(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857348
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶粉末並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/06 20060101AFI20210405BHJP
A23F 3/12 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
A23F3/06 A
A23F3/06 S
A23F3/12 F
A23F3/06 P
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-4008(P2017-4008)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-110562(P2018-110562A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年10月27日〜28日に茶学術研究会講演会及び日本カテキン学会が主催した「第32回 茶学術研究会講演会、第13回日本カテキン学会年次学術大会 合同大会2016」(会場:静岡県コンベンションアーツセンターグランシップ(静岡県静岡市駿河区池田79−4))において、合同シンポジウム1S1−1「カテキン類の抗骨粗鬆症効果」として発表し、併せてプログラム・要旨集第11頁に公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年8月25日〜27日に日本食品科学工学会が主催した第63会大会講演(会場:名城大学(愛知県名古屋市天白区塩釜口1−501))において、3Ea10「高ビタミンK/EGCg茶(抗ロコモ茶)の骨粗鬆症モデルマウスに対する影響」として発表し、併せて大会講演集第123頁に公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年10月26日に日本茶業学会が主催した「平成28年度日本茶業学会研究発表会」(会場:静岡県コンベンションアーツセンターグランシップ(静岡県静岡市駿河区池田79−4))において、A−4「茶粉末の粒度と人工消化による可溶化率の関係について」と題する発表を行い、併せて講演要旨集(茶業研究報告第122号(別冊))第15頁に公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年10月26日に日本茶業学会が主催した「平成28年度日本茶業学会研究発表会」(会場:静岡県コンベンションアーツセンターグランシップ(静岡県静岡市駿河区池田79−4))において、B−11「遮光栽培による茶葉中ビタミン K、エピガロカテキンガレート含有量の推移」と題する発表を行い、併せて講演要旨集(茶業研究報告第122号(別冊))第44頁に公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年7月15日〜7月28日に東海農政局が主催し、東海農政局(愛知県名古屋市中区三の丸1丁目2−2)で開催された「消費者の部屋」において、「医学的エビデンスのある骨粗鬆症対応商品「抗ロコモ緑茶」とその関連商品の開発」と題するポスター展示を行った。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年8月6日に東海農政局が主催し、オアシス21(愛知県名古屋市東区東桜1丁目11番1号)で開催された「移動消費者の部屋」において、「医学的エビデンスのある骨粗鬆症対応商品「抗ロコモ緑茶」とその関連商品の開発」と題するポスター展示を行った。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 2016年11月11日〜11月12日に、みえリーディング産業展2016実行委員会、株式会社第三銀行、中部電力株式会社、株式会社デンソー、株式会社百五銀行、株式会社三重銀行、三重県漁業協同組合連合会、公益財団法人三重県産業支援センター、三重県商工会議所連合会、三重県商工会連合会、三重県信用金庫協会、三重県中小企業団体中央会、三重県農業協同組合中央会、三重県木材協同組合連合会、国立大学法人三重大学、株式会社三重TLO、三重ハイテクフォーラム、三菱化学株式会社、四日市市、三重県が主催し、四日市ドーム(三重県四日市市羽津甲5169)で開催された「みえリーディング産業展2016」において、「医学的エビデンスのある骨粗鬆症対応商品「抗ロコモ緑茶」とその関連商品の開発」と題するポスター展示を行った。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年12月4日に三重県農業大学校、三重県農業研究所、三重県畜産研究所、三重県中央農業改良普及センター、三重県病害虫防除所、三重県埋蔵文化財センター、公益財団法人三重県農林水産支援センターが主催し、三重県農業研究所(三重県松阪市嬉野川北町530)で開催された「16回農大祭&西山農業祭り」において、「医学的エビデンスのある骨粗鬆症対応商品「抗ロコモ緑茶」とその関連商品の開発」と題するポスター展示を行った。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年12月10日に三重県、(公社)日本茶業中央会、全国茶生産団体連合会、関西茶業協議会、鈴鹿市、いなべ市、四日市市、亀山市、菰野町、津市、松阪市、大台町、多気町、度会町、大紀町、三重県農業協同組合中央会、鈴鹿農業協同組合、三重北農業協同組合、津安芸農業協同組合、三重中央農業協同組合、一志東部農業協同組合、松阪農業協同組合、多気郡農業協同組合、伊勢農業協同組合、全国農業協同組合連合会三重県本部、三重茶農業協同組合、三重県茶商工業協同組合、伊勢茶推進協議会、三重県茶生産青年会、三重県茶業青年団、三重県手もみ茶技術伝承保存会、日本茶インストラクター協会三重県支部、三重県茶業会議所主催し、鈴鹿市文化会館(三重県鈴鹿市飯野寺家町810)で開催された「第70回全国お茶まつり三重大会式典」において、「医学的エビデンスのある骨粗鬆症対応商品「抗ロコモ緑茶」とその関連商品の開発」と題するポスター展示を行った。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)本特許出願は、国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度農林水産省「農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)である。
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】594156880
【氏名又は名称】三重県
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】梅川 逸人
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昌洋
(72)【発明者】
【氏名】原 正之
(72)【発明者】
【氏名】松田 智子
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 卓次
(72)【発明者】
【氏名】西村 奈月
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 充希
(72)【発明者】
【氏名】松ケ谷 祐二
【審査官】
戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】
茶業研究報告,1996年,vol.83,pp.21-28
【文献】
茶業研究報告,2016年,vol.121,pp.9-15
【文献】
七訂食品成分表2016(本表編),2016年,pp.210-211
【文献】
日本食品科学工学会誌,2003年,vol.50, no.10,pp.468-473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−3/42
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Pubmed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶葉粉末の製造方法であって、(1)二番茶およびそれ以降の生育に際し、70%〜90%の遮光を施した状態で3日間〜8日間に渡って栽培を行う第一遮光工程、(2)前記第一遮光工程の後に90%〜99.9%の遮光を施した状態で4日間〜14日間に渡って栽培を行う第二遮光工程、(3)前記第一及び第二遮光工程後に採取した茶葉を1μm〜100μmに粉砕する粉砕工程を備え、1g乾燥質量あたり20μg以上のビタミンK及び60mg以上のエピガロカテキンガレート(EGCg)を含有する茶葉粉末とすることを特徴とする高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶葉粉末の製造方法。
【請求項2】
(3)粉砕工程を実施する前に、(3−a)色彩選別機によって、茎部分を取り除く選別工程を設けた請求項1に記載の高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶葉粉末の製造方法。
【請求項3】
前記(3)粉砕工程において、茶葉を1μm〜50μmに粉砕することを特徴とする請求項2に記載の高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶葉粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶粉末並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本全国には、1,000万人以上の骨粗鬆症患者が存在すると推定されている。骨粗鬆症を患った高齢者が骨折すると、寝たきりにつながるリスクが高まるため、骨の健康維持は非常に重要である。骨を強くするには、基本的に食事と運動が大切である。骨強化に貢献する食品因子として知られているものとして、カルシウム・マグネシウム・ビタミンD・ビタミンKなどの機能性成分がある。
ビタミンKについては、光制御によって農産物中の含有量を増加させようとする研究開発が行われている(特許文献1)。特許文献1には、農産物の栽培中の光量を制限することにより、ビタミンK濃度を向上させる技術が開示されている。
また、茶中には、カテキン(エピガロカテキンなど)やビタミンDが含まれており、これらの成分が生体に及ぼす影響が調べられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−136859号公報
【特許文献2】特開2013−051920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高濃度ビタミンK及びカテキンを含有すると共に生体の吸収率を向上させる技術については、十分に研究開発が行われていなかった。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ビタミンK及びカテキンを高濃度に含有すると共に、生体の吸収率が良好な茶粉末及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者の検討によれば、単位質量あたり所定量のビタミンK及びエピガロカテキンガレート(EGCg)を含有し、所定の大きさを備えた茶葉粉末は、生体への吸収率が良好であることが分かった。また、そのような茶粉末を製造するためには、(ア)二段階で遮光工程を実施することにより、茶葉中のビタミンK及びカテキンの含量を高めると共に、(イ)所定の範囲の茶粉末とすることが重要であることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。
こうして、第一の発明に係る高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶粉末は、1g乾燥質量あたり20μgのビタミンK及び60mgエピガロカテキンガレート(EGCg)を含有し、1μm〜100μmの大きさであることを特徴とする。このとき、茶粉末の大きさは、1μm〜50μmであることが好ましく、1μm〜20μmであることが、更に好ましい。
ビタミンKとして、K1〜K5の5種類が知られている。天然のビタミンKは、2-メチル-1,4-ナフトキノンを基本骨格とし、3位に結合した側鎖の構造に違いがある。このうち、ビタミンK1は、フィロキノン、ファイトメナジオンなどと称され、光合成に使うために合成している。本発明において、ビタミンKとしては、ビタミンK1〜ビタミンK5のいずれを用いても良いが、これらのうちビタミンK1を用いることが好ましい。
動物実験の結果によれば、本発明に係る高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶葉粉末は、ヒト一人あたり、少なくとも3.6g/日以上摂取することにより、効果を認め得ることが分かった。このとき、本発明の茶葉粉末は、適当な添加剤を加えて加工することにより、液剤、ゼリー飲料、飲料、粉末、顆粒、カプセル錠、グミ及びドリンク剤などとして、いわゆる健康食品として提供できる。また、本発明の茶葉粉末は、そのまま又は上記健康食品を含む菓子として提供できる。
【0006】
また、高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶葉粉末の製造方法は、(1)70%〜90%の遮光を施した状態で3日間〜8日間に渡って栽培を行う第一遮光工程、(2)前記第一遮光工程の後に90%〜99.9%の遮光を施した状態で4日間〜14日間に渡って栽培を行う第二遮光工程、(3)前記第一及び第二遮光工程後に採取した茶葉を(直射日光の当たらない通常の室内の光条件、温度条件で)1μm〜100μm(好ましくは1μm〜50μm、更に好ましくは1μm〜20μm)に粉砕する粉砕工程を備えることを特徴とする。
本発明において、前記茶葉は二番茶であることが好ましい。
また、(3)粉砕工程を実施する前に、(3−a)色彩選別機によって、茎部分を取り除く選別工程を設けることが好ましい。
また、第二の発明に係る茶粉末は、上記第一の発明によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ビタミンK及びカテキンを高濃度に含有すると共に、生体の吸収率が良好な茶粉末及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】遮光率・被覆期間の違いによるビタミンK含有量の推移を示すグラフである。(A)一番茶、(B)二番茶、(C)秋番茶の結果をそれぞれ示す。
【
図2】各茶葉中のビタミンKおよびエピガロカテキンガレート(EGCg)含有量を示すグラフである。左:茶期の比較、中:被覆方法の検討、右:色彩選別機による茎除去の効果をそれぞれ示す。
【
図3】各種ミルで調製した茶粉末の可溶化率を示すグラフである。(A)カッティングミル及びサイクロンミルの結果を示すグラフ、(B)ジェットミル及びハンマーミルの結果を示すグラフをそれぞれ示す。
【
図4】可溶化率と体積平均径との関係を示すグラフである。
【
図5】高ビタミンK/EGCg茶粉末(ALTL)がモデルマウスに与える影響を調べた結果を示すグラフである。グラフ中、「*」は、5%で有意差(p<0.05)が認められたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態について、更に詳細に説明する。但し、本発明は、下記実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を変更することなく、様々に変形して実施できる。
1.茶葉の栽培方法の検討
(1)試験方法
茶葉中のビタミンK、エピガロカテキンガレートに注目し、これらの含有量を高める栽培技術の開発を行った。エピガロカテキンガレートの茶葉中含有量についてはすでに多くの研究報告があるが、ビタミンK含有量の変動についてはほとんど知見がなく、系統的にデータを収集した研究は見あたらなかった。
本試験においては、試験圃場にて、以下のスケジュールで茶葉の被覆を行いながら栽培を行い、経時的に新芽を採取した。
(i)遮光率と被覆期間の違いによる茶葉成分含有量の変動
まず、遮光率と被覆期間の違いにより、茶葉中の成分含量の変動を検討するために、茶期及び遮光率・被覆期間を下記のように変化させて検討した。
茶期として、一番茶期、二番茶期及び秋番茶期を検討した。
また、遮光率・被覆期間として、無被覆、60%遮光8日間(短期)、85%遮光8日間、60%遮光14日間及び85%遮光14日間の条件を検討した。
(ii)二段階被覆の検討
次に、二段階被覆の条件を検討するために、茶期及び遮光率・被覆期間を変化させて検討した。
茶期として、一番茶期、二番茶期及び秋番茶期を検討した。
また、遮光率・被覆期間として、無被覆、85%遮光15日間、85%遮光9日間、85%遮光6日間+98%遮光9日間、85%遮光9日間+98%遮光6日間及び98%遮光9日間の条件を検討した。
【0010】
(2)試験結果
表1及び
図1には、遮光率・被覆期間の違いによるビタミンK(ビタミンK1)含有量の推移を示した。また、
図2には、各種被覆を及ぼして茶葉を栽培した後の茶葉中のビタミンK及びカテキン(EGCg)の含量を調べた結果を示した。
【表1】
【0011】
一番茶、二番茶及び秋番茶のそれぞれにおいて、ビタミンKの含有量は、遮光率が高く被覆期間が長いほど高くなった(
図1)。ビタミンKは、茶期別では二番茶が一番多くなることが明らかになった(
図2左)。また、遮光方法別では、85%6日間+98%9日間遮光で特にビタミンK含有量が高まり、一方、エピガロカテキンガレート含有量は遮光によって変動が少なく、被覆による影響は少ないと考えられた(
図2中央)。
また、部位別ではビタミンK・エピガロカテキンガレートともに茎の含有量は少ないので、色彩選別機によって茎を避けることで、両方の含有量が高まることが明らかになった(
図2右)。
上記結果により、生体試験を行うための茶葉として、「二番茶・85%6日間+98%9日間遮光・色彩選別有り」を用いるのが良いと考えた。
【0012】
2.茶粉末の粒度と可溶化率の検討
(1)試験方法
次に、ビタミンK等を効率よく吸収できる茶の形態を明らかにするための検討を行った。
茶葉の粉砕には、カッティングミル、サイクロンミル、ハンマーミル及びジェットミルを用いた。カッティングミルとサイクロンミルで粉砕した粉末については、それぞれ目開き500μmの篩に供し、篩上を500μm上のサンプルとした。この篩下を更に250μmの篩に供し、この篩上を500μm下のサンプルとした。この篩下を更に100μmの篩に供し、この篩上を250μm下のサンプルとした。また、篩下を100μm下のサンプルとした。それぞれのサンプルについて、日本食品標準成分表分析マニュアルに準じた方法でビタミンKを抽出し、含有量を測定した。
また、各サンプルに対し、人工消化試験を実施し、メンブレンフィルターを通した後の消化液からビタミンKを抽出した(Nagao A et al, Biosci. Biotechnol. Biocem. 77(5), 1055-1060, 2013)。この方法によって、腸管からの吸収が可能な形態、すなわち可溶化されたビタミンK量を測定できる。測定結果から、ビタミンK試薬の消化液中量/添加量=可溶化率を100%としたときの各茶粉末の可溶化率を算出した。一方、各茶粉末をレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置に供し、粒子径分布を測定した。
【0013】
(2)試験結果
表2には、茶葉をサイクロンミル、ジェットミル及びハンマーミルで粉砕処理したときの体積平均径、面積平均径及びメディアン径を示した。
【表2】
また、表3には、粒子径分布の代表的な指標である体積平均径、面積平均径及びメディアン径と可溶化率の相関係数を示した。各指標と可溶化率とは、非常に高い相関を示した。
【表3】
【0014】
また、
図3には、各種ミルで茶粉末を調製したときの可溶化率を示した。カッティングミルとサイクロンミルを用いた場合には、茶粉末の粒子径が小さい方が可溶化率が高くなった(
図3(A))。また、ジェットミルとハンマーミルでは、ジェットミルは63%、ハンマーミルは55%の可溶化率を示した(
図3(B))。
図4には、可溶化率と体積平均径の関係を示したグラフを示した。
上記結果より、茶粉末は体積平均径として、4.9μm〜100μmの粒子径において、ビタミンKの腸管からの吸収効率が50%以上に高くなることが分かった。
【0015】
3.動物実験による検討
(1)試験方法
次に、高ビタミンK/EGCg茶(「抗ロコモ緑茶」。二番茶、85%6日間+98%9日間遮光・色彩選別有り。)をグラインダーで粉末化し、1μm〜100μmの粉末としたALTLがモデルマウスに与える影響を調べた。
ALTL中に含まれるビタミンK1及びカテキン類の含量をHPLCで測定した後、卵巣摘出術(OVX)を施した12週齢C57BL/6系雌性マウスに投与し、骨密度に対する影響を調べた。
試験飼料として、AIN-93配合飼料にALTLを混合したものを用い、卵巣摘出群(CNT)、卵巣疑似手術群(Sham)、0.1, 0.03% ALTL投与群及び0.03%の抗ロコモ緑茶粉末と同量のビタミンK1試薬を添加した群(0.03%VK1)及び0.03%の抗ロコモ緑茶粉末と同量のエピガロカテキンガレートを含む茶煎出液凍結乾燥物を添加した群(0.03% ALTE)の各群を4週間飼育後、マイクロCTを用いて骨解析を行った。
【0016】
(2)試験結果
ALTLには、ビタミンKが34.7μg/g、エピガロカテキンガレートが79.8mg/g、その他のカテキン類EC・EGC・ECgがそれぞれ9.1・36.6・14.4mg/g、カフェインが38.1mg/g含まれていた。
図5には、動物実験の結果を示した。骨密度が低下する閉経後女性モデルの卵巣摘出マウスにおいて、餌に重量比0.1%の抗ロコモ緑茶粉末を添加した群(0.1%ALTL)及び0.03%の抗ロコモ緑茶粉末を添加した群(0.03%ALTL)では、卵巣を摘出せず骨密度が低下しない群(Sham)と同等の骨密度が維持された。一方、0.03%の抗ロコモ緑茶粉末と同量のビタミンK試薬を添加した群(0.03%VK1)及び0.03%の抗ロコモ緑茶粉末と同量のエピガロカテキンガレートを含む茶煎出液凍結乾燥物を添加した群(0.03%ALTE、ビタミンKは親油性のため煎出液には含まれない)では、茶粉末ほどは骨密度の低下が抑制できなかった。このため、ビタミンK・エピガロカテキンガレートの両方が骨密度低下抑制に貢献していると考えられた。
また、0.03%の茶粉末を添加した群(0.03%ALTL)では、骨密度の低下が抑制できたことから、ヒトにおける抗ロコモ緑茶粉末の摂取量は、一日当たり1g〜10g程度(好ましくは、2g〜6g程度)であると考えられた(なお、最終的な抗ロコモ緑茶の成分量によっては、多少変動する可能性があり得る)。
【0017】
4.高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶粉末を用いた食品の製造
本実施形態により生産された高濃度ビタミンK及びカテキン含有茶粉末(以下、単に「茶粉末」という)については、そのまま或いは次のようにして食品として提供できる。
茶粉末をそのまま、或いは適当な添加剤(ショ糖、乳糖、結合剤、果汁、香料など)を添加したものを打錠機で圧縮成形することにより、タブレットを製造できる。タブレットを作製するときの用量として、動物実験の結果から、ヒトでは1日あたり3.6gと計算できる。この数値に基づき、タブレットを作製する場合には、1錠〜5錠/回×3回/日として、3錠〜15錠/日の用量とすることができる。
その他、茶粉末に適当な試料を添加することにより、液剤、ゼリー飲料、飲料、粉末、顆粒、カプセル錠、グミ及びドリンク剤など、並びにこれらを含む菓子などの食物を提供できる。
このように、本実施形態によれば、ビタミンK及びカテキンを高濃度に含有すると共に、生体の吸収率が良好な茶粉末及びその製造方法を提供できた。