(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の推定信号値は、前記第1の位相差検出画素の周囲に位置する1つの前記通常画素の前記第1の光電変換層と同一深さに設けられた前記光電変換層の出力信号又は、2つ以上の前記通常画素の前記第1の光電変換層と同一深さに設けられた前記光電変換層の出力信号の平均値で置換され、
前記第2の推定信号値は、前記第2の位相差検出画素の周囲に位置する1つの前記通常画素の前記第2の光電変換層と同一深さに設けられた前記光電変換層の出力信号又は、2つ以上の前記通常画素の前記第2の光電変換層と同一深さに設けられた前記光電変換層の出力信号の平均値で置換される
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0023】
図1に示すブロック図には、本発明の一実施形態である撮像装置の主要な構成が示されている。本図に示す撮像装置100は、撮影光学系110と、撮像素子120と、読出し制御部130と、信号処理部140と、画像処理部150と、カメラCPU160と、ユーザインターフェース(I/F)161と、記録媒体インターフェース(I/F)162と、画像表示部170と、レンズ制御部180と、を備えている。撮影光学系110は、フォーカスレンズ群やズームレンズ群を含む、複数の不図示のレンズ群で構成されている。本図においては、簡単のために1枚のレンズのみ記載している。
【0024】
撮像素子120は、撮影光学系110により集光された光線を受光して光電変換し、画像信号を出力する。本実施形態の撮像素子120としては、CMOSイメージセンサが用いられている。撮像素子120の受光面は多数の画素から構成されている。これらの画素は、その内部において、入射光の波長により光電変換される深さの違いを用いることで、単一画素からRGBの各出力信号を出力可能な垂直色分離型のイメージセンサである。
【0025】
撮像素子120は内部に不図示のゲイン可変アンプ、ゲイン補正回路、A/Dコンバータを備えており、画像信号はデジタルデータとして出力される。また、撮像素子120には後述するように通常画素121と位相差検出画素122とがそれぞれ複数含まれており、それらは所定の配列をもって画素アレイを構成している。
【0026】
読出し制御部130は、撮像素子120の駆動タイミングを決定するための信号を出力する。これにより画素毎の水平駆動並びに垂直駆動が制御され、各画素からRGBの各出力信号が読み出される。撮像素子120から出力された出力信号は信号処理部140内に設けられている不図示のメモリ部に記録される。メモリ部は、この他にも各種データのバッファとして機能する。
【0027】
信号処理部140は撮像素子120から読み出されメモリ部に記録された出力信号に対して各種の信号処理を施す。信号処理としては、例えば、読み出した出力信号を増幅するための増幅処理がある。
【0028】
また、信号処理部140は、後述するように、撮像素子120中の位相差検出画素122からの出力信号を用いることで被写体の最適なピント位置の算出を行う。
【0029】
この信号処理部140は、例えばFPGAやASICといった画像処理を実行するIC(半導体)で構成され、所定のハードウェア処理(専用ハードウェアによる特定のデータ処理)を行うロジック回路である。
【0030】
画像処理部150は、信号処理部140から送られてきた出力信号に対して各種の画像処理を施す。画像処理としては、例えば、出力信号に対するRAWデータ生成やHDR画像生成処理がある。その他にも、ホワイトバランス処理、色再現処理、JPEG形式やTIFF形式の画像データへの現像処理等がある。
【0031】
この画像処理部150は、例えばDSPといった、ソフトウェアによってプログラミングされた所定のデータ処理を実行するプロセッサである。
【0032】
カメラCPU160は、撮像装置100全体の包括的な制御を行う。また、カメラCPU160は、信号処理部140で算出されたピント位置に基づき、不図示のフォーカスレンズ群の必要な移動量を算出する。
【0033】
ユーザI/F161は、例えば、レリーズボタン、電源ボタン、コマンドダイヤル、十字キー等の操作部材を有しており、ユーザがこれらの操作部材を操作すると、カメラCPU160は所定の動作を行う指示を出す。
【0034】
記録媒体I/F162は、カメラCPU160からの指示に基づいて、不図示の記録媒体との間でRAWデータや現像後の画像データの書き込み及び読み出しを行う。この記録媒体は、半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体である。
【0035】
画像表示部170は、撮影画像や不図示の記録媒体から読み出された画像等を表示する。
【0036】
レンズ制御部180は、カメラCPU160において算出されたピント位置までの移動量だけ、撮影光学系110の一部を構成するフォーカスレンズ群を移動させる制御を行う。フォーカスレンズ群の駆動源としてはDCモータ、超音波モータ、リニアモータ等を用いることができる。
【0037】
なお、上述したゲイン可変アンプ、ゲイン補正回路、A/Dコンバータを内蔵していない撮像素子120を採用する場合には、これらのデバイスを個別に搭載すればよい。
【0038】
図2は、撮像装置100に実装される垂直色分離型の撮像素子120の3層のフォトダイオードを単純化して示した断面図である。上述したように、本実施形態の撮像素子120はいわゆる垂直色分離型のイメージセンサであり、簡単には、光電変換層であるところのフォトダイオードが深さ方向に3つ積層されて構成されている。
【0039】
ある画素に光が入射すると、入射光中の青色(B)成分は主に最上層に位置するBフォトダイオード123で光電変換される。同様に、入射光中の緑色(G)成分は主に中間層に位置するGフォトダイオード124で光電変換され、赤色(R)成分は主に最下層に位置するRフォトダイオード125で光電変換される。各層での光電変換により得られた信号値は、出力信号として読み出される。これらの垂直方向の色分離は、撮像素子120の材料として用いるシリコン(Si)の特性を利用したものである。
【0040】
3層のフォトダイオードは、Si基板内部の異なる深さに所定のドープ処理を行うことで形成される。具体的には、Bフォトダイオード123は約0.2〜0.5μmの間の深さに形成され、Gフォトダイオード124は約0.5〜1.5μmの間の深さに形成され、Rフォトダイオード125は約1.5〜3.0μmの間の深さに形成される。従って、本実施形態の撮像素子120はベイヤー型イメージセンサに必須のカラーフィルタが不要でありながら、1つの画素からRGB3色の出力信号を取得することが可能となる。
【0041】
なお、フォトダイオードに換えて、有機物や無機物等により形成され特定の吸収特性を有する光電変換膜を光電変換層として複数積層させた構成としてもよい。また、いずれかの層のフォトダイオードのみ上述の光電変換膜を採用した構成としてもよい。
【0042】
図3(a)は、撮像素子120を被写体側から見た簡易的な上面図であり、一部を拡大したものである。本図中の矩形1つひとつがそれぞれ画素を表しており、正方形は通常画素121、異なる大きさの2種類の長方形はそれぞれ位相差検出画素122を表している。
【0043】
さらに、矩形の形状が各画素の最上層に位置するBフォトダイオード123の形状を表している。
【0044】
本実施形態においては2次元方向に広がるアレイ状の通常画素121中に、位相差検出画素122が離散的に配置されている構成としている。そして、本図に示すように、大きさの異なるBフォトダイオード123b及び123cを有する2種類の位相差検出画素122は撮像素子120の長手方向に隣接して配置されており、これらが位相差検出画素ペア122pを構成している。
【0045】
撮像素子120の受光面には、複数の通常画素121中に所定の周期でこの位相差検出画素ペア122pが配置されている、とも言える。これらの位相差検出画素ペア122pの出力信号から位相差情報を算出することで、被写体のピント位置を得ることができる。
【0046】
図3(b)は、撮像素子120の長手方向の簡易的な断面図である。本図では、簡単のために2つの通常画素121と2つの位相差検出画素122にのみ注目している。以降では、それらの画素を便宜上、画素a〜画素dと呼ぶこととする。
【0047】
各画素の最上面にはマイクロレンズ126が設けられており、被写体からの入射光を効率的にフォトダイオードに導いている。各画素は、上述したように垂直色分離型の構造を有しており、それぞれ3層のフォトダイオードを持つ。
【0048】
例えば、画素aは上層から順にBフォトダイオード123a、Gフォトダイオード124a、そしてRフォトダイオード125aを有しており、それぞれのフォトダイオードからの出力信号が読み出される。出力される各信号をそれぞれBa、Ga、Raと呼ぶこととし、それらを本図中の対応するフォトダイオードに記入している。その他の画素b、c、dについても、同様に出力信号の呼称をそれぞれのフォトダイオードに記入している。
【0049】
画素a及び画素dは通常画素121であり、3層のフォトダイオードがそれぞれ等しい大きさを有している。一方、画素b及び画素cは位相差検出画素122であり、これらが位相差検出画素ペア122pを構成している。
【0050】
画素bは通常画素121と異なり、Bフォトダイオード123bの大きさが通常画素121である画素aのBフォトダイオード123aよりも小さく、約半分の大きさとなっていることがわかる。一方で、画素cのBフォトダイオード123cの大きさは通常画素121のBフォトダイオード123aよりも大きい。
【0051】
本図からもわかるように、画素cのBフォトダイオード123cは隣接する画素b側に延出している。詳しくは、画素cのBフォトダイオード123cは、隣接する画素bのBフォトダイオード123bが縮小することで生じた空間にまで延出するように形成されている。より詳しくは、画素bに設けられたマイクロレンズ126の光軸付近にまで延出している。
【0052】
本実施形態の撮像装置においては、位相差検出画素ペア122pを構成する画素b及び画素cがそれぞれ有する、Bフォトダイオード123b及びBフォトダイオード123cからの出力信号Bb及び出力信号Bcを用いて被写体の位相差情報を生成することとしている。このような構成とすることで、遮光層等を設けずに位相差情報を得ることが可能となる。
【0053】
なお、本実施例においてフォトダイオードの大きさとは、撮像素子120を被写体側から見たときの、Bフォトダイオード123の2次元方向の面積を指すこととする。従って、本図(a)(b)からわかるように、位相差検出画素122のうち画素bでは、通常画素121のものと比較して約半分の大きさのBフォトダイオード123bを有していると言える。また、位相差検出画素122のうち画素cでは、通常画素121のものと比較して約1.5倍の大きさのBフォトダイオード123cを有していると言える。
【0054】
なお、以降では、Bフォトダイオード123bを有する位相差検出画素122(画素b)のことを第1の位相差検出画素122b、Bフォトダイオード123cを有する位相差検出画素122(画素c)のことを第2の位相差検出画素122cと呼ぶ場合もある。本実施例においては、上述した位相差検出画素ペア122pを構成する第1の位相差検出画素122bと第2の位相差検出画素122cの各Bフォトダイオード123からの出力信号に基づいて、信号処理部140において位相差情報を生成する。
【0055】
図4は、信号処理部140内で行われる各種処理を示した模式図であり、信号処理部140は、焦点検出信号推定部141と、重み付け係数算出部142と、焦点検出信号算出部143と、位相差情報算出部144と、を有することを示している。なお、本図では位相差情報の生成に関連する処理部のみ表記している。
【0056】
公知の一般的な構成の位相差検出画素の場合には、位相差情報を生成するために、ペアを構成する2つの右目及び左目画素からそれぞれ得られる出力信号に基づいて被写体の位相差情報が生成される。
【0057】
一方で、本実施形態の撮像素子では、位相差検出画素ペア122pの隣接するBフォトダイオード123b及びBフォトダイオード123cの各出力信号に基づいて、位相差情報の生成に必要な右目信号及び左目信号を算出しなければならない。詳しくは、信号処理部140において、第1の位相差検出画素122bのBフォトダイオード123bからの出力信号Bbをそのまま左目信号BbLとして利用し、また、第1の位相差検出画素122b及び第2の位相差検出画素122cのBフォトダイオード123b及びBフォトダイオード123cからの出力信号Bb及び出力信号Bcに基づいて、左目信号BbLと対応する右目信号BbRを生成する処理を行う。
【0058】
図5は、信号処理部140における位相差演算処理の流れを示したフローチャートである。以降は、本図に基づいて右目信号BbRの生成と位相差情報の算出について詳しく説明する。
【0059】
本フローチャートは、例えば、撮像装置100のユーザI/F161に含まれるレリーズボタンが撮影者によって半押し(ファーストレリーズ)状態とされたことを検知することで開始される。
【0060】
まず、ステップS501では、信号処理部140内の焦点検出信号推定部141において、推定値である信号値Bb’及びBc’を算出する。これらの推定信号値Bb’及びBc’は、第1の位相差検出画素112b及び第2の位相差検出画素122cのBフォトダイオード123b及びBフォトダイオード123cが、それぞれ通常画素121のBフォトダイオード123と同等の大きさであったと想定した場合の、仮想の各Bフォトダイオードからの出力信号である。
【0061】
これらの信号値の推定に関しては、例えば周辺画素との間の色相変化を用いることができる。具体的には、以下の各式(1)により各推定信号値を算出する。
【0063】
ここで、Gb、Ba等の各信号値は上述した
図3で示した信号値を指している。すなわち本推定方法では、注目する位相差検出画素ペア122pと同一行上、かつ、位相差検出画素ペア122pの両隣に位置する通常画素121との間で、各層のフォトダイオードの出力信号の色相変化を用いて推定信号値を算出している。
【0064】
そして、画素aである通常画素121と画素bである第1の位相差検出画素122bとの間で色相が不変であるとの仮定のもと、第1の位相差検出画素122bにおける仮想のBフォトダイオードからの推定信号値Bb’が算出される。また、同様に、画素dである通常画素121と画素cである第2の位相差検出画素122cとの間で色相が不変であるとの仮定のもと、第2の位相差検出画素122cにおける仮想のBフォトダイオードからの推定信号値Bc’が算出される。
【0065】
次に、ステップS502では、焦点検出信号推定部141において、算出された推定信号値Bb’及びBc’から右目信号BbRの推定右目信号値BbR1’と推定右目信号値BbR2’とをそれぞれ算出する。具体的には、以下の各式(2)により各推定右目信号値を算出する。
【0066】
BbR1'=Bb'−Bb ・・・(2a)
BbR2'=Bc−Bc' ・・・(2b)
【0067】
これにより、右目信号BbRの推定右目信号値が2つ得られる。
【0068】
次に、ステップS503では、信号処理部140内の重み付け係数算出部142において、信頼度P1及びP2を算出する。具体的には、以下の各式(3)により各信頼度を算出する。
【0069】
P1=|(Ga−Ra)−(Gb−Rb)| ・・・(3a)
P2=|(Gc−Rc)−(Gd−Rd)| ・・・(3b)
【0070】
ステップS502における信号値の推定がうまく機能する条件としては、推定に利用される通常画素121と位相差検出画素122とが同じ色であることが望ましい。そこで、ステップS503では隣接する画素間の色相を用いて、信頼度の評価を行っている。上記の計算式によれば、色相が類似しているほど信頼度は小さい値となる。
【0071】
次に、ステップS504では、信号処理部140内の重み付け係数算出部142において、重み付け係数S1及びS2を算出する。具体的には、以下の各式(4)により各重み付け係数を算出する。
【0073】
この重み付け係数によれば、ステップS503において算出した信頼度が小さいほどより大きい値となる。
【0074】
次に、ステップS505では、信号処理部140内の焦点検出信号算出部143において、上流ステップにおいて得られた各値から右目信号BbRを算出する。具体的には、以下の式(5)により右目信号BbRを算出する。
【0075】
BbR=S1×BbR1'+S2×BbR2' ・・・(5)
【0076】
この演算式によれば、信頼度に基づいた重み付けによって2つの推定右目信号値から高精度に右目信号BbRを算出することができる。詳しくは、色相の変化の小さかった方の推定右目信号値を混合する割合を大きくし、反対に、色相の変化の大きかった方の推定右目信号値を混合する割合を小さくすることで、高精度な信号算出を可能としている。
【0077】
次に、ステップS506では、信号処理部140内の位相差情報算出部144において、ステップS505で得られた右目信号BbRと、第1の位相差検出画素122b中のBフォトダイオード123bからの出力信号として取得済みの左目信号BbLとから、第1の位相差検出画素122bの位置における位相差情報を算出する。この位相差情報の算出に際しては、公知の演算方法を利用することができる。位相差情報が算出されると、本図に示す位相差演算処理についてのフローチャートが終了する。
【0078】
これらの処理を所定範囲の位相差検出画素122で行い、得られた位相差情報に基づいて、信号処理部140において被写体の最適なピント位置の算出を行う。そして、上述したように、ピント位置についての情報を受け取ったカメラCPU160が、フォーカスレンズ群がそのピント位置に到達するのに必要な移動量を算出する。それを受けてレンズ制御部180がフォーカスレンズ群を移動させる制御を行うことでオートフォーカス処理が完了する。
【0079】
以上で説明したように、本発明の撮像装置によれば、互いに異なる大きさの光電変換層を持つ位相差検出画素ペアにおいて、それらの光電変換層の出力信号から、位相差情報の生成に必要な右目信号と左目信号を算出することとした。このような構成とすることにより、遮光層等を設けずに、高精度に位相差情報を生成することが可能となる。
【0080】
なお、右目信号BbRの算出過程において得られた推定信号値を、画像処理部150におけるRAWデータの生成に用いることができる。すなわち、推定信号値である出力信号Bb’及び出力信号Bc’をそのまま第1の位相差検出画素122b及び第2の位相差検出画素122cの位置における画像用出力信号の補間値として用いることで、専用の補間処理を用意することなく、RAWデータを生成することができる。
【0081】
なお、本発明の実施形態は上述したものに限られるものではない。
【0082】
上述した実施例では、小さいBフォトダイオードを有する位相差検出画素と大きいBフォトダイオードを有する位相差検出画素が左右に隣接する構成としたが、この並び順に限られない。すなわち、左側に大きいBフォトダイオードを有する位相差検出画素、右側に小さいBフォトダイオードを有する位相差検出画素を配置して位相差検出画素ペアとしてもよい。また、撮像素子120上に離散的に配置される位相差検出画素ペアは全て同じ並び順である必要はない。例えば、並び順の異なる位相差検出画素ペアを交互に配置してもよい。
【0083】
また、上述した実施例では、位相差検出画素ペアと同一行上に隣接する通常画素の出力信号と位相差検出画素の出力信号との間の色相変化を利用して推定信号値を算出していたが、これは同一行上に限られない。すなわち、色相変化の比較対象として、例えば、位相差検出画素と上下斜めに隣接する通常画素の出力信号を用いることができる。
【0084】
この場合、上述した式(1)は以下の式(6)に一般化することができる。
【0085】
ここで、m、nはそれぞれ推定信号値Bb’、Bc’の算出に用いられる通常画素の数であり、必要とする推定精度と処理負荷のバランスに応じて任意に設定可能である。例えば、
図3に示した画素bについて上下と左隣りの3つの通常画素を参照して推定信号値を算出する場合であれば、上記の式(6a)においてm=3とすればよい。同様に、画素cについて上下と右隣りの3つの通常画素を参照する場合にも、上記の式(6b)においてn=3とすればよい。また、mとnが同じ値である必要はなく、それぞれを適宜設定することができる。
【0086】
さらに、推定信号値の算出のために、位相差検出画素の周囲に位置する通常画素の出力信号のみを用いることも可能である。例えば、位相差検出画素と上下斜めに隣接する通常画素の出力信号のみを用いることができる。
【0087】
この場合、上述した式(1)の替わりとして、参照対象である各通常画素のBフォトダイオードからの出力信号の単純平均値、又は加重平均値を用いればよい。参照画素の数は任意に設定可能である。参照する通常画素を1つとしたときは、その通常画素のBフォトダイオードの出力信号の値を推定信号値としてそのまま置換すればよい。
【0088】
また、加重平均のための重み付け係数としては、例えば、各参照通常画素と位相差検出画素のそれぞれのBフォトダイオードの面積重心間距離に基づいて設定することができる。
【0089】
また、信頼度の算出において、上述した実施例では隣接する通常画素の出力信号と位相差検出画素の出力信号との間の色相変化を用いて信頼度を評価していたが、これを、出力信号の変化量を用いた信頼度の評価とすることも可能である。詳しくは、信号値の推定がうまく機能するには、推定に利用される通常画素と位相差検出画素とが同じ色であることが望ましい。すなわち、RGBの3出力の変化量が少ないことが望ましいので、隣接する通常画素と位相差検出画素の各フォトダイオードの出力信号の値を直接比較することによって、信頼度を算出することが可能となる。
【0090】
この場合、上述した式(3)に替えて、以下の式(7)により信頼度が求められる。
【0091】
P1=|Ga−Gb|+|Ra−Rb| ・・・(7a)
P2=|Gc−Gd|+|Rc−Rd| ・・・(7b)
【0092】
上記の計算式も上述した式(3)と同様に、信号値の変化量が小さいほど信頼度は小さい値となる。
【0093】
以上で説明したように、本発明に記載の撮像装置及び信号処理方法によれば、通常画素と比べて小さい光電変換層を有する位相差検出画素と、通常画素と比べて大きな光電変換層を有する位相差検出画素のそれぞれの出力信号に基づいて位相差情報の生成に必要な右目信号と左目信号を算出することとした。これにより、生成した出力信号を無駄なく利用することが可能となる。さらに、信頼度に基づく重み付けを行うことで、高精度に位相差情報を生成することが可能となる。