(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後フレームは、前記ハンドル軸支持部と前記溝切部とを連結する部分の少なくとも一部を、単一のパイプ部材で連結したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溝切機。
前記衝撃緩衝構造は、前記ハンドル軸支持部に設けられた幅方向に配置された軸で後部を支承するとともに、弾性体により回転が規制されていることを特徴とする請求項5に記載の溝切機。
前記センタリング部材は、前記ハンドルを直進状態にするように前記動力伝達軸を付勢する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の溝切機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溝切機は、圃場における搬入・搬出の際や、隣接する苗の株の列に反転移動するときには、大きく操舵できることが好ましい。
一方、単に操舵角を大きくすると、圃場の土の状態や地形によりハンドルを取られてしまい、かえって溝切機を苗の株に沿って進行させることができない場合もある。そのため、作業者は常にハンドルをしっかり持って直進を維持しなくてはならなくなり逆に作業者の大きな負担となる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ハンドルによって操舵が可能な乗用の溝切機において、小回りが利き、かつ不規則な形状の土であってもハンドルを取られにくくして操舵しやすく、安定した直進ができる溝切機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る溝切機の発明では、前部に設けられた駆動輪と、当該駆動輪を動力伝達軸を介して回転駆動する駆動装置とを有する駆動部と、前記駆動輪を回転可能に支持する駆動輪支持部と、駆動輪支持部に固定されたハンドル軸と、操舵用のハンドルとを有する前フレームと、前記ハンドル軸を回動可能に支持するハンドル軸支持部と、乗用するためのサドル支持部とを有する後フレームと、サドル支持部に支持されたサドルと、当該後フレームの後部に配置された溝切部材を有する溝切部とを備えた溝切機であって、前記動力伝達軸は前記サドル下方を後方に向けて直線的に延びるように配置されるとともに、前記駆動装置は前記サドルの後方に配置され、前記後フレームには、操舵に伴う前記動力伝達軸の変位による干渉を防止する干渉防止構造を備え、前記後フレームには、前記ハンドルを直進状態に付勢するセンタリング部材を備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、ハンドルによって操舵が可能で小回りが利き、かつ不規則な形状の土であってもハンドルを取られにくくして操舵しやすく、安定した直進ができる。
前記溝切機は前記駆動輪の操舵による回動を抑制する回動抑制部材を備えていることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、キックバックやハンドルの急激な戻りを抑制することができる。
前記動力伝達軸は、前記前フレームに設けられた動力伝達軸支持部材により支持されていることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、先端に駆動装置を備えた動力伝達軸と、駆動輪との接続部分の応力を緩和することができる。また、前フレームに支持されているため、駆動装置の振動をサドルに伝達しにくくなる。
【0011】
前記後フレームは、前記ハンドル軸支持部と前記溝切部とを連結する部分の少なくとも一部を、単一のパイプ部材で連結したことも望ましい。
この構成によれば、フレーム自体が弾性体として衝撃緩衝構造として機能し、地面からの衝撃を緩衝することができる。
【0012】
前記ハンドル軸支持部と前記溝切部材との間には、衝撃緩衝構造を備えたことも望ましい。
この構成によれば、地面からの衝撃や、フレームが駆動輪に引っ張られる力をハンドル軸支持部と溝切部材との間に配設された衝撃緩衝構造により効果的に緩衝することで作業者が快適に作業できる。
【0013】
また、前記衝撃緩衝構造は、前記ハンドル軸支持部に設けられた幅方向に配置された軸で後部を支承するとともに、弾性体により回転が規制されていることも望ましい。
この構成によれば、衝撃緩衝構造を簡易な構成とすることができ、かつ効果的に衝撃を緩衝することができる。
【0014】
前記センタリング部材は、前記前フレームと前記後フレームとの間に介在した弾性部材であることが望ましい。
前フレームと後フレームに介在させた弾性部材により、簡易な構造でありながらその弾性でハンドルのセンタリングができる。
【0015】
前記センタリング部材は、その両端が、前記前フレームと前記後フレームとにそれぞれ固定されたつるまきばねを備えたことが望ましい。
この構成によれば、大きく操舵が可能なセンタリング部材とすることができる。
【0016】
前記センタリング部材は、前記ハンドルを直進状態にするように前記動力伝達軸を付勢する付勢手段を備えたことが望ましい。
この構成によれば、先端に駆動装置を備えた動力伝達軸を直進状態に付勢することで、操舵時の回転中心であるハンドル軸から離間した動力伝達軸を付勢することで効果的にセンタリングを行うことができる。
【0017】
前記動力伝達軸を摺動可能に案内する案内部材を備えたことが望ましい。
この構成によれば、動力伝達軸をより安定させ、円滑に操舵することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の溝切機によれば、ハンドルによって操舵が可能で小回りが利き、かつ不規則な形状の土であってもハンドルを取られにくくして操舵しやすく、安定した直進ができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した溝切機の一実施形態を
図1〜
図5にしたがって説明する。なお、説明において、溝切機の進行方向を「前方」とし、乗車した作業者から見て右側を「右側」という。
【0021】
(全体構成)
図1、
図2を参照して溝切機の全体構成を説明する。本実施形態の溝切機は、作業者がサドルに跨って地面(圃場)に足を着けて乗車するもので、全体としてバイクのような形状であるが、後輪に替えて溝切板を備え、また、後輪でなく前輪で駆動する。
【0022】
(駆動部)
溝切機の駆動部は、前部に設けられた駆動輪11と、この駆動輪11を動力伝達軸13を介して回転駆動する駆動装置としてのエンジン12を備える。
【0023】
動力伝達軸13はサドル35の下方を後方に向けて直線的に延びるように配置されている。エンジン12はサドル35の後方に配置されている。
エンジン12からの出力は、動力伝達軸13からギヤボックス14(
図2)に伝達され、ギヤボックス14で回転速度が減速され、ギヤボックス14の内側のハブ17(
図1)を介して駆動輪11に駆動力が伝達される。
【0024】
(前フレーム)
前フレーム2は、駆動輪11を回転可能に支持する駆動輪支持部としてのフロントフォーク21と、フロントフォーク21に固定されたハンドル軸としてのハンドルステム22と、操舵用のハンドル23とを有する。
【0025】
この駆動輪11のハブ17は、作業者から見て左側が長い逆J字状のフロントフォーク21に片持ちで支持されている。フロントフォーク21の上端内側には、前方に向けて駆動輪11をカバーする車輪カバー24を備える。フロントフォーク21の上部中央にはハンドルステム22が略鉛直に設けられ、その上端には、ハンドル23が幅方向略水平に設けられている。
【0026】
(動力伝達軸支持部材)
図2に示すように、動力伝達軸支持部材9は、動力伝達軸13の略中央に動力伝達軸13を外嵌する丸パイプ状の支持チューブ27が嵌合され、支持チューブ27の中央上端には、フロントフォーク21の左側上部と連結する斜め支持ステー25が溶接固定されている。また、斜め支持ステー25の下端近傍には、フロントフォーク21の下部とを連結する水平支持ステー26が、動力伝達軸13と平行に固定されている。このトラス構造により、動力伝達軸13はフロントフォーク21と鉛直方向に強固に結合している。
【0027】
(後フレーム)
後フレーム3は、ハンドルステム22を回動可能に支持するハンドル軸支持部として、概ね鉛直の状態で設けられたパイプ状のヘッドチューブ31と、このヘッドチューブの上端部後方側に断面形状が縦長の長方形の直線状の角パイプからなるトップチューブ32が接続され、後方斜め下向きに延びるように設けられている。トップチューブ32の後端には、やや後傾した状態で概ね垂直に設けられたパイプ状のシートチューブ33が上方に向けて設けられている。このシートチューブ33は、上方が開口した円筒形の金属パイプであり、この中にその内径より若干小さい外形の円筒状のシートポスト34が摺動可能に挿入される。シートポスト34の上端には、サドル35が配設固定されている。サドル35は、シートポスト34に溶接固定された水平な金属板と、その上部に内部にスポンジやばねなどの弾性体と、これらを包むビニルレザーの外皮とから構成され、作業者が安定して快適に跨ることができるようになっている。
【0028】
シートチューブ33の上端には、シート高さ調節部材(不図示)が設けられ、挿入されたシートポスト34を締付若しくは解放することでサドル35を任意の高さに調節することができる。
【0029】
トップチューブ32の後端であって、シートチューブ33のすぐ前方には、右面から下方後方に円弧状に膨出する断面が長方形の金属製角パイプからなる湾曲部37が接続されている。湾曲部37の下端は、再び溝切機の幅方向中心に戻るように配置されている。湾曲部37の後端には、斜め下方に向けて後方に直線的に延びる、断面が縦長の長方形の直線状の金属製の角パイプからなる後ステー38が配設されている。
【0030】
後ステー38の後端には、上方をやや前傾させ、下面が開放した金属製の丸パイプからなる溝切部取付部39が配設される。
(衝撃緩衝構造)
後フレーム3、ヘッドチューブ31と溝切部取付部39とを連結する部分を、単一のパイプ部材であるトップチューブ32、湾曲部37、後ステー38により連結した。このため、トラス構造などが形成されていないため、これらの弾性変形により地面(圃場)からの衝撃が、緩和され、サドル35に跨った作業者への衝撃が緩和される衝撃緩衝構造となっている。特に湾曲部37の形状は、サドル35への荷重と溝切面42への圧力と相俟って特に撓みやすくなっている。
【0031】
(溝切部)
車体後部には溝切部4が配設される。後フレーム3の溝切部取付部39には、その内径よりやや小さい外形の丸パイプからなる溝切板ステー41が下方から挿入されており、溝切板ステー41の下端には溝切板40が固定されている。
【0032】
溝切板40は、断面視で略V字形であり、底面は水平に面取りした水平面を備える。平面視では概ね幅の狭い将棋駒のような形状である。
なお、詳細は図示しないが、溝切板ステー41により溝切部取付部39に取付けられた溝切板40は、溝切板ステー41と溝切部取付部39との重なった部分を直径方向に貫通する貫通孔(不図示)に挿入されるピン(不図示)で固定されている。貫通孔は例えば上下3段の位置に配設され、垂直方向の取付位置を調節できる。
【0033】
また、詳細は図示しないが、溝切板ステー41は、溝切部取付部39に対して若干回転可能に装着されている。溝切板40の前端には、溝切面42を溝切板ステー41を回転中心として、方向を微調整する直進調整部材43が配設されている。この調整によって、溝切面42の方向を微調整することができる。
【0034】
(センタリング部材・センタリング調整部材)
次に、センタリング部材5について説明する。
図5に示すように、フロントフォーク21とトップチューブ32の間にはセンタリング部材5が配設されている。センタリング部材5は、溝切面42に対する駆動輪11の方向を常に直進方向に付勢することで、ハンドル23が取られたような場合でも操舵を抑制するようにして自律的に直進性を高める機能を有する構成である。
【0035】
図6(a)に示すように、フロントフォーク21には、後方に面した板状の前取付部51が固定されており、ここには雌ねじが刻設された取付孔が設けられている。コイルスプリング50は、全体が金属製で、両端部は直径が小さくなるように形成され、中心軸に沿って取付け用の孔が形成されている。コイルスプリング50は、前端が前ボルト52により前取付部51にねじ止め固定されている。
【0036】
他方、
図6(b)に示すように、トップチューブ32の下面には、取付ベース54が固定されており、ここには雌ねじが刻設された螺合孔55が設けられている。この取付ベース54には、金属板からなる調整プレート56がねじ止めされている。
【0037】
この調整プレート56には、取付ベース54の螺合孔55とほぼ同軸に、かつ螺合孔55の内径よりも大きな内径の遊嵌孔57が穿設されている。そして遊嵌孔57には、調整ボルト58が挿入され、螺合孔55に螺合されている。このとき遊嵌孔57は、調整ボルト58の外径よりも大きな内径を有しているため、調整ボルト58を締め付けていない場合には、前後左右に移動可能となっている。また、位置を決めて調整ボルト58を螺合孔55に螺合して締め付ければ、調整プレート56の取付ベース54に対する相対位置が固定される。この調整プレート56には、前取付部51と対向するような位置に配置された後取付部53が溶接等で固定されている。そして、コイルスプリング50の後端は、前端と同じように後ボルト59で後取付部53にねじ止め固定されている。このときコイルスプリング50は、わずかに伸長されるような状態となっている。
【0038】
(回動抑制部材)
次に、
図6(a)、
図7を参照してハンドルステム22の回動を抑制する回動抑制部材6について説明する。回動抑制部材6は、圃場における土の状態などで駆動輪11に大きな外力が掛かった場合や作業者がハンドルを大きく切った場合でも、ハンドル23が急激に直進状態に戻ったりすることを抑制する機構である。
【0039】
図6(a)に示すようにハンドルステム22は、ヘッドチューブ31の内部に挿入された状態で、ヘッドチューブ31の上下両端部に配置されたカラーブッシュ60により支持されている。
【0040】
図7に示すようにカラーブッシュ60は、ヘッドチューブ31に内周面に沿った円筒形の部分で筒状部61と、ヘッドチューブ31の端面部に当接する鍔状のフランジが形成されたフランジ部62とからなり、軸方向に沿ったスリット63が一か所形成されている。カラーブッシュは、実施形態では、例えば充填剤入り四ふっ化エチレン樹脂層、青銅焼結層、そしてバックメタルの三層から構成される無給油軸受で、無給油で潤滑することができ、かつ押圧力により摺動抵抗を変化させることができる。具体的には、オイレス工業株式会社の商品名オイレスドライメットLF(登録商標)などを好適に用いることができる。また、これに限らず金属系や樹脂系のブッシュを用いることもできる。また、配置場所は実施形態のような位置に限定されるものではなく、例えばフランジの無い円筒形のブッシュを用いることで、ヘッドチューブ31の任意の位置に配置することもできる。
【0041】
図6(a)に示すように実施形態では、ヘッドチューブ31の上端に配置されたカラーブッシュ60は、ハンドルステム22との間に配置され、適度な摺動抵抗を維持する。ボルトからなる調整ねじ64が、ヘッドチューブ31に貫通して設けられたねじ孔65に螺合され、その先端がヘッドチューブ31内に配置されたカラーブッシュ60の筒状部61のスリット63以外の側面に当接する。
【0042】
このため、調整ねじ64のねじ込みでカラーブッシュ60と、その内部に挿通するハンドルステム22との押圧力が変化し、摺動抵抗が変化する。したがって、調整ねじ64を強くねじ込むことで、ハンドルステム22の回動を抑制することができる。
【0043】
(実施形態の作用)
このように構成された本実施形態の作用について説明する。
図3に示すように、作業者(不図示)は、2点鎖線で示すサドル35に跨って乗車してハンドル23を握持する。このときハンドル23は直進方向を向いている。そしてスターターでエンジン12を始動する。コントローラでエンジン12の回転を高めるとクラッチが接続し駆動輪11が回転を始め、溝切機がゆっくり前進する。
【0044】
<操舵機能>
図4に示すように作業者が大きくハンドルを切ると、ハンドルステム22が回動して、フロントフォーク21に支持された駆動輪11の向きが変わる。ハンドル23を右に切った場合には、2点鎖線で示すように駆動輪11と一緒にギヤボックス14、動力伝達軸13、エンジン12も一緒に回転し、エンジン12は作業者の左側に張り出す。一方、ハンドル23を左に切った場合には、同様にエンジン12と、動力伝達軸13は実線で示すように右側に回転する。
【0045】
図8(a)に示すように、ハンドル23を大きく左に切った場合でも、動力伝達軸13は湾曲部37の湾曲した内部に入り込み、後フレーム3のシートチューブ33、湾曲部37、後ステー38のいずれとも干渉しない構造となっている。
【0046】
図4に示すように、エンジン12はサドル35の右後に移動するため、エンジン12が後フレーム3やサドル35と干渉することもない。
このため、動力伝達軸13やエンジン12が後フレーム3と干渉することなく、ハンドル23を大きく左に切ることができる。
【0047】
<センタリング機能>
溝切機は一般のバイクや自転車のように自律的な直進性が期待できない。そこで、本実施形態では、センタリング部材5により、ハンドル23が直進状態になるように常時付勢して直進性を付与している。
【0048】
図3に示すように、ハンドル23に力を加えないで、駆動輪11も圃場の接地面からの大きな力が加わらない自由状態では、
図5に示すようにコイルスプリング50に張力がかかっているため、前取付部51と後取付部53が相互に引き付けられ、フロントフォーク21が直進方向に付勢され、駆動輪11は直進方向を維持する。
【0049】
このため、一般に直線状に配列されている苗の株に沿って、一旦方向が定まったら、あとはわずかに修正するだけで、直線状に配列されている苗の株に沿って溝切作業ができる。
【0050】
図4に示すとおり、作業者がハンドル23を左折方向(図において反時計回り方向)に操舵力P1を加えたり、或いは、駆動輪11が外力P2を受けたときの状態について説明する。
【0051】
自由状態から、操舵力P1若しくは外力P2が加わると、コイルスプリング50の引っ張り力に抗して、コイルスプリング50を捻るように引っ張り変形させてハンドル23が、反時計回りに回動する。このとき、センタリング部材5のコイルスプリング50の弾性反発力により、フロントフォーク21を直進方向に向ける付勢力となる。この付勢力は、ハンドルを大きく切れば切るほど大きくなり、大きな外力でハンドルを取られた場合には、大きな付勢力で直進に戻ろうとする。
【0052】
特に本実施形態では、質量の大きなエンジン12が回転中心であるハンドルステム22から大きく離れていることから、車体の左右の揺れなどで、慣性力により大きな回転モーメントが働き大きな力でハンドルを取られやすい。このような場合でも、センタリング部材5により、ハンドル23を直進方向に付勢するため、直進性が保たれる。
【0053】
<ダンパー機能>
直進状態で作業しているときに、大きな外力が駆動輪11に掛かった場合には、センタリング部材5により、ハンドル23を直進方向に付勢する力が働く。このとき、回動抑制部材6のカラーブッシュ60とハンドルステム22との摺動抵抗により、回動抑制部材6がダンパーとして機能し、これらが相俟ってハンドル23の急激な角度変化は抑制される。そのため、大きなキックバックなどがあっても、ハンドル23が急激に回動して溝切機の進行方向が急激に曲がったりすることがなく、バランスを崩すことなく直進性を維持することができる。
【0054】
さらに、作業者の意思でハンドル23が大きく切られた状態になった場合でも、センタリング部材5のみであれば、急激に直進状態に戻ろうとしてハンドルが急激に回動することになるが、本発明では、回動抑制部材6がダンパーとして機能し、回動が抑制され、ゆっくりと
図3に示す直進状態に戻っていくため、作業者に負担をかけることもない。
【0055】
このとき、本実施形態のような質量の大きなエンジン12が回転中心であるハンドルステム22から大きく離れている場合は、センタリング部材で急激に直進状態に戻るときに、大きな慣性力が働き、ハンドルが左右に振動してしまう場合があるが、回動抑制部材6は、この振動を速やかに収拾する。
【0056】
いうまでもなく、作業者が小回りさせようと意図すれば、車体を持ち上げることなく、跨ったままハンドル23に持続的な力を掛けてゆっくり大きく切って、小さな半径で小回りさせることもでき、狭い圃場でも乗車したまま方向転換ができる。
【0057】
<センタリング調整機能>
また、作業者がハンドル23を操舵しないで駆動した時に正確に直進状態を保てない場合がある。例えば、コイルスプリング50の個体差や、取付時の傾きなどによっても完全な直進状態とならない場合がある。さらに、いくらハンドル23が真っ直ぐに調整されても、本実施形態のようにエンジン12が左側面に配置されているため左側に曲がろうとする力が生じる。このような場合には、センタリング部材5による復帰位置の調整を行う。
【0058】
図5に示すセンタリング部材5の調整ボルト58を緩めると、調整ボルト58により取付ベース54に固定されていた調整プレート56が、調整ボルト58と遊嵌孔57との間隙の範囲で位置が調整可能となる。調整ボルトを緩めた状態で、ハンドル23の角度を微調整して、任意の位置で調整ボルト58を締め直す。これで、センタリング位置の修正が完了する。
【0059】
<直進調整機能>
例えば、自由状態で左方向に曲がるようであれば、直進調整部材(不図示)により溝切板40を溝切板ステー41を中心に、平面視で反時計まわりに回転させて調整すれば、自由状態で直進するように調整することができる。そのため、センタリング調整機能と併用することで、調整範囲が大きくなっている。
【0060】
<衝撃緩衝機能>
本実施形態の後フレーム3は、ヘッドチューブ31と溝切部取付部39とを連結する部分を、単一のパイプ部材であるトップチューブ32、湾曲部37、後ステー38により連結した。このため、トラス構造などが形成されていないため、これらの弾性変形により地面(圃場)からの衝撃が、緩和され、サドル35に跨った作業者への衝撃を緩和する。
【0061】
特に、湾曲部37の構成が、弾性力を発揮する。
(実施形態の効果)
上記実施形態の溝切機によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0062】
(1)本実施形態の溝切機では、軽量な溝切機でありながら跨って乗車することで作業者の体重を利用して深い溝が形成できる。また、エンジン12が後方に配置されるため作業者に排気が向かうのを防止することができる。
【0063】
(2)そして、後フレーム3には、干渉防止構造である湾曲部37を備えたため、ハンドル23を左に大きく切っても、エンジン12や動力伝達軸13が後フレーム3に接触することがない。また、エンジン12とサドル35との干渉もしないように配置されている。このため、大きく左右にハンドル23を切ることができるため小回りが利き、狭い圃場内で方向転換したり、圃場への搬入や、圃場からの搬出も簡単にできる。
【0064】
(3)また、溝切機はバイクのような直進性が期待できないが、センタリング部材5により、ハンドル23は直進方向に付勢される。そのため、不規則な形状の土であってもハンドル23を取られにくく、安定して直進ができる。そのため、作業者は常時ハンドル23を大きな力で直進するように維持するような必要もなく、作業者の負担を大幅に軽減できる。
【0065】
(4)センタリング部材5は、弾性体の弾性力を利用しているため、動力源が不要で、構造が単純であるため、安定して機能するとともに故障もしにくくメンテナンスも容易である。
【0066】
(5)特にコイルスプリング50を用いたため、力に応じてあらゆる方向に容易に大きく変形するため、取付も容易で、操舵角も大きくとることができ狭い圃場でも小回りが利く。
【0067】
(6)また、金属製のコイルスプリング50は、耐久性もあり、弾性反発力も大きいため、強力に直進性を高めることができる。
(7)さらに、回動抑制部材6によれば、大きなキックバックを受けたような場合でもダンパーとして機能して直進性を維持しやすく、作業者に負担を軽減する。
【0068】
(8)また、回動抑制部材6は、作業者が自ら大きくハンドル23を切った場合に、ハンドルがセンタリング部材5により、急激に直進方向に戻ることを抑制することができる。
【0069】
(9)また、センタリング調整部材である調整プレート56によりセンタリングの位置調整も容易にでき、厳密に直進性を保つことができる。センタリング調整も調整ボルト58を緩め、調整プレート56を移動するだけで容易に調整することができる。
【0070】
(10)さらに、直進調整部材43により、溝切部4においても直進性を調整することができる。
なお、上記実施形態は、当業者であれば以下のように変更して実施することもできる。
【0071】
○ 本実施形態のセンタリング部材5としては、1本の金属製のコイルスプリング50を用いているが、複数のコイルスプリングとしてもよい。金属製のコイルスプリング50に替えて、板バネとしてもよい。さらに、金属製のものに替えて、ゴム製や樹脂製の弾性体としてもよい。また、トーションばねを用いた構成などとすることもできる。
【0072】
○ また、センタリング部材5の取り付け場所は、ハンドル23の回動を直進方向に付勢できればよく、実施形態の配設位置には限定されない。
○
図9に示すように、例えばトップチューブ32後端部から、動力伝達軸13の鉛直上方に延びる金属製の角パイプからなる動力伝達軸吊りバー28を水平に延びるように設ける。そして、動力伝達軸13に外嵌した支持チューブ27と動力伝達軸吊りバー28の間に、コイルスプリングからなる動力伝達軸吊りスプリング29を張設する。ハンドル23が切られると、動力伝達軸吊りスプリング29が伸長し、弾性力で伸縮しようとする。つまり、動力伝達軸13を直進方向に付勢する。
【0073】
本実施形態では、操舵の際の回転中心は、ハンドルステム22であり、ここから離間した位置にエンジン12を伴った動力伝達軸13においてセンタリングを行うことは、ハンドルステム22に近いフロントフォーク21とトップチューブ32との間でセンタリングを行うことによりさらに効果的である。
【0074】
○ また、動力伝達軸13を案内する案内部材を備えたことも望ましい。
図8(b)に示すように、湾曲部37に替えて、動力伝達軸13の可動範囲に空間を設けた環状の干渉防止構造である案内部70をトップチューブ32と後ステー38の間に設ける。このような構成であれば、片持ち構造の上記実施形態よりも高い剛性とすることができる。また、動力伝達軸13の可動範囲を確保して、周囲の物と動力伝達軸13との干渉を防止することもできる。
【0075】
○ この場合、案内部70の開口部を案内レール71として、動力伝達軸13に装着したスライダ72により、動力伝達軸13を支持するとともに、案内レール71に沿って円滑に案内するようにしてもよい。
【0076】
このような構成にすると、動力伝達軸13がスライダ72により保持されて安定した状態となるとともに、スライダ72が案内レール71を円滑に移動することができる。さらに、後フレーム3の剛性を高くすることができる。
【0077】
○
図8(c)に示すように、
図8(b)と同様の案内部70を設け、ここにセンタリング部材5を配設してもよい。この案内部70の空間内の左右両端部にコイルスプリングからなるセンタリングスプリング73、73を配して、動力伝達軸13を左右両側から引っ張る。このような構成とすることで、動力伝達軸13は左右の均衡がとれて案内部70の中央に付勢されるセンタリングができる。なお、
図8(b)に示すように案内レール71とスライダ72を設けてもよく、また、単に動力伝達軸13が摺動するような構成でもよい。
【0078】
○ 本実施形態では、後フレーム3全体の金属パイプの弾性により衝撃緩衝構造を構成していたが、さらに、後フレーム3の一部を積極的に、ばねなどの弾性体で構成することにより衝撃を吸収するようにしてもよい。
【0079】
○ さらに
図10(a)、
図10(b)に示すように、衝撃緩衝構造8を、ヘッドチューブ31とトップチューブ32との接続部分に設けてもよい。
ヘッドチューブ31の後側の面には、金属板からなる前取付部材80が溶接され、その左右両端部はリブ状に後方に直角に折り曲げられ平面視コ字状となっている。その左右の幅は、概ねヘッドチューブ31の幅と同じとなっている。それぞれの折り曲げられたリブ状部分の中央部には、穴が穿設されている。一方、その左右両端部が、前方に直角に折り曲げられて平面視が前取付部材80と逆向きのコ字状とされ、前取付部材80とヘッドチューブ31を覆うような後取付部材82が配設されている。後取付部材82は、前取付部材80に穿設された穴に水平幅方向の支承ピン81により支承されて後取付部材82はヘッドチューブ31に対して揺動可能になっている。後取付部材82は、前取付部材80のより、上下に長くなっており、後取付部材82の上部とヘッドチューブ31の間にはゴムからなる弾性体(上)83が配設されている。また、後取付部材82の下部とヘッドチューブ31の間にはゴムからなる弾性体(下)84が配設されている。
【0080】
このように構成された衝撃緩衝構造8では、たとえば駆動輪11に駆動力が掛かったときの衝撃や、駆動輪11や溝切板40に衝撃があった場合に、サドル35に跨った作業者に衝撃が直撃しないように緩衝する効果がある。
【0081】
○ 上記衝撃緩衝構造8は、以下のようにも変更できる。例えば、支承ピン81の位置を下部に配置して、弾性体(上)83のみとすることができる。衝撃は主にヘッドチューブ31とトップチューブ32を押し開く方向に掛かるからである。
【0082】
○ 弾性体(上)83、弾性体(下)84は、ゴム以外でも、圧縮コイルスプリング、板ばね、捻じりばね、空気ばねや、樹脂により構成されても良い。
○ 前記衝撃緩衝構造8は、トップチューブ32と湾曲部37、または湾曲部37と後ステー38との接続部分において、幅方向の水平な軸で相互回動可能に接続し、捻じりばね等の弾性体で衝撃を吸収するようにしてもよい。
【0083】
○ 回動抑制部材6は、ハンドル23の回動を抑制できれば足り、カラーブッシュを環状の締付部材で締め付けて調整するようなものあってもよい。
○ 回動抑制部材6は、下端が厚みの薄いテーパ状のカラーブッシュを、ここに外嵌するような環状の部材で、上から捻じ込んで押し込むことで摩擦係数を変化させるような構成でもよい。
【0084】
○ また、ハンドルステム22をヘッドチューブ31の上下にスラストベアリングを配置して保持し、上下方向からベアリングに圧力をかけるような方法も採用できる。さらに、回動抑制部材6としては、図示しないオイルなどを利用したロータリーダンパを用いてもよい。
【0085】
○ 溝切部4は、用途に応じて様々な形状の溝切板を採用することができ、そろばんの玉状の回転式の溝切部材としてもよい。また、溝切板以外の器具を取り付けてもよい。
○ 駆動部1は、溝切機が前進するように駆動力が与えられれば、当業者により様々な構成が採用可能で、例えば、外輪、スポーク、滑り止めなどは様々な態様が採用でき、駆動輪11を2輪のものとしてもよい。駆動源は、モータ駆動のものであってもよく、配置もいろいろな位置のものを採用できる。
【0086】
○ 前フレーム2、後フレーム3の形状も限定されず、ハンドル23の形状を後方に延ばしたような形状のものとしたり、サドル35として椅子形のシートを使用したりすることができる。
【0087】
○ 直進状態のエンジン12の位置が、車体の中心に配置されるような構成も望ましい。直進状態において、重心が車体中心に近づき、直進性が向上する。