特許第6857452号(P6857452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6857452-化粧シート 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6857452
(24)【登録日】2021年3月24日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   B32B27/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-97552(P2016-97552)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-205874(P2017-205874A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184653
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 寧
(72)【発明者】
【氏名】稲垣康二
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−089000(JP,A)
【文献】 特開平06−143530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から順に、(A)表面保護層、(B)透明樹脂層、(C)透明樹脂フィルムの層、(D)印刷層、及び(E)樹脂フィルムの層を有し;
上記(B)透明樹脂層は、その上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面に、エンボス形状を有し;
上記(C)透明樹脂フィルムの層は、層全体がエンボス形状であり;
上記(D)印刷層は、高輝度顔料を含み;
上記(D)印刷層は、層全体がエンボス形状であり;
上記(E)樹脂フィルムの層は、その上記(D)印刷層側の面に、エンボス形状を有する;
化粧シート。
【請求項2】
上記(B)透明樹脂層の上記(A)表面保護層側の面が平滑である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
上記(B)透明樹脂層が、非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を用いて形成される層である請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
上記(B)透明樹脂層の厚みが、20〜250μmである請求項1〜3の何れか1項に記載の化粧シート。
【請求項5】
上記(C)透明樹脂フィルムの層の厚みが60μm以上(但し、60μmを除く)である請求項1〜4の何れか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
エンボス形状が上記(E)樹脂フィルムの層の背面側の面に及んでいない請求項1〜の何れか1項に記載の化粧シート。
【請求項7】
下記特性(1)、及び(2)を有する請求項1〜の何れか1項に記載の化粧シート。
(1)照度600ルクスの環境下において、国立印刷局のきょう雑物測定図表の上に化粧シートを置き、上記図表の下から照度1万7000ルクスで照らしたとき、上記図表の5mmの大きさの図形が、目視で判別できる。
(2)照度500ルクスの環境下において、JIS L0805:2005に規定される汚染用グレースケールの上に化粧シートを置いたとき、色票4−5号の色差が目視で判別できない。
【請求項8】
請求項1〜の何れか1項に記載の化粧シートを含む物品。
【請求項9】
タッチパネルの組み込まれた物品であって、請求項1〜の何れか1項に記載の化粧シートを含み、ここで上記化粧シートが上記タッチパネルを覆うように配置されている上記物品。
【請求項10】
請求項1〜の何れか1項に記載の化粧シートの製造方法であって、
(1)上記(E)樹脂フィルムの一方の面の上に、上記高輝度顔料を含む印刷インキを用いて、上記(D)印刷層を形成する工程;
(2)上記工程(1)で得た積層体の上記(D)印刷層側の面の上に、上記(C)透明樹脂フィルムを積層する工程;
(3)エンボスロールと受けロールとで押圧する機構を備えたエンボス装置を使用し、上記工程(2)で得た積層体を、回転するエンボスロールと受けロールとの間に、その上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面が上記エンボスロール側となるように、供給投入し、押圧する工程;
(4)上記工程(3)で得た積層体の上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面の上に、透明樹脂を溶融押出し、上記(B)透明樹脂層を形成する工程;及び、
(5)上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、上記(A)表面保護層を形成する工程;
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。更に詳しくは、インナーエンボス意匠を有する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、モバイルフォン、及びパソコンなどの家電製品;飾り棚、収納箪笥、食器戸棚、及び机などの家具;あるいは床、壁、及び浴室などの建築部材;として、木材、合板、集成材、パーチクルボード、及びハードボードなどの木質系材料からなる基材;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリカーボネート、及びポリエステルなどの樹脂系材料からなる基材;あるいは鉄、アルミニウムなどの金属系材料からなる基材;の表面に化粧シートを貼合して加飾化粧されたものが使用されている。近年、商品の差別化ポイントとして、その意匠性がますます重視されるようになっている。そこで化粧シートに凹凸感、立体感、及び奥行感のある意匠を付与するため、インナーエンボスを施すことが提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、特許文献1の技術は、「着色層の表面から透明基材フィルムに向かってエンボス加工が施されている」ため、透明基材フィルムの観察される側の面(着色層積層面とは反対側の面)の平滑性が不十分であり、その意匠性は十分に満足することのできるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−082912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、良好なエンボス感を有し、意匠性の優れた新規な化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の構成の化粧シートにより、上記課題を達成できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、表面側から順に、(A)表面保護層、(B)透明樹脂層、(C)透明樹脂フィルムの層、(D)印刷層、及び(E)樹脂フィルムの層を有し;
上記(B)透明樹脂層は、その上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面に、エンボス形状を有し;
上記(C)透明樹脂フィルムの層は、層全体がエンボス形状であり;
上記(D)印刷層は、高輝度顔料を含み;
上記(D)印刷層は、層全体がエンボス形状であり;
上記(E)樹脂フィルムの層は、その上記(D)印刷層側の面に、エンボス形状を有する;
化粧シートである。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に記載の化粧シートの製造方法であって、
(1)上記(E)樹脂フィルムの一方の面の上に、上記高輝度顔料を含む印刷インキを用いて、上記(D)印刷層を形成する工程;
(2)上記工程(1)で得た積層体の上記(D)印刷層側の面の上に、上記(C)透明樹脂フィルムを積層する工程;
(3)エンボスロールと受けロールとで押圧する機構を備えたエンボス装置を使用し、上記工程(2)で得た積層体を、回転するエンボスロールと受けロールとの間に、その上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面が上記エンボスロール側となるように、供給投入し、押圧する工程;
(4)上記工程(3)で得た積層体の上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面の上に、透明樹脂を溶融押出し、上記(B)透明樹脂層を形成する工程;及び、
(5)上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、上記(A)表面保護層を形成する工程;
を含む方法である。
【0008】
第3の発明は、第1の発明に記載の化粧シートを含む物品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧シートは良好なエンボス感を有し、意匠性に優れる。そのため冷蔵庫、洗濯機、エアコン、モバイルフォン、及びパソコンなどの家電製品;飾り棚、収納箪笥、食器戸棚、及び机などの家具;あるいは床、壁、及び浴室などの建築部材の加飾・化粧に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「フィルム」の用語は、シートをも含む用語として使用する。同様に「シート」の用語は、フィルムをも含む用語として使用する。「樹脂」の用語は、2以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも含む用語として使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0011】
本発明の化粧シートは、表面側から順に、(A)表面保護層、(B)透明樹脂層、(C)透明樹脂フィルムの層、(D)印刷層、及び(E)樹脂フィルムの層を有する。
【0012】
(A)表面保護層:
上記(A)表面保護層は、通常、本発明の化粧シートの表面を形成する。また本発明の化粧シートが物品の加飾・化粧に使用されたとき、上記(A)表面保護層は、通常、物品の表面を形成する。上記(A)表面保護層は、耐外傷性や耐溶剤性を高める働きをする。
【0013】
上記(A)表面保護層は、輝度感の高い意匠を所望する場合には、透明性に優れた層である。上記(A)表面保護層は、マット調の意匠を所望する場合には、半透明なものであってよい。上記(A)表面保護層は、化粧シート生産時はもちろんのこと、化粧シートを含む物品が製造される際や、使用される際にも透明性が変化しないものであることが好ましい。
【0014】
上記(A)表面保護層としては、例えば、ハードコートや熱可塑性樹脂コートなどの樹脂塗膜をあげることができる。上記樹脂塗膜の形成に用いる塗料としては、輝度感の高い意匠を所望する場合には、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。上記樹脂塗膜の形成に用いる塗料としては、マット調の意匠を所望する場合には、半透明性、及び艶消性を有するものであってよい。
【0015】
上記ハードコートの形成に用いる塗料としては、輝度感の高い意匠を所望する場合には、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。上記ハードコートの形成に用いる塗料としては、マット調の意匠を所望する場合には、半透明性、及び艶消性を有するものであってよい。このようなハードコート形成用塗料としては、例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をあげることができる。
【0016】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂を、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤と共に含む組成物をあげることができる。
【0017】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0018】
なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0019】
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
【0020】
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
また上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含んでいてもよい。
【0022】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に所望に応じて用いる任意成分の中で、好ましいものとしては、平均粒子径1nm〜300nmの微粒子をあげることができる。上記微粒子を活性エネルギー線硬化性樹脂成分100質量部に対して1〜300質量部、好ましくは20〜100質量部使用することによりハードコートの硬度を高めることができる。
【0023】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に所望に応じて用いる任意成分の中で、好ましいものとしては、平均粒子径0.5〜10μmの微粒子をあげることができる。上記微粒子を活性エネルギー線硬化性樹脂成分100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは10〜50質量部使用することによりマット調の意匠を付与することができる。
【0024】
上記微粒子としては、無機微粒子、有機微粒子のどちらも使用することができる。上記無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;などをあげることができる。上記有機微粒子としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン系樹脂、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとの硬化樹脂などの樹脂ビーズをあげることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
また微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの硬度を高めたりする目的で、当該微粒子の表面をビニルシラン、アミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを使用してもよい。
【0026】
これらの中でより硬度の高いハードコートを得るためにシリカ、酸化アルミニウムの微粒子が好ましく、シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
【0027】
上記微粒子の平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持する観点、及びハードコートの硬度改良効果を確実に得る観点から、通常、300nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下であってよい。一方、平均粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
【0028】
上記微粒子の平均粒子径は、マット調の意匠を付与する観点から、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上であってよい。一方、耐傷付性の観点から、通常10μm以下、好ましくは6μm以下であってよい。
【0029】
本明細書において、微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0030】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤は硬化性樹脂組成物の成分、及び、その他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0031】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、これらの成分を混合、攪拌することにより、得ることができる。
【0032】
上記熱可塑性樹脂コートの形成に用いる塗料としては、輝度感の高い意匠を所望する場合には、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。上記熱可塑性樹脂コートの形成に用いる塗料としては、マット調の意匠を所望する場合には、半透明性、及び艶消性を有するものであってよい。このような熱可塑性樹脂コート形成用塗料としては、例えば、熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解させて調製される塗料をあげることができる。上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料は、これを塗布乾燥することにより熱可塑性樹脂コートを形成することが可能なものである。
【0033】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコン系樹脂、及び弗素系樹脂などをあげることができる。これらの中で、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びアクリル系樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
上記有機溶剤としては、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記有機溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0035】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及びフィラーなどの添加剤を1種、又は2種以上含ませてもよい。
【0036】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料に所望に応じて用いる任意成分の中で、好ましいものとしては、平均粒子径0.5〜10μmの微粒子をあげることができる。上記微粒子を熱可塑性樹脂成分100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは10〜50質量部使用することによりマット調の意匠を付与することができる。
【0037】
上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料は、これらの成分を混合、攪拌することにより、得ることができる。
【0038】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物や上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料などの塗料を用いて、上記(A)表面保護層を形成する方法については、後述する。
【0039】
上記(A)表面保護層が上記樹脂塗膜である場合の厚みは、特に制限されないが、耐外傷性や耐溶剤性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは5μm以上であってよい。一方、ウェブのハンドリング性の観点から、上記樹脂塗膜の厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。
【0040】
上記(A)表面保護層としては、例えば、弗化ビニリデン系樹脂フィルムや二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの耐外傷性や耐溶剤性に優れた樹脂フィルムを積層してもよい。これらの樹脂フィルムは、輝度感の高い意匠を所望する場合には、高透明性、及び高光沢性を有するものが好ましい。これらの樹脂フィルムは、マット調の意匠を所望する場合には、半透明性、及び艶消性を有するものであってよい。上記(A)表面保護層として、耐外傷性や耐溶剤性に優れた樹脂フィルムを用いる場合の上記(A)表面保護層の厚みは、特に制限されないが、ウェブのハンドリング性の観点から、通常5μm以上、より好ましくは10μm以上であってよい。一方、化粧シートの薄型化の観点から、通常100μm以下、好ましくは50μm以下であってよい。
【0041】
上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムは、弗化ビニリデン系樹脂を任意の方法で製膜することにより得ることができる。上記弗化ビニリデン系樹脂としては、例えば、弗化ビニリデン単独重合体、弗化ビニリデンに由来する構成単位を70モル%以上含有する共重合体をあげることができる。上記弗化ビニリデン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。弗化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、四弗化エチレン、六弗化プロピレン、三弗化エチレン、三弗化塩化エチレン、及び弗化ビニルなどをあげることができる。上記共重合体を得るために、弗化ビニリデンと共重合するモノマーとしては、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また本発明の目的に反しない範囲内において、上記弗化ビニリデン系樹脂には、滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、界面活性剤、核剤、色材、及び可塑剤等を含み得る。
【0042】
これらの弗化ビニリデン系樹脂の融点は、通常、145〜180℃の範囲にあるが、加工性の観点から、150〜170℃のものを使用することが好ましい。
【0043】
なお本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を230℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱するという温度プログラムでDSC測定を行って得られる融解曲線における最も温度の高い側のピークトップを融点と定義した。
【0044】
上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、広く市販されており、任意のものを用いることができる。
【0045】
上記(A)表面保護層として、耐外傷性や耐溶剤性に優れた樹脂フィルムを積層する方法については後述する。
【0046】
上記(A)表面保護層として、上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムの上に、更に直接又はアンカーコートを介して、上記樹脂塗膜を形成してもよい。
【0047】
(B)透明樹脂層:
上記(B)透明樹脂層は、その上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面に、エンボス形状を有する。一方、上記(B)透明樹脂層の上記(A)表面保護層側の面は、好ましくは平滑である。本発明の化粧シートは、上記(B)透明樹脂層を有することにより、化粧シートの表面が平滑になり、高い意匠性を発現することができる。
【0048】
上記(B)透明樹脂層を、上記(C)透明樹脂フィルムの層の上に、設ける方法は、特に制限されない。上記方法としては、例えば、上記(C)透明樹脂フィルムの層の上記(B)透明樹脂層との積層面の上に、透明樹脂を押出ラミネートする方法をあげることができる。上記(B)透明樹脂層は、上記(C)透明樹脂フィルムの層の上に、直接設けてもよいし、アンカーコートなどの他の層を介して設けてもよい。
【0049】
上記(B)透明樹脂層の形成に用いる透明樹脂としては、特に制限されない。上記(B)透明樹脂層の形成に用いる透明樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などをあげることができる。上記(B)透明樹脂層の形成に用いる透明樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお上記(B)透明樹脂層の形成に用いる透明樹脂と、上記(C)透明樹脂フィルムの形成に用いる透明樹脂とは同じであってもよく、異なるものであってもよい。上記(B)透明樹脂層を形成する際の熱により、上記(C)透明樹脂フィルムの層に形成されたエンボス形状が変形することを抑制する観点から、通常は異なる樹脂、好ましくは上記(C)透明樹脂フィルムの形成に用いる透明樹脂の方が、上記(B)透明樹脂層の形成に用いる透明樹脂よりも、融点や軟化温度の高い樹脂が用いられる。
【0050】
上記(B)透明樹脂層の形成に用いる透明樹脂としては、押出ラミネート性に優れた透明樹脂が好ましく、押出ラミネート性に優れ、上記(C)透明樹脂フィルムの層の上記(B)透明樹脂層との積層面のエンボス形状への追従性が良好であり、かつ上記(B)透明樹脂層の上記(A)表面保護層側の面が平滑になる透明樹脂がより好ましい。このような透明樹脂としては、例えば、非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂をあげることができる。
【0051】
上記(B)透明樹脂層の材料として用いる非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール成分とのポリエステル系共重合体をあげることができる。
【0052】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、モノマーの総和を100モル%として、テレフタル酸45〜50モル%及びエチレングリコール30〜40モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール10〜20モル%を含むグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG);テレフタル酸45〜50モル%、エチレングリコール16〜21モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール29〜34モル%を含むグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTG);テレフタル酸25〜49.5モル%、イソフタル酸0.5〜25モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール45〜50モル%を含む酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCTA);テレフタル酸30〜45モル%、イソフタル酸5〜20モル%、エチレングリコール35〜48モル%、ネオペンチルグリコール2〜15モル%、ジエチレングリコール1モル%未満、ビスフェノールA1モル%未満を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート;テレフタル酸45〜50モル%、イソフタル酸5〜0モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール25〜45モル%、及び2,2,4,4,−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール25〜5モル%を含む酸変性及びグリコール変性ポリエチレンテレフタレート;などをあげることができる。
【0053】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0054】
本明細書では、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、試料を320℃で5分間保持した後、20℃/分の降温速度で−50℃まで冷却し、−50℃で5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で320℃まで加熱するという温度プログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程において測定される融解曲線)の融解熱量が、10J/g以下のポリエステルを非結晶性、10J/gを超えて60J/g以下のポリエステルを低結晶性と定義した。
【0055】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、その他の任意成分を更に含ませることができる。含む得る任意成分としては、例えば、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜20質量部程度である。
【0056】
上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。コアシェルゴムを用いることで、化粧シートの耐衝撃性を向上させることができる。
【0057】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムの1種又は2種以上の混合物をあげることができる。コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0058】
上記コアシェルゴムの配合量は、上記非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂を100質量部としたとき、耐衝撃性を向上させるため、好ましくは0.5質量部以上であってよい。一方、透明性を保持するため、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下であってよい。
【0059】
上記(B)透明樹脂層の厚み(上記(C)透明樹脂フィルムの層のエンボス加工面の凸部頂上に対する厚み)は、エンボス形状への追従性、及び上記(C)透明樹脂フィルムの層との密着強度の観点から、通常20μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは120μm以上であってよい。一方、化粧シートの薄型化の観点から、通常250μm以下、好ましくは200μm以下であってよい。
【0060】
(C)透明樹脂フィルムの層:
上記(C)透明樹脂フィルムの層は、意匠性の観点から、透明に優れた樹脂フィルムからなる層である。また上記(C)透明樹脂フィルムの層は、意匠性の観点から、層全体がエンボス形状になっている。
【0061】
上記(C)透明樹脂フィルムしては、特に制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。上記(C)透明樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの透明樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0062】
上記(C)透明樹脂フィルムとしては、エンボス形状付与の容易性、及びエンボス形状の保持性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂、非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂の透明樹脂フィルムが好ましい。
【0063】
上記(C)透明樹脂フィルムの材料として用いる上記ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(塩化ビニル単独重合体);塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、塩化ビニル・マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、塩化ビニル・プロピレン共重合体、塩化ビニル・スチレン共重合体、塩化ビニル・イソブチレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・スチレン・無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル・スチレン・アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル・ブタジエン共重合体、塩化ビニル・イソプレン共重合体、塩化ビニル・塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン・酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル・各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニルと塩化ビニルと共重合可能な他のモノマーとの塩化ビニル系共重合体;後塩素化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニルや塩化ビニル系共重合体を改質(塩素化等)したもの;などをあげることができる。更には塩素化ポリエチレン等の、化学構造がポリ塩化ビニルと類似する塩素化ポリオレフィンを用いてもよい。上記ボリ塩化ビニル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0064】
上記ボリ塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される他の樹脂を、更に含ませることができる。他の樹脂の配合割合は、本発明の目的に反しない限り特に制限されないが、上記ボリ塩化ビニル系樹脂と他の樹脂の合計を100質量%として、通常0〜40質量%、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%であってよい。
【0065】
上記他の樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体;エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体;メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体等のコアシェルゴム;などをあげることができる。他の樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0066】
また上記ボリ塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される可塑剤を、更に含ませることができる。上記可塑剤の配合量は、上記ボリ塩化ビニル系樹脂と上記他の樹脂との合計を100質量部として、通常0〜40質量部程度である。
【0067】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、イタコン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボキシレート系可塑剤、及びエポキシ系可塑剤などをあげることができる。
【0068】
上記可塑剤としては、例えば、多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−へキサンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどを用い、多価カルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤をあげることができる。
【0069】
上記フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジシクロヘキシル、及びテレフタル酸ジオクチルなどをあげることができる。
【0070】
上記トリメリット酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート、トリ(n−オクチル)トリメリテート、及びトリ(イソノニル)トリメリテートなどをあげることができる。
【0071】
上記アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、及びアジピン酸ジイソデシルなどをあげることができる。
【0072】
上記エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸オクチルエステル、及びエポキシ化脂肪酸アルキルエステルなどをあげることができる。
【0073】
上記可塑剤としては、その他、トリメリット酸系可塑剤、テトラヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル系可塑剤、イソソルバイドジエステル系可塑剤、ホスフェート系可塑剤系、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニルテトラカルボン酸エステル系可塑剤、及び塩素系可塑剤などをあげることができる。
【0074】
上記可塑剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0075】
また上記ボリ塩化ビニル系樹脂には、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物に通常使用される物質を、本発明の目的に反しない限度において、更に含ませることができる。含む得る任意成分としては、顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、核剤、離型剤、帯電防止剤、尿素−ホルムアルデヒドワックス、及び、界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、ボリ塩化ビニル系樹脂と上記他の樹脂との合計を100質量部としたとき、通常0.01〜50質量部程度である。
【0076】
上記(C)透明樹脂フィルムの材料として用いる非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、上記層(B)の説明において上述したものをあげることができる。上記(C)透明樹脂フィルムの材料として用いる非晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0077】
上記(C)透明樹脂フィルムの材料として用いるアクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む共重合体、及びこれらの変性体などをあげることができる。なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルの意味である。また(共)重合体とは、重合体又は共重合体の意味である。
【0078】
上記(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、及び(メタ)アクリル酸エチル・(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などをあげることができる。
【0079】
上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ビニルシクロヘキサン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、無水マレイン酸・(メタ)アクリル酸メチル共重合、及びN−置換マレイミド・(メタ)アクリル酸メチル共重合などをあげることができる。
【0080】
上記変性体としては、例えば、分子内環化反応によりラクトン環構造が導入された重合体;分子内環化反応によりグルタル酸無水物が導入された重合体;及び、イミド化剤(例えば、メチルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアンモニアなどをあげることができる。)と反応させることによりイミド構造が導入された重合体;などをあげることができる。
【0081】
上記アクリル系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0082】
上記アクリル系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。上記アクリル系樹脂と上記コアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、上記コアシェルゴムを通常0〜50質量部(上記アクリル系樹脂100〜50質量部)、好ましくは0〜40質量部(上記アクリル系樹脂100〜60質量部)、より好ましくは0〜30質量部(上記アクリル系樹脂100〜70質量部)の量で用いることにより、化粧シートの耐切削加工性や耐衝撃性を高めることができる。
【0083】
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、及びメタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などをあげることができる。上記コアシェルゴムとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0084】
上記アクリル系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、その他の任意成分を更に含ませることができる。含み得るその他の任意成分としては、例えば、上記アクリル系樹脂や上記コアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、核剤、及び界面活性剤等の添加剤;などをあげることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、上記アクリル系樹脂と上記コアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、通常25質量部以下、好ましくは0.01〜10質量部程度である。
【0085】
上記(C)透明樹脂フィルムの材料として用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む。)、ポリブテン、及びポリメチルペンテンなどをあげることができる。
【0086】
これらの中で、透明性及び耐熱性の観点から、プロピレン単独重合体、及びプロピレンと他の少量のα−オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。
【0087】
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、及び4−メチル−1−ペンテンなどをあげることができる。
【0088】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0089】
上述の材料を用いて上記(C)透明樹脂フィルムを得る方法は、特に制限されない。上記方法としては、例えば、カレンダーロール圧延加工機と引巻取機を備える装置を使用する方法、及び押出機、Tダイ、及び引巻取機を備える装置を使用する方法などをあげることができる。
【0090】
上記カレンダーロール圧延加工機としては、例えば、直立型3本ロール、直立型4本ロール、L型4本ロール、逆L型4本ロール、及びZ型ロールなどをあげることができる。
【0091】
上記押出機としては、例えば単軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び、異方向回転二軸押出機などをあげることができる。
【0092】
上記Tダイとしては、例えば、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及び、コートハンガーダイなどをあげることができる。
【0093】
上記(C)透明樹脂フィルムは、意匠性の観点から、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率は高いほど好ましい。
【0094】
上記(C)透明樹脂フィルムは、意匠性の観点から、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1.5%以下である。ヘーズは低いほど好ましい。
【0095】
上記(C)透明樹脂フィルムは、意匠性の観点から、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。
【0096】
上記(C)透明樹脂フィルムの厚み(エンボス加工されていない状態での厚み)は、特に制限されないが、ハンドリング性の観点から、通常20μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上であってよい。一方、エンボス加工性の観点から、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下であってよい。
【0097】
上記(C)透明樹脂フィルムの層のエンボス形状は、特に制限されず、任意のエンボス形状であってよい。エンボス加工方法は特に制限されず、公知の方法を使用することができる。エンボス加工方法としては、例えば、特開2006−212909号公報、特開2006−231540号公報、及び特開2011−201137号公報などに記載されている方法をあげることができる。エンボス形状としては、特に制限されないが、例えば、等間隔又は非等間隔である直線又は曲線の連続又は非連続の条溝群などをあげることができる。またエンボス形状としては、特に制限されないが、例えば、フィルム表面の十点平均粗さ(Rz)が約0.5μm〜100μm、約1μm〜80μm、又は約3μm〜50μmであってよい。エンボス形状の凹凸の断面形状としては、特に制限されないが、例えば、略矩形、略三角形、略台形、略正弦波形、略ベッセル関数形、略楕円関数形、及び略サイクロイド曲線形などをあげることができる。エンボスロールの構造・形状については、化粧シートの製造方法の項において後述する。上記(C)透明樹脂フィルムの層のエンボス形状としては、例えば、木目柄や皮しぼなどの天然素材を模した形状;金属を加工したかの様なヘアライン模様の形状;格子柄、ストライプ模様、及び水玉模様などの幾何抽象柄の形状;及び、これらの組み合わせをあげることができる。
【0098】
上記(C)透明樹脂フィルムの層を形成する方法については後述する。
【0099】
(D)印刷層:
上記(D)印刷層は、本発明の化粧シートに高い意匠性を付与するために設けるものである。また上記(D)印刷層は、意匠性の観点から、層全体がエンボス形状になっている。
【0100】
上記(D)印刷層は、任意の印刷インキを用い、好ましくは意匠性の観点から高輝度顔料を含む印刷インキを用い、任意の模様を任意の印刷機を使用して印刷することにより形成することができる。印刷は、直接又はアンカーコートを介して、上記(C)透明樹脂フィルムの層の上記(D)印刷層側の面の上に、又は/及び上記(E)樹脂フィルムの層の上記(D)印刷層側の面の上に、全面的に又は部分的に、施すことができる。
【0101】
上記模様としては、例えば、ヘアライン等の金属調模様、木目模様、大理石等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、寄木模様、及びパッチワークなどをあげることができる。
【0102】
上記印刷インキとしては、例えば、バインダーと顔料に、好ましくはバインダーと高輝度顔料に、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、及び硬化剤等を適宜混合したものを使用することができる。
【0103】
上記バインダーとしては、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、及び酢酸セルロース系樹脂などをあげることができる。上記バインダーとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0104】
上記高輝度顔料としては、例えば、アルミニウム、真鍮、鉄、銅、銀、及び金などの金属粉;銀、酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、及び酸化錫などの金属酸化物で被覆処理されたガラス粒子;金属又は金属化合物の蒸着された箔又はフィルムの粉砕物;雲母;及び真珠粉などをあげることができる。上記高輝度顔料としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0105】
上記高輝度顔料の平均粒子径は、特に制限されないが、意匠性の観点から、通常1〜500μm、好ましくは10〜250μm、より好ましくは20〜200μm、更に好ましくは40〜120μmであってよい。
【0106】
なお本明細書において、平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
【0107】
上記高輝度顔料の配合量は、特に制限されないが、意匠性(エンボスの凹凸感)の観点から、上記バインダー100質量部に対して、通常1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは18質量部以上であってよい。一方、化粧シートの製造性の観点から、通常100質量部以下、好ましくは80質量部以下であってよい。
【0108】
上記(D)印刷層の厚み(エンボス加工されていない状態での厚み)は、特に制限されないが、ハンドリング性の観点から、通常0.5μm以上、好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1μm以上であってよい。一方、エンボス加工性の観点から、通常100μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは40μm以下であってよい。
【0109】
上記(D)印刷層のエンボス形状は、特に制限されず、任意のエンボス形状であってよい。上記(C)透明樹脂フィルムの層について上述したエンボス形状及びエンボス加工方法についての説明は、全体的に本項に援用される。上記(D)印刷層のエンボス形状としては、例えば、木目柄や皮しぼなどの天然素材を模した形状;金属を加工したかの様なヘアライン模様の形状;格子柄、ストライプ模様、及び水玉模様などの幾何抽象柄の形状;及び、これらの組み合わせをあげることができる。
【0110】
上記(D)印刷層を形成する方法については後述する。
【0111】
(E)樹脂フィルムの層:
上記(E)樹脂フィルムの層は、本発明の化粧シートの基材となる層であり、通常は意匠性の観点から着色されて被着体を隠蔽する働きをする。また上記(E)樹脂フィルムの層は、意匠性の観点から、その上記(D)印刷層側の面(正面側の面)にエンボス形状を有する。
【0112】
上記(E)樹脂フィルムとしては、制限されず、任意の樹脂フィルムを用いることができる。上記(D)樹脂フィルムとしては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン;などの樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0113】
上記(E)樹脂フィルムとしては、エンボス形状付与の容易性、及びエンボス形状の保持性の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂、非結晶性又は低結晶性芳香族ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂の樹脂フィルムが好ましい。何れについても、上記(C)透明樹脂フィルムの説明において、上述した。
【0114】
上記(E)樹脂フィルムを着色する場合の着色剤は、特に制限されず、任意の着色剤を用いることができる。上記着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラックなどをあげることができる。上記着色剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記着色剤の配合量は、上記(E)樹脂フィルムに用いられる基材樹脂を100質量部として、着色剤の種類や所望の隠蔽性にもよるが、通常0.1〜40質量部程度である。
【0115】
上記(E)樹脂フィルムの厚み(エンボス加工されていない状態での厚み)は、特に制限されないが、エンボス形状が上記(E)樹脂フィルムの層の背面側の面に及ばないようにする観点から、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上であってよい。一方、物品の薄型化の観点から、通常300μm以下、好ましくは200μm以下であってよい。
【0116】
上記(E)樹脂フィルムの層が、その上記(D)印刷層側の面(正面側の面)に有するエンボス形状は、特に制限されず、任意のエンボス形状であってよい。上記(C)透明樹脂フィルムの層について上述したエンボス形状及びエンボス加工方法についての説明は、全体的に本項に援用される。上記(E)樹脂フィルムの層のエンボス形状としては、例えば、木目柄や皮しぼなどの天然素材を模した形状;金属を加工したかの様なヘアライン模様の形状;格子柄、ストライプ模様、及び水玉模様などの幾何抽象柄の形状;及び、これらの組み合わせをあげることができる。
【0117】
上記(E)樹脂フィルムの層を形成する方法については後述する。
【0118】
本発明の化粧シートを、タッチパネルの組み込まれた物品に用いる場合には、本発明の化粧シートは、照度600ルクス、好ましくは照度1200ルクスの環境下において、国立印刷局のきょう雑物測定図表の上に化粧シートを、上記(A)表面保護層側の面が観者側になるように置き、上記図表の下から照度1万7000ルクスで照らしたとき、左右の何れの矯正視力も1.0の者が、上記図表の5mmの大きさ、好ましくは4mmの大きさ、より好ましくは3mmの大きさの図形を、化粧シートの表面から垂直方向に30cm離れた位置において、目視(両眼)で判別することのできる光透過性を有することが好ましい。また照度500ルクスの環境下において、黒色(明度29、グロス2.5%)の試験台上にJIS L 0805:2005に規定される汚染用グレースケールを置き、更にその上に化粧シートを、上記(A)表面保護層側の面が観者側になるように置いたとき、左右の何れの矯正視力も1.0の者が、色票4−5号の色差を、好ましくは色票4号の色差を、化粧シートの表面から垂直方向に30cm離れた位置において、目視(両眼)で判別することができない隠蔽性を有することが好ましい。タッチパネルが動作していないときは、本発明の化粧シートによりタッチパネルを隠蔽して物品の意匠性を高め、タッチパネル動作時は、本発明の化粧シート越しにタッチパネルを操作することができるようになる。
【0119】
製造方法:
本発明の化粧シートを製造する方法は、特に制限されず、任意の方法で製造することができる。上記方法としては、例えば、
(1)上記(E)樹脂フィルムの一方の面の上に、上記高輝度顔料を含む印刷インキを用いて、上記(D)印刷層を形成する工程;
(2)上記工程(1)で得た積層体の上記(D)印刷層側の面の上に、上記(C)透明樹脂フィルムを積層する工程;
(3)エンボスロールと受けロールとで押圧する機構を備えたエンボス装置を使用し、上記工程(2)で得た積層体を、回転するエンボスロールと受けロールとの間に、その上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面が上記エンボスロール側となるように、供給投入し、押圧する工程;
(4)上記工程(3)で得た積層体の上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面の上に、上記透明樹脂を溶融押出し、上記(B)透明樹脂層を形成する工程;及び、
(5)上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、上記(A)表面保護層を形成する工程;
を含む方法をあげることができる。
【0120】
上記工程(1)において、上記(E)樹脂フィルムの一方の面の上に上記(D)印刷層を形成し、積層体を得る方法は、高輝度顔料を含む印刷インキを用いること以外は特に制限されず、任意の方法であってよい。
【0121】
上記(D)印刷層は、上記(E)樹脂フィルムの一方の面の上に直接形成してもよく、アンカーコートを介して形成してもよい。また上記(D)印刷層は、所望により、全面的に形成してもよく、部分的に形成してもよい。
【0122】
上記印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、及びシルク印刷などをあげることができる。
【0123】
上記工程(2)において、上記工程(1)で得た積層体の上記(D)印刷層側の面の上に、上記(C)透明樹脂フィルムを積層し、上記(C)透明樹脂フィルムの層、上記(D)印刷層、及び上記(E)樹脂フィルムの層をこの順に有する積層体を得る方法は、特に制限されず、任意の方法であってよい。
【0124】
上記積層方法としては、例えば、上記(C)透明樹脂フィルムと上記工程(1)で得た積層体とを、直接熱ラミネートする方法;上記工程(1)で得た積層体の上記(D)印刷層側の面の上に、透明樹脂を溶融押出し、上記(C)透明樹脂フィルムの層を形成する方法;及び、上記(C)透明樹脂フィルムと上記工程(1)で得た積層体とを、アンカーコートや接着剤を介してラミネートする方法;などをあげることができる。
【0125】
上記工程(3)において、上記工程(2)で得た積層体に、その上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面からエンボス加工する方法は、エンボス形状が上記工程(2)で得た積層体の上記(E)樹脂フィルムの層の上記(D)印刷層側の面にまで入るようにすること以外は特に制限されず、任意の方法であってよい。
【0126】
上記エンボスロールは、その表面に凹凸模様の彫刻されたロールである。上記エンボスロールとしては、例えば、金属製、セラミック製、及びシリコンゴム製などのエンボスロールをあげることができる。上記エンボス形状は、特に制限されず、意匠性の観点から、任意の形状を選択することができる。上記エンボス形状としては、例えば、木目柄や皮しぼなどの天然素材を模した形状;金属を加工したかの様なヘアライン模様の形状;格子柄、ストライプ模様、及び水玉模様などの幾何抽象柄の形状;及び、これらの組み合わせをあげることができる。上記エンボスロールのエンボスの深さは、エンボス形状が上記工程(2)で得た積層体の上記(E)樹脂フィルムの層の上記(D)印刷層側の面にまで入るようにする観点から、通常7μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であってよい。
【0127】
上記エンボスロールの表面に彫刻する方法は、特に制限されず、任意の方法を用いることができる。上記彫刻方法としては、例えば、彫刻ミルロールによる型押し法や酸腐食によるエッチング法;ダイヤモンドスタイラスを用いた機械彫刻法;COレーザーやYAGレーザーなどを用いたレーザー彫刻法;及び、サンドブラスト法;などをあげることができる。またこれらの彫刻したエンボスロールの表面については、腐食や傷付きからの保護を目的としてクロームメッキや鉄−リン合金メッキ、PVD法やCVD法による硬質カーボン処理などを施すことができる。
【0128】
上記受けロールは、通常は、表面の平滑なロールである。上記受けロールの表面を構成する素材は、ゴムが一般的であるが、特に制限されず、金属やセラミックなどであってもよい。
【0129】
エンボス加工条件は、エンボス形状が上記工程(2)で得た積層体の上記(E)樹脂フィルムの層の上記(D)印刷層側の面にまで入るようにする観点、及び積層体が割れたり、破断したり、エンボスロールに付着したりしないようにする観点から、上記工程(2)で得た積層体の特性に応じて適宜選択する。
【0130】
上記工程(2)で得た積層体の上記(C)透明樹脂フィルムの層が、(c1)塩化ビニル単独重合体 100質量部;及び、(c2)可塑剤 12〜25質量部;を含む透明ポリ塩化ビニル系樹脂組成物フィルム(厚み50〜80μm)の層であり、上記(D)印刷層が、(d1)塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系樹脂のバインダー 100質量部;及び(d2)アルミニウム粉系の高輝度顔料 15〜90質量部;を含む印刷インキからなる印刷層(厚み1〜4μm)であり、上記(E)樹脂フィルムの層が、(e1)塩化ビニル単独重合体 100質量部;(e2)可塑剤 3〜25質量部;及び(e3)着色剤 1〜30質量部;を含む着色ポリ塩化ビニル系樹脂組成物フィルム(厚み60〜150μm)の層である場合について説明する。
【0131】
上記工程(2)で得た積層体は、エンボス加工を施す前に、通常150〜200℃、好ましくは160〜190℃、より好ましくは165〜180℃に予熱する。上記エンボスロールの表面温度は、通常10〜110℃、好ましくは15〜80℃、より好ましくは20〜70℃にする。押圧の圧力は、通常3〜15Kg/cm、好ましくは5〜12Kg/cmにする。
【0132】
上記工程(4)において、上記工程(3)で得た積層体の上記(C)透明樹脂フィルムの層側の面の上に、透明樹脂を溶融押出し、上記(B)透明樹脂層を形成する方法は、特に制限されず、任意の方法であってよい。上記方法としては、例えば、透明樹脂を、一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機などの任意の押出機を使用し、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、及びコートハンガーダイなどの任意のTダイから溶融押出する方法をあげることができる。
【0133】
上記工程(5)において、上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、上記(A)表面保護層を形成する方法は、特に制限されず、任意の方法であってよい。
【0134】
上記(A)表面保護層が、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物や上記熱可塑性樹脂コート形成用塗料などの塗料からなる上記樹脂塗膜である場合には、例えば、上記塗料を上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、公知のウェブ塗布方法を使用して塗布し、形成する方法;及び、任意のフィルム基材の片面の上に、直接又は剥離層を介して、公知のウェブ塗布方法を使用して、上記塗料を塗布して上記樹脂塗膜を形成し、更にその上にホットメルト接着剤を、公知のウェブ塗布方法を使用して塗布してホットメルト接着剤層を形成し、得た転写箔を、上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、公知の方法で転写する方法;などをあげることができる。
【0135】
上記ウェブ塗布方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0136】
上記アンカーコートを形成するために用いるアンカーコート剤としては、特に制限されず、好ましくは透明であること以外は制限されず、任意のアンカーコート剤を用いることができる。上記アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、アクリルウレタン、及びポリエステルウレタンなどの公知のものをあげることができる。上記アンカーコート剤としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0137】
上記アンカーコート剤を用いて上記アンカーコートを形成する方法は特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。上記ウェブ塗布方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
【0138】
上記アンカーコートの厚みは、通常0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜2μmである。
【0139】
上記ホットメルト接着剤としては、特に制限されず、好ましくは透明であること以外は制限されず、任意のホットメルト接着剤を用いることができる。上記ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びポリアミド系樹脂などのホットメルト接着剤をあげることができる。上記ホットメルト接着剤としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0140】
上記(A)表面保護層が、耐外傷性や耐溶剤性に優れた樹脂フィルムである場合、このような樹脂フィルムを積層する方法は、特に制限されず、任意の方法であってよい。
【0141】
上記(A)表面保護層が、上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムである場合には、例えば、上記弗化ビニリデン系樹脂フィルムを任意の方法により得た後、上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;上記弗化ビニリデン系樹脂を、上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、溶融押出する押出ラミネート方法;などをあげることができる。
【0142】
上記(A)表面保護層が、上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合には、例えば、上記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを任意の方法により得た後、上記工程(4)で得た積層体の上記(B)透明樹脂層側の面の上に、直接又はアンカーコートを介して、ドライラミネート又は熱ラミネートする方法;などをあげることができる。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
測定方法
(イ)輝度感(金属光沢感):
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、化粧シートの上記(A)表面保護層側の面に、該面と50cmの距離を隔てた位置から垂直に入射し、上記面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から上記化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:光輝性が非常に高い。
○:光輝性が高い。
△:光輝性が低い。
×:光輝性がほとんどない。
【0145】
(ロ)エンボス感(凹凸感):
暗所において、40W白色蛍光灯(300ルックス)の光を、化粧シートの上記(A)表面保護層側の面と、上記蛍光灯の光線とが50cmの距離を隔てるように平行に照射し、上記面と45°の角度をなし、50cmの距離を隔てた位置から上記化粧シートを目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:エンボスの凹凸感が非常にシャープでハッキリとしている。
○:エンボスの凹凸感がシャープでハッキリとしている。
△:エンボスの凹凸感がやや丸みを帯びてハッキリしない。
×:エンボスの凹凸感が無く、ほとんど平滑に見える。
【0146】
(ハ)表面平滑性:
化粧シートの上記(A)表面保護層側の面を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にうねりや傷がない。間近に光を透かし見ても、曇感がない。
○:間近に光を透かし見ると、僅かな曇感のある箇所がある。
△:間近に見ると、表面にうねりを僅かに認める。また曇感がある。
×:表面にうねりを多数認めることができる。また明らかな曇感がある。
【0147】
使用した原材料
(A)表面保護層形成用の転写箔:
(A−1)厚み12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面に、ポリエチレンワックスからなる剥離コート層を0.2μm厚みで形成し、剥離コート層の上に、熱可塑性ウレタン系樹脂塗膜を1μm厚みで形成し、樹脂塗膜の上に、ポリエステル系ホットメルト接着剤層を0.4μm厚みで形成した転写箔。該転写箔により、高透明性、及び高光沢性を有する(A)表面保護層を形成することができる。
【0148】
(B)透明樹脂:
(B−1)イーストマン ケミカル カンパニーの非晶性芳香族ポリエステル系樹脂「KODAR PETG GS1(商品名)」、ガラス転移温度81℃、融解熱量0J/g(DSCセカンド融解曲線に明瞭な融解ピークなし)。
【0149】
(C)透明樹脂フィルム:
(C−1)下記成分(c1−1)100質量部、及び下記成分(c2−1)12質量部を含む組成物からなる厚み65μmの透明ポリ塩化ビニル系樹脂組成物フィルム。
【0150】
(c1−1)重合度800の塩化ビニル単独重合体。
(c2−1)ポリエステル系可塑剤
【0151】
(D)印刷インキ:
(D−1)塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系樹脂のバインダー100質量部とアルミニウム粉系の高輝度顔料20質量部を含む高輝度インキ。
(D−2)塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系樹脂のバインダー100質量部とアルミニウム粉系の高輝度顔料15質量部を含む高輝度インキ。
【0152】
(E)樹脂フィルム:
(E−1)下記成分(e1−1)100質量部、下記成分(e2−1)8質量部、及び下記成分(e3−1)2.6質量部を含む組成物からなる厚み80μmの着色ポリ塩化ビニル系樹脂組成物フィルム。
【0153】
(e1−1)重合度800の塩化ビニル単独重合体。
(e2−1)フタル酸エステル系可塑剤。
(e3−1)酸化チタン系白色着色剤。
【0154】
例1
(1)上記(E−1)の片面の上に、上記(D−1)を用い、乾燥後の層厚みが2μmとなるように印刷層を設けた。
(2)次に、上記(D−1)からなる印刷層の上に、上記(C−1)を重ね、鏡面ロールと表面の平滑な受けロールとで押圧する機構を備えた装置を使用して温度25℃で押圧し、上記(C−1)の層、上記(D−1)からなる印刷層、及び上記(E−1)の層がこの順に積層された積層体を得た。
(3)次に、エンボスの深さ20μmのエンボスロールと表面の平滑な受けロールとで押圧する機構を備えたエンボス装置を使用し、上記工程(2)で得た積層体を、回転するエンボスロールと受けロールとの間に、その上記(C−1)の層側の面が上記エンボスロール側となるように、供給投入し、押圧した。このとき上記工程(2)で得た積層体にエンボス加工を施す前の予熱温度は170℃、上記エンボスロールの温度は70℃、押圧の圧力は11Kg/cmであった。
(4)続いて、上記工程(3)で得た積層体の上記(C−1)の層側の面の上に、上記(B−1)を、Tダイ出口樹脂温度220℃で溶融押出し、上記(B−1)からなる厚み150μmの層を形成した。
(5)続いて、上記工程(4)で得た積層体の上記(B−1)の層側の面の上に、上記(A−1)のポリエステル系ホットメルト接着剤層側の面を重ね、温度140℃で押圧して転写(貼合)し、上記(A−1)の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの層と剥離コート層を剥離・除去し、化粧シートを得た。
上記試験(イ)〜(ハ)を行った。結果を表1に示す。また化粧シートの断面観察を行ったところ、上記(C−1)の層、及び上記(D−1)の層は、層全体がエンボス形状になっており、上記(E−1)の層の上記(D−1)の層側の面はエンボス形状になっていた。上記(B−1)の層は、その上記(C−1)の層側の面はエンボス形状になっていたが、その上記(A−1)の層側の面は平滑であった。更に上記光透過性は3mmの大きさの図形を確認できる透過性であり、上記隠蔽性は色票4号の色差を判別できない隠蔽性であった。従って、タッチパネルが動作していないときは、本発明の化粧シートによりタッチパネルを隠蔽して物品の意匠性を高め、タッチパネル動作時は、本発明の化粧シート越しにタッチパネルを操作することができると考えられる。
【0155】
例2
上記工程(3)において、上記エンボスロールの温度90℃、押圧の圧力を2Kg/cmとしたこと以外は、全て上記例1と同様に行った。結果を表1に示す。また化粧シートの断面観察を行ったところ、上記(C−1)の層の上記(B−1)の層側の面のみがエンボス形状になっていた。
【0156】
例3
上記(D−2)を用いたこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表1に示す。また化粧シートの断面観察を行ったところ、上記(C−1)の層、及び上記(D−2)の層は、層全体がエンボス形状になっており、上記(E−1)の層の上記(D−2)の層側の面はエンボス形状になっていた。上記(B−1)の層は、その上記(C−1)の層側の面はエンボス形状になっていたが、その上記(A−1)の層側の面は平滑であった。
【0157】
例4
上記(B−1)の層の厚みを50μmに変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表1に示す。また化粧シートの断面観察を行ったところ、上記(C−1)の層、及び上記(D−1)の層は、層全体がエンボス形状になっており、上記(E−1)の層の上記(D−1)の層側の面はエンボス形状になっていた。上記(B−1)の層は、その上記(C−1)の層側の面はエンボス形状になっていたが、その上記(A−1)の層側の面は平滑であった。
【0158】
例5
上記(B−1)の層の厚みを100μmに変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表1に示す。また化粧シートの断面観察を行ったところ、上記(C−1)の層、及び上記(D−1)の層は、層全体がエンボス形状になっており、上記(E−1)の層の上記(D−1)の層側の面はエンボス形状になっていた。上記(B−1)の層は、その上記(C−1)の層側の面はエンボス形状になっていたが、その上記(A−1)の層側の面は平滑であった。
【0159】
【表1】
【0160】
本発明の化粧シートは輝度感、エンボス感、及び表面平滑性に優れる。そのため冷蔵庫、洗濯機、エアコン、モバイルフォン、及びパソコンなどの家電製品;飾り棚、収納箪笥、食器戸棚、及び机などの家具;あるいは床、壁、及び浴室などの建築部材の加飾・化粧に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
図1】本発明の化粧シートの一例を示す断面の概念図である。
【符号の説明】
【0162】
1:(A)表面保護層
2:(B)透明樹脂の層
3:(C)透明樹脂フィルムの層
4:(D)印刷層
5:(E)樹脂フィルムの層

図1