【実施例】
【0014】
図1は実施例に係るスクラバーの正面図である。
図1に示すとおり、実施例に係るスクラバーは、上側ロール1、下側ロール2、上側ロールの両端側に設置されている上側ロール支持機構3−1,3−2、下側ロールの両端側に設置されている下側ロール支持機構4−1,4−2、上側ロール支持機構3−1,3−2を昇降させる上側ロール昇降機構5−1,5−2、下側ロール支持機構4−1,4−2を昇降させる下側ロール昇降機構6−1,6−2、上側ロール1をロール軸周りに回転させる上側ロール回転機構7並びに下側ロール2をロール軸周りに回転させる下側ロール回転機構8を備えている。
そして、これらの機構等は、基台9の上面に据え付けた機枠10の上に、それぞれ設置されている。
なお、
図1には上側ロール1と下側ロール2等からなる1組のスクラバーのみを示してあるが、実際には前後方向(圧延材の流れ方向)に複数組のスクラバーを配置している。
【0015】
図2、3は実施例に係るスクラバーの左側面図である。
なお、
図2は上側ロール1及び下側ロール2が退避位置にある時の左側面図、
図3は上側ロール1及び下側ロール2が近接位置にある時の左側面図である。
以下では、
図1〜3を用いて本発明に係るスクラバーの各機構を詳細に説明する。
(1)上側ロール支持機構3−1,3−2
下部に上側ロール1を回転可能に支持する上側ロール支持部11と補助車輪12を備え、側部に上側ガイドローラ13を備え、上部に2つの上側車輪14を備える上側チョック15からなっている。
(2)下側ロール支持機構4−1,4−2
上部に下側ロール2を回転可能に支持する下側ロール支持部16を備え、側部に下側ガイドローラ17を備え、下部に2つの下側車輪18と下側ロッド挿入部19を備える下側チョック20からなっている。
【0016】
(3)上側ロール昇降機構5−1,5−2
下端にフランジ部21を有する上側ロッド22、フランジ部21の上に設置されるリング状のスプリング23、上側ロール1の両側にあるスプリング23の上に掛け渡される2本の上側レール24を備え、上側ロッド22、スプリング23及び2本の上側レール24は、上側チョック15の上部にある開口部内に、上側レール24の上面が上側車輪14に接触するとともに、上側ロッド22の下端面がスプリング23のバネ力によって上側チョック15に接触する状態となるように配置されている。
また、上側ロッド22の上端には上側アクチュエータ25の下端が接続され、上側アクチュエータ25の上端は上側ジャッキ26の下面に接続されている。
そして、上側アクチュエータ25は、上側昇降モータ27の作動又は上側昇降ハンドル28の操作によって内圧が制御され、その内圧に応じて伸縮し上側ロッド22の上下位置を調整できるようになっている。
さらに、上側アクチュエータ25の両側の上側ロール支持機構3−1,3−2の真上にはストッパ29が設置されており、上側チョック15には、ストッパ29の真下に当たる位置に突片30が設けてある。
なお、少なくとも上側アクチュエータ25が最も縮んだ状態においては、突片30がストッパ29とぶつかり、上側ロッド22がそこからさらに2、3mm上方に移動して、上側チョック15との接触状態が解除されるようになっており、最も伸びた状態においては、上側ロール1と下側ロール2が接するようになっている。
【0017】
(4)下側ロール昇降機構6−1,6−2
上端にフランジ部31を有する下側ロッド32、下側ロッド32の下端に接続される下側アクチュエータ33、下側アクチュエータ33の下端に接続される下側ジャッキ34を備えている。
そして、下側アクチュエータ33は、下側昇降モータ35の作動又は下側昇降ハンドル36の操作によって内圧が制御され、その内圧に応じて伸縮して下側ロッド32の上下位置を調整できるようになっている。
なお、少なくとも下側アクチュエータ33が最も縮んだ状態においては、2つの下側車輪18が、それぞれ2本の下側レール37の上に載置されるようになっており、最も伸びた状態においては、上側ロール1と下側ロール2が接するようになっている。
(5)上側ロール回転機構7及び下側ロール回転機構8
図1に示すとおり、上側ロール回転機構7は、上側ロール1の一端(
図1では右端)に嵌合可能な上側回転体38、上側回転体38の一端にジョイント部を介して接続される上側回転伝達体39及び上側回転伝達体39の一端にジョイント部を介して接続される上側ロール駆動モータ40を備えている。
また、下側ロール回転機構8も、上側ロール回転機構7と同様に、下側ロール2の一端(
図1では右端)に嵌合可能な下側回転体41、下側回転体41の一端にジョイント部を介して接続される下側回転伝達体42及び下側回転伝達体42の一端にジョイント部を介して接続される下側ロール駆動モータ43を備えている。
このような構成となっているため、上側ロール駆動モータ40や下側ロール駆動モータ43を移動させることなく、上側ロール1及び下側ロール2を上側ロール昇降機構5−1,5−2及び下側ロール昇降機構6−1,6−2により自由に昇降させることができる。
【0018】
次に、
図2、3のみに示されている本発明の第2の課題である上側ロール支持機構3−1,3−2並びに下側ロール支持機構4−1,4−2の前後方向(圧延材の流れ方向)における振動の抑止に関係する構成について詳細に説明する。
(6)上側ロール支持機構の振動抑制装置
図2、3中、上側ガイドローラ13の側方(
図1では右側)に記載されている部分が、上側ロール支持機構の振動抑制装置であり、スクラバーの上流側(
図2、3では右側)にある機枠10から、上側ロール支持機構3−1,3−2に向かってほぼ垂直に延びる上側固定片44と、上側固定片44に回動自在に固定され上側が狭く下側が太く形成されるとともに、下側の左端に折り曲げ部を有する上側ガイド部材45と、下側の折り曲げ部を上側バネ46によって上側ガイドローラ13の方向へ付勢する上側付勢部材47とからなっている。
【0019】
(7)下側ロール支持機構の振動抑制装置
図2、3中、下側ガイドローラ17の側方(
図1では右側)に記載されている部分が、下側ロール支持機構の振動抑制装置であり、スクラバーの上流側(
図2、3では右側)にある機枠10から、下側ロール支持機構4−1,4−2に向かってほぼ垂直に延びる下側固定片48と、下側固定片48に回動自在に固定され下側が狭く上側が太く形成されるとともに、上側の左端に折り曲げ部を有する下側ガイド部材49と、上側の折り曲げ部を下側バネ50によって下側ガイドローラ17の方向へ付勢する下側付勢部材51とからなっている。
これらの振動抑制装置は、このような構成となっているため、上側ロール1と下側ロール2が近接している状態(
図3:圧延材に付着している異物を除去する作業が実施可能な状態)においては、上側ガイドローラ13と上側ガイド部材44並びに下側ガイドローラ17と下側ガイド部材48が接触し、作業実施時に発生する振動を抑制することができる。
また、上側ロール1と下側ロール2が退避している状態(
図2:上側ロール1又は下側ロール2を交換する作業が実施可能な状態)においては、上側ガイドローラ13と上側ガイド部材44並びに下側ガイドローラ17と下側ガイド部材48が離間し、上側ロール1等又は下側ロール2等を引き抜くに際して、上側ガイドローラ13や下側ガイドローラ17が上側ガイド部材44や下側ガイド部材48に引っ掛かってしまうことがない。
【0020】
最後に、上側ロール1及び下側ロール2を交換する際の作業手順について説明する。
(手順1)
図3の状態において、上側昇降モータ27及び下側昇降モータ35を作動させ、上側ロール支持機構3−1,3−2を上昇、下側ロール支持機構4−1,4−2を下降させて、上側ロール1及び下側ロール2を退避させる。
(手順2)上側昇降ハンドル28を操作して上側ロッド22を上昇させ、上側ロッド22の下端を上側チョック15の上面から2mmほど離間させる。
また、下側昇降ハンドル36を操作して下側ロッド32を上昇させ、下側ロッド32のフランジ部31と下側ロッド挿入部19との間に、上側で2mmほど、下側で3mmほどの隙間ができるように調整し、
図2の状態とする。
(手順3)上側レール24及び下側レール37の前方(
図1では左側)に、それぞれ延長レール(図示せず)を接続する(延長レールを載せた台車を横付けして接続する)。
【0021】
(手順4)上側チョック15及び下側チョック20を前方に引くと、上側ロール1の一端と上側回転体38との嵌合状態及び下側ロール2の一端と下側回転体41の嵌合状態は解除され、上側車輪14及び下側車輪18が、それぞれ上側レール24及び下側レール37の上面をころがる。
そして、(手順2)で説明したとおり、上側ロッド22と上側チョック15との間並びに下側ロッド32のフランジ部31と下側ロッド挿入部19との間には、それぞれ隙間ができるように調整してあり、上側ロッド22や下側ロッド32は邪魔になることがないので、上側ロール1と上側ロール支持機構3−1,3−2及び下側ロール2と下側ロール支持機構4−1,4−2を、スクラバー本体から容易に引き抜くことができる。
(手順5)上側チョック15及び下側チョック20をさらに引き、上側車輪14及び下側車輪18は上側レール24及び下側レール37から、それぞれに接続した延長レールへ移動させ、全ての上側車輪14及び下側車輪18が延長レール上面に載るまで移動させる。
そうすると、上側レール24と延長レールとの接続及び下側レール37と延長レールとの接続を外せば、上側ロール1と上側ロール支持機構3−1,3−2及び下側ロール2と下側ロール支持機構4−1,4−2を、台車に載せて自由に移動できるようになる。
【0022】
(手順6)一方の上側ロール支持機構(例えば3−1)を上側ロール1から外し、さらに他方の上側ロール支持機構(例えば3−2)から上側ロール1を外す。その作業に当たっては、他方の上側ロール支持機構は台車に仮止めしておいた方が作業し易い。
同様に、一方の下側ロール支持機構(例えば4−1)を下側ロール2から外し、さらに他方の下側ロール支持機構(例えば4−2)から下側ロール2を外す。
(手順7)新しいロールを新たな上側ロール1として、台車に仮止めしてある他方の上側ロール支持機構に取り付ける。そして、一方の上側ロール支持機構の車輪14を上側レール24の延長レール上に載置し、スライドさせて新たな上側ロール1に取り付ける。
同様に、新しいロールを新たな下側ロール2として、台車に仮止めしてある他方の下側ロール支持機構に取り付け、一方の下側ロール支持機構の車輪18を下側レール37の延長レール上に載置し、スライドさせて新たな下側ロール2に取り付ける。
【0023】
(手順8)台車をスクラバー本体に隣接させ、上側レール24と延長レール及び下側レール37と延長レールとを接続した後、仮止めを外す。
そして、上側ロール1と上側ロール支持機構3−1,3−2を、延長レールから上側レール24へと押し込んでスクラバー本体にセットし、同様に下側ロール2と下側ロール支持機構4−1,4−2を、延長レールから下側レール37へと押し込んでスクラバー本体にセットする。
(手順9)上側昇降モータ27及び下側昇降モータ35を作動させ、上側ロール支持機構3−1,3−2を下降、下側ロール支持機構4−1,4−2を上昇させて、上側ロール1及び下側ロール2を
図3の状態となるまで近接させる。
以上が上側ロール1及び下側ロール2を交換する際における作業手順の説明であるが、いずれか一方のロール(例えば上側ロール)のみの交換でよければ、各手順で交換する側(上側)に対する作業のみを行い、交換しない側(下側)に対する作業は省略すれば良い。
【0024】
実施例に係るスクラバーの変形例を説明する。
(1)実施例においては、上側ロール支持機構3−1,3−2の上部に上側車輪14を設け、下側ロール支持機構4−1,4−2の下部に下側車輪18を設けたが、車輪は各支持機構の退避位置においてレール上に載置できる位置であれば何処に設けても良い。
また、車輪に代えてフッ素樹脂等よりなる低摩擦部材を各支持機構に設け、低摩擦部材がレールに接した後には、各支持機構がレール上で容易に動かせるようにしても良い。
そこで、本明細書では、車輪及び低摩擦部材を総称してスライド部材と呼ぶこととする。
(2)実施例の説明では、上側車輪14を用いて上側ロール支持機構3−1,3−2を上側レール24に沿って引き抜くものとしたが、補助車輪12を用いて上側ロール支持機構3−1,3−2を下側レール37に沿って引き抜くこともできる。
すなわち、下側ロール2及び下側ロール支持機構4−1,4−2が引き抜かれた後に、上側ロール支持機構3−1,3−2を補助車輪12が下側レール37に載置されるまで下げ、上側ロール1及び上側ロール支持機構3−1,3−2を下側レール37に沿って引き抜けば良い。
そして、上側車輪14を用いて上側ロール支持機構3−1,3−2を引き抜くだけで良ければ補助車輪12は不要であり、補助車輪12を用いて上側ロール支持機構3−1,3−2を引き抜くだけで良ければ、上側車輪14、上側レール24、スプリング23等は不要となり、代わりに下側ロッド挿入部19と同様の形状の上側ロッド挿入部を設けるとともに、上側ロール支持機構3−1,3−2を昇降させる上側ロール昇降機構5−1,5−2の昇降範囲を大きくする。
【0025】
(3)実施例の作業手順についての説明では、延長レールを載せた台車をスクラバーに横付けして、上側レール24及び下側レール37に延長レールを接続したが、上側レール24や下側レール37と連続する面を設けたり、上側ロール支持機構3−1や下側ロール支持機構4−1を保持可能にしたりすれば、上側車輪14が上側レール24から出てきた時又は下側車輪18が下側レール37から出てきた時に、上側ロール支持機構3−1や下側ロール支持機構4−1が落下することはなくなるので、延長レールはなくても良い。
また、延長レールを載せた台車を用いずに、スクラバーの機枠10に着脱自在又は折り畳み自在に設置しても良く、上側レール24及び下側レール37自体を前方に延ばせるようにしても良い。