特許第6857420号(P6857420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6857420がんの罹患の可能性の試験方法およびそれに用いる試験試薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857420
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】がんの罹患の可能性の試験方法およびそれに用いる試験試薬
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20210405BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20210405BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   C12Q1/68ZNA
   C12Q1/686 Z
   !C12N15/09 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-513680(P2019-513680)
(86)(22)【出願日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】JP2018016108
(87)【国際公開番号】WO2018194120
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-83898(P2017-83898)
(32)【優先日】2017年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505457994
【氏名又は名称】学校法人東京医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(72)【発明者】
【氏名】大屋敷 純子
(72)【発明者】
【氏名】梅津 知宏
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2015年,E6293-E6300
【文献】 RNA BIOLOGY,2016年,Vol. 13, No. 8,pp.690-695
【文献】 Biomarkers Med.,2013年,Vol. 7, No. 5,pp.769-778
【文献】 Frontiers in Genetics,2015年,Vol. 6,Article 143
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の血液試料について、テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現量を測定する測定工程と、
前記被検者の血液試料におけるTERRAの発現量を、基準値と比較することにより、前記被検者の血液がんの現在の罹患の可能性を試験する試験工程とを含み、
前記基準値が、健常者の血液試料におけるTERRAの発現量または血液がん患者の血液試料におけるTERRAの発現量であり、
前記試験工程において、前記被検者の血液試料におけるTERRAの発現量が、前記健常者の血液試料におけるTERRAの発現量よりも高い場合、前記血液がん患者の血液試料におけるTERRAの発現量と同じ場合または、前記血液がん患者の血液試料におけるTERRAの発現量よりも高い場合に、前記被検者は、血液がんに罹患している可能性があるとすることを特徴とする、血液がんの現在の罹患の可能性の試験方法。
【請求項2】
前記血液がんは、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、および急性骨髄性白血病からなる群から選択された少なくとも1つである、請求項記載の試験方法。
【請求項3】
前記血液試料は、前記血液試料由来の細胞外小胞を含む試料である、請求項1または2記載の試験方法。
【請求項4】
さらに、前記被検者の血液試料から、細胞外小胞を分離する分離工程を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の試験方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の血液がんの現在の罹患の可能性の試験方法に使用する試験試薬であって、
テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現測定試薬を含むことを特徴とする、試験試薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの罹患の可能性の試験方法およびそれに用いる試験試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
血液がん(造血器腫瘍)の診断では、まず、被検者に骨髄穿刺等の生検を実施することで生体試料(骨髄細胞等)を取得する。そして、得られた生体試料における細胞の形態を検討し、腫瘍細胞の割合等を検査する(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、骨髄穿刺等の生検による生体試料の取得は、被検者への負担が非常に大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】直江知樹 編集「白血病/骨髄異形成症候群(インフォームドコンセントのための図説シリーズ)」、医薬ジャーナル社、2013年、18−19頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、被検者の負担が緩和されたがんの罹患の可能性の試験方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のがんの罹患の可能性の試験方法(以下、「試験方法」ともいう)は、被検者の血液試料について、テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現量を測定する測定工程を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の試験試薬は、前記本発明の試験方法に使用する試験試薬であって、
テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現測定試薬を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検者の負担を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1において、細胞外小胞におけるTERRAの相対的発現量を示すグラフである。
図2図2は、実施例2において、血液試料の細胞外小胞におけるTERRAの相対的発現量を示すグラフである。
図3図3は、実施例3において、血液試料の細胞外小胞におけるTERRAの相対的発現量を示すグラフである。
図4図4は、実施例4において、多発性骨髄腫におけるROC曲線を示すグラフである。
図5図5は、実施例4において、骨髄異形成症候群および骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病におけるROC曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<がんの罹患の可能性の試験方法>
本発明のがんの罹患の可能性の試験方法は、前述のように、被検者の血液試料について、テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現量を測定する測定工程を含むことを特徴とする。本発明は、がんマーカーとして、血液試料におけるTERRAの発現量を測定することが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。
【0011】
本発明者は、鋭意研究の結果、血液試料、特に、血液試料に含まれる細胞外小胞におけるテロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現が、がんの発症と相関を示すことを見出し、本発明を確立するに至った。本発明によれば、血液試料におけるTERRAの発現量を測定することによって、被検者のがんの罹患の可能性を試験できる。
【0012】
本発明の試験方法によれば、例えば、がんの発症の可能性、がんの発症の有無(がん化しているか否か)、がんの進行度および予後の状態等を評価できる。対象となるがんは、例えば、血液がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、子宮がん等があげられる。前記血液がんは、例えば、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病等があげられる。前記急性骨髄性白血病は、例えば、骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病である。また、本発明によれば、例えば、原発巣のがん、転移がんのいずれであっても試験できる。
【0013】
本発明において、TERRAは、染色体のサブテロメア領域および前記サブテロメア領域に隣接する1以上のテロメアの反復配列(例えば、哺乳類の場合、5’-TTAGGG-3’)を鋳型として、RNAポリメラーゼ(例えば、RNAポリメラーゼII)により転写されたRNAを意味する。このため、TERRAは、例えば、サブテロメア領域の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、前記サブテロメア領域に隣接する1以上のテロメアの反復配列およびその部分配列の少なくとも一方と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとを含むRNAである。また、RNAポリメラーゼは、例えば、前記鋳型からRNAを転写する際に、1以上のテロメアの反復配列のうち、任意の数のテロメアの反復配列を鋳型として転写を行なう。このため、本発明において、測定対象のTERRAは、異なる長さのTERRAを含んでもよい。本発明において、TERRAは、いずれかの染色体に由来してもよいし、複数の染色体に由来してもよい。前記被検体がヒトの場合、TERRAは、例えば、第1〜第23番染色体、X染色体およびY染色体のいずれかに由来してもよいし、2つ以上の染色体に由来してもよいが、がんにおいて染色体の欠失が生じる可能性が、他の染色体より低く、より正確に試験ができることから、好ましくは、第10番染色体に由来する。また、TERRAは、例えば、染色体の長腕に由来してもよいし、染色体の短腕に由来してもよい。本発明において、ある塩基配列に対して他の塩基配列が相補的であるとは、一方の5’側から3’側に向かう塩基配列と、他方の3’側から5’側に向かう塩基配列とを対比させた際に、互いの塩基が相補的であることを意味する。
【0014】
TERRAの由来は、特に制限されず、例えば、被検者の種類によって適宜設定できる。前記由来は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類があげられる。各種動物由来のTERRAの塩基配列は、例えば、各種動物のテロメアの反復配列と、各種動物のサブテロメア領域の塩基配列から予測できる。具体例として、ヒトの第10番染色体の長腕由来TERRAの塩基配列は、例えば、下記配列番号1の塩基配列(ヒト10q染色体サブテロメア領域の塩基配列)と、1以上の下記配列番号2の塩基配列(ヒトテロメアの反復配列が5回繰り返した塩基配列)とを5’末端側からこの順番で連結した塩基配列またはその部分配列に対して相補的な塩基配列があげられる。
【0015】
ヒト10q染色体サブテロメア領域(配列番号1)
5’-tgggacacagccacatacatgtgttatatgacgtctctggctactttcatggtataatggaagagctgagtcattgagagagagaccatatggcttggaaaatttaaaatatttaacatttagccctttgcagaaaatatttgctgactcttgttttaaaagatctctgtggccaggcgtggtggctcacgtctgtaatcccagcactttgggacgccgaggctagcggatcacgaggccaggagatcaagaccatcctggctaacccagtgaaacctcgtctctactaaaaatacaaaaaaattagccgggtgtggtggcgggcgactgtagtcccagctactccagaggctgaggcaggagaatggtgtgaacctgggaggaggagcttgcagtgacccgggatcgtgtcactgcattccagcccgggcaacagagcaagactccatctcaaaaaaaaaaaggatctctgtttagaatgctacctattgccttctggatagaatcacaactctttaccacaaacaacacagcttcagccctgcttctatatccagcctcatctatttctgctcctcctccttattttcctcctggacatgctgatggattgtcagacttcccagatgtgtgagagtctctcctgccttcctaacattctcatgctctccctctg-3’
【0016】
ヒトテロメアの反復配列×5(配列番号2)
5’-TTAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGGTTAGGG-3’
【0017】
本発明の試験方法において、前記被検者は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物等があげられ、前記非ヒト動物は、前述のように、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類があげられる。
【0018】
前記血液試料は、特に制限されず、例えば、全血、血清、血漿等であり、好ましくは、血清または血漿である。前述のように、前記血液試料に含まれる細胞外小胞におけるTERRAの発現が、がんの発症と相関を示す。このため、前記血液試料は、例えば、前記血液試料由来の細胞外小胞(エクソソーム)を含む試料であってもよく、具体例として、前記血液試料から分離された細胞外小胞を含む試料であってもよい。前記分離された細胞外小胞を含む試料を用いることで、例えば、前記血液試料に含まれる遊離核酸によるTERRA測定への影響を抑制することができる。また、前記細胞外小胞内のTERRAは、例えば、前記血液試料におけるRNAと比較して、分解酵素による分解を受けにくい。このため、前記分離された細胞外小胞を含む試料を用いることで、例えば、前記血液試料と比較して、未分解のTERRAを多く含む状態で測定でき、より正確にTERRAの発現量を測定できる。さらに、前記細胞外小胞内のTERRAは、例えば、物理的にも時間的にも安定であるため、冷凍保存後および長期保存後であっても、より正確にTERRAの発現量を測定できる。
【0019】
前記血液試料が前記血液試料由来の細胞外小胞を含む試料である場合、本発明の試験方法は、さらに、前記被検者の血液試料から、細胞外小胞を分離する分離工程を含んでもよい。前記分離工程では、前記被検者の血液試料が含む細胞外小胞のうち、一部または全部を分離する。前記分離工程では、前記細胞外小胞を、精製または濃縮できることから、前記分離工程は、例えば、精製工程または濃縮工程ということもできる。前記細胞外小胞の分離方法は、特に制限されず、例えば、密度勾配遠心法、細胞外小胞の外膜に存在する物質に結合する抗体が固定化された担体を用いた分離方法、超遠心法(例えば、100000×g、70分間の遠心を2回)、特定のエクソソーム(例えば、CD63陽性)を分離するためのアフィニティーカラムによる分離法、Exo(商標)Quick(System Biosciences社製)等の市販の抽出キットを用いた方法等があげられる。
【0020】
前記測定工程において、TERRA発現の測定方法は、例えば、逆転写(Reverse transcription:RT)−PCR法等の逆転写反応を利用した遺伝子増幅法等の公知の核酸分子の測定方法、TERRAに相補的なRNAプローブを用いたノーザンブロッティング法、RNA−FISH法(RNA-fluorescence in situ hybridization)等があげられる。具体例として、TERRA発現の測定は、例えば、TERRAから逆転写反応でcDNAを合成し、前記cDNAを鋳型として、プライマーを用いたPCR(polymerase chain reaction)等の遺伝子を増幅する方法により実施できる。
【0021】
本発明の試験方法は、例えば、さらに、前記被検者の血液試料(以下、「被検血液試料」ともいう)におけるTERRAの発現量を、基準値と比較することにより、前記被検者のがんの罹患の可能性を試験する試験工程を含む。前記基準値は、特に制限されず、例えば、健常者、がん患者および進行ステージごとのがん患者のTERRAの発現量、健常者とがん患者とを区別可能な閾値のTERRAの発現量等があげられる。予後の評価の場合、前記基準値は、例えば、同じ被検者の治療後(例えば、治療直後)のTERRAの発現量であってもよい。
【0022】
前記基準値は、例えば、前述のような、健常者および/またはがん患者から単離した血液試料(以下、「基準血液試料」ともいう)を用いて、得ることができる。また、予後の評価の場合、例えば、同じ被検者から治療後に単離した基準血液試料を用いてもよい。前記基準値は、例えば、前記被検者の被検血液試料と同時に測定してもよいし、予め測定してもよい。後者の場合、例えば、前記被検者の被検血液試料を測定する度に、基準値を得ることが不要となるため、好ましい。前記被検者の被検血液試料と前記基準血液試料は、例えば、同じ条件で採取し、同じ条件でTERRAの測定を行うことが好ましい。
【0023】
前記被検血液試料および前記基準血液試料におけるTERRAの発現量は、それぞれ、前記被検血液試料および前記基準血液試料における内部標準物質の発現量に基づき、補正されてもよい。前記内部標準物質は、例えば、前記被検体間で発現量が実質的に一定のRNA等があげられる。具体例として、前記血液試料に含まれる細胞外小胞におけるTERRAの発現量を測定する場合、前記内部標準物質は、miR−16等があげられる。
【0024】
前記試験工程において、被検者のがんの罹患の可能性の評価方法は、特に制限されず、前記基準値の種類によって適宜決定できる。具体例として、前記被検者の被検血液試料におけるTERRAの発現量が、前記健常者の基準血液試料におけるTERRAの発現量よりも有意に高い場合、前記がん患者の基準血液試料におけるTERRAの発現量と同じ場合(有意差が無い場合)、および/または、前記がん患者の基準血液試料におけるTERRAの発現量よりも有意に高い場合、前記被検者は、がんに罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記被検者の被検血液試料におけるTERRAの発現量が、前記健常者の基準血液試料におけるTERRAの発現量と同じ場合(有意差が無い場合)、前記健常者の基準血液試料におけるTERRAの発現量よりも有意に低い場合、および/または、前記がん患者の基準血液試料におけるTERRAの発現量よりも有意に低い場合、前記被検者は、がんに罹患する可能性が無いまたは可能性が低いと評価できる。また、前記試験工程において、前記被検者の被検血液試料におけるTERRAの発現量を、前記進行ステージごとのがん患者の基準血液試料におけるTERRAの発現量と比較することで、がんの進行度を評価できる。具体的には、前記被検者の被検血液試料が、例えば、いずれかの進行ステージの前記基準血液試料と同程度の発現量の場合(有意差が無い場合)、前記被検者は、前記進行ステージの可能性があると評価できる。前記基準値が閾値の場合、前記被検者の被検血液試料におけるTERRAの発現量が、前記閾値よりも高い場合、前記被検者は、がんに罹患する可能性があるまたは可能性が高いと評価できる。また、前記被検者の被検血液試料におけるTERRAの発現量が、前記閾値よりも低い場合、がんに罹患する可能性が無いまたは可能性が低いと評価できる。
【0025】
前記試験工程において、予後の状態を評価する場合、例えば、前述と同様に評価してもよいし、基準値として、同じ被検者の治療後の基準血液試料におけるTERRAの発現量を使用して評価することもできる。具体例として、前記被検者の被検血液試料におけるTERRAの発現量が、前記基準値よりも有意に高い場合、前記被検者は、前記治療後、再発または悪化の可能性があると評価できる。また、前記被検者の被検血液試料におけるTERRAの発現量が、前記基準値と同じ場合(有意差が無い場合)、および/または、前記基準値よりも有意に低い場合、前記被検者は、前記治療後、再発の可能性が無いもしくは可能性が低いと評価できる。
【0026】
本発明においては、例えば、同じ被検者の血液試料を経時的に採取し、前記血液試料におけるTERRA発現量を比較してもよい。これによって、例えば、経時的に発現量が増加すれば、罹患の可能性が高くなった等の判断が可能であり、経時的に発現量が低下すれば、罹患の可能性が低くなったまたは治癒してきた等の判断が可能である。
【0027】
<試験試薬>
本発明の試験試薬は、前記本発明の試験方法に使用する試験試薬であって、テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現測定試薬を含むことを特徴とする。本発明の試験試薬によれば、前記本発明のがんの罹患の可能性の試験方法を簡便に行える。本発明は、がんの罹患の可能性の試験にTERRAの発現の測定を使用することが特徴であり、TERRAの発現が測定できればよく、前記発現測定試薬の構成は、特に制限されない。前記TERRAの発現測定試薬は、例えば、RNAの発現測定試薬があげられ、具体例として、TERRAを逆転写する試薬、および前記逆転写により生じたcDNAを増幅する試薬、すなわち、逆転写酵素、プライマーセット、DNAポリメラーゼ、dNTP等があげられる。前記プライマーセットは、例えば、TERRAの塩基配列に基づいて適宜設計できる。TERRAは、前記サブテロメア領域に対応する塩基配列を有するため、前記プライマーセットは、例えば、前記サブテロメア領域の塩基配列に対応するポリヌクレオチドまたはその一部を増幅可能なように設計されることが好ましい。本発明の試験試薬は、例えば、前記本発明の試験方法の説明を援用できる。
【0028】
<がんの診断方法および診断試薬>
本発明のがんの診断方法は、被検者の血液試料におけるテロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現量を測定する工程を含むことを特徴とする。また、本発明のがんの診断試薬は、テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現測定試薬を含むことを特徴とする。なお、本発明のがんの診断方法および診断試薬は、前記本発明の試験方法および試験試薬の説明を援用できる。
【0029】
<試験試薬の使用>
本発明の試験試薬の使用は、テロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現測定試薬の前記本発明の試験方法のための使用である。なお、本発明の試験試薬の使用は、前記本発明の試験方法および試験試薬の説明を援用できる。
【0030】
<がんの治療方法>
本発明のがんの治療方法(以下、「治療方法」ともいう)は、被検者についてがんの診断を行なう診断工程と、前記診断工程において、がんの罹患可能性があると評価された被検者(以下、「がん患者」または「投与対象」ともいう)に、がん治療薬を投与する投与工程とを含み、前記診断工程が、前記本発明の試験方法により実施されることを特徴とする。本発明の治療方法は、前記診断工程が、前記本発明の試験方法により実施されることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の治療方法は、例えば、前記本発明の試験方法および試験試薬の説明を援用できる。
【0031】
前記がんの罹患可能性があると評価された被検者は、例えば、がんと診断された被検者があげられる。
【0032】
前記投与工程において、前記がん患者に投与するがん治療薬は、特に制限されず、例えば、がんの種類に応じて適宜決定できる。前記がんが血液がんの場合、前記がん治療薬は、例えば、イマチニブ等があげられる。前記がんが多発性骨髄腫の場合、前記がん治療薬は、例えば、ボルテゾミブ、レナリドミド等があげられる。前記がんが骨髄異形成症候群の場合、前記がん治療薬は、例えば、アザシチジン、レナリドミド等があげられる。前記がんが急性骨髄性白血病の場合、前記がん治療薬は、例えば、シタラビン等があげられる。
【0033】
前記がん治療薬の投与条件は、特に制限されず、例えば、対象となるがんの種類、がんの進行度、患者の年齢等に応じて、投与形態、投与方法、投与時期、投与量等を適宜設定できる。
【0034】
前記投与対象は、例えば、細胞、組織または器官があげられる。前記投与対象は、例えば、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物があげられる。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等の哺乳類等があげられる。前記投与は、例えば、in vivoでもin vitroでもよい。
【0035】
前記投与形態は、特に制限されず、例えば、経口剤、注射液、点滴静注液等の液剤、懸濁剤、乳剤、注射剤、噴霧剤、粉末剤、貼付剤等があげられる。
【0036】
前記投与方法は、特に制限されず、例えば、投与対象に応じて適宜決定できる。前記投与方法は、例えば、非経口投与、経口投与等があげられる。前記非経口投与は、例えば、局所投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、リンパ管内投与、腫瘍内投与等があげられる。
【実施例】
【0037】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0038】
[実施例1]
様々ながん細胞由来の細胞株について、細胞外小胞におけるTERRAの発現量が上昇していることを確認した。
【0039】
(1)細胞株
がん細胞由来の細胞株としては、以下の細胞株を使用した。
(白血病由来)
U937(ATCC(American Type Culture Collection)から入手)
HL−60(ATCCから入手)
(多発性骨髄腫由来)
RPMI8226(ATCCから入手)
KMS−11(JCRB細胞バンクから入手)
(肺がん由来)
SCT−1(ATCCから入手)
(卵巣がん由来)
Kuramochi(JCRB細胞バンクから入手)
【0040】
また、比較例の正常細胞の細胞株としては、以下の細胞株を使用した。
(ヒト皮膚線維芽細胞)
NHDF(normal dermal fibroblast、JCRB細胞バンクから入手)
(EBウイルス形質転換B細胞)
HEV0034(理研バイオリソースセンター(RIKEN BRC)から入手)
HEV0046(RIKEN BRCから入手)
【0041】
(2)サンプル調製
各細胞について、培養液中で、37℃、5%COの条件で24時間培養した。U937、HL−60、RPMI8226、KMS−11、HEV0034、およびHEV0046の培養液の組成は、10%牛胎児血清(Fetal bovine serum (FBS))および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培地とした。また、SCT−1、Kuramochi、およびNHDFの培養液の組成は、10%FBS、1×非必須アミノ酸(Non-Essential Amino Acids Solution(NEAA))および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培地とした。
【0042】
前記培養後、各細胞株の培養上清を回収した。つぎに、200μLの培養上清に、100μLのリン酸緩衝液(PBS)を添加し、希釈培養上清を調製した。さらに、前記希釈培養上清に、10μLのProteinaseK(Invitrogen社製)を添加し、よく混合した。前記混合後、37℃で10分間インキュベートした。つぎに、60μLのTotal Exosome Isolation Reagent(Thermo Fisher Scientific社製)を加えよく混合し、4℃で30分間インキュベートした。前記インキュベート後、得られた混合物を10000×gで5分間遠心した。そして、上清を除去し、沈殿物を200μLのPBSで懸濁し、細胞外小胞画分として回収した。
【0043】
(3)総RNAの回収
200μLの細胞外小胞画分に、700μLのQIAzol Lysis Reagent(QIAGEN社製)を添加し、よく混合した。得られた混合液に、2.85μLの合成ath−miR−159(0.1nmol/L、シロイヌナズナ由来miR-159の合成miRNA mimic、北海道システムサイエンス社製)を添加し、よく混合し、室温(約25℃)で5分静置した。前記静置後、200μLのクロロホルムを添加し、40秒間激しく混合し、さらに、室温で5分静置した。つぎに、クロロホルム添加後の混合液について、4000rpmの条件で、15分間遠心し、2層に分離した状態の上段側の溶液を回収した。そして、回収した溶液と等量のエタノールを添加および混合後、得られた混合液をmiRNeasy mini Kit(QIAGEN社製)付属のスピンカラムに添加し、8000×gで1分間遠心した。つぎに、miRNeasy mini Kitの添付のプロトコルに従い、前記スピンカラムを洗浄し、さらに総RNAを溶出することにより35μLの総RNA溶液を取得した。
ath−miR−159(配列番号3)
5’-uuuggauugaagggagcucua-3’
【0044】
(4)TERRAの測定
つぎに、下記組成となるように各試薬を混合し、逆転写準備液を調製した。
【0045】
(逆転写準備液)
総RNA溶液 2.5μL
TERRA逆転写プライマー(2μmol/L) 1μL
dNTP 1μL
DNase/RNase free water 5.5μL
合計 10μL
【0046】
TERRA逆転写プライマー(配列番号4)
5’-CCCTAACCCTAACCCTAACCCTAACCCTAA-3’
【0047】
前記逆転準備液を氷上で1分間静置した後、下記組成の逆転写反応液を調製した。なお、逆転写準備液以外の試薬は、SuperScript(登録商標)III-Strand Synthesis System Kit(Invitrogen社製)に添付のものを使用した。
【0048】
(逆転写反応液)
逆転写準備液 10μL
10×RT buffer 2μL
MgCl(25mmoL/L) 4μL
DTT 2μL
RNase Inhibitor 1μL
SuperScript酵素 1μL
合計 20μL
【0049】
前記逆転写反応液を55℃で50分間インキュベート後、酵素反応の停止のため、85℃で4分間インキュベートし、さらに、氷上にサンプルを静置した。前記静置後、1μLのRNaseHを添加し、37℃で20分間インキュベートすることにより、cDNA溶液を得た。
【0050】
さらに、下記組成となるように各試薬を混合し、リアルタイム(RT)−PCR反応液を調製した。
【0051】
(RT−PCR反応液)
cDNA溶液 1μL
TERRA用フォワードプライマー(25nmol/L) 1μL
TERRA用リバースプライマー(25nmol/L) 1μL
2×SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems) 12.5μL
DNase/RNase free water 9.5μL
合計 25μL
【0052】
TERRA用フォワードプライマー(配列番号5)
5’-GAATCCTGCGCACCGAGAT-3’
TERRA用リバースプライマー(配列番号6)
5’-CTGCACTTGAACCCTGCAATAC-3’
【0053】
前記RT−PCR反応液について、RT−PCR装置(Applied Biosystems 7900HT Fast Real Time PCR System、Applied Biosystems社製)を用いて、95℃、10分で反応後、95℃、15秒および60℃、1分を1サイクルとし、50サイクル反応を実施することによりRT−PCRを実施した。
【0054】
(5)コントロールの測定
下記組成となるように各試薬を混合し、コントロールの逆転写準備液を調製した。なお、各試薬は、TaqMan MicroRNA Assay Kit(Thermo Fisher Scientific社製)に添付のものを使用した。
【0055】
(コントロールの逆転写準備液)
10×RT buffer 2μL
dNTP(100mmol/L) 0.2μL
RT Enzyme 1μL
ath-miR-159用5×RT primer 1μL
hsa-miR-16用5×RT primer 1μL
DNase/RNase free water 4.8μL
合計 10μL
【0056】
つぎに、10μLのコントロールの逆転写準備液に、10μLの総RNA溶液を添加することで、コントロールの逆転写反応液を調製し、これを氷上で5分間静置した。前記コントロールの逆転写反応液について、16℃で30分間インキュベート後、42℃で30分間インキュベートし、さらに、85℃で5分間インキュベートすることにより、コントロールのcDNA溶液を取得した。
【0057】
さらに、下記組成となるように各試薬を混合し、コントロールのRT−PCR反応液を調製した。なお、cDNA溶液以外の試薬は、TaqMan MicroRNA Assay Kit(Thermo Fisher Scientific社製)に添付のものを使用した。
【0058】
(コントロールのRT−PCR反応液)
cDNA溶液 1μL
20×assay reagent
(ath-miR-159用またはhas-miR-16用) 1μL
2×Universal PCR Master Mix 10μL
DNase/RNase free water 8μL
合計 20μL
【0059】
そして、前記コントロールのRT−PCR反応液について、前記実施例1(4)と同様にして、RT−PCRを実施した。
【0060】
(6)TERRAの発現量の算出
別途、コントロールRNA(Stratagene QPCR Human Reference Total RNA)からcDANを合成することにより調製したコントロールサンプルを1/10、1/100、および1/1000に段階希釈し、前記RT−PCR反応液と同時にRT−PCRを行い、得られた結果から検量線を作成した。そして、TERRAの発現量は、RT−PCRによって得られた各サンプルのCt値と、前記検量線とを用いて相対的な発現量として算出した。なお、NHDF細胞株由来のサンプルにおけるTERRAの発現量を1とした。
【0061】
つぎに、コントロールmiRNA(外来性ath−miR−159および内在性has−miR−16)について、RT−PCRにより得られたCt値から比較Ct法によって相対的な発現量として算出した。なお、NHDF細胞株由来のサンプルにおけるTERRAの発現量を1とした。
【0062】
そして、コントロールmiRNAの発現量を用いて、各サンプルのTERRAの発現量を標準化した(TERRAの発現量/コントロールmiRNAの発現量)。これらの結果を図1に示す。
【0063】
図1は、細胞外小胞におけるTERRAの相対的発現量を示すグラフである。図1において、横軸は、細胞株の種類を示し、縦軸は、TERRAの相対的発現量を示す。図1に示すように、様々ながん細胞由来の細胞株において、正常細胞の細胞株と比較して、細胞外小胞のTERRAの発現量が増加していることが分かった。これらの結果から、細胞外小胞のTERRAが、がんマーカーになり得ることが分かった。
【0064】
[実施例2]
多発性骨髄腫の患者由来の血液試料の細胞外小胞において、TERRAの発現量が上昇していることを確認した。
【0065】
健常者20名(若年者10名、老年者10名)および多発性骨髄腫の患者37名から末梢血2mLを採取した。得られた末梢血を3000rpmで15分間で遠心し、上清部分(血漿成分)を回収した。つぎに、100μL血漿に100μLのPBSを添加し、希釈血漿を調製した。前記希釈培養上清に代えて、前記希釈血漿を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、標準化されたTERRAの発現量を算出した。この結果を図2に示す。
【0066】
図2は、細胞外小胞におけるTERRAの相対的発現量を示すグラフである。図2において、横軸は、被検者の種類(健常者:NC、多発性骨髄腫:MM)を示し、縦軸は、TERRAの相対的発現量を示す。図2に示すように、多発性骨髄腫の患者由来の血液試料の細胞外小胞において、健常者と比較して、TERRAの発現量が有意に増加していることが分かった。これらの結果から、細胞外小胞のTERRAが、がんマーカーになることが分かった。
【0067】
[実施例3]
急性骨髄性白血病の患者由来の血液試料の細胞外小胞において、TERRAの発現量が上昇していることを確認した。
【0068】
健常者20名(若年者10名、老年者10名)、骨髄異形成症候群の患者20名(低リスク群6名、中リスク群4名、高リスク群8名)、および骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病の患者8名から末梢血2mLを採取した。得られた末梢血を3000rpmで15分間で遠心し、上清部分(血漿成分)を回収した。つぎに、100μL血漿に100μLのPBSを添加し、希釈血漿を調製した。前記希釈培養上清に代えて、前記希釈血漿を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、標準化されたTERRAの発現量を算出した。この結果を図3に示す。
【0069】
図3は、細胞外小胞におけるTERRAの相対的発現量を示すグラフである。図3において、横軸は、被検者の種類(健常者:NC、骨髄異形成症候群(低リスク群):MDS_low_risk、骨髄異形成症候群(中リスク群):MDS_int_risk、骨髄異形成症候群(高リスク群):MDS_high_risk、骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病:post MDS/AML)を示し、縦軸は、TERRAの相対的発現量を示す。図3に示すように、いずれのリスク群の骨髄異形成症候群の患者由来の血液試料の細胞外小胞および急性骨髄性白血病の患者由来の血液試料の細胞外小胞においても、健常者と比較して、TERRAの発現量が有意に増加していることが分かった。これらの結果から、細胞外小胞のTERRAが、がんマーカーになることが分かった。
【0070】
[実施例4]
多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、および骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病について、TERRAにより精度よく罹患の可能性を試験できることを確認した。
【0071】
前記実施例2および3における多発性骨髄腫の患者、骨髄異形成症候群の患者および骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病の患者由来の血液試料の細胞外小胞におけるTERRAの発現量に基づき、ROC(receiver operating characteristic curve)解析を行なった。また、得られたROC曲線に基づき、ROC曲線下面積(AUC:area under the curve)を算出した。これらの結果を図4および5に示す。
【0072】
図4は、多発性骨髄腫におけるROC曲線を示すグラフである。図4において、横軸は、偽陽性率(100%−特異度(%))を示し、縦軸は、感度(陽性率)を示す。図4に示すように、TERRAの発現量は、多発性骨髄腫の罹患と関係があり、また、AUCは、0.7956であり、診断に用いるのに十分な予測能を有していた。
【0073】
図5(A)〜(D)は、骨髄異形成症候群および骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病におけるROC曲線を示すグラフである。図5において、(A)は、骨髄異形成症候群(低リスク群)の結果を示し、(B)は、骨髄異形成症候群(中リスク群)の結果を示し、(C)は、骨髄異形成症候群(高リスク群)の結果を示し、(D)は、骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病の結果を示す。図5(A)〜(D)において、横軸は、偽陽性率(100%−特異度(%))を示し、縦軸は、感度(陽性率)を示す。図5(A)〜(C)に示すように、TERRAの発現量は、骨髄異形成症候群の罹患と関係があり、また、骨髄異形成症候群の低リスク群、中リスク群および高リスク群のAUCは、それぞれ、0.8267、0.5900、および0.8250であり、診断に用いるのに十分な予測能を有しており、特に骨髄異形成症候群の低リスク群および高リスク群において、高い予測能を有していた。また、図5(D)に示すように、TERRAの発現量は、急性骨髄性白血病の罹患と関係があり、また、AUCは、1.0000であり、診断に用いるのに十分、且つ高い予測能を有していた。
【0074】
これらの結果から、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、および骨髄異形成症候群から転化した急性骨髄性白血病について、TERRAにより精度よく罹患の可能性を試験できることがわかった。
【0075】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0076】
この出願は、2017年4月20日に出願された日本出願特願2017−083898を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、血液試料、特に、血液試料に含まれる細胞外小胞におけるテロメア反復配列含有RNA(TERRA)の発現が、がんの発症と相関する。このため、本発明によれば、血液試料におけるTERRAの発現量を測定することによって、被検者のがんの罹患の可能性を試験できる。このため、本発明は、前記被検者の負担を緩和できるため、例えば、臨床分野等において極めて有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]