特許第6857282号(P6857282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857282
(24)【登録日】2021年3月23日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】パッチ型注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20210405BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20210405BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61M5/142 522
   A61M5/145 504
   A61M5/32 530
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-515755(P2020-515755)
(86)(22)【出願日】2018年9月17日
(65)【公表番号】特表2020-528810(P2020-528810A)
(43)【公表日】2020年10月1日
(86)【国際出願番号】US2018051337
(87)【国際公開番号】WO2019055916
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2020年3月30日
(31)【優先権主張番号】62/559,107
(32)【優先日】2017年9月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】カビリ・オズ
(72)【発明者】
【氏名】ヘズキアフ・ラン
(72)【発明者】
【氏名】ハマー・タル
【審査官】 豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/118358(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
A61M 5/32
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
服薬者に薬を非経口で投与するためのパッチ型注射器(10)であって、
長手方向に軸(22A)を持つ薬用容器(22)を含む薬用カートリッジモジュール(14)と、
前記薬用容器(22)の中に移動可能に配置されたプランジャ(30)と、
前記薬用カートリッジモジュール(14)の基端に取り付けられた動力パックモジュール(12)と、
前記動力パックモジュール(12)の中に配置されて前記プランジャ(30)に結合しており、前記薬用容器の軸(22A)に沿って伸長可能である、圧縮された弾性力要素(18)と、
前記動力パックモジュール(12)に接続された服薬者用インタフェースモジュール(16)と
を備え、
前記服薬者用インタフェースモジュール(16)は、
前記薬用容器(22)の軸に対して平行に広がっている皮膚接触面(28)と、
前記薬用カートリッジモジュールと前記動力パックモジュールとが実装されたフレーム(48)を含み、前記弾性力要素(18)によって駆動される注射針挿入機構(58)と、
前記注射針挿入機構(58)のフレーム(48)の先端側に配置され、前記薬用容器(22)と連通し、前記薬用容器(22)に対して垂直に向き付けられ、実質的に前記皮膚接触面(28)の方を向いている注射針(24)と
を含み、
前記薬用容器の軸(22A)から外れている回転軸(50)により、前記フレームが前記皮膚接触面(28)と回転可能に結合しており、
前記弾性力要素(18)は、前記薬用容器の軸(22A)に沿って先端方向へ伸長すると、前記薬用容器(22)の中で前記プランジャ(20)を先端方向へ変位させ、
前記動力パックモジュールに配置された前記弾性力要素の基端が前記皮膚接触面の張出部に固定されており、
前記弾性力要素が伸長すると曲げモーメントが生じて、前記フレームを回転させて前記注射針を前記皮膚接触面へ向かわせる
ことを特徴とするパッチ型注射器。
【請求項2】
休止状態では前記弾性力要素を圧縮された状態に維持し、動作状態では前記弾性力要素を前記薬用容器の軸に沿って伸長させて、前記弾性力要素に前記プランジャを前記薬用容器の中で先端方向へ駆動させるロック機構
を更に備えた、請求項1に記載のパッチ型注射器。
【請求項3】
前記動力パックモジュールは、
ねじり要素、および前記ねじり要素の一端に切り込みを持つ溝を含む外筒と、
前記外筒の中に配置された内筒と、
を更に含み、
前記内筒は、
前記外筒の溝を通して外側に伸びており、前記溝の中で摺動可能である内側ピストン突起
を含み、
前記パッチ型注射器が休止状態であるとき、前記内側ピストン突起が前記切り込みの中に解放可能な状態で留められている、
請求項2に記載のパッチ型注射器。
【請求項4】
前記動力パックモジュールは、
押されると、前記内筒と前記外筒との間に相対回転運動を生じさせて、前記内側ピストン突起を前記切り込みから解放し、前記弾性力要素を前記薬用容器の軸に沿って伸長させる起動スイッチ
を更に含む、請求項3に記載のパッチ型注射器。
【請求項5】
前記注射針挿入機構が、
前記薬用容器の軸から外れた回転軸で前記皮膚接触面と回転可能に結合したフレーム
を含み、
前記動力パックモジュールと前記薬用カートリッジモジュールとが前記フレームに取り付けられており、
前記弾性力要素が伸長すると、前記回転軸のまわりでは曲げモーメントが生じて前記フレームを回転させる、
請求項1に記載のパッチ型注射器。
【請求項6】
前記服薬者用インタフェースモジュールが、
前記パッチ型注射器が前記服薬者の皮膚表面から取り外されると、前記注射針を永続的に包み込む針シールドを持つ針保護機構
を含む、請求項1に記載のパッチ型注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国特許法第119条(e)に従って、2017年9月15日を出願日とする米国特許仮出願第62/559,107号に対する優先権主張を伴うものであり、その内容全体がこの明細書には参照によって組み込まれている。
【0002】
本発明は、服薬者に薬を非経口で投与するパッチ型注射器に関し、特に、単一の蓄積型動力源によって動力が完全に機械的であり、薬の充填、組み立て、および服薬者への薬の非経口投与を容易にするモジュール型注入装置に関する。
【背景技術】
【0003】
服薬者に薬を非経口で投与する従来の方法では、注入に皮下注射器が用いられている。これらの注射器に関しては多くの難点があるので、より便利な投薬装置の開発が試みられている。患者が自己投与に使うものとしては、注射器は一般に推奨されていない。血流の中に気泡が導入されることで塞栓症が生じる危険、投薬量が間違えられる危険、および注射器の使用後に第三者が誤って感染する危険があるからである。
【0004】
ペン形注入器では注射器と注射針とが同軸である。このような注入器は嵩が高い(注入の間、長軸方向が皮膚に対して垂直になる)。多くの利用(たとえば、注入物が多量である場合、および/または注入物の粘性が高い場合)には、低背であり、および/または身に着けられるパッチ型注射器がより適している。
【0005】
特許文献1に開示されたマイクロ針を利用した経皮投薬装置は、上部にヒンジで接続された下部を含む。上部は少なくとも1本の針を含み、その針は少なくとも1つの部屋に繋がっている。その部屋には薬剤または薬用カートリッジが保存されている。服薬者によって起動させられるとき、上部はその服薬者の手で下部に向かって、針がその服薬者の皮膚に刺さるまで回転させられる。このとき、ばねがプランジャに部屋を通過させて、薬剤を服薬者に投与させる。
【0006】
特許文献2に開示されたカートリッジを用いた投薬装置の本体には、薬部屋、針、棒、ばね、およびピストンがある。この本体は皮膚接触面にヒンジで接続されている。起動時には服薬者が本体を皮膚接触面に向けて押す。この回転の間に棒が、それを留めておくための突起から解放されて、ばねを伸長させる。このばねがピストンに薬部屋を通過させるので、薬剤が針を通して服薬者へ投与される。
【0007】
したがって、この技術分野では次のような注入器が求められている。小型で安価、薬を予め装填しておくことが可能で、身に着けることができ、薬をカートリッジから投与する上で使用者には最小限の操作しか要求せず、動力が完全に機械的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0296824号
【特許文献2】米国特許第8858001号
【発明の概要】
【0009】
簡単に述べれば、本発明の1つの実施形態は、服薬者に薬を非経口で投与するためのパッチ型注射器(10)を対象とする。このパッチ型注射器(10)は、長手方向に軸(22A)を持つ薬用容器(22)を含む薬用カートリッジモジュール(14)を含む。薬用容器(22)の中にはプランジャ(30)が移動可能に配置されている。薬用カートリッジモジュール(14)の基端には動力パックモジュール(12)が取り付けられている。動力パックモジュール(12)の中には圧縮された弾性力要素(18)が配置され、プランジャ(30)と結合している。弾性力要素(18)は薬用容器の軸(22A)に沿って伸長可能である。動力パックモジュール(12)には服薬者用インタフェースモジュール(16)が接続されている。服薬者用インタフェースモジュール(16)には、薬用容器(22)の軸に対して平行に広がっている皮膚接触面(28)が備えられている。薬用容器(22)の先端には注射針(24)が配置されており、薬用容器(22)と連通し、薬用容器(22)に対して垂直に向き付けられ、実質的に皮膚接触面(28)の方を向いている。弾性力要素(12)によって注射針挿入機構(58)が駆動される。弾性力要素(18)は、薬用容器の軸(22A)に沿って先端方向へ伸長すると、薬用容器(22)の中でプランジャ(30)を先端方向へ変位させて、注射針(24)を皮膚接触面(28)に向かって移動させる。
【0010】
本発明の別の実施形態は、服薬者に薬を非経口で投与する方法を対象とする。この方法は次のステップを含む。服薬者の皮膚表面にパッチ型注射器の皮膚接触面を取り付けるステップ。パッチ型注射器の動力パックモジュールに配置されている圧縮された弾性力要素の一部を解放して、動力パックモジュールから外側へ出すステップ。弾性力要素を動力パックモジュールから外側へ、皮膚接触面に対して実質的に平行に伸長させるステップ。伸長した弾性力要素を使ってパッチ型注射器の針挿入機構を駆動することにより、注射針の先端を皮膚接触面から外側へ伸ばして服薬者の皮膚表面に突き刺すステップ。伸長した弾性力要素を使って、中に薬が入っているパッチ型注射器の薬用容器の中に配置されたプランジャを変位させることにより、注射針の先端を通して薬を排出するステップ。注射針の先端を服薬者の皮膚表面から引き抜いたとき、伸長した弾性力要素を使ってパッチ型注射器の針保護機構を駆動することにより、針シールドで注射針の先端を保護するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記の概要は、発明の好ましい実施形態について以下に述べる詳細な説明と共に、添付の図面に関連付けて読まれるとよく理解されるであろう。発明の例示を目的として、図面は、現時点で好ましい実施形態を示している。しかし、示されている正確な配置および手段に発明が限定されないことは理解されるべきである。
【0012】
図1】本発明によるパッチ型注射器の第1の好ましい実施形態の模式図である。
図2図1のパッチ型注射器のブロック図である。
図3A】動力パックが休止状態である、図1のパッチ型注射器の基端部分の上面を示す斜視図である。
図3B】動力パックが動作状態である、図1のパッチ型注射器の基端部分の上面を示す斜視図である。
図4】本発明によるロック機構の他の実施形態を示す、図1のパッチ型注射器の上面の斜視図である。
図5図4のロック機構の基端部分の上面を示す斜視図である。
図6】本発明によるパッチ型注射器の第2の好ましい実施形態の模式図である。
図7】本発明による針保護機構が起動前の状態にある、図1のパッチ型注射器の上面と右側面とを示す斜視図である。
図8】動作状態にある、図7の針保護機構の上面と右側面とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例は添付の図面に示されている。発明の説明で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、発明を限定することを意図してはいない。
【0014】
発明の説明と添付の請求の範囲とで使われているように、単数形の「ある」、「一つの」、「その」という語は、文脈上他のことを示すことが明らかではない限り、複数形も含むことを意図している。以下で使用される「および/または」という語は、列挙された1以上の関連事項の可能な組み合わせを、いずれをもすべて参照し、包含するものである。「備えている」という語は、この明細書で使われている場合、記述されている特徴、数字、ステップ、動作、要素、および/または部品の存在を特定するものであるが、1以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、要素、部品、および/またはそれらの集合の存在または追加を排除するものではない。
【0015】
「右」、「左」、「下」、「上」という語は、参照される図面において方向を示す。「内側へ」、「外側へ」という語はそれぞれ、パッチ型注射器およびその特定の部品群の幾何学的中心へ向かう方向と、その中心から離れる方向とを意味する。用語には、以上で述べた語、それらの派生語、および類義語が含まれる。
【0016】
以下で使われるように、「〜ならば」という語は、文脈によって、「〜とき」、「〜直後」、「〜の決定に応じて」、または「〜の検出に応じて」を意味すると解釈されてもよい。同様に、「〜が決定されれば」または「(記述された条件または事象が)検出されれば」という語句は、文脈によって、「〜が決定された直後」、「〜の決定に応じて」、「(記述された条件または事象が)検出された直後」、または「(記述された条件または事象の)検出に応じて」を意味すると解釈されてもよい。
【0017】
以下の説明は、本発明によるパッチ型注射器の様々な実施形態を対象とする。
【0018】
図面では、それらの全体を通して、同様な数字は同様な要素を表す。図面を詳細に参照すると、図1図5には、パッチ型注射器の第1の好ましい実施形態(一般には10で指定されている。)が示されている。以下、本発明による「パッチ型注射器」10と呼ぶ。パッチ型注射器10はモジュール式注入装置を対象とする。この装置は、動力が完全に機械的であり、単一の圧縮された弾性力要素によって駆動されることで、注入器への装填、組み立て、および分配を容易にする。
【0019】
パッチ型注射器10は動力パックモジュール12を備えている。このモジュールは、薬用カートリッジモジュール14と服薬者(すなわち患者)用インタフェースモジュール16とに接続されている。動力パックモジュール12は、真っ直ぐなばね、または折れ曲がったばね等の圧縮された弾性力要素18(たとえば、国際公開番号WO2018/136194参照。)と、弾性力要素18が意図せずに動作することを防ぐロック機構20とを含む。薬用カートリッジモジュール14は薬用容器22を含む。この容器の軸22Aは服薬者の皮膚表面に対して平行である(図2参照)ので、パッチ型注射器10の嵩が最小化される。服薬者用インタフェースモジュール16は、注射針24、針シールド26、皮膚接触面28、注射針挿入機構58、および針保護機構60を含む。皮膚接触面28は薬用容器の軸22Aに対して平行に広がっている。インタフェースモジュール16は表示器を含んでいてもよい。この表示器は機械式でも電気式でもよい。表示器は薬の投与状態、たとえば、薬が投与されているか否か、投与が完了したか、投与が失敗したかを表示してもよい。インタフェースモジュール16はまたユーザーコントロールを含んでいてもよい。ユーザーコントロールには起動スイッチ44が含まれる(詳細については後述する)。
【0020】
動力パックモジュール12は薬用カートリッジモジュール14の基端に位置し、そこに取り付けられている。弾性力要素18は、薬用容器22の中に配置されたプランジャ30と結合しており、その起動がロック機構20によって選択可能に阻まれている。パッチ型注射器10が起動すると、弾性力要素18が薬用容器の軸22Aに沿って伸長して、プランジャ30を薬用容器22の中で先端方向へ変位させる。薬用容器22の先端には注射針24が薬用容器の軸22Aに対して垂直に配置されており、実質上、皮膚接触面28の方を向いている。注射針24は薬用容器22の内部と連通しているので、弾性力要素18が薬用容器の軸22Aに沿って伸長し、プランジャ30を薬用容器22の中で先端方向へ移動させるとき、薬用容器22の中の薬剤を排出することができる。
【0021】
図3Aを参照すると、ロック機構20の好ましい実施形態が示されている。図3Aでは動力パックモジュール12が内筒32と外筒34とを含む。外筒34は、ねじり要素36と、一端に切り込み40が入った溝38とを含む。内筒32は内側ピストン突起42を含む。この突起42は外筒34の溝38を通して外側へ伸びており、溝38の中を摺動できるように構成されている。パッチ型注射器10の休止状態では、内筒32の内側ピストン突起42が切り込み40に、解放可能な状態で留まっている。弾性力要素18は圧縮された状態に維持されている。起動スイッチ44(図3Aには示されていない。図7参照。)が押されると、起動スイッチ44がねじり要素36を押すので、内筒32と外筒34との間に相対的な回転運動が生じる。この回転運動により、内側ピストン突起42が切り込み40から外れて溝38の中を摺動するので、弾性力要素18が(図3Bに示されているように)軸方向へ伸長する。
【0022】
図4図5を参照すると、ロック機構の別の実施形態(以下、ロック機構20’と呼ぶ。)では、起動スイッチ44が薬用容器の軸22Aに対して平行な方向へ摺動するように構成されている。この構成では、内筒の突起42がスナップ梁46によって切り込み40の所に保持されている。起動スイッチ44は、軸方向へ変位するとスナップ梁46に接触して基端方向へ変位させる。これにより内側ピストン突起42が溝38の中を自由に摺動する。このような実施形態では、弾性力要素18のねじれにより、内筒32が外筒34に対してねじれる方向に力を受ける。
【0023】
図6を参照すると、パッチ型注射器の第2の実施形態(以下、パッチ型注射器10’と呼ぶ。)が示されている。このパッチ型注射器10’では、動力パックモジュール12と薬用カートリッジモジュール14とが注射針挿入機構のフレーム48に取り付けられている。このフレーム48は、回転軸50によって服薬者用インタフェースモジュール16の皮膚接触面28と回転可能に結合している。回転軸50は薬用容器の軸22Aから外れている。この実施形態では、弾性力要素18の基端が皮膚接触面28の張出部52に固定されている。パッチ型注射器10’が起動すると、上記のように弾性力要素18が伸長して薬用容器の軸22Aに沿って力「F」を及ぼす。回転軸50が薬用容器の軸22Aから外れているので、力「F」は、フレーム48を回転させる曲げモーメント「M」を生じさせる。これにより、注射針24が服薬者の皮膚に接触して突き刺さる。その後も弾性力要素18が伸長し続けるにつれて、プランジャ30にかかる力「F」がプランジャ30を薬用容器22の中で移動させて、薬用容器の中の薬剤を投与させる。一方、曲げモーメント「M」により注射針24の先端が服薬者の皮膚表面の下に維持される。
【0024】
図7図8を参照すると、オプションである針保護機構60を備えたパッチ型注射器10が示されている。図7に示されている起動前の状態では、針シールド26が下方へ移動するのを、戻り止め等、針シールドを解放可能に支える障壁62が妨げている。この位置では板ばね54が負荷を受けないので、針シールド26には力がかからない。パッチ型注射器10が起動すると、弾性力要素18が注射針挿入機構のフレーム48を回転させる。回転軸50が薬用容器の軸22Aから外れているので、フレーム48に加わるモーメント「M」により、注射針24が針シールド26を通過して服薬者の皮膚に突き刺さる。服薬者の皮膚により針シールド26は上の位置に留まる。服薬者がパッチ型注射器10を使い終えてパッチ型注射器10を皮膚から外すと、針シールド26を遮るものがもはやないので、針シールド26が板ばね54の及ぼす弾性力によって下方へ移動する。針シールド26が注射針24を完全に、かつ永続的に囲んで、意図しない針刺しを防ぐ(図8参照)。針シールド26はまた、針シールドロック56を含む。針シールドロックはフレーム48に嵌まって、針シールド26が上方へ変位して注射針24を露出させることを防ぐ。さらに、針シールド26が薬用カートリッジモジュール14と弾性的に結合してもよく、および/または、注射針が皮膚に刺さっている間は弾性変形可能であり、注射器10が皮膚から外されると元の形へ戻るように構成されていてもよい。
【0025】
服薬者に薬を非経口で投与する上記のパッチ型注射器の好ましい使用方法は、次のステップを含む。
【0026】
パッチ型注射器10、10’の皮膚接触面28が服薬者の皮膚表面に接着される。パッチ型注射器10、10’の動力パックモジュール12に配置されている、圧縮された弾性力要素18の一部が解放されて、動力パックモジュール12の外へ出る。弾性力要素18が動力パックモジュール12から外側へ、皮膚接触面に対して実質的に平行に伸びる。伸長した弾性力要素18を使ってパッチ型注射器10、10’の注射針挿入機構58が駆動して、注射針24の先端を皮膚接触面28から外側へ伸ばし、服薬者の皮膚表面に突き刺す。パッチ型注射器10、10’の薬用容器22の中に配置されたプランジャ30が、伸長した弾性力要素18によって変位して、薬用容器22の中の薬剤を注射針24の先端から排出する。服薬者の皮膚表面から注射針24が引き抜かれると、伸長した弾性力要素18によりパッチ型注射器10、10’の針保護機構60が駆動して、注射針24を針シールド26で保護する。
【0027】
発明の以上の詳細な説明は、特定の実施形態を参照して開示されている。しかし、この開示は、発明が開示された形式のままで尽きることも、発明を開示された形式のままで限定することも意図していない。発明の広い概念から外れることなく、上記の実施形態に変更を加えることが可能であることは、当業者には歓迎されるであろう。それ故、この開示は、添付の請求の範囲で定義されているような本発明の精神と範囲との中での修正にも及ぶことを意図している。
【0028】
上記の参照文献、特許出願、および特許はすべて、参照によってその内容の全体がこの明細書に組み込まれており、引用された文献のいずれかが、先行技術を構成することを許すものとしても、どのような方法であれ、関心に背くことを許すものとしても解釈されない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8