(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ファンを嵌合させるシート側開口を設けた環状の本体シートと、外径が前記本体シートと同じ円形の中間シートと、外径が前記本体シートと同じで、少なくとも下面側に熱融着接着剤層を有する円形の接着シートとを、前記記載順に積層して一体化してなる台座シートを用い、
第1工程として、ファン付き衣服の衣服生地に本体シートを接面させて、本体シートの内周縁に沿って中間シート及び接着シートを衣服生地に縫着し、
第2工程として、衣服生地と中間シート及び接着シートを一体に、本体シートの内周縁より小さな仮開口と、前記仮開口の内周縁から前記本体シートの内周縁までに半径方向の切れ込みを入れて周方向に並ぶ多数の台形片とを設け、
第3工程として、仮開口を通して本体シート及び台形片をひっくり返し、衣服生地と本体シートとで台形片を挟み、本体シートのシート側開口と同じ生地側開口を衣服生地に形成し、前記シート側開口及び生地側開口を一致させた状態で、台座シートを加温して接着シートを衣服生地に接着し、
第4工程として、本体シートの内周縁及び外周縁に沿って前記本体シートを衣服生地に縫着して台座を形成する台座形成方法。
【背景技術】
【0002】
ファン付き衣服は、例えば腰付近に外気を吸気するファンが取り付けられ、腰から襟元に向けて空気を流すことにより、着用者を冷却する。ファンは、回転する樹脂製の羽根を樹脂製ケースで覆った構成であるため、可撓性のある衣服生地にそのまま安定に取り付けることが難しい。このため、ファン付き衣服は、シート側開口を囲む環状の台座シートを、衣服生地に設けた生地側開口と同心にして前記衣服生地に取り付け、前記台座シートから台座を形成する。ファンは、前記台座を挟んで樹脂ケースとリング部材とを一体化し、衣服生地に取り付ける(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、台座を形成する部材として、本体シート(布により構成された基層)と接着シート(熱融着接着剤により構成された接着層)とを積層し、前記本体シート及び接着シートを貫通するシート側開口(取付孔)を設けた台座シート(衣服用ファン取付用ワッペン)を開示する(特許文献1・[請求項1])。ファン付き衣服は、衣服生地に設けた生地側開口(衣料用ファン取付用孔)とシート側開口とを合わせた状態で、前記衣服生地に台座シートを接着シートにより貼り付けて、台座を形成する(特許文献1・[0025])。
【0004】
生地側開口は、台座を形成したい衣服生地の部分に台座シートを当てがい、台座シートのシート側開口に沿って印をつけた後、例えばハサミにより裁断して形成する(特許文献1・[0034][0036])。台座シートは、前述のように形成した生地側開口とシート側開口とが一致するように、衣服生地の上に配置し、当て布を被せた状態でアイロンにより加熱すると、接着シートの熱融解接着剤が融解して、前記衣服生地に貼り付けられる(特許文献1・[0038][0041]〜[0043])。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ファン付き衣服に形成される台座は、衣服生地と裏布とで台座シートを包む構成も見受けられる。台座シートを包み込む台座は、裏布を衣服生地と一体にするため、裏布周囲を衣服生地に縫着することが通例で、台座の周囲に縫着ラインが形成され、見栄えが悪い。これに対し、特許文献1が開示する台座は、外面から見て台座シートしか存在し得ず、周囲に不要な縫着ラインが存在しないことから、審美性に優れている。しかし、特許文献1が開示する台座は、次の問題を抱えている。
【0007】
台座にファンを安定して取り付けるには、台座シートが十分な強度を有し、かつ台座シートが衣服生地と強固に一体化される必要がある。特許文献1が開示する台座シートは、強度が本体シートの厚みのみに依存し、衣服生地に対して接着シートを介して接着されているだけで、衣服生地との一体性が低い。このため、特許文献1が開示する台座シートが形成する台座は、簡易に形成できるものの、長期にわたってファンを安定して取り付けることができない。
【0008】
また、特許文献1が開示する台座は、生地側開口が衣服生地を裁断しただけなので、裁断縁から衣服生地がほつれる可能性がある。裁断縁は、台座シートが衣服生地に貼り付いている限り、ほつれが抑制できる。しかし、上述したように、特許文献1が開示する台座シートと衣服生地との一体性は低いため、例えばファン付き衣服を洗濯すれば、台座シートが衣服生地から完全に分離しないまでも、裁断縁のほつれを抑制できなくなる。裁断縁がほつれると、台座シートが浮いた格好となり、台座に対するファンの取付が不安定になる。
【0009】
衣服生地と台座シートとの一体性は、例えば台座シートを衣服生地に縫着すれば改善される。しかし、衣服生地は、単体では薄過ぎて、縫着部分から破れてしまう虞があり、台座に対するファンの取付が不安定になる。そこで、裏地を使用せずに台座付近の審美性を高めるため、特許文献1のような衣服生地に貼り付ける台座シートを用いながら、衣服生地と台座シートとの一体性を確保するため、台座シート、台座形成方法、そしてファン付き衣服について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果開発したものが、ファンを嵌合させるシート側開口を設けた環状の本体シートと、外径が前記本体シートと同じ円形の中間シートと、外径が前記本体シートと同じで、下面に熱融着接着剤層を有する円形の接着シートとを、前記記載順に積層して一体化した台座シートである。本体シートは、保形性及び可撓性のある素材、例えば厚手の織布で構成される。中間シートは、可撓性のある素材、例えば不織布で構成される。接着シートは、可撓性のある素材、例えば不織布で構成され、少なくとも下面に熱融着接着剤層を有すればよい。中間シートは、複数枚あってもよい。本体シート、中間シート及び接着シート相互は、接着又は縫着して一体化するほか、例えば接着シートや熱融着接着剤層を有する中間シートを利用して、熱融着により一体化してもよい。
【0011】
本体シートは、内周縁及び外周縁から内周側隙間及び外周側隙間を空けた環状の補強層が設けられていると良い。補強層は、台座シートを補強する。また、補強層と内周縁及び外周縁との内周側隙間及び外周側隙間が環状に形成され、前記内周側隙間及び外周側隙間を縫着ラインの目安にできる。補強層は、本体シートの可撓性を損なわなければよく、本体シートと同素材又は異素材である環状のシートを積層して構成したり、例えば織布である本体シートに刺繍を施して形成したりする。また、補強層は、単一条のほか、複数条、例えば内周縁との間に内周側隙間を空けた内周側補強層と、外周縁との間に外周側隙間を空けた外周側補強層を別々に構成してもよい。
【0012】
中間シート及び接着シートは、シート側開口と同心で、前記シート側開口より内径の小さな位置合わせ用開口を設けるとよい。位置合わせ用開口は、衣服生地に台座シートを載せた状態で、衣服生地に設けた位置合わせ用マークを視認可能にする。位置合わせ用マークは、衣服生地に対する台座シートの位置合わせができればよく、例えば衣服生地に描いた円形マークや円形開口である。位置合わせ用開口が十分小さい場合(例えば内径数mm程度)、位置合わせ用マークの中心を位置合わせ用開口の中心に揃える。位置合わせ用開口が大きい場合(例えば内径1cm以上)、位置合わせ用マークの周縁(円形マークは外周縁、開口は内周縁)を位置合わせ用開口の内周縁に揃える。
【0013】
本発明の台座形成方法は、ファンを嵌合させるシート側開口を設けた環状の本体シートと、外径が前記本体シートと同じ円形の中間シートと、外径が前記本体シートと同じで、少なくとも下面側に熱融着接着剤層を有する円形の接着シートとを、前記記載順に積層して一体化してなる台座シートを用い、第1工程として、ファン付き衣服の衣服生地に本体シートを接面させて、本体シートの内周縁に沿って中間シート及び接着シートを衣服生地に縫着し、第2工程として、衣服生地と中間シート及び接着シートを一体に、本体シートの内周縁より小さな仮開口と、前記仮開口の内周縁から前記本体シートの内周縁までに半径方向の切れ込みを入れて周方向に並ぶ多数の台形片とを設け、第3工程として、仮開口を通して本体シート及び台形片をひっくり返し、衣服生地と本体シートとで台形片を挟み、本体シートのシート側開口と同じ生地側開口を衣服生地に形成し、前記シート側開口及び生地側開口を一致させた状態で、台座シートを加温して接着シートを衣服生地に接着し、第4工程として、本体シートの内周縁及び外周縁に沿って前記本体シートを衣服生地に縫着して台座を形成する。
【0014】
第1工程は、衣服生地に位置決めした台座シートを仮固定する。本体シートを衣服生地の表側に出したい場合、台座シートは、衣服生地の裏側に本体シートを接面させる。本体シートを衣服生地の裏側に隠したい場合、台座シートは、衣服生地の裏側に本体シートを接面させる。第2工程は、本体シートをひっくり返す準備として、一体にした中間シート、接着シート及び衣服生地に同じ仮開口及び台形片を設ける。仮開口及び台形片は、順番に設ける場合、どちらを先に設けてもよい。また、仮開口及び台形片は、例えば専用の治具を用いて、同時に設けてもよい。
【0015】
第3工程は、本体シート及び台形片を一緒に引っくり返して、衣服生地と本体シートとで台形片を挟み、シート側開口及び生地側開口を一致させた状態で、接着シートを衣服生地に接着する。衣服生地と本体シートとに挟まれる台形片は、半径方向の長さを本体シートの半径方向の幅以下とする。台座シートの加温手段として、例えばアイロンを用いる。第4工程は、衣服生地に接着した本体シートの少なくとも内周縁及び外周縁に沿った部分で、本体シートを衣服生地に縫着する。縫着の縫着ラインは、本体シートの内周縁又は外周縁に沿ってそれぞれ1条あればよいが、複数条あってもよい。
【0016】
本発明の台座形成方法において、内周縁及び外周縁から内周側隙間及び外周側隙間を空けた環状の補強層が本体シートに設けられた台座シートを用い、第4工程として、前記補強層と内周縁及び外周縁との内周側隙間及び外周側隙間に沿って本体シートを衣服生地に縫着すると、補強層と内周縁及び外周縁との内周側隙間及び外周側隙間を縫着ラインの目安にできる。補強層は、本体シートの表面に表れる構成であれば、素材や構造に限定はない。また、設けられる補強層の条数は、問わない例えば1条の補強層は、内周縁と本体シートの内周縁との内周側隙間、そし外周縁と本体シートの外周縁との外周側隙間を用いる。2条以上の補強層は、再内周の補強層の内周縁と本体シートの内周縁との内周側隙間、そして再外周の補強層の外周縁と本体シートの外周縁との外周側隙間を用いる。
【0017】
また、本発明の台座形成方法において、シート側開口と同心で、前記シート側開口より内径の小さな位置合わせ用開口を中間シート及び接着シートに設けた台座シートを用い、第1工程前の準備工程として、台座を設ける部分の衣服生地に位置合わせマークを設け、第1工程として、位置合わせ用開口を前記位置合わせマークの中心又は周縁に揃えて、衣服生地に本体シートを接面させ、本体シートの内周縁に沿って中間シート及び接着シートを衣服生地に縫着すると、衣服生地に設けた位置合わせ用マークを用いて、前記ファン付き衣服に対する台座シートの位置合わせができる。
【0018】
ここで、位置合わせ用開口を第2工程における仮開口と同じ大きさにしておくと、位置合わせ用開口は、衣服生地に前記仮開口を設ける際の目安となる。更に、位置合わせ用開口を第2工程における仮開口と同じ大きさにし、位置合わせ用マークとして衣服生地に予め仮開口を設けておくと、位置合わせ用開口及び位置合わせ用マークの内周縁を揃えた第1工程を終えた段階で、すでに第2工程の仮開口を設けるところまで終了し、作業能率を高めることができる。
【0019】
本発明の台座シートは、特許文献1同様、衣服生地に貼り付け、更に縫着した状態で、本体シートのシート側開口に合わせて中間シート及び衣服生地を切除した台座を形成したファン付き衣服を提供できる。しかし、上述した本発明の台座形成方法により、ファンを嵌合させて取り付ける台座を衣服生地に形成したファン付き衣服は、ファンを嵌合させるシート側開口の内周縁に衣服生地の裁断縁が露出せず、本体シートと衣服生地との間に台形片を挟み、台座シートを衣服生地に接着し、かつ縫着して、強固な台座を形成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の台座シートは、本体シート、中間シート及び接着シートを積層した構成で、環状の本体シートと同形の台座を構成する。これにより、台座シートを衣服生地に直接接着して台座を形成しても、前記積層構成を保つ台座は、強度がある。また、接着シートにより衣服生地に接着されるため、衣服生地との一体性も高い。本体シートに設けられる補強層は、本体シートの強度を増すほか、台座シートを衣服生地に縫着する際、本体シートの内周縁及び外周縁寄りの縫着ラインの設定を容易にする。そして、中間シート及び接着シートに設けた位置合わせ用開口は、衣服生地に対する台座シートの位置合わせを容易にする。
【0021】
本発明の台座シートを用いた台座形成方法は、本体シートを裏返して仮開口の裁断縁を露出させないシート側開口及び生地側開口を形成した状態で、接着シートを衣服生地に接着し、更に本体シートを衣服生地に縫着する。こうして形成された台座は、シート側開口及び生地側開口の内側に裁断縁を露出させず、衣服生地のほつれが防止できる。また、台座は、接着及び縫着の併用により、台座シートと衣服生地との強固な一体化ができる。本体シートと衣服生地とで台形片を挟み込んで形成される台座は、厚みが増し、強度が増す。そして、厚みのある本体シートと衣服生地との縫着は、ほつれにくい利点がある。
【0022】
補強層と本体シートの内周縁及び外周縁との内周側隙間及び外周側隙間に沿った縫着は、本体シートを衣服生地に縫着する縫着ラインを容易かつ正確に設定し、審美性に優れ、かつほつれにくい縫着を実現する。また、シート側開口と位置合わせマークとを用いた衣服生地に対する台座シートの位置合わせは、面倒な台座シートの位置合わせを容易かつ正確にする。また、シート側開口及び位置合わせマークが仮開口に一致していれば、第2工程で仮開口を設ける手順が省略でき、台座を整形する作業能率を向上させる。
【0023】
本発明の台座形成方法により台座を衣服生地に形成したファン付き衣服は、ファンを安定して取り付けることのできる台座を有する。これは、積層構造である本発明の台座シートを用いること、本体シートをひっくり返してシート側開口及び生地側開口を一致させ、仮開口の裁断縁を露出させないこと、そして接着及び縫着を併用して台座シートを衣服生地に固定することによる効果である。本発明の台座シートは、衣服生地にそのまま接着するだけで台座を形成できるが、本発明の台座形成手順により台座を形成する方が、ファンを安定して取り付けることのできる台座が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に基づく台座シートの一例を外面側から見た斜視図である。
【
図2】本例の台座シートを外面側から見た分解斜視図である。
【
図3】準備工程として、位置合わせマークを設けた衣服生地を内面側から見た平面図である。
【
図4】第1工程として、位置合わせ開口を位置合わせマークに合わせ、本体シートを衣服生地に接面させた台座シートを衣服生地の内面側から見た平面図である。
【
図6】第1工程として、位置合わせプレートの円形開口に台座シートを合わせ、本体シートを衣服生地の内面に接面させた台座シートを衣服生地の内面側から見た平面図である。
【
図7】第1工程として、本体シートの内周縁に沿って中間シート及び接着シートを衣服生地に縫着する状態を衣服生地の内面側から見た平面図である。
【
図9】第2工程として、衣服生地と中間シート及び接着シートを一体に仮開口を設ける状態を衣服生地の内面側から見た平面図である。
【
図10】
図9中C−C部半径方向断面拡大図である。
【
図11】第2工程として、仮開口の内周縁から本体シートの内周縁の範囲に多数の台形片を設ける状態を衣服生地の内面側から見た平面図である。
【
図13】第3工程として、本体シート及び台形片をひっくり返し、衣服生地と本体シートとで台形片を挟んだ状態を衣服生地の内面側から見た平面図である。
【
図15】第3工程として本体シート及び台形片をひっくり返し、衣服生地と本体シートとで台形片を挟んだ状態を衣服生地の外面側から見た平面図である。
【
図17】第3工程として、シート側開口及び生地側開口を一致させ、台座シートを加温して接着シートを衣服生地に接着した状態を衣服生地の外面側から見た平面図である。
【
図19】第4工程として、内周側隙間及び外周側隙間に沿って本体シートを衣服生地に縫着した状態を衣服生地の外面側から見た平面図である。
【
図21】台座が形成されたファン付き衣服を背面から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の台座シート1は、
図1に見られるように、外観上、本体シート11で外周を補強した円盤部材に見える。本例の台座シート1は、
図2に見られるように、シート側開口111を設けた環状の本体シート11と、前記本体シート11と同じ環状の補強シート121と、外径が前記本体シート11と同じ円形の中間シート12と、外径が前記本体シート11と同じで、下面に熱融着接着剤層を有する円形の接着シート13とを、前記記載順に積層して一体化した構成である。
【0026】
本体シート11は、保形性及び可撓性のある環状の織布である。本体シート11は、半径方向の幅は10mm〜20mmが目安とし、取り付けるファンに応じたシート側開口111の内径に前記幅を足して、外径を決定する。本例の本体シート11は、内周縁から内周側隙間113を空けた環状の内周側補強層112と、外周縁から外周側隙間115を空けた環状の外周側補強層114とが設けられている。本例の内周側補強層112及び外周側補強層114は、刺繍である。本例は、内周側隙間113、内周側補強層112、中間の隙間、外周側補強層114及び外周側隙間115が本体シート11を半径方向に5等分した等幅(本体シート11の半径方向の幅が15mmの場合、それぞれ3mmずつ)である。内周側隙間113、内周側補強層112、中間の隙間、外周側補強層114及び外周側隙間115の半径方向の幅は異なってもよい。
【0027】
中間シート12は、本体シート11の外径に等しく、可撓性のある円形の不織布である。本例の中間シート12は、本体シート11との間に、前記本体シート11と同じ環状で可撓性のある不織布を補強シート121として介装している。補強シート121は、上面及び下面を共に熱融着接着剤層としている。中間シート12は、任意の大きさの仮開口17や台形片18を設ける平面を提供する。また、本例の中間シート12は、中心に小さな孔として位置合わせ開口14を設けている。本例の位置合わせ開口14は、衣服生地2に設けた位置合わせマーク21を中心に揃えることのできる大きさとして、1mm〜2mmを目安とする。
【0028】
接着シート13は、本体シート11の外径に等しく、可撓性のある円形の不織布で、上面及び下面を共に熱融着接着剤層とする。本例の接着シート13は、上記中間シート12に同じ小さな孔の位置合わせ開口14を設けている。接着シート13位置合わせ開口14は、中間シート12の位置合わせ開口14と大きさが異なってもよい。本例の本体シート11、補強シート121、中間シート12及び接着シート13は、補強シート121及び接着シート13の熱融着接着剤層を利用して、相互に接着して一体化する。本体シート11、補強シート121、中間シート12及び接着シート13は、一体化できればよいため、例えば相互に縫着して一体化してもよい。
【0029】
本例の台座シート1を用いて、ファン付き衣服4(後掲
図21参照)に台座41を形成する台座形成方法について説明する。準備工程として、
図3に見られるように、台座41を設ける部分の衣服生地2に位置合わせマーク21を設ける。位置合わせマーク21は、第2工程で衣服生地2に仮開口27を設けることにより、生地側切除片26と共に取り除かれるため、除去不能な印であってもよい。本例の位置合わせマーク21は、油性マジックによる十字模様である。中間シート12及び接着シート13の位置合わせ開口14に中心を揃える観点から、位置合わせマーク21は、小さな点でもよい。
【0030】
まず、第1工程として、
図4及び
図5に見られるように、位置合わせ用開口14を、衣服生地2に設けた位置合わせマーク21が中心に来るように揃えて台座シート1を配置する。本例は、衣服生地2の内面に本体シート11を接面させる。すなわち、台座シート1は、裏返して接着シート13が見えるように、衣服生地2の内面に配置する。これにより、ひっくり返した台座シート1は、衣服生地2の外面に本体シート11が視認できる台座41を構成できる。逆に、本体シート11を衣服生地2の内面に隠したい場合、第1工程において、衣服生地2の外面に本体シート11を接面させる。
【0031】
衣服生地2に対する台座シートの位置合わせは、例えば
図6に見られるように、台座シート1の外径と同じ内径の円形開口31を有する位置合わせプレート3を用いる方法もある。縫合作業が自動化されたミシン(例えばレーザー特殊ミシン)は、作業面に対して衣服生地2を特定の姿勢で固定するため、前記衣服生地2に対して一定の位置関係で宛てがわれる位置合わせプレート3を用意しておけば、台座シート1も衣服生地2に対して位置合わせができる。この場合、台座シート1に位置合わせ開口は不要である(
図6参照)。
【0032】
台座シート1の位置合わせを終えると、第1工程として、
図7及び
図8に見られるように、本体シート11の内周縁(シート側開口111の内周縁)に沿って中間シート12及び接着シート13を衣服生地2に縫着する。第1工程の縫着ライン23は、衣服生地2に対して台座シート1を仮固定し、第2工程において仮開口17,27及び台形片18,28を設ける際、台座シート1が衣服生地2からずれないようにする働きを有する。台形片18,28を形成する切れ込み181,281をシート側開口111の内周縁ぎりぎりにまで延ばすことができるように、第1工程の縫着ライン23は、前記シート側開口111に沿ってもうけるようにするとよい。
【0033】
台座シート1の仮固定を終えると、第2工程として、
図9及び
図10に見られるように、第1工程の縫着ライン23により一体にした中間シート12、接着シート13及び衣服生地2に仮開口17,27を設ける。台座シート1側の仮開口17と衣服生地2側の仮開口27とは、一体にした中間シート12、接着シート13及び衣服生地2から同じ円形状のシート側切除片15及び生地側切除片26をカッター又はハサミにより切除して設けられるため、同じ形状でそれぞれの内周縁が一致している。仮開口14,27を設けるため、例えばシート側切除片15に相当する円を中間シート12に描いて、前記円に沿ってシート側切除片15及び生地側切除片26を切除するとよい。
【0034】
台形片18,28の半径方向の長さは、仮開口17,27の内周縁からシート側開口111の内周縁までの幅で、本体シート11の半径方向の幅より短ければよい。このため、仮開口17,27が正確な円形でなくても、台形片18,28の半径方向の長さが本体シート11の半径方向の幅より短くなれば、仮開口17,27は多角形でも構わない。仮開口17,27を一度に設けることが難しい場合、例えば位置合わせ開口14から半径方向に複数の切れ込みを中間シート12及び接着シート13に設け、前記切れ込みの半径方向外向きの端を結んで仮開口17,27を設ける。この場合、切れ込みの端を周方向の円弧で結ぶと円形の仮開口17,27が設けられ、前記端を直線で結ぶと多角形の仮開口17,27が設けられる。
【0035】
台座シート1及び衣服生地2に仮開口17,27を設けると、第2工程として、
図11及び
図12に見られるように、第1工程の縫着ライン23により一体にした中間シート12、接着シート13及び衣服生地2に台形片18,28を設ける。台形片18,28は、仮開口17,27の内周縁から本体シート11の内周縁まで半径方向外向きに延びる多数の切れ込み181,281を、中間シート12、接着シート13及び衣服生地2に入れて、設けられる。切れ込み181,281は、24本〜40本が目安であり、台形片18,28は切れ込み181,281と同数となる。隣り合う切れ込み181,281は、間隔が異なってもよいが、等間隔が望ましい。仮開口17,27同様、台座シート1側の台形片18と衣服生地2側の台形片28とは、同じ形状でそれぞれの外形が一致している。本例の台形片18,28は、半径方向の長さが本体シート11の半径方向の幅の半分弱である。
【0036】
仮開口17,27及び台形片18,28は、どちらを先に設けてもよい。本例は、位置合わせ開口14を中心に仮開口17,27を先に設け、前記仮開口17,27の内周縁から本体シート11の内周縁にかけて切れ込み181,281を入れることにより、後から台形片18,28を設ける手順としている。逆の手順の場合、切れ込み181,281の終端を本体シート11の内周縁とすることは同じだが、切れ込み181,281の始端が定まらない。これから、仮開口17,27の大きさを決めて、前記仮開口17,27の内周縁より内側に切れ込み181,281の始端を設定する。
【0037】
仮開口17,27及び台形片18,28を設けた後、第3工程として、
図13〜
図16に見られるように、仮開口17,27を通して本体シート11及び台形片18,28を一緒に引っくり返し、衣服生地2と本体シート11とで台形片18,28を挟む。衣服生地2の内面には、生地側開口22が形成される(
図13参照)。生地側開口22は、衣服生地2と本体シート11とに挟まれた台形片18,28を形成する切れ込み181,281の終端を結んだ円形開口である。切れ込み181,281の終端は、本体シート11の内周縁=シート側開口111の内周縁にある。これから、生地側開口22とシート側開口111とは一致する。
【0038】
本体シート11及び台形片18,28を引っくり返した後、第3工程として、
図17及び
図18に見られるように、シート側開口111及び生地側開口22を一致させた状態で、接着シート13を衣服生地2に接着する。接着シート13は、熱融着接着剤層を衣服生地2に接触させており、例えば本体シート11に接面させたアイロンで台座シート1を加熱する。これにより、アイロンから接着シート13に伝わった熱により前記熱融着接着剤層の熱融着接着剤が一時的に融解し、接着シート13が衣服生地2に接着する。
【0039】
衣服生地2と本体シート11とに挟まれる台形片18は、接着シート13の一部分も含まれ、引っくり返した接着シート13に接面している。このため、接着シート13を衣服生地2に接着させる際、台座シート1をアイロンで加熱すると、台形片18及び接着シート14の熱融着接着剤が一時的に融解し、強固に一体化される。本例の台形片18は、上述したように、半径方向の長さが本体シート11の半径方向の幅の半分弱である。これから、接着シート14と強固に一体化された台形片18は、本体シート11の幅に収まり、前記本体シート11を補強する芯材として機能する。
【0040】
接着シート14を衣服生地2に接着した後、第4工程として、
図19及び
図20に見られるように、内周側隙間113及び外周側隙間115に沿って本体シート11を衣服生地2に縫着すれば、台座41が完成する。第4工程の内周側縫着ライン24及び外周側縫着ライン25は、接着された衣服生地2と台座シート1とを強固に一体化する働きがある。特に、台形片18,28を衣服生地2と共に挟んだ本体シート11の部分は、内周側縫着ライン24を設けることにより、前記台形片18,28の分離が防止される。内周側縫着ライン24及び外周側縫着ライン25を設ける順番は自由であるが、内周側縫着ライン24を設けた後、外周側縫着ライン25を設ける方が、台座シート1を平坦に保ちやすい。
【0041】
内周側補強層112及び外周側補強層114により形成される内周側隙間113及び外周側隙間115は、それぞれ内周側縫着ライン24及び外周側縫着ライン25の目安である。内周側縫着ライン24及び外周側縫着ライン25は、内周側隙間113及び外周側隙間115の延在方向に沿って形成できれば、前記内周側隙間113及び外周側隙間115の範囲で蛇行しても構わない。これにより、内周側縫着ライン24及び外周側縫着ライン25が手作業により形成される場合でも、作業者の違いによる内周側縫着ライン24及び外周側縫着ライン25のばらつきが抑制され、台座41の品質が保証される。
【0042】
こうして、本発明の台座シート1を用いると、
図21に見られるように、衣服生地2に台座シート1を貼り付け、更に縫着して構成される台座41を有するファン付き衣服4が提供できる。本発明により台座41を設けたファン付き衣服4は、台形片28を折り返してシート側開口111に一致する生地側開口22を形成しているから、ファン(図示略)を嵌合させるシート側開口111の内周縁に衣服生地2の裁断縁が露出しない。また、本発明により台座41を設けたファン付き衣服4は、本体シート11と衣服生地2との間に台形片18,28を挟み、台座シート1を衣服生地2に接着かつ縫着して、強固な台座41を形成する。