特許第6857445号(P6857445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857445
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ホース及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20210405BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20210405BHJP
   B29C 48/09 20190101ALI20210405BHJP
   B29C 48/02 20190101ALI20210405BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20210405BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20210405BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20210405BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   F16L11/08 B
   B32B1/08 B
   B29C48/09
   B29C48/02
   B29K21:00
   B29K23:00
   B29L9:00
   B29L23:00
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-180338(P2015-180338)
(22)【出願日】2015年9月14日
(65)【公開番号】特開2017-57861(P2017-57861A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】川島 徹也
(72)【発明者】
【氏名】松本 吉弘
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−131875(JP,A)
【文献】 特開2000−028051(JP,A)
【文献】 特開平05−138751(JP,A)
【文献】 特開2008−137358(JP,A)
【文献】 特開2007−327027(JP,A)
【文献】 特開2002−295741(JP,A)
【文献】 特開2007−155084(JP,A)
【文献】 特開2015−121331(JP,A)
【文献】 特開2005−076849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/08
B29C 48/02
B29C 48/09
B32B 1/08
B29K 21/00
B29K 23/00
B29L 9/00
B29L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、該内層の外周に形成された中間層と、該中間層の外周に形成された補強層と、該補強層の外周に形成された外層からなり、
上記内層が架橋ポリオレフィン系樹脂を主体としたものからなり、
上記中間層が、プロピレンエチレン共重合体と、ポリプロピレンと、スチレン系エラストマーと、カーボンブラックを含むとともに、構成材料の重量部数で半分以上を架橋ポリプロピレン系樹脂が占めており、
上記補強層が、繊維糸の編組又は横巻からなり、
上記外層が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主体としたものからなるホース。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂を主体とした内層と、プロピレンエチレン共重合体と、ポリプロピレンと、スチレン系エラストマーと、カーボンブラックを含むとともに、構成材料の重量部数で半分以上を架橋ポリプロピレン系樹脂が占めている中間層とを同時に押出成形し、上記内層と上記中間層に電子線を照射して上記内層と上記中間層を同時に架橋し、該中間層の外周に繊維糸を編組又は横巻することにより補強層を形成し、該補強層の外周にオレフィン系熱可塑性エラストマーを主体とした外層を押出成形するホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トイレ、台所や洗面台や浴室の水栓金具、浴室乾燥機の温水配管、貯水タンク、食洗機、水道用配管、その他給水給湯用配管等に好適に使用することが可能なホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給水給湯用配管には、主に銅やステンレス等からなる金属管が用いられていたが、金属管は硬く、柔軟性に劣るため、取扱性や施工性が悪いという問題があった。そこで、最近では金属管に代わり、柔軟性に優れた高分子材料と金属線や繊維糸による補強層からなるホースの両端に、継手金具をかしめ加工やクリップバンド止めにより締結されたホースが配管部材として用いられるようになってきた。
【0003】
また、給水給湯用配管が設けられるスペースは比較的狭く、さらに、使用するホースの長さは短いため、施工時にホースが無理に曲げられたりすることが多い。その結果、ホースが折れ曲がってキンクが発生することがおき、その場合、通水路が塞がれて通水ができなくなったり、通水量が減ったりすることになっていたため、キンクが発生し難いホースが必要とされていた。また、給水給湯用配管が設けられるような限られたスペースの中で、良好な施工性を得るためには、柔軟性に優れたホースである必要があった。
【0004】
このような点から、ホースの柔軟性を損なうことなく、施工時の折れ曲がりによるキンクに強いホースが要求されていた。この要求に応えるべく、特許文献1〜3のように、内層チューブと繊維補強層間、或いは、繊維補強層と外層間を接着させ、各層を一体化することなどが提案されている。また、本発明に関連する文献として、例えば、特許文献4〜特許文献10が参考として挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−266274公報:ブリヂストン
【特許文献2】特開平9−178057号公報:横浜ゴム
【特許文献3】特開平10−52887号公報:横浜ゴム
【特許文献4】特許第4815039号公報:クラベ
【特許文献5】特許第4267395号公報:クラベ
【特許文献6】特許第4898084号公報:クラベ
【特許文献7】特許第4587291号公報:クラベ
【特許文献8】特許第5384847号公報:クラベ
【特許文献9】特許第5611521号公報:クラベ
【特許文献10】特許第5538994号公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、昨今ではホースの外層として、耐水性、耐薬品性、耐候性、加工性、耐汚れ性などに優れ、柔軟性がある材料であるオレフィン系のポリマーが好ましく選択されている。しかし、オレフィン系ポリマーは表面エネルギーが低く、化学的に不活性であるため、隣接する繊維補強層との接着が特に困難であるといったことも問題となっている。
【0007】
上記特許文献1によるホースは、繊維補強層の外側に備えた外層がポリウレタン系熱可塑性エラストマー又はポリエステル系熱可塑性エラストマーの構成において、特定の接着層を用いることで、繊維補強層と外層との接着性を発揮するものである。この特許文献1に記載された接着層では、オレフィン系ポリマーを含む外層に適用した場合、十分な接着性が得られないことが考えられる。
【0008】
また、特許文献2のホースは、接着剤を介して表面処理された繊維補強層と外層との接着に特定のウレタン系接着剤を使用しているが、特定のウレタン系接着剤は、取扱いが難しいという問題もある。また、この特許文献2に記載された接着剤では、オレフィン系ポリマーを含む外層に適用した場合、十分な接着性が得られないことが考えられる。更には、接着剤を介して表面処理された繊維補強層を使用しているため、ホースの柔軟性を損なうことが考えられる
【0009】
また、特許文献3のホースは、熱可塑性接着樹脂として、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂を使用している。しかし、この特許文献3では、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを樹脂そのままの形態で使用しているため、十分な接着性が得られていない。また、外層として、少なくともその一部分が架橋されているエラストマー成分を含んだポリオレフィン系熱可塑樹脂を使用しないと十分な接着性が得られないなど、使用材料が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、過度の機械的な外力や曲げが加わった場合にも、キンクが発生することのない優れた耐キンク性と優れた可撓性を備えることにより、取扱性や施工性に優れるとともに、生産性にも優れたものを提供することである。
【0011】
上記目的を達成するべく、本発明によるホースは、内層と、該内層チューブの外周に形成された中間層と、該中間層の外周に形成された補強層と、該補強層の外周に形成された外層からなり、上記内層が架橋ポリオレフィン系樹脂を主体としたものからなり、上記中間層が架橋ポリプロピレン系樹脂を主体としたものからなり、上記補強層が、繊維糸の編組又は横巻からなり、上記外層が、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主体としたものからなるものである。
また、上記中間層の架橋ポリプロピレン系樹脂が、プロピレンエチレン共重合体と、ポリプロピレンと、スチレン系エラストマーと、カーボンブラックを含むことが考えられる。
また、本発明によるホースの製造方法は、ポリオレフィン系樹脂を主体とした内層とポリプロピレン系樹脂を主体とした中間層を同時に押出成形し、上記内層と上記中間層に電子線を照射して上記内層と上記中間層を同時に架橋し、該中間層の外周に繊維糸を編組又は横巻することにより補強層を形成し、該補強層の外周にオレフィン系熱可塑性エラストマーを主体とした外層を押出成形するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中間層として架橋ポリプロピレン系樹脂を主体としたものを使用することにより、オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む外層であっても、補強層を介して中間層と外層とが良好に接着される。そのため、過度の機械的な外力や曲げが加わった場合にも、キンクが発生することのない優れた耐キンク性を有し、取扱性や施工性に優れる。また、曲げが加わった際、外層にシワが発生し難い外層平滑性も有することになる。また、外層を構成する材料がオレフィン系熱可塑性エラストマーを含んでいるため、耐水性、耐薬品性、耐候性、加工性、耐汚れ性などに優れ、柔軟性にも優れたものとなる。また、内層が架橋ポリオレフィン系樹脂を主体とし、中間層が架橋ポリプロピレン系樹脂を主体とすることから、これらは同時に押出成形できるとともに、電子線照射によって同時に架橋することができるため、生産性に優れることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例によって得られたホースの構成を示す一部切欠斜視図である。
図2】本発明の実施例によって得られたホースの両端に接続継手を取り付けた状態を示す一部切欠側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において用いられる内層の材料は、樹脂やゴムなどのような、可撓性材料から構成される。具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ニトリル‐ブタジエンゴム、などが挙げられる。この中でも、ポリオレフィン系樹脂を主体としたものからなるものが好ましく、このポリオレフィン系樹脂が架橋されたものが好ましい。なお、ポリオレフィン系樹脂を主体としたものとは、構成材料の重量部数で半分以上をポリオレフィン系樹脂が占めるものである。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンとエチレン−α−オレフィン共重合体とを含有してなる組成物であれば、ホースの可撓性及び耐塩素性を向上させることができるため更に好ましい。
【0015】
ポリエチレンは、元来耐塩素性に優れた性質を有しており、種々のポリエチレンが公知であるが、本発明では、密度が0.942g/cm以下となるものを適宜に選択又は組合せて使用することが好ましい。ポリエチレンの密度が0.942g/cmを超えてしまうと、ホースの可撓性が低下し、本発明によって得られるホースの取扱性や施工性が悪くなる傾向がある。但し、ポリエチレンの密度が0.942g/cmを超えてしまっても、ポリエチレンを含む層を薄くしたり、柔軟性に優れる材料を適宜配合したりすることで、柔軟性を損なわずに使用できる場合も有る。
【0016】
エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンが共重合されたものであり、柔軟性に優れた材料である。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1などが挙げられる。特に、エチレン−オクテン共重合体が好ましい。尚、エチレン−α−オレフィン共重合体は各種市販されているので、それらを適宜に選択して使用しても良い。
【0017】
これら柔軟性及び耐塩素性に優れたポリエチレンと、柔軟性に優れたエチレン−α−オレフィン共重合体を適宜に配合すれば、特に可撓性及び耐塩素性に優れたホースの内層を得ることが可能となる。尚、上記組成物に、他の配合材料を加えて所望の特性を得ることも可能である。例えば、老化防止剤等を適宜に添加することによって、更に耐塩素性を向上させても良い。また、金属不活性化剤、滑剤、充填剤、難燃剤、架橋助剤等、種々の添加剤を配合することも考えられる。
【0018】
本発明の中間層として用いられる材料としては、ポリプロピレン系樹脂を主体としたものが使用され、このポリプロピレン系樹脂は架橋されたものである。なお、ポリプロピレン系樹脂を主体としたものとは、構成材料の重量部数で半分以上をポリプロピレン系樹脂が占めるものである。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられ、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックの立体規則性(タクティシティー)の異なったもの何れも使用できる。また、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体のようなポリプロピレン系共重合体も使用できる。共重合体としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー何れも使用できる。また、ポリプロピレンの重合方式としては、種々のものが公知であるが、メタロセン触媒による重合は、分子量分布が揃ったポリマーを得ることができるため好ましく、これによって得られたポリプロピレンは、2,1挿入や1,3挿入により見かけ上エチレンが共重合された構造となる。
【0019】
また、中間層には、ポリプロピレン系樹脂以外の材料を配合してもよく、他の配合材料を加えて所望の特性を得ることも可能である。例えば、上記したポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、シリコーンゴムなどをブレンドすることも可能である。これらの中でも、スチレン系エラストマー、特にスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体を使用すれば、中間層の柔軟性が向上するため好ましい。また、例えば、老化防止剤等を適宜に添加することによって、更に耐塩素性を向上させても良い。また、その他にも、金属不活性化剤、滑剤、充填剤、難燃剤等、種々の添加剤を配合することも考えられる。充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム(クレー)などが挙げられる。充填剤を配合することで、特に引張強度向上等、所望の材料強度に調整することができる。これらの中でも、カーボンブラックを有していることが好ましい。カーボンブラックは耐候性付与の効果があり、特に導電性を有していることで、架橋に必要な電子線のエネルギーを小さくすることができるため、製造コストを下げることができる。また、架橋助剤を配合することで、架橋効率を向上させ、高温物性、特に高温の材料強度を向上させることができる。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)などのアリル系モノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの何れかを示す。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。これら添加剤は、マスターバッチの形態のものを使用しても良い。
【0020】
本発明では、内層と中間層を一体化させるため、共押出成形等の成形手段を用いて管状に成形して、内層と中間層を同時に架橋させる共架橋を施すことが好ましい。架橋を施すのは、上記したようなポリオレフィン系樹脂は、その耐熱温度が低く、給湯ホースとして使用される場合、ホース内を移送する湯の温度は90℃程度に達する場合もあることから、その場合は架橋を施すことによって高温での耐久性を高める必要があるからである。架橋手段としては、例えば、電子線架橋、シラン架橋、過酸化物架橋などが挙げられるが、本発明では、これらの中でも電子線架橋を採用することが好ましい。電子線架橋であれば、過酸化物架橋で必要となる過酸化物架橋剤や、シラン架橋で必要となるシランカップリング剤を配合する必要が無い。例えば、過酸化物架橋剤としてジクミルパーオキサイド(DCP)を使用した場合には、アセトフェノン、クミルアルコール、メチルスチレン、水分などが架橋反応の副生成物、すなわち分解残渣として生ずる。またシラン架橋で使用するシランカップリング剤は、未反応の状態で残存する可能性がある。それらに対して電子線照射では、過酸化物架橋剤やシランカップリング剤のような添加物が無添加でも架橋が可能で有り、少量の架橋助剤で効率を上げることができる。そのため、流体に溶出する成分を少なくでき、自由度の高い材料の選択が可能となる。このような点より、本発明においては、電子線架橋によって内層と中間層を共架橋することが最も好ましい。
【0021】
本発明においては、上記した中間層の外周に少なくとも一層の補強層を形成することになる。この補強層により、ホースに充分な破壊圧力を付与することができ、より大きな耐久性を付与することができる。また、耐キンク性が向上する。補強層としては、繊維糸を編組又はスパイラル形状に横巻することから構成される。もちろん、補強層は多層であっても良い。例えば、繊維糸を横巻する場合、巻き方向の異なる複数の横巻を行う、所謂SZ巻を行うことが考えられる。
【0022】
また、繊維糸としては、各種有機繊維や無機繊維などを用いることができ、例えば、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、レーヨン繊維、ポリエチレン繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、木綿、ガラス繊維などが挙げられる。これらの繊維は、遮蔽率80%以下、撚り数0〜250回/m、引き揃え本数1〜8本、打数(立本数)12〜48本、ピッチ15〜60mmで編組又は横巻されるのが好ましく、これはホースの使用条件によって選択される。ここで言う遮蔽率とは、繊維糸が中間層の表面を覆っている比率のことを言う。遮蔽率が80%を越えると、隙間を通じて中間層と外層を一体化させることが困難となり、キンクが発生しやすくなる。尚、この繊維糸と併せて、補強のため適宜ステンレス線などの金属線を混合しても良い。
【0023】
本発明においては、上記した補強層の外周に外層を形成することになる。外層の構成材料としては、公知の材料から任意に選ばれるが、本発明においてはオレフィン系熱可塑性エラストマーを主体とするものが好ましい。なお、オレフィン系熱可塑性エラストマーを主体としたものとは、構成材料の重量部数で半分以上をオレフィン系熱可塑性エラストマーが占めるものである。外層の構成材料には、オレフィン系熱可塑性エラストマー以外をブレンドしても良い。例えば、上記したポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、シリコーンゴムなどをブレンドすることも可能である。また、外層には柔軟性向上の為のオイルを入れることが可能だが、一方で、移行による内層への悪影響やホース内部流体へ混入するおそれがある。そのため、ホースの用途によっては、外層へのオイルの添加量はできるだけ少なくすることが好ましく、オイル成分を含まないことが更に好ましい。このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐水性、耐薬品性、耐候性に優れたものであるため、このオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む外層を形成することで、ホースの耐水性、耐薬品性、耐候性が向上することになる。また、このようなオレフィン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性にも優れているため、外層を形成することによる可撓性の低下を抑えることができる。
【0024】
このような外層を形成することにより、曲げに対するキンクの発生をより低減させることが可能であり、またホースの表面にゴミや汚れが付きにくくなるとともに、表面を簡単に清掃することができ、耐汚れ性を向上させることができる。
【0025】
このようにして得られたホースの多くは、その両端に相手部材に接続するための接続継手が取り付けられて実使用に供される。接続継手としては、金属や樹脂などにより加工されたものが公知である。
【0026】
このように、ホースの中間層と外層とが補強層を介して良好に一体化されていることにより、施工時等に過度の機械的な外力や曲げが加わった場合にも、キンクが発生することのない優れた耐キンク性を得ることができる。ここで、曲げを加えた際などに外層にシワが発生すると、このシワの谷部分から亀裂が生じ材料破壊が起こる可能性が高く、また意匠性を損なうという点からも、シワの発生は極力おさえる必要がある。上記したホースは、中間層と外層とが良好な接着により、曲げを加えた際に外層にシワが発生し難い外層平滑性を有することになるため、シワに起因した亀裂を防止することができる。
【実施例】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施例を比較例と併せて説明する。
【0028】
実施例
図1は、本発明ホース1の切欠斜視図である。まず、内層2の材料として、ポリエチレン樹脂とエチレン−オクテン共重合体を混合して内層用組成物とする。中間層3の材料として、プロピレンーエチレン共重合体、ポリプロピレン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、カーボンブラックマスターバッチ、及び、トリメチロールプロパントリアクリレート架橋助剤を混合して中間層用組成物とする。内側に内層用組成物、外側に中間層用組成物となるように、押出機により共押出成形し、内層2の肉厚0.8mm、中間層3の肉厚0.1mm、内径7.1mmとなるように管状に成形する。引き続いて、この内層2と中間層3について、電子線を照射し、内層2と中間層3に共架橋を施す。次に、1670dtex、撚り回数100回/mのポリエステル撚糸について、中間層3の外周に、引き揃え本数1本、打数16本、ピッチ28mmでSZ巻をし、補強層4を形成した。次に、補強層4の外周に、オレフィン系熱可塑性エラストマーを押出被覆して外層5を形成した。このようにして得られたホース1は、内径は7.1mm、外径は11.1mmであった。
【0029】
このようにして得られたホースを試料として、耐キンク性、柔軟性、継手引抜力についての試験を行った。尚、これらの試験の内、継手引抜力の試験については、図2に示すように、ホース両端に接続継手加工を施したもので行った。本試験で使用した接続継手10は、銅合金等からなるノズル11、銅合金等からなるナット12、SUS304等からなるスリーブ13から構成されている。接続継手加工の方法としては、まず、かしめ前のスリーブ13をホース1に配置した状態で、ナット12に予め通したノズル11をホース1の内側に挿入した。そして、スリーブ13をノズル11に対して略同心円筒状に押圧変形させて、かしめ加工を施すことによって行った。尚、上記試験の結果については表1に示す。
【0030】
実施例によって得られたホースを試料として、耐キンク性(取扱性、施工性)の確認としてキンク半径についての評価試験を行った。キンク半径については、各試料を曲げていき、ホースがキンクして折れ曲がる最小の半径を測定した。尚、試験温度は25℃とした。
【0031】
給水・給湯として実際に用いるホースは、取扱性、施工性を向上させるため、柔軟で容易にキンクしないことが必要であることから、キンク半径はホース外径の2倍以下であることが好ましく、もちろん、より小さいキンク半径であるほうが良い。本実施例によるホースでは、キンク半径が14mmと、ホース外径の2倍以下であることから、優れた耐キンク性を示し、より小さい曲げ半径で曲げた場合にもキンクが発生しないことが認められた。試験後にホースを切り開いて確認したところ、中間層と外層が接着して固定されていることが確認された。
【0032】
次に、本実施例によって得られたホースを試料として、柔軟性(取扱性、施工性)の評価試験として、曲げ反力の測定を行った。曲げ反力は、半径50mmに曲げた際の反力を測定した。尚、試験温度は25℃とした。
【0033】
狭い位置や奥まった位置にホースを取り付けする際には、軽微な力でホースを曲げられることが必要であるため、本試験による曲げ反力が小さい方が良く、特に、曲げ反力が5N以下となることが好ましい。本実施例によるホースは、曲げ反力が2.3Nであり、特に優れた柔軟性を有していることが確認された。
【0034】
次に、本実施例によって得られたホースについて、継手引抜力の測定を行った。継手引抜力は、ホース両端のナット12と試験装置を接続し、荷重をホースに徐々にかけていき、継手が抜ける力を測定した。尚、試験温度は25℃とした。
【0035】
給水給湯用ホースとして使用する際には、5MPa以上の破壊圧力を有することが好ましい。本実施例によるホースは、破壊圧力が9.9MPaであり、充分な破壊圧力を有することが確認された。
【0036】
給水給湯用ホースとして使用する際には、0.5kN以上の継手引抜力を有することが好ましい。本実施例によるホースは、継手引き抜き力が0.88kNであり、充分な継手引き抜き力を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したとおり、本発明のホースは、キンクの発生を低減でき優れた取扱性や施工性を有する。従って、例えば、トイレ、台所や洗面台や浴室の水栓金具、浴室乾燥機の温水配管、貯水タンク、食洗機、水道用配管、その他給水給湯用配管等など幅広い用途で好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ホース
2 内層
3 中間層
4 補強層
5 外層
10 接続継手
11 ノズル
12 ナット
13 スリーブ
図1
図2