【文献】
Norm P. Nantel et al.,Design optimization of a transducer for magnetomyography,Annual international conference of the IEEE engineering in medicine and biology society,1991年,vol.13, no.4, pp.1709-1710
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁気センサ部の感磁方向と、検知対象となる生体の筋線維の延在方向とが略直交するように、請求項1に記載の筋活動測定装置を前記生体の体表面に配置する、筋活動測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の筋活動測定装置であっても、磁界変化の測定精度を高めるという点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、検知対象の筋活動をより精度よく測定することの可能な筋活動測定装置及び筋活動測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、筋活動に対する筋磁界は、筋線維に対して略垂直方向に生じていることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明は、筋活動測定装置であって、生体から生じる磁界を検知する磁気センサ部と、前記筋活動測定装置の設置方向を識別する識別手段とを備え、前記識別手段は、前記磁気センサ部の感磁方向と、検知対象となる生体の筋線維の延在方向とが略直交して前記筋活動測定装置を設置するための識別情報を有する、筋活動測定装置である。
【0010】
(2)本発明は、筋活動測定装置であって、生体から生じる磁界を検知する磁気センサ部と、前記筋活動測定装置の設置方向を識別する識別手段とを備え、前記識別手段は、前記磁気センサ部の感磁方向と、検知対象となる生体の筋活動に対する筋磁界の方向とが略一致するように前記筋活動測定装置を設置するための識別情報を有する、筋活動測定装置である。
【0011】
(3)また、本発明は、前記磁気センサ部によって検知された信号に基づき生体磁気情報を生成する演算部と、前記演算部で生成された生体磁気情報を外部に無線で送信する無線モジュールと、前記磁気センサ部、前記演算部及び前記無線モジュールに電力を供給する電力供給部とをさらに備える、(1)又は(2)に記載の筋活動測定装置である。
【0012】
(4)また、本発明は、基板と、前記基板を収容する収容体をさらに備え、前記磁気センサ部は、前記基板の一方の面に取り付けられ、前記演算部及び前記無線モジュールは、前記基板の他方の面に取り付けられ、前記識別手段は、前記収容体の表面に設けられる、(3)に記載の筋活動測定装置である。
【0013】
(5)また、本発明は、前記識別手段は、前記収容体の表面における前記筋活動測定装置の設置方向の表示を含む、(4)に記載の筋活動測定装置である。
【0014】
(6)また、本発明は、前記識別手段は、前記収容体の形状を含む、(4)又は(5)に記載の筋活動測定装置である。
【0015】
(7)また、本発明は、前記収容体は、矩形状又は楕円形状である、(6)に記載の筋活動測定装置である。
【0016】
(8)また、本発明は、前記収容体の短手方向が前記磁気センサ部の感磁方向と略一致する、(7)に記載の筋活動測定装置である。
【0017】
(9)本発明は、前記磁気センサ部の感磁方向と、検知対象となる生体の筋線維の延在方向とが略直交するように、(1)に記載の筋活動測定装置を前記生体の体表面に配置する、筋活動測定方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検査対象の筋活動をより精度よく測定することの可能な筋活動測定装置及び筋活動測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0021】
<第1の実施形態>
〔筋活動測定装置1〕
図1は、第1の実施形態に係る筋活動測定装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る筋活動測定装置1は、
図1に示すように、生体から生じる磁界を検知する磁気センサ部11と、磁気センサ部11によって検知された信号に基づき生体磁気情報を生成する演算部12と、演算部12で生成された生体磁気情報を外部の外部装置に無線で送信する無線モジュール部13と、演算部12と無線モジュール部13とに電力を供給する電力供給部14とを備える。
【0022】
[磁気センサ部11]
磁気センサ部11は、生体から生じる筋磁界を検知する。磁気センサ部11に用いられる磁気センサとしては、巨大磁気抵抗センサ(GMRセンサ)、トンネル磁気抵抗センサ(TMRセンサ)、異方的磁気抵抗センサ(AMRセンサ)、磁気インピーダンスセンサ(MIセンサ)、フラックスゲートセンサ等が挙げられる。本実施形態で使用される磁気センサは、10
−4T(テスラ)〜10
−10T(テスラ)程度の磁界を検出することができれば、いずれの磁気センサであってもよい。
【0023】
ここで、磁気センサ部11で用いられる磁気センサは、感度が最大となる方向、いわゆる感磁方向を有する。例えば、
図2に示すように、「感磁方向」は、磁気センサ部11のA方向の磁界に対する感度をS
A、B方向の磁気に対する感度をS
B、C方向の磁気に対する感度をS
Cとした場合、A、B、C方向のうち、感度S
A、S
B、S
Cが最大となる方向を「感磁方向」とする。なお、A、B、C方向は互いに直交する任意の方向である。
【0024】
[演算部12]
演算部12は、磁気センサ部11によって検知された信号に基づき生体磁気情報を生成する。例えば、演算部12は、磁気センサ部11から出力された周期信号をデジタルデータに変換するAD変換部12Aと、AD変換部12Aで変換されたデジタルデータを一時的に記録する記録部12Bと、記録部12Bに記録されたデジタルデータを演算処理し、生体磁気情報を生成する制御部12Cとを備える。
【0025】
演算部12で制御部12Cが行う演算処理方法は、特に制限されないが、加算平均処理、移動平均処理、ウイナーフィルター処理等が挙げられる。環境磁気等のノイズを低減しやすい点から、加算平均処理が好ましい。
【0026】
[無線モジュール部13]
無線モジュール部13は、演算部12で生成された生体磁気情報をアンテナ18から外部装置に無線で送信する。例えば、無線モジュール部13は、演算部12で生成された生体磁気情報を電波信号に変調する変調器、電波信号を外部装置に送信するアンテナ18等を備える。
【0027】
上述した磁気センサ部11は、信号授受や電力供給のための配線を有していてもよい。だだし、磁気センサ部11に外部への信号授受のための配線を設置すると、配線の煩雑さによる準備時間拡大等が懸念される。筋活動測定装置1が脊髄・神経機能モニタリングの用途に使用される場合には、迅速さが要求される。よって、本実施形態に係る筋活動測定装置1において、磁気センサ部11の検知結果は、無線モジュール部13により外部装置に送信されることが好ましい。
【0028】
[電力供給部14]
電力供給部14は、演算部12と無線モジュール部13に電力を供給することができれば、特に制限されないが、リチウム電池等の小型軽量電池が好ましく用いられる。
【0029】
[外部装置]
外部装置は、図示しないが、筋活動測定装置1の無線モジュール部13からアンテナ18を介して送信されたデータを受信する受信部と、受信部により受信されたデータをディスプレイやスピーカに出力する出力部と、測定者からの入力情報を処理するキーやボタン、タッチパネルで構成される操作部と、筋活動測定装置1の各部を制御する制御部と、受信した情報を蓄積し無線モジュール部13を制御するプログラムを記憶している記録部等で構成される。これにより、測定者は、外部装置から筋活動測定装置1を操作することができ、外部装置にて筋活動測定装置1から生体磁気情報を得ることができる。
【0030】
ところで、上述した筋活動測定装置1は、検知対象である生体への設置方向を識別する識別手段を備える。識別手段は、磁気センサ部11の感磁方向Xと、検知対象となる生体の筋線維の延在方向とが略直交して筋活動測定装置1を設置するための識別情報を有する。この識別手段の形態は、特に制限されるものではないが、例えば、磁気センサ部11を収容する収容体20の表面に設けられる識別情報であってもよい。この識別情報としては、例えば、収容体20の表面における筋活動測定装置1の設置方向の表示24が挙げられる。
【0031】
以下、収容体20の構成及び表示24について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る筋活動測定装置を表側から見た状態を説明する図であり、(a)は、蓋板を開けた状態の収容体の様子を説明する斜視図であり、(b)は、収容体内に収容される基板の表面の様子を説明する平面図である。
図4は、第1の実施形態に係る筋活動測定装置を裏側から見た場合の状態を説明する図であり、(a)は、蓋板を開けた状態の収容体の裏側の様子を説明する斜視図であり、(b)は、収容体内の収容される基板の裏面の様子を説明する底面図である。
【0032】
[収容体20]
収容体20は、
図3及び
図4に示すように、略正方形状の基板21を収容する収容体本体(底板を含む)22と、収容体本体22の開口を閉塞する略正方形状の蓋板23とから構成される。収容体20の形状は特に制限されず、正方形以外の矩形状、楕円形状であってもよい。ここで、収容体20の形状とは、収容体本体22の開口形状、すなわち蓋板23の形状を指すものとする。第1の実施形態では、収容体20の開口形状、すなわち蓋板23の形状が略正方形状である場合について説明する。
【0033】
また、収容体20は、磁気センサ部11、演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13、及び電力供給部14を収容する。磁気センサ部11は、検知対象となる生体の磁気を検知しやすいように、収容体本体22を介して生体に対向する基板21の裏面21aに設置するのが好ましい。ここで設置される磁気センサ部11は、長手方向が感磁方向Xとなる。演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13、及び電力供給部14は、基板21の表面21bに取り付けられることが好ましい。演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13及び電力供給部14は、微小ながらも電磁波等の磁気ノイズを発生することがある。そのため、この検出方向以外からの磁気ノイズの影響が大きい場合には、磁気を遮蔽できる基板21を設置してもよい。収容体本体22は、底板を有していなくてもよいが、収容体本体22の強度の点から、底板を有しているのが好ましい。
【0034】
なお、磁気センサ部11と同一面上に、演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13及び電力供給部14を配置し、磁気センサ部11に演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13及び電力供給部14からの磁気ノイズが及ばないようにしてもよい。ただし、筋活動測定装置1の小型化の点では、上述したように、基板21の表裏面に各部材を設置するのが好ましい。磁気センサ部11、演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13及び電力供給部14の基板21上における設置箇所は、特に制限されないが、生体上に設置する時の安定性から、筋活動測定装置1の重心位置を考慮することが好ましい。
【0035】
基板21の材質は、演算部12、無線モジュール、電力供給部が発生する磁気ノイズが筋磁界に対する影響を及ばさないように、これら環境磁気を遮蔽できる材料であることが好ましい。例えば、高透磁率材料であるパーマロイ、フェライト、センダスト、Co系アモルファス材料等が挙げられる。
【0036】
収容体本体22の材質は、生体の筋活動に伴って生じる磁界を遮蔽しなければ、特に制限はされないが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等の材料が好ましく挙げられる。
【0037】
[表示24]
表示24は、
図3に示すように、収容体20の蓋板23上に設けられ、収容体本体22に収容される磁気センサ部11の感磁方向Xと略直交する方向に延在する表示線である。表示24は、測定者が識別できれば、その形態は特に限定されるものではなく、蓋板23に付される線状の印であってもよいし、線状の凸部であってもよいし、文字情報であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。また、表示24は、印や文字情報が印刷されたシール部材が添付されたものであってもよい。
【0038】
筋活動測定装置1がこのような表示24を有することにより、測定者は、筋活動測定装置1(収容体20)の設置方向を容易に認識することができる。その結果、筋活動測定装置1は、検知対象の筋活動をより精度よく測定することができる。
【0039】
〔筋活動測定方法〕
本実施形態に係る筋活動測定方法は、磁気センサ部11の感磁方向Xと、検知対象となる生体100の筋線維の延在方向とが略直交するように、筋活動測定装置1を生体100の体表面に配置する方法である。
【0040】
図5は、第1の実施形態に係る筋活動測定方法を説明する模式図である。
図5に示すように、収容体20には、磁気センサ部11の感磁方向Xと直交する方向に表示24が付されている。測定者は、生体100の体表面に筋活動測定装置1(収容体20)を設置する際、表示24に基づいて設置方向を容易に識別することが可能で、収容体20の表示24が筋線維の延在方向と略一致するように、収容体20を設置する。その結果、筋活動測定装置1(収容体20)は、磁気センサ部11の感磁方向Xが生体100の筋線維の延在方向と略直交するように設置されるため、筋磁界を高い感度で検出することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
〔筋活動測定装置1’〕
第2の実施形態に係る筋活動測定装置1’は、筋活動測定装置1’の設置方向を識別する識別手段が異なる以外は、第1の実施形態に係る筋活動測定装置1と同様の構成を有する。
図6は第2の実施形態に係る筋活動測定装置を表側から見た状態を説明する図であり、(a)は、蓋板を開けた状態の収容体の様子を説明する斜視図であり、(b)は、収容体内に収容される基板の表面の様子を説明する平面図である。
図7は、第2の実施形態に係る筋活動測定装置を裏側から見た場合の状態を説明する図であり、(a)は、蓋板を開けた状態の収容体の裏側の様子を説明する斜視図であり、(b)は、収容体内の収容される基板の裏面の様子を説明する底面図である。なお、
図6及び
図7中、上述した部材と同一部材には、同一符号を付し、説明を省略する。
【0042】
以下、本実施形態に係る筋活動測定装置1’の特徴部となる収容体30の構成について説明する。収容体30は、
図6及び
図7に示すように、略長方形状の基板31を収容する収容体本体(底板を含む)32と、収容体本体32の開口を閉塞する略長方形状の蓋板33とから構成される。
【0043】
上述したように、収容体30は、磁気センサ部11、演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13、及び電力供給部14を収容する。磁気センサ部11は、検知対象となる生体の磁気を検知しやすいように、収容体本体32を介して生体に対向する基板31の裏面31aに設置するのが好ましい。ここで設置される磁気センサ部11は、長手方向が感磁方向Xとなる。演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13、及び電力供給部14は、基板31の表面31aに取り付けられることが好ましい。演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13及び電力供給部14は、微小ながらも電磁波等の磁気ノイズを発生することがある。そのため、この検出方向以外からの磁気ノイズが筋磁界に影響を与えないように、磁気センサ部11と、演算部12、無線モジュール部13、電力供給部14との間には、磁気を遮蔽できる基板31を設置することが好ましい。磁気センサ部11、演算部12(AD変換部12A、記録部12B、制御部12C)、無線モジュール部13及び電力供給部14の基板31上における設置箇所は、特に制限されないが、生体上に設置する時の安定性が考慮されることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る筋活動測定装置1’においては、収容体30の形状が識別手段となる。収容体30の形状は、長手方向と短手方向とを有する長方形状であるため、測定者は、収容体30の長手方向が検知対象となる生体の筋線維の延在方向と略一致するように、収容体30を設置しやすい。その結果、筋活動測定装置1’(収容体30)においては、収容体30の短手方向と磁気センサ部11の感磁方向Xとが略一致し、磁気センサ部11の感磁方向Xが生体100の筋線維の延在方向と略直交するため、検知対象の筋活動をより精度よく測定することができる。
【0045】
<第2の実施形態に係る筋活動測定方法>
本実施形態に係る筋活動測定方法は、磁気センサ部11の感磁方向Xと、検知対象となる生体100の筋線維の延在方向とが略直交するように、筋活動測定装置1’を生体100の体表面に配置する方法である。
【0046】
図8は、第2の実施形態に係る筋活動測定方法を説明する模式図である。
図8に示すように、収容体30は、長手方向と短手方向とを有する長方形状に形成され、その短手方向が磁気センサ部11の感磁方向Xと略一致する。測定者は、生体100の体表面に筋活動測定装置1(収容体30)を設置する際、この収容体30の形状に基づいて、設置方向を容易に識別することが可能である。すなわち、収容体30の長手方向が生体100の筋線維に延在方向と略一致するように、誘導される。その結果、筋活動測定装置1’(収容体30)は、磁気センサ部11の感磁方向Xが生体100の筋線維の延在方向と略直交するように設置されるため、筋磁界を高い感度で検出することができる。
【0047】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態に係る筋活動測定装置及び筋活動測定方法では、
図5及び
図8に示すように、検知対象が生体の筋線維である例について説明し、識別手段は、磁気センサ部11の感磁方向Xと、検知対象となる生体の筋線維の延在方向とが略直交して筋活動測定装置1を設置するための識別情報を有するようにした。しかし、識別手段の形態はこれに限らず、また、本実施形態に係る筋活動測定装置の検知対象は、生体の筋活動に対して筋磁界が生じる筋細胞であれば何れであってもよい。例えば、検知対象は、筋線維(骨格筋)以外の、心筋や平滑筋であってもよい。
【0048】
すなわち、本実施形態に係る筋活動測定装置の識別手段は、磁気センサ部11の感磁方向Xと、検知対象となる生体の筋線維(骨格筋)や心筋や平滑筋等の筋活動に対する筋磁界の方向とが略一致するように、筋活動測定装置を設置するための識別情報を有する形態であってもよい。
【実施例】
【0049】
[実施例1]
第1の実施形態で説明したように、収容体20の表示24が筋線維の延在方向と略一致するように、すなわち、磁気センサ部11の感磁方向Xが筋線維の延在方向と略直交するように、筋活動測定装置1を母指球筋上に設置した(
図5参照)。これにより、磁気センサ部11の感磁方向Xと筋線維の延在方向とが略直交する。そして、手首で正中神経を電気刺激して、筋磁界を測定した。その結果を
図9(a)に示す。
図9(a)中、0点は電気刺激を与えたタイミングであり、二点鎖線は、筋磁界が発生したタイミングを示す。
【0050】
[比較例1]
収容体20の表示24が筋線維の延在方向と直交するように、すなわち、磁気センサ部11の感磁方向Xが筋線維の延在方向と略一致するように、筋活動測定装置1を母指球筋上に設置した。これにより、磁気センサ部11の感磁方向Xと筋線維の延在方向とが略一致する。そして、手首で正中神経を電気刺激して、筋磁界を測定した。その結果を
図9(b)に示す。
図9(b)中、0点は電気刺激を与えたタイミングであり、二点鎖線は、筋磁界が発生したタイミングを示す。
【0051】
[考察]
図9(a)(b)の結果から、磁気センサ部11の感磁方向Xが筋線維の延在方向と略直交するように筋活動測定装置1を設置した実施例1では、磁気センサ部11の感磁方向Xが筋線維の延在方向と略一致するように筋活動測定装置1を設置した比較例1に比べ、筋活動測定1の感度が高いことが確認された。これにより、筋活動測定装置1は、磁気センサ部11の感磁方向Xが筋線維の延在方向と略直交するように設置されることにより、筋活動をより精度よく測定できることが確認された。
【0052】
なお、本実施形態に係る筋活動測定装置1、1’は、術中脊髄・神経機能モニタリング装置に好ましく適用することができるが、本発明はこれに限定されないことはいうまでもない。例えば、本発明に係る筋活動測定装置は、多発性筋炎、筋ジストロフィ、重症筋無力症等の、筋肉に障害のある病気や、末梢神経炎、糖尿病性ニューロパチー、圧迫性脊髄障害、脊椎神経根障害、筋萎縮性側索硬化症等の神経に障害のある病気の診断に用いられる診断装置に適用してもよい。
【0053】
さらに、本発明においては、筋活動測定装置により測定された磁界変化の振幅と、被測定者の筋活動の動作量との間に、強い線形性及び相関性が存在することが明らかになっている。そのため、磁界変化の振幅に基づいて被測定者の動作量を測定することも可能である。また、本発明においては、筋活動測定装置により測定された磁界変化の傾きと、被測定者の筋活動の動作速度との間に、強い線形性及び相関性が存在することが明らかになっている。そのため、磁界変化の傾きに基づいて被測定者の動作速度を測定することが可能である。また、本発明に係る筋活動測定装置は、血管の物理的な収縮・膨張による微細な磁界変化を測定し、被測定者の心拍を測定することも可能である。よって、本発明に係る筋活動測定装置は、被測定者の筋活動自体を測定したり、被測定者の運動機能を測定したり、被測定者の筋疲労を測定したり、被測定者の心拍を測定する測定装置に適用してもよい。例えば、スポーツ選手のトレーニング用途に適用してもよい。特に、水泳選手の場合には、水中で電極を使用した測定装置を使用することができないが、上述したように、磁気センサを用いた測定装置であれば使用することができる。また、筋活動測定装置は、磁気センサ部に加えて、無線モジュール部を備えることにより、配線の煩雑さがなくなり、利便性が向上する。
【0054】
また、本発明に係る筋活動測定装置は、瞬時に磁界変化を測定することができる。そのため、筋活動測定装置で測定された磁界変化に基づいて筋活動の動作量や動作速度を瞬時に測定できる。よって、本発明に係る筋活動測定装置は、被測定者の質問に対する回答(YesかNo)を、筋活動の動作量や動作速度に基づいて瞬時に判定する、意思検出装置に適用することもできる。例えば、筋活動測定装置は、眉の上げ下げによる前頭筋の筋活動を検知することによって、被測定者の意思を検出することができる。
【0055】
このように、本発明に係る筋活動測定装置が、被測定者の筋活動自体を測定したり、運動機能を測定したり、筋疲労を測定したり、心拍を測定したり、意思を検出したりする場合には、収容体は、被測定者が装着可能な形状に形成されることが好ましい。この場合、識別手段は、収容体表面の表示であってもよいし、装着方向が所定の方向に定められた収容体の形状であってもよい。例えば、収容体は、上腕(上腕二等筋)や大腿部(大腿四頭筋)を覆うように巻き付けるように帯状に形成された可撓性材料から構成されてもよい。また、筋活動測定装置は、収容体内に、磁気センサ部に加えて、無線モジュール部を備えることにより、配線の煩雑さがなくなり、利便性が向上する。
【0056】
さらに、本発明に係る筋活動測定装置は、リハビリテーション分野や健康支援分野において、身体に装着することによって装着者の身体運動を支援するために使用される機器に搭載されてもよい。例えば、筋活動測定装置で得られた生体磁気情報に基づいて、筋活動の機能を補完するよう支援動作を決定し、パワーユニットを駆動させる運動機能改善装置に搭載されてもよい。