特許第6857315号(P6857315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857315
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20210405BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20210405BHJP
   H01Q 5/328 20150101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01Q1/38
   H01Q5/371
   H01Q5/328
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-140977(P2017-140977)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-22146(P2019-22146A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】行本 真介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇二
【審査官】 赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0221638(US,A1)
【文献】 特開2014−175812(JP,A)
【文献】 特開2013−150319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H01Q 5/328
H01Q 5/371
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、前記基板本体に金属箔でパターン形成されたグランドパターンと、前記グランドパターンが形成されていない領域として前記基板本体上の前記グランドパターンと前記基板本体の少なくとも一辺との間に設けられたアンテナ占有領域と、前記アンテナ占有領域内に金属箔でパターン形成された第1エレメント及び第2エレメントとを備え、
前記第1エレメントが、前記グランドパターンに近接した基端側に給電点が設けられていると共に前記グランドパターンに対向し前記アンテナ占有領域が接する前記基板本体の一辺に向けて延在する第1延在部と、
前記第1延在部の先端側に接続され前記一辺に向けて延在する第2延在部と、
前記第2延在部の先端から前記アンテナ占有領域が接する前記一辺に沿って延在する第3延在部と、
前記第3延在部の先端から前記グランドパターンに向けて延在する第4延在部とを有し、
前記第2エレメントが、前記第1延在部の途中から前記第3延在部と反対方向に向けて延在した第5延在部を有し、
前記グランドパターンが、前記第4延在部に対向した部分にL字状の第1切り欠き部を有し、
前記第4延在部が、前記第1切り欠き部を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在し、
前記第1切り欠き部を構成する2辺のうち前記第4延在部に沿った辺が、前記第4延在部の先端に対向した辺よりも長く設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記第2エレメントが、前記第5延在部の先端から前記グランドパターンに向けて延在する第6延在部をさらに有し、
前記グランドパターンが、前記第6延在部に対向した部分にL字状の第2切り欠き部を有し、
前記第6延在部が、前記第2切り欠き部を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在し、
前記第2切り欠き部を構成する2辺のうち前記第6延在部に沿った辺が、前記第6延在部の先端に対向した辺よりも長く設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、
前記第2延在部が、前記一辺に向かう方向に延在するだけでなく前記第3延在部の延在方向とは逆方向にも延在した幅広部とされていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第1エレメントが、前記第1延在部に一端が接続され前記給電点から離間した位置で他端が前記グランドパターンに接続された第7延在部を有し、
前記第7延在部に受動素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第3延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項3に記載のアンテナ装置において、
前記第2延在部が、前記第1延在部及び前記第3延在部とそれぞれ受動素子を介して接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数共振化が可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器において、複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、用途や機器毎に応じたアンテナ性能を安価かつ容易に確保できるアンテナ装置が開発されている(例えば、特許文献1)。これらのアンテナ装置は、基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランドパターン及び複数のエレメントを備えているので、各エレメント間やグランドパターンとの間の各浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−92978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
上記従来のアンテナ装置では、グランドパターンと、グランドパターンに隣接したアンテナ占有領域内でグランドパターンの端辺に沿って延在するアンテナエレメントとの間に生じる浮遊容量を利用して最適化を行っている。しかしながら、小型化等に伴い、グランドパターンの端辺幅が狭く制限があり、十分な浮遊容量を得ることができない場合があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、グランドパターンの端辺幅が狭い場合でも、高性能化を実現可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、前記基板本体に金属箔でパターン形成されたグランドパターンと、前記グランドパターンが形成されていない領域として前記基板本体上の前記グランドパターンと前記基板本体の少なくとも一辺との間に設けられたアンテナ占有領域と、前記アンテナ占有領域内に金属箔でパターン形成された第1エレメント及び第2エレメントとを備え、前記第1エレメントが、前記グランドパターンに近接した基端側に給電点が設けられていると共に前記グランドパターンに対向し前記アンテナ占有領域が接する前記基板本体の一辺に向けて延在する第1延在部と、前記第1延在部の先端側に接続され前記一辺に向けて延在する第2延在部と、前記第2延在部の先端から前記アンテナ占有領域が接する前記一辺に沿って延在する第3延在部と、前記第3延在部の先端から前記グランドパターンに向けて延在する第4延在部とを有し、前記第2エレメントが、前記第1延在部の途中から前記第3延在部と反対方向に向けて延在した第5延在部を有し、前記グランドパターンが、前記第4延在部に対向した部分にL字状の第1切り欠き部を有し、前記第4延在部が、前記第1切り欠き部を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在し、前記第1切り欠き部を構成する2辺のうち前記第4延在部に沿った辺が、前記第4延在部の先端に対向した辺よりも長く設定されていることを特徴とする。
【0007】
このアンテナ装置では、グランドパターンが、第4延在部に対向した部分にL字状の第1切り欠き部を有し、第4延在部が、第1切り欠き部を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在しているので、第4延在部と第1切り欠き部の2辺との間で複合的に浮遊容量が発生し、第1エレメントを主として生じる共振周波数の調整及び小型化を行うことができる。特に、第1切り欠き部を構成する2辺のうち第4延在部に沿った辺が、第4延在部の先端に対向した辺よりも長く設定されているので、第4延在部の先端部を深く第1切り欠き部内に延在させることが可能になり、浮遊容量を効果的に発生させることができる。したがって、グランドパターンの端辺幅が狭く制限がある場合でも、第1切り欠き部内に延在した第4延在部によって十分な浮遊容量を得ることができる。
【0008】
第2の発明に係るアンテナ装置は、第1の発明において、前記第2エレメントが、前記第5延在部の先端から前記グランドパターンに向けて延在する第6延在部をさらに有し、前記グランドパターンが、前記第6延在部に対向した部分にL字状の第2切り欠き部を有し、前記第6延在部が、前記第2切り欠き部を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在し、前記第2切り欠き部を構成する2辺のうち前記第6延在部に沿った辺が、前記第6延在部の先端に対向した辺よりも長く設定されていることを特徴とする。
【0009】
すなわち、このアンテナ装置では、グランドパターンが、第6延在部に対向した部分にL字状の第2切り欠き部を有し、第6延在部が、第2切り欠き部を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在し、第2切り欠き部を構成する2辺のうち第6延在部に沿った辺が、第6延在部の先端に対向した辺よりも長く設定されているので、第6延在部と第2切り欠き部の2辺との間で複合的に浮遊容量が発生し、第2エレメントを主として生じる共振周波数の調整及び小型化を行うことができる。
【0010】
第3の発明に係るアンテナ装置は、第1又は第2の発明において、前記第2延在部が、前記一辺に向かう方向に延在するだけでなく前記第3延在部の延在方向とは逆方向にも延在した幅広部とされていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第2延在部が、前記一辺に向かう方向に延在するだけでなく第3延在部の延在方向とは逆方向にも延在した幅広部とされているので、第2延在部でも別の共振周波数が発生し、さらに複共振化することができる。
【0011】
第4の発明に係るアンテナ装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記第1エレメントが、前記第1延在部に一端が接続され前記給電点から離間した位置で他端が前記グランドパターンに接続された第7延在部を有し、前記第7延在部に受動素子が接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第7延在部に受動素子が接続されているので、この受動素子の選択に応じて全体の最終的なインピーダンス調整が可能になる。
【0012】
第5の発明に係るアンテナ装置は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記第3延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第3延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されているので、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子によってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
【0013】
第6の発明に係るアンテナ装置は、第3の発明のいずれかにおいて、前記第2延在部が、前記第1延在部及び前記第3延在部とそれぞれ受動素子を介して接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第2延在部が、第1延在部及び第3延在部とそれぞれ受動素子を介して接続されているので、受動素子の選択によって、共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置によれば、グランドパターンが、第4延在部に対向した部分にL字状の第1切り欠き部を有し、第4延在部が、第1切り欠き部を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在しているので、第4延在部と第1切り欠き部の2辺との間で複合的に浮遊容量が発生し、第1エレメントを主として生じる共振周波数の調整及び小型化を行うことができる。特に、第1切り欠き部を構成する2辺のうち第4延在部に沿った辺が、第4延在部の先端に対向した辺よりも長く設定されているので、第4延在部の先端部を深く第1切り欠き部内に延在させることが可能になり、浮遊容量を効果的に発生させることができる。
すなわち、アンテナエレメントに沿ったグランドパターンの端辺幅が狭い場合でも、第1切り欠き部内に延在した第4延在部によって十分な浮遊容量を得ることができる。
したがって、本発明のアンテナ装置は、多様な用途や機器に対応した複共振化が容易に可能になると共に、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、各エレメントの位置関係を示す平面図である。
図2】本実施形態において、各共振周波数に寄与する主な領域を示す配線図である。
図3】本実施形態において、アンテナ装置で生じる浮遊容量を示す配線図である。
図4】本実施形態において、アンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)及び底面図(d)である。
図5】本実施形態において、VSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、図1及び図2に示すように、絶縁性の基板本体2と、基板本体2に銅箔等の金属箔でパターン形成されたグランドパターンGNDと、グランドパターンGNDが形成されていない領域として基板本体2上のグランドパターンGNDと基板本体2の少なくとも一辺2aとの間に設けられたアンテナ占有領域AOAと、アンテナ占有領域AOA内に銅箔等の金属箔でパターン形成された第1エレメント3及び第2エレメント4とを備えている。
【0018】
上記第1エレメント3は、グランドパターンGNDに近接した基端側に給電点FPが設けられていると共にグランドパターンGNDに対向しアンテナ占有領域AOAが接する基板本体2の一辺2aに向けて延在する第1延在部E1と、第1延在部E1の先端側に接続され前記一辺2aに向けて延在する第2延在部E2と、第2延在部E2の先端からアンテナ占有領域AOAが接する前記一辺2aに沿って延在する第3延在部E3と、第3延在部E3の先端からグランドパターンGNDに向けて延在する第4延在部E4とを有している。
【0019】
上記第2エレメント4は、第1延在部E1の途中から第3延在部E3と反対方向に向けて延在した第5延在部E5と、第5延在部E5の先端からグランドパターンGNDに向けて延在する第6延在部E6とを有している。
上記グランドパターンGNDは、第4延在部E4に対向した部分にL字状の第1切り欠き部G1と、第6延在部E6に対向した部分にL字状の第2切り欠き部G2とを有している。すなわち、グランドパターンGNDは、アンテナ占有領域AOA側の両角部がそれぞれL字状に切り欠かれており、基板本体2の両側辺の一方2b側に第1切り欠き部G1を有し、基板本体2の両側辺の他方2c側に第2切り欠き部G2を有している。
【0020】
上記第4延在部E4の先端部は、第1切り欠き部G1を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在している。すなわち、第1エレメント3の開放端は、第1切り欠き部G1内に配されている。
また、第1切り欠き部G1を構成する2辺のうち第4延在部E4に沿った辺G1aが、第4延在部E4の先端に対向した辺G1bよりも長く設定されている。
【0021】
さらに、上記第6延在部E6の先端部は、第2切り欠き部G2を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在している。すなわち、第2エレメント4の開放端は、第2切り欠き部G2内に配されている。
また、第2切り欠き部G2を構成する2辺のうち第6延在部E6に沿った辺G2aが、第6延在部E6の先端に対向した辺G2bよりも長く設定されている。
【0022】
上記第2延在部E2は、前記一辺2aに向かう方向に延在するだけでなく第3延在部E3の延在方向とは逆方向にも延在した幅広部とされている。この第2延在部E2は、前記一辺2aに向かう方向よりも第3延在部E3の延在方向とは逆方向に長く延在している。すなわち、第2延在部E2は、開放端が第3延在部E3とは逆方向に向いた幅広なエレメントである。
上記第1エレメント3は、第1延在部E1に一端が接続され給電点FPから離間した位置で他端がグランドパターンGNDに接続された第7延在部E7をさらに有している。この第7延在部E7は、給電点FPから基板本体2の側辺の一方2b側に離間してグランドパターンGNDに接続されている。
【0023】
上記第3延在部E3の途中には、誘電体アンテナのアンテナ素子ATが接続されている。
上記第2延在部E2は、第1延在部E1及び第3延在部E3とそれぞれ受動素子を介して接続されている。すなわち、第2延在部E2は、第1延在部E1と第1受動素子P1を介して接続され、第3延在部E3と第2受動素子P2を介して接続されている。
上記第5延在部E5は、第3受動素子P3を介して第1延在部E1に接続されている。
上記第7延在部E7には、第4受動素子P4が接続されている。本実施形態では、第7延在部E7の基端に第4受動素子P4が接続されている。
【0024】
上記基板本体2は、長方形状の一般的なプリント基板であって、本実施形態では、ガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板を採用している。例えば、基板本体2は厚さ0.8mmで、116mm×39mmのプリント基板である。
なお、グランドパターンGNDの領域には、回路部品等を実装しても構わない。
上記各受動素子は、例えばインダクタ、コンデンサ、抵抗又はジャンパー線が採用される。
【0025】
上記給電点FPは、同軸ケーブル等の給電手段を介して別のメイン基板等に設けられた高周波回路(図示略)の給電点に接続される。この給電手段としては、同軸ケーブル、レセプタクル等のコネクタ、接点が板バネ形状を有する接続構造、接点がピンプローブ形状またはピン形状を有する接続構造、ハンダ付け用のランドを用いた接続構造等の種々の構造が採用可能である。
例えば、給電手段として同軸ケーブルを採用する場合、給電点FP近傍のグランドパターンGNDに同軸ケーブルのグランド線が接続されると共に、同軸ケーブルの芯線が給電点FPに接続される。
【0026】
上記アンテナ素子ATは、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図4に示すように、セラミックス等の誘電体121の表面にAg等の導体パターン122が形成されたチップアンテナである。
このアンテナ素子ATは、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターン等が異なる素子を選択しても構わない。また、所望の周波数によっては、アンテナ素子ATに使用している誘電体121を、磁性体、若しくは誘電体と磁性体とを混合した複合材料としても構わない。
【0027】
本実施形態のアンテナ装置1では、以下のように浮遊容量が発生する。
すなわち、図3に示すように、第4延在部E4と第1切り欠き部G1の辺G1bとの間の浮遊容量Caと、第4延在部E4と第1切り欠き部G1の辺G1aとの間の浮遊容量Cbと、第4延在部E4と第7延在部E7との間の浮遊容量Ccと、アンテナ素子ATを含む第3延在部E3とグランドパターンGNDとの間の浮遊容量Cdと、第3延在部E3の基端側と第1延在部E1との間の浮遊容量Ceと、第2延在部E2と第5延在部E5との間の浮遊容量Cfと、第5延在部E5とグランドパターンGNDとの間の浮遊容量Cgと、第6延在部E6と第2切り欠き部G2の辺G2aとの間の浮遊容量Chと、第6延在部E6と第2切り欠き部G2の辺G2bとの間の浮遊容量Ciとが発生可能である。
【0028】
次に、本実施形態のアンテナ装置における各共振周波数について、図5を参照して説明する。
【0029】
本実施形態のアンテナ装置1では、図5に示すように、周波数の低い方から、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2及び第3の共振周波数f3の順に3つの周波数帯に複共振化される。
なお、この測定においては、各受動素子は以下のものを用いた。
第1受動素子P1:L=6.8nHのインダクタ
第2受動素子P2:L=2.2nHのインダクタ
第3受動素子P3:L=4.7nHのインダクタ
第4受動素子P4:L=8.2nHのインダクタ
【0030】
「第1の共振周波数f1について」
上記第1の共振周波数f1の周波数は、アンテナ素子AT及び第2延在部E2を含む第1エレメント3により設定および調整することができる。
また、第1の共振周波数f1のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca,Cb,Cc,Cd,Ce,Cf,Cgの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1及び第2受動素子P2の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第1の共振周波数f1は、主に図2中の一点鎖線A1の部分で調整される。
【0031】
「第2の共振周波数f2について」
上記第2の共振周波数f2の周波数は、第2延在部E2により設定および調整することができる。
また、第2の共振周波数f2のインピーダンス調整は、浮遊容量Cf,Cgの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第2の共振周波数f2は、主に図2中の二点鎖線A2の部分で調整される。
【0032】
「第3の共振周波数f3について」
上記第3の共振周波数f3の周波数は、第2エレメント4により設定および調整することができる。
また、第3の共振周波数f3のインピーダンス調整は、浮遊容量Cf,Cg,Ch,Ciの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第3受動素子P3の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第3の共振周波数f3は、主に図2中の破線A3の部分で調整される。
【0033】
なお、各共振周波数f1,f2及びf3における最終的なインピーダンス調整は、第4受動素子P4の選択によりグランドパターンGND側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、フレキシブルに行うことが可能である。
【0034】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、グランドパターンGNDが、第4延在部E4に対向した部分にL字状の第1切り欠き部G1を有し、第4延在部E4が、第1切り欠き部G1を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在しているので、第4延在部部E4と第1切り欠き部G1の2辺との間で複合的に浮遊容量が発生し、第1エレメント3を主として生じる共振周波数の調整及び小型化を行うことができる。
【0035】
特に、第1切り欠き部G1を構成する2辺のうち第4延在部E4に沿った辺G1aが、第4延在部E4の先端に対向した辺G1bよりも長く設定されているので、第4延在部E4の先端部を深く第1切り欠き部G1内に延在させることが可能になり、浮遊容量を効果的に発生させることができる。したがって、グランドパターンGNDの端辺幅が狭く制限がある場合でも、第1切り欠き部G1内に延在した第4延在部E4によって十分な浮遊容量を得ることができる。
【0036】
さらに、グランドパターンGNDが、第6延在部E6に対向した部分にL字状の第2切り欠き部G2を有し、第6延在部E6が、第2切り欠き部G2を構成する2辺にそれぞれ対向する位置まで延在し、第2切り欠き部G2を構成する2辺のうち第6延在部E6に沿った辺G2aが、第6延在部E6の先端に対向した辺G2bよりも長く設定されているので、第6延在部E6と第2切り欠き部G2の2辺との間で複合的に浮遊容量が発生し、第2エレメント4を主として生じる共振周波数の調整及び小型化を行うことができる。
このように本実施形態では、アンテナエレメントに沿ったグランドパターンの端辺幅が狭い場合でも、第1切り欠き部G1内に延在した第4延在部E4と、第2切り欠き部G2内に延在した第6延在部E6とによって十分な浮遊容量を得ることができる。
【0037】
また、第2延在部E2が、前記一辺2aに向かう方向に延在するだけでなく第3延在部E3の延在方向とは逆方向にも延在した幅広部幅広部とされているので、第2延在部E2でも別の共振周波数が発生し、さらに複共振化することができる。
また、第7延在部E7に受動素子が接続されているので、この受動素子の選択に応じて全体の最終的なインピーダンス調整が可能になる。
【0038】
また、第3延在部E3の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子ATが接続されているので、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子ATによってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
さらに、第2延在部E2が、第1延在部E1及び第3延在部E3とそれぞれ受動素子を介して接続されているので、受動素子の選択によって、共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0040】
例えば、第2延在部による共振周波数の発生が不要な場合は、第2延在部を第3延在部の延在方向と反対側にも延在させた幅広部とせずに、第2延在部と第1延在部とを一体にして基板本体の前記一辺側に向けた方向のみに延在させても構わない。
また、上記実施形態では、第3延在部にアンテナ素子を設けているが、第4延在部、第5延在部又は第6延在部にアンテナ素子を設けてエレメントの短縮化を行い、装置全体の小型化を図っても構わない。
【0041】
また、上述したようにアンテナ素子を接続してエレメントの一部とすることが好ましいが、アンテナ素子を接続せずに、銅箔等の金属箔のみで延在した第3延在部でも構わない。この際、高インピーダンス化するために、第3延在部の少なくとも一部を他の部分よりも幅狭の細いパターンにしたり、ジグザグに折り返しながら全体として一定方向に延在するミアンダパターンとしたりすることが好ましい。
さらに、基板サイズに余裕がある場合には、上記エレメントの一部を線状若しくは板状の金属を折り返した形状のパターンに置き換えても構わない。また、同一の基板本体の表裏面に対してスルーホールを用いて、螺旋状などの形状に旋回させたパターンにしても構わない。
【符号の説明】
【0042】
1…アンテナ装置、2…基板本体、2a…基板本体の一辺、2b…基板本体の一方の側辺、2c…基板本体の他方の側辺、AOA…アンテナ占有領域、AT…アンテナ素子、E1…第1延在部、E2…第2延在部、E3…第3延在部、E4…第4延在部、E5…第5延在部、E6…第6延在部、E7…第7延在部、GND…グランドパターン、G1…第1切り欠き部、G1a…第1切り欠き部を構成する2辺の一方、G1b…第1切り欠き部を構成する2辺の他方、G2…第2切り欠き部、G2a…第2切り欠き部を構成する2辺の一方、G2b…第2切り欠き部を構成する2辺の他方、P1…第1受動素子、P2…第2受動素子、P3…第3受動素子、P4…第4受動素子、FP…給電点
図1
図2
図3
図4
図5