特許第6857307号(P6857307)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6857307-半導電性ローラ 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857307
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】半導電性ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20210405BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20210405BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20210405BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20210405BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20210405BHJP
   C08L 71/03 20060101ALI20210405BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20210405BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20210405BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   G03G15/08 235
   G03G15/02 101
   G03G15/00 551
   F16C13/00 B
   F16C13/00 A
   C08L9/00
   C08L71/03
   C08K3/06
   C08K5/40
   C08K5/36
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-221881(P2016-221881)
(22)【出願日】2016年11月14日
(65)【公開番号】特開2018-81150(P2018-81150A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大二朗
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/054735(WO,A1)
【文献】 特開2014−080456(JP,A)
【文献】 特開2014−118446(JP,A)
【文献】 特開2007−224215(JP,A)
【文献】 特開2010−174090(JP,A)
【文献】 特開2009−091592(JP,A)
【文献】 特開2009−222930(JP,A)
【文献】 米国特許第06072970(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
C08K 3/06
C08K 5/36
C08K 5/40
C08L 9/00
C08L 71/03
F16C 13/00
G03G 15/00
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムとしてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴムの2種、架橋成分としての
(a) 4,4′−ジチオジモルホリン、
(b) 硫黄、
(c) チオウレア類、ならびに
(d) チウラム系促進剤
を含み、前記ゴムの総量100質量部あたりの4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合をR(質量部)、硫黄の配合割合をS(質量部)としたとき、前記両配合割合R、Sが式(1):
2R≧S (1)
および式(2):
0.5R+S>0.4 (2)
をともに満足するとともに、前記エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、前記ゴムの総量100質量部中の40質量部以上、60質量部以下であるゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えている半導電性ローラ。
【請求項2】
前記ゴムの総量100質量部あたりの、前記4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rは0.3質量部以上、2質量部以下で、かつ前記硫黄の配合割合Sは0.2質量部以上、0.7質量部以下である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
前記チオウレア類の配合割合は、前記ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上、1質量部以下である請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
【請求項4】
前記チウラム系促進剤の配合割合は、前記ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上、1.5質量部以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項5】
前記ゴムの総量100質量部あたりの、前記4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rは0.3質量部以上、2質量部以下、前記硫黄の配合割合Sは0.2質量部以上、0.7質量部以下、前記チオウレア類の配合割合は0.1質量部以上、1質量部以下で、かつ前記チウラム系促進剤の配合割合は0.3質量部以上、1.5質量部以下である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムは、アクリロニトリルブタジエンゴムである請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項7】
前記ローラ本体は非多孔質でかつ単層構造であり、前記ローラ本体のタイプAデュロメータ硬さは52以上、56以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項8】
前記ローラ本体の外周面には、酸化膜が設けられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【請求項9】
電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、現像ローラまたは帯電ローラとして用いる請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用した画像形成装置に組み込む現像ローラや帯電ローラ等としては、特に感光体などとの当接のニップを十分に確保して、それぞれのローラとしての機能を良好に発現させるために、半導電性のゴム組成物を筒状に成形して架橋させたローラ本体を備えた半導電性ローラが好適に用いられる。
また半導電性ローラのローラ抵抗値を、上記現像ローラや帯電ローラ等として適した範囲に調整するために、ゴム組成物のもとになるゴムとして、例えばエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムを使用する場合がある。
【0003】
またゴムとしては、上記イオン導電性ゴムとともに、ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、ローラ本体の機械的強度や耐久性等を向上したり、あるいはローラ本体にゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性を付与したりするために、ジエン系ゴムを併用する場合もある。
またゴム組成物には、上記ゴムを架橋させるために架橋成分が配合される。
【0004】
架橋成分として、例えば特許文献1では硫黄系架橋剤、チオウレア類、チウラム系促進剤、およびチアゾール系促進剤を併用している。また硫黄系架橋剤としては硫黄を用いている。
そして、これらの架橋成分を所定の割合で組み合わせることにより、特許文献1では、柔軟性を高めるべくローラ本体を低硬度化しても圧縮永久ひずみが小さい状態を維持して、形成画像にヘタリによる画像ムラが生じるのをより一層良好に防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−80456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが発明者の検討によると、特許文献1に記載のゴム組成物は、スコーチタイムが短く焼けを生じやすいという問題がある。
架橋成分のうちチアゾール系促進剤は、例えばスルフェンアミド系促進剤等とともに、ゴム組成物の焼けを防止するためのリターダ(遅延剤)として機能する成分であるが、特許文献1に記載のゴム組成物では、その効果が不十分である。
【0007】
特に高温などの、保管にあまり適していない条件下でゴム組成物を保管した後や、1週間程度といった比較的長期に亘って保管した後、押出機に供給して押出成形した架橋前のゴム組成物を、操業の都合などで一旦、回収して再度、押出成形に使用した際、あるいは押出成形時のゴム組成物の吐出量を増加させた際などに、焼けの問題を生じやすい。
そして、焼けを生じたゴム組成物を使用しても所定の特性、すなわち前述したように柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくいローラ本体を製造することはできず、ゴム組成物の無駄を生じやすい。
【0008】
本発明の目的は、押出成形時に焼けを生じにくく無駄なく製造できる上、柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくいローラ本体を備えた半導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ゴムとしてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴムの2種、架橋成分としての
(a) 4,4′−ジチオジモルホリン、
(b) 硫黄、
(c) チオウレア類、ならびに
(d) チウラム系促進剤
を含み、前記ゴムの総量100質量部あたりの4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合をR(質量部)、硫黄の配合割合をS(質量部)としたとき、前記両配合割合R、Sが式(1):
2R≧S (1)
および式(2):
0.5R+S>0.4 (2)
をともに満足するとともに、前記エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴムの総量100質量部中の40質量部以上、60質量部以下であるゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えている半導電性ローラである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押出成形時に焼けを生じにくく無駄なく製造できる上、柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくいローラ本体を備えた半導電性ローラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の半導電性ローラは、上記のようにゴムとしてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴムの2種、架橋成分としての
(a) 4,4′−ジチオジモルホリン、
(b) 硫黄、
(c) チオウレア類、ならびに
(d) チウラム系促進剤
を含み、前記ゴムの総量100質量部あたりの4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合をR(質量部)、硫黄の配合割合をS(質量部)としたとき、前記両配合割合R、Sが式(1):
2R≧S (1)
および式(2):
0.5R+S>0.4 (2)
をともに満足するともに、前記エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴムの総量100質量部中の40質量部以上、60質量部以下であるゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えることを特徴とする。
【0013】
4,4′−ジチオジモルホリンは、架橋温度でまず分解して活性硫黄を放出し、放出した活性硫黄によってゴムを架橋させるという、2段階の架橋メカニズムを有する架橋剤であり、架橋剤として硫黄を直接に配合する場合よりもゴム組成物の急速な架橋を抑制できる。
そのため上記4,4′−ジチオジモルホリンを、硫黄とともに上記式(1)(2)を満足する所定の割合で配合することによって、前述した焼けを生じやすい環境下でもスコーチの発生を抑制して、ゴム組成物の無駄をできるだけ少なくできる。
【0014】
その上、かかる4,4′−ジチオジモルホリンや硫黄を、ジエン系ゴム、チオウレア類、ならびにチウラム系促進剤と併用することによって、ローラ本体を、柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくいものとすることもできる。
なお特許文献1には、硫黄系架橋剤として4,4′−ジチオジモルホリン(N,N−ジチオビスモルホリン)も記載されているが、単に例示されているに過ぎない。特許文献1には、硫黄とともに上記式(1)(2)を満足する所定の割合で4,4′−ジチオジモルホリンを配合することや、それによって上記の特有の効果が得られることについては一切記載されていない。
【0015】
〈ゴム〉
ゴムとしては、上述したようにエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴムを用いる。かかる2種のゴムを併用することにより、ローラ本体のもとになるゴム組成物に適度の半導電性を付与しつつ、柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくいローラ本体を形成できる。
【0016】
(エピクロルヒドリンゴム)
エピクロルヒドリンゴムとしては、繰り返し単位としてエピクロルヒドリンを含み、イオン導電性を有する種々の重合体が使用可能である。
エピクロルヒドリンゴムとしては、例えばエピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0017】
中でもジエン系ゴムと併用した際に、例えば現像ローラや帯電ローラ等としての使用に適した範囲まで半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる効果の点で、エチレンオキサイドを含む共重合体、特にECOおよび/またはGECOが好ましい。
上記両共重合体におけるエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
【0018】
エチレンオキサイドは、半導電性ローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。しかしエチレンオキサイド含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
一方、エチレンオキサイド含量が上記範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり、分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に半導電性ローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また架橋後のローラ本体が硬くなりすぎたり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇して加工性が低下したりするおそれもある。
【0019】
ECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
またGECOにおけるアリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に5モル%以下であるのが好ましい。
【0020】
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかし、アリルグリシジルエーテル含量がこの範囲未満ではかかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
一方、アリルグリシジルエーテルはGECOの架橋時に架橋点として機能するため、アリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲を超える場合には、GECOの架橋密度が高くなりすぎることによって分子鎖のセグメント運動が妨げられて、却ってローラ抵抗値が上昇する傾向がある。
【0021】
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわちエピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
なおGECOとしては、先に説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体の他に、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではこのいずれのGECOも使用可能である。
【0022】
これらエピクロルヒドリンゴムの1種または2種以上を使用できる。
(ジエン系ゴム)
前述したようにジエン系ゴムは、ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、ローラ本体の機械的強度や耐久性等を向上したり、あるいはローラ本体にゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性を付与したりするために機能する。
【0023】
またローラ本体の外周面には、表面状態を整えてトナー等の付着を抑制したり、半導電性ローラの誘電正接を低減したりするために、酸化性雰囲気中で紫外線を照射する等して酸化膜を形成する場合があるが、ジエン系ゴムは、当該紫外線照射によって酸化されて、ローラ本体の外周面に酸化膜を形成する材料ともなる。
ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0024】
中でもNBRが好ましい。
NBRは極性ゴムであるため、上述したジエン系ゴムとしての機能に加えて、半導電性ローラのローラ抵抗値を微調整するためにも機能する。
NBRとしては、アクリロニトリル含量が24%以下である低ニトリルNBR、25〜30%である中ニトリルNBR、31〜35%である中高ニトリルNBR、36〜42%である高ニトリルNBR、43%以上である極高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
【0025】
またNBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明では感光体等の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない非油展タイプのNBRを用いるのが好ましい。
これらNBRの1種または2種以上を使用できる。
(ゴムの配合割合
【0026】
ピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴムの総量100質量部中の40質量部以上、60質量部以下に限定される。
エピクロルヒドリンゴムの配合割合がこの範囲未満では、半導電性ローラのローラ抵抗値を、現像ローラや帯電ローラ等としての使用に適した範囲まで十分に低下できないおそれがある。
【0027】
一方、エピクロルヒドリンゴムの配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にジエン系ゴムの割合が少なくなるため、ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、ローラ本体に、前述したゴムとしての良好な特性を付与したり、外周面に、前述した機能を有する連続した酸化膜を形成したりできないおそれがある。
これに対し、エピクロルヒドリンゴムの配合割合を上記の範囲とすることにより、ジエン系ゴムを併用することによる上記の効果を維持しながら、半導電性ローラのローラ抵抗値を、現像ローラや帯電ローラ等としての使用に適した範囲まで十分に低下できる。
【0028】
ジエン系ゴムの配合割合は、エピクロルヒドリンゴムの残量である。すなわちエピクロルヒドリンゴムの配合割合を所定の範囲に設定し、さらにジエン系ゴムを加えたゴムの総量が100質量部となるように、当該ジエン系ゴムの配合割合を設定すればよい。
〈架橋成分〉
架橋成分としては、前述したように
(a) 4,4′−ジチオジモルホリン、
(b) 硫黄、
(c) チオウレア類、ならびに
(d) チウラム系促進剤
の4種を併用する。
【0029】
このうち(a)の4,4′−ジチオジモルホリン、および(b)の硫黄は、ゴムの総量100質量部あたりの4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合R(質量部)、および硫黄の配合割合S(質量部)が、前述したように式(1):
2R≧S (1)
および式(2):
0.5R+S>0.4 (2)
をともに満足している必要がある。
【0030】
すなわち式(1)の範囲より4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合R(質量部)が少なく硫黄の配合割合S(質量部)が多い、式(1)′:
2R<S (1)′
の範囲では、ゴム組成物のスコーチタイムが短くなって焼けを生じやすくなる。
また、式(2)の範囲より両配合割合R、S(質量部)が不足する、式(2)′:
0.5R+S≦0.4 (2)′
の範囲ではゴムの架橋密度が不足し、ローラ本体の圧縮永久ひずみが大きくなって、ヘタリを生じやすくなる。
【0031】
これに対し、両架橋剤の配合割合R、S(質量部)を、式(1)(2)をともに満足する範囲とすることにより、押出成形時に焼けを生じにくく無駄なく製造できる上、柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくいローラ本体を備えた半導電性ローラを得ることができる。
なお、両架橋剤の配合割合R、S(質量部)の具体的な範囲については特に限定されないが、4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合R(質量部)は、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
【0032】
また硫黄の配合割合S(質量部)は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上であるのが好ましく、0.7質量部以下であるのが好ましい。
これらの範囲で、前述した式(1)(2)をともに満足するように、両架橋剤の配合割合R、S(質量部)を調整すればよい。
なお、例えば硫黄としてオイル処理粉末硫黄、分散性硫黄等を使用する場合、上記配合割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
【0033】
(c)のチオウレア類としては、例えばエチレンチオウレア、N,N′−ジフェニルチオウレア、トリメチルチオウレア、式(1):
(C2n+1NH)C=S (1)
〔式中、nは1〜12の整数を示す。〕で表されるチオウレア、テトラメチルチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。特にエチレンチオウレアが好ましい。
【0034】
チオウレア類の配合割合は、半導電性ローラに、前述したゴムとしての良好な特性を付与すること等を考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上、特に0.2質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下、特に0.6質量部以下であるのが好ましい。
(d)のチウラム系促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の1種または2種以上が挙げられる。特にテトラメチルチウラムモノスルフィドが好ましい。
【0035】
チウラム系促進剤の配合割合は、半導電性ローラに、前述したゴムとしての良好な特性を付与すること等を考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり0.3質量部以上、特に0.5質量部以上であるのが好ましく、1.5質量部以下、特に1質量部以下であるのが好ましい。
架橋成分としては、さらにグアニジン系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チアゾール系促進剤を併用してもよい。
【0036】
このうちグアニジン系促進剤としては、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド等の1種または2種以上が挙げられる。特に1,3−ジ−o−トリルグアニジンが好ましい。
グアニジン系促進剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく1質量部以下、特に0.6質量部以下であるのが好ましい。
【0037】
またスルフェンアミド系促進剤としては、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等の1種または2種以上が挙げられる。特にN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0038】
スルフェンアミド系促進剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上であるのが好ましく、1.5質量部以下、特に0.8質量部以下であるのが好ましい。
さらにチアゾール系促進剤としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0039】
チアゾール系促進剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上であるのが好ましく、1.5質量部以下、特に0.8質量部以下であるのが好ましい。
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば架橋促進助剤、受酸剤、充填剤等が挙げられる。
【0040】
このうち架橋促進助剤としては、例えば酸化亜鉛(亜鉛華)等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋促進助剤の配合割合は、個別に、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
【0041】
受酸剤は、架橋時にエピクロルヒドリンゴム等から発生する塩素系ガスの、ローラ本体内への残留と、それによる架橋阻害や感光体等の汚染などを防止するために機能する。
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0042】
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用すると、より高い受酸効果を得ることができ、感光体等の汚染をより一層確実に防止できる。
受酸剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
受酸剤の配合割合がこの範囲未満では、当該受酸剤を配合することによる効果が十分に得られないおそれがある。
【0043】
また、受酸剤の配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後のローラ本体が硬くなりすぎるため、画像形成を繰り返した際に、当該ローラ本体と繰り返し接触することでトナーがダメージを受けやすくなる。そして、ダメージによってトナーが粉砕されたりする割合が増加し、それによって発生したトナーの粉砕物などは正常なトナーと比べて帯電特性等が大きくずれるため、形成画像の余白部分に付着してカブリ等の不良を生じやすくなるおそれがある。
【0044】
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
充填剤を配合することにより、ローラ本体の機械的強度等を向上できる。
また、充填剤として導電性カーボンブラックを用いて、ローラ本体に電子導電性を付与することもできる。
【0045】
充填剤の配合割合は、ローラ本体の機械的強度等を向上することを考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり3質量部以上、特に5質量部以上であるのが好ましい。また、例えば非多孔質のローラ本体であっても良好な柔軟性を維持すること等を考慮すると、充填剤の配合割合は、上記の範囲でも20質量部以下、特に10質量部以下であるのが好ましい。
【0046】
また添加剤としては、さらに劣化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、滑剤、加工助剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等の各種添加剤を、任意の割合で配合してもよい。
《半導電性ローラ》
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【0047】
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、上記各成分を含むゴム組成物によって、非多孔質でかつ単層構造の筒状に形成されたローラ本体2を備えるとともに、当該ローラ本体2の中心の通孔3に、シャフト4が挿通されて固定されたものである。
シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されている。
【0048】
シャフト4は、例えば導電性を有する接着剤を介して、ローラ本体2と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、あるいは通孔3の内径よりも外径の大きいものを通孔3に圧入することで、ローラ本体2と電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
ローラ本体2の外周面5には、図中に拡大して示すように酸化膜6が形成されている。
【0049】
酸化膜6を形成することにより、当該酸化膜6が誘電層として機能して、半導電性ローラ1の誘電正接を低減できる。また酸化膜6が低摩擦層として機能して、トナーの付着を良好に抑制できる。
しかも酸化膜6は、例えば酸化性雰囲気中で外周面5に紫外線を照射する等して、当該外周面5の近傍のゴム組成物中に含まれるジエン系ゴムを酸化させるだけで、簡単に形成できるため、半導電性ローラ1の生産性が低下したり製造コストが高くついたりするのを抑制できる。
【0050】
なお、ローラ本体2の「単層構造」とは、ゴム等からなる層の数が単層であることを指し、紫外線の照射等によって形成される酸化膜6は層数に含まないこととする。
半導電性ローラ1を製造するには、まず調製したゴム組成物を、押出成形機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして加硫缶内で加圧、加熱して架橋させる。
次いで架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨してローラ本体2を形成する。
【0051】
研磨方法としては、例えば乾式トラバース研磨等の種々の研磨方法が採用可能である。
また、研磨工程の最後に鏡面研磨をして仕上げてもよい。その場合は、外周面5の離型性を向上して、酸化膜6を形成せずに、あるいは酸化膜6を形成することとの相乗効果によって、トナーの付着をより一層良好に抑制できる。また感光体等の汚染を有効に防止できる。
【0052】
シャフト4は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で、通孔3に挿通して固定できる。
ただしカット後、まず通孔3にシャフト4を挿通した状態で二次架橋、および研磨をするのが好ましい。これにより、二次架橋時の膨張収縮によるローラ本体2の反りや変形を抑制できる。また、シャフト4を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面5のフレを抑制できる。
【0053】
シャフト4は、先に説明したように、通孔3の内径よりも外径の大きいものを通孔3に圧入するか、あるいは導電性を有する熱硬化性接着剤を介して、二次架橋前の筒状体の通孔3に挿通すればよい。
前者の場合は、シャフト4の圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
また後者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト4がローラ本体2に電気的に接合されるとともに、機械的に固定される。
【0054】
酸化膜6は、先に説明したように、ローラ本体2の外周面5に紫外線を照射して形成するのが好ましい。すなわち、ローラ本体2の外周面5に所定波長の紫外線を所定時間照射して、当該外周面5の近傍を構成するゴム組成物中のジエン系ゴムを酸化させるだけで、酸化膜6を形成できるため、簡単で効率的である。
しかも、紫外線の照射によって形成される酸化膜6は、例えば従来の、塗剤を塗布して形成されるコーティング膜のような問題を生じることがない上、厚みの均一性やローラ本体2との密着性等にも優れている。
【0055】
照射する紫外線の波長は、ゴム組成物中のジエン系ゴムを効率よく酸化させて、前述した機能に優れた酸化膜6を形成することを考慮すると、100nm以上であるのが好ましく、400nm以下、特に300nm以下であるのが好ましい。また照射の時間は30秒間以上、特に1分間以上であるのが好ましく、30分間以下、特に20分間以下であるのが好ましい。
【0056】
ただし酸化膜6は、他の方法で形成してもよいし、場合によっては形成しなくてもよい。
非多孔質でかつ単層構造の半導電性ローラ1は、ローラ本体2のタイプAデュロメータ硬さが52以上であるのが好ましく、56以下であるのが好ましい。
タイプAデュロメータ硬さがこの範囲未満では、ローラ本体2の圧縮永久ひずみが大きくなってヘタリを生じやすくなるおそれがある。
【0057】
一方、タイプAデュロメータ硬さが上記の範囲を超える場合には、ローラ本体2が硬くなりすぎるため、前述したようにトナーがダメージを受けやすくなって、形成画像にカブリ等の不良を生じやすくなるおそれがある。
これに対し、タイプAデュロメータ硬さを上記の範囲とすることにより、ローラ本体2の圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい上、柔軟で、形成画像にカブリ等の不良を生じにくい半導電性ローラ1を得ることができる。
【0058】
タイプAデュロメータ硬さを上記の範囲に調整するためには、前述した各成分の種類および配合割合を、前述した範囲で適宜変更すればよい。
本発明の半導電性ローラ1は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置において、現像ローラや帯電ローラとして好適に使用できるほか、例えば転写ローラ、クリーニングローラ等として用いることもできる。
【実施例】
【0059】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらに限定されるものではない。
〈実施例1〉
(ゴム組成物の調製)
ゴムとしては、GECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕60質量部、およびNBR〔日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)DN219、中高ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:33.5%、非油展〕40質量部を配合した。
【0060】
そして両ゴムの総量100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、下記の各成分を配合して混練した。
【0061】
【表1】
【0062】
表1中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
酸化亜鉛2種:架橋促進助剤〔堺化学工業(株)製〕
ハイドロタルサイト類:受酸剤〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕
カーボンブラック:FEF、東海カーボン(株)製のシーストSO
次いで混練を続けながら、下記の架橋成分を配合してさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0063】
【表2】
【0064】
表2中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
4,4′−ジチオジモルホリン:大内新興化学工業(株)製のバルノック(登録商標)R
粉末硫黄:鶴見化学工業(株)製
チオウレア類:エチレンチオウレア〔2−メルカプトイミダゾリン、川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S〕
チウラム系促進剤:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)TS〕
4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合R(質量部)と硫黄の配合割合S(質量部)の関係は
2R=0.8>0.3=S (1)″
0.5R+S=0.5>0.4 (2)″
であって、式(1)(2)をいずれも満足していた。
【0065】
〈実施例2〉
架橋成分のうち4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rを0.3質量部、硫黄の配合割合Sを0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。
配合割合R、Sの関係は
2R=0.6>0.5=S (1)″
0.5R+S=0.65>0.4 (2)″
であって、式(1)(2)をいずれも満足していた。
【0066】
〈実施例3〉
架橋成分のうち4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rを0.35質量部、硫黄の配合割合Sを0.7質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。
配合割合R、Sの関係は
2R=0.7=0.7=S (1)″
0.5R+S=0.875>0.4 (2)″
であって、式(1)(2)をいずれも満足していた。
【0067】
〈比較例1〉
架橋成分のうち4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rを0.3質量部、硫黄の配合割合Sを1質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。
配合割合R、Sの関係は
2R=0.6<1=S (1)″
0.5R+S=1.15>0.4 (2)″
であって、式(2)は満足するものの式(1)は満足していなかった。
【0068】
〈比較例2〉
架橋成分のうち4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rを0.2質量部、硫黄の配合割合Sを0.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。
配合割合R、Sの関係は
2R=0.4<0.5=S (1)″
0.5R+S=0.6>0.4 (2)″
であって、式(2)は満足するものの式(1)は満足していなかった。
【0069】
〈比較例3〉
架橋成分のうち4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rを0.2質量部、硫黄の配合割合Sを0.3質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。
配合割合R、Sの関係は
2R=0.4>0.3=S (1)″
0.5R+S=0.4=0.4 (2)″
であって、式(1)は満足するものの式(2)は満足していなかった。
【0070】
〈実施例4〉
GECOの配合割合を40質量部、NBRの配合割合を60質量部とし、なおかつ架橋成分として、さらにグアニジン系促進剤としての1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔三新化学工業(株)製のサンセラーDT〕0.2質量部、およびスルフェンアミド系促進剤としてのN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)CZ〕0.5質量部を配合したこと以外は実施例3と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0071】
配合割合R、Sの関係は
2R=0.7=0.7=S (1)″
0.5R+S=0.875>0.4 (2)″
であって、式(1)(2)をいずれも満足していた。
〈比較例4〉
架橋成分のうち4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rを0.2質量部、硫黄の配合割合Sを0.7質量部としたこと以外は実施例4と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0072】
上記配合割合R、Sの関係は
2R=0.4<0.7=S (1)″
0.5R+S=0.8>0.4 (2)″
であって、式(2)は満足するものの式(1)は満足していなかった。
〈比較例5〉
架橋成分のうち4,4′−ジチオジモルホリンの配合割合Rを0.2質量部、硫黄の配合割合Sを0.3質量部としたこと以外は実施例4と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0073】
上記配合割合R、Sの関係は
2R=0.4>0.3=S (1)″
0.5R+S=0.4=0.4 (2)″
であって、式(1)は満足するものの式(2)は満足していなかった。
〈半導電性ローラの製造および焼け評価〉
各実施例、比較例で調製したゴム組成物を常温で1週間、保管したのち、φ60の押出機〔中田エンヂニアリング(株)製〕に供給して、回転数:30rpm、温調:80℃の条件で、外径φ16mm、内径φ6.5mmの筒状に押出成形して、焼けによる成形不良の有無を確認した。
【0074】
そして焼けによる成形不良が見られたものを焼けあり(×)、見られなかったものを焼けなし(○)として評価し、評価が×であった筒状体についてはそれ以降の操作はしなかった。
一方、評価が○であった筒状体は、架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させ、次いで外周面に導電性の熱硬化性接着剤(ポリアミド系)を塗布した外径φ7.5mmの金属製のシャフトに装着し直して、オーブン中で160℃に加熱して当該シャフトに接着させた。
【0075】
そして両端を整形し、次いで外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨したのち、鏡面研磨により外径がφ16.00mm(公差0.05)になるように仕上げて、前記シャフトと一体化されたローラ本体を形成した。
そして形成したローラ本体の外周面をアルコール拭きしたのち、当該外周面からUVランプまでの距離が50mmになるように設定して紫外線照射装置〔セン特殊光源(株)製のPL21−200〕にセットし、シャフトを中心として90°ずつ回転させながら、波長184.9nmと253.7nmの紫外線を15分間ずつ照射することで上記外周面に酸化膜を形成して半導電性ローラを製造した。
【0076】
〈ヘタリ評価〉
上記で製造した半導電性ローラを、市販のレーザープリンタ用の新品のカートリッジ(トナーを収容したトナー容器、感光体、および感光体と接触させた現像ローラが一体になったもの)の、既設の現像ローラの代わりに、現像ローラとして組み込んだ。
なおレーザープリンタは、プラス帯電型の非磁性1成分トナーを使用するもので、日本工業規格JIS X6932:2008「カラー電子写真式プリンタ及びプリンタ複合機のトナーカートリッジ印刷可能枚数測定方法」に規定された測定方法に則って求められる印刷可能枚数は、A4サイズで約4000枚(公表値)である。
【0077】
そして上記カートリッジを、半導電性ローラの組み込み直後、および温度45℃の環境下で5日間、保管した後の2回、それぞれレーザープリンタに装着し、温度23.5℃、相対湿度55%の環境下、普通紙に1%濃度の画像を20枚連続で形成したのち、黒ベタ画像を2枚形成して、下記の基準で初期及び保管後のヘタリの有無を評価した。
○:黒ベタ画像に、半導電性ローラのヘタリによるスジなどの画像不良は見られなかった。ヘタリなし。
【0078】
×:上記画像不良が見られた。ヘタリあり。
以上の結果を表3、表4に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表3、表4の実施例1〜4、比較例1〜5の結果より、架橋成分として前記(a)〜(d)の4種を併用するとともに、(a)の4,4′−ジチオジモルホリンと(b)の硫黄の配合割合R、S(質量部)を、式(1)(2)を満足する範囲とすることにより、押出成形時に焼けを生じにくく無駄なく製造できる上、柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくいローラ本体を備えた半導電性ローラが得られることが判った。
【符号の説明】
【0082】
1 半導電性ローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 外周面
6 酸化膜
図1