm以上、更に好ましくは75質量ppm以上、より更に好ましくは90質量ppm以上、特に好ましくは105質量ppm以上であり、また、飲料の混濁安定性を良好とし、飲料に軽快な飲み口を付与して飲みやすさをより良好とする観点から、好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは260質量ppm以下、更に好ましくは240質量ppm以下、より更に好ましくは220質量ppm以下、特に好ましくは200質量ppm以下である。
【0023】
本明細書において、「総ポリフェノールの含有量」とは、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)に含まれるポリフェノールの総量を意味する。
ポリフェノールとは、芳香族炭化水素の2個以上の水素がヒドロキシル基で置換された化合物を意味し、具体的には、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン等が挙げられる。
【0024】
なお、本明細書において、総ポリフェノールの含有量は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載されている方法によって測定することができる。
【0025】
総ポリフェノールの含有量は、例えば、大麦麦芽、麦芽のハスク(穀皮)等のポリフェノール含有量の多い原材料の使用量を調整することによって制御できる。
一般的に、ハスク(穀皮)がある麦芽等は、ポリフェノールの含有量が多く、大豆、酵母エキス、小麦、小麦麦芽等はポリフェノールの含有量が少ない。このような原材料を適宜選択し、使用量を調整することで、ポリフェノールの含有量を所望の範囲に調整することは可能である。
【0026】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のプロリン濃度は、ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、好ましくは3.5〜60.0質量ppmであるが、4.0質量ppm以上、4.5質量ppm以上、6.0質量ppm以上、8.0質量ppm以上、10.0質量ppm以上、15.0質量ppm以上、20.0質量ppm以上、又は25.0質量ppm以上としてもよく、また、55.0質量ppm以下、50.0質量ppm以下、45.0質量ppm以下、又は40.0質量ppm以下であってもよい。
なお、プロリンは、麦芽等の麦に比較的多く含まれており、発酵工程の前後においても含有量があまり変化しないアミノ酸の一種である。そのプロリンの含有量が上記範囲であれば、味わいがより良好なビールテイスト飲料とすることができる。
なお、本明細書において、プロリン濃度は、例えば、日立L−8800形高速アミノ酸分析計を用いたアミノ酸自動分析法によって測定することができる。
【0027】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の麦芽比率は、50〜100質量%であるが、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってもよく、また、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、又は70質量%未満であってもよい。
本明細書において、「麦芽比率」とは、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。
【0028】
上述のとおり、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、アルコール含有ビールテイスト飲料であってもよく、ノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。
アルコール含有ビールテイスト飲料である場合における、本発明の一態様のビールテイスト飲料のアルコール度数としては、爽快な刺激を感じることができる飲料とする観点から、好ましくは3.0(v/v)%以上、より好ましくは4.0(v/v)%以上、より好ましくは4.6(v/v)%以上、更に好ましくは5.1(v/v)%以上、より更に好ましくは5.4(v/v)%以上、特に好ましくは5.7(v/v)%以上である。
また、飲みやすいビールテイスト飲料とする観点から、アルコール度数は、好ましくは20.0(v/v)%以下、より好ましくは15.0(v/v)%以下、更に好ましくは10.0(v/v)%以下である。
なお、本明細書において、アルコール度数は、体積/体積基準の百分率((v/v)%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
【0029】
なお、本発明の一態様のビールテイスト飲料において、アルコール度数を調製するために、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを含有し、調整することも考えられる。
ここで、スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽又は必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。
ただし、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、良質な味わいを有し、ビールらしいビールテイスト飲料とする観点から、スピリッツを含有しないことが好ましい。
【0030】
また、上記と同様の観点から、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、ビールであることが好ましい。
本明細書において、「ビール」とは、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる飲料をいい、具体的には、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達で定義されたものを意味する。
つまり、本発明の一態様のビールテイスト飲料がビールである場合、上述のアルコール度数は、酵母を用いた発酵工程によって調整されている。
【0031】
本発明の一態様のビールテイスト飲料の色は、特に限定されないが、通常のビールのような琥珀色や黄金色、黒ビールのような黒色、又は、無色透明であってもよく、あるいは着色料などを添加して、所望の色を付けてもよい。ビールテイスト飲料の色は、肉眼でも判別することができるが、全光線透過率や色度等によって規定してもよい。
【0032】
本発明の一態様のビールテイスト飲料のpHは、特に限定されないが、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは3.0〜4.6、更に好ましくは4.0〜4.55である。ビールテイスト飲料のpHが4.5以下であれば、微生物の発生を抑制でき、pHが2.0以上であれば飲料の香味が向上し易い。
【0033】
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、飲料が容器に詰められた態様であればよく、容器の例としては、例えば、ビン、ペットボトル、缶、又は樽が挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビン、ペットボトルが好ましい。
【0034】
1.1 原材料
本発明の一態様のビールテイスト飲料の主な原材料としては、水と共に麦芽を用いてもよく、また、麦芽を用いなくてもよい。さらに本発明の一態様のビールテイスト飲料は、原材料として、ホップを用いた飲料であってもよく、ホップを用いない飲料であってもよい。
その他に、保存料、甘味料、水溶性食物繊維、苦味料又は苦味付与剤、酸化防止剤、香料、酸味料等を用いてもよい。
【0035】
1.1.1 麦芽、麦芽以外の穀物
原材料として麦芽を用いる場合、当該麦芽とは、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦などの麦類の種子を発芽させて乾燥させ、除根したものをいい、産地や品種は、いずれのものであってもよい。
本発明の一態様で用いる麦芽としては、大麦麦芽が好ましい。大麦麦芽は、日本のビールテイスト飲料の原料として最も一般的に用いられる麦芽の1つである。大麦には、二条大麦、六条大麦などの種類があるが、いずれを用いてもよい。さらに、通常麦芽のほか、色麦芽なども用いることができる。なお、色麦芽を用いる際には、種類の異なる色麦芽を適宜組み合わせて用いてもよいし、一種類の色麦芽を用いてもよい。
【0036】
また、麦芽と共に、麦芽以外の穀物を用いてもよい。
そのような穀物としては、例えば、麦芽には該当しない麦(大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等)、米(白米、玄米等)、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、豆(大豆、えんどう豆等)、そば、ソルガム、粟、ひえ、及びそれらから得られたデンプン、これらの抽出物(エキス)等が挙げられる。
【0037】
なお、麦芽を用いない場合には、炭素源を含有する液糖、麦芽以外の上述の穀物等のアミノ酸含有材料(例えば、大豆たんぱく等)としての窒素源を用いたビールテイスト飲料が挙げられる。
【0038】
1.1.2 ホップ
本発明の一態様でホップを用いる場合、当該ホップの形態としては、例えば、ペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキス等が挙げられる。また、用いるホップは、イソ化ホップ、還元ホップ等のホップ加工品を用いてもよい。
本発明の一態様でホップを用いる場合、ホップの添加量としては、適宜調製されるが、飲料の原材料の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.0001〜1質量%である。
【0039】
また、原材料としてホップを用いたビールテイスト飲料は、ホップに由来する成分であるイソα酸を含有した飲料となる。ホップを用いたビールテイスト飲料のイソα酸の含有量としては、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm超であってもよく、1.0質量ppm超であってもよい。
一方で、ホップを用いないビールテイスト飲料におけるイソα酸の含有量は、当該ビールテイスト飲料の全量(100質量%)基準で、0.1質量ppm以下であってもよい。
なお、本明細書において、イソα酸の含有量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)に記載の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法により測定された値を意味する。
【0040】
1.1.3 保存料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、保存料を配合してなる飲料であってもよい。
本発明の一態様で用いる保存料としては、例えば、安息香酸;安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩;パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等の安息香酸エステル;二炭酸ジメチル等が挙げられる。また、保存料としては、強力サンプレザー(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、安息香酸ナトリウムと安息香酸ブチルの混合物)等の市販の製剤を用いてもよい。
これらの保存料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において保存料を配合する場合、当該保存料の配合量は、好ましくは5〜1200質量ppm、より好ましくは10〜1100質量ppm、更に好ましくは15〜1000質量ppm、より更に好ましくは20〜900質量ppmである。
【0042】
1.1.4 甘味料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに甘味料を配合してなる飲料としてもよい。
本発明の一態様で用いる甘味料としては、穀物由来のデンプンを酸又は酵素等で分解した市販の糖化液、市販の水飴等の糖類、三糖類以上の糖、糖アルコール、ステビア等の天然甘味料、人工甘味料等が挙げられる。
これらの甘味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの糖類の形態は、溶液等の液体であってもよく、粉末等の固体であってもよい。
また、デンプンの原料穀物の種類、デンプンの精製方法、及び酵素や酸による加水分解等の処理条件についても特に制限はない。例えば、酵素や酸による加水分解の条件を適宜設定することにより、マルトースの比率を高めた糖類を用いてもよい。その他、スクロース、フルクトース、グルコース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース及びこれらの溶液(糖液)等を用いることもできる。
また、人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース等が挙げられる。
【0043】
水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナン等が挙げられ、安定性や安全性等の汎用性の観点から、難消化性デキストリン又はポリデキストロースが好ましい。
【0044】
1.1.5 苦味料、苦味付与剤
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに苦味料及び苦味付与剤から選ばれる1種以上を配合してなる飲料としてもよい。
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、苦味は、ホップによって付与してもよく、ホップと共に下記に示す苦味料又は苦味付与剤を用いてもよい。また、ホップを用いずに、ホップに代えて下記に示す苦味料又は苦味付与剤を用いてもよい。
苦味料又は苦味付与剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に苦味付与剤として用いられるものが使用でき、例えば、マンネンロウ、レイシ、姫茴香、杜松実、セージ、迷迭香、マンネンタケ、月桂樹、クワシン、カフェイン、アブシンチン、ナリンジン、柑橘抽出物、ニガキ抽出物、コーヒー抽出物、茶抽出物、ゴーヤ抽出物、ハス胚芽抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、レイシ抽出物、ローレル抽出物、セージ抽出物、キャラウェイ抽出物等が挙げられる。
これらの苦味料及び苦味付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
1.1.6 酸化防止剤
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに酸化防止剤を配合してなる飲料としてもよい。
酸化防止剤としては、特に限定されず、通常のビールや発泡酒に酸化防止剤として用いられるものが使用でき、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びカテキン等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
1.1.7 香料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに香料を配合してなる飲料としてもよい。
香料としては、特に限定されず、一般的なビール香料を用いることができる。ビール香料は、ビール様の風味付けのために用いるものである。
ビール香料としては、エステルや高級アルコール等が挙げられ、具体的には、酢酸エチル、酢酸イソアミル、n−プロパノール、イソブタノール、及びアセトアルデヒド等が挙げられる。
これらの香料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
1.1.8 酸味料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、さらに酸味料を配合してなる飲料としてもよい。
酸味料としては、酸味を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン又はそれらの塩が挙げられる。
これらの中でも、酒石酸、リン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、フィチン酸、酢酸、コハク酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、酒石酸、リン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、酢酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、酒石酸、リン酸、及び乳酸から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
これらの酸味料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
1.2 炭酸ガス
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスは、原材料に含まれる炭酸ガスを利用してもよく、また、炭酸水との混和または炭酸ガスの添加等で溶解させてもよい。
なお、ビールテイスト飲料の発酵工程にて生じた炭酸ガスをそのまま用いることができるが、適宜炭酸水を加えて、炭酸ガスの量を調製してもよい。
【0049】
本発明の一態様のビールテイスト飲料に含まれる炭酸ガスの量は、飲料の炭酸ガス圧によって表されるが、これは、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されない。典型的には、飲料の炭酸ガス圧の上限は5.0kg/cm
2、4.5kg/cm
2、又は4.0kg/cm
2であり、下限は0.20kg/cm
2、0.50kg/cm
2、又は1.0kg/cm
2であり、これらの上限及び下限のいずれを組み合わせてもよい。例えば、飲料の炭酸ガス圧は、0.20kg/cm
2以上5.0kg/cm
2以下、0.50kg/cm
2以上4.5kg/cm
2以下、または、1.0kg/cm
2以上4.0kg/cm
2以下であってよい。
本明細書において、ガス圧とは、特別な場合を除き、容器内におけるガス圧をいう。
圧力の測定は、当業者によく知られた方法、例えば20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達したときの値を読み取る方法を用いて、または市販のガス圧測定装置を用いて測定することができる。
【0050】
1.3 その他の添加物
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、様々な添加物を添加してもよい。
そのような添加物としては、例えば、着色料、泡形成剤、発酵促進剤、酵母エキス、ペプチド含有物等のタンパク質系物質、アミノ酸等の調味料が挙げられる。
着色料は、飲料にビール様の色を与えるために使用するものであり、カラメル色素などを用いることができる。泡形成剤は、飲料にビール様の泡を形成させるため、あるいは飲料の泡を保持させるために使用するものであり、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、コーン、大豆などの植物タンパク、及び、コラーゲンペプチド等のペプチド含有物、酵母エキスなどを適宜使用することができる。
発酵促進剤は、酵母による発酵を促進させるために使用するものであり、例えば、酵母エキス、米や麦などの糠成分、ビタミン、ミネラル剤などを単独または組み合わせて使用することができる。
【0051】
1.4 容器詰飲料
本発明の一態様のビールテイスト飲料は、容器に詰められた容器詰飲料であってもよい。容器詰飲料にはいずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、ビン、缶、樽またはペットボトルが挙げられるが、特に持ち運びが容易であるとの観点から、缶、ビンやペットボトルが好ましい。
【0052】
2 ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様のビールテイスト飲料の製造方法は、特に限定されないが、発酵工程を経て発酵ビールテイスト飲料を製造する方法であってもよく、発酵工程を経ずに非発酵ビールテイスト飲料を製造する方法であってもよい。
【0053】
2.1 発酵ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様のビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である場合、本発明の一態様の発酵ビールテイスト飲料の製造方法としては、水および麦芽を含む原料に、酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程を有する方法が好ましく、より具体的には、下記工程(1)〜(3)を有する方法がより好ましい。
・工程(1):各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程。
・工程(2):工程(1)で得た発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程。
・工程(3):4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量を確認及び/又は調整する工程。
【0054】
なお、本発明の一態様の製造方法において、原材料として苦味価が5BUs以上の飲料を製造する場合には、ホップを添加する工程を有することが好ましい。また、原材料として苦味価が5BUs未満の飲料を製造する場合には、ホップを添加する工程を有しないことが好ましい。
【0055】
なお、本発明の一態様においては、良質な味わいを有し、ビールらしい飲料を製造する観点から、穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有しないことが好ましい。
【0056】
<工程(1)>
工程(1)は、各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、発酵前液を得る工程である。
例えば、各種原材料として、麦芽を用いる場合には、水及び麦芽を含む各種原材料を仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼ等の酵素を添加する。麦芽以外の各種原材料としては、ホップ、食物繊維、保存料、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味料、色素等を加えてもよい。これらは、糖化処理を行う前に加えてもよく、糖化処理の途中で加えてもよく、糖化処理の終了後に加えてもよい。また、これらは、次工程のアルコール発酵後に加えてもよい。
【0057】
各種原材料の混合物は、加温し、原材料の澱粉質を糖化させて糖化処理を行う。
糖化処理の温度及び時間は、使用する麦芽の種類や、麦芽比率、水及び麦芽以外の原材料、使用する酵素の種類や量、最終的に得られる飲料のオリジナルエキス濃度等を考慮して適宜調整することが好ましい。例えば、本発明の一態様において、糖化処理の温度は55〜75℃であり、糖化処理の時間は30〜240分であることが好ましい。糖化処理後に、濾過を行い、糖化液が得られる。
【0058】
なお、この糖化液は煮沸処理を行うことが好ましい。
この煮沸処理を行う際に、原材料としてホップや苦味料等を用いる場合には、これらを加えることが好ましい。ホップや苦味料等は、糖化液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
煮沸処理終了後には、ワールプールに移送し、0〜20℃に冷却して、冷却液とした後、凝固タンパク等の固形分の除去処理を行うことが好ましい。当該処理により、オリジナルエキス濃度を上述の範囲に調整することができる。このようにして、発酵前液が得られる。
【0059】
なお、上記の糖化液の代わりに、麦芽エキスに温水を加えたものに、ホップや苦味料等を加えて煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい。
【0060】
また、各種原材料として、麦芽を使用しない場合には、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有原料としての窒素源、ホップ、食物繊維、保存料、甘味料、酸化防止剤、苦味付与剤、香料、酸味料、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製し、その液糖溶液に対して煮沸処理を行い、発酵前液を調製してもよい。
ホップを用いる場合には、煮沸処理前に加えてもよく、液糖溶液の煮沸開始から煮沸終了前の間で加えてもよい。
【0061】
<工程(2)>
工程(1)で得た発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。
本工程で用いる酵母は、製造すべき発酵飲料の種類、目的とする香味や発酵条件等を考慮して適宜選択することができ、上面発酵酵母を用いてもよく、下面発酵酵母を用いてもよいが、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量を調整する観点から、上面発酵酵母を用いることが好ましい。
【0062】
酵母は、酵母懸濁液のまま原材料に添加してもよいし、遠心分離あるいは沈降により酵母を濃縮したスラリーを原材料に添加してもよい。また、遠心分離の後、完全に上澄みを取り除いたものを添加しても良い。酵母の原液への添加量は適宜設定できるが、例えば、5×10
6cells/mL〜1×10
8cells/mL程度である。
【0063】
アルコール発酵を行う際の発酵温度および発酵期間等の諸条件は、適宜設定することができるが、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量を調整する観点から、8〜25℃、5〜10日間の条件で発酵させてもよい。発酵工程の途中で発酵液の温度(昇温または降温)もしくは圧力を変化させてもよい。
また、本工程の終了後に、ろ過機等で酵母を取り除き、必要に応じて水や香料、酸味料、色素等の添加剤を加えてもよい。
【0064】
<工程(3)>
工程(3)は、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量を確認及び/又は調整する工程である。
4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量は、工程(1)及び(2)において、原材料の品種やその配合量、仕込条件(原材料の添加のタイミング等)、酵母種や発酵条件等を適宜設定することによっても調整できる。そこで、工程(3)では、これらの成分の含有量を測定して上述の範囲内であるかを確認することが好ましい。そして、仮にこれらの成分の中で範囲外であった成分がある場合、その範囲外となる成分を添加することによる調整もしくは希釈による調整を行うことが好ましい。
【0065】
なお、本工程の各成分の含有量の調整は、工程(1)及び/又は工程(2)と並行して行ってもよく、工程(1)と工程(2)の間に行ってもよく、工程(2)の後に行ってもよい。また、本工程の各成分の含有量の確認については、上記のいずれのタイミングで行ってもよいが、工程(2)の後に各成分の含有量の確認を行い、その結果、調整が必要な成分があれば、その成分の含有量の調整を行うことが好ましい。
【0066】
本発明の一態様において、ノンアルコール発酵ビールテイスト飲料を製造する場合には、さらに工程(4)及び(5)を行うことが好ましい。
・工程(4):工程(2)の後の発酵溶液からアルコール分を除去する工程。
・工程(5):工程(4)の後に炭酸ガスの量を調整する工程。
ノンアルコール発酵ビールテイスト飲料を製造する場合において、工程(3)は、工程(2)と工程(4)との間に行ってもよく、工程(4)と工程(5)との間に行ってもよく、工程(5)の後に行ってもよいが、少なくとも工程(4)の後に行うことが好ましい。
【0067】
工程(4)において、工程(2)の発酵工程によって生じたアルコール分を除去する方法としては、加熱処理により除去する方法が好ましい。加熱処理の条件としては、一般的なノンアルコールビールテイスト飲料の製造方法と同様の条件を適用することができる。
また、工程(4)の後、溶液中からアルコール分が除去されると共に、炭酸ガスも除去されている。そのため、工程(5)によって、炭酸ガスの量を調整することが好ましい。
炭酸ガスの量を調整する方法としては、工程(4)を行った後の溶液と炭酸水との混和によって加えてもよく、または工程(4)を行った後の溶液に炭酸ガスを直接添加してもよい。
【0068】
2.2 非発酵ビールテイスト飲料の製造方法
本発明の一態様のビールテイスト飲料が非発酵ビールテイスト飲料である場合には、一般的な非発酵ビールテイスト飲料の製造方法により製造することができる。具体的な本発明の一態様の非発酵ビールテイスト飲料の製造方法としては、下記工程(a)〜(c)を有する方法が挙げられる。
・工程(a):各種原材料を用いて、糖化処理、煮沸処理、及び固形分除去処理のうち少なくとも1つの処理を行い、一次原料液を得る工程。
・工程(b):前記一次原料液に必要に応じて酒類を加え、カーボネーション処理によって炭酸ガスを加える工程。
・工程(c):4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量を確認及び/又は調整する工程。
なお、必要に応じて、各段階において、濾過、遠心分離等で沈澱を分離除去することもできる。これらの工程は、通常のソフトドリンクの製造プロセスを用いることで、発酵設備を持たなくても、簡便に非発酵ビールテイスト飲料を製造することが可能である。
【0069】
工程(a)により一次原料液を得る具体的な方法は、上述の工程(1)と同様の方法が挙げられる。
そして、非発酵アルコール含有ビールテイスト飲料とする場合には、工程(b)により、一次原料液に酒類を加えてアルコール含有原料液とすることができる。加える酒類は、特に限定されないが、例えば、原料用アルコール、焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン等のスピリッツ等が挙げられる。
【0070】
工程(b)のカーボネーション処理によって、一次原料液又はアルコール含有原料液に炭酸ガスを加え、炭酸飲料とすることができる。
なお、炭酸ガスの添加方法としては、一次原料液又はアルコール含有原料液に直接炭酸ガスを添加する方法であってもよく、これらの原料液を濃厚な状態で調製した上で、炭酸水との混和によって添加する方法であってもよい。なお、炭酸ガスを加える際に、必要に応じて、保存料、甘味料、香料、酸味料、色素等の添加剤を加えてもよい。
また、オリや雑味の原因物質を除去するために、カーボネーション工程の前に沈殿を除去する処理を行うことが好ましい。
【0071】
そして、上記工程(3)と同様に、工程(c)として、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量を確認及び/又は調整する工程を経ることが好ましい。
工程(c)は、工程(a)と工程(b)の間に行ってもよく、工程(a)及び工程(b)の後に行ってもよい。また、工程(a)及び/又は工程(b)と並行して行ってもよい。
【0072】
このようにして得られた本発明の一態様のビールテイスト飲料は、所定の容器に充填され、製品として市場に流通する。
ビールテイスト飲料の容器詰め方法としては、特に限定されず、当業者に周知の容器詰め方法を用いることができる。容器詰め工程によって、本発明のビールテイスト飲料は容器に充填・密閉される。容器詰め工程には、いずれの形態・材質の容器を用いてもよく、容器の例としては、「1.4 容器詰飲料」に記載の容器が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【0074】
実施例1〜18、比較例1〜14
<飲料の調製>
粉砕した大麦麦芽及び酵素を温水120Lが入った仕込槽に投入した後、段階的に温度を上げて保持し、ろ過して麦芽粕を除去し、麦汁を得た。その後、当該麦汁を煮沸釜に投入して、さらにホップを添加し、また必要に応じて表1〜4に記載の麦芽比率になるように糖液を添加して煮沸処理を行った。煮沸処理後、固液分離処理を行い、得られた清澄な麦汁を冷却した後、酸素による通気を実施することで酵母添加前の発酵前液を得た。
このようにして得られた発酵前液にビール酵母(上面発酵酵母)を添加し、所定の発酵温度及び発酵時間にて発酵させ、さらに約1週間の熟成期間を経た後、酵母をろ過で除去した。その後、4VG、n−酪酸エチル、γ−ノナラクトン、及びオリジナルエキスが表1〜4に記載の値になるように、必要に応じてエキス調整水および各成分を添加して調製して、ビールテイスト飲料をそれぞれ得た。
なお、それぞれの実施例及び比較例において、酵素の種類、添加量及び添加のタイミング、麦汁を調製する際の各温度領域の設定温度及び保持時間等を適宜設定し、表1〜4に示す総ポリフェノール量及びプロリン含有量になるようにそれぞれ調整した。また、4VG、n−酪酸エチル、及びγ−ノナラクトンの含有量については、酵母の種類や発酵条件を適宜設定した上で、必要に応じて添加し、表1〜4に示す含有量となるようにそれぞれ調整した。
【0075】
<官能評価>
4℃程度まで冷却した実施例1〜18及び比較例1〜14で得られた飲料について、日頃から訓練を受けた6人のパネラーが、各飲料の「ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無」及び「ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無」について、下記のスコア基準に基づき、3(最大値)〜1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、6人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表1〜4に示す。
なお、評価に際しては、下記基準「3」、「2」及び「1」に適合するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、表1〜4のいずれの官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
[ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無の基準]
・「3」:ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りが強く感じられる。
・「2」:ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りが感じられる。
・「1」:ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りがほとんど感じられない。
[ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無の基準]
・「3」:ビールテイスト飲料に適した甘い香りが強く感じられる。
・「2」:ビールテイスト飲料に適した甘い香りが感じられる。
・「1」:ビールテイスト飲料に適した甘い香りがほとんど感じられない。
【0076】
また、上記の「ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無」及び「ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無」の評価結果による総合評価を下記基準によって3段階で評価した。
・「◎」:「ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無」及び「ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無」の両者の評価が共に2.5以上である。
・「○」:「ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無」及び「ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無」の両者の評価が共に2.0以上であり、「◎」に該当しない。
・「△」:「ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無」及び「ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無」の一方の評価が2.0未満である。
・「×」:「ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無」及び「ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無」の両者の評価が2.0未満である。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表1〜2より、実施例1〜18で調製した飲料は、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香り及び甘い香りをバランスよく感じられる結果となった。一方で、表3〜4より、比較例1〜14で調製した飲料は、ビールテイスト飲料に適した爽やかな香り及び甘い香りの少なくとも一方が弱く、両者のバランスに欠ける結果となった。
【0082】
実施例19〜27、比較例15
<飲料の調製>
実施例1で調製した飲料に対して、4VGを添加して、表5に示す4VGの含有量となる飲料を調製した。
【0083】
<官能評価>
4℃程度まで冷却した実施例1、19〜27及び比較例15で得られた飲料について、日頃から訓練を受けた6人のパネラーが、各飲料の「不適な燻製様の香りの有無」について、下記のスコア基準に基づき、3(最大値)〜1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、6人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表5に示す。
なお、評価に際しては、下記基準「3」、「2」及び「1」に適合するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、表5のいずれの官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
[不適な燻製様の香りの有無の基準]
・「3」:不適な燻製様の香りが全く感じない。
・「2」:不適な燻製様の香りがほとんど感じない。
・「1」:不適な燻製様の香りが強く感じられる。
【0084】
【表5】
【0085】
表5より、実施例1、19〜27で調製した飲料は、不適な燻製様の香りが抑制されている結果となった。一方で、比較例15で調製した飲料は、不適な燻製様の香りが強く感じられた。
なお、上述と同じ方法にて、実施例19〜27及び比較例15で調製した各飲料の「ビールテイスト飲料に適した爽やかな香りの有無」及び「ビールテイスト飲料に適した甘い香りの有無」についての官能評価を行い、これらの評価による総合評価を上記と同じ基準によって3段階で評価した。その総合評価の結果は、実施例19〜27の飲料は「◎」又は「〇」の評価である一方、比較例15の飲料は「△」の評価であった。
【解決手段】4−ビニルグアイアコールを1000質量ppb以下で含有し、n−酪酸エチルの含有量が140質量ppb以上であり、n−酪酸エチルの含有量(単位:質量ppb)とγ−ノナラクトンの含有量(単位:質量ppb)との比〔n−酪酸エチル/γ−ノナラクトン〕が23以下である、ビールテイスト飲料。