(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の鍵盤装置において、前記伝達部材は、伝達本体部と回転保持部とを備え、前記伝達本体部の一端部に設けられた前記回転保持部の伝達回転中心が前記伝達本体部の前側に配置されていることを特徴とする鍵盤装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1〜
図7を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、
図1〜
図3に示すように、鍵盤装置1を備えている。この鍵盤装置1は、楽器ケース(図示せず)内に組み込まれるものである。この鍵盤装置1は、並列に配列された複数の鍵2と、これら複数の鍵2の押鍵操作に応じて各鍵2それぞれにアクション荷重を付与するアクション機構3と、を備えている。
【0011】
複数の鍵2は、
図1〜
図3に示すように、白鍵2aおよび黒鍵2bを有し、これら白鍵2aおよび黒鍵2bが例えば88個並列に配列されている。これら複数の鍵2は、その前後方向(
図2では左右方向)におけるほぼ中間部がそれぞれ鍵支持軸であるバランスピン4a、4bによって上下方向に回転可能に支持され、この状態でベース板5上に並列に配列されている。
【0012】
すなわち、白鍵2aと黒鍵2bとは、
図1〜
図3に示すように、その前後方向の長さが異なり、白鍵2aの長さが黒鍵2bの長さよりも長く形成されている。この場合、白鍵2aと黒鍵2bとは、その各後端部(
図2では左端部)が同じ位置に配置されている。また、白鍵2aは、鍵支持軸であるバランスピン4aによってベース板5上に支持されている。黒鍵2bは、鍵支持軸であるバランスピン4bによってベース板5上に支持されている。
【0013】
これに伴って、ベース板5上には、
図2および
図3に示すように、複数の鍵2の各前端部(
図2では右端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接する白鍵2a用のクッション材6aと黒鍵2b用のクッション材6bとが鍵2の配列方向に沿って設けられている。また、このベース板5上には、複数の鍵2の各後端部(
図2では左端部)の各下面がそれぞれ接離可能に当接するクッション材7が鍵2の配列方向に沿って設けられている。
【0014】
これにより、複数の鍵2は、
図2および
図3に示すように、前部側のクッション材6a、6bと後部側のクッション材7とによって、各鍵ストロークが設定されている。さらに、このベース板5上には、複数の鍵2がその配列方向に横振れするのを防ぐための白鍵2a用のガイドピン8aと黒鍵2b用のガイドピン8bとがそれぞれ起立して設けられている。
【0015】
アクション機構3は、
図2および
図3に示すように、複数の鍵2の押鍵操作に応じてそれぞれ上下方向に回転する複数の伝達部材10と、これら複数の伝達部材10の各回転動作に応じてそれぞれ上下方向に回転して複数の鍵2それぞれにアクション荷重を付与する複数のハンマー部材11と、を備えている。この場合、複数の鍵2は、複数の伝達部材10の各重量によって、バランスピン4a、4bを中心に反時計回りに回転し、初期位置に押し上げられた状態で、初期荷重が付与されている。
【0016】
また、このアクション機構3は、
図2および
図3に示すように、複数の伝達部材10をそれぞれ回転自在に保持する複数の伝達保持部材12と、複数のハンマー部材11をそれぞれ回転自在に保持する複数のハンマー保持部材13と、を備えている。複数の伝達保持部材12は、鍵2の配列方向に沿って配置された伝達支持レール14上に取り付けられている。また、複数のハンマー保持部材13は、鍵2の配列方向に沿って配置されたハンマー支持レール15上に取り付けられている。
【0017】
これら伝達支持レール14およびハンマー支持レール15は、
図2および
図3に示すように、複数のレール支持部材16に支持されて、複数の鍵2の上方に配置されている。複数のレール支持部材16は、
図1に示すように、鍵2の配列方向の全長における予め定められた複数個所にそれぞれ位置した状態で、ベース板5上に起立して取り付けられている。
【0018】
この場合、複数の鍵2は、
図1に示すように、全体で例えば88個配列されている。これに応じて、複数のレール支持部材16は、複数の鍵2の配列方向における両端部と、例えば20個の鍵2ごとに位置する3箇所の各鍵2間との複数個所に配置されている。すなわち、この実施形態では、レール支持部材16が鍵2の配列方向の全長における5箇所に配置されている。
【0019】
これら複数のレール支持部材16は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、
図2および
図3に示すように、ベース板5上に取り付けられる取付部16aと、この取付部16a上に一体に設けられたブリッジ部16bと、を有している。これにより、レール支持部材16は、取付部16aがベース板5上に取り付けられることにより、ブリッジ部16bが鍵2の上方に突出した状態で、複数の鍵2の後部側に配置されている。
【0020】
この場合、ブリッジ部16bの前端下部、つまり取付部16aの前側上部(
図2では右側上部)には、
図2および
図3に示すように、鍵支持軸であるバランスピン4a、4bの後部側に位置する上方に伝達支持レール14を支持する伝達レール支持部16cが設けられている。また、ブリッジ部16bの後側上部(
図2では左側上部)には、鍵2の後端部の上方にハンマー支持レール15を支持するハンマーレール支持部16dが設けられている。
【0021】
さらに、ブリッジ部16bの前側上部(
図2では右側上部)には、
図2および
図3に示すように、後述する上限ストッパレール34を保持するストッパレール支持部16eが設けられている。また、ブリッジ部16bの上端部には、後述する基板支持レール37を保持する基板レール支持部16fが設けられている。
【0022】
伝達支持レール14は、
図2および
図3に示すように、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げたものであり、複数の鍵2の配列方向の全長に亘って設けられている。この伝達支持レール14は、鍵2の配列方向における所定箇所(5箇所)が複数のレール支持部材16の各伝達レール支持部16c上に取り付けられている。
【0023】
これにより、伝達支持レール14は、
図2および
図3に示すように、鍵2のバランスピン4a、4bの後部側に位置する上方に配置され、この状態で伝達支持レール14の前端下部(
図2では右側下部)が、黒鍵2b用のバランスピン4bの上端部に配置されて支持されている。
【0024】
この伝達支持レール14上には、
図2および
図3に示すように、複数の伝達保持部材12および複数のストッパ支持部17が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。この場合、複数のストッパ支持部17は、金属板からなり、複数のレール支持部材16に対応する伝達支持レール14上の所定箇所(5箇所)に、複数の伝達保持部材12の上方に突出した状態で取り付けられている。
【0025】
伝達保持部材12は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、
図4(a)および
図4(b)に示すように、本体板12aと複数の軸支持部18とを備えている。本体板12a上には、複数の軸支持部18が、例えば10個程度の各鍵2に対した状態で、鍵2の配列方向に沿って一体に設けられている。この軸支持部18は、伝達部材10が回転自在に取り付けられて伝達部材10の横触れを防ぐようになっている。
【0026】
すなわち、軸支持部18は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、一対のガイド壁18aと、これら一対のガイド壁18a間に設けられた伝達保持軸18bと、を有している。一対のガイド壁18aは、伝達保持部材12の本体板12a上の前端部(
図4(a)では右端部)に、複数の伝達部材10それぞれと対応する状態で設けられている。
【0027】
これら一対のガイド壁18aは、
図4(a)に示すように、伝達部材10の後述する伝達嵌合部21を両側から摺動可能に挟んだ状態で、伝達部材10の伝達嵌合部21を回転可能にガイドするガイド部になっている。伝達保持軸18bは、
図4(b)に示すように、ほぼ丸棒状をなし、その外周面の両側が切り欠かれていることにより、断面形状が非円形状に形成されている。この伝達保持軸18bは、
図2および
図3に示すように、鍵2のバランスピン4a、4bの後部側の上方に配置されるようになっている。
【0028】
また、この伝達保持部材12は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、梱包輸送時に伝達部材10の横触れを規制する規制部19を有している。この規制部19は、伝達保持部材12の本体板12aの後部(
図4(a)では左側部)上に各伝達部材10と対応して設けられた一対の規制壁である。この規制部19は、伝達部材10の前側下部を挟んだ状態で、伝達部材10を回転可能にガイドするほか、梱包輸送時に伝達部材10の横振れを規制するようになっている。
【0029】
伝達部材10は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、
図2〜
図5に示すように、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転してハンマー部材11を上下方向に回転させる伝達本体部20と、この伝達本体部20に一体に設けられて伝達保持部材12の伝達保持軸18bに回転自在に取り付けられる回転保持部である伝達嵌合部21と、を有している。
【0030】
伝達本体部20は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、ほぼワッフル形状に形成されている。すなわち、この伝達本体部20は、厚みの薄い縦板部20aと、この縦板部20aの外周部および両側面にほぼ格子状に設けられ複数のリブ部20bと、を有し、これらがワッフル形状に形成されている。この場合、伝達本体部20は、縦板部20aの形状や厚みおよび複数のリブ部20bの形成密度によって、伝達部材10の重量が調整されている。
【0031】
また、この伝達部材10は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、その伝達本体部20の縦板部20aの厚みが薄く形成されていても、複数のリブ部20bによって強度が確保されている共に、合成樹脂で成形する際に、複数のリブ部20bによって縦板部20aにヒケが発生するのを防ぐようになっている。
【0032】
伝達嵌合部21は、
図2、
図3および
図5に示すように、全体がC字形状に形成され、伝達本体部20の前端部(
図5(a)では右端部)から前方に突出して設けられている。すなわち、この伝達嵌合部21は、
図5(a)に示すように、鍵2の配列方向の厚みが軸支持部18の一対のガイド壁18a間の長さとほぼ同じ長さで設けられて、一対のガイド壁18a間に摺動可能に挿入されるようになっている。
【0033】
また、この伝達嵌合部21は、
図5(a)に示すように、その中心部に伝達保持部材12の伝達保持軸18bが嵌合する嵌合孔21aが設けられている。この嵌合孔21aは、伝達部材10の伝達回転中心である。この嵌合孔21aの周囲における一部、つまり嵌合孔21aの周囲における前部には、伝達保持軸18bが挿脱可能に挿入される挿入口21bが設けられている。
【0034】
これにより、伝達嵌合部21は、
図2および
図3に示すように、挿入口21bを通して伝達保持軸18bが嵌合孔21aに挿入された際に、伝達保持軸18bに回転可能に取り付けられるようになっている。この場合、伝達嵌合部21は、鍵2のバランスピン4a、4bにおける後部側の上方に配置されている。
【0035】
また、この伝達部材10の伝達本体部20は、
図2、
図3および
図5に示すように、その下部が鍵2の上面に向けて突出して設けられている。この伝達本体部20の下端部には、伝達フェルト22が設けられている。この伝達フェルト22は、鍵2の後側上部に設けられたキャプスタン23に上方から当接するようになっている。
【0036】
これにより、伝達部材10は、
図2および
図3に示すように、鍵2が押鍵された際に、鍵2のキャプスタン23によって伝達フェルト22が押し上げられることにより、伝達保持軸18bを中心に時計回りに回転するようになっている。また、この伝達部材10の伝達本体部20は、その後端上部が前端上部よりも高い位置に配置されていることにより、上辺部が前下がり(
図2では右下がり)に傾斜するようになっている。
【0037】
この伝達本体部20の後端上部には、
図2、
図3および
図5(a)に示すように、支持部20cが上方に向けて突出して設けられている。すなわち、この支持部20cは、後述するハンマー部材11に当接することなく、ハンマー部材11の側面に沿って上下方向に移動するようになっている。また、この支持部20cの側面には、後述する連動部24の連動突起部24aが設けられている。
【0038】
一方、ハンマー支持レール15は、
図1〜
図3に示すように、伝達支持レール14と同様、帯板の両側部をその長手方向に沿って下側に向けて折り曲げたものであり、複数の鍵2の配列方向の全長に亘って設けられている。このハンマー支持レール15は、鍵2の配列方向における所定箇所(5箇所)が複数のレール支持部材16の各ハンマーレール支持部16d上に取り付けられている。この場合、ハンマー支持レール15は、その後端部(
図2では左端部)が鍵2の後端部の上方に位置した状態で配置されている。
【0039】
このハンマー支持レール15上には、
図2および
図3に示すように、複数のハンマー保持部材13が鍵2の配列方向に沿って取り付けられている。ハンマー保持部材13は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、
図6(a)および
図6(b)に示すように、上方が開放されたレール状の本体板13aと軸支持部25とを備えている。レール状の本体板13aの前端部には、軸支持部25が、例えば10個程度の各鍵2に対した状態で、鍵2の配列方向に沿って一体に設けられている。
【0040】
この軸支持部25は、
図6(a)および
図6(b)に示すように、ハンマー部材11が回転自在に取り付けられて、ハンマー部材11の横振れを防ぐようになっている。すなわち、この軸支持部25は、一対のガイド壁25aと、これら一対のガイド壁25a間にそれぞれ設けられたハンマー保持軸25bと、を有している。
【0041】
一対のガイド壁25aは、
図6(a)および
図6(b)に示すように、本体板13aの後端部(
図6(b)では右端部)に、複数のハンマー部材11それぞれと対応して設けられている。これら一対のガイド壁25aは、ハンマー部材11の後述するハンマー嵌合部28を両側から摺動可能に挟んだ状態で、ハンマー部材11のハンマー嵌合部28を回転可能にガイドするガイド部になっている。
【0042】
ハンマー保持軸25bは、
図6(b)に示すように、ほぼ丸棒状をなし、伝達保持軸18bと同様、その外周面の両側が切り欠かれていることにより、断面形状が非円形状に形成されている。この場合、ハンマー保持軸25bは、
図2および
図3に示すように、伝達本体部20の後端部の上方、つまり鍵2の前後方向における鍵2のキャプスタン23と鍵2の後端部との間に対応する状態で、ハンマー支持レール15上に配置されている。
【0043】
ハンマー部材11は、ABS樹脂などの硬質の合成樹脂からなり、
図7(a)および
図7(b)に示すように、ハンマーヘッド26とハンマーアーム27とを有し、これらが一体に設けられている。ハンマーヘッド26は、杓子形状の縦板部26aと複数のリブ部26bとを備えている。複数のリブ部26bは、縦板部26aの外周部およびその両側面に設けられている。このハンマーヘッド26は、杓子形状の縦板部26aの形状および複数のリブ部26bの形成密度によって、ハンマー部材11の重量が調整されるようになっている。
【0044】
ハンマーアーム27は、
図2、
図3および
図7に示すように、前後方向の長さが伝達部材10の前後方向の長さよりも長い横板部27aと、この横板部27aの外周部および両側面に設けられたリブ部27bとを備えている。このハンマーアーム27の後端部(
図7(a)では左端部)には、ハンマー保持部材13に回転自在に取り付けられるハンマー部材11のハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28が設けられている。
【0045】
このハンマー嵌合部28は、
図7(a)および
図7(b)に示すように、伝達嵌合部21と同様、全体が逆C字形状に形成され、ハンマーアーム27の後端部に後方に突出して設けられている。すなわち、このハンマー嵌合部28は、
図6(a)に示すように、鍵2の配列方向の厚みが一対のガイド壁25a間とほぼ同じ長さで設けられて、一対のガイド壁25a間に摺動可能に挿入されるようになっている。
【0046】
また、このハンマー嵌合部28は、
図7(a)および
図7(b)に示すように、その中心にハンマー保持部材13のハンマー保持軸25bが嵌合する嵌合孔28aが設けられている。この嵌合孔28aの周囲における一部、つまり嵌合孔28aの周囲における後部には、ハンマー保持軸25bが挿脱可能に挿入される挿入口28bが設けられている。
【0047】
このハンマー嵌合部28は、
図7(a)および
図7(b)に示すように、挿入口28bを通してハンマー保持軸25bが嵌合孔28aに挿入されることにより、ハンマー保持軸25bに回転可能に取り付けられるようになっている。このハンマー嵌合部28は、
図2および
図3に示すように、伝達本体部20の後端部の上方、つまり鍵2の前後方向における鍵2のキャプスタン23と鍵2の後端部との間に位置する箇所の上方に配置されている。
【0048】
また、ハンマーアーム27の後端下部には、
図7(a)および
図7(b)に示すように、取付部27cが下方に向けて突出して設けられている。すなわち、この取付部27cは、伝達部材10の支持部20cの側面に対面し、この状態で支持部20cの側面に沿って上下方向に移動するようになっている。また、この取付部27cには、後述する連動部24の連動突起部24aが挿入する連動孔24bが設けられている。
【0049】
また、このハンマーアーム27は、
図2および
図3に示すように、その前端下部(
図2では右端下部)が下限ストッパ30に上方から当接することにより、初期位置である下限位置に規制されるようになっている。すなわち、この下限ストッパ30は、フェルトなどのクッション材で形成されている。
【0050】
この下限ストッパ30は、
図2および
図3に示すように、伝達支持レール14上に設けられた複数のストッパ支持部17に支持された下限ストッパレール31上に取り付けられている。これにより、ハンマー部材11は、ハンマーアーム27の前端下部が下限ストッパ30に上方から当接することにより、前下がりに傾斜した状態で、初期位置に位置規制される。
【0051】
また、このハンマーアーム27は、
図2、
図3および
図7に示すように、鍵2が押鍵操作された際に、ハンマーアーム27の前端上部に設けられたストッパ当接部32が上限ストッパ33に下方から当接することにより、上限位置が規制されている。この上限ストッパ33は、下限ストッパ30と同様、フェルトなどのクッション材で形成され、複数のレール支持部材16の各ストッパレール支持部16eに取り付けられた上限ストッパレール34の下面に取り付けられている。
【0052】
この場合、上限ストッパレール34は、
図2、
図3および
図7に示すように、金属製の帯板を断面ほぼZ字状に折り曲げたものであり、複数の鍵2の配列方向における全長に亘って配置されている。これにより、ハンマー部材11は、ハンマーアーム27がハンマー保持部材13のハンマー保持軸25bを中心に反時計回りに回転した際に、ハンマーアーム27の前端上部に設けられたストッパ当接部32が上限ストッパ33に下方から当接することにより、上限位置が規制される。
【0053】
一方、ハンマーアーム27の後端上部には、
図7(a)および
図7(b)に示すように、スイッチ押圧部35が設けられている。このハンマーアーム27のスイッチ押圧部35の上方に位置する一対の基板支持レール37には、
図2および
図3に示すように、スイッチ基板36が配置されている。これら一対の基板支持レール37は、それぞれ断面がL字形状に形成された長板であり、鍵2の配列方向の全長に亘って配置されている。
【0054】
すなわち、これら一対の基板支持レール37は、
図1〜
図3に示すように、その各水平部が複数のレール支持部材16の各基板レール支持部16f上に所定間隔離れた状態で取り付けられている。スイッチ基板36は、
図1に示すように、複数に分割されている。すなわち、この実施形態では、スイッチ基板36が例えば4つに分割されて20個程度の各鍵2に対応する長さで、一対の基板支持レール37上に取り付けられている。
【0055】
これらスイッチ基板36の下面には、
図2および
図3に示すように、ゴムスイッチ38がそれぞれ設けられている。このゴムスイッチ38は、鍵2の配列方向に長いゴムシートに逆ドーム状の膨出部38aが複数のハンマーアーム27にそれぞれ対応して設けられている。この膨出部38aの内部には、スイッチ基板36の下面に設けられた複数の固定接点(図示せず)に接離可能に接触する複数の可動接点(図示せず)がハンマーアーム27の前後方向に沿って設けられている。
【0056】
これにより、ゴムスイッチ38は、
図2および
図3に示すように、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸25bを中心に反時計回りに回転して、ハンマーアーム27のスイッチ押圧部35によって下側から押圧された際に、逆ドーム状の膨出部38aが弾性変形して、複数の可動接点が時間間隔をもって順次、複数の固定接点に接触することにより、鍵2の押鍵強さに応じたスイッチ信号を出力するようになっている。そして、このスイッチ信号は、音源部36aに供給され、鍵2の押鍵強さに応じた楽音が生成される。
【0057】
ところで、連動部24は、
図2、
図3、
図5および
図7に示すように、伝達部材10の支持部20cに設けられた連動突起部24aと、ハンマー部材11の取付部27cに設けられて連動突起部24aが挿入する連動孔24bと、を有し、これら連動突起部24aと連動孔24bとによって伝達部材10とハンマー部材11とを連結している。
【0058】
これにより、連動部24は、
図2、
図3、
図5および
図7に示すように、押鍵操作された鍵2に対応する伝達部材10の回転動作を連動突起部24aと連動孔24bとによってハンマー部材11に伝達させて、ハンマー部材11を鍵2の押鍵操作に連動させて回転させるようになっている。
【0059】
次に、このような電子鍵盤楽器の鍵盤装置1の作用について説明する。
この鍵盤装置1では、鍵2が押鍵操作されていない初期状態のときに、伝達部材10がその自重で伝達保持部12の伝達保持軸18bを中心に
図2において反時計回りに回転して、伝達本体部20の下面に設けられた伝達フェルト22が鍵2のキャプスタン23に上方から当接する。
【0060】
このときには、伝達部材10の重量、つまり伝達本体部20の縦板部20aの形状や厚みおよび複数のリブ部20b、22cの形成密度によって設定されている重量が鍵2のキャプスタン23に上方から加わる。これにより、鍵2が伝達部材10によって押されてバランスピン4a、4bを中心に
図2において反時計回りに回転し、鍵2の後端部がクッション材7に当接して、鍵2が初期位置に規制されると共に、伝達部材10も初期位置に規制される。
【0061】
また、このときには、ハンマー部材11がその自重でハンマー保持部材13のハンマー保持軸25bを中心に
図2において時計回りに回転して、ハンマーアーム27が下限ストッパ36に上方から当接して下限位置に規制される。この状態では、ハンマー部材11のスイッチ押圧部35がスイッチ基板36のゴムスイッチ38から下側に離れた位置に配置される。このため、ゴムスイッチ38は、その膨出部38aが膨張した自由状態になり、複数の可動接点が固定接点(いずれも図示せず)から離れることにより、オフ状態になる。
【0062】
次に、このような状態の鍵2を押鍵操作して演奏する場合について説明する。
この場合には、鍵2が押鍵操されると、鍵2がバランスピン4a、4bを中心に
図3において時計回りに回転し、鍵2のキャプスタン23が伝達部材10を押し上げる。このときには、伝達部材10の重量である伝達本体部20の縦板部20aの形状や厚みおよび複数のリブ部20bの形成密度によって設定されている重量が、鍵2に初期荷重として付与される。
【0063】
これにより、伝達部材10がその自重に抗して伝達保持部材12の伝達保持軸18bを中心に
図2において時計回りに回転する。すると、伝達部材10の回転動作が連動部24によってハンマー部材11に伝達され、ハンマー部材11がその自重に抗して押上げられる。すなわち、伝達部材10が
図2において時計回りに回転すると、伝達部材10の回転に伴って、
図3に示すように、連動部24の連動突起部24aが連動孔24bを押し上げる。
【0064】
これにより、ハンマー部材11がハンマー保持部材13のハンマー保持軸25bを中心に
図3において反時計回りに回転して、鍵2にアクション荷重を付与する。すなわち、ハンマー部材11がハンマー保持軸25bを中心に
図2において反時計回りに回転する際には、ハンマー部材11の慣性モーメントによって鍵2にアクション荷重が付与される。この場合、ハンマーアーム27は、
図2に示すように、鍵2の前後方向の長さが伝達部材10の前後方向の長さよりも長く、このハンマーアーム27の前端部にハンマーヘッド26が設けられている。
【0065】
この状態で、ハンマーアーム27のハンマー嵌合部28がハンマー保持軸25bに回転可能に取り付けられているので、ハンマー部材11がハンマー保持軸25bを中心に
図2において反時計回りに回転する際には、ハンマー部材11に慣性モーメントが発生する。この慣性モーメントによる負荷が連動部24および伝達部材10を介して鍵2にアクション荷重として付与される。これにより、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感が得られる。
【0066】
このようにハンマー部材11がハンマー保持軸25bを中心に反時計回りに回転すると、
図3に示すように、ハンマーアーム27のスイッチ押圧部35がスイッチ基板36に設けられたゴムスイッチ38の逆ドーム状の膨出部38aを下側から押圧する。これにより、逆ドーム状の膨出部38aが弾性変形して、膨出部38a内の複数の可動接点が時間間隔をもって順次、複数の固定接点に接触する。
【0067】
このときには、押鍵された鍵2に応じたスイッチ信号が音源部36aに供給され、この音源部36aで楽音データが生成され、この生成された楽音データに基づいて発音部としてのスピーカ(図示せず)から楽音を発生する。そして、ハンマー部材11がハンマー保持軸25bを中心に更に反時計回りに回転すると、
図3に示すように、ハンマーアーム27のストッパ当接部32が上限ストッパ33に下側から当接して、ハンマー部材11の反時計回りの回転が規制されて停止される。
【0068】
この後、鍵2が初期位置に戻る離鍵動作(復帰動作)を開始する。このときには、連動突起部24aが連動孔24bに挿入されて、ハンマー部材11と伝達部材10とが連動部24によって連結された状態で、ハンマー部材11がその自重で時計回りに回転して初期位置に戻ると共に、伝達部材10がその自重およびハンマー部材11の重量によって反時計回りに回転して初期位置に戻る。これにより、鍵2のキャプスタン23が伝達部材10によって押し下げられて、
図2に示すように、鍵2が初期位置に戻る。
【0069】
このように、この電子鍵盤楽器の鍵盤装置1によれば、鍵2の押鍵操作に応じて上下方向に回転する伝達部材10と、この伝達部材10の回転に応じて回転して鍵2にアクション荷重を付与するハンマー部材11と、を備え、ハンマー部材11は、ハンマーアーム27とハンマーヘッド26とを備え、ハンマーアーム27の後端部に設けられたハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28がハンマーヘッド26の後側に配置されているので、鍵2の前後方向におけるハンマー部材11の長さを長くしても、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0070】
すなわち、この鍵盤装置1では、ハンマーアーム27の後端部に設けられたハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28を鍵2の後部上方に配置させることにより、ハンマーアーム27の前後方向の長さを長くしても、ハンマーアーム27の前端部に設けられたハンマーヘッド26を鍵2の前側に向けて配置させることができる。このため、ハンマー部材11を鍵2の後部側に突出させることがなく、ハンマー部材11を鍵2の上方に良好に配置させることができ、これによりハンマー部材11の前後方向の長さを長くしても、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0071】
また、この鍵盤装置1では、伝達部材10が伝達本体部20と回転保持部である伝達嵌合部21とを備え、伝達本体部20の前端部に設けられた伝達回転中心である伝達嵌合部21が伝達本体部20の前側に配置されていることにより、伝達部材10をハンマー部材11の下側にコンパクトに配置させることができる。
【0072】
この場合、ハンマーアーム27は、そのハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28が鍵2の後部上方に配置されていることにより、ハンマーヘッド26を鍵2の前側に向けて配置させることができると共に、ハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28が鍵2の後端部から後方に突出することがないので、ハンマー部材11の前後方向の長さを長くしても、ハンマー部材11を鍵2の上方に確実にかつ良好に配置させることができる。
【0073】
また、伝達部材10は、回転保持部の伝達回転中心である伝達嵌合部21が鍵2を回転可能に支持する鍵支持軸であるバランスピン4a、4bのほぼ上方に配置され、伝達本体部20の後部がハンマーアーム27のハンマー嵌合部28側に配置されていることにより、伝達部材10を鍵2のバランスピン4a、4bと鍵2の後端部との間に対応する箇所に効率良くかつコンパクトに配置させることができる。
【0074】
また、ハンマー部材11を保持するハンマー支持レール15は、その後端部が鍵2の後端部の上方に配置されていることにより、鍵2の後端部よりも後方に突出しないようにハンマー支持レール15を良好に配置させることができ、これによりハンマー支持レール15に保持されるハンマー部材11の後端部を鍵2の後端部よりも後方に突出させずに配置させることができる。
【0075】
すなわち、ハンマー支持レール15は、伝達部材10の後部上方に配置され、このハンマー支持レール15の上部にハンマー保持部材13が配置され、このハンマー保持部材13にハンマー部材11の回転保持部であるハンマー嵌合部28が回転可能に取り付けられていることにより、伝達部材10の後側上部をハンマー嵌合部28の前側に位置するハンマーアーム27の後部側の下側に対応させることができる。
【0076】
このため、この鍵盤装置1では、鍵2の押鍵操作によって伝達部材10が回転した際に、この伝達部材10の後側上部が、ハンマー嵌合部28の前側に位置するハンマーアーム27の後部側を押し上げて、ハンマー部材11を回転させることができるので、ハンマー部材11の慣性モーメントを高めることができ、これにより鍵2にアクション荷重を良好に付与することができる。
【0077】
この場合、ハンマー部材11のハンマーアーム27は、そのハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28からハンマーヘッド26までの長さが、伝達部材10の伝達本体部20の前後方向の長さよりも長いので、鍵2の後端部側から鍵2の前側に向けてハンマーアーム27の長さを十分に長くすることができると共に、ハンマーアーム27の前後方向の長さを長くしても、装置全体が大きくならずに、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0078】
また、ハンマー部材11のハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28は、伝達部材10が鍵2に当接する当接部であるキャプスタン23よりも、鍵2の後部側に配置され、伝達部材10とハンマー部材11とを連動させる連動部24は、鍵2の前後方向におけるハンマー部材11の伝達嵌合部21と鍵2のキャプスタン23との間に配置されていることにより、伝達部材10の回転動作によってハンマー部材11を良好に回転させることができる。
【0079】
すなわち、この鍵盤装置1では、押鍵操作によって伝達部材10が回転する際に、連動部24がハンマーアーム27のハンマー回転中心であるハンマー嵌合部28の近傍を押し上げるため、ハンマー部材11の慣性モーメントを高めることができ、これにより鍵2にアクション荷重を良好に付与することができるので、アコースティックピアノの鍵タッチ感に近似した鍵タッチ感が得られる。
【0080】
さらに、この鍵盤装置1では、伝達部材10を保持する伝達支持レール14が、鍵2をベース板5上に支持する鍵支持軸であるバランスピン4b上に支持されているので、伝達支持レール14を鍵2の上方に確実にかつ強固に支持することができる。これにより、押鍵操作によって伝達部材10が回転してハンマー部材11を回転させる際に、伝達支持レール14の撓みや振動を防ぐことができるので、伝達部材10とハンマー部材11とを安定させた状態で回転動作させることができる。
【0081】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0082】
(付記)
請求項1に記載の発明は、鍵の押鍵操作に応じて上下方向に回転する伝達部材と、前記伝達部材の回転に応じて回転して前記鍵にアクション荷重を付与するハンマー部材と、を備え、前記ハンマー部材は、ハンマーアームとハンマーヘッドとを備え、前記ハンマーアームの一端部に設けられたハンマー回転中心が前記ハンマーヘッドの後側に配置されていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0083】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鍵盤装置において、前記伝達部材は、伝達本体部と回転保持部とを備え、前記伝達本体部の一端部に設けられた前記回転保持部の伝達回転中心が前記伝達本体部の前側に配置されていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0084】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の鍵盤装置において、前記ハンマーアームは、前記ハンマー回転中心が前記鍵の後部上方に配置され、前記伝達部材は、前記回転保持部の前記伝達回転中心が前記鍵を回転可能に支持する鍵支持軸のほぼ上方に配置され、前記伝達本体部の後部が前記ハンマーアームの前記ハンマー回転中心側に配置されていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0085】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ハンマー部材を保持するハンマーレールは、その後端部が前記鍵の後端部の上方に配置されていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0086】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ハンマー部材の前記ハンマーアームは、前記ハンマー回転中心から前記ハンマーヘッドまでの長さが、前記伝達部材の前記伝達本体部の前後方向の長さよりも長いことを特徴とする鍵盤装置である。
【0087】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ハンマー部材の前記ハンマー回転中心は、前記伝達部材が前記鍵に当接する当接部よりも前記鍵の後部側に配置され、前記伝達部材と前記ハンマー部材とを連動させる連動部は、前記鍵の前後方向における前記ハンマー部材の前記ハンマー回転中心と前記鍵の前記当接部との間に配置されていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0088】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記伝達部材を保持する伝達レールは、前記鍵を回転可能に支持する前記鍵支持軸上に支持されていることを特徴とする鍵盤装置である。
【0089】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載された鍵盤装置と、
前記鍵盤装置の前記鍵の操作に応じて楽音を発生させる発音部と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器である。